(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表裏の地編組織(1)(2)の一部において、表裏の紐体(S)(S)が連結糸(3)で繋がっていない非連結部(A)が、少なくとも紐体(S)の線状結合部(11)と点状結合部(12)間、或いは第一線状結合部(14)と第二線状結合部(15)間の半分以上の区間にわたって設けられていることを特徴とする請求項1に記載の自立型立体構造ネット。
表裏の地編組織(1)(2)において、1本または複数本の補強紐体(R)とその両側に配置される紐体(S)(S)とが線状または点状に連結されて、前記補強紐体(R)が、二重編地をウェール方向に拡げたときに紐体(S)(S)間の網目孔(13)(23)内を通過するようにコース方向に直線状に延びた状態となることを特徴とする請求項1または2に記載の立体構造ネット。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、園芸や農作物を栽培する際には、保温や遮光により温度や日射光を植物の成長に適するように調整するため、雨風から植物を守るため、または害虫や病気による悪影響を防ぐためにビニルハウス(トンネルハウス等)を構築してハウス内で栽培が行われる。また一般的に、ビニルハウスは枠体上に樹脂フィルムを張って構築されるが、それだけだとハウス内の室温が外気温に影響され易いという問題がある。
【0003】
そこで、従来においては、ビニルハウスの保温効果を上げるために、気密シート材である樹脂フィルムを二重に張設し、更にこれらのフィルム間に所定厚さの空気層を形成して断熱効果を増大させる方法が採られている。この際、所定厚さの空気層を形成する方法としては、二重の樹脂フィルム間に送風機で空気を送り込んで空気圧を調整することにより空気層の厚さを保つ方法が知られている。
【0004】
しかしながら、上記送風機を用いる方法では、空気層の厚さを維持し続けるために、常時、送風機を稼働させる必要があったため、電気代が高く付くコスト上の問題がある。しかも、上記送風機を用いる方法では、気密シート材間の弾力性が低いため、強風等で裏側の樹脂フィルムがフレームに擦れて破れたり、小石や折れた木の枝などが表側の樹脂フィルムを突き破ったりする問題が生じて、気密シート材間の空気圧の低下により空気層の厚さを維持するのが難しい。
【0005】
一方、本件出願人は、二枚の気密シート材の間に立体構造ネットを挟み込んで空気層を形成する技術を開発し特許出願も行っているが(特許文献1参照)、立体構造ネットを表裏の紐状の地編組織を連結糸で繋いで帯状に構成する場合、対向する表裏の網目孔が同じ形状だと帯状部分が厚さ方向に直立した状態となり、外側から圧力を受けた際に帯状部分が完全に倒れて空気層が潰れ、上記のように強風や積雪等で裏側の樹脂フィルムが摩擦によって破れる問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、厚みのある空気層によって優れた断熱効果が得られるだけでなく、不使用時にコンパクトな形態に折り畳むこともでき、しかも、使用時に外部から厚さ方向に圧力を受けた場合でも負荷を弾力的に受け止められる形態安定性に優れた立体構造ネット、及びそれを用いた保温構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を添付図面を参照して説明すれば次のとおりである。
【0009】
即ち、本発明は、表裏の紐状の地編組織1・2を厚さ方向に平行に配置して、これらを連結糸3で帯状に繋いだ二重編地から構成される立体構造ネットにおいて、前記表裏の地編組織1・2には、ウェール方向に並ぶ一対の紐体S・S同士を線状に結合した線状結合部11・21をコース方向に所定間隔で設けると共に、コース方向に並ぶ各線状結合部11・21の間には、ウェール方向に隣り合う線状結合部11・21の一方の紐体S・S同士を点状に結合した点状結合部12・22を設け、更に
表側の点状結合部12を裏側の線状結合部21の中心部に対向する位置に設け、裏側の点状結合部22を表側の線状結合部11の中心部に対向する位置に設けて、二重編地をウェール方向に拡げたときに表裏の地編組織1・2に六角形と四角形の網目孔13・23が対向位置に形成されるようにした点に特徴がある。
【0010】
一方、本発明においては、上記構成を採用する代わりに、上記表裏の紐状の地編組織1・2を厚さ方向に平行に配置して、これらを連結糸3で帯状に繋いだ二重編地から構成される立体構造ネットにおいて、前記表裏の地編組織1・2には、ウェール方向に並ぶ一対の紐体S・S同士を線状に結合した第一線状結合部14・24をコース方向に所定間隔で設けると共に、コース方向に並ぶ各第一線状結合部14・24の間には、ウェール方向に隣り合う第一線状結合部14・24の一方の紐体S・S同士を、第一線状結合部14・24よりも短い線状に結合した第二線状結合部15・25を設け、更に前記表側の第一線状結合部14と裏側の第二線状結合部25、及び表側の第二線状結合部15と裏側の第一線状結合部24をそれぞれ対向する位置に設けて、二重編地をウェール方向に拡げたときに表裏の地編組織1・2に形状の異なる六角形の網目孔13・23が対向位置に形成されるようにすることもできる。
【0011】
また本発明では、上記表裏の地編組織1・2の一部において、表裏の紐体S・S同士が連結糸3で繋がっていない非連結部Aを、少なくとも紐体Sの線状結合部11と点状結合部12間、或いは第一線状結合部14と第二線状結合部15間の半分以上の区間にわたって設けることにより、軽量化及びコストダウンを図ると共に二重編地に透光用の空隙部を形成することができる。
【0012】
また本発明では、上記表裏の地編組織1・2において、補強紐体Rとその両側に配置される紐体S・Sとを線状または点状に連結して、この補強紐体Rが、二重編地Nをウェール方向に拡げたときに紐体S・S間の網目孔13・23内を通過するようにコース方向に直線状に延びた状態となるようにすることで、二重編地のコース方向の寸法安定性を高めることもできる。
【0013】
また本発明では、上記構成から成る二重編地をウェール方向に拡げた状態で気密シート材間に配置することでスペーサとして好適に使用できる。
【0014】
他方、本発明では、上記立体構造ネットを利用して保温構造体を構成する場合には、構造体の骨組みとなる枠体Fと;この枠体Fに張設される第一気密シート材H
1と;この第一気密シート材H
1上にスペーサとして重ねて張設される自立型立体構造ネットNと;この立体構造ネットN上に重ねて張設される第二気密シート材H
2とから保温構造体を構成することで、前記第一気密シート材H
1と第二気密シート材H
2の間に立体構造ネットNの厚みに応じた任意厚さの空気層を作出できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、立体構造ネットにおいて、紐状の表裏の地編組織を連結糸で繋いで帯状部分を構成すると共に、表裏の地編組織の網目孔の形状と配置を調整することにより、形状と大きさが異なる網目孔が対向配置されるようにしたことにより、立体構造ネットを保温構造体のスペーサとして使用した際に、表裏の紐体を繋ぐ連結糸が斜めを向いた状態となるため、外部から厚さ方向に圧力を受けた場合でも、帯状部分が起立する方向に反発力が生じて帯状部分が完全に倒れ込まずに厚さを維持できる。
【0016】
また本発明の立体構造ネットを使用することで、充分な厚さの空気層を形成することができ、しかも、スペーサである立体編地の弾力性と軽量性、強度を利用してシート張り部分の強度を向上させることもできる。また本発明の立体構造ネットは、不使用時にウェール方向に畳んでコンパクト化することができるため、保管や運搬等の取り扱いも容易に行える。
【0017】
したがって、本発明により、編み立て条件により空気層の厚さや面積当たりの重量を調整できるだけでなく、使用時に空気層を維持するための形態安定性にも優れ、しかも、シート張り部分の強度や施工の容易性、ランニングコストの面でも有利な立体構造ネットを提供できることから、実用的利用価値は非常に高い。
【発明を実施するための形態】
【0019】
『第一実施形態』
本発明の第一実施形態を
図1〜
図5に基づいて説明する。なお図中、符号1で指示するものは、表側の地編組織であり、符号2で指示するものは、裏側の地編組織である。また符号3で指示するものは、連結糸であり、符号Nで指示するものは、立体構造ネットである。また符号Aで指示するものは、非連結部であり、符号Rで指示するものは、補強紐体である。
【0020】
「立体構造ネットの構成」
[1]立体構造ネットの基本構成について
まず立体構造ネットの基本構成について説明すると、本実施形態では、
図1に示すように、表裏の紐状の地編組織1・2を厚さ方向に平行に配置して、これらを連結糸3で帯状に繋いだ二重編地から立体構造ネットNを構成している。また
図2に示すように、表側の地編組織1には、ウェール方向に並ぶ一対の紐体S・S同士を線状に結合した線状結合部11・11…をコース方向に所定間隔で設けると共に、裏側の地編組織2にも、同様にウェール方向に並ぶ一対の紐体S’・S’同士を線状に結合した線状結合部21・21…をコース方向に所定間隔で設けている。
【0021】
一方、
図2に示すように、表側の地編組織1には、上記コース方向に並ぶ各線状結合部11・11の間に、ウェール方向に隣り合う線状結合部11・11の一方の紐体S・S同士を点状に結合した点状結合部12を設けると共に、裏側の地編組織2にも、同様にコース方向に並ぶ各線状結合部21・21の間に、ウェール方向に隣り合う線状結合部21・21の一方の紐体S’・S’同士を点状に結合した点状結合部22を設けている。
【0022】
そして、
図3に示すように、上記表側の線状結合部11と裏側の点状結合部22、及び表側の点状結合部12と裏側の線状結合部21をそれぞれ対向する位置に設けて、二重編地をウェール方向に拡げたときに表側の地編組織1の四角形状の網目孔13(P)と裏側の地編組織2の六角形状の網目孔23(Q)、表側の地編組織1の六角形状の網目孔13(Q)と裏側の地編組織2の四角形状の網目孔23(P)がそれぞれ対向位置に配置されるようにしている。
【0023】
上記のように立体構造ネットNを構成したことにより、二重編地をウェール方向に拡げた状態で気密シート材間に配置すればスペーサとして好適に使用することができ、また異なる形状の網目孔が対向配置されるように立体編地を構成したことで、紐体S・S’を連結糸3で繋いだ帯状部分がヒートセットしなくても倒れ難くなるため、立体構造ネットNの形態を安定化させることができる。
【0024】
また不使用時においては、
図4に示すように、立体構造ネットNをウェール方向にコンパクトに畳んだ状態で運搬することができるため、農業用ビニルハウス等に使用する場合でも長尺の立体構造ネットNを容易に持ち運ぶことができる。また使用時には、立体構造ネットNの両端を持って引っ張るだけで簡単に拡げることができる。
【0025】
[2]表裏の地編組織について
[2-1]地編組織の糸材
次に上記立体構造ネットNの各構成要素について説明する。まず表裏の地編組織1・2に使用する糸材については、本実施形態ではモノフィラメント糸を使用しているが、必要に応じて紡績糸を使用することもでき、また複数本の糸材を引き揃えて使用することもできる。またモノフィラメント糸の材質には、強度や張力、弾性等を考慮してナイロンやポリエステル、ポリウレタン、炭素繊維、アラミド繊維等の素材を適宜選択することができる。
【0026】
また上記表裏の地編組織1・2の糸材には、金属繊維等の通電により発熱する材料を使用することもでき、また所定の波長域の可視光を吸収する色付きの糸材を使用することもできる。なお金属繊維等の通電により発熱する材料を使用することで、ビニルハウス内の室温管理が行え、また所定の波長域の可視光を吸収する糸材を使用することにより、日射光(自然光)の内、植物の育成等に好ましい波長域の光をビニルハウス内に照射できる。
【0027】
また上記表裏の地編組織1・2の糸材については、表裏で異なる糸材を使用することもできる。また地編組織1・2の糸材には、マルチフィラメント糸を使用することもでき、ダブルラッセル機で立体構造ネットNの編み立てを行う場合には、上記表裏の地編組織1・2の糸材として太さ10〜30000デニール、より好ましくは100〜12000デニールの糸材を使用するのが望ましい。また通電性に優れた金属線材を他の糸材と一緒に使用することもできる。
【0028】
[2-2]地編組織の紐体
また表裏の地編組織1・2の紐体S・S’に関しては、本実施形態では鎖編組織によって形成しているが、鎖編組織に挿入糸を挿通して構成することもできる。また本実施形態では、紐体S・S’を一本の鎖編組織から構成しているが、複数本の鎖編組織を連結して一本の紐体S・S’とすることもできる
。
【0029】
[2-3]地編組織の線状結合部・点状結合部
また表裏の地編組織1・2の線状結合部11・21については、任意の長さで形成することができ、線状結合部11・21の長さによって網目孔13・23の形状を縦長や横長に変更することができる。また表裏の地編組織1・2の点状結合部12・22については、
図2に示すように他方の地編組織2・1の線状結合部21・11の中心部に対向する位置に形成するのが好ましいが、若干位置をズラして形成することもできる。
【0030】
[2-4]地編組織の網目孔の大きさ・形状
また表裏の地編組織1・2の網目孔13・23の大きさや形状については、紐体S・S’の間隔や長さ、線状結合部11・21の長さによって任意に変更することができ、網目孔13・23を小さく形成するほど立体構造ネットNの形態安定性を高めることができ、また網目孔13・23を大きく形成するほど立体構造ネットNの軽量性や透光性を高めることができる。
【0031】
[3]連結糸について
[3-1]連結糸の糸材
また上記連結糸3に使用する糸材については、本実施形態ではモノフィラメント糸を使用しているが、複数本の糸材を引き揃えて使用することもできる。またモノフィラメント糸の材質には、強度や張力、弾性等を考慮してナイロンやポリエステル、ポリウレタン、炭素繊維、アラミド繊維等の素材を適宜選択することができる。また表裏の地編組織1・2間の連結糸3の長さを変えることで、立体構造ネットNの厚さを適宜変更できる。
【0032】
また上記連結糸3の糸材については、表裏の地編組織1・2と異なる糸材を使用することもできる。また連結糸3の糸材には、マルチフィラメント糸や天然紡績糸を使用することもでき、ダブルラッセル機で立体構造ネットNの編み立てを行う場合には、連結糸3の糸材として、太さ10〜30000デニール、好ましくは100〜12000デニールの糸材で、地編組織1・2の糸材よりも太いものを好適に使用できる。
【0033】
[3-2]連結糸の向き
また立体構造ネットNをウェール方向に拡げた際の連結糸3の向きについて説明すると、
図2に示す表側の線状結合部11と裏側の点状結合部22とを連結する部位(a)では、
図5(a)に示すように連結糸3が厚さ方向に沿った縦向きの状態になり、また
図2に示す表側の線状結合部11と裏側の菱形の網目孔を構成する紐体S’とを連結する部位(b)では、
図5(b)に示すように連結糸3は若干斜めに傾いた状態となる。
【0034】
また
図2に示す表側の六角形の網目孔を構成する紐体Sと裏側の菱形の網目孔を構成する紐体S’とを連結する部位(c)では、
図5(c)に示すように連結糸3は斜めに傾いた状態となる。また
図2に示す表側の六角形の網目孔を構成する紐体Sと裏側の線状結合部21とを連結する部位(d)では、
図5(d)に示すように連結糸3は若干斜めに傾いた状態となり、また
図2に示す表側の点状結合部12と裏側の線状結合部21とを連結する部位(e)では、
図5(e)に示すように連結糸3が厚さ方向に沿った縦向きの状態になる。
【0035】
『第二実施形態』
「自立型立体構造ネットの構成」
[4]第一線状結合部と第二線状結合部
本発明の
第二実施形態について
図6及び
図7に基づいて説明する。本実施形態では、
図6に示すように表側の地編組織1に、ウェール方向に並ぶ一対の紐体S・S同士を線状に結合した第一線状結合部14・14…をコース方向に所定間隔で設けると共に、裏側の地編組織2にも、同様にウェール方向に並ぶ一対の紐体S’・S’同士を線状に結合した線状結合部24・24…をコース方向に所定間隔で設けている。
【0036】
一方、表側の地編組織1には、コース方向に並ぶ各第一線状結合部14・14の間に、ウェール方向に隣り合う第一線状結合部14・14の一方の紐体S・S同士を第一線状結合部14よりも短い線状に結合した第二線状結合部15・15…を設けると共に、裏側の地編組織2にも、同様にコース方向に並ぶ各第一線状結合部24・24の間に、ウェール方向に隣り合う線状結合部24・24の一方の紐体S’・S’同士を第一線状結合部24よりも短い線状に結合した第二線状結合部25を設けている。
【0037】
そして、
図7に示すように、上記表側の第一線状結合部14と裏側の第二線状結合部25、及び表側の第二線状結合部15と裏側の第一線状結合部24をそれぞれ対向する位置に設けることで、二重編地をウェール方向に拡げたときに表側の地編組織1の六角形状の網目孔13(P’)と裏側の地編組織2の形状の異なる六角形状の網目孔23(Q’)、表側の地編組織1の六角形状の網目孔13(Q’)と裏側の地編組織2の形状の異なる六角形状の網目孔23(P’)がそれぞれ対向位置に配置されるようにしている。
【0038】
上記のように立体構造ネットNを構成することにより、第一実施形態と同様、立体構造ネットNをウェール方向に拡げた状態で気密シート材間に配置した際に、紐体S・S’を連結糸3で繋いだ帯状部分が倒れ難くなるため、立体構造ネットNの形態を安定化させることができる。なおその他の構成については、第一実施形態と同様である。
【0039】
『第三実施形態』
「自立型立体構造ネットの構成」
[5]非連結部について
本発明の第三実施形態について
図8に基づいて説明する。本実施形態では、表裏の地編組織1・2の一部において、表裏の紐体S・S’同士が連結糸3で繋がっていない非連結部Aを、紐体Sの線状結合部11と点状結合部12間の半分以上の区間にわたって設けている。これにより立体構造ネットNの軽量化を図るだけでなくスペーサ
として使用した際に透光量を増やすための空隙部を形成することができ、必要に応じて冷温水や冷温風を内側に流す温度調節用パイプを非連結部Aに挿通することもできる。また非連結部Aは、立体構造ネットNの幅寸法の目印として利用することもできる。
【0040】
また本実施形態では、表裏の紐体S・S’を連結糸3で繋いだ連結部と非連結部Aとを、同じ割合で形成しているが、立体構造ネットNの形態安定性を高めるために連結部の割合を非連結部Aより大きくすることもでき、また立体構造ネットNの透光性を高めるために非連結部Aの割合を連結部より大きくすることもできる。また立体構造ネットNの端側に非連結部を設ければ、その端側部位の繊維量を減らすことができるため、スプリング等を備えた押え具で立体構造ネットNの端部を潰してしっかりと固定できる。なおその他の構成については、第一実施形態と同様である。なお第二実施形態の立体構造ネットNの構成を採用する場合には、連結部Aを紐体Sの第一線状結合部14と第二線状結合部15間の半分以上の区間にわたって設けることで同様の効果が得られる。
【0041】
『第四実施形態』
「自立型立体構造ネットの構成」
[6]地編組織の補強紐体について
本発明の第四実施形態について
図9に基づいて説明する。本実施形態では、表裏の地編組織1・2において、補強紐体Rとその両側に配置される紐体S・Sとを線状または点状に連結して、この補強紐体Rが、二重編地Nをウェール方向に拡げたときに紐体S・S間の網目孔13・23内を通過するようにコース方向に直線状に延びた状態となっている。これにより立体構造ネットNのコース方向の寸法安定性を高めることもでき、また畳まれた状態の立体構造ネットNをウェール方向に拡げる際に、両側の補強紐体R・Rを手で持って容易に作業することができる。
【0042】
なお上記補強紐体Rについては、地編組織1・2の紐体S・Sとは別部材の挿入糸として構成することもでき、その場合には、立体構造ネットNの線状連結部や点状連結部に沿って補強紐体Rをコース方向に挿入して編成できる。また補強紐体Rは、地編組織1・2の複数本の紐体S・S…を連結して構成することもできる。
【0043】
『第五実施形態』
「保温構造体の構成及び施工方法」
[1]保温構造体の基本構成について
本発明の第五実施形態について
図10に基づいて説明する。本実施形態では、構造体の骨組みとなる枠体Fに第一気密シート材H
1を張設すると共に、この第一気密シート材H
1上にスペーサとして立体構造ネットNを重ねて張設し、更にこの立体構造ネットN上に第二気密シート材H
2を重ねて張設して保温構造体Kを構成している。これにより第一気密シート材H
1と第二気密シート材H
2の間に立体構造ネットNの厚みに応じた任意厚さの空気層を作出できる。
【0044】
これにより、シート張り構造物の天井部分や側壁部分の断熱性を高めることができる。また立体構造ネットNによって、シート張り部分の強度を高めることもできる。なお本実施形態では、トンネルハウス型のシート張り構造物としているが、大型のビニルハウスやテント型、ドーム型のシート張り構造物、その他の建築物に応用することもできる。
【0045】
[2]枠体について
次に上記保温構造体Kの各構成要素について別個に説明する。まず枠体Fに関しては、本実施例では
、アーチパイプを奥行き方向に複数並べて設置すると共に、気密シート材と立体構造ネットNの両端を棒体に巻き付けて固定している。なお保温構造体Kを大型のビニルハウスとする場合には、アーチパイプを直管から成る母屋パイプで連結すると共に、両端に設置されたアーチパイプの内側に直管から成る支柱や水平梁を組んで小屋サイズの構造物を構築することもできる。また保温構造体Kをその他の建築物とする場合には、枠体Fに鉄骨等を使用することもできる。
【0046】
[3]気密シート材について
次に上記気密シート材(第一気密シート材H
1及び第二気密シート材H
2)に関しては、本実施形態では、農業用のポリオレフィン系フィルムを使用しているが、気密性を有する合成樹脂シートであればよく、例えば、ポリ塩化ビニルフィルムやフッ素樹脂フィルム、樹脂を含浸させた帆布等を気密シート材として使用することもできる。また気密シート材は柔軟な樹脂フィルムを好適に使用することができるが、硬質なプラスチック製薄板を使用することもできる。
【0047】
また本実施形態では、上記気密シート材に採光が可能な白色の半透明フィルムを使用しているが、全波長域または特定波長域の光透過性を考慮して透明度や色を変更することもできる。また、上記気密シート材に関しては、気密性を有するシート材であれば、非通気加工を施した布帛や不織布を使用することもできる。また上記第一気密シート材H
1及び第二気密シート材H
2に異なるシート材料を使用することもできる。
【0048】
[4]立体構造ネットについて
また上記立体構造ネットNに関しては、第一実施形態から第五実施形態の立体構造ネットNを適宜使用することができる。なお立体構造ネットNの網目サイズが大きくなるように表裏の地編組織を編成すれば、その分だけ二重編地の糸使用量を抑えることができるため、立体構造ネットNの面積当たりのコストや重量を低減できる。また立体構造ネットNの網目サイズを大きく形成すれば、立体構造ネットNの光透過性を高めることができる。また網目サイズを大きくする場合でも、連結糸3に比較的剛性の大きいモノフィラメント糸を使用することで、充分な形態安定性や弾力性が得られる。
【0049】
また本実施形態では、不使用時に立体構造ネットNの網目を閉じてコンパクトに収納、保管または運搬することができる。なおコンパクト化した立体構造ネットNは、引き伸ばすだけで簡単に網目を開くことができるため、張設時の作業も容易となる。なお断熱効果のある空気層を形成するために、立体構造ネットNの厚さを少なくとも3.0mm以上とすることが望ましい。
【0050】
「保温構造体の施工方法」
次に、上記保温構造体Kの施工方法について説明する。本実施形態では、まず構造物の骨組みとなる枠体Fを組み上げた後、この枠体F上に第一気密シート材H
1を張設する。そして、上記第一気密シート材H
1を張設した後、第一気密シート材H
1上に、立体構造ネットNを重ねて張設する。そして最後に、上記立体構造ネットN上に、第一気密シート材H
1と同じように第二気密シート材H
2を重ねて張設する。これにより、上記第一気密シート材H
1と第二気密シート材H
2の間に立体構造ネットNの厚みに応じた任意厚さの空気層を作出できる。
【0051】
なお、上記気密シート材や立体構造ネットNの張り方や固定手段については、枠体Fの形状に合った方法を自由に選択することができるが、具体的には、農業用ハウスのバンド状のシート押さえ具(ハウスバンド)を使用して、気密シート材やスペーサ部材2をアーチパイプ上に安定して固定することもできる。また立体構造ネットNの端側に連結糸のない紐体のみを形成して、その紐体を利用して固定することもできる。
【0052】
『第六実施形態』
「保温構造体の構成」
[1]保温構造体の基本構成について
次に本発明の第六実施形態について
図11に基づいて説明する。本実施形態では、第一気密シート材H
1と第二気密シート材H
2の間に立体構造ネットNを配置すると共に、矩形型の枠体Fに、第一気密シート材H
1、第二気密シート材H
2、及び立体構造ネットNの外縁部を潰して固定することでパネル状の保温構造体Kを構成している。これにより、第一気密シート材H
1と第二気密シート材H
2の間に立体構造ネットNの厚みに応じた任意厚さの空気層を作出した中空板を作製できる。
【0053】
また、上記パネル状の保温構造体Kに関しては、構造物(例えば農業用ハウスやテントハウス)の壁材や天井材、ドア材、換気口等に好適に使用できる他、構造物内に敷設するマット材や断熱用具として使用することもできる。また気密シート材には、硬い薄板材を使用することもできる。またパネル状の保温構造体Kは、熱プレス成形等により気密シート材と立体構造ネットNを一体化することもできる。