(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6845612
(24)【登録日】2021年3月2日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】工作機械における機械精度の測定方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/00 20060101AFI20210308BHJP
B23B 25/06 20060101ALI20210308BHJP
G01B 5/00 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
B23Q17/00 A
B23B25/06
G01B5/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-43336(P2016-43336)
(22)【出願日】2016年3月7日
(65)【公開番号】特開2017-159376(P2017-159376A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2019年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000212566
【氏名又は名称】中村留精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078673
【弁理士】
【氏名又は名称】西 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】酒井 友基
【審査官】
中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−119784(JP,A)
【文献】
特開平02−306101(JP,A)
【文献】
特開2011−173234(JP,A)
【文献】
特開2005−121556(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0235636(US,A1)
【文献】
特開2011−027674(JP,A)
【文献】
特開2015−203567(JP,A)
【文献】
特開2001−330428(JP,A)
【文献】
特開2010−108085(JP,A)
【文献】
特開2011−038902(JP,A)
【文献】
特開2011−257302(JP,A)
【文献】
特開2012−079358(JP,A)
【文献】
特開2007−044802(JP,A)
【文献】
特開2014−075031(JP,A)
【文献】
特開2015−109023(JP,A)
【文献】
特開2015−158387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 1/00−25/06
B23Q 15/00−15/28
B23Q 17/00−23/00
G01B 5/00−5/30
G01B 21/00−21/32
G05B 19/18−19/416
G05B 19/42−19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する3方向の直線軸と当該直線軸のいずれかを旋回中心軸とする旋回軸との制御軸を備えた機械の所定位置に設置した基準球の中心座標を5軸幾何誤差測定法における前記基準球と前記旋回軸回りに旋回しかつ前記3方向の直線軸方向に移動する部材に装着したタッチプローブの先端球との接触により求めて当該中心座標を基準として機械精度を測定する工作機械の機械精度の測定方法であって、
前記基準球と先端球とを複数回接触させるための移動動作のそれぞれを前記移動する部材の前記3方向のいずれか一の直線軸方向の移動により行う前記測定方法において、
前記基準球を検出するタッチプローブの傾斜角があらかじめ定めた傾斜角に達したときに5軸幾何誤差測定法における測定平面及び測定軸の方向を前記3方向の一方から他方に切り替えることを特徴とする、工作機械における機械精度の測定方法。
【請求項2】
前記測定平面を基準球の中心が位置すると推定される平面から測定軸方向に(R+r)sinθ移動した平面として5軸幾何誤差測定を行うことを特徴とする、請求項1記載の機械精度の測定方法。ただし、Rは前記基準球の半径、rは前記タッチプローブの先端球の半径、θは前記刃物台の旋回角である。
【請求項3】
互いに直交する3方向の直線軸方向に移動可能でかつ当該直線軸のいずれかを旋回中心軸とする旋回軸回りに旋回可能な刃物台に装着したタッチプローブで所定位置に設置した基準球を検出することにより当該刃物台の旋回角の精度を計測する工作機械の機械精度の測定装置において、
刃物台の旋回原点角に近い角度範囲で前記刃物台の前記3方向のいずれか一の直線軸方向の移動により前記基準球と前記タッチプローブの先端球とを接触させて前記基準球の中心位置を5軸幾何誤差測定法により検出する第1測定手段と、
第1測定手段で用いた第1測定平面に直交する第1測定軸と第1測定平面の一方の軸とを含む平面を第2測定平面としこれに直交する軸を第2測定軸として、前記刃物台の前記3方向のいずれか一の直線軸方向の移動により前記基準球と前記タッチプローブの先端球とを接触させて前記基準球の中心位置を5軸幾何誤差測定法により検出する第2測定手段と、
前記刃物台の旋回角の予め定めた角度位置で第1測定手段と第2測定手段とを切り替える切替手段とを備えている、
工作機械における機械精度の測定装置。
【請求項4】
前記タッチプローブの先端球と基準球とが当接する前に当該タッチプローブの柄杆と基準球とが当接しない位置に前記測定平面を前記測定軸方向に移動する測定平面移動手段を備えている、請求項3記載の機械精度の測定装置。
【請求項5】
前記測定平面を基準球の中心が位置すると推定される平面から測定軸方向に(R+r)sinθ移動した平面とする測定平面移動手段を備えている、請求項3記載の機械精度の測定装置。ただし、Rは前記基準球の半径、rは前記タッチプローブの先端球の半径、θは前記刃物台の旋回角である。
【請求項6】
前記刃物台が、B軸旋回可能な刃物台を備えた旋盤の当該B軸旋回可能な刃物台である、請求項3、4又は5記載の機械精度の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械の機械精度(校正すべき誤差。以下、「機械誤差」とも言う。)の測定方法及び測定装置に関するもので、例えば直線3軸と回転2軸を備えた多軸構成の機械において、5軸幾何誤差測定法(以下、「5軸測定法」と言う。)により旋回中心のずれを測定するのに用いる方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工作機械の加工において、近年、ワークの形状が複雑になっており、加工時間の短縮や加工精度の向上を目的として、5軸同時制御による加工が行われるようになっている。同時に制御する加工軸の数が多くなると、2軸間の傾きや旋回軸の中心位置のずれなど、一般的に幾何誤差と言われる誤差が問題になり、完成した工作機械の機械誤差をより高精度に測定する必要が生ずる。
【0003】
図8は、マシニングセンタのテーブル42の旋回軸の中心位置のずれを5軸測定法を用いて計測する例を模式的に示した図である。テーブル42の外周部に基準球2を固定し、刃物台43に設けられている工具軸41にタッチプローブ1を装着する。そして、テーブル42を所定角度(例えば5度)ずつ回転させた位置でタッチプローブ1を5方向から基準球2に接触して基準球2の中心座標を求める。
【0004】
マシニングセンタでは、テーブル42の旋回はC軸(Z軸回り)が一般的であり、テーブル42の上面はX‐Y平面である。この場合の5方向は、−Y、+Y、−X、+X及び+Zの5方向である(
図8参照)。
【0005】
刃物台43に柄杆12がZ軸方向に延在するようにタッチプローブ1を装着してやれば、テーブル42がどの位置に旋回してもタッチプローブの先端球11を
図9で示した5方向の位置に接触させることができる。
【0006】
このような手順でタッチプローブを基準球に接触させて基準球の中心座標を計測し、その計測値から機械誤差を演算するプログラムは、例えばタッチプローブのメーカーによって提供されており、従来からマシニングセンタの機械精度の測定に用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
マシニングセンタに用いられている上記の機械精度の測定方法をB軸旋回可能な刃物台を備えた旋盤(複合旋盤)におけるB軸旋回角の精度測定に利用しようとすると、測定可能な旋回角の範囲が制限されるという問題が生ずる。
【0008】
すなわち、旋盤のB軸の測定においては、タッチプローブの先端球11や基準球2の大きさにもよるが、旋回角が40度程度の角度を超える角度では、
図6に示すように、タッチプローブの先端球11が基準球2に接触する前にタッチプローブの柄杆12が基準球2に当接して、測定ができなくなる。
【0009】
すなわち、旋回角の精度を測定しようとする刃物台の旋回に伴ってタッチプローブも旋回する場合には、タッチプローブのメーカーから提供されている測定プログラムを用いてマシニングセンタで行われているような機械精度の自動計測を行うことはできなかった。
【0010】
また、測定不能な角度範囲においては、測定可能な範囲の測定値から類推して基準球の中心を求めるという方法も考えられるが、そのような方法では、測定精度が大幅に低下してしまうという問題があった。
【0011】
この発明は、上記のような問題点を解決して、タッチプローブが装着されている刃物台の旋回中心の機械誤差などを旋回角の角度範囲の限定を受けないで高い精度で測定することができる方法及び装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明では、タッチプローブ1の旋回角θの範囲に応じて5軸測定における測定平面P(Pa、Pb)及び測定軸A(Aa、Ab)の方向を切り替える。また、必要に応じて、測定平面Pの測定軸A方向の位置を基準球2とタッチプローブ1の柄杆12とが干渉しない位置に設定して5軸測定を行う。例えば、推定される基準球2の中心Oとタッチプローブの先端球11の中心Qを結ぶ線かタッチプローブの柄杆12に対して垂直となる位置に測定平面Pを設定して5軸測定を行う。
【0013】
すなわち、この発明では、計測時のタッチプローブ1の基準方向からの傾斜角θに応じてタッチプローブの柄杆12と基準球2とが干渉しない位置で、かつ当該傾斜角θの角度範囲に応じた測定方向で自動計測を行うことで、上記課題を解決したものである。
【0014】
この発明の工作機械における機械精度の測定装置は、旋回可能な刃物台3に装着したタッチプローブ1で所定位置に設置した基準球2を検出することにより、刃物台3の旋回中心の位置ずれを計測するための、一般的にはソフトウエアで構成される装置である。
【0015】
この発明の測定装置は、刃物台3の旋回原点角に近い角度範囲で基準球2の中心位置を5軸測定法により測定する第1測定手段4aと、第1測定手段4aで用いた第1測定平面Paに直交する第1測定軸Aaと第1測定平面Paの一方の軸とを含む平面を第2測定平面Pbとしこれに直交する軸を第2測定軸Abとして基準球2の中心位置を5軸測定法により検出する第2測定手段4bと、刃物台3の旋回角の予め定めた角度位置で第1測定手段4aと第2測定手段4bとを切り替える切替手段S(
図7参照)とを備えている。
【0016】
上記装置によれば、刃物台3の旋回角θに応じて測定方法が切り替わるので、計測範囲の制限がなくなり、広い角度範囲にわたって精度の良い計測が可能となる。
【0017】
基準球2の半径Rに比較してタッチプローブ1の先端球11の半径rが小さいときには、前記第1測定手段4aと第2測定手段4bとのいずれか又は両方において、タッチプローブの先端球11が基準球2に接触する前にタッチプローブの柄杆12が基準球2に当接して5軸測定法による測定が不能になることがある。この問題は、タッチプローブの柄杆12と基準球2とが当接しない位置に測定平面Pを測定軸Aの方向に移動する測定平面移動手段5(5a、5b)を設けることにより、回避することができる。
【0018】
最も簡単で確実な測定平面移動手段5は、測定平面Pを基準球2の中心が位置すると推定される平面P0(P0a、P0b)から測定軸A方向に(R+r)sinθ移動した平面とする手段である。すなわち、基準球2とタッチプローブの柄杆12を結ぶ直線が、タッチプローブの柄杆12に対して垂直になる位置で計測することにより、柄杆12との干渉を生ずることなく基準球2の中心Oを検出できる。
【0019】
この発明の測定装置は、B軸旋回可能な刃物台3を備えた旋盤における当該刃物台3のB軸旋回における機械精度の計測に特に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明では、計測時のタッチプローブの角度に応じて基準球の計測方向が自動的に選択され、必要なときには基準球の計測位置がタッチプローブの柄杆と基準球とが干渉しない位置に設定されるため、タッチプローブの全ての角度で基準球の5軸測定が可能となり、計測精度、すなわち機械の校正精度が向上する。
【0021】
この発明により、マシニングセンタで実績のあるテーブルの旋回中心位置ずれの精度測定を旋盤の刃物台の旋回中心位置ずれの精度測定に応用することができるなど、旋回軸を使用した機械誤差の測定において技術的に安定した高い精度での機械精度の自動計測が可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】旋盤のB軸旋回の機械精度を測定している状態を模式的に示した斜視図
【
図8】マシニングセンタのB軸旋回の機械精度を測定している状態を模式的に示した斜視図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照してこの発明の実施形態を説明する。
図1は、この発明の測定装置を用いてB軸旋回可能な刃物台3を有する旋盤のB軸旋回の機械精度を測定している状態を模式的に示した斜視図である。図の刃物台3は、Z、X、Yの3軸方向に移動可能で、かつB軸(Y軸回り)旋回可能な回転工具軸31を備えている。回転工具軸31の原点方向(B軸原点)は、X軸方向である。基準球2は、刃物台3に対して相対的に不動の部材、例えば主軸台に固定されている。
【0024】
旋盤の制御器10は、刃物台3の制御部9を含んでいる。旋盤の制御器10に登録した図示実施例の測定装置は、切替手段Sを含む自動計測手順を記録したメインプログラム6と、第1測定プログラム4aと、第2測定プログラム4bとを備えている。第1測定プログラム4aは、第1測定平面移動ステップ5aを含んでおり、第2測定プログラム4bは、第2測定平面移動ステップ5bを含んでいる。
【0025】
測定プログラム4は、基準球2を5方向から計測してその中心座標を検出するプログラムであり、測定平面移動ステップ5(5a、5b)は、基準球2とタッチプローブの柄杆12とが干渉しない位置に5軸測定の測定平面Pを設定するプログラムである。第1測定プログラム4a及び当該プログラムに含まれる中心座標演算プログラム7aは、従来、マシニングセンタで使用されているものをそのまま用いることができる。
【0026】
図2及び
図3は、第1測定プログラム4aのフローチャート及び計測動作を示した図である。第1測定プログラム4aは、マシニングセンタについて説明した
図9のX、Y、Z軸をZ、X、Y軸として同様な処理を行うプログラムで、基準球2を−Z方向から測定し、次に+Z方向から測定し、次に−Y方向から測定し、更に+Y方向から測定して、基準球2のZ‐Y平面における中心座標(Z0、Y0)を算出する。次に刃物台3は、算出されたZ0、Y0座標に先端球11が位置するように移動し、刃物台3を−X方向に移動して基準球2を検出する。以上の5点の測定結果より、従来の5軸測定法で用いられていると同様な演算7aで、基準球2の中心座標(X0、Y0、Z0)を算出する。
【0027】
タッチプローブの先端球11の半径rや基準球2の半径Rなどの幾何形状のデータは、予め精密に計測して制御器10に登録されている。算出された基準球の中心座標と刃物台制御部9から取得した計測時の刃物台3の座標を用いて、幾何学的な演算により、工具軸31のB軸回りの旋回角を演算することができる。そして、演算結果の角度と刃物台制御部9が指令した角度との差により、B軸旋回の機械誤差を測定することができる。この第1測定プログラム4aの計測動作は、B軸の旋回角が−44.9度〜+44.9度の角度範囲のときに実行される(
図7参照)。
【0028】
図4及び
図5は、第2測定プログラム4bのフローチャート及び計測動作を示した図である。第2測定プログラム4bは、第1測定プログラム4aにおけるZ軸とX軸を変換したプログラムであり、基準球2を−X方向から測定し、次に+X方向から測定し、次に−Y方向から測定し、更に+Y方向から測定して、基準球2のX‐Y平面における中心座標(X0、Y0)を算出する。次に刃物台3は、算出されたX0、Y0座標に先端球11が位置するように移動し、刃物台3をZ方向に移動して基準球2の中心を検出する。以上の5点の測定結果より、従来の5軸測定方法で用いられていると同様な演算7bで、基準球2の中心座標(X0、Y0、Z0)を算出し、その中心座標を用いて工具軸31のB軸回りの旋回角を演算する。この第2測定プログラム4bの計測動作は、B軸の旋回角が−90度〜−45度及び+45度〜+90度の角度範囲のときに実行される(
図7参照)。
【0029】
図2及び
図4に示したフローチャートでは、測定プログラム4a、4bを実行する前に、タッチプローブの柄杆12と基準球2との干渉を回避する測定平面移動動作を実行できるようになっている。
【0030】
この測定平面移動動作は、
図2、4に示すように、基準球2の中心Oとタッチプローブの先端球11の中心Qを結ぶ直線がタッチプローブの柄杆12に対して垂直となる位置で測定平面Pでの4点の計測を行うようにするものであり、タッチプローブの先端球11の半径rが基準球2の半径Rに対して小さい場合に、タッチプローブの柄杆12が基準球2に干渉して測定不能になるのを防止するために設けられたものである。
【0031】
従来の5軸測定法においては、基準球2の推定される中心が含まれる平面を固定の基準測定平面P0として計測を行うが、タッチプローブの柄杆12の角度θが基準測定平面P0と垂直になる角度からずれてくると、基準球2とタッチプローブの先端球11が接触する前に基準球2とタッチプローブの柄杆12とが接触して、タッチプローブによる基準球の検出が不能になることがある。そこで、干渉回避動作が指令されているときは、判定ステップS2で分岐して、測定平面移動ステップ5を実行し、測定平面Pを測定軸A方向に移動する。
【0032】
B軸旋回角が−44.9度〜+44.9度の角度範囲における
図2の第1測定平面移動ステップ5aでは、推定される基準球の中心Oを含む平面P0aから(R+r)sinθだけX軸方向に刃物台3が基準球2から離れる方向に移動した位置に測定平面Paを設定して、この移動後の測定平面Pa上で第1測定プログラム4aの測定手順における−Z、+Z、−Y及び+Yの測定を行わせる。
【0033】
また、B軸旋回角が−90度〜−45度及び+45度〜+90度の角度範囲における
図4の第2測定平面移動ステップ5bでは、推定される基準球の中心Oを含む平面P0bから(R+r)sinθだけZ軸方向に刃物台3が基準球2から離れる方向に移動した位置に測定平面Pbを設定して、この移動後の測定平面Pb上で第2測定プログラム4bの測定手順における−X、+X、−Y及び+Yの測定を行わせる。
【0034】
次にメインプログラム6の手順を示す
図7を参照して、この発明の装置によるB軸の機械誤差の自動測定手順を説明する。
図7のプログラムは、B軸を−90度に指定して実行する。手順が実行されると、ステップS1でB軸を指定された角度に割り出し、判定ステップSでその角度範囲が−45度から+45度の範囲内であるかどうかを判定する。もし、角度がその範囲内であれば、第1測定プログラム4aの手順を実行して、基準球2の中心座標を検出して、当該B軸角度における機械誤差を演算する。一方、角度範囲が−45度以下又は+45度以上であれば、第2測定プログラム4bの手順を実行し、基準球2の中心を求めて当該B軸角度におけるB軸旋回の機械誤差を演算する。
【0035】
最初はB軸を−90度に指定しているので、第2測定プログラムの手順を実行し、B軸の指令値に5度を加算して次の角度での測定を行う。このように−90度から5度刻みに、角度範囲に応じて第1測定プログラム4aと第2測定プログラム4bとを選択肢ながら、それぞれの角度での測定を行うという動作を繰り返す。機械誤差の計測は、−90度〜+90度の範囲で行うので、5度を加算した指令値が+95度になった時点で計測動作完了がYESとなり、自動計測を終了する。
【0036】
以上の説明から理解されるように、この発明によれば、基準球を検出するタッチプローブ自体が機械精度を計測しようとする刃物台の旋回に伴って旋回する場合においても、5軸測定法により、広い角度範囲で基準球の中心位置を正確に検出することができ、従来マシニングセンタで利用されていた手段を応用して、複合旋盤における刃物台のB軸旋回の機械誤差のように、機械誤差を測定しようとする旋回動作によってタッチプローブも旋回する工作機械においても、その旋回角の機械誤差を高い精度で計測することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 タッチプローブ
2 基準球
3 刃物台
4a 第1測定プログラム
4b 第2測定プログラム
5(5a、5b)測定平面移動プログラム
11 先端球
12 柄杆
A(Aa、AB) 測定軸
O 基準球の中心
P(Pa、Pb) 測定平面
P0(P0a、P0b) 平面
Q 先端球の中心
S 切替手段
R 基準球の半径
r 先端球の半径
θ 旋回角