特許第6845671号(P6845671)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6845671
(24)【登録日】2021年3月2日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】部品実装装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20210315BHJP
   H05K 13/08 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   H05K13/04 C
   H05K13/08 M
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-232034(P2016-232034)
(22)【出願日】2016年11月30日
(65)【公開番号】特開2018-88504(P2018-88504A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2019年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂東 賢二
(72)【発明者】
【氏名】倉岡 修平
(72)【発明者】
【氏名】木村 俊満
(72)【発明者】
【氏名】平田 和範
【審査官】 松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−133995(JP,A)
【文献】 特開2003−019628(JP,A)
【文献】 実開昭60−071200(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/30,13/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入ピンを有する部品の前記挿入ピンを基板の挿入孔に挿入して前記部品を前記基板に実装する部品実装装置であって、
前記部品を保持する保持体と、
前記保持体を押圧して所定の移動経路上を移動させる押圧機構と、
前記保持体の前記所定の移動経路上における位置を検知する位置検知器と、
前記位置検知器で検知される前記保持体の位置に基づいて前記押圧機構を制御する制御器と、を備え、
前記所定の移動経路において、前記保持体に保持された部品の挿入ピンが前記基板の挿入孔から離れている前記保持体の位置がスタート位置であり、前記保持体に保持された部品の挿入ピンが前記基板の挿入孔に部分的に挿入される前記保持体の位置範囲が第1位置範囲であり、且つ、前記保持体に保持された部品の挿入ピンが前記基板の挿入孔に根本まで挿入される前記保持体の位置が第2位置範囲であり、
前記制御器は、前記保持体を第1の押圧力で押圧して前記スタート位置から前記第2位置範囲に向けて前記所定の移動経路を移動させた場合に、前記保持体が前記第1位置範囲で停止すると、前記第1の押圧力より大きい第2の押圧力で前記保持体を押圧するよう前記押圧機構を制御するように構成されている、部品実装装置。
【請求項2】
挿入ピンを有する部品の前記挿入ピンを基板の挿入孔に挿入して前記部品を前記基板に実装する部品実装装置であって、
前記部品を保持する保持体と、
前記保持体を押圧して所定の移動経路上を移動させる押圧機構と、
前記保持体の前記所定の移動経路上における位置を検知する位置検知器と、
前記位置検知器で検知される前記保持体の位置に基づいて前記押圧機構を制御する制御器と、
前記保持体に保持された部品を、前記基板の挿入孔をまさぐるように、前記基板に平行な方向に前記基板に対し相対的に移動させるまさぐり動作を行うまさぐり機構と、を備え、
前記所定の移動経路において、前記保持体に保持された部品の挿入ピンが前記基板の挿入孔から離れている前記保持体の位置がスタート位置であり、前記保持体に保持された部品の挿入ピンが前記基板の挿入孔に部分的に挿入される前記保持体の位置範囲が第1位置範囲であり、且つ、前記保持体に保持された部品の挿入ピンが前記基板の挿入孔に根本まで挿入される前記保持体の位置が第2位置範囲であり、
前記制御器は、前記保持体を第1の押圧力で押圧して前記スタート位置から前記第2位置範囲に向けて前記所定の移動経路を移動させた場合に、前記保持体が前記第1位置範囲の前で停止すると、前記第1の押圧力より小さい第3の押圧力で前記保持体を押圧するよう前記押圧機構を制御するとともに前記まさぐり動作を行うよう前記まさぐり機構を制御するように構成されている、部品実装装置。
【請求項3】
前記制御器は、前記押圧機構による押圧方向から見て、前記保持体の軌跡が、所定のエリアにおいて、複数の平行線群を描くよう前記まさぐり機構を制御するように構成されている、請求項に記載の部品実装装置。
【請求項4】
前記位置検知器は、前記保持体の前記所定の移動経路上における位置を連続的に検知するよう構成されている、請求項1乃至のいずれかに記載の部品実装装置。
【請求項5】
前記部品を保持していない前記保持体が前記基板に当接する前記保持体の位置が第3位置範囲であり、
前記制御器は、前記保持体を第1の押圧力で押圧して前記スタート位置から前記第2位置範囲に向けて前記所定の移動経路を移動させた場合に、前記保持体が前記第3位置範囲で停止すると、エラー信号を出力するよう構成されている、請求項1乃至のいずれかに記載の部品実装装置。
【請求項6】
挿入ピンを有する部品の前記挿入ピンを基板の挿入孔に挿入して前記部品を前記基板に実装する部品実装装置の制御方法であって、
前記部品実装装置は、
前記部品を保持する保持体を押圧して所定の移動経路上を移動させる押圧機構と、
前記保持体の前記所定の移動経路上における位置を検知する位置検知器と、
前記位置検知器で検知される前記保持体の位置に基づいて前記押圧機構を制御する制御器と、を備え、
前記所定の移動経路において、前記保持体に保持された部品の挿入ピンが前記基板の挿入孔から離れている前記保持体の位置がスタート位置であり、前記保持体に保持された部品の挿入ピンが前記基板の挿入孔に部分的に挿入される前記保持体の位置範囲が第1位置範囲であり、且つ、前記保持体に保持された部品の挿入ピンが前記基板の挿入孔に根本まで挿入される前記保持体の位置が第2位置範囲であり、
前記制御器は、前記保持体を第1の押圧力で押圧して前記スタート位置から前記第2位置範囲に向けて前記所定の移動経路を移動させた場合に、前記保持体が前記第1位置範囲で停止すると、前記第1の押圧力より大きい第2の押圧力で前記保持体を押圧するよう前記押圧機構を制御する、部品実装装置の制御方法。
【請求項7】
挿入ピンを有する部品の前記挿入ピンを基板の挿入孔に挿入して前記部品を前記基板に実装する部品実装装置の制御方法であって、
前記部品実装装置は、
前記部品を保持する保持体を押圧して所定の移動経路上を移動させる押圧機構と、
前記保持体の前記所定の移動経路上における位置を検知する位置検知器と、
前記位置検知器で検知される前記保持体の位置に基づいて前記押圧機構を制御する制御器と、
前記保持体に保持された部品を、前記基板の挿入孔をまさぐるように、前記基板に平行な方向に前記基板に対し相対的に移動させるまさぐり動作を行うまさぐり機構と、を備え、
前記所定の移動経路において、前記保持体に保持された部品の挿入ピンが前記基板の挿入孔から離れている前記保持体の位置がスタート位置であり、前記保持体に保持された部品の挿入ピンが前記基板の挿入孔に部分的に挿入される前記保持体の位置範囲が第1位置範囲であり、且つ、前記保持体に保持された部品の挿入ピンが前記基板の挿入孔に根本まで挿入される前記保持体の位置が第2位置範囲であり、
前記制御器は、前記保持体を第1の押圧力で押圧して前記スタート位置から前記第2位置範囲に向けて前記所定の移動経路を移動させた場合に、前記保持体が前記第1位置範囲の前で停止すると、前記第1の押圧力より小さい第3の押圧力で前記保持体を押圧するよう前記押圧機構を制御するとともに前記まさぐり動作を行うよう前記まさぐり機構を制御する、部品実装装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品実装装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品のリード端子を電子回路基板の挿入孔に挿入して、電子部品を電子回路基板に実装している。このリード端子が曲がっている場合などにリード端子を挿入孔に挿入できない不具合がある。
【0003】
これに対し、たとえば、特許文献1の部品挿入装置では、挿入部品をチャックで保持し、そのリード端子をプリント基板の挿入穴に挿入する。このとき、リード端子の挿入穴への挿入不良が検知されると、チャックを振動させながら、リード端子を挿入穴に挿入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−041403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の部品挿入装置では、挿入不良をロボットアームとチャックとの間に設けられた板バネの変形で検知している。そして、チャックに把持された挿入部品のリード端子をロボットアームで基板に挿入する際に、ロボットアームとチャックとの間に設けられた板バネが変形して挿入不良が検知されると、挿入動作を一旦停止する。そして、チャックを振動させながら、リード端子を挿入穴に挿入する。
【0006】
従って、この従来の部品挿入装置には、部品の挿入動作を連続的に行うことができないという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、部品の挿入動作を連続的に行うことが可能な部品実装装置及びその制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様(aspect)に係る部品実装装置は、挿入ピンを有する部品の前記挿入ピンを基板の挿入孔に挿入して前記部品を前記基板に実装する部品実装装置であって、前記部品を保持する保持体と、前記保持体を押圧して所定の移動経路上を移動させる押圧機構と、前記保持体の前記所定の移動経路上における位置を検知する位置検知器と、前記位置検知器で検知される前記保持体の位置に基づいて前記押圧機構を制御する制御器と、を備え、前記所定の移動経路において、前記保持体に保持された部品の挿入ピンが前記基板の挿入孔から離れている前記保持体の位置がスタート位置であり、前記保持体に保持された部品の挿入ピンが前記基板の挿入孔に部分的に挿入される前記保持体の位置範囲が第1位置範囲であり、且つ、前記保持体に保持された部品の挿入ピンが前記基板の挿入孔に根本まで挿入される前記保持体の位置が第2位置範囲であり、前記制御器は、前記保持体を第1の押圧力で押圧して前記スタート位置から前記第2位置範囲に向けて前記所定の移動経路を移動させた場合に、前記保持体が前記第1位置範囲より前の位置又は前記第1位置範囲で停止すると、前記第1の押圧力と異なる押圧力で前記保持体を押圧するよう前記押圧機構を制御するように構成されている。
【0009】
この構成によれば、第1の押圧力を、挿入ピンが変形している又は返りを有する部品が基板の挿入孔に部分的に挿入されて停止する程度の押圧力に選択することにより、保持体を第1の押圧力で押圧してスタート位置から第2位置範囲に向けて所定の移動経路を移動させると、保持された部品の挿入ピンが変形している又は返りを有する場合、保持体が第1位置範囲で停止する。この場合、第1の押圧力より大きい押圧力で保持体を押圧することにより、保持体に保持された部品の挿入ピンを根本まで挿入孔に挿入することができる。また、部品の位置決め誤差、挿入ピンのより大きな変形等により、挿入ピンの先端が基板の表面に当接している場合、保持体が第1位置範囲の前で停止する。この場合には、例えば、第1の押圧力より小さい押圧力で保持体を押圧しながら、挿入孔をまさぐるように、基板に平行な方向に基板に対し相対的に部品を移動させて、挿入ピンの先端を挿入孔に挿入する。すると、部品の挿入ピンが根本まで挿入孔に挿入される。あるいは、挿入ピンが挿入孔に部分的に挿入されて、保持体が第1位置範囲で停止するので、上述のように、第1の押圧力より大きい押圧力で保持体を押圧することにより、保持された部品の挿入ピンが根本まで挿入孔に挿入される。
【0010】
従って、保持された部品が正常に挿入され得ない状態にある場合には保持体が移動経路の途中で停止し、続いて、その処理動作を行うので、部品の挿入動作を連続的に行うことができる。
【0011】
前記制御器は、前記保持体が前記第1位置範囲で停止すると、前記第1の押圧力より大きい第2の押圧力で前記保持体を押圧するよう前記押圧機構を制御するように構成されていてもよい。
【0012】
この構成によれば、保持体に保持された部品の挿入ピンが変形している又は返りを有することに起因して第1位置範囲で停止している保持体を、第1の押圧力より大きい第2の押圧力で押圧するので、保持された部品の挿入ピンを根本まで挿入孔に挿入することができる。
【0013】
前記保持体に保持された部品を、前記基板の挿入孔をまさぐるように、前記基板に平行な方向に前記基板に対し相対的に移動させるまさぐり動作を行うまさぐり機構をさらに備え、前記制御器は、前記保持体が前記第1位置範囲の前で停止すると、前記第1の押圧力より小さい第3の押圧力で前記保持体を押圧するよう前記押圧機構を制御するとともに前記まさぐり動作を行うよう前記まさぐり機構を制御するように構成されていてもよい。
【0014】
この構成によれば、部品の位置決め誤差、挿入ピンのより大きな変形等により、挿入ピンの先端が基板の表面に当接していても、第1の押圧力より小さい第3の押圧力でまさぐり動作を行うことにより挿入ピンの先端が挿入孔に挿入される。すると、部品の挿入ピンが根本まで挿入孔に挿入される。あるいは、挿入ピンが挿入孔に部分的に挿入されて、保持体が第1位置範囲で停止するので、第1の押圧力より大きい第2の押圧力で保持体を押圧することにより、保持された部品の挿入ピンが根本まで挿入孔に挿入される。
【0015】
前記制御器は、前記押圧機構による押圧方向から見て、前記保持体の軌跡が、所定のエリアにおいて、複数の平行線群を描くよう前記まさぐり機構を制御するように構成されていてもよい。
【0016】
この構成によれば、複数の平行線の間隔を小さくすることにより、基板の表面上の所定のエリアを高密度でスキャンするよう保持体を移動させることができるので、部品の挿入ピンの先端を高確率で挿入孔に挿入することができる。
【0017】
前記位置検知器は、前記保持体の前記所定の移動経路上における位置を連続的に検知するよう構成されていてもよい。
【0018】
この構成によれば、保持体が第1位置範囲及び第2位置範囲に位置するか否かを制御器が好適に判定することができる。
【0019】
前記部品を保持していない前記保持体が前記基板に当接する前記保持体の位置が第3位置範囲であり、前記制御器は、前記保持体を第1の押圧力で押圧して前記スタート位置から前記第2位置範囲に向けて前記所定の移動経路を移動させた場合に、前記保持体が前記第3位置範囲で停止すると、エラー信号を出力するよう構成されていてもよい。
【0020】
この構成によれば、保持体が部品を保持しない異常を検知することができる。
【0021】
また、本発明の他の態様(aspect)に係る部品実装装置の制御方法は、挿入ピンを有する部品の前記挿入ピンを基板の挿入孔に挿入して前記部品を前記基板に実装する部品実装装置の制御方法であって、前記部品実装装置は、前記部品を保持する保持体を押圧して所定の移動経路上を移動させる押圧機構と、前記保持体の前記所定の移動経路上における位置を検知する位置検知器と、前記位置検知器で検知される前記保持体の位置に基づいて前記押圧機構を制御する制御器と、を備え、前記所定の移動経路において、前記保持体に保持された部品の挿入ピンが前記基板の挿入孔から離れている前記保持体の位置がスタート位置であり、前記保持体に保持された部品の挿入ピンが前記基板の挿入孔に部分的に挿入される前記保持体の位置範囲が第1位置範囲であり、且つ、前記保持体に保持された部品の挿入ピンが前記基板の挿入孔に根本まで挿入される前記保持体の位置が第2位置範囲であり、前記制御器は、前記保持体を第1の押圧力で押圧して前記スタート位置から前記第2位置範囲に向けて前記所定の移動経路を移動させた場合に、前記保持体が前記第1位置範囲より前の位置又は前記第1位置範囲で停止すると、前記第1の押圧力と異なる押圧力で前記保持体を押圧するよう前記押圧機構を制御する。
【0022】
この構成によれば、保持された部品が正常に挿入され得ない状態にある場合には保持体が移動経路の途中で停止し、続いて、その処理動作を行うので、部品の挿入動作を連続的に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、部品の挿入動作を連続的に行うことが可能な部品実装装置及びその制御方法を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、実施の形態1に係る部品実装装置を適用したロボットの一例の全体的な構成を概略的に示す正面図である。
図2図2は、図1のロボットのハンドの構成及び動作を示す斜視図である。
図3図3は、図1の部品実装装置の主要部の構成を模式的に示す模式図である。
図4図4は、図1のロボットの制御装置の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
図5a図5aは、図1の部品実装装置の主要部の動作を示す図であって、基板の高さの計測を示す図である。
図5b図5bは、図1の部品実装装置の主要部の動作を示す図であって、ロボットの部品挿入の教示位置を示す図である。
図5c図5cは、図1の部品実装装置の主要部の動作を示す図であって、保持体が部品を保持していない場合を示す図である。
図5d図5dは、図1の部品実装装置の主要部の動作を示す図であって、部品の挿入ピンが基板の挿入孔に正常に挿入された場合を示す図である。
図5e図5eは、図1の部品実装装置の主要部の動作を示す図であって、部品の挿入ピンが基板の挿入孔に入っていない場合を示す図である。
図5f図5fは、図1の部品実装装置の主要部の動作を示す図であって、まさぐり動作を示す図である。
図5g図5gは、図1の部品実装装置の主要部の動作を示す図であって、まさぐり動作の結果、挿入ピンが部分的に基板の挿入孔に入った場合を示す図である。
図5h図5hは、図1の部品実装装置の主要部の動作を示す図であって、挿入ピンが部分的に基板の挿入孔に入った後、挿入ピンが根本まで挿入孔に入るまで部品を押し込んだ場合を示す図である。
図6図6は、図1のロボットの制御装置による部品挿入動作の一例の概要を示すフローチャートである。
図7図7は、図1のロボットの制御装置による部品挿入動作の一例の具体的な工程を示すフローチャートである。
図8図8は、まさぐり動作における保持体の軌跡を例示する模式図である。
図9図9は、まさぐり動作における保持体の他の軌跡を例示する模式図である。
図10図10は、挿入ピンを有する部品の構成を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、図面は理解しやすくするために、それぞれの構成要素を模式的に示したもので、形状及び寸法比等については正確な表示ではない場合がある。さらに、一対のアームを広げた方向を左右方向と称し、基軸の軸心に平行な方向を上下方向と称し、左右方向及び上下方向に垂直な方向を前後方向と称する。
【0026】
(実施形態1)
本実施形態に係る部品実装装置10は、部品の挿入ピンを基板の挿入孔に挿入し、部品を基板に実装する装置である。「部品」は、基板の挿入孔に挿入するピンを有するものであれば、どのようなものでもよく、電子部品、電気部品、機械部品等が例示される。「挿入ピン」は、基板の挿入孔に挿入される「部品のピン状の突起」を意味する。「挿入ピン」として、電子部品又は電気部品のリード線又はリード端子、機械部品の固定ピン等が例示される。「基板」は、部品を搭載(mount)するためのボード、パネル等を意味する。「基板」として、電子回路基板、電気回路基板、太陽光パネル用基板、表示パネル用基板等が例示される。以下では、電子回路基板に電子部品を実装する形態を例示する。
【0027】
最初に、部品の挿入ピンの具体的な態様を例示する。図10は、挿入ピンを有する部品の構成を例示する模式図である。
【0028】
図10の上から1段目のスペースには、真っ直ぐな挿入ピン31を有する部品30が示されている。このような部品30の場合、自重または僅かな押圧力で部品30が基板40に実装される(図5d参照)。この場合、部品30は基板に固定されない。
【0029】
図10の上から2段目のスペースには、屈曲部が形成された挿入ピン31を有する部品30が示されている。このような部品30の場合、挿入ピン31の先端の寸法D1が挿入孔40a(図5g参照)の径より小さく、且つ、挿入ピン31の屈曲部の寸法D2が挿入孔40aの径より大きいので、挿入ピン31の先端が挿入孔40aに入った状態で、部品30を基板40に向けて押圧することにより、部品30が基板40に実装される(図5h参照)。この場合、部品30は基板から抜け難くい。
【0030】
図10の上から3段目のスペースには、先端部に斜め下方に延びる爪が形成された挿入ピン31を有する部品30が示されている。このような部品30の場合、まず、挿入ピン31の先端を挿入孔40aに入れ、その後、部品30を、基板40に向けて押圧しながら部品30の中心軸の回りに回転させることにより、部品30が基板40に実装される(後述のステップS2Dの説明参照)。この場合、部品30は基板40にロックされる。
【0031】
図10の上から4段目のスペースには、先端部に返り部又は屈曲部が形成された挿入ピン31を有する部品30が示されている。このような部品30の場合、まず、挿入ピン31の先端を挿入孔40aに入れ、その後、部品30を、基板40に向けて押圧することにより、部品30が基板40に実装される(図5h参照)。この場合、部品30は基板40にロックされる。
【0032】
次に、図1図3に示すロボット11に本発明に係る部品実装装置10を適用した場合について説明する。ただし、部品実装装置10はロボット11に適用される場合に限定されない。例えば、3次元方向に移動可能なテーブルを備える移動機構であってもよい。また、このロボット11について、水平多関節型双腕ロボットを説明するが、水平多関節型・垂直多関節型などのロボットを採用することができる。
【0033】
図1に示すように、ロボット11は、台車12と、台車12に支持された一対のロボットアーム(以下、単に「アーム」と記載する場合がある)13、13と、台車12内に収納された制御装置14とを備えている。各アーム13は、水平多関節型ロボットアームであって、アーム部15とリスト部17とエンドエフェクタ(ハンドと称する場合もある)18、19とを備えている。
【0034】
アーム部15は、部品を基板上に搬送する搬送部、及び、部品にまさぐり動作をさせるまさぐり機構として機能する。本例では、アーム部15が第1リンク15a及び第2リンク15bとで構成されている。なお、左右のアーム13、13は、エンドエフェクタ18、19を除いて実質的に同じ構造であり、左右のエンドエフェクタ18、19は、同じ構成のものでもよいし異なる構成のものでもよい。また、左右のアーム13、13は、独立して動作したり、互いに関連して動作したりすることができる。
【0035】
アーム部15の第1リンク15aは、台車12の上面に固定された基軸16と回転関節により連結され、基軸16の軸心を通る回転軸線L1まわりに回動可能である。第2リンク15bは、第1リンク15aの先端と回転関節により連結され、第1リンク15aの先端に規定された回転軸線L2まわりに回動可能である。リスト部17は、第2リンク15bの先端と直動関節により連結され、第2リンク15bに対し昇降移動可能である。エンドエフェクタ18、19は、リスト部17と回転関節により連結され、回転軸線まわりに回動可能である。エンドエフェクタ18、19は、それぞれ、取付部材50を介して、この回転関節に取り付けられている。
【0036】
上記構成の各アーム13は、各関節に対応する関節軸J1〜J4を有する。そして、アーム13には、各関節軸J1〜J4に対応付けられるように、駆動用のサーボモータ(図示せず)、及び、そのサーボモータの回転角を検出するエンコーダ(図示せず)等が設けられている。また、2本のアーム13、13の第1リンク15a、15aの回転軸線L1は同一直線上にあり、一方のアーム13の第1リンク15aと他方のアーム13の第1リンク15aとは上下に高低差を設けて配置されている。
【0037】
右エンドエフェクタ18は、図2に示すように、たとえば、基板を移送する移送部(ハンド)により構成されている。また、左エンドエフェクタ19は、部品実装装置の主要部を構成する。左エンドエフェクタ19は、部品30を把持する把持部20を有しており、把持部20を上下方向に回転移動させる回転部21をさらに有していてもよい。この場合、把持部20及び回転部21が部品30を保持する保持体52を構成する。なお、左エンドエフェクタ19のみが把持部20を有しているが、右エンドエフェクタ18及び左エンドエフェクタ19の少なくともいずれか一方が把持部20を有していればよい。右エンドエフェクタ18及び左エンドエフェクタ19の両方が把持部20を有している場合、各把持部20の形状は異なっていてもよい。
【0038】
この実施形態では、回転部21は、円形状の板体である。回転部21の中心軸は、リスト部17の関節軸J4に対して直交する方向に延びる。回転軸には、駆動用のサーボモータ(図示せず)、及び、そのサーボモータの回転角を検出するエンコーダ(図示せず)等が設けられている。これにより、回転部21は、中心軸を中心に時計回り又は反時計回りに回転し、1個の把持部20がリスト部17の関節軸J4に平行な方向であって下方を向く回転位置(以下、挿入位置という)に停止する。
【0039】
この実施形態では、たとえば、8個の把持部20が回転部21に設けられている。これらの把持部20は同じ形状であってもよいし、部品30の形状に合わせて異なっていてもよい。8個の把持部20は、回転部21の外周に互いに周方向に45度の中心角だけ離れて配置されている。
【0040】
図3には、説明を判りやすくするために、挿入位置にある把持部20のみが示されている。また、基板40は、基板全体のうち、把持部20の近傍に位置する部分のみが示されている。把持部20は、部品30を把持可能なものであればよい。図3に示すように、把持部20は、本実施形態では、一対の爪状の把持部材54と、この一対の把持部材54を駆動する把持部材駆動部53とを含む。一対の把持部材54は、チャックを構成している。把持部材駆動部53は、たとえば、エアシリンダである。把持部20は、全体として柱状に形成され、回転部21の径方向の外方に延びるように設けられている。具体的には、回転部21の外周に把持部材駆動部53が配置され、把持部材駆動部53の先端に一対の把持部材54(チャック)が配置されている。一対の把持部材54は、回転部21の径方向に垂直な方向に摺動自在に設けられ、把持部材駆動部53によって、部品30を挟持し、且つ、部品30を解放するように駆動される。参照符号61は、把持部20の挟持動作を示す。一対の把持部材54の摺動方向は、回転部21の径方向に垂直な方向であれば、いずれの方向であっても良いが、ここでは、回転部21の周方向(接線方向)である。但し、図3において、部品30の挿入過程の説明を容易にするために、一対の把持部材54の摺動方向が、回転部21の軸方向であるように描かれている。なお、把持部20は、例えば、部品30を負圧で吸引する吸着パッド、磁性体を有する部品30を吸着する電磁石等であってもよい。
【0041】
回転部21は、スライダ51を介して取付部材50に取り付けられている。具体的には、スライダ51は、図2に示すように、直線状の案内部を有する固定体51aとこの案内部に係合して案内部に沿って摺動自在な移動体51bとを含む。移動体51bの摺動方向は、リスト部17の関節軸J4(回転関節の回転軸線)に平行な方向である。
【0042】
図3を参照すると、スライダ51の固定体51aが取付部材50に固定され、スライダ51の移動体51bに回転部21が固定されている。移動体51bは、取付部材50に固定された押圧機構55によってその摺動方向に往復駆動される。具体的には、押圧機構55は、例えば、エアシリンダで構成される。エアシリンダのシリンダ55aが取り付け部材56を介して取付部材50に固定され、エアシリンダのピストンロッド55bの先端が回転部21に固定される。これにより、エアシリンダのピストンロッド55bが進退すると、回転部21、ひいては保持体52が基板40に対して接近及び離隔する。従って、エアシリンダのピストンロッド55bが進出することによって保持体52が押圧される。参照符号Pは、この押圧力を表す。また、保持体の52が基板40に対して接近及び離隔する経路が部品30の挿入ピン31を基板40の挿入孔41aに挿入する移動経路(以下、所定の移動経路という)である。また、挿入位置に停止している把持部20の基端から先端に向かう方向が押圧方向である。ここでは、所定の移動経路は、上下方向に延在し、且つ、押圧方向は下方向であるが、所定の移動経路の延在方向及び押圧方向はいずれの方向であってもよい。
【0043】
左エンドエフェクタ19には、保持体52の所定の移動経路上の位置を検知する位置検知器57が設けられている。位置検知器57は、たとえば、リニアスケールで構成される。リニアスケールを用いると、保持体52の所定の移動経路上の位置を連続的に検知することができる。もちろん、他の位置検知器を用いてもよい。例えば、第1乃至第3位置範囲A〜Cの中央位置を検知する3つの位置センサ(例えば、磁石及びホール素子)を、スライダ51又はエアシリンダ(55)に設け、ソフトウェアによって、各位置センサで検出される位置を所定の位置範囲に広げてもよい。
【0044】
そして、保持体52に、基準点21aが設定(規定)される。基準点21aは、保持体52を代表する位置である。以下では、「保持体の位置」とは、「基準点21aの位置」を意味する。例えば、回転部21に基準点21aが設定される。なお、基準点は、保持体52上であればどこに設定してもよい。そして、所定の移動経路において、保持体52に保持された部品30の挿入ピン31が基板40の挿入孔41aから離れている保持体52の位置がスタート位置(図示せず)であり、保持体52に保持された部品30の挿入ピン31が基板40の挿入孔41aに部分的に挿入される保持体52の位置範囲が第1位置範囲Aであり、保持体52に保持された部品30の挿入ピン31が基板40の挿入孔40aに根本まで挿入される保持体52の位置が第2位置範囲Bであり、且つ、部品30を保持していない保持体52が基板40に当接する保持体52の位置が第3位置範囲Cであると設定(規定)される。これらの、スタート位置及び第1乃至第3位置範囲A〜Cは、位置検知器57の位置目盛(位置スケール)に対応付けられる。従って、スタート位置及び第2乃至第3位置範囲A〜Cは、スライダ51における固定体51aに対する移動体51bの相対位置に対応している。所定の移動経路及びスタート位置及び第1乃至第3位置範囲A〜Cは、本実施形態では、左エンドエフェクタ19の座標系によって規定(定義)される。従って、左エンドエフェクタ19が、基板40の挿入対象となる挿入孔40aの空間位置に応じて移動しても、所定の移動経路及びスタート位置及び第1乃至第3位置範囲A〜Cの制御上の座標は変わらない。これにより、部品挿入の制御が簡易になる。もちろん、所定の移動経路及びスタート位置及び第1乃至第3位置範囲A〜Cの座標をロボット11の基準座標によって規定(定義)してもよい。
【0045】
第1乃至第3位置範囲A〜Cの中央位置は、例えば、それぞれ、スライダ51、保持体52、及び部品30の寸法等に基づいて決定される。また、第1位置範囲Aの範囲は、例えば、ロボット11のアームの位置決め精度、保持体52の寸法公差、部品30の寸法公差、基板40の厚み等に基づいて決定される。また、第2位置範囲B及び第3位置範囲Cの範囲は、例えば、ロボット11のアームの位置決め精度、保持体52の寸法公差、部品30の寸法公差等に基づいて決定される。すなわち、第1乃至第3位置範囲A〜Cの範囲は、上述の位置決め精度及び寸法公差に起因して保持体52の実際の停止位置がばらついても、保持体52の停止を位置検知器57によって検知することが可能なように決定される。
【0046】
また、取付部材50の下面に対する基板40の表面の高さが基板高さHとして設定(規定)される。基板高さH、基準点21a、並びにスタート位置及び第1乃至第3位置範囲A〜Cの設定は、制御装置14の記憶部14bに、これらを記憶することによって行われる。
【0047】
図4に示すように、制御装置14は、CPU等の演算部14aと、ROM、RAM等の記憶部14bと、サーボ制御部14cと、を備える。制御装置14は、例えばマイクロコントローラ等のコンピュータを備えたロボットコントローラである。なお、制御装置14は、集中制御する単独の制御装置14によって構成されていてもよいし、互いに協働して分散制御する複数の制御装置14によって構成されていてもよい。
【0048】
記憶部14bには、ロボットコントローラとしての基本プログラム、各種固定データ等の情報が記憶されている。演算部14aは、記憶部14bに記憶された基本プログラム等のソフトウェアを読み出して実行することにより、ロボット11の各種動作を制御する。たとえば、ロボット11のアームの動作に関して、演算部14aは、ロボット11の制御指令を生成し、これをサーボ制御部14cに出力する。サーボ制御部14cは、演算部14aにより生成された制御指令に基づいて、ロボット11の各アーム13の関節軸J1〜J4に対応するサーボモータの駆動を制御するように構成されている。
【0049】
また、制御装置14は、左エンドエフェクタ19の動作を制御する。具体的には、制御装置14は、左エンドエフェクタ19の押圧機構55及び把持部材駆動部53の動作を制御する。従って、制御装置14は、ロボット11の一般的な動作を制御する制御器として機能するとともに部品実装装置の制御器として機能する。
【0050】
次に、上記構成のロボット11による部品30を基板40に実装する動作(部品実装装置10の制御方法)について図3図5a〜図5h、図7図10を参照して説明する。なお、図5a〜図5hでは、図を見易くするために、押圧機構55(図3参照)の図示が省略されている。
【0051】
この動作は制御装置14により制御される。なお、8個の把持部20のうちの挿入位置にある把持部20について説明する。他の把持部20についてもこれと同様であるため、その説明を省略する。
【0052】
基板を実装する前に、基板40の高さ計測及びロボット11の教示が行われる。
【0053】
<基板の高さの計測>
この工程は、基板高さHが変わる場合に必要である。図5aを参照すると、基板40が載置部24に載置され(図2参照)、保持体52に部品30が保持され、且つ押圧機構55(図3参照)をフローティング(非押圧状態)にした状態で、部品30の挿入ピン31の先端を基板40の表面に当接させ、左エンドエフェクタ19を上下方向に移動させながら、保持体52が第2位置範囲Bの中央位置に位置する左エンドエフェクタ19の高さ位置(ここでは取付部材50の下面の位置)をセンシングする。そして、この高さ位置において、スライダ51の移動体51bを固定体51aにロック(R)する。そして、左エンドエフェクタ19の高さ位置から基板40の高さ位置(既知)を差し引いて仮の基板高さ位置H´を算出する。さらに、仮の基板高さ位置H´から部品30の挿入ピン31の長さを差し引いて基板高さHを求める。なお、基板40上の計測箇所として、挿入対象である挿入孔41a(図3参照)の近傍で挿入孔41aに挿入ピン31が入らないような箇所を選択する。
【0054】
<教示>
次に、部品を挿入孔41aに対して位置決めするために、左エンドエフェクタ19の目標位置を教示する。具体的には、保持体52に部品30が保持され、且つ押圧機構55(図3参照)をフローティング(非押圧状態)にした状態で、部品30の挿入ピン31を基板40の挿入孔に根本まで挿入し、左エンドエフェクタ19を上下方向に移動させながら、保持体52が第2位置範囲Bの中央位置に位置する左エンドエフェクタ19の高さ位置をセンシングする。そして、この高さ位置において、スライダ51の移動体51bを固定体51aにロック(R)する。そして、このときの左エンドエフェクタ19の位置を目標位置として教示する。
【0055】
次いで、部品の保持動作及び挿入動作が行われる。
【0056】
<部品の保持動作>
図2に示すように、ロボット11の前には、部品30が配置された作業台32、及び、基板40が移送されるベルトコンベア33が設けられている。作業台32の部品30は挿入ピン31を下にして配置されている。ベルトコンベア33は左右方向に延び、前後方向に並べて配置された2つの基板40がベルトコンベア33により左から右に運ばれる。
【0057】
まず、ロボット11は左エンドエフェクタ19を基板40の左端に当て右側に移動させ、ベルトコンベア33の間にある載置部24に基板40を載置させる。載置部24は、ベルトコンベア33より少し高くなっており、載置部24に載置された基板40は、ロボット11の前で停止する。ロボット11は左アーム部15を前方へ動かし、保持体52を作業台32に移動させる。
【0058】
図2及び図3を参照すると、ロボット11は、挿入位置にある把持部20の把持部材駆動部53を動作させて一対の把持部材54により作業台32の部品30を挟持する。これにより、保持体52に部品30が保持される。
【0059】
続いて、保持体52を他の部品の上方に移動させて、他の把持部20が挿入位置に位置するように、回転部21を回転させる。そして、同様に、挿入位置にある把持部20の把持部材駆動部53を動作させて一対の把持部材54により作業台32の部品30を挟持する。これを所望の数、繰り返す。
【0060】
<部品挿入動作>
ロボット11は左アーム部15を後方へ動かし、把持部20及びこれにより把持されている部品30を基板40上へ移動させる。そして、部品挿入動作を行う。
【0061】
図6は、図1のロボットの制御装置14による部品挿入動作の一例の概要を示すフローチャートである。ここでは、ロボット11の動作として説明する。
【0062】
ロボット11は、スタート位置に位置する保持体52を押圧機構55により第1の押圧力で押圧する(ステップS1)。
【0063】
次いで、ロボット11は、保持体52が、第1位置範囲A又は第1位置範囲Aより前で停止している否か判定する(ステップS2)。
【0064】
停止していない場合(ステップS2でNO)、ステップS4に進む。
【0065】
停止している場合(ステップS2でYES)、第1の押圧力と異なる押圧力で保持体52を押圧する(ステップS3)。
【0066】
次いで、保持体52が、第2位置範囲Bで停止している否か判定する(ステップS4)。
【0067】
停止していない場合(ステップS4でNO)、保持体52が第2位置範囲Bで停止するまで、第1の押圧力と異なる押圧力で保持体52を押圧する(ステップS3、S4)。
【0068】
停止している場合(ステップS4でYES)、保持体52に保持された部品が基板40の挿入孔40aに正常に挿入されたと判断して挿入動作を終了する。その後、把持部20の把持部材駆動部53を動作させて一対の把持部材54により挟持されている部品30を解放する。その後、押圧機構55によって保持体5をスタート位置に戻す。
【0069】
次に、この部品挿入動作の具体例を説明する。図7は、図1のロボットの制御装置による部品挿入動作の一例の具体的な工程を示すフローチャートである。
【0070】
図5c乃至図5h及び図7を参照すると、ロボット11は、まず、押圧機構55のピストンロッド55bを後退させて保持体52をスタート位置に位置させる(ステップS0)。
【0071】
次いで、ロボット11は、スタート位置に位置する保持体52を、押圧機構55のピストンロッド55bを前進させて、第1の押圧力で押圧する(ステップS1)。ここで、第1の押圧力は、部品に応じて設定(選択)されるが、例えば、3N〜5Nとされる。
【0072】
次いで、ロボット11は、所定時間が経過するのを待機する(ステップS2A)。この所定時間は、たとえば、部品30が第1の押圧力で正常に挿入されるに十分な時間とされる。
【0073】
ロボット11は、所定時間が経過すると、保持体52が、第3位置範囲Aで停止している否か判定する(ステップS2B)。
【0074】
停止している場合(ステップS2BでYES)は、図5cに示すように、保持体52が部品を保持していない場合であるので、エラー信号を出力し(ステップS5)、挿入動作を終了する。
【0075】
停止していない場合(ステップS2BでNO)、保持体52が、第2位置範囲Bで停止しているか否か判定する(ステップS2C)。
【0076】
停止している場合(ステップS2CでYES)は、図5dに示すように、保持体52に保持された部品30の挿入ピン31が根本まで挿入されている場合である。このような場合として、図10の上から1段目のスペースに示されているように、部品30が真っ直ぐな挿入ピン31を有していて、それが変形していない場合が例示される。この場合、部品30が基板40の挿入孔40aに正常に挿入されたと判断して挿入動作を終了する。その後、把持部20の把持部材駆動部53を動作させて一対の把持部材54により挟持されている部品30を解放する。その後、押圧機構55によって保持体5をスタート位置に戻す。
【0077】
停止していない場合(ステップS2CでNO)、保持体52が、第1位置範囲Aで停止しているか否か判定する(ステップS2D)。
【0078】
停止していない場合(ステップS2DでNO)、図5eに示すように、部品30の挿入ピン31の先端が基板40の表面に当接している状態にある。この状態は、部品30の位置決め誤差、挿入ピン31の比較的大きな変形等により生じる。この場合、ロボット11は、まさぐり機構により、保持体52にまさぐり動作を行わせ(ステップS3A)、その後、ステップS2Dに戻る。まさぐり動作は、保持体52に保持された部品30を、基板40の挿入孔40aをまさぐるように、基板40に平行な方向に基板40に対し相対的に移動させることによって行われる。このまさぐり動作は、第1の押圧力より小さい第3の押圧力で保持体52を押圧しながら行われる。第2の押圧力は、例えば、1〜2.5Nmとされる。この押圧力であれば挿入ピン31が、まさぐり動作によって曲げられることを防止できるからである。一対の把持部材54は、部品30を挟持していても解放していても構わない。ここでは、一対の把持部材54は、解放状態にされる(図5f参照)。
【0079】
図8は、まさぐり動作における保持体52の軌跡を例示する模式図である。図8を参照すると、まさぐり動作は、たとえば、押圧機構55による押圧方向から見て、保持体52の軌跡が、所定のエリア71(図8a参照)において、所定の間隔の複数の平行線を順に繋いでなる一本の直線を描くようまさぐり機構を制御することによって行われる。
【0080】
図9は、まさぐり動作における保持体52の他の軌跡を例示する模式図である。図9において、「+」はまさぐり動作の起点を示し、S及びEは、スタート及び終了となる動作を示す。
【0081】
図9の上から1段目のスペースには、「渦巻き型」のまさぐり動作が示されている。この動作パターンでは、保持体52の軌跡が多角形の渦を描くように保持体52が移動される。多角形の角数は3以上であり、ここでは、6角形の場合の動作パターンが示されている。
【0082】
図9の上から2段目のスペースには、「放射型」のまさぐり動作が示されている。この動作パターンは、保持体52の軌跡が多角形の対角線に沿うように保持体52が移動される。多角形の角数は3以上であり、ここでは、四角形及び6角形の場合の動作パターンが示されている。また、保持体52の軌跡は、途中で途切れている。この途切れている部分では、保持体52が適宜な距離だけ後退されている。このように、まさぐり動作は、図8に示すように、一筆書き状の動作パターンには限定されず、途切れる動作パターンでも構わない。
【0083】
図9の上から3段目のスペースには、「多重型」のまさぐり動作が示されている。この動作パターンでは、保持体52の軌跡が多重の多角形を描くように保持体52が移動される。多角形の角数は3以上であり、ここでは、6角形の場合の動作パターンが示されている。
【0084】
図9の上から4段目目のスペースには、「HH型」のまさぐり動作が示されている。この動作パターンでは、保持体52の軌跡が、文字Hが横に連結されてなるHH字を描くように保持体52が移動される。
【0085】
図8及び図9のまさぐり動作をまとめると、保持体52の軌跡は、押圧機構55による押圧方向から見て、所定のエリア71において、複数の平行線群を描くようなものであればよい。換言すると、所定のエリア71にハッチングを施すように、保持体52を移動させるようまさぐり機構を制御すればよい。これにより、複数の平行線の間隔を適宜な小さい間隔にすることにより、基板40の表面上の所定のエリア71を高密度でスキャンするよう保持体52を移動させることができるので、部品30の挿入ピン31の先端を高確率で挿入孔40aに挿入することができる。
【0086】
なお、一対の把持部材54を挟持動作にしてまさぐり動作を行う場合には、部品30の軌跡は、図8及び図9に示す保持体52の軌跡と同様である。一方、一対の把持部材54を解放してまさぐり動作を行う場合には、部品30の軌跡は、図8及び図9に示す保持体52の軌跡からランダムに逸れる軌跡を描く。これにより、部品30の挿入ピン31の先端を挿入孔40aに挿入できる確率が向上する。
【0087】
まさぐり機構は、ここでは、ロボット11のアーム13である。
【0088】
図7に戻ると、ステップS2Dで保持体52が第1位置範囲Aで停止している場合(ステップS2DでYES)、図5gに示すように、部品30の挿入ピン31が基板40の挿入孔40aに部分的に挿入された状態にある。この状態は、上述のまさぐり動作を行った場合、及び、部品30の挿入ピン31が返り部又は屈曲部を有する場合(図10の上から2段目及び4段目のスペース参照)に生じ得る。この場合には、ロボット11は、第1の押圧力より大きい第2の押圧力で保持体52を押圧する(ステップS3B)。第2の押圧力は、部品30の種類に応じて、適宜、決定される。また、部品30の挿入ピン31が基板40の挿入孔40aに部分的に挿入された状態は、部品30の挿入ピン31の先端部に斜め下方に延びる爪が形成されている場合(図10の上から3段目のスペース参照)に生じ得る。この場合には、ロボット11は、第1の押圧力より大きい第2の押圧力で保持体52を押圧しながら部品30の中心軸の回りに回転させる。この回転はロボット11の左アーム13を適宜動作させることによって行われる。
【0089】
次いで、保持体52が、第2位置範囲Bで停止している否か判定する(ステップS4)。
【0090】
停止していない場合(ステップS4でNO)、保持体52が第2位置範囲Bで停止するまで、第2の押圧力で保持体52を押圧する(ステップS4、S3B)。また、部品30の挿入ピン31の先端部に斜め下方に延びる爪が形成されている場合には上記回転動作を継続する。
【0091】
停止している場合(ステップS4でYES)、図5hに示すように、保持体52に保持された部品30が基板40の挿入孔40aに正常に挿入されたと判断して挿入動作を終了する。その後、把持部20の把持部材駆動部53を動作させて一対の把持部材54により挟持されている部品30を解放する。その後、押圧機構55によって保持体5をスタート位置に戻す。
【0092】
そして、回転部21を回転させながら、全ての部品30を基板40に挿入すると、右エンドエフェクタ18を基板40の左端に当て右側に移動させる。これにより、基板40を載置部24からベルトコンベア33へ移動させ、基板40がベルトコンベア33により搬送される。
【0093】
以上のように、実施形態1によれば、保持体52に保持された部品30が正常に挿入され得ない状態にある場合には保持体52が移動経路の途中で停止し、続いて、その処理動作を行うので、部品30の挿入動作を連続的に行うことができる。
【0094】
(実施形態2)
本発明の実施形態2は、押圧機構55として、実施形態1のエアシリンダに代えて、サーボモータ(図示せず)及び回転−直動変換機構(図示)を備え、且つ、位置検知器57として、実施形態1のリニアスケールに代えて、サーボモータの出力軸に設けられたエンコーダを備える形態を例示する。これら以外の構成は実施の形態1と同様である。サーボモータ、回転−直動変換機構、及びエンコーダは周知であるので、簡単に説明する。
【0095】
回転−直動変換機構は、サーボモータの回転を直動に変換する機構であり、ラックピニオン、ボールねじ機構等が例示される。
【0096】
このような実施形態2によれば、制御装置14が、エンコーダが検知するサーボモータの回転角に基づいて、サーボモータを位置制御することにより、保持体52の往復動をより精密に制御することができる。なお、サーボモータによっても、押圧機構55をフローティング状態にすることが可能である。
【0097】
(その他の実施形態)
実施の形態1又は2において、まさぐり機構として、基板40をその主面に平行な方向に移動させてもよい。
【0098】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、部品の挿入動作を連続的に行うことができる部品実装装置として有用である。
【符号の説明】
【0100】
10 部品実装装置
11 ロボット
13 アーム
14 制御装置
18 右エンドエフェクタ
19 左エンドエフェクタ
20 把持部
30 部品
31 挿入ピン
40 基板
40a 挿入孔
52 保持体
54 把持部材
55 押圧機構
57 位置検知器
A 第1位置範囲
B 第2位置範囲
C 第3位置範囲
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図5e
図5f
図5g
図5h
図6
図7
図8
図9
図10