特許第6845642号(P6845642)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6845642
(24)【登録日】2021年3月2日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】ヘッドレスト装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/885 20180101AFI20210315BHJP
   A47C 7/38 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   B60N2/885
   A47C7/38
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-180572(P2016-180572)
(22)【出願日】2016年9月15日
(65)【公開番号】特開2018-43677(P2018-43677A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2019年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】森本 達也
【審査官】 望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−512278(JP,A)
【文献】 特開2004−161213(JP,A)
【文献】 特表2007−507322(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0214513(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/885
B60N 2/838
B60N 2/809
A47C 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席使用者の後頭部を支持する第1の主面部を有するヘッドレスト部と、
第2の主面部と、前記第2の主面部の一周縁部を構成する支持端部とをそれぞれ有し、
前記ヘッドレスト部の下部両側方にそれぞれ配置された一対のネックサポート部と、
前記ヘッドレスト部と前記一対のネックサポート部とを相互に連結し、前記支持端部によって座席使用者の首を左右両側から挟み込む第1の位置と、前記支持端部を座席使用者の首から離隔させる第2の位置との間にわたって前記一対のネックサポート部を回動させることが可能に構成された回動機構と
を具備し、
前記回動機構は、前記ヘッドレスト部の幅方向に平行な第1の軸方向に対して斜めに交差し、前記第1の軸に交差する第2の軸に関して対称に配置され、前記一対のネックサポート部をそれぞれ回動させる一対の回動軸を有し、
前記第1の主面部は、頂点が下部に位置する概略三角形状を有し、
前記支持端部は、前記第1の位置で前記第1の主面部から前方へ突出し、前記一対のネックサポート部の下縁部を形成する
ヘッドレスト装置。
【請求項2】
請求項に記載のヘッドレスト装置であって、
前記第2の主面部は、前記第1の主面部の斜辺部に対向する底辺部を有する概略三角形状を有する
ヘッドレスト装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のヘッドレスト装置であって、
シートに取り付け可能に構成され、前記ヘッドレスト部を支持するベース部材と、
前記ヘッドレスト部の背面と前記ベース部材との間に設置され、前記ベース部材に対して前記ヘッドレスト部をその幅方向に沿った軸周りに傾動させることが可能に構成された傾動機構と、をさらに具備する
ヘッドレスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシートに設けられるヘッドレスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば鉄道車両用のシートとして、座席使用者の後頭部を支持するヘッドレストを備えたものが知られている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、この種のヘッドレストは、乗員の首の支えがなく、首に安定感がない。
【0003】
一方、自動車の座席用のヘッドレストとして、乗員の後頭部だけでなく首をも支持できる構造のヘッドレストが知られている。例えば特許文献2には、搭乗者の後頭部を支持可能な中央支持部と、その中央支持部の前側下部に位置する補助支持部とを備え、保持支持部が左右方向に沿って延びる軸線周りに傾動可能に構成されたヘッドレストが開示されている。しかしながら上記ヘッドレストは、搭乗者の首を後方側から支持するだけの構成であるため、頭部が左右に倒れやすく、安定感が低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63−13055号公報
【特許文献2】特開2007−257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、新幹線や特急、長距離バス等の乗客に対して、快適な座り心地を長時間にわたって提供することができる座席の開発が進められており、特に、乗客の頭部を安定に支持して首や肩の負担を軽減することが可能なヘッドレストの開発が重要な課題となっている。しかしながら従来のヘッドレストは首元の支持が不十分であるため、頭部が左右に倒れやすく、このため首や肩の負担を軽減することが難しいという問題がある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、首元を安定に支持することができるヘッドレスト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るヘッドレスト装置は、ヘッドレスト部と、一対のネックサポート部と、回動機構とを具備する。
上記ヘッドレスト部は、座席使用者の後頭部を支持する第1の主面部を有する。
上記一対のネックサポート部は、第2の主面部と、上記第2の主面部の一周縁部を構成する支持端部とをそれぞれ有し、上記ヘッドレスト部の下部両側方にそれぞれ配置される。
上記回動機構は、上記ヘッドレスト部と上記一対のネックサポート部とを相互に連結し、上記支持端部によって座席使用者の首を左右両側から挟み込む第1の位置と、上記支持端部を座席使用者の首から離隔させる第2の位置との間にわたって上記一対のネックサポート部を回動させることが可能に構成される。
【0008】
上記ヘッドレスト装置において、一対のネックサポート部は、それらの一周縁部を構成する支持端部で座席使用者の首を左右両側から挟み込む位置に回動可能に構成される。これにより、座席使用者の首元を安定に支持することができる。
【0009】
上記回動機構は、上記一対のネックサポート部をそれぞれ上記第1の主面部と平行な軸まわりに回動させる一対の回動軸を有してもよい。この場合、上記支持端部は、上記第1の位置で上記第1の主面部から前方へ突出する。
これにより、ネックサポート部の非使用時はヘッドレスト部と概略同一の平面上に退避させておくことが可能となり、ヘッドレスト装置のコンパクト化を図ることができる。
【0010】
上記一対の回動軸は、上記ヘッドレスト部の幅方向に平行な第1の軸方向に対して斜めに交差し、上記第1の軸に交差する第2の軸に関して対称に配置されてもよい。
これによりユーザの首を後方側(ヘッドレスト部側)から安定に支持することができる。
【0011】
この場合、上記第1の主面部は、頂点が下部に位置する概略二等辺三角形状を有し、上記第2の主面部は、上記第1の主面部の斜辺部に対向する底辺部を有する概略二等辺三角形状を有してもよい。
これにより、一対のネックサポート部(支持端部)間の間隙が、ヘッドレスト部に近付くほど狭くなるため、座席使用者の首の太さや長さに依存することなく、その首元を安定に支持することができる。
【0012】
一方、上記一対の回動軸は、上記ヘッドレスト部の幅方向に平行に配置されてもよい。このような構成によっても、一対のネックサポート部各々の周縁端部間で座席使用者の首元を安定に支持することができる。
【0013】
上記ヘッドレスト装置は、ベース部材と、傾動機構とをさらに具備してもよい。
上記ベース部材は、シートに取り付け可能に構成され、上記ヘッドレスト部を支持する。
上記傾動機構は、上記ヘッドレスト部の背面と上記ベース部材との間に設置され、上記ベース部材に対して上記ヘッドレスト部をその幅方向に沿った軸周りに傾動させることが可能に構成される。
これにより、例えばシートの背凭れ部を後方へ倒して横臥する姿勢においても、座席使用者の首元を安定したフィット感で支持することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明のヘッドレスト装置によれば、座席使用者の首元を安定に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るヘッドレスト装置の構成を概略的に示す全体斜視図であり、ネックサポート部の非使用状態を示している。
図2】上記ヘッドレスト装置の構成を概略的に示す全体斜視図であり、ネックサポート部の使用状態を示している。
図3】上記ヘッドレスト装置の内部構成を示す透過斜視図である。
図4】上記ヘッドレスト装置を構成するフレーム組立体の正面図である。
図5】上記フレーム組立体の背面図である。
図6】上記フレーム組立体の側面図である。
図7】上記ヘッドレスト装置の一作用を説明する斜視図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係るヘッドレスト装置の構成を概略的に示す全体斜視図であり、Aはネックサポート部の非使用状態を、Bはネックサポート部の使用状態をそれぞれ示す。
図9】上記ヘッドレスト装置の一作用を説明する斜視図である。
図10】本発明の第3の実施形態に係るヘッドレスト装置の構成を概略的に示す全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0017】
<第1の実施形態>
図1及び図2は、本発明の一実施形態に係るヘッドレスト装置100の構成を概略的に示す全体斜視図であり、図1は非使用時、図2は使用時をそれぞれ示している。
なお各図において、X軸、Y軸及びZ軸は相互に直交する3軸方向を示しており、X軸は左右方向、Y軸は前後方向、Z軸は高さ方向にそれぞれ相当する。
【0018】
[ヘッドレスト装置の全体構成]
ヘッドレスト装置100は、例えば新幹線、特急列車等の鉄道車両のシート(座席装置)の上部に設置される。ヘッドレスト装置100は、ユーザ(座席使用者)の頭部を背後から支持することが可能に構成される。
【0019】
ヘッドレスト装置100は、ヘッドレスト部11と一対のネックサポート部12L,12Rとを有するヘッドレスト本体10と、ヘッドレスト本体10を図示しないシートに取り付けるベース部材20と、ヘッドレスト本体10とベース部材20との間に設置された傾動機構30とを備える。
【0020】
ヘッドレスト本体10は、ユーザの後頭部に対向するヘッドレスト装置100の正面(前面)を構成し、正面方向から見たときの形状が、X軸方向に長辺、Z軸方向に短辺を有する概略矩形状に形成される。
一方、ベース部材20は、上記シートに対向するヘッドレスト装置100の背面(後面)を構成する。なお、ベース部材20及び傾動機構30の詳細については後述する。
【0021】
[ヘッドレスト本体]
ヘッドレスト部11及び一対のネックサポート部12L,12Rはそれぞれクッション性を有する板状の構造体で構成される。一対のネックサポート部12L,12Rは、後述する回動機構13を介して相互に連結されており、図2に示すようにヘッドレスト部11に対して前方へ所定角度回動可能に構成される。
【0022】
ヘッドレスト部11は、ユーザの後頭部を支持する第1の主面部111を有する。第1の主面部111は、頂点が下部に位置する概略二等辺三角形状を有し、図1においてXZ平面と略平行な平面で構成される。第1の主面部111の底辺111aに沿う周縁部はヘッドレスト本体10の上面を形成し、第1の主面部111の一対の斜辺111b,111cに相周縁部はそれぞれ一対のネックサポート部12L,12Rに対向する。
【0023】
一対のネックサポート部12L,12Rは、ヘッドレスト部11の下部両側方にそれぞれ配置される。一対のネックサポート部12L、12Rは、第2の主面部121を有する。第2の主面部121は、第1の主面部111の斜辺部111b,111cに対向する底辺部121cをそれぞれ有する概略二等辺三角形状を有する。第2の主面部121の一対の斜辺部のうち、一方の斜辺部に沿う周縁部は、図1に示す姿勢ではヘッドレスト本体10の下面を形成し、図2に示す姿勢ではユーザの首元を支持する支持端部121aとして機能する。第2の主面部121の他方の斜辺部に沿う周縁部は、ヘッドレスト本体10の両側面を形成する。
【0024】
図3は、ヘッドレスト本体10の内部構造を説明する透過斜視図である。ヘッドレスト部11及びネックサポート部12L,12Rはそれぞれ、第1〜第3の支持フレーム151〜153とこれらを収容するクッション材11c、12Lc、12Rcとの組み合わせ体で構成される。
【0025】
図3に示すように、ヘッドレスト本体10は、フレーム組立体150を有する。フレーム組立体150は、ヘッドレスト部11を構成する第1の支持フレーム151と、ネックサポート部12L,12Rを構成する第2の支持フレーム152L,152Rと、ヘッドレスト部11及びネックサポート部12L,12Rを相互に連結する回動機構13L,13Rとを有する。
【0026】
図4は、フレーム組立体150の正面図である。
【0027】
第1の支持フレーム151は、上辺よりも下辺の長さが短い逆台形状の金属板で構成される。第1の支持フレーム151は、四隅を除く四辺が背面側に略90度折り曲げられたリブ構造を有することで、変形強度が高められている。第2の支持フレーム152L,152Rは左右対称な形状に形成された概略直角二等辺三角形の金属板で構成される。第2の支持フレーム152L,152Rは、頂点及び底辺を除く2つの斜辺が背面側に略90度折り曲げられたリブ構造を有することで、変形強度が高められている。
【0028】
回動機構13Lは、第1の支持フレーム151と第2の支持フレーム152Lとを相互に連結し、回動機構13Rは、第1の支持フレーム151と第2の支持フレーム152Rとを相互に連結する。回動機構13L,13Rは、支持端部121aによってユーザの首を左右両側から挟み込む第1の位置(図2参照)と、支持端部121aをユーザの首から離隔させる第2の位置(図1参照)との間にわたって、一対のネックサポート部12L,12Rをそれぞれ回動させることが可能に構成される。
【0029】
回動機構13L,13Rは、一対のネックサポート部12L,12Rをそれぞれ第1の主面部111と平行な軸まわりに回動させる一対の回動軸134L,134Rを有し、支持端部121aが上記第1の位置で第1の主面部111から前方へ突出するように、各ネックサポート部12L,12Rをヘッドレスト部11に対して回動させる(図2参照)。
【0030】
本実施形態において一対の回動軸134L,134Rは、ヘッドレスト部11の幅方向に平行なX軸(第1の軸)方向に対して斜めに交差し、X軸に直交するZ軸(第2の軸)に関して対称に配置される(図4参照)。図4に示すように、ネックサポート部12L,12Rを構成する第2の支持フレーム152L,152Rの底辺152cは、X軸に関して45度傾斜しており、かつ、これら底辺152cがZ軸に関して対称に逆向きに傾斜している。このため一対の回動軸134L,134Rの左右方向(X軸方向)とのなす角度は、フレーム組立体150の正面方向から見たとき略V字状に45度の向きに設定される。
【0031】
回動軸134L,134RとX軸方向とのなす角度は45度に限定されず、任意の角度に設定可能である。本実施形態では、例えば、上記角度を30度〜60度の範囲に設定される。これにより、ネックサポート部12L,12Rの支持端部121aをユーザに圧迫感を与えることなく首の位置に容易に近接させることができる。
【0032】
回動機構13L,13Rはそれぞれ同一の構成を有し、それぞれ複数(本例では2つ)のトルクヒンジ131L,131Rを含む。トルクヒンジ131L,131Rは、第2の支持フレーム152L,152Rの斜辺部152cに各々の回動軸134L,134Rが固定される。各トルクヒンジ131L,131Rは、ブラケット133を介して第1の支持フレーム151に固定される。
【0033】
トルクヒンジ131L,131Rは、任意の角度位置でその姿勢を保持できるように構成され、典型的には、可動部と固定部との間の摩擦力によって所定の回転トルクを実現する。トルクヒンジ131L,131Rの構造、種類は特に限定されず、例えば、可動ディスクの間に固定ディスクを挟んだ構造、回動軸に板バネを巻き付けた構造、回動軸をクリップ等で押え付けた構造等が挙げられる。
【0034】
トルクヒンジ131L,131Rの回動トルクは特に制限されず、例えば、ユーザの手指による操作でネックサポート部12L,12Rをヘッドレスト部11に対して回動させることが可能であり、かつ、使用中にネックサポート部12L,12Rがその回動位置での姿勢を安定に保持することができる適度な値(例えば、0.11〜0.14kg・m)に設定される。
【0035】
[ベース部材]
続いて、ベース部材20の詳細について説明する。図5は、ベース部材20が取り付けられたフレーム組立体150の背面図、図6はその側面図である。
【0036】
ベース部材20は、ヘッドレスト本体10をシートS(図6参照)に設置するための支持具として構成される。ベース部材20は、金属製のフレーム部21と、シートSに連結される複数のガイドレール22とを含む。
【0037】
フレーム部21は、矩形の金属板で構成され、図6に示すように、第1の支持フレーム151の背面に対向して配置される。第1の支持フレーム151に対するフレーム部21の相対位置は特に限定されず、本実施形態では、第1の支持フレーム151の中心よりもフレーム部21の中心がやや下側に配置される。フレーム部21は、第1の支持フレーム151の背面に傾動機構30を介して接続される。傾動機構30の詳細については後述する。
【0038】
複数のガイドレール22は、フレーム部21の背面に取り付けられている。本実施形態では、高さ方向(Z軸方向)に長手の2つのガイドレール22がフレーム部21の2つの短辺に沿ってそれぞれ取り付けられている。各ガイドレール22は同様に構成され、幅方向(X軸方向に対向する一対のガイド片22aを有し、それらの間に、シートSにその高さ方向に配列された複数の円盤状のガイド突起S1が挟持される。これによりベース部材20は、シートSにその高さ方向に沿ってスライド可能であり、かつ、そのスライド位置で保持されることが可能に構成される。
【0039】
[傾動機構]
傾動機構30は、図6に示すようにヘッドレスト本体10とベース部材20との間に設置されており、ベース部材20に対してヘッドレスト本体10をその幅方向に沿った軸周りに傾動させることが可能に構成される。
【0040】
傾動機構30は、図5に示すようにフレーム組立体150の幅方向(X軸方向)に配列された複数のトルクヒンジ32を有する。これらトルクヒンジ32は、ブラケット33を介してベース部材20に固定され、各トルクヒンジ32の回動軸31は、第1の支持フレーム151に固定されている。
【0041】
トルクヒンジ32の回動トルクは特に制限されず、例えば、ユーザの手指による操作でヘッドレスト本体10(フレーム組立体150)をベース部材20(シートS)に対して回動させることが可能であり、かつ、使用中にヘッドレスト本体10がその回動位置での姿勢を安定に保持することができる適度な値(例えば、0.11〜0.14kg・m)に設定される。
【0042】
傾動機構30は、図4に示すようにフレーム組立体150の略中央部に設置される。これによりフレーム組立体150は、図6に示すようにベース部材20(シートS)に対して矢印R方向に仰角及び俯角の両方向に傾動可能となる。したがってユーザは、ヘッドレスト本体10を前後方向に好みの角度傾けた状態で使用することができる。ヘッドレスト本体10の傾動角度範囲は特に限定されず、例えば、−15度〜+15度の範囲で適宜設定可能である。
【0043】
[ヘッドレスト装置の作用]
続いて、以上のように構成される本実施形態のヘッドレスト装置100の典型的な作用について説明する。
【0044】
ヘッドレスト装置100の非使用時は、典型的には図1に示すように、一対のネックサポート部12L,12Rが展開され、各々の第2の主面部121がヘッドレスト部11の第1の主面部111と略同一平面上に位置する状態(第2の位置)にある。
【0045】
ヘッドレスト装置100の使用時は、ユーザの好みに応じてネックサポート部12L,12Rが図2に示す状態(第1の位置)に変換される。このときネックサポート部12L,12Rは、ヘッドレスト部10の前方へ突出する。これにより、ネックサポート部12L,12Rの非使用時はヘッドレスト部11と概略同一の平面上に退避させておくことが可能となり、ヘッドレスト装置100のコンパクト化を図ることができる。
【0046】
なおヘッドレスト装置100は、図1の状態(第2の位置)で使用されることも勿論可能であるが、以下、ネックサポート部12L,12Rの作用について説明する。
【0047】
図7は、ヘッドレスト装置100の使用状態を示す概略斜視図である。
【0048】
ネックサポート部12L,12Rは、回動軸134R(図3,4参照)のまわりに前方へ所定角度回動されることで、図2に示す第1の位置に変換される。これにより、各ネックサポート部12L,12Rの下縁部を構成していた支持端部121aが前方へ突出するとともに、ヘッドレスト部11(第1の主面部111)に対して斜めに傾斜する位置をとる。その結果、ヘッドレスト部11で後頭部が支持されるユーザUの首が各ネックサポート部12L,12Rの支持端部121aで左右両側から挟み込まれるように支持される。
【0049】
したがって本実施形態によれば、ユーザの首元を安定に支持することができる。これにより、ユーザの首や肩の負担を軽減して、よりリラックスした姿勢を実現することができる。また、新幹線や夜行バスなどの長時間の乗車時にも快適性の高い座席空間を提供することができる。
【0050】
また本実施形態によれば、ユーザUの首を挟み込む支持端部121aがネックサポート部12L,12Rの周縁部で構成されているため、ユーザの肩や側頭部に圧迫感を与えることなく、ユーザの首を両側から挟み込むことができる。しかも、ネックサポート部12L,12Rの回動軸134L,134Rが斜めに設定されているため、頸椎の部分を後方側から安定に支持することができ、首への圧迫感も抑えられる。
【0051】
しかも、第1の主面部111(ヘッドレスト部11)は、頂点が下部に位置する概略二等辺三角形状を有し、第2の主面部121(ネックサポート部12L,12R)は、第1の主面部111の斜辺部に対向する底辺部を有する概略二等辺三角形状を有する。これにより、ネックサポート部12L,12R(支持端部121a)間の間隙が、ヘッドレスト部11に近付くほど狭くなるため、ユーザUの首の太さや長さに依存することなく、その首元を安定に支持することができる。
【0052】
さらに本実施形態のヘッドレスト装置100は、シートS(ベース部材20)に対してヘッドレスト本体10をその幅方向に沿った軸(X軸)周りに傾動させることが可能に構成された傾動機構30を備える。これにより、ユーザUの好みに応じてヘッドレスト本体10を前後方向へ傾斜させることができるので、ユーザの着座姿勢やシート背凭れの角度等に依存せずに首の安定したフィット感を実現することができる。
なおこのような構成は、ネックサポート部12L,12Rがヘッドレスト部11に一体的に固定されたヘッドレスト装置にも適用可能であり、このような場合にも同様な作用効果を得ることができる。
【0053】
本実施形態によれば、ヘッドレスト本体10が俯角方向へも傾斜可能に構成されているため、シート背凭れ部を後方へ倒して読書をしたり、携帯情報端末を操作したりするときなどにおいても、首を安定に支持することができるとともに、首の負担を軽減することができる。
【0054】
また、ヘッドレスト本体10は、ベース部材20を介してシートSに対して高さ方向にスライド自在に構成されているため、ユーザUの座高や身長等に依存することなく、ネックサポート部12L,12Rによって首元の安定した支持作用が得られる高さ位置にヘッドレスト本体10を任意に調整することができる。
【0055】
<第2の実施形態>
図8A,Bは、本発明の他の実施形態に係るヘッドレスト装置100の構成を示す外観斜視図であり、Aは非使用時を、Bは使用時をそれぞれ示している。
以下、第1の実施形態と異なる構成について主に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0056】
本実施形態のヘッドレスト装置200は、ネックサポート部212L,212Rが膨出部122を有する点で第1の実施形態と異なる。膨出部122は、ネックサポート部212L,212Rの厚みを大きくしてクッション性を高め、さらに、第2の主面部121から第1の主面部111に向かって下り傾斜となる傾斜面122aを有する。
【0057】
第2の主面部121は、膨出部122の最前面に形成された平面部で構成される。第2の主面部121は、第1の主面部111と略平行に形成されるとともに、第1の主面部111おりも前方側へ位置する。傾斜面122aは、ネックサポート部212L,212Rの回動軸側の厚みを小さくする領域であり、その下縁部は、ユーザUの首を支持する支持端部121aとして構成される。
【0058】
図9は、以上のように構成されるヘッドレスト装置200の使用状態を示す概略斜視図である。同図に示すようにヘッドレスト装置200は、典型的にはネックサポート部212L,212Rを図8Bに示す第1の位置に回動させて使用される。これにより、ネックサポート部212L,212Rにおける支持端部121aがユーザUの首を左右両側から挟み込み、ユーザの首元を安定に支持する。特に、ネックサポート部212L,212Rは膨出部122を有するため、第2の主面部121をユーザUの頬や側頭部を支持する枕として機能させることもできる。
【0059】
<第3の実施形態>
図10は、本発明の他の実施形態に係るヘッドレスト装置300の外観構成を示す概略斜視図である。
以下、第1の実施形態と異なる構成について主に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0060】
本実施形態のヘッドレスト装置300は、第1の実施形態と同様に、ヘッドレスト部311と、ヘッドレスト部311の下部両側方に配置された一対のネックサポート部312L,312Rと、一対のネックサポート部312L,312Rを実線で示す第1の位置と二点鎖線で示す第2の位置との間にわたって回動させることが可能に構成された回動機構(図示略)とを有する。
【0061】
本実施形態において上記回動機構は、ヘッドレスト部311の幅方向(X軸方向)に平行に配置されており、これにより各ネックサポート部312L,312Rは、ヘッドレスト部311の前面に向かって垂直方向に起立させることが可能に構成される。また、各ネックサポート部312L,312R各々の対向する周縁部には、第1の位置においてユーザの首を左右両側から挟み込むことが可能な支持端部121aがそれぞれ設けられている。
【0062】
以上のように構成される本実施形態のヘッドレスト装置300においても第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0064】
例えば以上の実施形態では、新幹線等の鉄道車両、夜行バス等の自動車車両用のシートに適用可能なヘッドレスト装置を例に挙げて説明したが、これに限られず、航空機等の他の移動体に備え付けられたシート、あるいは映画館等の観覧席に備え付けられたシートにも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0065】
10…ヘッドレスト本体
11…ヘッドレスト部
12,12L,12R、212L,212R,312L,312R…ネックサポート部
13L,13R…回動機構
20…ベース部材
30…傾動機構
31…回動軸
32…トルクヒンジ
100,200,300…ヘッドレスト装置
111…第1の主面部
121…第2の主面部
121a…支持端部
131L,131R…トルクヒンジ
134L,134R…回動軸
150…フレーム組立体
151…第1の支持フレーム
152L,152R…第2の支持フレーム
212…膨出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10