(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置が、前記膨張機の起動の前に、前記膨張機を回転させない所定の初期冷却流量の初期冷却された前記冷媒が前記膨張機に導入されるように、前記膨張機入口弁の開度指令を生成し、当該開度指令を前記膨張機入口弁に出力する、
請求項1に記載の原料ガス液化装置。
前記膨張機の起動の前に、前記膨張機を回転させない所定の初期冷却流量の初期冷却された前記冷媒が前記膨張機に導入されるように、前記膨張機入口弁の開度を操作して、前記膨張機に導入される流量を前記初期冷却流量に制御する、
請求項6に記載の原料ガス液化装置の制御方法。
前記膨張機の起動時であって、前記膨張機の危険速度領域を超える所定の昇速前回転数から前記膨張機の定格回転数まで前記膨張機の回転数を上昇させるときに、前記膨張機の回転数の変化に伴う前記熱交換器の温度変化を所定の許容範囲内に抑えながら前記膨張機の回転数を上昇させる所定の回転数昇速スケジュールに基づいて、前記目標値を求める、
請求項6又は7に記載の原料ガス液化装置の制御方法。
前記膨張機の停止時であって、前記膨張機の定格回転数から前記膨張機の危険速度領域を超える所定の停止前回転数まで前記膨張機の回転数を降下させるときに、前記膨張機の回転数の変化に伴う前記熱交換器の温度変化を所定の許容範囲内に抑えながら前記回転数を降下させる所定の回転数減速スケジュールに基づいて、前記目標値を求める、
請求項6〜8のいずれか一項に記載の原料ガス液化装置の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る原料ガス液化装置100の全体的な構成を示す図、
図2は、原料ガス液化装置100の制御系統の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る原料ガス液化装置100は、供給される原料ガスを、冷却し、液化することにより、液化原料ガスを生成する装置である。本実施形態では、原料ガスとして高純度の水素ガスが用いられ、その結果、液化原料ガスとして液体水素が生成される。但し、原料ガスは、水素ガスに限定されず、常温常圧で気体であり、且つ、窒素ガスの沸点(−196℃)よりも沸点が低い物質であればよい。このような原料ガスとして、例えば、水素ガス、ヘリウムガス、ネオンガスなどが挙げられる。
【0014】
図1及び
図2に示すように、原料ガス液化装置100は、原料ガスが流れるフィードライン1と、冷媒が循環する冷媒循環ライン3と、原料ガス液化装置100の動作を司る制御装置6とを備えている。原料ガス液化装置100には、フィードライン1を流れる原料ガスと冷媒循環ライン3を流れる冷媒とを熱交換させる複数段の熱交換器81〜86と、冷却器73,88とが設けられている。
【0015】
〔フィードライン1の構成〕
フィードライン1は、原料ガスが流れる流路であって、熱交換器81〜86内の高温側流路、冷却器73,88内の流路、供給系ジュールトムソン弁(以下、「供給系JT弁16」と称する)、それらを繋ぐ配管内の流路などによって形成されている。フィードライン1には、図示されない圧縮機などにより昇圧された常温高圧の原料ガスが供給される。
【0016】
フィードライン1は、1段目の熱交換器81、初期冷却器73、2段目から6段目の熱交換器82〜86、冷却器88、及び供給系JT弁16を、その順に通過する。熱交換器81〜86では、原料ガスと冷媒との熱交換が行われ、原料ガスが冷却される。
【0017】
フィードライン1は、1段目の熱交換器81から出て2段目の熱交換器82に入るまでに初期冷却器73を通る。初期冷却器73は、液体窒素を貯える液体窒素貯槽71と、その液体窒素貯槽71へ外部から液体窒素を供給する窒素ライン70とを備えており、液体窒素貯槽71内にフィードライン1が通されている。初期冷却器73では、液体窒素によって、原料ガス及び冷媒がおよそ液体窒素の温度まで冷却される。
【0018】
また、フィードライン1は、6段目の熱交換器86から出て供給系JT弁16に入るまでに冷却器88を通る。冷却器88は、冷媒循環ライン3の冷媒が液化した液化冷媒を貯える液化冷媒貯槽40を備えており、その液化冷媒貯槽40内にフィードライン1が通されている。冷却器88では、液化冷媒貯槽40内の液化冷媒によって原料ガスがおよそ液化冷媒の温度(即ち、極低温)まで冷却される。
【0019】
上記のように冷却器88から出た極低温の原料ガスは、供給系JT弁16に流入する。供給系JT弁16では、極低温の原料ガスがジュールトムソン膨張することにより、低温常圧の液体となる。このようにして液化した原料ガス(即ち、液化原料ガス)は、図示されない貯槽へ送られて貯えられる。液化原料ガスの生成量は、供給系JT弁16の開度によって調整される。
【0020】
〔冷媒循環ライン3の構成〕
冷媒循環ライン3は、冷媒が循環する閉じられた流路であって、熱交換器81〜86内の流路、冷却器73内の流路、2台の圧縮機32,33、2台の膨張機37,38、循環系ジュールトムソン弁(以下、「循環系JT弁36」と称する)、液化冷媒貯槽40、及び、それらを繋ぐ配管内の流路などによって形成されている。上記フィードライン1及び冷媒循環ライン3において、1〜6段目の熱交換器81〜86、初期冷却器73、冷却器88、及び、膨張機37,38を含む部分が、液化機20として構成されている。
【0021】
冷媒循環ライン3には、冷媒を充填するための充填ライン(図示略)が接続されている。本実施形態では、冷媒として、水素が用いられている。但し、冷媒は、水素に限定されず、常温常圧で気体であり、且つ、沸点が原料ガスと同じ又はそれ以下の物質であればよい。このような冷媒として、例えば、水素、ヘリウム、ネオンなどが挙げられる。
【0022】
冷媒循環ライン3は、冷媒液化ルート41と冷熱生成ルート42との、部分的に流路を共有する2つの循環流路(閉ループ)を有する。冷媒液化ルート41は、低圧側の圧縮機(以下、「低圧圧縮機32」と称する)、高圧側の圧縮機(以下、「高圧圧縮機33」と称する)、1段目の熱交換器81の高温側冷媒流路、初期冷却器73、2段目から6段目の熱交換器82〜86の高温側冷媒流路、循環系JT弁36、液化冷媒貯槽40、及び、6段目から1段目の熱交換器86〜81の低温側冷媒流路を順に通過して低圧圧縮機32へ戻る。
【0023】
低圧圧縮機32の入口には、低圧流路31Lが接続されている。低圧圧縮機32の出口と高圧圧縮機33の入口とは、中圧流路31Mで接続されている。低圧流路31Lの冷媒は、低圧圧縮機32で圧縮されて、中圧流路31Mへ吐出される。高圧圧縮機33の出口と、循環系JT弁36の入口とは高圧流路31Hで接続されている。中圧流路31Mの冷媒は、高圧圧縮機33で圧縮されて、高圧流路31Hへ吐出される。
【0024】
高圧流路31Hの冷媒は、1段目の熱交換器81の高温側冷媒流路、初期冷却器73、及び、2段目から6段目の熱交換器82〜86の高温側冷媒流路をその順に通って冷却され、循環系JT弁36に流入する。循環系JT弁36で、ジュールトムソン膨張することにより液化した冷媒は液化冷媒貯槽40に流入する。液化冷媒の生成量は、循環系JT弁36の開度によって調整される。
【0025】
液化冷媒が貯えられた液化冷媒貯槽40では、ボイルオフガスが生じる。このボイルオフガスは、液化冷媒貯槽40の出口と低圧圧縮機32の入口とを繋ぐ低圧流路31Lへ流入する。低圧流路31Lは、1段目から6段目の熱交換器81〜86を、高圧流路31Hとは逆の順に通る。つまり、低圧流路31Lは、6段目の熱交換器86から1段目の熱交換器81までを、その順に通る。低圧流路31Lの冷媒は、熱交換器86〜81の低温側冷媒流路を通過するうちに昇温され、低圧圧縮機32の入口へ戻される。
【0026】
一方、冷熱生成ルート42は、高圧圧縮機33、1段目から2段目の熱交換器81〜82の高温側冷媒流路、高圧側の膨張機(以下、「高圧膨張機37」と称する)、4段目の熱交換器84、低圧側の膨張機(以下、「低圧膨張機38」と称する)、及び、5段目から1段目の熱交換器85〜81の低温側冷媒流路を順に通過して高圧圧縮機33へ戻る。膨張機37,38は、タービン式の膨張機であって、タービンのロータ軸の回転数N1,N2を検出する回転数センサ56,57が設けられている。なお、この明細書及び請求の範囲において、膨張機37,38のタービンのロータ軸の回転数を、単に膨張機37,38の回転数と表現することがある。
【0027】
冷媒液化ルート41と冷熱生成ルート42は、高圧圧縮機33から2段目の熱交換器82までの流路を共用している。高圧流路31Hにおいて、2段目の熱交換器82の出口から3段目の熱交換器83の入口までの間に分岐部31dが設けられており、この分岐部31dに冷熱生成流路31Cの上流端が接続されている。冷熱生成流路31Cの下流端は、中圧流路31Mと接続されている。
【0028】
冷熱生成流路31Cは、分岐部31dから中圧流路31Mまでの間に、高圧膨張機37、4段目の熱交換器84、低圧膨張機38、及び、5段目から1段目の熱交換器85〜81の低温側冷媒流路を通る。高圧流路31Hにおいて2段目の熱交換器82を通過した冷媒は、高圧膨張機37の動作により、その大半が冷熱生成流路31Cへ流れ、残余が3段目の熱交換器83へ流れる。
【0029】
冷熱生成流路31Cに流入した液体窒素温度よりも低温で高圧の冷媒は、高圧膨張機37で膨張により降圧・降温され、4段目の熱交換器84を通過したのち、低圧膨張機38で膨張により更に降圧・降温される。低圧膨張機38から出た極低温の冷媒は、更に、5段目の熱交換器85から1段目の熱交換器81までを順に通過して昇温されて(即ち、原料ガス及び高圧流路31Hの冷媒を冷却して)、中圧流路31Mの冷媒と合流する。
【0030】
冷熱生成流路31Cにおいて、高圧膨張機37の入口側には、高圧膨張機37へ流入する冷媒の流量を調整する高圧膨張機入口弁21が設けられており、高圧膨張機入口弁21の上流側には、冷熱生成流路31Cに流入した冷媒の流量F1(以下、「高圧膨張機入口側流量F1」と称する)を検出する高圧膨張機入口側流量センサ58が設けられている。冷熱生成流路31Cにおいて、高圧膨張機37の出口側には、高圧膨張機37から出た冷媒の温度(以下、「高圧膨張機出口温度T1」と称する)を検出する高圧膨張機出口温度センサ51が設けられている。
【0031】
同様に、冷熱生成流路31Cにおいて、低圧膨張機38の入口側には、低圧膨張機38へ流入する冷媒の流量を調整する低圧膨張機入口弁22が設けられており、低圧膨張機入口弁22の上流側には高圧膨張機37から流入した冷媒の流量F2(以下、「低圧膨張機入口側流量F2」と称する)を検出する低圧膨張機入口側流量センサ59が設けられている。冷熱生成流路31Cにおいて、低圧膨張機38の出口側には、低圧膨張機38から出た冷媒の温度(以下、「低圧膨張機出口温度T2」と称する)を検出する低圧膨張機出口温度センサ52が設けられている。
【0032】
冷熱生成流路31Cにおいて、高圧膨張機入口弁21よりも上流側且つ流量センサ53よりも下流側に、高圧膨張機バイパス流路23の上流端が接続されている。高圧膨張機バイパス流路23の下流端は、冷熱生成流路31Cにおいて、熱交換器84よりも上流側且つ高圧膨張機出口温度センサ51よりも下流側と接続されている。つまり、高圧膨張機バイパス流路23は、高圧膨張機37の入口側と出口側とを接続し、高圧膨張機37をバイパスしている。高圧膨張機バイパス流路23には、高圧膨張機バイパス弁24が設けられている。
【0033】
同様に、冷熱生成流路31Cにおいて、低圧膨張機入口弁22よりも上流側且つ熱交換器84よりも下流側に、低圧膨張機バイパス流路26の上流端が接続されている。低圧膨張機バイパス流路26の下流端は、冷熱生成流路31Cにおいて、熱交換器85よりも上流側且つ低圧膨張機出口温度センサ52よりも下流側と接続されている。つまり、低圧膨張機バイパス流路26は、低圧膨張機38の入口側と出口側とを接続し、低圧膨張機38をバイパスしている。低圧膨張機バイパス流路26には、低圧膨張機バイパス弁27が設けられている。
【0034】
〔原料ガス液化装置100の制御系統の構成〕
制御装置6は、フィードライン1及び冷媒循環ライン3に関する動作制御を行う装置であり、本実施形態では特に原料ガス液化装置100の起動方法及び停止方法、更に詳しくは、高圧膨張機37及び低圧膨張機38の起動方法及び停止方法を実行する装置である。制御装置6は、高圧膨張機37と低圧膨張機38とを協調させながら、高圧膨張機37と低圧膨張機38の起動と停止を制御する。
【0035】
原料ガス液化装置100には、そのプロセスデータを検出するための各種センサが設けられており、それらのセンサは検出値を送信可能に制御装置6と接続されている。例えば、制御装置6は、高圧膨張機出口温度センサ51、低圧膨張機出口温度センサ52、高圧膨張機回転数センサ56、低圧膨張機回転数センサ57、高圧膨張機入口側流量センサ58、及び、低圧膨張機入口側流量センサ59と接続されており、それらのセンサから検出値を取得することができる。
【0036】
また、原料ガス液化装置100の高圧膨張機入口弁21、低圧膨張機入口弁22、高圧膨張機バイパス弁24、及び、低圧膨張機バイパス弁27の各弁の開度は、制御装置6によって操作される。制御装置6は、所謂、コンピュータであって、予め記憶されたプログラムを実行することにより、起動制御部61、停止制御部62としての機能を発揮する。制御装置6のこれらの機能部は、取得したプロセスデータに基づいて、弁の開度を求め、開度指令を対応する弁へ出力する。各弁は、制御装置6からの開度指令を受け取り、開度指令と対応した開度を実現するように動作する。
【0037】
〔起動制御〕
先ず、制御装置6による起動制御について説明する。
図3は、起動制御の処理の流れを説明する図であり、
図4は、起動制御のタイミングチャートである。
図3では、低圧膨張機38の起動制御の処理の流れを説明しているが、低圧膨張機38の起動制御と高圧膨張機37の起動制御は、使用されるスケジュールや設定値等が異なるものの処理の内容は実質的に同じであり、高圧膨張機37の起動制御の処理も
図3に当てはめて説明する。また、
図4では、上段のチャートが、高圧膨張機回転数N1、高圧膨張機入口弁21の開度、及び高圧膨張機バイパス弁24の開度の経時変化を表し、下段のチャートが、低圧膨張機回転数N2、低圧膨張機入口弁22の開度、及び低圧膨張機バイパス弁27の開度の経時変化を表している。上段のチャートと下段のチャートの時間軸は対応している。
【0038】
図3及び
図4に示すように、起動制御は、初期冷却ステップ、初期起動ステップ、危険速度領域通過ステップ、及び、回転数昇速ステップの大きく分けて4つのステップから成る。初期冷却ステップは、膨張機37,38の起動前(即ち、回転を始める前)に行われる。
【0039】
(初期冷却ステップ)
高圧膨張機37及び低圧膨張機38及びそれら周辺が液体窒素温度まで冷却されていない状態でそれらのロータ軸が回転し、その回転数が危険速度領域に突入すると、固有振動数の同期成分に起因する軸振動に加えて、固有振動数とは関係の無い非同期成分に起因する不安定振動も発生し、軸振動が過大となった場合には、軸受が焼き付くおそれがある。そこで、初期冷却ステップでは、起動前に原料ガス液化装置100の装置全体が常温状態にある場合には、初期冷却器73(窒素ライン70)を利用して、装置全体が液体窒素の温度程度となるまで初期冷却される。
【0040】
初期冷却ステップでは、低圧膨張機バイパス弁27の開度は、所定の循環開度から所定の初期起動開度まで下げられる。低圧膨張機バイパス弁27の開度は、回転数昇速ステップが開始されるまで、初期起動開度で維持される。
【0041】
また、初期冷却ステップでは、高圧膨張機入口弁21の開度が所定の初期冷却開度まで上げられ、初期冷却開度で維持される。高圧膨張機入口弁21の初期冷却開度は、閉止ではなく、僅かに開かれている。よって、高圧膨張機入口弁21の初期冷却開度のときに、高圧膨張機37が回転しない程度の流量の冷媒が高圧膨張機37へ流入することが許容される。
【0042】
また、初期冷却ステップでは、膨張機37,38の起動前(即ち、回転を始める前)において、低圧膨張機入口弁22の開度が閉止状態から所定の初期冷却開度まで上げられる。低圧膨張機入口弁22が初期冷却開度のときに、低圧膨張機38が回転しない程度の流量の冷媒が低圧膨張機38へ流入することが許容される。
【0043】
制御装置6は、低圧膨張機入口弁22の開度が初期冷却開度になるのを待って、低圧膨張機38の初期冷却流量制御を開始する。低圧膨張機38の初期冷却流量制御では、制御装置6は、低圧膨張機入口弁22の開度を操作して、低圧膨張機入口側流量F2が所定の初期冷却流量設定値となるようにフィードバック制御する。初期冷却流量設定値は、低圧膨張機38のロータ軸を回転させない冷媒流量であって、ロータ軸が回転し始める冷媒流量の80〜90%以下の値で設定すればよい。
【0044】
低圧膨張機38の初期冷却流量制御は、低圧膨張機出口温度T2が所定の冷却判定温度となるまで継続される。低圧膨張機出口温度T2が所定の冷却判定温度となると、低圧膨張機38の初期起動フラグがONとなる。
【0045】
(低圧膨張機38の初期起動ステップ)
制御装置6は、低圧膨張機38の初期起動フラグがONとなれば、低圧膨張機38の初期起動ステップを開始する。低圧膨張機38の初期起動ステップでは、低圧膨張機入口弁22の開度のスケジュール制御と回転数制御とが選択的に行われる。
【0046】
制御装置6は、初期起動フラグがONをトリガとしてカウントアップを開始し、所定の弁開度スケジュールに基づいて、第1の開度指令を生成する。なお、低圧膨張機入口弁22の弁開度スケジュールは、カウントアップを開始してからの時間と低圧膨張機入口弁22の弁開度設定値との関係を定めている。制御装置6は、カウントアップを開始してからの時間に対応する弁開度設定値を導き出し、それに基づいて第1の開度指令を生成する。
【0047】
また、制御装置6は、初期起動フラグがONとなると、回転数制御による第2の開度指令を生成する。具体的には、制御装置6は、低圧膨張機回転数N2を制御量とし、所定の最大回転数設定値を目標値とし、低圧膨張機入口弁22の開度を操作量とし、制御量を目標値に一致させるフィードバック制御により、第2の開度指令を生成する。ここで、低圧膨張機38の最大回転数設定値は、低圧膨張機38の危険速度領域よりも小さい回転数である。なお、危険速度領域とは、膨張機37,38に固有の回転速度領域であって、タービンが共振を起こすロータ軸の回転速度及びその周辺を含む回転速度領域のことである。
【0048】
制御装置6は、第1の開度指令と第2の開度指令とを比較し、それらのうち小さい方の値を開度指令として低圧膨張機入口弁22へ出力する。通常、初期起動ステップの開始時に低圧膨張機38は回転していないので、弁開度スケジュール制御による第1の開度指令に基づいて低圧膨張機入口弁22が操作され、低圧膨張機入口弁22の開度の拡大に伴い低圧膨張機38が回転を始めると、回転数制御による第2の開度指令に基づいて低圧膨張機入口弁22が操作される。このように、弁開度スケジュール制御から回転数制御へ自動的に切り替わる。これにより、危険速度領域に進入することなく初期起動を行うことが可能となる。
【0049】
(低圧膨張機38の危険速度領域通過ステップ)
低圧膨張機回転数N2が最大回転数設定値で安定したところで、危険速度領域通過フラグがONとなる。なお、膨張機37,38の「回転数が安定する」ことは、回転数の変動が所定値以下である状態が所定時間に亘って継続することを意味する。
【0050】
制御装置6は、危険速度領域通過フラグがONとなると、目標値を最大回転数設定値から所定の昇速前回転数設定値に切り替えて、回転数制御を行う。ここで、昇速前回転数設定値は危険速度領域を超える回転数である。
【0051】
制御装置6は、低圧膨張機回転数N2を制御量とし、昇速前回転数設定値を目標値とし、低圧膨張機入口弁22の開度を操作量とし、制御量を目標値に一致させるようなフィードバック制御により開度指令を生成し、それを低圧膨張機入口弁22へ出力する。これにより、低圧膨張機回転数N2は急峻に昇速前回転数設定値まで昇速して、危険速度領域を速やかに通過する。
【0052】
低圧膨張機回転数N2が昇速前回転数設定値で安定し、且つ、低圧膨張機入口弁22の開度が安定したところで、高圧膨張機37の初期起動フラグがONとなる。なお、後述する高圧膨張機37の初期起動ステップ及び危険速度領域通過ステップの間、制御装置6は、低圧膨張機回転数N2が昇速前回転数設定値を維持するように、低圧膨張機入口弁22の開度を制御する。
【0053】
(高圧膨張機37の初期冷却/起動ステップ)
制御装置6は、高圧膨張機37の初期起動フラグがONとなると、高圧膨張機37の初期冷却/起動ステップを開始する。高圧膨張機37の起動制御は、低圧膨張機38の起動制御と同様に、初期冷却ステップ、初期起動ステップ、危険速度領域通過ステップ、及び、回転数昇速ステップから成る。
【0054】
前述の通り、初期冷却ステップにおいて、高圧膨張機37には、ロータ軸が回転しない程度の流量の冷媒が既に流れている。この冷媒により、低圧膨張機38の初期起動ステップ及び危険速度領域通過ステップが行われている間に、高圧膨張機37及びその周辺が冷却される。
【0055】
高圧膨張機37の初期起動ステップでは、前述の低圧膨張機38の初期起動ステップと同様に、弁開度スケジュール制御と回転数制御とが選択的に行われる。
【0056】
具体的には、制御装置6は、初期起動フラグのONをトリガとしてカウントアップを開始し、所定の弁開度スケジュールに基づいて、第1の開度指令を生成する。一方で、制御装置6は、回転数制御により第2の開度指令を生成する。即ち、高圧膨張機回転数N1を制御量とし、所定の最大回転数設定値を目標値とし、高圧膨張機入口弁21の開度を操作量とし、制御量を目標値に一致させるようなフィードバック制御により、第2の開度指令を生成する。制御装置6は、第1の開度指令と第2の開度指令とを比較し、それらのうち小さい方の値を開度指令として高圧膨張機入口弁21へ出力する。これにより、危険速度領域に進入することなく初期起動を行うことが可能となる。
【0057】
(高圧膨張機37の危険速度領域通過ステップ)
高圧膨張機回転数N1が最大回転数で安定したところで、危険速度領域通過フラグがONとなる。制御装置6は、危険速度領域通過フラグがONとなると、危険速度領域通過ステップを開始する。この高圧膨張機37の危険速度領域通過ステップでは、前述の低圧膨張機38の危険速度領域通過ステップと同様に、回転数制御における目標値を最大回転数設定値から所定の昇速前回転数設定値に切り替える。
【0058】
制御装置6は、高圧膨張機入口弁21の開度を操作して、高圧膨張機回転数N1が昇速前回転数設定値となるようにフィードバック制御する。これにより、高圧膨張機回転数N1は急峻に昇速前回転数設定値まで昇速して、危険速度領域を速やかに通過することができる。
【0059】
(回転数昇速ステップ)
高圧膨張機回転数N1が昇速前回転数設定値となると、回転数昇速フラグがONとなる。制御装置6は、回転数昇速フラグがONとなると、高圧膨張機37及び低圧膨張機38の回転数昇速ステップを開始する。
【0060】
回転数昇速ステップにおいて、制御装置6は、高圧膨張機バイパス弁24の開度を、初期起動開度から所定の定常運転開度まで所定の減少率で下げる。同様に、制御装置6は、低圧膨張機バイパス弁27の開度を、初期起動開度から所定の定常運転開度まで所定の減少率で下げる。
【0061】
また、回転数昇速ステップにおいて、制御装置6は、回転数昇速フラグがONとなるとカウントアップを開始し、所定の回転数昇速スケジュールに基づいて回転数の目標値を求め、高圧膨張機入口弁21の開度を操作して、高圧膨張機回転数N1を目標値と一致させるようにフィードバック制御する。その結果、高圧膨張機回転数N1は、昇速前回転数設定値からを高圧膨張機37の定格回転数まで上昇する。
【0062】
同様に、制御装置6は、所定の回転数昇速スケジュールに基づいて回転数の目標値を求め、低圧膨張機入口弁22の開度を操作して、低圧膨張機回転数N2を目標値と一致させるようにフィードバック制御する。その結果、低圧膨張機回転数N2は、昇速前回転数設定値からを低圧膨張機38の定格回転数まで上昇する。
【0063】
このように、高圧膨張機バイパス弁24及び低圧膨張機バイパス弁27の開度を回転数に関係なく所定の減少率で下げることで、回転数制御により自動調整される高圧膨張機入口弁21及び低圧膨張機入口弁22の開度変化との干渉を避けることができ、膨張機37,38の過回転及び急昇速を防止することができる。
【0064】
冷媒温度の急速な低下又は上昇により、熱交換器81〜86が急速に冷却又は加温されると、ヒートショックにより熱交換器内の例えばプレートフィンが損傷するおそれがある。このような熱交換器81〜86にかかる負荷を軽減するために、膨張機37,38の起動及び停止の際には、熱交換器81〜86における温度変化を所定の許容範囲に収めなければならない。そこで、高圧膨張機37の回転数昇速スケジュールは、熱交換器81〜86の温度変化を所定の許容範囲内に抑えながら、高圧膨張機37の回転数を昇速前回転数設定値からを定格回転数まで上昇させるような、時間と高圧膨張機37の回転数(目標値)との関係を定めている。同様に、低圧膨張機38の回転数昇速スケジュールは、熱交換器81〜86の温度変化を所定の許容範囲内に抑えながら、低圧膨張機38の回転数を昇速前回転数設定値からを定格回転数まで上昇させるような、時間と低圧膨張機38の回転数(目標値)との関係を定めている。
【0065】
そして、制御装置6は、高圧膨張機回転数N1が定格回転数で安定し、且つ、高圧膨張機バイパス弁24の開度が定常運転開度となったところで、高圧膨張機37の回転数昇速ステップを終了する。同様に、制御装置6は、低圧膨張機回転数N2が定格回転数で安定し、且つ、低圧膨張機バイパス弁27の開度が定常運転開度となったところで、低圧膨張機38の回転数昇速ステップを終了する。高圧膨張機37及び低圧膨張機38の回転数昇速ステップの終了タイミングは、各々の回転数昇速スケジュールによって概ね同時となるように予定されている。制御装置6は、高圧膨張機37及び低圧膨張機38の回転数昇速ステップが終了すると、高圧膨張機37及び低圧膨張機38の起動制御を終了する。
【0066】
〔停止制御〕
次に、制御装置6による停止制御について説明する。
図5は、停止制御の処理の流れを説明する図、
図6は、停止制御のタイミングチャートである。
図5では、低圧膨張機38の停止制御の処理の流れを説明しているが、低圧膨張機38の停止制御と高圧膨張機37の停止制御は、使用されるスケジュールや設定値等が異なるものの処理の内容は実質的に同じであり、高圧膨張機37の停止制御の処理も
図5に当てはめて説明する。
図6では、上段のチャートが、高圧膨張機回転数N1、高圧膨張機入口弁21の開度、及び高圧膨張機バイパス弁24の開度の経時変化を表し、下段のチャートが、低圧膨張機回転数N2、低圧膨張機入口弁22の開度、及び低圧膨張機バイパス弁27の開度の経時変化を表している。上段のチャートと下段のチャートの時間軸は対応している。
【0067】
図5及び
図6に示すように、制御装置6は、停止制御を開始すると、高圧膨張機バイパス弁24の開度を、循環開度から停止開度へ所定の増加率で上げるとともに、低圧膨張機バイパス弁27の開度を、定常運転開度から停止開度へ所定の増加率で上げる。
【0068】
制御装置6は、停止制御を開始すると回転数減速フラグがONとなって、カウントアップを開始し、所定の高圧膨張機37の回転数減速スケジュールに基づいて回転数の目標値を求める。そして、制御装置6は、高圧膨張機入口弁21の開度を操作して、高圧膨張機回転数N1を目標値と一致させるようにフィードバック制御する。その結果、高圧膨張機回転数N1は、高圧膨張機37の定格回転数から所定の停止前回転数まで減速する。なお、高圧膨張機37の回転数減速スケジュールは、熱交換器81〜86の温度変化を所定の許容範囲内に抑えながら、高圧膨張機37の回転数を定格回転数から停止前回転数まで減速させるような、時間と高圧膨張機37の回転数(目標値)との関係を定めている。
【0069】
同様に、制御装置6は、所定の低圧膨張機38の回転数減速スケジュールに基づいて回転数の目標値を求める。そして、制御装置6は、低圧膨張機入口弁22の開度を操作して、低圧膨張機回転数N2を目標値と一致させるようにフィードバック制御する。その結果、低圧膨張機回転数N2は、低圧膨張機38の定格回転数から所定の停止前回転数まで減速する。なお、低圧膨張機38の回転数減速スケジュールは、熱交換器81〜86の温度変化を所定の許容範囲内に抑えながら、低圧膨張機38の回転数を定格回転数から停止前回転数まで減速させるような、時間と低圧膨張機38の回転数(目標値)の関係を定めている。
【0070】
このように、高圧膨張機バイパス弁24及び低圧膨張機バイパス弁27の開度を回転数に関係なく所定の増加率で下げることで、回転数制御により自動調整される高圧膨張機入口弁21及び低圧膨張機入口弁22の開度変化との干渉を避けることができ、膨張機37,38の過回転及び急減速を防止することができる。
【0071】
高圧膨張機回転数N1が停止前回転数で安定し、且つ、高圧膨張機バイパス弁24が停止開度となれば高圧膨張機37の減速は停止する。低圧膨張機回転数N2が停止前回転数で安定し、且つ、低圧膨張機バイパス弁27が停止開度となれば低圧膨張機38の減速は停止する。そして、膨張機37,38が共に停止状態となった時点で回転数減速フラグがOFFとなる。
【0072】
制御装置6は、回転数減速フラグがOFFとなると、高圧膨張機入口弁21及び低圧膨張機入口弁22に閉止の開度指令を出力する。これにより、高圧膨張機入口弁21が閉止され、高圧膨張機回転数N1は急峻に0まで減速し、危険速度領域を速やかに通過することができる。同様に、低圧膨張機入口弁22が閉止され、低圧膨張機回転数N2は急峻に0まで減速し、危険速度領域を速やかに通過することができる。このように、膨張機37,38が危険速度領域を速やかに通過するので、軸振動過大を回避しつつ、膨張機37,38を停止させることができる。なお、上記停止制御の完了後、高圧膨張機バイパス弁24及び低圧膨張機バイパス弁27の開度を、停止開度から循環開度へ所定の増加率で上げる。
【0073】
以上に説明した通り、本実施形態に係る原料ガス液化装置100は、沸点が窒素ガスよりも低温である原料ガスを供給するフィードライン1と、原料ガスを冷却するための冷媒が循環する冷媒循環ライン3であって、冷媒を膨張させて冷熱を生成するタービン式の膨張機37,38、及び、膨張機37,38の入口側に設けられた膨張機入口弁21,22を有する冷媒循環ライン3と、原料ガスと冷媒との熱交換が行われる熱交換器81〜86と、液体窒素との熱交換により原料ガス及び冷媒の初期冷却を行う冷却器73と、膨張機37,38の回転数N1,N2を検出する膨張機回転数センサ56,57と、フィードライン1及び冷媒循環ライン3に関する動作制御を行う制御装置6とを備えている。
【0074】
そして、制御装置6が、膨張機37,38の起動時及び停止時において、膨張機37,38の回転数N1,N2を所定の目標値と一致させるフィードバック制御により膨張機入口弁21,22の開度指令を生成し、当該開度指令を膨張機入口弁21,22に出力することを特徴としている。
【0075】
また、本実施形態に係る原料ガス液化装置100の制御方法は、膨張機37,38の起動時及び停止時において、膨張機入口弁21,22の開度を操作して、膨張機37,38の回転数N1,N2を所定の目標値と一致させるようにフィードバック制御することを特徴としている。
【0076】
上記原料ガス液化装置100及びその制御方法では、膨張機37,38の起動時及び停止時に、膨張機入口弁21,22の弁開度ではなく、膨張機37,38の回転数が直接的に制御される。これにより、膨張機37,38の起動時及び停止時においても、膨張機37,38で生成される冷熱を制御することが可能となる。また、膨張機37,38の運転特性が変化しても、膨張機37,38の起動時及び停止時に、膨張機37,38の回転数が予定なく危険速度領域に突入することを回避できる。また、膨張機37,38の回転数を制御することにより、危険速度領域を速やかに通過させて、膨張機37,38の軸振動を抑えることができる。その結果、膨張機37,38の軸受の焼き付き等、膨張機37,38の軸振動の過大に起因する損傷を回避することができる。
【0077】
また、本実施形態に係る原料ガス液化装置100及びその制御方法では、制御装置6が、膨張機37の起動の前に、膨張機37を回転させない所定の初期冷却流量の初期冷却された冷媒が膨張機37に導入されるように、膨張機入口弁21の開度指令を生成し、当該開度指令を膨張機入口弁21に出力する。
【0078】
このように、膨張機37,38の起動の前に、膨張機38を回転させない初期冷却流量の冷媒が膨張機38に導入されるように、膨張機入口弁22の開度を操作して冷却流量が制御されることによって、膨張機38を回転させないで膨張機38及びその周辺を冷却することができる。特許文献1のように、膨張機38の軸受の軸シール漏れを利用して膨張機38及びその周辺の冷却を行う場合と比較して、冷媒の流量の制限が緩やかとなり、冷却を開始してから膨張機37,38の起動が完了するまでに要する時間を短縮することができる。
【0079】
なお、上記実施形態においては、低圧膨張機38に対し初期冷却流量制御を行っているが、高圧膨張機37に対し同様の初期冷却流量制御が行われてもよい。
【0080】
また、本実施形態に係る原料ガス液化装置100及びその制御方法において、制御装置6は、膨張機37,38の起動時において、膨張機37,38の回転数を当該膨張機37の危険速度領域よりも小さい所定の最大回転数設定値まで上昇させる所定の弁開度スケジュールに基づいて、膨張機入口弁21,22の第1の開度指令を求め、目標値を最大回転数設定値とし、膨張機37の回転数を最大回転数設定値に一致させるフィードバック制御により膨張機入口弁21,22の第2の開度指令を求め、第1の開度指令及び第2の開度指令のうち値の小さい方の開度指令を膨張機入口弁21,22に出力する。
【0081】
上記のような、弁開度スケジュール制御によれば、膨張機37,38の機器の経年劣化や冷媒に含まれる不純物のタービン軸受への固着等によって、膨張機37,38の運転特性(回転始動・停止特性)が変化した場合であっても、膨張機37,38の初期起動を開始することができる。また、最大回転数を目標値とする回転数制御によれば、膨張機37,38が回転を開始した直後に過回転傾向となった場合でも、膨張機37,38の回転数が一気に危険速度領域へ突入することを回避できる。
【0082】
また、本実施形態に係る原料ガス液化装置100及びその制御方法では、膨張機37,38の起動時であって、膨張機37,38の危険速度領域を超える所定の昇速前回転数から膨張機37,38の定格回転数まで膨張機の回転数を上昇させるときに、制御装置6が、膨張機37,38の回転数の変化に伴う熱交換器81〜86の温度変化を所定の許容範囲内に抑えながら膨張機37,38の回転数を上昇させる所定の回転数昇速スケジュールに基づいて、回転数制御の目標値を決定する。
【0083】
同様に、本実施形態に係る原料ガス液化装置100及びその制御方法では、膨張機37,38の停止時であって、膨張機37,38の定格回転数から膨張機37,38の危険速度領域を超える所定の停止前回転数まで膨張機37,38の回転数を降下させるときに、制御装置6が、膨張機37,38の回転数の変化に伴う熱交換器81〜86の温度変化を所定の許容範囲内に抑えながら膨張機37,38の回転数を降下させる所定の回転数減速スケジュールに基づいて、回転数制御の目標値を決定する。
【0084】
このように、高圧膨張機37及び低圧膨張機38の回転数が、回転数昇速スケジュールに従って徐々に上昇(昇速)し、又は、回転数減速スケジュールに従って徐々に降下(減速)することで、高圧膨張機37及び低圧膨張機38の生成冷熱量不足による熱交換器81〜86の温度上昇を許容範囲内に抑えることができる。これにより、熱交換器81〜86において、ヒートショックに起因するプレートフィンの損傷を防止することができる。
【0085】
また、本実施形態に係る原料ガス液化装置100及びその制御方法では、膨張機37,38には、高圧膨張機37と、当該高圧膨張機37の下流側に設けられた低圧膨張機38とが含まれ、膨張機入口弁21,22には、高圧膨張機37の入口側に設けられた高圧膨張機入口弁21と、低圧膨張機38の入口側に設けられた低圧膨張機入口弁22とが含まれている。そして、制御装置6は、低圧膨張機38の回転数が当該低圧膨張機38の危険速度領域を超える所定の昇速前回転数に到達してから、高圧膨張機37の回転数が当該高圧膨張機37の危険速度領域を超える所定の昇速前回転数に到達し、高圧膨張機37及び低圧膨張機38が共に各自の昇速前回転数に到達してから、高圧膨張機37及び低圧膨張機38の回転数を各自の昇速前回転数から各自の定格回転数まで上昇させるように、低圧膨張機38及び高圧膨張機37の回転数を制御する。
【0086】
このように、高圧膨張機37及び低圧膨張機38が共に、危険速度領域を上回る各自の昇速前回転数に到達してから、高圧膨張機37及び低圧膨張機38の回転数を各自の定格回転数まで回転させることによって、高圧膨張機37及び低圧膨張機38の回転数が予期せず危険速度領域に突入することを確実に回避することができる。また、高圧膨張機37と低圧膨張機38とで、危険速度領域を通過させるタイミング(即ち、回転数が急峻に変化するタイミング)がシフトするので、軸振動を抑え、より安定した起動制御を行うことができる。
【0087】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明の精神を逸脱しない範囲で、上記実施形態の具体的な構造及び/又は機能の詳細を変更したものも本発明に含まれ得る。上記の原料ガス液化装置100の構成は、例えば、以下のように変更することができる。
【0088】
上記実施形態に係る原料ガス液化装置100では、2台の膨張機37,38を備えている。しかしながら、これらの台数は、膨張機37,38の性能に依存するものであり、上記実施形態に限定されるものではない。
【0089】
例えば、膨張機は1台であってもよい。この場合、高圧膨張機37の起動制御及び停止制御が省略されることを除いて、上記実施形態と実質的に同じように原料ガス液化装置100の動作が制御される。また、例えば、膨張機は3台以上であってもよい。この場合、増えた分の膨張機に関して高圧膨張機37の起動制御及び停止制御と同様の制御が追加されることを除いて、上記実施形態と実質的に同じように原料ガス液化装置100の動作が制御される。
【0090】
また、上記実施形態に係る原料ガス液化装置100では、低圧膨張機38の初期起動ステップと危険速度領域通過ステップとを行ってから、高圧膨張機37の初期起動ステップと危険速度領域通過ステップを行っているが、先後の順を変えて、後者が先で前者が後に行われてもよい。この場合、制御装置6は、高圧膨張機37の初期起動ステップの前に、高圧膨張機37を回転させない所定の初期冷却流量の初期冷却された冷媒が高圧膨張機37に導入されるように、高圧膨張機入口弁21の開度指令を生成し、当該開度指令を高圧膨張機入口弁21に出力する。
【0091】
また、上記実施形態に係る原料ガス液化装置100では、2台の圧縮機32,33を備えており、6段の熱交換器81〜86を備えている。しかしながら、これらの台数は、圧縮機32,33及び熱交換器81〜86の性能に依存するものであり、上記実施形態に限定されるものではない。