(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、溶融樹脂材を所定の金型の空洞部分(キャビティ)に射出して樹脂成形品を生成する射出成形機においては、所定の樹脂成形品を成形した後、生成された成形品を金型から取り出すために可動部を可動させて型開きが行なわれる。この型開きを行う直前には、溶融樹脂材の射出口がバルブピンによって閉状態とされており、射出口から突設されたバルブピンの先端が固化する前の樹脂成形品の一部に密着した状態となっている。
【0003】
この状態から、可動部を可動させて型開きを行うことになるが、その際、可動側金型(コア側)が固定側金型(キャビティ側)から離れる際に、固化前の樹脂成形品の一部位とバルブピンの先端との間に、固化前の樹脂材が糸を引くように延びる現象が起きることがある(以後、この現象を「糸引き現象」というものとする)。
【0004】
このような糸引き現象が発生した状態で、次の成形品を形成するためにバルブを開閉して溶融樹脂材の射出(ショット)を行うと、前回のショットで生じた糸引き現象による糸引き樹脂が次の製品に付着してしまう等の可能性がある。この場合、生産不具合が生じてしまう。また、当該糸引き樹脂が金型の当接面等に付着した場合、金型に不具合が生じる可能性もある。
【0005】
そこで、従来の射出成形機においては、型開きの際の糸引き現象を抑制するための工夫が種々提案されており、また実施されている。例えば、糸引き現象が発生しない程度の状態となるまで、充分な冷却時間を確保して、型開きを行うタイミングを調整する等の対策が考えられる。
【0006】
しかしながら、この場合には、充分な冷却時間を確保するために、サイクルタイムが伸びてしまうので、良好な生産性を得ることができないという問題点がある。また、長い冷却時間を確保したことによってバルブピンの先端の温度が低下し、これに起因して、ノズル先端の溶融樹脂が冷えてしまい、この冷えた樹脂が流路を詰まらせたり、成形品の外観に流れる等といった、所謂コールドスラッグが発生する可能性もある。
【0007】
さらに、例えば特開2009−196242号公報,特開2004−136575号公報等によっても種々の提案がなされている。
【0008】
上記特開2009−196242号公報等によって開示されている射出成形機は、型閉じ時に可動部側のバルブピンの先端が、ヒーターを備えたホットブッシュに接続されるスプルーブッシュに進入し、射出時にはピン先端面がスプルー入口から離間して当該スプルー入口を開き、射出終了時にピン先端面がスプルー入口に当接して当該スプルー入口を閉じるように構成している。これにより、型閉じ時にバルブピンの先端部がスプルー入口に当接することから、バルブピンは適度に温度上昇し、よって型開き時の糸引き現象を抑止することができるというものである。
【0009】
上記特開2004−136575号公報等によって開示されている射出成形機は、成形品のバルブゲートと対応する位置(糸引き発生位置)の周囲の所定範囲を変形可能な温度(糸引き現象の発生しない温度)に調整する温度調整手段を備えて構成している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図示の実施の形態によって本発明を説明する。以下の説明に用いる各図面は模式的に示すものであり、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさで示すために、各部材の寸法関係や縮尺等を各構成要素毎に異ならせて示している場合がある。したがって、本発明は、各図面に記載された各構成要素の数量や各構成要素の形状や各構成要素の大きさの比率や各構成要素の相対的な位置関係等に関して、図示の形態のみに限定されるものではない。
【0018】
[一実施形態]
図1〜
図7は、本発明の一実施形態を示す図である。このうち
図1は本発明の一実施形態の射出成形機の主要構成部を拡大して示す要部拡大断面図である。
図2〜
図7は、
図1の[2]で示す部位を拡大して示す要部拡大断面図である。なお、
図2〜
図7の各図は、本発明の一実施形態の射出成形機における作用の各工程を表している。即ち、
図2は射出成形機の射出保圧工程前の型締工程を示している(型閉じ状態)。
図3は射出成形機の射出保圧工程を示している(型閉じ状態)。
図4は射出成形機の射出保圧工程後の冷却工程を示している(型閉じ状態)。
図5は射出成形機の冷却工程後の型開工程を示している(型開き状態)。
図6は射出成形機の成形品の押出工程を示している(型開き状態)。
図7は射出成形機の押出工程後にスプルーロックピンを戻したようすを示している(型開き状態)。
【0019】
まず、本発明の一実施形態の射出成形機の概略構成について、
図1を用いて以下に簡単に説明する。なお、本実施形態の射出成形機の基本的な構成は、従来のものと略同様である。したがって、以下の説明においては、従来の射出成形機と同様の構成については簡単な説明にとどめ、本実施形態の射出成形機に特有の特徴的な構成について詳述する。
【0020】
本実施形態の射出成形機1は、加熱することで溶融させた樹脂材を所定の金型の空洞部分(キャビティ)に射出し注入し、これを冷却して固化させることによって樹脂成形品を生成する装置である。
【0021】
この射出成形機1は、可動部ユニット10と、固定部ユニット20とによって構成される。このうち、可動部ユニット10は、可動側金型11と、エジェクタピン12と、スプルーロックピン13と、可動板であるエジェクトプレート14と、ガイドピン15と、可動側固定基台16と、可動側油圧シリンダ17と、押圧機構18等によって主に構成されている。
【0022】
また、固定部ユニット20は、固定側金型(キャビティプレート)21と、固定側固定基台22と、ホットランナーブロック23と、固定側油圧シリンダ24と、加熱ヒーター25と、バルブピン26と、可塑化ユニット27と、ホッパー28と、モータ29と、シリンダ30等によって主に構成されている。
【0023】
可動部ユニット10において、可動側金型11は、可動部ユニット10側に設けられ、射出成形用金型の一部(突起部分)を形成するための凸型である。この凸型部の形状と固定部ユニット20の固定側金型21の凹型部の形状とによって、製品の形状やランナー部の形状が規定される。また、可動側金型11には、後述するように、複数のエジェクタピン12及びスプルーロックピン13を所定の部位で貫通させるための貫通孔11aを複数有して形成されている。
【0024】
エジェクタピン12は、成形された成形品(製品)を金型から分離させて取り出す押出工程時に、金型に張り付いた状態の当該成形品を押し出すために設けられる複数の円柱棒状部材である。このエジェクタピン12は、後述するように、一端がエジェクトプレート14に固定支持されている。また、エジェクタピン12の他端は、可動側金型11を貫通孔11aにおいて貫通して、当該可動側金型11から固定側金型21側に向けて先端が突出するように配設されている。
【0025】
スプルーロックピン13は、型開工程時に成形品を引きつけておくために設けられる円柱棒状部材である。このスプルーロックピン13の先端部分は、最先端面に平面を有し全体として略円錐凸形状に形成されている。この場合において、最先端面の平面の径(
図7の符号D1)は、後述するように、所定のサイズとなるように設定されている(詳細後述)。
【0026】
上記スプルーロックピン13は、熱伝導性が良好な部材、例えば金属部材等によって形成されている。そして、スプルーロックピン13は、その先端が、固定部ユニット20側に設けられるバルブピン26の先端に、可動側金型11と固定側金型21との合わせ面において対向するように、かつ各ピンの中心軸が略一致するように複数配置されている。
【0027】
なお、スプルーロックピン13は、上記エジェクタピン12と同様の機能も有する。また、このスプルーロックピン13も、後述するように、一端がエジェクトプレート14に固定支持されている。そして、スプルーロックピン13の他端は、可動側金型11を貫通孔11aにおいて貫通して、当該可動側金型11から固定側金型21側に向けて先端部の一部が突出するように配設されている。
【0028】
可動板であるエジェクトプレート14は、成形品を押し出して製品を金型から分離させるための押出工程時に、可動側油圧シリンダ17の駆動力を複数の上記エジェクタピン12及び上記スプルーロックピン13へと同時に伝達し、これら上記エジェクタピン12及び上記スプルーロックピン13を所定の方向に同時に移動させるための板状部材である。
【0029】
そのために、エジェクトプレート14は、可動側油圧シリンダ17との間で押圧機構18を介して連設されていると共に、上記エジェクタピン12及び上記スプルーロックピン13の各一端を固定支持して構成されている。
【0030】
なお、ここで、上記エジェクトプレート14の移動方向は、
図1に示す矢印符号X方向である。エジェクトプレート14の平面は、その移動方向(矢印符号X方向)に対して略直交する面に平行に配設されている。そして、このエジェクトプレート14の平面上には、上記エジェクタピン12及び上記スプルーロックピン13の複数の各ピンが所定の間隔を置いて配設されている。この場合において、上記エジェクタピン12及び上記スプルーロックピン13の各ピンの中心軸は、上記エジェクトプレート14の移動方向に沿うように、つまりエジェクトプレート14の平面に略直交するようにして配設されている。
【0031】
ガイドピン15は、上記エジェクトプレート14の移動方向が所定の方向(即ち矢印符号Xに沿う方向)となるように規制し、当該エジェクトプレート14の移動をガイドする複数の円柱棒状部材である。そのために、エジェクトプレート14には、複数のガイドピン15を貫通するガイド孔が複数形成されている。
【0032】
さらに、これら複数のガイドピン15は、可動側固定基台16に対して上記可動側金型11が所定の間隔を置いて所定の位置に配置されるように支持する支持部材としての機能も有する。そのために、ガイドピン15は、一端を可動側固定基台16に対し、他端を上記可動側金型11に対して、それぞれ固定支持されている。この場合において、各ガイドピン15の中心軸は、上記矢印符号Xと平行となるように配設されている。
【0033】
可動側固定基台16は、可動部ユニット10の基本構成部材である。可動側固定基台16は、ガイドピン15を介して上記可動側金型11を所定の間隔を置いて支持するために設けられている。また、可動側固定基台16は、可動側油圧シリンダ17の駆動力をエジェクトプレート14へと伝達するための押圧機構18の一部(支持軸18a)を支持している。
【0034】
可動側油圧シリンダ17は、押圧機構18を介してエジェクトプレート14を矢印符号X方向に移動させるための駆動ユニットである。この可動側油圧シリンダ17は、不図示の制御回路等を備えた制御装置(不図示)に基づいて所定のタイミングで駆動制御される。
【0035】
上述のように構成された可動部ユニット10は、金型を開閉するために、図示しない駆動ユニットによって、固定部ユニット20に対して
図1の矢印符号Xに沿う方向と平行方向に移動自在に構成されている。
【0036】
一方、固定部ユニット20において、固定側金型21は、固定部ユニット20側に設けられ、射出成形用金型の一部(凹部分)を形成するための凹型である。この凹型部の形状と上記可動部ユニット10の可動側金型11の凸型部の形状とによって、製品の形状やランナー部の形状が規定される。また、固定側金型21には、後述するように、上記可動側金型11と上記固定側金型21とによって形成される空洞(キャビティ)内のランナー部33に向けて溶融樹脂材31を射出し注入するための注入口21a(
図2以降参照)と、この注入口21aに連設されバルブピン26が挿通配置される射出部であるノズル23bを配設するための貫通部21bを複数有して形成されている。
【0037】
固定側固定基台22は、固定部ユニット20の基本構成部材である。固定側固定基台22は、固定側金型21を固定保持すると共に、ホットランナーブロック23の一部(ノズル23b近傍)を固定支持している。
【0038】
ホットランナーブロック23は、可塑化ユニット27から流れてくる溶融樹脂材31を上記固定側金型21の注入口21aへと流し込む際の流路であるマニホールド23aと、上記注入口21aに略一致するように設けられる射出口23c(
図2以降参照)を備えたノズル23bと、加熱ヒーター25と、バルブピン26と、固定側油圧シリンダ24(複数)等を有する構成ブロックである。
【0039】
固定側油圧シリンダ24は、バルブピン26を
図1の矢印符号Xと平行な方向に移動させることで、射出口23c及び注入口21aを開閉するための駆動ユニットである。固定側油圧シリンダ24は、不図示の制御回路等を備えた制御装置に基づいて所定のタイミングで駆動制御される。
【0040】
加熱ヒーター25は、溶融樹脂材31の流路(マニホールド23a)やノズル23bの周囲に設けられる加熱装置である。加熱ヒーター25は、流路(マニホールド23a)やノズル23bの内部の溶融樹脂材31の所定の温度を維持するために、例えば不図示の制御回路等を備えた制御装置に基づいて所定のタイミングで駆動制御される。
【0041】
可塑化ユニット27は、樹脂材に熱と圧力を加えて溶融して略液状化する可塑化作用を行うための構成ユニットである。可塑化ユニット27には、樹脂材を可塑化するシリンダ30と、樹脂材を投入するホッパー28と、シリンダ30を駆動するモータ29等が配設されている。
【0042】
バルブピン26は、射出口23c及び注入口21aを開閉するための複数の円柱棒状部材である。このバルブピン26は、熱伝導性が良好な部材、例えば金属部材等によって形成されている。当該バルブピン26は、上述したように、固定側油圧シリンダ24の駆動力によって
図1の矢印符号Xと平行な方向に移動する。また、バルブピン26は、上述したように、その先端が、可動部ユニット10側に設けられる上記スプルーロックピン13の先端に可動側金型11と固定側金型21との合わせ面において対向するように、かつ各ピンの中心軸が略一致するように複数配置されている。そして、バルブピン26が射出口23c及び注入口21aを閉状態とする閉位置に配置された時(型締工程時及び冷却工程時)には、当該バルブピン26の先端部の一部は、空洞(キャビティ)内に突出するように配置され、かつ、この状態において、当該バルブピン26の先端面は、上記スプルーロックピン13の先端面に当接するように構成されている。
【0043】
なお、スプルーロックピン13とバルブピン26の各先端面のサイズ的な設定は、次のようになっている。
【0044】
即ち、スプルーロックピン13の最先端部分の径(
図6の符号D1)は、貫通孔11aの内径(
図6の符号D2)よりも小径となるように形成されている(D1<D2)。また、スプルーロックピン13の最先端部分の径(
図6の符号D1)は、注入口21aの内径(
図6の符号D3)、即ちバルブピン26の外径よりも小径となるように形成されている(D1<D3)。
【0045】
また、本実施形態の射出成形機1においては、上記スプルーロックピン13と上記バルブピン26(即ち上記貫通孔11aと上記射出口23c及び上記注入口21a)は、上記可動側金型11と上記固定側金型21とによって形成される空洞(キャビティ)のうちランナー部33に配置している。
【0046】
上述したように、本実施形態の射出成形機1においては、上記スプルーロックピン13と上記バルブピン26とを、可動側金型11と固定側金型21との合わせ面において対向配置させ、型締工程時及び冷却工程時には、両者(スプルーロックピン13,バルブピン26)の各先端面が当接するように構成している。したがって、この構成とすることによって、生成される成形品には不要な貫通孔34(
図7参照)が形成されることになる。
【0047】
そこで、本実施形態においては、上記スプルーロックピン13と上記バルブピン26とをランナー部33に配置することによって、上記貫通孔34が樹脂成形品32(
図1参照)に影響しないランナー部33に形成されるようにしている。
【0048】
また、上記スプルーロックピン13と上記バルブピン26とをランナー部33に配置することは、空洞(キャビティ)内に充填された溶融樹脂材からの成形品への熱の影響を避けることができ、放熱性がよくなるという効果も得られる。その他の構成は、従来の射出成形機と略同様に構成されている。
【0049】
このように構成された本実施形態の射出成形機1の作用を、
図2〜
図7を用いて、以下に簡単に説明する。
【0050】
まず、本実施形態の射出成形機1を用いて射出成形工程を開始する際の初期状態を
図2に示す。この
図2に示す初期状態は、キャビティ側の固定側金型21(キャビティプレート)に対しコア側の可動側金型11を当接させて型締めした型締工程のようすを示している。
【0051】
この状態(型締工程)における射出成形機1は、
図2に示すように、バルブピン26が射出口23c及び注入口21aを閉状態とする閉位置に配置されている。つまり、このときバルブピン26の先端の一部は、射出口23c及び注入口21aを閉状態としつつ、当該射出口23c及び注入口21aから、上記可動側金型11と上記固定側金型21とによって形成される空洞(キャビティ)内に向けて突設されている。
【0052】
一方、この状態において、スプルーロックピン13の先端の一部も、貫通孔11aから同空洞(キャビティ)内に突出している。そして、上記バルブピン26の先端面と上記スプルーロックピン13の先端面は当接した状態にある。
【0053】
また、この状態において、上記可動側金型11と上記固定側金型21とによって形成される空洞(キャビティ)内は、何も充填されておらず、単なる空隙状態にある。一方、ホットランナーブロック23のノズル23b内には、溶融樹脂材31が充填されている。このとき、ノズル23bの射出口23cは、バルブピン26によって閉状態とされている。これにより、ノズル23b内の溶融樹脂材31は、射出口23cから吐出されないようになっている。
【0054】
この
図2の状態(型締工程)において、不図示の制御装置によって固定側油圧シリンダ24が駆動されてバルブピン26が
図2,
図3に示す矢印符号X1方向に移動する。すると、
図3に示す状態、即ち射出工程及び保圧工程(以下、単に射出保圧工程と略記する)に移行する。
【0055】
この状態(射出保圧工程)においては、
図3に示すように、バルブピン26による射出口23c及び注入口21aの閉状態が解除され、当該射出口23c及び注入口21aは開状態になる。これにより、ノズル23bの射出口23cより溶融樹脂材31が吐出され、当該溶融樹脂材31は、空洞(キャビティ)内のランナー部33に流れ込み(
図3の矢印符号[A]参照)、さらに、吐出圧力によって樹脂成形品32(
図1参照)が形成される部分までを充填する。
【0056】
こうして
図3の射出補圧行程において、空洞(キャビティ)内への溶融樹脂材の充填が完了すると、続いて、上記制御装置(不図示)は、上記固定側油圧シリンダ24を駆動してバルブピン26を
図3,
図4に示す矢印符号X2方向に移動させる。すると、
図4に示す状態、即ち冷却工程に移行する。
【0057】
この状態(冷却工程)においては、
図4に示すように、バルブピン26によって射出口23c及び注入口21aが閉状態とされる。そして、この状態を所定の時間だけ維持することによって、空洞(キャビティ)内に充填された溶融樹脂材を冷却し、当該樹脂材を固化させる。
【0058】
上述したように、この状態(冷却工程)においては、
図4に示すように、上記スプルーロックピン13と上記バルブピン26の各先端は、
図2に示す型締工程時と同様に、ランナー部33の空洞(キャビティ)内に突出しており、かつ、両者(スプルーロックピン13,バルブピン26)の各先端面が当接面40において当接している。
【0059】
ここで、バルブピン26は、ホットランナーブロック23内の流路(マニホールド23a)及びノズル23b内にあり、当該流路(マニホールド23a)及びノズル23bは、上述したように、加熱ヒーター25によって、溶融樹脂材31の所定の温度を維持する適度な温度となるように加熱されている。これにより、バルブピン26も常に加熱されている状態にある。
【0060】
ここで、本実施形態においては、冷却工程時には、
図4に示すように、バルブピン26の先端の一部が空洞(キャビティ)内に突出していると共に、当該バルブピン26の先端面がスプルーロックピン13の先端面に当接面40(
図4参照)当接するように構成されている。
【0061】
この構成とすることによって、本実施形態の射出成形機1における冷却工程時には、ランナー部33に充填されている溶融樹脂材のうち、上記スプルーロックピン13と上記バルブピン26の各先端が配設されている領域の溶融樹脂材が排除されて、上記スプルーロックピン13と上記バルブピン26の各先端面が直接当接することになる。
【0062】
上述したように、上記スプルーロックピン13は、熱伝導性が良好な金属部材等によって形成されている。したがって、上述したように、上記スプルーロックピン13と上記バルブピン26の各先端面が直接当接していることから、バルブピン26側が保持している熱は、熱源のないスプルーロックピン13側へと容易に伝導することになる。これにより、バルブピン26の先端部分の冷却は促進される。
【0063】
この状態(冷却工程)において、所定の時間が経過した後、上記制御装置(不図示)は、図示しない駆動ユニットによって可動部ユニット10を駆動して、当該可動部ユニット10を固定部ユニット20に対して
図5の矢印符号X3方向に移動させる。すると、
図5に示す状態、即ち型開工程に移行する。
【0064】
この状態(型開工程)においては、
図5に示すように、固定部ユニット20に対して可動部ユニット10が矢印符号X3方向に移動することによって、可動側金型11と固定側金型21とが分離して型開きされると共に、スプルーロックピン13とバルブピン26とが離間する。
【0065】
続いて、この状態(型開工程)にあるとき、上記制御装置(不図示)は、可動側油圧シリンダ17を駆動して押圧機構18を介してエジェクトプレート14を
図6の矢印符号X4方向に移動させる。すると、
図6に示す状態、即ち押出工程に移行する。
【0066】
この状態(押出工程)においては、
図6に示すように、エジェクトプレート14が矢印符号X4方向に移動することにより、スプルーロックピン13が同方向に移動する。なお、
図6には示されていないが、このとき、複数のエジェクタピン12も同時に同方向に移動する。これにより、固化した状態の成形品(
図6においてはランナー部33として図示している)は、可動側金型11から押し出されて、当該可動側金型11より分離する。その後、上記制御装置(不図示)は、可動側油圧シリンダ17を駆動して押圧機構18を介してエジェクトプレート14を
図7の矢印符号X5方向に移動させる。これにより、スプルーロックピン13が同方向に移動して、
図7に示すように、元の位置に戻る。これに伴って成形品はスプルーロックピン13から離脱する。こうして成形品は、当該射出成形機1より取り出される。
【0067】
このようにして、成形品が取り出されると、その後、上記制御装置(不図示)は、図示しない駆動ユニットによって可動部ユニット10を駆動して、当該可動部ユニット10を固定部ユニット20側に向けて移動させる。これにより、当該射出成形機1は、
図2に示す状態、即ち型締工程に戻る。
【0068】
以上説明したように上記一実施形態によれば、バルブピン26によって射出口23c及び注入口21aが閉状態とされたとき(型締め工程時及び冷却工程時)に、当該バルブピン26の先端の一部は、上記可動側金型11と上記固定側金型21とによって形成される空洞(キャビティ)内に突出するように構成している。これと共に、バルブピン26とスプルーロックピン13とを可動側金型11と固定側金型21との合わせ面において対向配置させて、型締工程時及び冷却工程時に、両者(スプルーロックピン13,バルブピン26)の各先端面が当接面40において当接するように構成している。このような構成とすることによって、バルブピン26の先端部の冷却を促進させることができ、よって、糸引き現象を抑止することができる。
【0069】
また、型締め工程時及び冷却工程時には、スプルーロックピン13の先端も、上記可動側金型11と上記固定側金型21とによって形成される空洞(キャビティ)内に突出するように構成している。この構成とすることで、バルブピン26の作動距離を少なくすることができるので、よって、装置の製造コストの削減に寄与することができる。
【0070】
さらに、冷却工程時に、バルブピン26及びスプルーロックピン13の先端を、空洞(キャビティ)内に突出するように構成したことにより、その占有領域の分だけ空洞(キャビティ)内の樹脂量を削減することができる。したがって、これにより、樹脂の冷却固化に要する時間を短縮しサイクルタイムの短縮化を実現できるので、コールドスラッグの発生を抑止することができると共に、生産性の向上に寄与することができる。
【0071】
これに加えて、さらに、スプルーロックピン13の先端形状を工夫して、最先端面に平面を有し全体として略円錐凸形状に形成すると共に、その先端面のサイズを、D1<D2かつD1<D3(
図6参照)としたことによって、空洞(キャビティ)内での溶融樹脂材の流路を確保することができる。したがって、これにより、成形品の品質に悪影響を及ぼすことなく効率的に生産を行うことができる。
【0072】
さらに、スプルーロックピン13とバルブピン26とをランナー部33に配置したので、スプルーロックピン13とバルブピン26との各先端面が冷却工程時に当接することによって成形品に形成される不要な貫通孔34を、樹脂成形品32(
図1参照)に影響されない部位とすることができる。これと同時に、スプルーロックピン13とバルブピン26とをランナー部33に配置したことによって、空洞(キャビティ)内に充填された溶融樹脂材からの成形品への熱の影響を避けることができ、よって、放熱性を向上させることができる。
【0073】
なお、上述の一実施形態においては、押圧機構18を介してエジェクトプレート14を
図1の矢印符号X方向に移動させるための駆動ユニットとして可動側油圧シリンダ17を適用した例を示している。また、バルブピン26を
図1の矢印符号Xと平行な方向に移動させる駆動ユニットとして固定側油圧シリンダ24を適用した例を示している。しかしながら、上記各駆動ユニットとしては、上述の例示(油圧シリンダ)に限られることはなく、他の構成ユニットを適用することも可能である。
【0074】
また、上述の一実施形態の射出成形機1においては、バルブピン26とスプルーロックピン13とを乖離させるための機構として、スプルーロックピン13をエジェクトプレート14に固定支持させ、このエジェクトプレート14を押圧機構18を介して可動側油圧シリンダ17によって移動させる構成を示しているが、当該機構の構成は、上述の一実施形態に示す構成に限られるものではない。例えば、
図8に示すような構成が考えられる。
【0075】
[変形例1]
図8は、本発明の一実施形態の変形例を示し、射出成形機の主要構成部を拡大して示す要部拡大断面図である。
【0076】
図8に示す変形例では、バルブピンとスプルーロックピンとを乖離させる機構についての異なる例を示している。この変形例の射出成形機1Aの基本的な構成は、上述の一実施形態の射出成形機1と略同様である。したがって、上述の一実施形態で説明した同様の構成部分については同じ符号を付して、その説明は省略し、異なる部分のみについて以下に詳述する。
【0077】
図8に示すように、本変形例においては、スプルーロックピン13を
図8の矢印符号X方向に移動させるための駆動ユニットとして、上記一実施形態における可動側油圧シリンダ17とは別に、スプルーロックピン駆動用油圧シリンダ41を、各スプルーロックピン13毎に備えて構成している点が異なるのみである。
【0078】
このスプルーロックピン駆動用油圧シリンダ41は、制御装置(不図示)によって駆動制御され、所定のタイミングでスプルーロックピン13を
図8の矢印符号X方向に進退移動させる駆動ユニットである。その他の構成は、上述の一実施形態と同様である。
【0079】
このような上記変形例1の構成によっても、上述の一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0080】
[変形例2]
また、上記一実施形態及び上記変形例1に示す構成とは別の構成として、可動部ユニット10を固定部ユニット20に対して不図示の駆動ユニットによって所定の方向に移動させる構成を用いるようにしてもよい。
【0081】
このような構成によっても、上述の一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0082】
[変形例3]
さらに、上記一実施形態及び上記変形例1,2に示す構成とは異なる構成として、例えば、可塑化ユニット27を固定側金型21から分離し得るように構成してもよい。この場合においては、可塑化ユニット27は所定の駆動ユニットによって駆動制御されるように構成する。
【0083】
このような構成によっても、上述の一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0084】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用を実施し得ることが可能であることは勿論である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせによって、種々の発明が抽出され得る。例えば、上記一実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題が解決でき、発明の効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。この発明は、添付のクレームによって限定される以外にはそれの特定の実施態様によって制約されない。