特許第6845641号(P6845641)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6845641
(24)【登録日】2021年3月2日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20210315BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20210315BHJP
   C08L 1/26 20060101ALI20210315BHJP
   C08B 11/08 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   C08L101/00
   C08K7/02
   C08L1/26
   C08B11/08
【請求項の数】12
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2016-173170(P2016-173170)
(22)【出願日】2016年9月5日
(65)【公開番号】特開2017-52940(P2017-52940A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2019年6月6日
(31)【優先権主張番号】特願2015-176047(P2015-176047)
(32)【優先日】2015年9月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】吉田 穣
(72)【発明者】
【氏名】柴田 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】熊本 吉晃
【審査官】 幸田 俊希
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−524618(JP,A)
【文献】 特開2010−106251(JP,A)
【文献】 特開平02−142814(JP,A)
【文献】 特開平03−197535(JP,A)
【文献】 特開平08−231918(JP,A)
【文献】 特開平09−188779(JP,A)
【文献】 特開2012−237002(JP,A)
【文献】 特開2014−218598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/26
DWPI(Derwent Innovation)
C08K 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)飽和ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ナイロン樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、ビニルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及びポリスルホン系樹脂から選ばれる熱可塑性樹脂、並びに
エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、若しくはポリイミド樹脂から選ばれる硬化性樹脂、
からなる群より選ばれる1種又は2種以上の樹脂と、
(B)下記一般式(1)で表される置換基及び下記一般式(2)で表される置換基から選ばれる1種又は2種以上の置換基がエーテル結合を介して結合しており、セルロースI型結晶構造を有する、改質セルロース繊維
とを含有する、樹脂組成物。
−CH−CH(OH)−R (1)
−CH−CH(OH)−CH−(OA)−O−R (2)
〔式中、一般式(1)及び一般式(2)におけるRはそれぞれ独立して炭素数3以上30以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、一般式(2)におけるnは0以上50以下の数、Aは炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基を示す〕
【請求項2】
改質セルロース繊維が下記一般式(3)で表される改質セルロース繊維である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【化1】

〔式中、Rは同一又は異なって、水素、もしくは前記一般式(1)で表される置換基及び前記一般式(2)で表される置換基から選ばれる置換基を示し、mは20以上3000以下の整数を示し、但し、全てのRが同時に水素である場合を除く〕
【請求項3】
一般式(1)で表される置換基及び一般式(2)で表される置換基から選ばれる置換基の導入率が無水グルコースユニット1モルに対し0.001モル以上1.5モル以下である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
一般式(2)で表される置換基における、nが0以上20以下の数、Aが炭素数2以上3以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基である、請求項1〜3いずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
改質セルロース繊維の平均繊維径が5μm以上である、請求項1〜4いずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
改質セルロース繊維の平均繊維径が1nm以上500nm以下である、請求項1〜4いずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
改質セルロース繊維の含有量が、樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上100質量部以下である、請求項1〜6いずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
(A)飽和ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ナイロン樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、ビニルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及びポリスルホン系樹脂から選ばれる熱可塑性樹脂、並びに
エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、若しくはポリイミド樹脂から選ばれる硬化性樹脂、からなる群より選ばれる1種又は2種以上の樹脂と
(B)改質セルロース繊維
とを含有する樹脂組成物の製造方法であって、
セルロース系原料に対し、塩基存在下、1分子あたりの総炭素数が5以上32以下のノニオン性酸化アルキレン化合物及び1分子あたりの総炭素数が5以上100以下のノニオン性グリシジルエーテル化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物を、エーテル結合を介して導入して改質セルロース繊維を得る工程、並びに、
得られた改質セルロース繊維と前記樹脂とを混合する工程
を含む、樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
改質セルロース繊維が、下記一般式(1)で表される置換基及び下記一般式(2)で表される置換基から選ばれる1種又は2種以上の置換基がエーテル結合を介して結合しており、セルロースI型結晶構造を有するものである、請求項8に記載の樹脂組成物の製造方法。
−CH−CH(OH)−R (1)
−CH−CH(OH)−CH−(OA)−O−R (2)
〔式中、一般式(1)及び一般式(2)におけるRはそれぞれ独立して炭素数3以上30以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、一般式(2)におけるnは0以上50以下の数、Aは炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基を示す〕
【請求項10】
改質セルロース繊維の平均繊維径が、1nm以上500nm以下であるか、又は5μm以上である、請求項8又は9に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
塩基が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、1〜3級アミン、4級アンモニウム塩、イミダゾール及びその誘導体、ピリジン及びその誘導体、並びにアルコキシドから選ばれる1種又は2種以上である、請求項8〜10のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
塩基の量が、セルロース系原料中の無水グルコースユニットに対し0.01当量以上10当量以下である、請求項8〜11のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。更に詳しくは、日用雑貨品、家電部品、自動車部品、3次元造形用樹脂等に好適に使用し得る樹脂組成物、ならびに該樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有限な資源である石油由来のプラスチック材料が多用されていたが、近年、環境に対する負荷の少ない技術が脚光を浴びるようになり、かかる技術背景の下、天然に多量に存在するバイオマスであるセルロース繊維を用いた材料が注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、補強効果に優れたセルロースナノファイバーとして、平均重合度が600以上30000以下であり、アスペクト比が20〜10000であり、平均直径が1〜800nmであり、X線回折パターンにおいて、Iβ型の結晶ピークを有することを特徴とするセルロースナノファイバーが開示されている。該セルロースナノファイバーを含有する樹脂組成物は、優れた成形性及び熱線膨張率を示している。
【0004】
特許文献2には、リグニンを含有するパルプを機械的に解繊処理することによって、ミクロフィブリル化した植物繊維がヘミセルロース、リグニンの順で被覆された構造となることによって、水系で扱いやすくなり、該植物繊維を配合した繊維強化樹脂は、分解温度が従来のミクロフィブリル化セルロースより高く熱安定性に優れると開示されている。
【0005】
特許文献3には、ミクロフィブリルの表面に存在するヒドロキシル官能基が、当該ヒドロキシル官能基と反応することが可能な、少なくとも一つの有機化合物によりエーテル化され、その際の表面置換度(DSS)が少なくとも0.05であることを特徴とする、変性表面を有するセルロースミクロフィブリルが開示されている。当該ミクロフィブリルを含有するエラストマー組成物は、優れた機械的強度を示すことが記載されている。
【0006】
特許文献4には、表面に少なくとも0.05の表面置換度(DSS)でエーテル基で置換されたセルロースマイクロファイバーを含有する複合材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−184816号公報
【特許文献2】特開2009−19200号公報
【特許文献3】特表2002−524618号公報
【特許文献4】FR2800378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1〜4のセルロース繊維を含有する組成物では、機械的強度や耐熱性、寸法安定性の向上において、まだ、十分とは言えない。
【0009】
本発明は、熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂に配合した際に、耐熱性、機械的強度、及び寸法安定性を向上し得るフィラーを含有する樹脂組成物、及び該樹脂組成物の製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記〔1〕〜〔2〕に関する。
〔1〕 (A)熱可塑性樹脂、及びエポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、若しくはポリイミド樹脂から選ばれる硬化性樹脂、からなる群より選ばれる1種又は2種以上の樹脂と、
(B)下記一般式(1)で表される置換基及び下記一般式(2)で表される置換基から選ばれる1種又は2種以上の置換基がエーテル結合を介して結合しており、セルロースI型結晶構造を有する、改質セルロース繊維
とを含有する、樹脂組成物。
−CH−CH(OH)−R (1)
−CH−CH(OH)−CH−(OA)−O−R (2)
〔式中、一般式(1)及び一般式(2)におけるRはそれぞれ独立して炭素数3以上30以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、一般式(2)におけるnは0以上50以下の数、Aは炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基を示す〕
〔2〕 (A)熱可塑性樹脂、及びエポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、若しくはポリイミド樹脂から選ばれる硬化性樹脂、からなる群より選ばれる1種又は2種以上の樹脂と(B)改質セルロース繊維とを含有する樹脂組成物の製造方法であって、
セルロース系原料に対し、塩基存在下、1分子あたりの総炭素数が5以上32以下のノニオン性酸化アルキレン化合物及び1分子あたりの総炭素数が5以上100以下のノニオン性グリシジルエーテル化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物を、エーテル結合を介して導入して改質セルロース繊維を得る工程、並びに、
得られた改質セルロース繊維と前記樹脂とを混合する工程
を含む、樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂組成物は、耐熱性、機械的強度、及び寸法安定性に優れるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔樹脂組成物〕
本発明の樹脂組成物は、特定の樹脂に、特定の改質セルロース繊維を含有することを特徴とする。
【0013】
[(B)改質セルロース繊維]
本発明における改質セルロース繊維は、セルロース繊維表面に特定の置換基がエーテル結合を介して結合していることを特徴とする。以降、前記改質セルロース繊維のことを、本発明の改質セルロース繊維と記載することもある。なお、本明細書において、「エーテル結合を介して結合」とは、セルロース繊維表面の水酸基に修飾基が反応して、エーテル結合した状態を意味する。
【0014】
本発明の改質セルロース繊維が、後述する樹脂に配合されると、耐熱性、機械的強度、及び寸法安定性に優れる樹脂組成物が得られる理由は、次のように考えられる。セルロースは、一般に、その表面水酸基による水素結合で凝集してミクロフィブリルの束を形成するが、本発明に用いる改質セルロース繊維は、表面水酸基に特定の修飾基を導入する反応を行うことで、該修飾基がセルロース繊維骨格のセルロース鎖に直接エーテル結合するため、セルロースの結晶構造を維持した疎水化セルロース繊維となる。また、導入された修飾基が特定鎖長のアルキル基末端を有することから、立体斥力による反発が得られるため、樹脂中での分散性に優れる。従って、本発明に用いる改質セルロース繊維は樹脂中で均一に分散し、かつ、結晶構造が安定して維持されるため、得られる樹脂組物が、機械的強度、耐熱性、及び寸法安定性が良好なものとなる。ただし、これらの推測は、本発明を限定するものではない。
【0015】
(平均繊維径)
本発明の改質セルロース繊維は、機械的強度向上、取扱い性、入手性、及びコストの観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは7μm以上、更に好ましくは10μm以上である。また、上限は特に設定されないが、取扱い性、及び機械的強度向上の観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは70μm以下、更に好ましくは50μm以下、更に好ましくは40μm以下、更に好ましくは30μm以下である。なお、本明細書において、セルロース繊維の平均繊維径は、以下の方法に従って測定することができる。
【0016】
具体的には、例えば、絶乾したセルロース繊維をイオン交換水中で家庭用ミキサー等を用いて攪拌して繊維を解した後、さらにイオン交換水を加え均一になるよう攪拌して得られた水分散液の一部を、メッツォオートメーション社製の「Kajaani Fiber Lab」にて分析する方法が挙げられる。かかる方法により、平均繊維径がマイクロオーダーの繊維径を測定することができる。なお、詳細な測定方法は実施例に記載の通りである。
【0017】
また、本発明の改質セルロース繊維は、微細な平均繊維径を有するものであってもよい。例えば、有機溶媒中で高圧ホモジナイザー等を用いた処理を行なうことで微細化することができる。微細化した改質セルロース繊維の平均繊維径は、例えば、1〜500nm程度であればよく、耐熱性向上の観点から、好ましくは3nm以上、より好ましくは10nm以上、更に好ましくは20nm以上であり、取扱い性、及び寸法安定性の観点から、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下、更に好ましくは150nm以下、より更に好ましくは120nm以下である。なお、以降において、微細化した改質セルロース繊維のことを、微細改質セルロース繊維と記載することもある。
【0018】
前記のような微細な平均繊維径を有する場合には、微細化処理を行なって得られた分散液を、光学顕微鏡(キーエンス社製、「デジタルマイクロスコープVHX−1000」)を用いて倍率300〜1000倍で観察し、繊維30本以上の平均値を計測することで、ナノオーダーの繊維径を測定することができる。光学顕微鏡での観察が困難な場合は、前記分散液に溶媒を更に加えて調製した分散液を、マイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(AFM、Nanoscope III Tapping mode AFM、Digital instrument社製、プローブはナノセンサーズ社製Point Probe (NCH)を使用)を用いて測定することができる。一般に、高等植物から調製されるセルロースナノファイバーの最小単位は6×6の分子鎖がほぼ正方形の形でパッキングされていることから、AFMによる画像で分析される高さを繊維の幅と見なすことができる。なお、詳細な測定方法は実施例に記載の通りである。
【0019】
(修飾基)
本発明の改質セルロース繊維における修飾基は、以下の一般式(1)で表される置換基及び一般式(2)で表される置換基であり、これらの置換基群は単独で又は任意の組み合わせで導入される。なお、導入される修飾基が前記置換基群のいずれか一方の場合であっても、各置換基群においては同一の置換基であっても2種以上が組み合わさって導入されてもよい。
−CH−CH(OH)−R (1)
−CH−CH(OH)−CH−(OA)−O−R (2)
〔式中、一般式(1)及び一般式(2)におけるRはそれぞれ独立して炭素数3以上30以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、一般式(2)におけるnは0以上50以下の数、Aは炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基を示す〕
【0020】
一般式(1)におけるRは、炭素数3以上30以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。アルキル基の炭素数は、3以上30以下であるが、機械的強度、寸法安定性、及び耐熱性の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは10以上であり、寸法安定性、耐熱性及び反応性向上の観点から、好ましくは25以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは18以下、更に好ましくは16以下、更に好ましくは12以下、より更に好ましくは10以下である。具体的には、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基、トリアコンチル基等が例示される。
【0021】
一般式(2)におけるRは、炭素数3以上30以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。アルキル基の炭素数は、3以上30以下であるが、機械的強度、寸法安定性、及び耐熱性の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは6以上であり、入手性及び反応性向上の観点から、好ましくは27以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは20以下、更に好ましくは18以下、更に好ましくは16以下、更に好ましくは12以下である。具体的には、前記した一般式(1)におけるRと同じものが挙げられる。
【0022】
一般式(2)におけるAは、炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基であり、隣接する酸素原子とオキシアルキレン基を形成する。Aの炭素数は1以上6以下であるが、入手性及びコストの観点から、好ましくは2以上であり、同様の観点から、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等が例示され、なかでも、エチレン基、プロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
【0023】
一般式(2)におけるnは、アルキレンオキサイドの付加モル数を示す。nは0以上50以下の数であるが、入手性及びコストの観点から、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上であり、同様の観点から、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは20以下、更に好ましくは15以下である。
【0024】
一般式(2)におけるAとnの組み合わせとしては、反応性及び立体斥力発現による増粘効果の観点から、好ましくはAが炭素数2以上3以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基で、nが0以上20以下の数の組み合わせであり、より好ましくはAが炭素数2以上3以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基で、nが5以上15以下の数の組み合わせである。
【0025】
一般式(1)で表される置換基の具体例としては、例えば、プロピルヒドロキシエチル基、ブチルヒドロキシエチル基、ペンチルヒドロキシエチル基、ヘキシルヒドロキシエチル基、ヘプチルヒドロキシエチル基、オクチルヒドロキシエチル基、ノニルヒドロキシエチル基、デシルヒドロキシエチル基、ウンデシルヒドロキシエチル基、ドデシルヒドロキシエチル基、ヘキサデシルヒドロキシエチル基、オクタデシルヒドロキシエチル基、イコシルヒドロキシエチル基、トリアコンチルヒドロキシエチル基等が挙げられる。
【0026】
一般式(2)で表される置換基の具体例としては、例えば、3−ブトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ヘキトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ヘキトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−オクトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−オクトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、6−エチル―3−ヘキトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、6−エチル―3−ヘキトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−デトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−デトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ウンデトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ウンデトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ドデトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ドデトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ヘキサデトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ヘキサデトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−オクタデトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−オクタデトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基等が挙げられる。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は0以上50以下であればよく、例えば、前記したエチレンオキシド等のオキシアルキレン基を有する置換基において付加モル数が10、12、13、20モルの置換基が例示される。
【0027】
(導入率)
本発明の改質セルロース繊維において、セルロースの無水グルコースユニット1モルに対する前記一般式(1)で表される置換基及び一般式(2)で表される置換基から選ばれる置換基の導入率は、溶媒との親和性の観点から、好ましくは0.001モル以上、より好ましくは0.005モル以上、更に好ましくは0.01モル以上、更に好ましくは0.05モル以上、更に好ましくは0.1モル以上、更に好ましくは0.2モル以上、更に好ましくは0.3モル以上、更に好ましくは0.4モル以上である。また、セルロースI型結晶構造を有し、強度を発現する観点から、好ましくは1.5モル以下、より好ましくは1.3モル以下、更に好ましくは1.0モル以下、更に好ましくは0.8モル以下、更に好ましくは0.6モル以下、更に好ましくは0.5モル以下である。ここで、一般式(1)で表される置換基と一般式(2)で表される置換基のいずれもが導入されている場合は合計した導入モル率のことである。なお、本明細書において、導入率は、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができ、また、導入モル比又は修飾率と記載することもある。
【0028】
(結晶化度)
改質セルロース繊維の結晶化度は、強度発現の観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上である。また、原料入手性の観点から、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下、更に好ましくは80%以下、更に好ましくは75%以下である。なお、本明細書において、セルロースの結晶化度は、X線回折法による回折強度値から算出したセルロースI型結晶化度であり、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。なお、セルロースI型とは天然セルロースの結晶形のことであり、セルロースI型結晶化度とは、セルロース全体のうち結晶領域量の占める割合のことを意味する。また、本発明の改質セルロース繊維は、微細化処理の有無によって、結晶化度やセルロース結晶形が大きく変動することはない。
【0029】
[改質セルロース繊維の製造方法]
本発明の改質セルロース繊維は、上記したようにセルロース繊維表面に前記置換基がエーテル結合を介して結合しているが、置換基の導入は、特に限定なく公知の方法に従って行うことができる。
【0030】
具体的には、セルロース系原料に、塩基の存在下で、前記置換基を有する化合物を反応させればよい。
【0031】
(セルロース系原料)
本発明で用いられるセルロース系原料は、特に制限はなく、木本系(針葉樹・広葉樹)、草本系(イネ科、アオイ科、マメ科の植物原料、ヤシ科の植物の非木質原料)、パルプ類(綿の種子の周囲の繊維から得られるコットンリンターパルプ等)、紙類(新聞紙、段ボール、雑誌、上質紙等)が挙げられる。なかでも、入手性及びコストの観点から、木本系、草本系が好ましい。
【0032】
セルロース系原料の形状は、特に制限はないが、取扱い性の観点から、繊維状、粉末状、球状、チップ状、フレーク状が好ましい。また、これらの混合物であってもよい。
【0033】
また、セルロース系原料は、取扱い性等の観点から、生化学的処理、化学処理、及び機械処理から選ばれる少なくとも1つの前処理を予め行なうことができる。生化学的処理としては、使用する薬剤には特に制限がなく、例えばエンドグルカナーゼやエキソグルカナーゼ、ベータグルコシダーゼといった酵素を使用する処理が挙げられる。化学処理としては、使用する薬剤には特に制限がなく、例えば塩酸や硫酸などによる酸処理、過酸化水素やオゾンなどによる酸化処理が挙げられる。機械処理としては、使用する機械や処理条件には特に制限がなく、例えば、高圧圧縮ロールミルや、ロール回転ミル等のロールミル、リングローラーミル、ローラーレースミル又はボールレースミル等の竪型ローラーミル、転動ボールミル、振動ボールミル、振動ロッドミル、振動チューブミル、遊星ボールミル又は遠心流動化ミル等の容器駆動媒体ミル、塔式粉砕機、攪拌槽式ミル、流通槽式ミル又はアニュラー式ミル等の媒体攪拌式ミル、高速遠心ローラーミルやオングミル等の圧密せん断ミル、乳鉢、石臼、マスコロイダー、フレットミル、エッジランナーミル、ナイフミル、ピンミル、カッターミル等が挙げられる。
【0034】
また、上記機械処理の際に水やエタノール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、トルエン、キシレン等の溶媒、フタル酸系やアジピン酸系、トリメリット酸系などの可塑剤、尿素やアルカリ(土類)金属水酸化物、アミン系化合物などの水素結合阻害剤、等の助剤を添加することで機械処理による形状変化の促進を行うこともできる。このように形状変化を加えることで、セルロース系原料の取扱い性が向上し、置換基の導入が良好となって、ひいては得られる改質セルロース繊維の物性も向上させることが可能となる。添加助剤の使用量は、用いる添加助剤や使用する機械処理の手法等によって変わるが、形状変化を促進する効果を発現する観点から、原料100質量部に対して、通常5質量部以上、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上であり、また、形状変化を促進する効果を発現する観点及び経済性の観点から、通常10000質量部以下、好ましくは5000質量部以下、より好ましくは3000質量部以下である。
【0035】
セルロース系原料の平均繊維径は、特に制限はないが、取扱い性及びコストの観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは7μm以上、更に好ましくは10μm以上、更に好ましくは15μm以上である。また、上限は特に設定されないが、取扱い性の観点から、好ましくは10,000μm以下、より好ましくは5,000μm以下、更に好ましくは1,000μm以下、更に好ましくは500μm以下、より更に好ましくは100μm以下である。
【0036】
また、製造工程数低減の観点から、あらかじめ微細化されたセルロース系原料を用いてよく、その場合の平均繊維径は、耐熱性向上の観点から、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上、更に好ましくは3nm以上、更に好ましくは10nm以上である。また、上限は特に設定されないが、取扱い性の観点から、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下、更に好ましくは200nm以下、更に好ましくは100nm以下、より更に好ましくは80nm以下である。
【0037】
なお、セルロース系原料の平均繊維径は、前記した改質セルロース繊維と同様にして測定することができる。詳細は、実施例に記載の通りである。
【0038】
セルロース系原料の組成は、特に限定されないが、セルロース系原料中のセルロース含有量が、セルロースファイバーを得る観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、入手性の観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下であるものが好ましい。ここで、セルロース系原料中のセルロース含有量とは、セルロース系原料中の水分を除いた残余の成分中のセルロース含有量のことである。
【0039】
また、セルロース系原料中の水分含有量は、特に制限はなく、入手性及びコストの観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上であり、取扱い性の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
【0040】
(塩基)
本発明では、前記セルロース系原料に、塩基を混合する。
【0041】
本発明で用いられる塩基としては、特に制限はないが、エーテル化反応を進行させる観点から、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、1〜3級アミン、4級アンモニウム塩、イミダゾール及びその誘導体、ピリジン及びその誘導体、並びにアルコキシドからなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0042】
アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等が挙げられる。
【0043】
1〜3級アミンとは、1級アミン、2級アミン、及び3級アミンのことであり、具体例としては、エチレンジアミン、ジエチルアミン、プロリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、トリス(3−ジメチルアミノプロピル)アミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0044】
4級アンモニウム塩としては、水酸化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、フッ化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、フッ化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0045】
イミダゾール及びその誘導体としては、1−メチルイミダゾール、3−アミノプロピルイミダゾール、カルボニルジイミダゾール等が挙げられる。
【0046】
ピリジン及びその誘導体としては、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、ピコリン等が挙げられる。
【0047】
アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシド等が挙げられる。
【0048】
塩基の量は、セルロース系原料の無水グルコースユニットに対して、エーテル化反応を進行させる観点から、好ましくは0.01当量以上、より好ましくは0.05当量以上、更に好ましくは0.1当量以上、更に好ましくは0.2当量以上であり、製造コストの観点から、好ましくは10当量以下、より好ましくは8当量以下、更に好ましくは5当量以下、更に好ましくは3当量以下である。
【0049】
なお、前記セルロース系原料と塩基の混合は、溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、特に制限はなく、例えば、水、イソプロパノール、t−ブタノール、ジメチルホルムアミド、トルエン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサン、1,4−ジオキサン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0050】
セルロース系原料と塩基の混合は、均一に混合できるのであれば、温度や時間は特に制限はない。
【0051】
(置換基を有する化合物)
次に、前記で得られたセルロース系原料と塩基の混合物に、置換基を有する化合物として、前記一般式(1)で表される置換基を有する化合物及び一般式(2)で表される置換基を有する化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物を反応させる。かかる化合物はセルロース系原料と反応する際に、前記置換基を結合させることができるものであれば特に制限はなく、本発明においては、反応性及び非ハロゲン含有化合物の観点から、反応性を有する環状構造基を有する化合物を用いることが好ましく、エポキシ基を有する化合物を用いることが好ましい。以下に、それぞれの化合物を例示する。
【0052】
一般式(1)で表される置換基を有する化合物としては、例えば、下記一般式(1A)で示されるノニオン性の酸化アルキレン化合物が好ましい。かかる化合物は公知技術に従って調製したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。該化合物の総炭素数としては、機械的強度、寸法安定性、及び耐熱性の観点から、5以上であり、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは12以上であり、機械的強度、寸法安定性、及び耐熱性の観点から、32以下であり、好ましくは27以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは20以下、更に好ましくは18以下、更に好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
【0053】
【化1】
【0054】
〔式中、Rは炭素数3以上30以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す〕
【0055】
一般式(1A)におけるRは、炭素数3以上30以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。アルキル基の炭素数は、3以上30以下であるが、機械的強度、寸法安定性、及び耐熱性の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは10以上であり、機械的強度、寸法安定性、及び耐熱性の観点から、好ましくは25以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは18以下、更に好ましくは16以下、更に好ましくは12以下、更に好ましくは10以下である。具体的には、一般式(1)で表される置換基におけるRの項に記載のものを挙げることができる。
【0056】
一般式(1A)で示される化合物の具体例としては、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシオクタデカンが挙げられる。
【0057】
一般式(2)で表される置換基を有する化合物としては、例えば、下記一般式(2A)で示されるノニオン性のグリシジルエーテル化合物が好ましい。かかる化合物は公知技術に従って調製したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。該化合物の総炭素数としては、機械的強度、寸法安定性、及び耐熱性の観点から、5以上であり、好ましくは6以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは20以上であり、機械的強度、寸法安定性、及び耐熱性の観点から、100以下であり、好ましくは75以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは25以下である。
【0058】
【化2】
【0059】
〔式中、Rは炭素数3以上30以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、Aは炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基、nは0以上50以下の数を示す〕
【0060】
一般式(2A)におけるRは、炭素数3以上30以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。アルキル基の炭素数は、3以上30以下であるが、機械的強度、寸法安定性、及び耐熱性の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは6以上であり、機械的強度、寸法安定性、及び耐熱性の観点から、好ましくは27以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは20以下、更に好ましくは18以下、更に好ましくは16以下、更に好ましくは12以下である。具体的には、一般式(2)で表される置換基におけるRの項に記載のものを挙げることができる。
【0061】
一般式(2A)におけるAは、炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基であり、隣接する酸素原子とオキシアルキレン基を形成する。Aの炭素数は1以上6以下であるが、入手性及びコストの観点から、好ましくは2以上であり、同様の観点から、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。具体的には、一般式(2)で表される置換基におけるAの項に記載のものが例示され、なかでも、エチレン基、プロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
【0062】
一般式(2A)におけるnは、アルキレンオキサイドの付加モル数を示す。nは0以上50以下の数であるが、入手性及びコストの観点から、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上であり、同様の観点から、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは20以下、更に好ましくは15以下である。
【0063】
一般式(2A)で示される化合物の具体例としては、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが挙げられる。
【0064】
前記化合物の量は、得られる改質セルロース繊維における前記一般式(1)で表される置換基及び/又は一般式(2)で表される置換基の所望の導入率により決めることができるが、反応性の観点から、セルロース系原料の無水グルコースユニットに対して、好ましくは0.01当量以上、より好ましくは0.1当量以上、更に好ましくは0.3当量以上、更に好ましくは0.5当量以上、更に好ましくは1.0当量以上であり、製造コストの観点から、好ましくは10当量以下、より好ましくは8当量以下、更に好ましくは6.5当量以下、更に好ましくは5当量以下である。
【0065】
(エーテル反応)
前記化合物とセルロース系原料とのエーテル反応は、溶媒の存在下で、両者を混合することにより行うことができる。溶媒としては、特に制限はなく、前記塩基を存在させる際に使用することができると例示した溶媒を用いることができる。
【0066】
溶媒の使用量としては、セルロース系原料や前記置換基を有する化合物の種類によって一概には決定されないが、セルロース系原料100質量部に対して、反応性の観点から、好ましくは30質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは75質量部以上、更に好ましくは100質量部以上、更に好ましくは200質量部以上であり、生産性の観点から、好ましくは10,000質量部以下、より好ましくは5,000質量部以下、更に好ましくは2,500質量部以下、更に好ましくは1,000質量部以下、更に好ましくは500質量部以下である。
【0067】
混合条件としては、セルロース系原料や前記置換基を有する化合物が均一に混合され、十分に反応が進行できるのであれば特に制限はなく、連続的な混合処理は行っても行わなくてもよい。1Lを超えるような比較的大きな反応容器を用いる場合には、反応温度を制御する観点から、適宜攪拌を行ってもよい。
【0068】
反応温度としては、セルロース系原料や前記置換基を有する化合物の種類及び目標とする導入率によって一概には決定されないが、反応性を向上させる観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは60℃以上であり、熱分解を抑制する観点から、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下、更に好ましくは100℃以下である。
【0069】
反応時間としては、セルロース系原料や前記置換基を有する化合物の種類及び目標とする導入率によって一概には決定されないが、反応性の観点から、好ましくは3時間以上、より好ましくは6時間以上、更に好ましくは10時間以上であり、生産性の観点から、好ましくは60時間以下、より好ましくは48時間以下、更に好ましくは36時間以下である。
【0070】
また、前記反応後に、取扱い性の観点から、例えば、セルロース系原料に対して行う前処理と同様の処理を反応物に対して行なって、チップ状やフレーク状、粉末状にしてもよい。かかる処理によって形状変化がもたらされることで、得られる本発明の改質セルロース繊維を樹脂組成物に添加した場合は、樹脂組成物の弾性率等の物性を向上させることができる。
【0071】
また更に、本発明の改質セルロース繊維は、前記反応後に、公知の微細化処理を行って微細化してもよい。例えば、有機溶媒中で高圧ホモジナイザー等を用いた処理を行なうことで微細化することができる。また、あらかじめ微細化処理されたセルロース系原料を用いて前記した置換基の導入反応を行って微細改質セルロース繊維を得ることもできるが、機械的強度、寸法安定性、及び耐熱性の観点から、前記置換基導入の反応後に、公知の微細化処理を行って微細化することが好ましい。
【0072】
具体的には、例えば、平均繊維径が5μm以上の改質セルロース繊維を得る場合は、容器駆動式媒体ミルや媒体攪拌式ミルなどの機械処理を行なうことができる。また、平均繊維径が1nm以上500nm以下の改質セルロース繊維を得る場合は、有機溶媒中で高圧ホモジナイザー等を用いた処理を行なうことができる。
【0073】
反応後は、未反応の化合物や塩基等を除去するために、適宜後処理を行うことができる。該後処理の方法としては、例えば、未反応の塩基を酸(有機酸、無機酸など)で中和し、その後、未反応の化合物や塩基が溶解する溶媒を用いて洗浄することができる。所望により、更に乾燥(真空乾燥など)を行ってもよい。
【0074】
かくして、本発明の改質セルロース繊維が得られる。よって、本発明の改質セルロース繊維の好適な製造方法としては、例えば、セルロース系原料に対し、塩基存在下、1分子あたりの総炭素数が5以上32以下のノニオン性酸化アルキレン化合物及び1分子あたりの総炭素数が5以上100以下のノニオン性グリシジルエーテル化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物を、エーテル結合を介して導入することを特徴とする態様を挙げることができる。
【0075】
得られた改質セルロース繊維は、セルロース繊維表面に一般式(1)で表される置換基及び/又は一般式(2)で表される置換基がエーテル結合した状態である。具体的には、例えば、下記一般式(3)で表される改質セルロース繊維が例示される。
【0076】
【化3】
【0077】
〔式中、Rは同一又は異なって、水素、もしくは前記一般式(1)で表される置換基及び前記一般式(2)で表される置換基から選ばれる置換基を示し、mは20以上3000以下の整数を示し、但し、全てのRが同時に水素である場合を除く〕
【0078】
一般式(3)で表される改質セルロース繊維は、Rが同一又は異なって、水素、もしくは、一般式(1)で表される置換基及び/又は一般式(2)で表される置換基を示すものであり、前記置換基が導入されたセルロースユニットの繰り返し構造を有するものである。繰り返し構造の繰り返し数として、一般式(3)におけるmは20以上3000以下の整数であればよく、機械的強度、寸法安定性、及び耐熱性の観点から100以上2000以下が好ましい。
【0079】
[(A)樹脂]
本発明における樹脂成分は、(A)熱可塑性樹脂、及びエポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、若しくはポリイミド樹脂から選ばれる硬化性樹脂、からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含む。
【0080】
熱可塑性樹脂としては、ポリ乳酸樹脂等の飽和ポリエステル系樹脂;ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ABS樹脂等のオレフィン系樹脂;トリアセチル化セルロース、ジアセチル化セルロース等のセルロース系樹脂;ナイロン樹脂;塩化ビニル樹脂;スチレン樹脂;ビニルエーテル樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリスルホン系樹脂等が挙げられる。硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、若しくはポリイミド樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上の混合樹脂として用いても良い。なお、本明細書において、(メタ)アクリル系樹脂とは、メタクリル系樹脂及びアクリル系樹脂を含むものを意味する。
【0081】
樹脂の種類によっては、光硬化及び/又は熱硬化処理を行うことができる。
【0082】
光硬化処理は、紫外線や電子線等の活性エネルギー線照射により、ラジカルやカチオンを発生する光重合開始剤を用いることで重合反応が進行する。
【0083】
前記光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物、2,3−ジアルキルシオン類化合物類、ジスルフィド化合物、チウラム化合物類、フルオロアミン化合物等が挙げられる。より具体的には、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ベンジルメチルケトン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0084】
光重合開始剤で、例えば、単量体(単官能単量体、多官能単量体)、反応性不飽和基を有するオリゴマー又は樹脂等を重合することができる。
【0085】
前記樹脂成分にエポキシ樹脂を用いる場合は、硬化剤を使用することが好ましい。硬化剤を配合することによって、樹脂組成物から得られる成形材料を強固に成形することができ、機械的強度を向上させることができる。尚、硬化剤の含有量は、使用する硬化剤の種類により適宜設定すればよい。
【0086】
本発明の樹脂組成物における各成分の含有量は、樹脂の種類にもよるが、下記のとおりである。
【0087】
本発明の樹脂組成物中の樹脂の含有量は、成形体を製造する観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは85質量%以上であり、改質セルロース繊維を含有させる観点から、好ましくは99.5質量%以下、より好ましくは99質量%以下、更に好ましくは98質量%以下、更に好ましくは95質量%以下である。
【0088】
本発明の樹脂組成物中の改質セルロース繊維の含有量は、得られる樹脂組成物の機械的強度、寸法安定性、及び耐熱性の観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、得られる樹脂組成物の成形性及びコストの観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
【0089】
本発明の樹脂組成物中の改質セルロース繊維量は、樹脂100質量部に対して、得られる樹脂組成物の機械的強度、寸法安定性、耐熱性の観点から、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上、より更に好ましくは5質量部以上であり、また、得られる樹脂組成物の成形性及びコストの観点から、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下、更に好ましくは45質量部以下、更に好ましくは25質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。
【0090】
本発明の樹脂組成物は、前記以外の他の成分として、相溶化剤;可塑剤;結晶核剤;充填剤(無機充填剤、有機充填剤);加水分解抑制剤;難燃剤;酸化防止剤;炭化水素系ワックス類やアニオン型界面活性剤である滑剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;防曇剤;光安定剤;顔料;防カビ剤;抗菌剤;発泡剤;界面活性剤;でんぷん類、アルギン酸等の多糖類;ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質;タンニン、ゼオライト、セラミックス、金属粉末等の無機化合物;香料;流動調整剤;レべリング剤;導電剤;紫外線分散剤;消臭剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。相溶化剤としては、セルロースと親和性の高い極性基と樹脂と親和性の高い疎水性基からなる化合物が挙げられる。より具体的には極性基としては、例えば無水マレイン酸、マレイン酸、グリシジルメタクリレートが例示され、疎水性基としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレン等が例示される。また同様に、本発明の効果を阻害しない範囲内で他の高分子材料や他の樹脂組成物を添加することも可能である。任意の添加剤の含有割合としては、本発明の効果が損なわれない範囲で適宜含有されても良いが、例えば、樹脂組成物中20質量%以下が好ましく、10質量%程度以下がより好ましく、5質量%程度以下がより更に好ましい。
【0091】
本発明の樹脂組成物は、前記樹脂と改質セルロース繊維を含有するものであれば特に限定なく調製することができ、例えば、前記した樹脂と改質セルロース繊維、さらに必要により各種添加剤を含有する原料を、ヘンシェルミキサー等で攪拌、あるいは密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて溶融混練又は溶媒キャスト法により調製することができる。
【0092】
よって、本発明はまた、本発明の樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0093】
本発明の樹脂組成物の製造方法としては、前記樹脂と本発明の改質セルロース繊維を混合する工程を含むものであれば特に限定はない。例えば、以下の工程を含むものが好適な製造方法として例示される。
工程(1):セルロース系原料に対し、塩基存在下、1分子あたりの総炭素数が5以上32以下のノニオン性酸化アルキレン化合物及び1分子あたりの総炭素数が5以上100以下のノニオン性グリシジルエーテル化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物を、エーテル結合を介して導入して改質セルロース繊維を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた改質セルロース繊維と、熱可塑性樹脂、及びエポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、若しくはポリイミド樹脂から選ばれる硬化性樹脂、からなる群より選ばれる1種又は2種以上の樹脂とを混合する工程
【0094】
工程(1)では、本発明の改質セルロース繊維を調製する。詳細は、本発明の改質セルロース繊維の製造方法の項を参照することができる。なお、得られた改質セルロース繊維は公知の微細化処理を行なってから、次工程に供することもできる。
【0095】
工程(2)では、工程(1)で得られた改質セルロース繊維と前記樹脂とを混合する。例えば、前記樹脂と改質セルロース繊維、さらに必要により各種添加剤を含有する原料を公知の混練機を用いて溶融混練又は溶媒キャスト法により調製することができる。溶融混練及び溶液混合の条件(温度、時間)は、用いる樹脂の種類に応じて、公知技術に従って適宜設定することができる。
【0096】
かくして得られた本発明の樹脂組成物は、加工性が良好で、かつ、耐熱性に優れるため、日用雑貨品、家電部品、家電部品用梱包資材、自動車部品、3次元造形用樹脂等各種用途に好適に用いることができる。
【0097】
上述した実施形態に関し、本発明は、さらに、以下の樹脂組成物及び樹脂組成物の製造方法を開示する。
<1> (A)熱可塑性樹脂、及びエポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、若しくはポリイミド樹脂から選ばれる硬化性樹脂、からなる群より選ばれる1種又は2種以上の樹脂と、
(B)下記一般式(1)で表される置換基及び下記一般式(2)で表される置換基から選ばれる1種又は2種以上の置換基がエーテル結合を介して結合しており、セルロースI型結晶構造を有する、改質セルロース繊維
とを含有する、樹脂組成物。
−CH−CH(OH)−R (1)
−CH−CH(OH)−CH−(OA)−O−R (2)
〔式中、一般式(1)及び一般式(2)におけるRはそれぞれ独立して炭素数3以上30以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、一般式(2)におけるnは0以上50以下の数、Aは炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基を示す〕
【0098】
<2> 改質セルロース繊維の平均繊維径が、好ましくは5μm以上、より好ましくは7μm以上、更に好ましくは10μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは70μm以下、更に好ましくは50μm以下、更に好ましくは40μm以下、更に好ましくは30μm以下である、前記<1>記載の樹脂組成物。
<3> 改質セルロース繊維の平均繊維径が、好ましくは3nm以上、より好ましくは10nm以上、更に好ましくは20nm以上であり、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下、更に好ましくは150nm以下、より更に好ましくは120nm以下である、前記<1>記載の樹脂組成物。
<4> 一般式(1)におけるRの炭素数は、好ましくは4以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは10以上であり、好ましくは25以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは18以下、更に好ましくは16以下、更に好ましくは12以下、より更に好ましくは10以下である、前記<1>〜<3>いずれか記載の樹脂組成物。
<5> 一般式(2)におけるRの炭素数は、好ましくは4以上、より好ましくは6以上であり、好ましくは27以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは20以下、更に好ましくは18以下、更に好ましくは16以下、更に好ましくは12以下である、前記<1>〜<4>いずれか記載の樹脂組成物。
<6> 一般式(2)におけるAの炭素数は、好ましくは2以上であり、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である、前記<1>〜<5>いずれか記載の樹脂組成物。
<7> 一般式(2)におけるAは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、及びヘキシレン基からなる群より選ばれる基が好ましく、エチレン基、プロピレン基がより好ましく、エチレン基が更に好ましい、前記<1>〜<6>いずれか記載の樹脂組成物。
<8> 一般式(2)におけるnは、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上であり、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは20以下、更に好ましくは15以下である、前記<1>〜<7>いずれか記載の樹脂組成物。
<9> 一般式(2)におけるAとnの組み合わせとしては、好ましくはAが炭素数2以上3以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基で、nが0以上20以下の数の組み合わせであり、より好ましくはAが炭素数2以上3以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基で、nが5以上15以下の数の組み合わせである、前記<1>〜<8>いずれか記載の樹脂組成物。
<10> 一般式(1)で表される置換基としては、プロピルヒドロキシエチル基、ブチルヒドロキシエチル基、ペンチルヒドロキシエチル基、ヘキシルヒドロキシエチル基、ヘプチルヒドロキシエチル基、オクチルヒドロキシエチル基、ノニルヒドロキシエチル基、デシルヒドロキシエチル基、ウンデシルヒドロキシエチル基、ドデシルヒドロキシエチル基、ヘキサデシルヒドロキシエチル基、オクタデシルヒドロキシエチル基、イコシルヒドロキシエチル基、及びトリアコンチルヒドロキシエチル基から選ばれる基が好ましい、前記<1>〜<9>いずれか記載の樹脂組成物。
<11> 一般式(2)で表される置換基としては、3−ブトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ヘキトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ヘキトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−オクトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−オクトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、6−エチル―3−ヘキトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、6−エチル―3−ヘキトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−デトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−デトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ウンデトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ウンデトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ドデトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ドデトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ヘキサデトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ヘキサデトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−オクタデトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−オクタデトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基から選ばれる基が好ましい、前記<1>〜<10>いずれか記載の樹脂組成物。
<12> セルロースの無水グルコースユニット1モルに対する前記一般式(1)で表される置換基及び/又は一般式(2)で表される置換基から選ばれる置換基の導入率は、好ましくは0.001モル以上、より好ましくは0.005モル以上、更に好ましくは0.01モル以上、更に好ましくは0.05モル以上、更に好ましくは0.1モル以上、更に好ましくは0.2モル以上、更に好ましくは0.3モル以上、更に好ましくは0.4モル以上であり、好ましくは1.5モル以下、より好ましくは1.3モル以下、更に好ましくは1.0モル以下、更に好ましくは0.8モル以下、更に好ましくは0.6モル以下、更に好ましくは0.5モル以下である、前記<1>〜<11>いずれか記載の樹脂組成物。
<13> 改質セルロース繊維の結晶化度は、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上であり、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下、更に好ましくは80%以下、更に好ましくは75%以下である、前記<1>〜<12>いずれか記載の樹脂組成物。
<14> 改質セルロース繊維が下記一般式(3)で表される、前記<1>〜<13>いずれか記載の樹脂組成物。
【0099】
【化4】
【0100】
〔式中、Rは同一又は異なって、水素、もしくは前記一般式(1)で表される置換基及び前記一般式(2)で表される置換基から選ばれる置換基を示し、mは20以上3000以下の整数を示し、但し、全てのRが同時に水素である場合を除く〕
<15> 一般式(3)で表される改質セルロース繊維は、Rが同一又は異なって、水素、もしくは、一般式(1)で表される置換基及び/又は一般式(2)で表される置換基を示すものであり、但し、全てのRが同時に水素である場合を除き、前記置換基が導入されたセルロースユニットの繰り返し構造を有し、一般式(3)におけるmは100以上2000以下が好ましい、前記<1>〜<14>いずれか記載の樹脂組成物。
<16> 熱可塑性樹脂としては、飽和ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ナイロン樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、ビニルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂が好ましく、ここで、飽和ポリエステル系樹脂としてはポリ乳酸樹脂が好ましく、オレフィン系樹脂としてはポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂が好ましい、前記<1>〜<15>いずれか記載の樹脂組成物。
<17> 硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、若しくはポリイミド樹脂が好ましい、前記<1>〜<16>いずれか記載の樹脂組成物。
<18> 光硬化及び/又は熱硬化処理を行うことができる、前記<1>〜<17>いずれか記載の樹脂組成物。
<19> 光硬化処理において光重合開始剤を用いる、前記<18>記載の樹脂組成物。
<20> 光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物、2,3−ジアルキルシオン類化合物類、ジスルフィド化合物、チウラム化合物類、フルオロアミン化合物が好ましく、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ベンジルメチルケトン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンゾフェノンがより好ましい。前記<19>記載の樹脂組成物。
<21> 硬化剤を用いる、前記<1>〜<20>いずれか記載の樹脂組成物。
<22> 樹脂組成物中の樹脂の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは85質量%以上であり、好ましくは99.5質量%以下、より好ましくは99質量%以下、更に好ましくは98質量%以下、更に好ましくは95質量%以下である、前記<1>〜<21>いずれか記載の樹脂組成物。
<23> 樹脂組成物中の改質セルロース繊維の含有量は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である、前記<1>〜<22>いずれか記載の樹脂組成物。
<24> 樹脂組成物中の改質セルロース繊維量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上、より更に好ましくは5質量部以上であり、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下、更に好ましくは45質量部以下、更に好ましくは25質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である、前記<1>〜<23>いずれか記載の樹脂組成物。
<25> 前記以外の他の成分として、相溶化剤;可塑剤;結晶核剤;充填剤(無機充填剤、有機充填剤);加水分解抑制剤;難燃剤;酸化防止剤;炭化水素系ワックス類やアニオン型界面活性剤である滑剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;防曇剤;光安定剤;顔料;防カビ剤;抗菌剤;発泡剤;界面活性剤;でんぷん類、アルギン酸等の多糖類;ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質;タンニン、ゼオライト、セラミックス、金属粉末等の無機化合物;香料;流動調整剤;レべリング剤;導電剤;紫外線分散剤;消臭剤から選ばれる添加剤を含有することができる、前記<1>〜<24>いずれか記載の樹脂組成物。
<26> 熱可塑性樹脂、及びエポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、若しくはポリイミド樹脂から選ばれる硬化性樹脂、からなる群より選ばれる1種又は2種以上の樹脂と、前記した改質セルロース繊維、さらに必要により各種添加剤を含有する原料を、ヘンシェルミキサー等で攪拌、あるいは密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて溶融混練又は溶媒キャスト法により調製することができる、前記<1>〜<25>いずれか記載の樹脂組成物。
<27> 熱可塑性樹脂、及びエポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、若しくはポリイミド樹脂から選ばれる硬化性樹脂、からなる群より選ばれる1種又は2種以上の樹脂と、前記<1>〜<15>いずれか記載の改質セルロース繊維とを混合する工程を含む、樹脂組成物の製造方法。
<28> 改質セルロース繊維が、セルロース系原料に、塩基の存在下で、一般式(1)で表される置換基を有する化合物及び一般式(2)で表される置換基を有する化合物から選ばれる化合物を反応させる、前記<27>記載の樹脂組成物の製造方法。
<29> セルロース系原料の平均繊維径は、好ましくは5μm以上、より好ましくは7μm以上、更に好ましくは10μm以上、更に好ましくは15μm以上であり、好ましくは10,000μm以下、より好ましくは5,000μm以下、更に好ましくは1,000μm以下、更に好ましくは500μm以下、より更に好ましくは100μm以下である、前記<28>記載の樹脂組成物の製造方法。
<30> セルロース系原料の平均繊維径は、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上、更に好ましく3nm以上、更に好ましくは10nm以上であり、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下、更に好ましくは200nm以下、更に好ましくは100nm以下、より更に好ましくは80nm以下である、前記<28>記載の樹脂組成物の製造方法。
<31> セルロース系原料中のセルロース含有量が、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である、前記<28>〜<30>いずれか記載の樹脂組成物の製造方法。
<32> セルロース系原料中の水分含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である、前記<28>〜<31>いずれか記載の樹脂組成物の製造方法。
<33> セルロース系原料に塩基を混合する、前記<28>〜<32>いずれか記載の樹脂組成物の製造方法。
<34> 塩基としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、1〜3級アミン、4級アンモニウム塩、イミダゾール及びその誘導体、ピリジン及びその誘導体、並びにアルコキシドからなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましい、前記<28>〜<33>いずれか記載の樹脂組成物の製造方法。
<35> アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、及び水酸化バリウムからなる群より選ばれる、前記<34>記載の樹脂組成物の製造方法。
<36> 1〜3級アミンとしては、エチレンジアミン、ジエチルアミン、プロリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、トリス(3−ジメチルアミノプロピル)アミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、及びトリエチルアミンからなる群より選ばれる、前記<34>記載の樹脂組成物の製造方法。
<37> 4級アンモニウム塩としては、水酸化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、フッ化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、フッ化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラメチルアンモニウム、及び臭化テトラメチルアンモニウムからなる群より選ばれる、前記<34>記載の樹脂組成物の製造方法。
<38> イミダゾール及びその誘導体としては、1−メチルイミダゾール、3−アミノプロピルイミダゾール、及びカルボニルジイミダゾールからなる群より選ばれる、前記<34>記載の樹脂組成物の製造方法。
<39> ピリジン及びその誘導体としては、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、及びピコリンからなる群より選ばれる、前記<34>記載の樹脂組成物の製造方法。
<40> アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、及びカリウム−t−ブトキシドからなる群より選ばれる、前記<34>記載の樹脂組成物の製造方法。
<41> 塩基の量は、セルロース系原料の無水グルコースユニットに対して、好ましくは0.01当量以上、より好ましくは0.05当量以上、更に好ましくは0.1当量以上、更に好ましくは0.2当量以上であり、好ましくは10当量以下、より好ましくは8当量以下、更に好ましくは5当量以下、更に好ましくは3当量以下である、前記<28>〜<40>いずれか記載の樹脂組成物の製造方法。
<42> 一般式(1)で表される置換基を有する化合物としては、下記一般式(1A)で示されるノニオン性の酸化アルキレン化合物が好ましく、該化合物の総炭素数としては、5以上、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは12以上であり、32以下、好ましくは27以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは20以下、更に好ましくは18以下、更に好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である、前記<28>〜<41>いずれか記載の樹脂組成物の製造方法。
【0101】
【化5】
【0102】
〔式中、Rは炭素数3以上30以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す〕
<43> 一般式(1A)におけるRの炭素数は、好ましくは4以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは10以上であり、好ましくは25以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは18以下、更に好ましくは16以下、更に好ましくは12以下、更に好ましくは10以下である、前記<42>記載の樹脂組成物の製造方法。
<44> 一般式(1A)で示される化合物としては、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシデカン、及び1,2−エポキシオクタデカンからなる群より選ばれる、前記<42>又は<43>記載の樹脂組成物の製造方法。
<45> 一般式(2)で表される置換基を有する化合物としては、下記一般式(2A)で示されるノニオン性のグリシジルエーテル化合物が好ましく、該化合物の総炭素数としては、5以上、好ましくは6以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは20以上であり、100以下、好ましくは75以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは25以下である、前記<28>〜<41>いずれか記載の樹脂組成物の製造方法。
【0103】
【化6】
【0104】
〔式中、Rは炭素数3以上30以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、Aは炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基、nは0以上50以下の数を示す〕
<46> 一般式(2A)におけるRの炭素数は、好ましくは4以上、より好ましくは6以上であり、好ましくは27以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは20以下、更に好ましくは18以下、更に好ましくは16以下、更に好ましくは12以下である、前記<45>記載の樹脂組成物の製造方法。
<47> 一般式(2A)におけるAの炭素数は、好ましくは2以上であり、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である、前記<45>又は<46>記載の樹脂組成物の製造方法。
<48> 一般式(2A)におけるnは、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上であり、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは20以下、更に好ましくは15以下である、前記<45>〜<47>いずれか記載の樹脂組成物の製造方法。
<49> 一般式(2A)で示される化合物としては、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなる群より選ばれる、前記<45>〜<48>いずれか記載の樹脂組成物の製造方法。
<50> 一般式(1)で表される置換基を有する化合物及び/又は一般式(2)で表される置換基を有する化合物の使用量は、セルロース系原料の無水グルコースユニットに対して、好ましくは0.01当量以上、より好ましくは0.1当量以上、更に好ましくは0.3当量以上、更に好ましくは0.5当量以上、更に好ましくは0.1当量以上であり、好ましくは10当量以下、より好ましくは8当量以下、更に好ましくは6.5当量以下、更に好ましくは5当量以下である、前記<27>〜<49>いずれか記載の樹脂組成物の製造方法。
<51> 溶媒として、水、イソプロパノール、t−ブタノール、ジメチルホルムアミド、トルエン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサン、1,4−ジオキサン、及びこれらの混合物を用いることができる、前記<28>〜<50>いずれか記載の樹脂組成物の製造方法。
<52> 溶媒の使用量としては、セルロース系原料100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは75質量部以上、更に好ましくは100質量部以上、更に好ましくは200質量部以上であり、好ましくは10,000質量部以下、より好ましくは5,000質量部以下、更に好ましくは2,500質量部以下、更に好ましくは1,000質量部以下、更に好ましくは500質量部以下である、前記<51>記載の樹脂組成物の製造方法。
<53> 反応温度としては、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは60℃以上であり、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下、更に好ましくは100℃以下である、前記<28>〜<52>いずれか記載の樹脂組成物の製造方法。
<54> 反応時間としては、好ましくは3時間以上、より好ましくは6時間以上、更に好ましくは10時間以上であり、好ましくは60時間以下、より好ましくは48時間以下、更に好ましくは36時間以下である、前記<28>〜<53>いずれか記載の樹脂組成物の製造方法。
<55> 前記反応後に、公知の微細化処理を更に行う、前記<28>〜<54>いずれか記載の樹脂組成物の製造方法。
<56> 以下の工程を含む、前記<27>〜<55>いずれか記載の樹脂組成物の製造方法。
工程(1):セルロース系原料に対し、塩基存在下、1分子あたりの総炭素数が5以上32以下のノニオン性酸化アルキレン化合物及び1分子あたりの総炭素数が5以上100以下のノニオン性グリシジルエーテル化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物を、エーテル結合を介して導入して改質セルロース繊維を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた改質セルロース繊維と、熱可塑性樹脂、及びエポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、若しくはポリイミド樹脂から選ばれる硬化性樹脂、からなる群より選ばれる1種又は2種以上の樹脂とを混合する工程
<57> 日用雑貨品、家電部品、家電部品用梱包資材、自動車部品、3次元造形用樹脂等各種用途に好適に用いることができる、前記<1>〜<26>いずれか記載の樹脂組成物。
【実施例】
【0105】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。なお、この実施例は、単なる本発明の例示であり、何ら限定を意味するものではない。例中の部は、特記しない限り質量部である。なお、「常圧」とは101.3kPaを、「常温(室温)」とは25℃を示す。
【0106】
置換基を有する化合物の製造例1 ポリオキシアルキレンアルキルエーテル化剤の製造
1000Lの反応槽に、ポリオキシエチレン(13)−n−アルキル(C12)エーテル(花王社製、エマルゲン120、アルキル鎖長;n−C12、オキシエチレン基のモル平均重合度;13)250kgを融解して仕込み、さらにテトラブチルアンモニウムブロミド(広栄化学工業社製)3.8kg、エピクロルヒドリン(ダウケミカル社製)81kg、トルエン83kgを投入して、攪拌・混合した。槽内温度を50℃に維持しつつ、攪拌しながら、48質量%水酸化ナトリウム水溶液(南海化学社製)130kgを1時間で滴下した。滴下終了後、槽内温度を50℃に維持したまま6時間、攪拌・熟成した。熟成終了後、反応混合物を水250kgで6回水洗して塩及びアルカリを除去し、その後、有機相を減圧(6.6kPa)下、90℃まで昇温し、残留するエピクロルヒドリン、溶媒及び水を留去した。減圧下、さらに水蒸気250kgを吹き込んで低沸点化合物を除去し、下式(4)の構造を有するn−アルキル(C12)ポリオキシエチレン(13)グリシジルエーテル240kgを得た。
【0107】
【化7】
【0108】
置換基を有する化合物の製造例2 ステアリルグリシジルエーテルの製造
100L反応槽に、ステアリルアルコール(花王社製、カルコール8098)10kg、テトラブチルアンモニウムブロマイド(広栄化学工業社製)0.36kg、エピクロルヒドリン(ダウケミカル社製)7.5kg、ヘキサン10kgを投入し、窒素雰囲気下で混合した。混合液を50℃に保持しながら48質量%水酸化ナトリウム水溶液(南海化学社製)12kgを30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに50℃で4時間熟成した後、水13kgで8回水洗を繰り返し、塩及びアルカリの除去を行った。その後、槽内温度を90℃に昇温して上層からヘキサンを留去し、減圧下(6.6kPa)、さらに水蒸気を吹き込んで低沸点化合物を除去した。脱水後、槽内温度250℃、槽内圧力1.3kPaで減圧蒸留することによって、白色のステアリルグリシジルエーテル8.6kgを得た。
【0109】
セルロース系原料の製造例1 アルカリ処理バガスの製造
バガス(サトウキビの搾りかす)100質量部(乾燥重量)に対し、処理液全体として水937質量部、水酸化ナトリウム15.2質量部となるよう顆粒状の水酸化ナトリウム及びイオン交換水を加え、オートクレーブ(トミー精工社製、LSX−700)にて、温度120℃で2時間加熱処理を行った。処理後、ろ過・イオン交換水洗浄し、一昼夜70℃で真空乾燥することによりアルカリ処理バガス(繊維状、平均繊維径24μm、セルロース含有量70質量%、水分含有量3質量%)を得た。
【0110】
セルロース系原料の製造例2 粉末セルロースAの製造
針葉樹の漂白クラフトパルプ(以後NBKPと略称、フレッチャー チャレンジ カナダ社製、「Machenzie」、CSF650ml、繊維状、平均繊維径24μm、セルロース含有量90質量%、水分含有量5質量%)を乾燥質量として100g計り取り、バッチ式振動ミル(中央化工機社製「MB−1」:容器全容積3.5L、ロッドとして、φ30mm、長さ218mm、断面形状が円形のSUS304製ロッドを13本使用、ロッド充填率57%)に投入し、20分間粉砕処理することで粉末セルロースA(平均繊維径25μm、結晶化度35%、水分含有量3質量%)を得た。
【0111】
実施例4<アクリル樹脂コンポジットの調製>
針葉樹の漂白クラフトパルプ(NBKP)をセルロース系原料として用いた。絶乾したNBKP1.5gにジメチルホルムアミド6.0g(和光純薬社製、DMF)及びN,N−ジメチル−4−アミノピリジン1.8g(和光純薬社製、DMAP、1.6当量/AGU:セルロース原料がすべて無水グルコースユニットで構成されていると仮定し算出、以下同様))を添加し、均一に混合した後、1,2−エポキシヘキサン4.6g(和光純薬社製、5当量/AGU)を添加し、密閉した後に90℃、24h静置反応を行った。反応後、酢酸(和光純薬社製)で中和し、DMF及び水/イソプロパノール混合溶媒で十分に洗浄することで不純物を取り除き、さらに50℃で一晩真空乾燥を行うことで、改質セルロース繊維を得た。
【0112】
上記で得られた改質セルロース繊維0.25gをDMF49.75g中に投入し、ホモジナイザー(プライミクス社製、T.K.ロボミックス)にて3000rpm(周速4.7m/s)、30分間攪拌後、高圧ホモジナイザー(吉田機械社製、「ナノヴェイタL−ES」)にて100MPaで10パス処理することで微細化された改質セルロース繊維がDMFに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.5質量%)を得た。
【0113】
上記で得られた微細改質セルロース分散体40gと、ウレタンアクリレート樹脂であるUV−3310B(日本合成化学社製)2.0gを混合し、高圧ホモジナイザーを用いて、60MPaで1パス、100MPaで1パスを行って微細化処理を行なった。光重合開始剤として、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(和光純薬社製)0.08gを加え、自転公転式攪拌機 あわとり練太郎(シンキー社製)を用いて7分間攪拌した。得られたワニスをバーコーターを用いて塗布厚2mmで塗工した。80℃で120分乾燥し、溶媒を除去した。UV照射装置(フュージョンシステムズジャパン製、Light Hammer10)を用い200mJ/cm照射して光硬化させて、微細改質セルロース繊維を10質量%(対アクリル樹脂)含む、厚さ約0.1mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0114】
実施例5<アクリル樹脂コンポジットの調製>
絶乾したNBKP1.5gにDMF6.0g及びDMAP1.8g(1.6当量/AGU)を添加し、均一に混合した後、1,2−エポキシデカン7.2g(和光純薬社製、5当量/AGU)を添加し、密閉した後に90℃、24h静置反応を行った。反応後、酢酸で中和し、DMF及び水/イソプロパノール混合溶媒で十分に洗浄することで不純物を取り除き、さらに50℃で一晩真空乾燥を行うことで、改質セルロース繊維を得た。
【0115】
上記で得られた改質セルロース繊維0.25gをメチルエチルケトン49.75g(和光純薬社製、MEK)中に投入し、ホモジナイザーにて3000rpm、30分間攪拌後、高圧ホモジナイザーにて100MPaで10パス処理することで微細化された改質セルロース繊維がMEKに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.5質量%)を得た。
【0116】
上記で得られた微細改質セルロース分散体40gを用い、実施例4と同様の処理を行うことにより、微細改質セルロース繊維を10質量%(対アクリル樹脂)含む、厚さ約0.1mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0117】
実施例31<アクリル樹脂コンポジットの調製>
絶乾したNBKP1.5gにDMF6.0g及びDMAP1.8g(1.6当量/AGU)を添加し、均一に混合した後、1,2−エポキシオクタデカン24.8g(和光純薬社製、10当量/AGU)を添加し、密閉した後に90℃、24h静置反応を行った。反応後、酢酸で中和し、DMF及び水/イソプロパノール混合溶媒で十分に洗浄することで不純物を取り除き、さらに50℃で一晩真空乾燥を行うことで、改質セルロース繊維を得た。
【0118】
上記で得られた改質セルロース繊維0.25gをMEK49.75g中に投入し、ホモジナイザーにて3000rpm、30分間攪拌後、高圧ホモジナイザーにて100MPaで10パス処理することで微細化された改質セルロース繊維がMEKに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.5質量%)を得た。
【0119】
上記で得られた微細改質セルロース分散体40gを用い、実施例4と同様の処理を行うことにより、微細改質セルロース繊維を10質量%(対アクリル樹脂)含む、厚さ約0.1mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0120】
実施例32<アクリル樹脂コンポジットの調製>
反応試薬をブチルグリシジルエーテル(東京化成工業社製)に変更し、試薬添加量を6.0g(5当量/AGU)にした以外は、実施例4と同様の手法を用いることで改質セルロース繊維を得た。
【0121】
得られた改質セルロース繊維を用いて、実施例4と同様にして、微細改質セルロース分散体を調製し、当該分散体を用いて微細改質セルロース繊維を10質量%(対アクリル樹脂)含む、厚さ約0.1mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0122】
実施例33<アクリル樹脂コンポジットの調製>
反応試薬を2−エチルヘキシルグリシジルエーテル(東京化成工業社製)に変更し、試薬添加量を8.6g(5当量/AGU)にした以外は、実施例4と同様の手法を用いることで改質セルロース繊維を得た。
【0123】
得られた改質セルロース繊維を用いて、実施例4と同様にして、微細改質セルロース分散体を調製し、当該分散体を用いて微細改質セルロース繊維を10質量%(対アクリル樹脂)含む、厚さ約0.1mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0124】
実施例34<アクリル樹脂コンポジットの調製>
絶乾したNBKP1.5gにアセトニトリル6.0g(和光純薬社製)及び水酸化テトラブチルアンモニウム2.7g(和光純薬社製、10%水溶液、TBAH、0.8当量/AGU)を添加し、均一に混合した後、置換基を有する化合物の製造例2で調製したステアリルグリシジルエーテル31.0g(6当量/AGU)を添加し、密閉した後に70℃、24h静置反応を行った。反応後、酢酸で中和し、DMF及び水/イソプロパノール混合溶媒で十分に洗浄することで不純物を取り除き、さらに50℃で一晩真空乾燥を行うことで、改質セルロース繊維を得た。
【0125】
上記で得られた改質セルロース繊維0.25gをトルエン49.75g中に投入し、ホモジナイザーにて3000rpm、30分間攪拌後、高圧ホモジナイザーにて100MPaで10パス処理することで微細化された改質セルロース繊維がトルエンに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.5質量%)を得た。
【0126】
得られた微細改質セルロース分散体を用いて、実施例4と同様にして、微細改質セルロース繊維を10質量%(対アクリル樹脂)含む、厚さ約0.1mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0127】
実施例6<アクリル樹脂コンポジットの調製>
セルロース系原料を、予めDMFに溶媒置換したミクロフィブリル化セルロース1.5g(固形分含有量として)(ダイセルファインケム社製、商品名「セリッシュ FD100−G」、固形分濃度10質量%、平均繊維幅100nm以下)に変更し、追加で溶媒を添加しなかった以外は、実施例5と同様の手法を用いることで改質セルロース繊維を得た。
【0128】
上記で得られた改質セルロース繊維0.25gをDMF49.75g中に投入し、マグネチックスターラーを用い、室温、1500rpmで一時間攪拌することで微細化された改質セルロース繊維がDMFに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.5質量%)を得た。
【0129】
上記で得られた微細改質セルロース分散体40gを用い、高圧ホモジナイザーによる微細化処理を行わなかった以外は、実施例4と同様の処理を行うことにより、微細改質セルロース繊維を10質量%(対アクリル樹脂)含む、厚さ約0.1mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0130】
実施例7<アクリル樹脂コンポジットの調製>
絶乾したNBKP1.5gにアセトニトリル6.0g及び水酸化テトラブチルアンモニウム2.7g(和光純薬社製、10%水溶液、TBAH、0.8当量/AGU)を添加し、均一に混合した後、置換基を有する化合物の製造例1で調製したポリオキシアルキレンアルキルエーテル化剤22.6g(3当量/AGU)を添加し、密閉した後に70℃、24h静置反応を行った。反応後、酢酸で中和し、DMF及び水/イソプロパノール混合溶媒で十分に洗浄することで不純物を取り除き、さらに50℃で一晩真空乾燥を行うことで、改質セルロース繊維を得た。
【0131】
上記で得られた改質セルロース繊維0.25gをMEK49.75g中に投入し、ホモジナイザーにて3000rpm、30分間攪拌後、高圧ホモジナイザーにて100MPaで10パス処理することで微細化された改質セルロース繊維がMEKに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.5質量%)を得た。
【0132】
上記で得られた微細改質セルロース分散体40gを用い、実施例1と同様の処理を行うことにより、微細改質セルロース繊維を10質量%(対アクリル樹脂)含む、厚さ約0.1mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0133】
実施例35<LBKPを原料として使用>
ユーカリ由来の広葉樹漂白クラフトパルプ(以後LBKPと略称、CENIBRA社製、繊維状、平均繊維径24μm、セルロース含有量90質量%、水分含有量5質量%)を原料セルロースとして用いた。還流管と滴下ロートを取り付けたニーダー(入江商会社製、PNV−1型、容積1.0L)に絶乾したLBKP100gを投入し、6.4質量%の水酸化ナトリウム水溶液100g(0.26当量/AGU)及びイソプロパノール100gを順次添加した後、室温、50rpmで30分間攪拌して均一に混合した。さらに1,2−エポキシヘキサン92.7g(1.5当量/AGU)を1分で滴下し、攪拌を行いながら70℃還流条件にて24h反応を行った。反応後、酢酸で中和し、水/イソプロパノール混合溶媒で十分に洗浄することで不純物を取り除き、さらに50℃で一晩真空乾燥を行うことで、改質セルロース繊維を得た。
【0134】
得られた改質セルロース繊維を用いて、実施例4と同様にして、微細改質セルロース分散体を調製し、当該分散体を用いて微細改質セルロース繊維を10質量%(対アクリル樹脂)含む、厚さ約0.1mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0135】
実施例36<HYPを原料として使用>
使用する原料をスプルース由来のHighYieldPulp(以後HYPと略称、Rottneros社製、繊維状、平均繊維径28μm、セルロース含有量55質量%、水分含有量15質量%)に変更した以外は、実施例35と同様の手法を用いることで改質セルロース繊維を得た。
【0136】
得られた改質セルロース繊維を用いて、実施例4と同様にして、微細改質セルロース分散体を調製し、当該分散体を用いて微細改質セルロース繊維を10質量%(対アクリル樹脂)含む、厚さ約0.1mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0137】
実施例37<ARBOCELを原料として使用>
使用する原料をARBOCEL BC200(以後ARBOCELと略称、レッテンマイヤー社製、粉末状、平均繊維径65μm、セルロース含有量90質量%、水分含有量5質量%)に変更した以外は、実施例35と同様の手法を用いることで改質セルロース繊維を得た。
【0138】
得られた改質セルロース繊維を用いて、実施例4と同様にして、微細改質セルロース分散体を調製し、当該分散体を用いて微細改質セルロース繊維を10質量%(対アクリル樹脂)含む、厚さ約0.1mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0139】
実施例38<粉末セルロースAを原料として使用>
使用する原料を、セルロース系原料の製造例2で調製した粉末セルロースA(粉末状、平均繊維径25μm、セルロース含有量90質量%、水分含有量3質量%)に変更した以外は、実施例35と同様の手法を用いることで改質セルロース繊維を得た。
【0140】
得られた改質セルロース繊維を用いて、実施例4と同様にして、微細改質セルロース分散体を調製し、当該分散体を用いて微細改質セルロース繊維を10質量%(対アクリル樹脂)含む、厚さ約0.1mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0141】
比較例1<アクリル樹脂ブランク>
微細改質セルロース繊維分散体の代わりにMEK10mLを使用し、塗布厚を0.5mmに変更した以外は、実施例1と同等の処理を行うことで厚さ約0.1mmのシート状のアクリル樹脂成形体を製造した。
【0142】
比較例31<ミクロフィブリル化セルロース(MFC)を原料として使用>
セルロース系原料を、予めDMFに溶媒置換したミクロフィブリル化セルロース1.5g(固形分含有量として)(ダイセルファインケム社製、商品名「セリッシュ FD100−G」)に、6.4質量%の水酸化ナトリウム水溶液1.5g(0.26当量/AGU)及びイソプロパノール1.5gを添加し、均一に混合した後、酸化プロピレン0.16g(和光純薬社製、0.3当量/AGU)を添加し、密閉した後に70℃、24h静置反応を行った。反応後、酢酸(和光純薬社製)で中和し、水/イソプロパノール混合溶媒で十分に洗浄することで不純物を取り除き、さらに50℃で一晩真空乾燥を行うことで、改質セルロース繊維を得た。
【0143】
得られた改質セルロース繊維を用いて、実施例4と同様にして、微細改質セルロース分散体を調製し、当該分散体を用いて微細改質セルロース繊維を10質量%(対アクリル樹脂)含む、厚さ約0.1mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0144】
比較例32<ミクロフィブリル化セルロース(MFC)を原料として使用>
反応試薬を酸化ブチレン(和光純薬製)に変更し、試薬添加量を0.40g(0.6当量/AGU)に変更した以外は、比較例31と同様にして、微細改質セルロース繊維を10質量%(対アクリル樹脂)含む、厚さ約0.1mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0145】
実施例8<エポキシ樹脂コンポジットの調製>
セルロース系原料の製造例1で調製したアルカリ処理バガスをセルロース繊維として用いた。還流管と滴下ロートを取り付けたニーダー(入江商会社製、PNV−1型、容積1.0L)に絶乾したアルカリ処理バガス100gを投入し、6.4質量%の水酸化ナトリウム水溶液100g(0.26当量/AGU)及びイソプロパノール100gを順次添加した後、室温、50rpmで30分間攪拌して均一に混合した。さらに1,2−エポキシヘキサン92.7g(1.5当量/AGU)を1分で滴下し、攪拌を行いながら70℃還流条件にて24h反応を行った。反応後、酢酸(和光純薬社製)で中和し、水/イソプロパノール混合溶媒で十分に洗浄することで不純物を取り除き、さらに50℃で一晩真空乾燥を行うことで、改質セルロース繊維を得た。
【0146】
上記で得られた改質セルロース繊維0.25gをDMF49.75g中に投入し、ホモジナイザーにて3000rpm、30分間攪拌後、高圧ホモジナイザーにて100MPaで10パス処理することで微細化された改質セルロース繊維がDMFに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.5質量%)を得た。
【0147】
上記で得られた微細改質セルロース分散体50gと、エポキシ樹脂であるjER828(三菱化学社製)2.5gを混合し、高圧ホモジナイザーを用いて、60MPaで1パス、100MPaで1パス行って微細化処理を行なった。得られた溶液に対して、硬化剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(和光純薬社製)0.4g加え、自転公転式攪拌機 あわとり練太郎(シンキー社製)を用いて7分間攪拌した。得られたワニスをバーコーターを用いて塗布厚2mmで塗工した。100℃で1時間乾燥し、溶媒を除去した後、150℃2時間で熱硬化させて、微細改質セルロース繊維を10質量%(対エポキシ樹脂)含む、厚さ約0.2mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0148】
実施例39<エポキシ樹脂コンポジットの調製>
実施例4と同様にして得られた微細改質セルロース分散体を用いて、実施例8と同様にして、微細改質セルロース繊維を10質量%(対エポキシ樹脂)含む、厚さ約0.2mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0149】
比較例2<エポキシ樹脂ブランク>
微細改質セルロース繊維分散体の代わりにDMF10mLを使用し、塗布厚を0.5mmに変更した以外は、実施例8と同等の処理を行うことで厚さ約0.2mmのシート状のエポキシ樹脂成形体を製造した。
【0150】
実施例9<ポリスチレン樹脂コンポジットの調製>
絶乾したNBKP1.5gにDMF6.0g及びDMAP1.8g(1.6当量/AGU)を添加し、均一に混合した後、1,2−エポキシヘキサン4.6g(5当量/AGU)を添加し、密閉した後に90℃、24h静置反応を行った。反応後、酢酸で中和し、DMF及び水/イソプロパノール混合溶媒で十分に洗浄することで不純物を取り除き、さらに50℃で一晩真空乾燥を行うことで、改質セルロース繊維を得た。
【0151】
上記で得られた改質セルロース繊維0.50gをDMF49.50g中に投入し、ホモジナイザーにて3000rpm、30分間攪拌後、高圧ホモジナイザーにて100MPaで10パス処理することで微細化された改質セルロース繊維がDMFに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度1.0質量%)を得た。
【0152】
上記で得られた微細改質セルロース分散体15g、ポリスチレン樹脂(シグマアルドリッチ社製、数平均分子量170,000、製造番号441147-1KG)1.5g、DMF30gを混合し、マグネチックスターラーを用い、室温、1500rpmで12時間攪拌した後、高圧ホモジナイザーを用いて、60MPaで1パス、100MPaで1パス行って、微細化処理を行なった。その後、自転公転式攪拌機 あわとり練太郎(シンキー社製)を用いて7分間攪拌した。得られたワニスを直径9cmのガラス製シャーレに投入し、100℃で12時間乾燥し、溶媒を除去することで、微細改質セルロース繊維を10質量%(対ポリスチレン樹脂)含む、厚さ約0.2mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0153】
比較例3<ポリスチレン樹脂ブランク>
微細改質セルロース繊維分散体の代わりにDMF15gを使用した以外は、実施例9と同等の処理を行うことで厚さ約0.2mmのシート状のポリスチレン樹樹脂成形体を製造した。
【0154】
実施例10<ポリエチレン樹脂コンポジットの調製>
ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名:ノバッテックLL UF641)80gに対し、上記実施例8と同様にして得られた改質セルロース繊維8.0gを、微細化工程を経ずに直接添加し、混練機(東洋精機社製、ラボプラストミル)を用いて、回転数50rpm、240℃で8分混練して均一混合物を得た。該均一混合物を、プレス機(東洋精機社製、「ラボプレス」)を用いて、240℃、0.4MPaにて1分、20MPaにて1分、次に80℃、0.4MPaにて1分の条件で順次プレスし、改質セルロース繊維を10質量%(対ポリエチレン樹脂)含む、厚さ約0.4mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0155】
実施例11<ポリエチレン樹脂コンポジットの調製>
相溶化剤として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三洋化成社製、商品名:ユーメックス1001)を2gさらに添加した以外は、実施例10と同様の処理を行い、改質セルロース繊維を10質量%(対ポリエチレン樹脂)、相溶化剤を2.5質量%(対ポリエチレン樹脂)含む、厚さ約0.4mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0156】
実施例40<ポリエチレン樹脂コンポジットの調製>
絶乾したNBKP1.5gにDMF6.0g及びN,N−ジメチル−4−アミノピリジン1.8g(和光純薬社製、DMAP、1.6当量/AGU)を添加し、均一に混合した後、1,2−エポキシヘキサン4.6g(5当量/AGU)を添加し、密閉した後に90℃、24h静置反応を行った。反応後、酢酸で中和し、DMF及び水/イソプロパノール混合溶媒で十分に洗浄することで不純物を取り除き、さらに50℃で一晩真空乾燥を行うことで、改質セルロース繊維を得た。
【0157】
使用する改質セルロース繊維を上記で得られた改質セルロース繊維に変更した以外は、実施例10と同様の処理を行うことで、改質セルロース繊維を10質量%(対ポリエチレン樹脂)含む、厚さ約0.4mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0158】
実施例41<ポリエチレン樹脂コンポジットの調製>
実施例40で得た改質セルロース繊維100g(乾燥質量)に対し、あらかじめバッチ式振動ミル(中央化工機社製「MB−1」:容器全容積3.5L、ロッドとして、φ30mm、長さ218mm、断面形状が円形のSUS304製ロッドを13本使用、ロッド充填率57%)に投入し、20分間粉砕処理することで、得られた粉末状の改質セルロース繊維8.0gを用いた以外は、実施例10と同様の処理を行うことで、改質セルロース繊維を10質量%(対ポリエチレン樹脂)含む、厚さ約0.4mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0159】
実施例42<ポリエチレン樹脂コンポジットの調製>
使用する改質セルロース繊維を実施例31と同様にして得られた改質セルロース繊維に変更した以外は、実施例10と同様の処理を行うことで、改質セルロース繊維を10質量%(対ポリエチレン樹脂)含む、厚さ約0.4mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0160】
実施例43<ポリエチレン樹脂コンポジットの調製>
使用する改質セルロース繊維を実施例34と同様にして得られた改質セルロース繊維に変更した以外は、実施例10と同様の処理を行うことで、改質セルロース繊維を10質量%(対ポリエチレン樹脂)含む、厚さ約0.4mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0161】
比較例4<ポリエチレンブランク>
改質セルロース繊維を用いなかった以外は、実施例10と同等の処理を行うことで厚さ約0.4mmのシート状のポリエチレン樹脂成形体を製造した。
【0162】
比較例5<相溶化剤の添加>
相溶化剤としてユーメックス1001を2gさらに添加した以外は、比較例4と同様の処理を行い、相溶化剤を2.5質量%(対ポリエチレン樹脂)含む、厚さ約0.4mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0163】
比較例33<ポリエチレン樹脂コンポジットの調製>
絶乾したNBKP1.5gに、6.4質量%の水酸化ナトリウム水溶液1.5g(0.26当量/AGU)及びイソプロパノール1.5gを添加し、均一に混合した後、酸化プロピレン0.16g(0.3当量/AGU)を添加し、密閉した後に70℃、24h静置反応を行った。反応後、酢酸で中和し、水/イソプロパノール混合溶媒で十分に洗浄することで不純物を取り除き、さらに50℃で一晩真空乾燥を行うことで、改質セルロース繊維を得た。
【0164】
得られた改質セルロース繊維を用いて、実施例10と同様の処理を行うことで、改質セルロース繊維を10質量%(対ポリエチレン樹脂)含む、厚さ約0.4mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0165】
得られた改質セルロース繊維について、置換基導入率、改質セルロース繊維及びセルロース系原料の平均繊維径、並びに結晶構造の確認(結晶化度)を、下記試験例1〜4の方法に従って評価した。また、成形体の特性については下記試験例5〜7の方法に従って、それぞれ評価した。結果を表1〜5に示す。
【0166】
試験例1(置換基導入率(置換度))
得られた改質セルロース繊維中に含有される、疎水エーテル基の含有量%(質量%)は、Analytical Chemistry,Vol.51,No.13,2172(1979)、「第十五改正日本薬局方(ヒドロキシプロピルセルロースの分析方法の項)」等に記載の、セルロースエーテルのアルコキシ基の平均付加モル数を分析する手法として知られるZeisel法に準じて算出した。以下に手順を示す。
(i)200mLメスフラスコにn−オクタデカン0.1gを加え、ヘキサンにて標線までメスアップを行い、内標溶液を調製した。
(ii)精製、乾燥を行った改質セルロース繊維100mg、アジピン酸100mgを10mLバイアル瓶に精秤し、ヨウ化水素酸2mLを加えて密栓した。
(iii)上記バイアル瓶中の混合物を、スターラーチップにより攪拌しながら、160℃のブロックヒーターにて1時間加熱した。
(iv)加熱後、バイアルに内標溶液3mL、ジエチルエーテル3mLを順次注入し、室温で1分間攪拌した。
(v)バイアル瓶中の2相に分離した混合物の上層(ジエチルエーテル層)をガスクロマトグラフィー(SHIMADZU社製、「GC2010Plus」)にて分析した。分析条件は以下のとおりであった。
カラム:アジレント・テクノロジー社製DB−5(12m、0.2mm×0.33μm)
カラム温度:100℃→10℃/min→280℃(10min Hold)
インジェクター温度:300℃、検出器温度:300℃、打ち込み量:1μL
使用したエーテル化試薬の検出量から改質セルロース繊維中のエーテル基の含有量(質量%)を算出した。
得られたエーテル基含有量から、下記数式(1)を用いてモル置換度(MS)(無水グルコースユニット1モルに対する置換基モル量)を算出した。
(数式1)
MS=(W1/Mw)/((100−W1)/162.14)
W1:改質セルロース繊維中のエーテル基の含有量(質量%)
Mw:導入したエーテル化試薬の分子量(g/mol)
【0167】
試験例2(セルロース系原料及び改質セルロース繊維の平均繊維径)
セルロース系原料及び改質セルロース繊維の繊維径は、以下の手法により求めた。絶乾したサンプル約0.3gを精秤し、1.0Lのイオン交換水中で家庭用ミキサーを用いて1分間攪拌し、繊維を水中に解した。その後、さらにイオン交換水4.0Lを加え、均一になるよう攪拌した。得られた水分散液から、約50gを測定液として回収し、精秤した。得られた測定液を、メッツォオートメーション社製の「Kajaani Fiber Lab」にて分析することで、平均繊維径を得た。
【0168】
試験例3(微細改質セルロース繊維の平均繊維径)
得られた分散体を光学顕微鏡(キーエンス社製、「デジタルマイクロスコープVHX−1000」)を用い、倍率300〜1000倍で観察した繊維30本以上の平均値を計測した(四捨五入して有効数字1ケタで計算)。光学顕微鏡での観察が困難な場合は、セルロース繊維分散体に溶媒をさらに加えて0.0001質量%の分散液を調製し、該分散液をマイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(AFM、Nanoscope III Tapping mode AFM、Digital instrument社製、プローブはナノセンサーズ社製Point Probe (NCH)を使用)を用いて、該観察試料中のセルロース繊維の繊維高さを測定した。その際、該セルロース繊維が確認できる顕微鏡画像において、微細セルロース繊維を5本以上抽出し、それらの繊維高さから平均繊維径(分散体中の繊維径)を算出した。なお、分散体中に繊維が凝集して分析が不可能な場合を「>10000」と記載した。
【0169】
試験例4(結晶構造の確認)
改質セルロース繊維の結晶構造は、リガク社製の「RigakuRINT 2500VC X−RAY diffractometer」を用いて以下の条件で測定することにより確認した。測定条件は、X線源:Cu/Kα−radiation、管電圧:40kv、管電流:120mA、測定範囲:回折角2θ=5〜45°、X線のスキャンスピード:10°/minとした。測定用サンプルは面積320mm×厚さ1mmのペレットを圧縮し作製した。また、セルロースI型結晶構造の結晶化度は得られたX線回折強度を、以下の式(A)に基づいて算出した。
セルロースI型結晶化度(%)=[(I22.6−I18.5)/I22.6]×100 (A)
〔式中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は,アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す〕
一方、上記式(A)で得られる結晶化度が35%以下の場合には、算出精度の向上の観点から、「木質科学実験マニュアル」(日本木材学会編)のP199−200の記載に則り、以下の式(B)に基づいて算出した値を結晶化度として用いることが好ましい。
したがって、上記式(A)で得られる結晶化度が35%以下の場合には、以下の式(B)に基づいて算出した値を結晶化度として用いることができる。
セルロースI型結晶化度(%)=[Ac/(Ac+Aa)]×100 (B)
〔式中、Acは、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)、(011面)(回折角2θ=15.1°)および(0-11面)(回折角2θ=16.2°)のピーク面積の総和、Aaは,アモルファス部(回折角2θ=18.5°)のピーク面積を示し、各ピーク面積は得られたX線回折チャートをガウス関数でフィッティングすることで求める〕
【0170】
試験例5(貯蔵弾性率)
動的粘弾性装置(SII社製、「DMS6100」)を用いて、得られた成形体から幅5mm、長さ20mmで切り出した短冊型サンプルの貯蔵弾性率を、窒素雰囲気下、周波数1Hzで、−50℃から200℃まで、1分間に2℃の割合で温度を上昇させて、引張モードで計測した。表中に記載の貯蔵弾性率は括弧内の温度における値であり、貯蔵弾性率(MPa)が高いほど強度に優れることから、高温時の強度が高い程耐熱性に優れることを示す。
【0171】
試験例6(線熱膨張係数(CTE))
熱応力歪測定装置(セイコー電子社製、「EXSTAR TMA/SS6100」)を用いて、幅3mm、長さ20mmの短冊型サンプルを窒素雰囲気下1分間に5℃の割合で温度を上昇させて引張モードで荷重を25gで計測した。線熱膨張係数(CTE)は所定の温度範囲での平均線熱膨張係数を算出して得た。表中に記載の括弧内の数値は算出に用いた温度範囲を示し、CTEが低い方が寸法安定性に優れていることを示す。
【0172】
試験例7(引張弾性率)
25℃の恒温室において、引張圧縮試験機(SHIMADZU社製、「Autograph AGS−X」)を用いて、JIS K7113に準拠して、成形体の引張弾性率を引張試験によって測定した。2号ダンベルで打ち抜いたサンプルを支点間距離80mmでセットし、クロスヘッド速度10mm/minで測定した。引張弾性率がより高い方が機械的強度に優れていることを示す。
【0173】
【表1】
【0174】
【表2】
【0175】
【表3】
【0176】
【表4】
【0177】
【表5】
【0178】
表1〜5より、本発明の樹脂組成物は、特定の改質セルロース繊維を含有するため、樹脂の種類や複合化の方法を問わず、幅広い適用範囲において機械的強度、寸法安定性、及び耐熱性に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0179】
本発明の樹脂組成物は、日用雑貨品、家電部品、家電部品用梱包資材、自動車部品、3次元造形用樹脂等の様々な工業用途に好適に使用することができる。