(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
二つの円の一部を重ね合わせた断面形状のポンプ室を形成するように、シリンダ部、該シリンダ部の一方の端面に設けられた一方の端壁部、及び該シリンダ部の他方の端面に設けられた他方の端壁部を備え、
前記ポンプ室内で平行に配されて反対方向に同一速度で回転される二つの回転軸と、
該二つの回転軸のそれぞれに設けられて前記ポンプ室内に配され、相互に非接触状態で回転されて吸入した気体を圧縮して排気できるように鉤形の爪部が形成された二つのロータと、
前記一方の端壁部と前記他方の端壁部との少なくともどちらかの部位であって、前記ポンプ室内における気体が圧縮される部位に面する位置に、開口されて設けられた排気側開口部とを備えるクローポンプであって、
前記排気側開口部が、前記二つのロータの前記爪部同士によって気体の圧縮比が最大化する前段で前記ポンプ室の外部に連通される前段通気口と、前記二つのロータの前記爪部同士によって前記前段よりも気体の圧縮比が最大化する段階を含んで前記ポンプ室の外部へ排気するように連通される後段排気口とによって設けられ、
前記後段排気口が前記ポンプ室の外部に連通されて気体の圧縮比が最大化する段階で、前記前段通気口が前記ロータによって閉じられるように設けられていることを特徴とするクローポンプ。
前記前段通気口と前記後段排気口とが、前記回転軸の軸心の延長方向に重ね合わせて見た状態の形態について、両者が重なり合わないように分断された形態に設けられていることを特徴とする請求項2記載のクローポンプ。
前記前段通気口と前記後段排気口とが、前記回転軸の軸心の延長方向に重ね合わせて見た状態の形態について、両者が仮想の一つの前記排気側開口部を分割して形成された形態に設けられていることを特徴とする請求項2記載のクローポンプ。
前記前段通気口と前記後段排気口とが、前記回転軸の軸心の延長方向に重ね合わせて見た状態の形態について、両者が前記後段排気口の圧縮比の低い側の一部で重なり合う形態に設けられていることを特徴とする請求項2記載のクローポンプ。
前記前段通気口と前記後段排気口とが、前記回転軸の軸心の延長方向に重ね合わせて見た状態の形態について、両者の圧縮比が低い側の口縁を形成する境界線が一致された形状に重なり合う形態に設けられていることを特徴とする請求項2記載のクローポンプ。
前記二つのロータが、前記二つの回転軸の一端にそれぞれ配されて片持ち状態に支持され、前記一方の端壁部が、前記二つの回転軸を支持する軸受部の側に位置することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のクローポンプ。
前記前段通気口と前記後段排気口とが、前記回転軸の軸心の延長方向に重ね合わせて見た状態の形態について、両者が重なり合わないように分断された形態に設けられ、前記前段通気口と前記後段排気口との両者が、前記一方の端壁部と前記他方の端壁部とのどちらかに設けられていることを特徴とする請求項1記載のクローポンプ。
前記二つのロータが、前記二つの回転軸の一端に配されて片持ち状態に支持され、前記前段通気口と前記後段排気口との両者が、前記二つの回転軸を支持する軸受部の側に位置する前記一方の端壁部とは反対側に位置する前記他方の端壁部に設けられていることを特徴とする請求項8記載のクローポンプ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クローポンプに関して解決しようとする問題点は、真空ポンプとして、到達真空度が絶対真空により近い値となる真空度が高い範囲で使用される場合、ポンプ室が過熱されてしまい、ポンプ効率を向上させることが難しいことにある。すなわち、クローポンプでは、真空度が高い範囲で使用される場合、ポンプ室内の圧力が外部の圧力(例えば大気圧)よりも低下するため、排気口において排出された排気が逆流してしまうことがある。そして、その逆流された排気は、ポンプ室内で圧縮されることで加熱されて排出されたもので、元々高温であって、逆流することで流入したポンプ室内で再度圧縮されて再度加熱される。その結果、ポンプ室がさらに過熱されることになる。ポンプ室が過熱されると、熱膨張によって、回転するロータ同士やそのロータとポンプ室を形成するシリンダなどの構成部材とが干渉することになり、故障の原因となる。これを防止するためには、構成部材の相互のクリアランスを大きくする必要性が生じ、ポンプ性能を高めることができない。
【0006】
そこで本発明の目的は、真空ポンプとして、真空度が高い範囲で使用される場合でも、ポンプ室が過熱されることを防止でき、ポンプ効率を向上させることができるクローポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明に係るクローポンプの一形態によれば、二つの円の一部を重ね合わせた断面形状のポンプ室を形成するように、シリンダ部、該シリンダ部の一方の端面に設けられた一方の端壁部、及び該シリンダ部の他方の端面に設けられた他方の端壁部を備え、前記ポンプ室内で平行に配されて反対方向に同一速度で回転される二つの回転軸と、該二つの回転軸のそれぞれに設けられて前記ポンプ室内に配され、相互に非接触状態で回転されて吸入した気体を圧縮して排気できるように鉤形の爪部が形成された二つのロータと、前記一方の端壁部と前記他方の端壁部との少なくともどちらかの部位であって、前記ポンプ室内における気体が圧縮される部位に面する位置に、開口されて設けられた排気側開口部とを備えるクローポンプであって、前記排気側開口部が、前記二つのロータの前記爪部同士によって気体の圧縮比が最大化する前段で前記ポンプ室の外部に連通される前段通気口と、前記二つのロータの前記爪部同士によって前記前段よりも気体の圧縮比が最大化する段階を含んで前記ポンプ室の外部へ排気するように連通される後段排気口とによって設けられ、前記後段排気口が前記ポンプ室の外部に連通されて気体の圧縮比が最大化する段階で、前記前段通気口が前記ロータによって閉じられるように設けられている。
【0008】
また、本発明に係るクローポンプの一形態によれば、前記前段通気口が前記一方の端壁部に設けられ、前記後段排気口が前記他方の端壁部に設けられていることを特徴とすることができる。
【0009】
また、本発明に係るクローポンプの一形態によれば、前記二つのロータが、前記二つの回転軸の一端にそれぞれ配されて片持ち状態に支持され、前記一方の端壁部が、前記二つの回転軸を支持する軸受部の側に位置することを特徴とすることができる。
【0010】
また、本発明に係るクローポンプの一形態によれば、前記前段通気口と前記後段排気口とが、前記回転軸の軸心の延長方向に重ね合わせて見た状態の形態について、両者が重なり合わないように分断された形態に設けられていることを特徴とすることができる。
【0011】
また、本発明に係るクローポンプの一形態によれば、前記前段通気口と前記後段排気口とが、前記回転軸の軸心の延長方向に重ね合わせて見た状態の形態について、両者が仮想の一つの前記排気側開口部を分割して形成された形態に設けられていることを特徴とすることができる。
【0012】
また、本発明に係るクローポンプの一形態によれば、前記前段通気口と前記後段排気口とが、前記回転軸の軸心の延長方向に重ね合わせて見た状態の形態について、両者が前記後段排気口の圧縮比の低い側の一部で重なり合う形態に設けられていることを特徴とすることができる。
【0013】
また、本発明に係るクローポンプの一形態によれば、前記前段通気口と前記後段排気口とが、前記回転軸の軸心の延長方向に重ね合わせて見た状態の形態について、両者の圧縮比が低い側の口縁を形成する境界線が一致された形状に重なり合う形態に設けられていることを特徴とすることができる。
【0014】
また、本発明に係るクローポンプの一形態によれば、前記前段通気口と前記後段排気口とが、前記回転軸の軸心の延長方向に重ね合わせて見た状態の形態について、両者が重なり合わないように分断された形態に設けられ、前記前段通気口と前記後段排気口との両者が、前記一方の端壁部と前記他方の端壁部とのどちらかに設けられていることを特徴とすることができる。
【0015】
また、本発明に係るクローポンプの一形態によれば、前記二つのロータが、前記二つの回転軸の一端に配されて片持ち状態に支持され、前記前段通気口と前記後段排気口との両者が、前記二つの回転軸を支持する軸受部の側に位置する前記一方の端壁部とは反対側に位置する前記他方の端壁部に設けられていることを特徴とすることができる。
【0016】
また、本発明に係るクローポンプの一形態によれば、前記ポンプ室を形成するようにシリンダ部及び該シリンダ部の両端面のそれぞれに設けられた端壁部によって設けられたポンプ室ボディ部と、前記二つのロータが前記二つの回転軸の一方の端にそれぞれ配されて片持ち状態に支持されるように該二つの回転軸を軸受けする軸受部が設けられた軸受部ボディ部との間に、冷却用の隙間が形成されるように、ポンプ本体が分割された構造に設けられていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るクローポンプによれば、真空ポンプとして、真空度が高い範囲で使用される場合でも、ポンプ室が過熱されることを防止でき、ポンプ効率を格段に向上させることができるという特別有利な効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るクローポンプの形態例を添付図面(
図1〜7)に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1及び
図3などに示すように、本発明に係るクローポンプでは、二つの円の一部を重ね合わせた断面形状のポンプ室10(
図3など参照)を形成するように、シリンダ部10a、そのシリンダ部10aの一方の端面に設けられた一方の端壁部10b、及びそのシリンダ部10aの他方の端面に設けられた他方の端壁部10cを備えている。
【0021】
また、
図3などに示すように、二つの回転軸20A、20Bは、ポンプ室10内で平行に配されて、反対方向に同一速度で回転されるように設けられている。本形態例では、この二つの回転軸20A、20Bには、それぞれに歯車21A(駆動側歯車)、21B(従動側歯車)が一体的に固定されて設けられている。その一対の歯車21A、21Bは、軸受部ボディ部200に設けられたギヤボックス45内で噛合されている。
【0022】
また、
図3などに示すように、二つのロータ30A、30Bが、二つの回転軸20A、20Bのそれぞれに設けられてポンプ室10内に配され、相互に非接触状態で回転されて吸入した気体を圧縮して排気できるように鉤形の爪部が形成されている。
【0023】
また、各図に示すように、排気側開口部50が、一方の端壁部10bと他方の端壁部10cとの少なくともどちらかの部位であって、ポンプ室10内における気体が圧縮される部位に面する位置に、開口されて設けられている。これによって、二軸回転ポンプの一種であるクローポンプが、構成されている。なお、15は吸気口であり、ポンプ室10内における気体が圧縮されない部位に面する位置(本形態例ではシリンダ部10aを形成する壁部)に、開口されて設けられている。
【0024】
そして、本発明に係るクローポンプでは、排気側開口部50が、二つのロータ30A、30Bの前記爪部同士によって気体の圧縮比が最大化する前段でポンプ室10の外部に連通される前段通気口51と、二つのロータ30A、30Bの前記爪部同士によって前記前段よりも気体の圧縮比が最大化する段階を含んでポンプ室10の外部へ排気するように連通される後段排気口52とによって設けられている。なお、本形態例において、ポンプ室10の外部に連通される状態とは、外気である大気に連通・開放される状態になっている。
【0025】
この本発明に係るクローポンプによれば、真空ポンプとして、到達真空度が絶対真空により近い値となる真空度が高い範囲で使用される場合でも、ポンプ室が過熱されることを防止でき、ポンプ効率を格段に向上させることができる。すなわち、排気側開口部50が、別々に開口されて設けられた前段通気口51と後段排気口52とによって構成されている。このため、高い真空度で使用される場合、前段通気口51において、過熱されていない外気が吸入され、後段排気口52において、従来のような排気の逆流を減らすことができるため、ポンプ室が過熱されることを防止できる。
【0026】
つまり、本発明に係るクローポンプは、真空度が一定以上の高い範囲で使用される場合、ポンプ室の内部の圧縮がなされる部位であっても負圧になっていることがあり、前段通気口51が開くことで過熱されていない外気(例えば常温の大気圧の冷却用空気)が取り入れられる構成になっている。このため、後で開く後段排気口52で、過熱された気体(例えば空気)が逆流することを防止或いは抑制できることになり、ポンプ室の内部温度上昇を抑制できる。すなわち、前段通気口51を備える構成が、冷却二次吸気機構になっている。このように、冷却二次吸気がなされ、外気(冷却用空気)をポンプ室10の内部に取り込むことで、その見かけの空気量(体積)は逆流する空気量と同等であるため、動力が変化することはなく、ポンプ室10の内部温度を下げることができる。従って、クローポンプのメリットである高真空側での省エネルギー性を損ねることなく、ポンプ室10の過熱を抑制することができ、ポンプ性能を格段に高めることができる。
【0027】
なお、ポンプ室10の内部の圧縮がなされる部位に開口する通気口としては、ポンプサイクルの圧縮が始まる初期の段階である圧縮比が低い状況で外部に連通するように、シリンダ部10aの周壁部などに設けることも考えられる。しかしながら、そのように圧縮が始まる初期の段階で開口する通気口を通して空気が取り入れられた場合は、処理される空気量が増え過ぎて動力消費が大きくなる場合がある。
【0028】
また、
図1〜7に示した形態例では、
図3〜5などに示すように、ポンプ室10が、シリンダ部10aと一方の端壁部10bとが一体的に設けられたシリンダケース11と、他方の端壁部10cとして設けられたサイドプレート12とによって構成されたシリンダ構造壁によって形成されている。なお、本形態例では、ポンプ室10が、主に二つに分割した部材によって構成される構造となっているが、これに限定されず、例えばシリンダ部10aと一方の端壁部10bと他方の端壁部10cとの主に三つに分割した部材によって形成されても良いのは勿論である。
【0029】
さらに、本発明は、二つのロータ30A、30Bが片持ち状態に軸受・支持されている形態に限定されず、回転軸20A、20Bを両端で回転自在に軸受けする形態のクローポンプにも、適用できる構成になっている。
【0030】
また、本形態例では、
図1〜7に示すように、前段通気口51が一方の端壁部10bに設けられ、後段排気口52が他方の端壁部10cに設けられている。すなわち、一対の端壁部10b、10cの両方に、ポンプ室の外部である外気(本形態例では大気)に連通する開口が設けられている。これによれば、前段通気口51と後段排気口52とを、適正な形状で、適正な位置に、合理的且つ容易に設けることができる。従って、要求性能に対応したクローポンプに係る設計の自由度を、合理的に高めることができる。
【0031】
次に、本形態例のクローポンプによってポンプ室10が過熱されることを防止できるメカニズムについて、以下に詳細に説明する。
従来のクローポンプでは、ある一定真空度以上において排気口が開いた際、ポンプ室の内部は負圧であり、排気口から排気(例えば大気圧の空気)の逆流が発生してしまう。すなわち、従来のクローポンプでは、排気口に接続されている静音用マフラ内部(排気配管55を含む空間(
図13参照))の高温空気(排気)が、排気口から逆流することがあり、ポンプ室の内部温度が上昇する要因になっていた。そこで、従来は、逆流空気量の低減方法として、排気口の形状で排気の圧縮比を高くする方式を用いてきた。つまり、排気口の面積を小さく形成し、排気の圧縮比が所定以上に高くならないと、排気口が開かないように設計されてきた。このように、圧縮比を高く設定するほど逆流防止についての効果はあるが、低真空度側での稼働については動力上昇が大きくなり、使用できる真空度範囲が限定されていた。すなわち、排気口の面積を小さくすると、低真空度の範囲での使用では、排気の通気抵抗が大きくなるため、大きな動力が必要となってエネルギー消費量が増大してしまう。
【0032】
これに対し、本形態例のクローポンプでは、ポンプ室10の圧縮がなされる部位でも負圧になるような所定の高い真空度を発生させる範囲(例えば、60〜95kPaの範囲)で使用する場合において、シリンダケース11(一方の端壁部10b)側の冷却二次吸気口(前段通気口51)によって、冷却二次吸気を行い、サイドプレート12(他方の端壁部10c)側の排気口(後段排気口52)から、ポンプ排気を行う構成になっている。つまり、一方の端壁部10b側の開口である前段通気口51は、他方の端壁部10cの開口である後段排気口52に係る圧縮比と比較して同等かより低い圧縮比の際に外部と連通する形状に設けられている。
【0033】
この本形態例のクローポンプによれば、所定の高い真空度(例えば、80kPa以上)を発生させる際で、最終的な圧縮比よりも低い圧縮比である所定範囲の時点では、ポンプ室10の内部の圧縮がなされる部位においても、負圧が維持される。その段階で、前段通気口51が開いて外気(例えば大気圧の空気)に連通され、冷却二次吸気がなされることになる。その後、その吸気された冷却空気を加えて最終的な圧縮比まで圧縮されて、後段排気口52からの排気がなされることになる。つまり、後段排気口52が開いて最終的に排気がなされる段階では、冷却空気が吸気されているため、ポンプ室10の内部の圧縮がなされる部位での負圧が解消され、その後の排気工程で、後段排気口52での逆流が防止或いは抑制される。従って、ポンプ室10の過熱を抑制でき、実施例において約100℃もの温度上昇が抑制されることが確認されており、ポンプ効率を向上できる。
【0034】
以下、
図1〜6に示した形態例について、
図7に基づいて、ポンプ室10の過熱を防止できる排気の工程について、段階的に詳細に説明する。
図7(a)の段階では、前段通気口51及び後段排気口52の両方が一方のロータ30Aによって閉じられている。すなわち、一方のロータ30Aの本体大径域部が、重なった状態に位置し、前段通気口51及び後段排気口52の両方が塞がれた状態になっている。従って、この段階(区間)では、ポンプ室10の内部の圧縮がなされる部位について、排気も吸気も行われていない。
【0035】
図7(b)の段階では、前段通気口51が開かれており、後段排気口52が一方のロータ30Aによって閉じられている。すなわち、後段排気口52のみが、一方のロータ30Aの本体大径域部によって塞がれている。
本形態例の前段通気口51は、ポンプ室10の内部の圧縮がなされる部位であって、その圧縮比が例えば2.0から2.4までとなる部位に連通されている。そして、この前段通気口51は、以上に説明したように、ポンプ室10の内部の圧縮がなされる部位が負圧になっているときには、外気が吸気される冷却二次吸気口として機能する。
【0036】
また、本形態例の前段通気口51は、溝部51a(
図3など参照)とこれに連続する貫通孔部51bとによって形成されており、溝部51aの一部でも開くことによって、貫通孔部51bを介して外部と連通できる形状になっている。すなわち、部材の板厚の範囲で設けられた溝部51aと、その溝部51aに連続される部位であって外部まで連通するように貫通されて形成された貫通孔部51bとによって構成されている。なお、本形態例の貫通孔部51bは、下方に向かって外部側へ開口するように、L字状に屈曲された形状(
図1など参照)に設けられている。また、この貫通孔部51bの外部側に面する開口が、円形に形成されており、例えば、接続部として管などを接続できる形態としてもよい。そして、その円形の開口に、連通路としての管を接続できれば、後段排気口52とは離れた位置に、前段通気口51が外部に開放される部位を選択的に移動させることができ、より低温の空気などの気体を吸入できる。
【0037】
また、この前段通気口51は、低い真空度での運転中については、
図7(b)のように開口されることで、排気口として機能することになる。すなわち、ポンプ室10内が所定の高い真空度になるまでは、ポンプ室10の内部の圧縮がなされる部位は負圧になっておらず、その状況では、圧縮された気体(例えば空気)が、この前段通気口51からも排気されることになる。従って、そのときに、この前段通気口51は、前段排気口となっている。これによれば、排気の通気抵抗を低減できるため、動力の消費を抑制することができる。
【0038】
図7(c)の段階では、後段排気口52が開かれており、前段通気口51が一方のロータ30Aによって閉じられている。すなわち、前段通気口51の側だけが、一方のロータ30Aの爪部を含めた本体部によって閉じられている。また、一方のロータ30Aの本体小径域部によって、一方のロータ30Aと後段排気口52とが重ならないように位置しており、後段排気口52が開いた状態になっている。そして、その開かれた後段排気口52に連通しているポンプ室10の内部の圧縮がなされる部位は、前段通気口51で外気が吸入されて冷却された上で圧縮比が高くなり、外気と比較して高圧になるため、後段排気口52では逆流が生じることなく適切に排気がなされる。なお、本形態例の後段排気口52は、ポンプ室10の内部の圧縮がなされる部位であって、その圧縮比が例えば2.4以上又は3.0以上となる部位に連通されている。
これによれば、前述したように、ポンプ性能を格段に高めることができる。
【0039】
さらに、本形態例では、
図3などに示すように、二つのロータ30A、30Bが、それぞれ対応する二つの回転軸20A、20Bの一端に配されて片持ち状態に支持され、一方の端壁部10bが、二つの回転軸20A、20Bを支持する軸受部40の側に位置している。この構造によって、部品点数が少なくよりシンプルな片持ち支持のクローポンプが、適正に構成されている。
【0040】
図8は、排気側開口部50の第1例を示しており、以上に説明した形態例(
図1〜7)参照)に採用されている構成であって、その形態をより分かり易く見せるために、
図1〜7と比較して拡大すると共に、開口されたスペースをハッチングで記載してある。すなわち、この第1例では、前段通気口51と後段排気口52とが、回転軸20A、20Bの軸心の延長方向に重ね合わせて見た状態の形態について、両者が重なり合わないように分断された形態に設けられている。すなわち、前段通気口51と後段排気口52とが、両者が重なり合わないように、所定の僅かな間隔を置いて配されることで、分断された形態に設けられている。従って、この場合、
図7(b)に示すように、前段通気口51と後段排気口52とによって構成される排気側開口部50の連続性が一瞬途絶えることになっている。
【0041】
図9は、排気側開口部50の第2例を示しており、前段通気口51と後段排気口52とが、回転軸20A、20Bの軸心の延長方向に重ね合わせて見た状態の形態について、両者が仮想の一つの排気側開口部50を分割して形成された形態に設けられている。すなわち、前段通気口51と後段排気口52とが、仮想の一つの排気側開口部50を切り分けた形態に設けられることで、分割して形成された形態に設けられている。
【0042】
図10は、排気側開口部50の第3例を示しており、前段通気口51と後段排気口52とが、回転軸20A、20Bの軸心の延長方向に重ね合わせて見た状態の形態について、両者が後段排気口52の圧縮比の低い側の一部で重なり合う形態に設けられている。
【0043】
図11は、排気側開口部50の第4例を示しており、前段通気口51と後段排気口52とが、回転軸20A、20Bの軸心の延長方向に重ね合わせて見た状態の形態について、両者の圧縮比が低い側の口縁を形成する境界線50aが一致された形状に重なり合う形態に設けられている。
【0044】
なお、以上の排気側開口部50の形態例において、後段排気口52の開口面積が小さく形成されている場合ほど、高い真空度を発生させるクローポンプの性能をより向上できる。また、前段通気口51と後段排気口52とを合わせた開口面積が大きく形成されている場合ほど、より大きな風量を処理するクローポンプの性能を向上できる。
【0045】
また、本発明においては、
図12に示すように、前段通気口51と後段排気口52とが、回転軸20A、20Bの軸心の延長方向に重ね合わせて見た状態の形態について、両者が重なり合わないように分断された形態に設けられ、二つのロータ30A、30Bが、二つの回転軸20A、20Bの一端に配されて片持ち状態に支持され、前段通気口51と後段排気口52との両者が、二つの回転軸20A、20Bを支持する軸受部40の側に位置する一方の端壁部10bとは反対側に位置する他方の端壁部10cに設けられている構成にすることもできる。
【0046】
これによれば、端壁部の一面だけに、前段通気口51と後段排気口52とを合理的に配することができ、使用条件に合わせて最適な形態とすることができるなど、他の装置との関係を含めて、設計の自由度を高めることができる。すなわち、前段通気口51と後段排気口52との間に所定の間隔があるため、両者を分断でき、
図12に示すように、前段通気口51の外部への開口と、後段排気口52の外部への開口(排気配管55を介して設けられる開口)とを分離できる。このため、前段通気口51では、過熱されていない気体を吸気でき、上述したように、クローポンプの性能を向上できる。
【0047】
なお、本発明のクローポンプでは、以上の形態に限定されず、前段通気口51と後段排気口52との両者が一方の端壁部10bのみに配される形態、前段通気口51と後段排気口52との両者が一方の端壁部10bと他方の端壁部10cとの両方に配される形態、前段通気口51が両方の端壁部に配されて後段排気口52が片方の端壁部に配される形態、前段通気口51が片方の端壁部に配されて後段排気口52が両方の端壁部に配される形態のいずれかにすることも可能である。これらの形態は、種々の使用条件に応じて適宜選択的に採用すればよい。なお、前段通気口51や、後段排気口52を、両方の端壁部を配する場合、その大きさや形状又はその組合せは、使用条件によって適宜選択的に設計されればよく、同一形態とする必要がないのは勿論である。
【0048】
次に、
図13及び14に基づいて、本形態例のクローポンプの外装に係る冷却形態について説明する。
100はポンプ室ボディ部であり、このポンプ室ボディ部100は、ポンプ室10を形成するようにシリンダ部10a及びそのシリンダ部10aの両端面のそれぞれに設けられた端壁部10b、10cによって設けられている。
【0049】
200は軸受部ボディ部であり、この軸受部ボディ部200には、二つのロータ30A(駆動側ロータ)、30B(従動側ロータ)が二つの回転軸20A(駆動側回転軸)、20B(従動側回転軸)の一方の端にそれぞれ配されて片持ち状態に支持されるように、回転軸20A、20Bを軸受けする軸受部40が設けられている。この軸受部ボディ部200とポンプ室ボディ部100とによって、ポンプ本体が構成されている。
【0050】
そして、本発明に係るクローポンプは、そのポンプ室ボディ部100と軸受部ボディ部200との間に、冷却用の隙間60が形成されるように、そのポンプ室ボディ部100と軸受部ボディ部200とに、ポンプ本体が分割された構造に設けられている。
【0051】
本発明に係る回転ポンプによれば、駆動による発熱が軸受部ボディ部200に伝わることを低減し、軸受部40などを構成する機能部品を長寿命化することができるという特別有利な効果を奏する。すなわち、本発明によれば、ポンプ室ボディ部100と軸受部ボディ部200とに分割することにより、熱伝導を最小限に抑制できる。また、ポンプ室ボディ部100と軸受部ボディ部200との間に冷却風を流すことにより、熱伝達を抑制でき、放熱による冷却を促進できる。これによって、軸受部ボディ部200の温度上昇を抑制することができ、機能部品の長寿命化を実現できる。
【0052】
なお、機能部品とは、ベアリング41やオイルシール42を含む構成部材のことであり、消耗部品として扱われるものである。これらの機能部品の長寿命化を図ることで、ランニングコストを低減できる。
【0053】
また、本形態においては、
図1、2などに示すように、ポンプ室ボディ部100の部分と軸受部ボディ部200の部分の双方で対となるように、連結のための柱状連結部101、201(
図1〜3参照)が設けられている。この連結のために対をなす柱状連結部101、201は、4対が設けられ、本形態例では、
図3などに明らかなように、ボディの四隅に相当する部位に配された形態になっている。これによれば、ポンプ室ボディ部100と軸受部ボディ部200とを安定的に連結することができる。なお、本形態例の連結のための締結手段は、ボルトを用いた螺子結合になっている。ところで、本発明は本形態例に限定されるものではなく、冷却用の隙間60が形成される部分の形態については、一体的な構造で形成されていても良い。例えば、鋳物成型によって製造する場合は、中子によって、冷却用の隙間60が形成されるようにすればよい。
【0054】
また、本形態例では、回転軸20Aの他方の端と駆動モータ70の駆動軸71とを連結するカップリング部73(
図2参照)に、冷却風(
図13中の矢印参照)を発生させる送風羽根75が一体的に固定されて配され、
図13で示すように、その送風羽根75の回転によって発生された冷却風がポンプ室ボディ部100の表面を流れることでポンプ室10が冷却されるように、前記冷却風の流れを案内する送風ガイド部80が設けられている。これによれば、冷却風をポンプ室ボディ部100の表面へ効率良く当てることができ、冷却性能を高めることができる。
【0055】
さらに、本形態例では、送風ガイド部80には、前記冷却風がポンプ室ボディ部100の下側から上方へ吹き付けられてそのポンプ室ボディ部100の両方の端壁部10b、10cの表面を流れるように、軸受部ボディ部200及びポンプ室ボディ部100の下側に通路として形成され、前記冷却風の流れを案内する底部送風通路81が設けられている。
【0056】
これによれば、ポンプ室ボディ部100の両方の端壁部10b、10cを同時に冷やすことができ、排気配管55も冷やすことができるため、効率良く冷却できる。また、冷却空気の床の塵埃を舞い上げることのない合理的な流路を適正に構成できる。
【0057】
また、本形態例の送風ガイド部80は、
図13に示すように、ポンプ室ボディ部100、軸受部ボディ部200、及び送風羽根75が一体的に固定されて配されたカップリング部73(
図2参照)の全体を覆うように、板状部材によって形成されたボックス状カバー90によって構成されている。すなわち、ボックス状カバー90の送風羽根75の近傍に冷却用の空気が導入される吸入口91が設けられ、送風羽根75から排出された冷却風が、その方向を軸受部ボディ部200及びポンプ室ボディ部100の側へスムースに向けられるように、その冷却風の流れを案内する底部送風通路81が、板状部材によって下側に膨らんだ形態(流路の断面が広い形態)に設けられている。そして、ポンプ室ボディ部100の両方の端壁部10b、10cの表面を、冷却風の流れの流速を高めて通過させることで冷却性能を高めるために、底部送風通路81の流路がポンプ室ボディ部100に近づくに従って絞られた形態(流路の断面が狭い形態)になっている。そして、そのポンプ室ボディ部100の両方の端壁部10b、10cの表面を通過した冷却風が、下側から上側へスムースに吹き抜けるように、ボックス状カバー90の上部に排出口92と排出口93とが設けられている。なお、本形態例の吸入口91、排出口92及び排出口93はルーバー形状に設けられている。
【0058】
以上に説明した冷却構造によれば、クローポンプに、合理的に対応して適正に構成でき、冷却性能を高めることができる。また、本発明に係るクローポンプでは、ポンプ室10の下側が過熱し易く、その下側から冷却風を当てる構造を前述のように適切に形成できる。このため、ポンプ室10を効率よく冷却することができ、ポンプ性能を高めることができると共に、機能部品の長寿命化を実現できるという特別有利な効果を奏することができる。
【0059】
また、前段通気口51は、回転軸20A、20Bよりも下側に設けられているため、未だ加熱されていない冷却空気を吸入しやすいことになり、ポンプ室10の内部を効率よく冷却できる。このため、ポンプ性能を向上できる。
【0060】
さらに、本形態例では、
図3及び4に示すように、冷却用の隙間60を形成する一方の端壁部10bとこれに対面する軸受部40を構成する壁部との表面に、冷却用リブ17、47が設けられている。これらの冷却用リブ17、47は、上下方向に延びる形態に設けられており、下から上へ流れる冷却風の流れを妨げることなく案内でき、冷却効率を向上できる。
【0061】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【解決手段】シリンダ部10a、一方の端壁部10b、及び他方の端壁部10cで形成されたポンプ室10と、二つの回転軸20A、20Bと、吸入した気体を圧縮して排気できるように鉤形の爪部が形成された二つのロータ30A、30Bと、一方の端壁部10bと他方の端壁部10cとの少なくともどちらかの部位であって、ポンプ室10内における気体が圧縮される部位に面する位置に、開口されて設けられた排気側開口部50とを備え、その排気側開口部50が、気体の圧縮比が最大化する前段でポンプ室10の外部に連通される前段通気口51と、前記前段よりも気体の圧縮比が最大化する段階を含んでポンプ室10の外部へ排気するように連通される後段排気口52とによって設けられている。