(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。本明細書中では、組成物又は化合物が有する特定の官能基の量を「モル比」で表すことができる。すなわち、組成物又は化合物が有する特定の官能基の数を、アボガドロ数で除した値の次元をモルとして定義する。これにより、当該特定の官能基の量を他の特定の官能基の量に対して「モル比」として表す。なお、組成物が有する特定の官能基とは、組成物中に含まれる化合物が有する特定の官能基をいう。
【0009】
本明細書において、「ポリイソシアネート」とは、1つ以上のイソシアネート基(−NCO)を有するモノマーが複数結合した重合体をいう。
本明細書において、「ポリオール」とは、2つ以上のヒドロキシ基(−OH)を有する化合物をいう。
【0010】
<ポリイソシアネート組成物の製造方法>
本実施形態のポリイソシアネート組成物の製造方法は、ポリイソシアネート前駆体と、ポリカーボネートジオールと、をウレタン化反応させる第一の工程と、得られた反応生成物中のウレタン基をアロファネート化反応させる第二の工程と、を有する。
本実施形態のポリイソシアネート組成物の製造方法は、まず、第一の工程でポリイソシアネート前駆体とポリカーボネートジオールとの間でウレタン基を生成する。次に、第二の工程で、第一の工程で生成したポリイソシアネート前駆体とポリカーボネートジオールとの間のウレタン基をアロファネート化する。本実施形態では、ウレタン基を生成する第一の工程と、生成したウレタン基をアロファネート化する第二の工程とを組み合わせることにより、ポリイソシアネート前駆体とポリカーボネートジオールとの間のアロファネート基を高い割合で導入することができる。
【0011】
また、本実施形態のポリイソシアネート組成物の製造方法に用いるポリイソシアネート前駆体は、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のジイソシアネートから得られるポリイソシアネート前駆体である。さらに、本実施形態のポリイソシアネート組成物の製造方法に用いるポリカーボネートジオールは、炭素数2〜20のジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種のジオールと、カーボネート化合物と、を重合したポリカーボネートジオールである。
以下、本実施形態のポリイソシアネート組成物の製造方法の各工程について説明する。
【0012】
[第一の工程]
第一の工程は、ポリイソシアネート前駆体と、ポリカーボネートジオールと、をウレタン化反応させる工程である。
第一工程は、無溶剤の条件下で反応させてもよく、必要に応じて、イソシアネート基を有する化合物との反応性を有していない有機溶剤中で反応させてもよい。このような有機溶剤としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル系溶剤;トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン、メシチレン、アニソール、ベンジルアルコール、フェニルグリコール、クロロベンゼン等の芳香族系溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール系溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶剤;N−メチル−2−ピロリドン等のピロリドン系溶剤;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤;モルフォリン等のアミン系溶剤;これらの混合物が挙げられる。これらの溶剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
第一の工程の反応温度は、副反応の抑制及び製造の効率性の観点から、−20℃以上150℃以下が好ましく、30℃以上120℃以下がより好ましい。また、反応に際して、錫、亜鉛、鉛等の有機金属塩;3級アミン系化合物;ナトリウム等のアルカリ金属のアルコラート等を触媒として用いてもよい。
【0014】
第一の工程において、ポリイソシアネート前駆体とポリカーボネートジオールの質量比は、95:5以上30:70以下が好ましく、90:10以上50:50以下がより好ましく、80:20以上60:40以下がさらに好ましい。これらの質量比がこのような範囲にあることで、塗膜としたときに高い降伏点応力を有し、かつ硬度が優れる傾向にある。
【0015】
[第二の工程]
第二の工程は、前記第一工程により得られたポリイソシアネート前駆体とポリカーボネートジオールとの間のウレタン基をアロファネート化反応させる工程である。
第二の工程は、無溶剤の条件下で反応させてもよく、必要に応じて、イソシアネート基を有する化合物との反応性を有していない有機溶剤中で反応させてもよい。このような有機溶剤としては、特に限定されないが、上述した第一の工程で用いることができる有機溶剤が挙げられる。この有機溶剤は、反応後に除去することもできる。
第二の工程の反応温度は、副反応の抑制及び製造の効率性の観点から、50℃以上180℃以下が好ましく、80℃以上150℃以下がより好ましい。
【0016】
第二の工程は、アロファネート化触媒の存在下で行う。第二の工程に用いるアロファネート化触媒としては、例えば、鉛、亜鉛、ビスマス、錫、ジルコニル、若しくはジルコニウムのカルボン酸塩等が挙げられる。アロファネート化触媒の使用量は、前記第一の工程で得られた生成物100質量部に対し、0.005質量部以上0.1質量部以下が好ましい。アロファネート化触媒の使用量を上記の範囲とすることにより、第一の工程で生成したポリイソシアネート前駆体とポリカーボネートジオールとの間のウレタン基を効率よくアロファネート基にすることができる。
【0017】
第二の工程において、得られるポリイソシアネート組成物のアロファネート基とウレタン基のモル比は、10:90以上90:10以下が好ましく、10:90以上50:50以下がより好ましく、20:80以上50:50以下がさらに好ましく、20:80以上30:70以下が特に好ましい。このような範囲にあることで、乾燥性、硬度、降伏点応力、伸展性のバランスに優れ、かつ作業性にも優れる傾向にある。
【0018】
また第二の工程において、得られるポリイソシアネート組成物の平均イソシアネート官能基数は、4.0以上9.0以下が好ましく、4.0以上6.0以下がより好ましい。このような範囲にあることで、乾燥性と降伏点応力のバランスに優れ、かつ作業性にも優れる傾向にある。
【0019】
本実施形態では、ポリイソシアネート前駆体とポリカーボネートジオールとの間のウレタン基を生成する第一の工程と、生成したポリイソシアネート前駆体とポリカーボネートジオールとの間のウレタン基をアロファネート化する第二の工程とを組み合わせることにより、ポリイソシアネート前駆体とポリカーボネートジオールとの間のアロファネート基を高い割合で導入することができる。本実施形態により製造されるポリイソシアネート組成物は、ポリイソシアネート前駆体とポリカーボネートジオールとの間のアロファネート基の導入量が多いため、塗膜としたときの乾燥性をより向上させ、加えて、硬度及び降伏点応力にも優れたものとすることができる。
【0020】
本実施形態では、アロファネート化触媒の非存在下で、所定時間ウレタン化反応(第一の工程)を行った後、アロファネート化触媒を添加してアロファネート化反応(第二の工程)を行うことが好ましい。
また本実施形態において、前記第一の工程と、前記第二の工程とを同時に行ってもよい。
前記第一の工程と、前記第二の工程とを同時に行う場合、アロファネート化触媒の存在下で、所定時間ウレタン化反応(第一の工程)と、アロファネート化反応(第二の工程)とを行えばよい。
【0021】
以下、本実施形態のポリイソシアネート組成物の製造方法に用いる各材料について説明する。
【0022】
≪ポリイソシアネート前駆体≫
本実施形態で用いるポリイソシアネート前駆体は、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のジイソシアネートから得られる。脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートは、その構造の中にベンゼン環を含まない化合物をいう。
【0023】
脂肪族ジイソシアネートとしては、炭素数4以上30以下のものが好ましく、具体的には、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ペンタメチレン−1,5−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」ともいう。)、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、リジンジイソシアネートが挙げられる。脂環族ジイソシアネートとしては、炭素数8以上30以下のものが好ましく、具体的には、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」ともいう。)、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネートが挙げられる。
【0024】
上記の脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートの中でも、工業的に入手し易いため、HDI、IPDI、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートがより好ましく、HDIがさらに好ましい。HDIを用いることにより、ポリイソシアネート組成物を塗膜としたときの耐候性と柔軟性とがより優れる傾向にある。なお、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記ジイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を含むことが好ましい。これにより、ポリイソシアネート組成物を塗膜としたときの耐候性と柔軟性とがより優れる傾向にある。
【0025】
ポリイソシアネート前駆体は、上記のジイソシアネートと、1価以上6価以下のアルコールとから得られてもよい。1価以上6価以下のアルコールとしては、非重合ポリオール及び重合ポリオールが挙げられる。非重合ポリオールとは、重合を履歴しないポリオールであり、重合ポリオールとは、モノマーを重合して得られるポリオールである。
【0026】
非重合ポリオールとして、具体的には、モノアルコール類、ジオール類、トリオール類、テトラオール類が挙げられる。モノアルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i―ブタノール、s−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、n−ノナノール、2−エチルブタノール、2,2−ジメチルヘキサノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、エチルシクロヘキサノールが挙げられる。ジオール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、2−エチル−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオールが挙げられる。トリオール類としては、グリセリン、トリメチロールプロパンが挙げられる。テトラオール類としては、ペンタエリトリトールが挙げられる。
【0027】
重合ポリオールとして、具体的には、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオールが挙げられる。
【0028】
ポリエステルポリオールとして、具体的には、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸の単独又は混合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の多価アルコールの単独又は混合物との縮合反応によって得られるポリエステルポリオール;多価アルコールを用いてε−カプロラクトンを開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類が挙げられる。
【0029】
ポリエーテルポリオールとして、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム等の水酸化物、アルコラート、アルキルアミン等の強塩基性触媒、金属ポルフィリン、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体等の複合金属シアン化合物錯体等を用いて、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの単独又は混合物を、多価ヒドロキシ化合物の単独又は混合物に、ランダム及び/又はブロック付加して得られるポリエーテルポリオール類;エチレンジアミン類等のポリアミン化合物にアルキレンオキサイドを反応させて得られるポリエーテルポリオール類;これらポリエーテルポリオール類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール類が挙げられる。
【0030】
アクリルポリオールとして、具体的には、ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物と、これと共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物とを共重合したものが挙げられる。ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体として、具体的には、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル等が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチルが好ましい。
【0031】
ポリオレフィンポリオールとして、具体的には、水酸基を2個以上有するポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレンが挙げられる。
ポリイソシアネート前駆体は、2以上のジイソシアネートが重合した成分(例えば、2量体)を含むことが好ましく、3以上のジイソシアネートが重合した成分(例えば、3量体)を含むことがより好ましい。これにより、塗膜としたときの耐候性、乾燥性、硬度、降伏点応力がより優れる傾向にある。
【0032】
2以上のジイソシアネートが重合した成分を含む、ポリイソシアネート前駆体は、イソシアヌレート基、ビウレット基、ウレトジオン基、オキサジアジントリオン基、イミノオキサジアジンジオン基、アロファネート基、ウレタン基、及びウレア基を同時に有することができる。これらの中でも、イソシアヌレート基を有することにより、ポリイソシアネート組成物を塗膜としたときの耐候性、乾燥性、硬度、降伏点応力とがより優れる傾向にある。
【0033】
イソシアヌレート基を有するポリイソシアネート前駆体を製造する方法としては、例えば、ジイソシアネートを触媒等によりイソシアヌレート化反応を行い、所定の転化率になったときに該反応を停止し、未反応のジイソシアネートを除去する方法が挙げられる。
【0034】
上記のイソシアヌレート化反応に用いられる触媒としては、塩基性を示すものが好ましく、具体的には、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、及び、酢酸、カプリン酸等の有機弱酸塩;トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム等のヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、及び、酢酸、カプリン酸等の有機弱酸塩;酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸等のアルキルカルボン酸の錫、亜鉛、鉛等のアルカリ金属塩;ナトリウム、カリウム等の金属アルコラート;ヘキサメチルジシラザン等のアミノシリル基含有化合物;マンニッヒ塩基類;第3級アミン類とエポキシ化合物との併用;トリブチルホスフィン等の燐系化合物が挙げられる。これらの触媒の使用量は、原料である、ジイソシアネート及びアルコールの総量に対して、10ppm以上1%以下が好ましい。また、イソシアヌレート化反応を終了させるために、触媒を中和するリン酸、酸性リン酸エステル等の酸性物質の添加、熱分解、化学分解により不活性化してもよい。
【0035】
ポリイソシアネート前駆体の収率は、通常、10質量%以上70質量%以下となる傾向にある。より高い収率で得られたポリイソシアネート前駆体は、より粘度が高くなる傾向にある。収率は、後述する実施例に記載の方法により測定する。
【0036】
イソシアヌレート化反応の反応温度は、50℃以上200℃以下であることが好ましく、50℃以上150℃以下であることがより好ましい。反応温度が50℃以上であることで、反応が進み易くなる傾向にあり、反応温度が200℃以下であることで、着色を引き起こすような副反応を抑制することができる傾向にある。
【0037】
イソシアヌレート化反応の終了後には、未反応のジイソシアネートモノマーを薄膜蒸発缶、抽出等により除去することが好ましい。ポリイソシアネート前駆体は、未反応のジイソシアネートを含んでいた場合であっても、ジイソシアネートを3質量%以下含むことが好ましく、1質量%以下含むことがより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましいで。残留未反応ジイソシアネートモノマー濃度が上記範囲内であることにより、硬化性及び硬度が優れる傾向にある。
【0038】
ポリイソシアネート前駆体の粘度は、25℃において、100mPa・s以上50000mPa・s以下であることが好ましく、200mPa・s以上4000mPa・s以下であることがより好ましく、200mPa・s以上2000mPa・s以下であることがさらに好ましい。25℃における粘度は、後述する実施例に記載の方法により測定する。
ポリイソシアネート前駆体の数平均分子量は、500以上2000以下が好ましく、500以上1000以下がより好ましい。数平均分子量は、後述する実施例に記載の方法により測定する。
【0039】
ポリイソシアネート前駆体の平均イソシアネート官能基数(ポリイソシアネート前駆体1分子が有するイソシアネート基の、統計的な平均数)は、架橋性を高くする観点から、2.5以上が好ましく、ポリイソシアネート組成物の溶剤等への溶解性を良くする観点から、20以下が好ましく、2.5以上10以下がより好ましく、2.5以上7以下がさらに好ましい。平均イソシアネート官能基数は、後述する実施例に記載の方法により測定する。
【0040】
ポリイソシアネート前駆体のイソシアネート基濃度は、5質量%以上25質量%以下であることが好ましく、10質量%以上24質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上24質量%以下であることがさらに好ましい。イソシアネート基濃度は、後述する実施例に記載の方法により測定する。
【0041】
≪ポリカーボネートジオール≫
本実施形態で用いるポリカーボネートジオールは、炭素数2〜20のジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種のジオールと、カーボネート化合物と、を共重合することにより得られる。
【0042】
ポリカーボネートジオールの数平均分子量は、300以上4000以下が好ましく、400以上2500以下がより好ましく、500以上2000以下がさらに好ましい。数平均分子量が上記範囲内であることにより、柔軟性及び作業性がより優れる傾向にある。数平均分子量は、後述する実施例に記載の方法により測定する。
【0043】
ポリカーボネートジオールは、2つのアルコール基と1つのカーボネート基が脱水縮合した構造単位を、繰り返し有する。また、ポリカーボネートジオールは、炭素数2以上20以下の第一のジオールと、炭素数2以上20以下の第二のジオール(以下、単に「2種のジオール」ともいう。)と、カーボネート化合物と、を共重合して得られるものが好ましい。これにより、作業性がより優れる傾向にある。
【0044】
ポリカーボネートジオールの製造方法としては、例えば、2種のジオールとカーボネート化合物とを脱アルコール反応及び/又は脱フェノール反応する方法、高分子量のポリカーボネートポリオールを2種のジオールを用いてエステル交換反応する方法が挙げられる。また、2種のジオールとカーボネート化合物とを反応する方法は、特に限定はなく公知の方法が挙げられ、H.Schnell著「Polymer Reviews 第9巻」(米国Interscience Publishers社より1964年に発行)の第9〜20頁に記載する種々の方法のいずれかを用いてもよい。
【0045】
2種のジオールとして、具体的には、脂肪族ジオール及び芳香族ジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種のジオールが挙げられる。これらのなかでも、2つの水酸基を有し、炭素数が2以上20以下のアルキレングリコールが好ましい。当該アルキレングリコールを用いることにより、ポリイソシアネート組成物を塗膜としたときの耐候性及び耐薬品性がより優れる傾向にある。ここで「アルキレン」とは、分岐を有していてもよく、脂環構造を含んでいてもよいものをいう。これらのジオールは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
2種のジオールとして、より具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2,2’−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン、p−キシリレンジオール、p−テトラクロロキシリレンジオール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、ビスヒドロキシメチルテトラヒドロフラン、ジ(2−ヒドロキシエチル)ジメチルヒダントイン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、2,6’−ジヒドロキシエチルヘキシルエーテル、2,4’−ジヒドロキシエチルブチルエーテル、2,5’−ジヒドロキシエチルペンチルエーテル、2,3’−ジヒドロキシ−2’,2’−ジメチルエチルプロピルエーテル、チオグリコールが挙げられる。
これらの中でも、炭素数2以上11以下のジオールが好ましく、炭素数3以上6以下のジオールがより好ましい。
【0047】
2種のジオールの組み合わせとしては、炭素数5のジオールと炭素数6のジオールとの組み合わせ、炭素数4のジオールの2種以上の異性体の組み合わせ、及び炭素数4のジオールと炭素数6のジオールとの組み合わせが好ましい。このような2種のジオールを用いることにより、ポリイソシアネート組成物を塗膜としたときの伸展性、耐熱性、及び耐水性(耐加水分解性)がより優れる傾向にある。このような2種のジオールの組合せとして、具体的には、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、及び2−メチル−1,3プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種の組合せが好ましく、1,6−ヘキサンジオールと1,5−ペンタンジオールの組合せ、1,6−ヘキサンジオールと1,4−ブタンジオールの組合せ、1,4−ブタンジオールと2−メチル−1,3プロパンジオールの組合せがより好ましい。
【0048】
カーボネート化合物として、具体的には、アルキレンカーボネート、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、及びホスゲンが挙げられ、より具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジフェニルカーボネートが挙げられる。これらの中でも、製造の容易さの観点から、ジエチルカーボネートが好ましい。
【0049】
{用途}
本実施形態に係る製造方法により得られるポリイソシアネート組成物は、例えば、塗料組成物、粘着剤組成物、接着剤組成物、注型剤組成物等の硬化性組成物;繊維処理剤等の各種表面処理剤組成物;各種エラストマー組成物;発泡体組成物等の架橋剤;改質剤;添加剤として用いられる。
【0050】
塗料組成物としては、例えば、ロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、静電塗装、ベル塗装により、各種素材に、プライマー、中塗り、及び上塗りとして好適に用いられる。また、この塗料組成物は、さらに、防錆鋼板を含むプレコートメタル、自動車塗装、プラスチック塗装に、美粧性、耐候性、耐酸性、防錆性、耐チッピング性、密着性等を付与するために、好適に用いられる。
【0051】
粘着剤組成物及び接着剤組成物としては、例えば、自動車、建材、家電、木工、太陽電池用積層体が挙げられる。これらの中でも、テレビ、パソコン、デジタルカメラ、携帯電話等の家電の液晶ディスプレイ用等の光学部材は、各種機能を発現するため、各種被着体のフィルム及びプレートを積層させる必要がある。よって、各種被着体のフィルム及びプレート間には十分な粘着性又は接着性が要求されることから、本実施形態の粘着剤組成物、接着剤組成物の使用例として好ましい。
【0052】
硬化性組成物が用いられうる被着体としては、例えば、ガラス;アルミニウム、鉄、亜鉛鋼板、銅、ステンレスのような各種金属;木材、紙、モルタル、石材のような多孔質部材;フッ素塗装、ウレタン塗装、アクリルウレタン塗装等がされた部材;シリコーン系硬化物、変性シリコーン系硬化物、ウレタン系硬化物等のシーリング材硬化物;塩化ビニル、天然ゴム、合成ゴム等のゴム類;天然皮革、人工皮革等の皮革類;植物系繊維、動物系繊維、炭素繊維、ガラス繊維などの繊維類;不織布、ポリエステル、アクリル、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリオレフィン等の樹脂類のフィルム及びプレート;紫外線硬化型アクリル樹脂層、印刷インキ、UVインキ等のインキ類が挙げられる。
【実施例】
【0053】
以下に、具体的な実施例及び比較例を示して本実施形態をより詳しく説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。実施例及び比較例における、各種の物性及び評価は、以下のとおり測定及び評価した。
【0054】
(物性1)収率
ポリイソシアネート前駆体を試料として、反応液屈折率の測定により、ポリイソシアネート前駆体の収率を求めた。
【0055】
(物性2)粘度
ポリイソシアネート前駆体を試料として、ポリイソシアネート前駆体の25℃における粘度を、E型粘度計 RE−80U(東機産業社製)を用いて求めた。測定に際しては、標準ローター(1°34’×R24)を用いた。回転数は、以下の通りで設定した。
100r.p.m.( 128mPa.s未満の場合)
50r.p.m.( 128mPa.s以上 256mPa.s未満の場合)
20r.p.m.( 256mPa.s以上 640mPa.s未満の場合)
10r.p.m.( 640mPa.s以上 1280mPa.s未満の場合)
5r.p.m.( 1280mPa.s以上 2560mPa.s未満の場合)
2.5r.p.m.( 2560mPa.s以上 5120mPa.s未満の場合)
1.0r.p.m.( 5120mPa.s以上10240mPa.s未満の場合)
0.5r.p.m.(10240mPa.s以上20480mPa.s未満の場合)
【0056】
(物性3)イソシアネート基濃度
三角フラスコにポリイソシアネート前駆体1〜3gを精秤し(Wg)、その後トルエン20mlを添加し、ポリイソシアネートを溶解する。その後、2規定のジ−n−ブチルアミンのトルエン溶液10mlを添加し、混合後、15分間室温放置する。イソプロピルアルコール70mlを加え、混合する。この液を1規定塩酸溶液(ファクターF)で、指示薬に滴定する。この滴定値を(V2ml)とし、同様の操作をポリイソシアネートなしで行い、この滴定値を(V1ml)とし、下記式(1)からポリイソシアネートのイソシアネート基含有量を算出した。
イソシアネート基含有量(質量%)=(V1−V2)×F×42/(W×1000)×100 ・・・(1)
【0057】
(物性4)ポリイソシアネート前駆体の数平均分子量
ポリイソシアネート前駆体を試料として、ポリイソシアネート前駆体の数平均分子量を、下記の装置を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ測定による、ポリスチレン基準の数平均分子量として求めた。
装置:HLC−802A(東ソー社製)
カラム:G1000HXL×1本(東ソー社製)
G2000HXL×1本(東ソー社製)
G3000HXL×1本(東ソー社製)
キャリアー:テトラハイドロフラン
流速:0.6mL/分
試料濃度:1.0質量%
注入量:20μL
温度:40℃
検出方法:示差屈折計
【0058】
(物性5)平均イソシアネート官能基数
ポリイソシアネート前駆体またはポリイソシアネート組成物を試料として、下記式(2)により、イソシアネート平均官能基数を求めた。
イソシアネート平均官能基数=ポリイソシアネート数平均分子量(Mn)×イソシアネート基含有量(質量%)×0.01)/42 ・・・(2)
【0059】
(物性6)アロファネート基/ウレタン基の官能基数の比率
ポリイソシアネート組成物を試料として、Bruker社製FT−NMR AVANCE600を用いて、重クロロホルムCDCl
3を溶媒に、濃度5質量%、600MHz、積算回数256回で、プロトン核磁気共鳴スペクトルを測定し、イソシアヌレート基、ウレタン基の官能基数の比率を確認した。HDI由来のβ位、γ位の全プロトンを基準として、アロファネート基は8.60ppm付近のアロファネート結合の窒素に結合した水素原子のシグナルの面積比、ウレタン基は4.70ppm付近のウレタン結合の窒素に結合した水素原子のシグナルの面積比を測定し、比率を求めた。
【0060】
(物性7)ポリカーボネートジオールの数平均分子量
ポリカーボネートジオールを試料として、ポリカーボネートジオールの数平均分子量を、下記式(3)により求めた。なお、ポリカーボネートジオールの水酸基価は、下記の((物性8)により求めた。
数平均分子量=2/(ポリカーボネートジオールの水酸基価×10−3/56.11) ・・・(3)
【0061】
(物性8)ポリカーボネートジオールの水酸基価
ポリカーボネートジオールを試料として、ポリカーボネートジオールの水酸基価は、JIS K 0070:1992に従い求めた。具体的には、無水酢酸12.5gをピリジン50mLでメスアップしアセチル化試薬を調製した。次に、100mLナスフラスコに、合成例で製造したポリカーボネートジオールを2.5〜5.0g精秤した。ナスフラスコに、アセチル化試薬5mLとトルエン10mLをホールピペットで添加後、冷却管を取り付けて、100℃で1hr撹拌加熱した。蒸留水2.5mLをホールピペットで添加し、さらに10min加熱撹拌した。2〜3分冷却後、エタノールを12.5mL添加し、指示薬としてフェノールフタレインを2〜3滴入れた後に、0.5mol/Lエタノール性水酸化カリウムで滴定した。
一方で、空試験として、アセチル化試薬5mL、トルエン10mL、蒸留水2.5mLを100mLナスフラスコに入れ、10分間加熱撹拌した後、同様に滴定を行った。この結果をもとに、下記式(4)で水酸基価を計算した。
OH価(mg−KOH/g)={(b−a)×28.05×f}/e ・・・(4)
式(4)中、aは、サンプルの滴定量(mL)を表し、bは、空試験の滴定量(mL)を表し、eは、サンプル質量(g)を表し、fは、滴定液のファクターを表す。
【0062】
(物性9)ポリカーボネートジオールの共重合組成
ポリカーボネートジオールを試料として、ポリカーボネートジオールの共重合組成を、以下のように測定した。100mLのナスフラスコにサンプルを1g取り、エタノール30g、水酸化カリウム4gを入れて、100℃で1hr反応した。室温まで冷却後、指示薬にフェノールフタレインを2〜3滴添加し、塩酸で中和した。冷蔵庫で1hr冷却後、沈殿した塩を濾過で除去し、ガスクロマトグラフィーにより分析を行った。分析は、カラムとしてDB−WAX(J&W製)をつけたガスクロマトグラフィーGC−14B(島津製作所製)を用い、ジエチレングリコールジエチルエステルを内標として、検出器をFIDとして行った。なお、カラムの昇温プロファイルは、60℃で5分保持した後、10℃/minで250℃まで昇温した。
【0063】
〔合成例1〕ポリイソシアネート前駆体a
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI:1000gを仕込み、撹拌下反応器内温度を70℃に保持した。これにテトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、収率が25%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネート前駆体aを得た。得られたポリイソシアネート前駆体aは実質的にアロファネート基を含まず、25℃における粘度は1300mPa・s、イソシアネート基濃度は23.1%、数平均分子量は590、平均イソシアネート官能基数は3.0であった。
【0064】
〔合成例2〕ポリイソシアネート前駆体b
合成例1と同様の装置で、HDI:1000g、イソブタノール:1.5gを仕込み、撹拌下反応器内温度を70℃に保持した。これにテトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、収率が20%になった時点で燐酸を添加し反応を停止し、次いで160℃で1時間反応液を加熱した。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネート前駆体bを得た。得られたポリイソシアネート前駆体bは実質的にアロファネート基を含まず、25℃における粘度は500mPa・s、イソシアネート基濃度は23.2%、数平均分子量は540、平均イソシアネート官能基数は3.0であった。
【0065】
〔合成例3〕ポリカーボネートジオールA
攪拌機、温度計、頭頂に還流ヘッドを有する真空ジャケット付きオルダーショウを備えた2Lセパラブルフラスコに、1,5−ペンタンジオール382g、1,6−ヘキサンジオール433g、エチレンカーボネート650gを仕込み、70℃で撹拌溶解した後、触媒として酢酸鉛三水和物を0.015g入れた。175℃に設定したオイルバスで加熱し、フラスコの内温140℃、真空度1.0〜1.5kPaで、還流ヘッドから還流比4で留分の一部を抜きながら、12時間反応した。その後、オルダーショウを単蒸留装置に取り替え、180℃に設定したオイルバスで加熱し、フラスコの内温140〜150℃、真空度を0.5kPaまで落として、セパラブルフラスコ内に残った、ジオールとエチレンカーボネートを除去した。その後、オイルバスの設定を185℃に上げ、フラスコの内温160〜165℃で、生成するジオールを除去しながら、さらに4時間反応した。この反応により、常温で粘稠な液体のポリカーボネートジオールAが得られた。得られたポリカーボネートジオールAの水酸基価は56.1(分子量2000)、共重合組成は1,5−ペンタンンジオール/1,6−ヘキサンジオール=50/50(モル比)であった。
【0066】
〔合成例4〕ポリカーボネートジオールB
合成例3において、オルダーショウを単蒸留装置に取り替えた後、オイルバスの設定を185℃に上げ、フラスコの内温を160〜165℃にして、生成するジオールを除去する時間を2.3時間にしたこと以外は、合成例3と同様の方法でポリカーボネートジオールBを合成した。得られたポリカーボネートジオールBの水酸基価は113.2(分子量1000)、共重合組成は1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=50/50(モル比)であった。
【0067】
〔合成例5〕ポリカーボネートジオールC
合成例3において、オルダーショウを単蒸留装置に取り替えた後、オイルバスの設定を185℃に上げ、フラスコの内温を160〜165℃にして、生成するジオールを除去する時間を1.5時間にしたこと以外は、合成例3と同様の方法でポリカーボネートジオールCを合成した。得られたポリカーボネートジオールCの水酸基価は224.4(分子量500)、共重合組成は1,5−ペンタンンジオール/1,6−ヘキサンジオール=50/50(モル比)であった。
【0068】
〔実施例1〕ポリイソシアネート組成物
[第一の工程]
合成例1と同様の反応器に、合成例1で得られたポリイソシアネート前駆体a100.0g、合成例4で得られたポリカーボネートジオールB54.3g、を入れ、90℃で2時間ウレタン化反応を行った。
[第二の工程]
次に、アロファネート化触媒2−エチルヘキサン酸ジルコニウム(20%2−エチルヘキサノール溶液)0.05gを仕込み、窒素雰囲気下、130℃、3時間保持し、アロファネート化反応を行った。その後、酢酸n−ブチル66.4gを添加し、実施例1のポリイソシアネート組成物を得た。得られたポリイソシアネート組成物の、アロファネート基とウレタン基のモル比は20:80、イソシアネート平均官能基数は4.5であった。
【0069】
〔比較例1〕ポリイソシアネート組成物
合成例1と同様の反応器に、合成例1で得られたポリイソシアネート前駆体a100.0g、合成例4で得られたポリカーボネートジオールB54.3gを仕込み、窒素雰囲気下、100℃、3時間保持した。その後、酢酸n−ブチル66.3gを添加し、比較例1のポリイソシアネート組成物を得た。得られたポリイソシアネート組成物の、アロファネート基とウレタン基のモル比は0:100、イソシアネート平均官能基数は3.5であった。
【0070】
〔実施例2〜4〕ポリイソシアネート組成物
表1記載のポリイソシアネート前駆体とポリカーボネートジオールの種類、酢酸n−ブチルの量を表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法で第一の工程と、第二の工程を行った。得られたポリイソシアネート組成物の、アロファネート基とウレタン基のモル比、イソシアネート平均官能基数は、表1記載のとおりである。
【0071】
〔比較例2〜3〕ポリイソシアネート組成物
表1記載のポリイソシアネート前駆体とポリカーボネートジオール、親水基、酢酸n−ブチルの種類及び量を用いた以外は、比較例1と同様の方法で反応させた。得られたポリイソシアネート組成物の、アロファネート基とウレタン基のモル比、イソシアネート平均官能基数は、表1記載のとおりである。
【0072】
<評価方法>
(評価1)乾燥性の評価方法
上記実施例1〜4、比較例1〜3のそれぞれのポリイソシアネート組成物に対し、SETALUX1767(アクリルポリオール Nuplex resins社製、水酸基濃度4.5%(樹脂基準)、樹脂固形分65%)を、官能基比率(NCO/OH)=1.0となるように配合し、酢酸n−ブチルで固形分50質量%に希釈した。得られた塗料組成物を、ガラス板に樹脂膜厚40μmになるようにアプリケーター塗装した。23℃、1時間毎に、塗膜にコットンボールを乗せ、その上に100gの分銅を60秒間置いた。その後、分銅とコットンボールを取り除き、塗膜上に残ったコットン跡を観察し、コットン残りがなくなるまでの時間を計測した。その結果を表1に記載する。
【0073】
(評価2)硬度の評価方法
上記乾燥性の評価方法と同様の実施例1〜4、比較例1〜3のそれぞれのポリイソシアネート組成物を、ガラス板に樹脂膜厚60μmになるようにアプリケーター塗装し、80℃で2時間加熱し、その後23℃で24時間放置することによりポリウレタン塗膜を得た。得られた塗膜をケーニッヒ硬度計(BYK Garder社製、商品名「Pendulum hardness tester」) を用いて測定した。その結果を表1に記載する。
【0074】
(評価3)降伏点応力の評価方法
塗装基材をポリプロピレン(PP)板に変更したこと以外は、上記硬度の評価方法で得られたポリウレタン塗膜と同様の塗膜を作製し、その後PP板から剥離させることでポリウレタン樹脂フィルムを得た。
【0075】
得られたポリウレタン樹脂フィルムを下記の装置を用いて評価した。
装置:TENSILON(テンシロン)RTE−1210(A&D(エー・アンド・デー)製)
引張スピード:20mm/min
試料寸法 :縦20mm×横10mm
温度:23℃
評価基準は、以下のとおりとした。その結果を表1に記載する。
◎:降伏点応力20MPa以上(降伏点応力が極めて高い)。
○:降伏点応力5MPa以上、20MPa未満(降伏点応力が高い)。
×:降伏点応力5MPa未満、または降伏点が無い。
【0076】
【表1】
【0077】
上記結果に示した通り、本発明を適用した実施例1〜4は、いずれも塗膜の乾燥時間が2時間であり、短時間で乾燥した。さらに、本発明を適用した実施例1〜4は、いずれ充分な硬度を有し、降伏点応力の評価も良好であった。つまり、本発明を適用した実施例1〜4は、いずれも、塗膜としたときの乾燥性、硬度、降伏点応力が良好であった。
これに対し、本発明を適用しない比較例1〜3は、本発明を適用した実施例1〜4に対し、乾燥時間、硬度、降伏点応力の評価の少なくともいずれかが劣っていた。
なお、比較例2及び比較例3は、微量のアロファネート基の存在が確認されたが、これは、原料に用いたポリイソシアネート前駆体にもともと含まれているアロファネート基であると考えられる。