(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0005】
織布状の触覚センサは、前述したように柔軟性が求められる他、伸縮性が大きいことや厚みが薄いことも必要になる。しかしながら、前述した従来のケーブル状圧力センサでは、芯電極が金属線で構成されているため、柔軟性を高めたり、直径を小さくしたりすることに制限があり、さらに軸方向の伸縮性にも乏しい。このため、前述したケーブル状圧力センサは織布状の触覚センサに用いることには適してはいない。
【0006】
本発明は、前述した問題に対処するためになされたもので、その目的は、柔軟性および伸縮性に優れるとともに細径化が可能なケーブル状圧力センサおよびそれを用いた触覚センサを提供することである。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0007】
前述した目的を達成するため、本発明に係るケーブル状圧力センサ(11,31,41,51,61)の構成上の特徴は、柔軟性を備えた細長い円筒状の圧電体(12,32,42,62)と、圧電体の内面に形成された内部導体層(13,33,43,63)と、圧電体の外面に形成された外部導体層(14,34,44,64)とからなる円筒状のセンサ電線(51a)を備
え、圧電体は、平帯状の圧電フィルム(12a,42a)を円筒状に巻き付けることによって形成されており、内部導体層(33,43)は、圧電フィルムの一方の面側に形成され圧電フィルムが円筒状に巻き付けられるときに内面側に位置するよう配置された内部帯状層(13a,43a)で構成され、内部帯状層は、圧電フィルムの一方の面の幅方向の中央部分に形成され、圧電フィルムは内部帯状層が形成されていない縁部(12b,42b)どうしが接触して円筒状の圧電体に形成されていることにある。
【0008】
本発明に係るケーブル状圧力センサでは、円筒状の圧電体の内部には、金属線でなく、圧電体の内面に沿って形成された内部導体層が位置している。このため内部導体層を薄く形成することができ、これによって、ケーブル状圧力センサの柔軟性および伸縮性を大きくすることができるとともに軽量化も図れる。また、内部導体層の内部は空間にしたままでもよいし、軟質の繊維などを充填してもよいが、空間にした場合、この部分の径を小さくすることで、ケーブル状圧力センサの外径を小さくすることもできる。さらに、ケーブル状圧力センサの感度を向上させるためには、圧電体が変形し易くなっていることが好ましいが、本発明に係るケーブル状圧力センサは、内部を空間のままにすることで、径方向への変形がより生じ易くなり、これによって感度の向上も図れる。また、内部を空間にすることで大幅なコスト削減が可能になる。
【0009】
圧電体を構成する材料としては、ポリ乳酸、フッ化ビニリデン、シアン化ビニリデン、ポリアミド、シアン化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンおよびそれらの発泡体や各重合体、それらの共重合体およびそれらの積層体、さらには発泡体なども用いることができる。また、内部導体層および外部導体層を構成する材料としては、銅、銀、白金、アルミニウムなどの金属やそれらの合金など伝導性を有する種々の材料を用いることができ、銀、アルミニウムを用いる場合には、蒸着によって層を形成することが好ましい。さらに、内部導体層および外部導体層を構成する材料として、導電性ポリマー、導電性塗料などを用いることもでき、これによるとさらに柔軟性が増すようになる。なお、1本のセンサ電線を用いる場合には、そのセンサ電線だけで本発明に係るケーブル状圧力センサが構成される。
【0011】
本発明に係るケーブル状圧力センサでは、一方の面に内部帯状層が形成された平帯状の圧電フィルムを巻き付けることで円筒状の圧電体と内部導体層を形成している。このようにすることにより、圧電体および内部導体層の形成が容易になる。また、ケーブル状圧力センサを構成する圧電体の外径を任意に設定できる。なお、この場合の圧電体は、平帯状の圧電フィルムの幅方向の両縁部を真っ直ぐ重ね合わせるようにして円筒状に形成してもよいし、平帯状の圧電フィルムを螺旋状に捩じ曲げて円筒状に形成してもよい。
【0012】
本発明によると、内部導体層が圧電体の外面に露出することを確実に防止できるため、良好なケーブル状圧力センサを得ることができる。なお、圧電フィルムの縁部どうしがは、重なり合っていてもよいし、端面どうしが接触していてもよい。
【0013】
本発明に係るケーブル状圧力センサ(41)
の他の構成上の特徴は
、柔軟性を備えた細長い円筒状の圧電体(42)と、圧電体の内面に形成された内部導体層(43)と、圧電体の外面に形成された外部導体層(44)とからなる円筒状のセンサ電線を備え、圧電
体は、平帯状の圧電フィルム(42a)の幅方向の縁部(42b)どうしを接触させて円筒状に巻き付けることによって形成されており、内部導体
層は、圧電フィルムの一方の面の幅方向の縁部を除いた中央部分に形成され圧電フィルムが円筒状に巻き付けられるときに内面側に位置するよう配置された内部帯状層(43a)で構成され、外部導体層は、圧電フィルムの他方の面の幅方向の縁部を除いた中央部分に形成され圧電フィルムが円筒状に巻き付けられるときに外面側に位置するよう配置された外部帯状層(44a)で構成されていることにある。
【0014】
本発明では、両面の幅方向の中央部分にそれぞれ内部帯状層と、外部帯状層とが形成された平帯状の圧電フィルムを巻き付けることでケーブル状圧力センサを構成するセンサ電線が円筒状に形成されている。このようにすることにより、圧電体、内部導体層および外部導体層の形成が容易になる。また、センサ電線の外径を任意に設定できる。本発明においては、圧電フィルムの接合される両縁部は接着や溶着により固定することが好ましい。なお、この場合の圧電体は、平帯状の圧電フィルムの幅方向の両縁部を真っ直ぐにして重ねて円筒状に形成してもよいし、平帯状の圧電フィルムを螺旋状に捩じ曲げて円筒状に形成してもよい。また、この場合も、圧電フィルムの縁部どうしがは、重なり合っていてもよいし、端面どうしが接触していてもよい。
【0015】
本発明に係るケーブル状圧力センサ(51)のさらに他の構成上の特徴は、複数のセンサ電線(51a)を撚り合わせて撚糸状に形成されていることにある。本発明によると、撚りが入ることによってケーブル状圧力センサは外力によってより曲がり易くなるとともに伸縮しやすくなる。また、ケーブル状圧力センサが曲がったときに、大きく曲がる部分が生じ、これによって大きな出力電圧が発生するため、ケーブル状圧力センサの感度が向上する。さらに、ケーブル状圧力センサを複数のセンサ電線で構成することで、1部のセンサ電線が切れても、他のセンサ電線で、ケーブル状圧力センサとしての機能を維持することができる。
【0016】
本発明に係るケーブル状圧力センサのさらに他の構成上の特徴は、外部導体層(64)の外周が絶縁性シース(65)で被覆されていることにある。本発明によると、圧電体、内部導体層および外部導体層からなるセンサ電線が絶縁性シースによって保護されるため、センサ電線を適正な状態に維持できるとともに、破損を防止できる。ケーブル状圧力センサが複数のセンサ電線で構成されている場合は、複数のセンサ電線全体が絶縁性シースに被覆されていてもよいし、各センサ電線全体がそれぞれ絶縁性シースに被覆されていてもよい。なお、絶縁性シースを構成する材料としては、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、加硫ゴムなどを用いることができる。
【0017】
本発明に係るケーブル状圧力センサのさらに他の構成上の特徴は、センサ電線の直径が0.2mm〜0.8mmに設定されていることにある。本発明によると、極細のケーブル状圧力センサが得られる。
【0018】
本発明に係る触覚センサ(10)の構成上の特徴は、ケーブル状圧力センサが布状に組み付けられて形成されていることにある。本発明によると、柔軟性および伸縮性に優れた軽量の触覚センサを得ることができる。また、この触覚センサは、ケーブル状圧力センサを、縦糸と横糸として織って織布状に形成されていてもよいし、ケーブル状圧力センサを編んで編み物状に形成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る触覚センサの一部を示した斜視図である。
【
図2】触覚センサを構成するケーブル状圧力センサを示した断面図である。
【
図3】ロボットに備わっている検出部を示した構成図である。
【
図4】触覚センサに圧力がかかるときの状態を示しており、(a)は圧力がかかる前の断面図、(b)は圧力がかかったときの断面図である。
【
図5】第1実施形態の変形例で用いられる圧電フィルムと内部帯状層を示した平面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る触覚センサを構成するケーブル状圧力センサを示しており、(a)は側面図、(b)は断面図である。
【
図8】第本発明の第3実施形態に係る触覚センサを構成するケーブル状圧力センサを示しており、(a)は側面図、(b)は断面図である。
【
図9】第3実施形態で用いられる圧電フィルム、内部帯状層および外部帯状層を示した断面図である。
【
図10】本発明の第4実施形態に係る触覚センサを構成するケーブル状圧力センサを示しており、(a)は側面図、(b)は断面図である。
【
図11】第5実施形態に係る触覚センサを構成するケーブル状圧力センサを示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る触覚センサ10の一部を示している。この触覚センサ10は、例えば、農作物を収穫するためのロボット(図示せず)の手の形をした把持部に取り付けられて、ロボットの把持部が農作物を把持する際の圧力を検出して、把持部が農作物を把持する際の把持力を制御するために用いられるもので、把持部を覆う手袋の形に形成されている。
【0021】
触覚センサ10は、ケーブル状圧力センサ11(
図2参照)が縦糸11aと横糸11bになるように編み込まれて織布状に形成され、その織布を手袋の形状に縫製することで製造されている。それぞれの縦糸11aおよび横糸11bを構成するケーブル状圧力センサ11は、
図2に示したように、円筒状の圧電体12の内周面に薄い内部導体層13を形成するとともに、圧電体12の外周面に薄い外部導体層14を形成して構成されている。
【0022】
圧電体12は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなり柔軟性および伸縮性を有する極細の円筒体で構成されており、その内径は、0.15mm〜0.60mm、好ましくは、0.30mmで、外径は、0.25mm〜0.65mm、好ましくは0.32mmに設定されている。内部導体層13は、銀からなる薄い膜で構成されており、蒸着により圧電体12の内周面に形成されている。内部導体層13の厚みは、0.5μm〜2.0μm、好ましくは0.5μm程度になっている。外部導体層14は、内部導体層13と同様、銀の蒸着によって、圧電体12の外周面に形成されている。外部導体層14の厚みは内部導体層13の厚みと略同じである。
【0023】
圧電体12は、例えば、公知の引き抜き法によって成形される。この場合、ポリフッ化ビニリデンからなる成形材料を、開口を備えた外径ダイスの開口と、その開口の内部に配置された内径プラグとの間の隙間を通過させながら掴み機具で引っ張ることで設定された直径および肉厚の円筒形に成形している。そして、真空チャンバを用いた公知のアーク蒸着法によって、圧電体12の内面および外面に設定された厚みの内部導体層13と外部導体層14を形成している。
【0024】
また、ポリフッ化ビニリデンは、高い電圧が付与されて分極すると圧電効果が発生する高分子材料であり、これに外力を加えると電気が発生し、電圧を加えると歪が発生する特性を備えている。圧電体12には分極処理が施されており、圧電体12に外部から力が加わったときに内部導体層13と外部導体層14の間に電圧が誘起される。また、内部導体層13と外部導体層14の間に電圧をかけると、圧電体12に変形(歪み)が生じる。なお、図示は省略しているが、手袋状に形成された触覚センサ10の表面は、絶縁性の樹脂フィルムからなる保護カバーで覆われている。
【0025】
図3は、触覚センサ10が取り付けられるロボットに備わった検出部20を示している。この検出部20には、触覚センサ10の他、検出回路21、A/D変換回路22およびCPU23が備わっている。検出回路21は、インピーダンス変換回路、増幅回路およびローパスフィルタを備えている。そして、検出回路21は、ロボットの把持部が農作物を把持したときに、触覚センサ10から送られる検出信号のレベルを所定のレベルに整合したのちに増幅するとともに、システム応答の限界である遮断周波数よりも高い周波数の成分を減衰させて遮断して遮断周波数よりも低い周波数の成分をA/D変換回路22に送る。
【0026】
A/D変換回路22は、検出回路21から送られた信号をデジタル信号に変換してCPU23に送る。CPU23は、検出部20が行う各種の処理を実行する。ここで、CPU23は、触覚センサ10に圧力が加わったときに、触覚センサ10を構成する縦糸11aと横糸11bに発生する圧電気から電圧を生じた縦糸11aと横糸11bのそれぞれの位置と電圧の大きさを算出することで触覚センサ10のどの部分にどの程度の圧力が加わったかを求める。また、検出部20には、CPU23が実行するプログラムを記憶するROM、CPU23の処理に使用されるデータなどを一時的に記憶するRAM等が備わっている他、ロボットを操作するための操作ボタンやスイッチを備えた操作部および駆動部などが備わっている。
【0027】
このように、本実施形態に係る触覚センサ10は、ケーブル状圧力センサ11を、縦糸11aと横糸11bとして織布状に編んで形成されている。そして、各ケーブル状圧力センサ11は、円筒状の圧電体12の内周面に薄い内部導体層13を形成するとともに、圧電体12の外周面に薄い外部導体層14を形成して構成されており、圧電体12は柔軟性および伸縮性を備えたポリフッ化ビニリデンからなる極細の円筒状に形成されている。このため、ケーブル状圧力センサ11は、軸周りのどの方向にでも容易に変形でき、軸方向にも伸縮できるとともに、断面形状が変化するように径方向にも容易に変形できる。そして、触覚センサ10は、変形自在な薄い織布状になり、被検出物である農作物の表面が凹凸に形成されていても、その形状に沿って撓むことができ、ロボットの把持部が農作物を把持した際に、農作物から受ける力およびその分布を感度よく検出できるようになる。
【0028】
また、圧電体12をポリフッ化ビニリデンで構成したため、ケーブル状圧力センサ11は、良好な圧電性を得ることができる。
図4(a),(b)は、触覚センサ10に圧力がかかるときの重なり合った縦糸11aと横糸11bを構成する2つのケーブル状圧力センサ11の状態を示しており、
図4(a)は圧力がかかる前の状態を示し、
図4(b)は、圧力がかかったときの状態を示している。圧力がかかる前は、各ケーブル状圧力センサ11の断面形状は、殆ど変形のない真円に近い状態になっているが、圧力がかかると、各ケーブル状圧力センサ11は、圧力の大きさに応じて押し潰されその断面形状は、楕円形に変化していく。
【0029】
このとき、楕円形に変形したケーブル状圧力センサ11の圧電体12における長軸側の両側部分(
図4(b)の断面の左右両側)は、内面側に圧縮応力が生じ、外面側に引っ張り応力が生じるように歪む。なお、圧電体12は、変形量に応じた電圧を発生する。このため、圧力がかかり大きく変形したケーブル状圧力センサ11にはより大きな電圧が発生するようになり、触覚センサ10は良好な検出感度を発揮できる。さらに、内部導体層13および外部導体層14を銀の蒸着層で構成したため、極薄の層に形成することができる。これにともなって、ケーブル状圧力センサ11の細径化、軽量化およびコストの低減化が図れる。また、触覚センサ10が検出した圧力値に基づいて、CPU23の制御により、ロボットの駆動部は、把持部を駆動する。
【0030】
(第1実施形態の変形例)
前述した第1実施形態の変形例として、
図5に示した圧電フィルム12aを用いて圧電体12を形成することができる。圧電フィルム12aは、ポリフッ化ビニリデンからなる細長い矩形のシートで構成されており、その一方の面の幅方向の中央部分に、内部導体層13を形成するための内部帯状層13aが形成されている。圧電体12は、圧電フィルム12aの幅方向の両縁部12bを重ねるように巻き付けて円筒状に形成され、内部帯状層13aは、圧電フィルム12aの重ね合される両縁部12bを除いた部分に形成される。そして、圧電体12の外周面には、前述したケーブル状圧力センサ11と同様、外部導体層14が形成される。
【0031】
圧電フィルム12aを円筒状に巻き付ける場合には、例えば、溶解または蒸発させやすい材料からなる芯線の周囲に、内部帯状層13aが形成された圧電フィルム12aを巻き付けて円筒状に形成したのちに、芯線を溶解または蒸発させて除去する方法を用いることができる。この芯線の直径は、0.15mm〜0.55mm、好ましくは0.30mmとすることが好ましい。外部導体層14は、前述した第1実施形態と同様、銀の蒸着によって形成することができるが、他の金属のメッキ層を用いたり、導電体樹脂を塗布することで形成したりしてもよい。導電体樹脂は毛細管現象を利用して含浸させてもよい。また、この変形例では、圧電フィルム12aの幅を3.5mm、長さを200mとして、圧電体12、内部導体層13および外部導体層14からなる円筒体を少し太めに形成しておき、円筒状に形成したのちに引っ張ることで設定された直径および肉厚にしている。
【0032】
なお、圧電フィルム12aの各部分の寸法としては、長さが10mm〜1000mm、好ましくは100mm〜500mmで、幅が1mm〜10mm、好ましくは1.5mm〜5mmで、厚みが8μm〜120μm、好ましくは15μm〜40μm、最も好ましいのは20μmに設定することである。また、前述のように圧電フィルム12aの幅を3.5mmとしたときに、内部帯状層13aの幅は1.3mm〜1.7mmに設定し、内部帯状層13aの両側の縁部12bの幅は0.9mm〜1.1mmに設定することが好ましい。この場合、内部導体層13には、長手方向に延びる隙間が生じる。また、
図5では、圧電フィルム12aの長手方向の両端部には、内部帯状層13aが形成されていないが、内部帯状層13aは、圧電フィルム12aの長手方向の両端部まで延びていてもよい。さらに、他の変形例として、前述した芯線の表面にメッキなどにより、通電層を形成して内部導体層とし、芯線をそのまま残してもよい。
【0033】
(第2実施形態)
図6(a),(b)は、本発明の第2実施形態に係る触覚センサ(図示せず)を構成するケーブル状圧力センサ31を示している。ケーブル状圧力センサ31は、前述したケーブル状圧力センサ11と同様、円筒状の圧電体32の内周面に薄い内部導体層33を形成するとともに、圧電体32の外周面に薄い外部導体層34を形成して構成されているが、圧電体32と、内部導体層33はそれぞれ細長い材料を螺旋状に巻き付けることで円筒状に形成されている。
【0034】
このケーブル状圧力センサ31の製造には、
図5に示したように、内部帯状層13aが形成された圧電フィルム12aと同様の内部帯状層が形成された圧電フィルムが用いられる。そして、この圧電フィルムを、内部帯状層が内側になるようにして螺旋状に丸めて円筒状にし、重なり合う圧電フィルムの縁部どうしを接合する。これによって、
図7に示した圧電体32と内部導体層33(
図6(b)参照)からなるセンサ中心部31aが得られる。なお、内部導体層33の幅方向の縁部間には螺旋状に延びる隙間33aが形成されている。この場合の圧電フィルムの巻き付けも、前述した溶解または蒸発させやすい材料からなる芯線を用いて行うことができる。つぎに、圧電体32の外周面に外部導体層34を形成してケーブル状圧力センサ31が得られる。外部導体層34も銀の蒸着、他の金属のメッキや導電体樹脂の塗布などで形成する。
【0035】
また、圧電体32の内径および外径は前述した圧電体12と略同じで、内部導体層33および外部導体層34の厚みは、前述した内部導体層13および外部導体層14の厚みと略同じである。このように構成された複数のケーブル状圧力センサ31を二組に分け、一方が縦糸で他方が横糸になるように組み付けて織布状に形成することで、
図1に示した触覚センサ10と同様の触覚センサが得られる。
【0036】
本実施形態に係るケーブル状圧力センサ31によると、内部導体層33が予め圧電フィルムに形成された内部帯状層で構成されるため、形成が容易になる。また、圧電フィルムの巻き付けに用いる芯線の直径や圧電フィルムの巻き方を変更することで、ケーブル状圧力センサ31を構成する各部分の形状や内径、外径、厚みなどの寸法を任意に設定できる。なお、ケーブル状圧力センサ31を用いて形成された触覚センサによっても前述した触覚センサ10と同様の作用効果が得られる。
【0037】
(第3実施形態)
図8(a),(b)は、本発明の第3実施形態に係る触覚センサ(図示せず)を構成するケーブル状圧力センサ41を示している。ケーブル状圧力センサ41は、円筒状の圧電体42の内周面に薄い内部導体層43を形成するとともに、圧電体42の外周面に薄い外部導体層44を形成して構成されている。このケーブル状圧力センサ41では、圧電体42、内部導体層43および外部導体層44のすべてが細長い材料を螺旋状に巻き付けることで円筒状または略円筒状に形成されている。圧電体42は円筒状に形成されているが、内部導体層43と外部導体層44はそれぞれコイルばねのように隙間43b,44bのある螺旋状に形成されている。
【0038】
このケーブル状圧力センサ41を製造する際には、まず、
図9に示したように、圧電フィルム42aの一方の面(
図8では上面)の幅方向の中央に、銀の薄層からなる内部帯状層43aを形成するとともに、圧電フィルム42aの他方の面(
図9では下面)の幅方向の中央に、銀の薄層からなる外部帯状層44aを形成してセンサ材料41aとする。ついで、このセンサ材料41aを、内部帯状層43aが内側、外部帯状層44aが外側になるようにして螺旋状に丸めて円筒状にし、重なり合う圧電フィルム42aの縁部42bどうしを接合する。これによって、圧電体42、内部導体層43および外部導体層44からなるケーブル状圧力センサ41が得られる。この場合の圧電フィルム42aの縁部42bどうしの接合は、接着や、圧着によって行うことが好ましい。また、センサ材料41aの巻き付けは、前述した溶解または蒸発させやすい材料からなる芯線を用いて行うことができる。
【0039】
また、圧電体42の内径および外径は前述した圧電体12と略同じで、内部導体層43および外部導体層44の厚みは、前述した内部導体層13および外部導体層14の厚みと略同じである。このように構成された複数のケーブル状圧力センサ41を二組に分け、一方が縦糸で他方が横糸になるように組み付けて織布状に形成することで触覚センサが得られる。
【0040】
本実施形態に係るケーブル状圧力センサ41によると、内部導体層43と外部導体層44が、予め圧電フィルム42aに形成された内部帯状層43aと外部帯状層44aで構成されるため形成が容易になる。また、この場合も、センサ材料41aの巻き付けに用いられる芯線の直径やセンサ材料41aの巻き方を変更することで、ケーブル状圧力センサ41を構成する各部分の形状や内径、外径、厚みなどの寸法を任意に設定できる。なお、ケーブル状圧力センサ41を用いて形成された触覚センサによっても前述した触覚センサ10と同様の作用効果が得られる。また、本実施形態の変形例として、センサ材料41aを螺旋状に巻き付けるのではなく、縁部42bどうしを真っ直ぐにしたまま接合して円筒状に形成することもできる。
【0041】
(第4実施形態)
図10(a),(b)は、本発明の第4実施形態に係る触覚センサ(図示せず)を構成するケーブル状圧力センサ51を示している。ケーブル状圧力センサ51は、複数のセンサ電線51aを撚り合わせて撚糸状にして形成されており、各センサ電線51aは、前述した第1実施形態のケーブル状圧力センサ11と同じもので構成されているが、極細にする必要がある。センサ電線51aは、外径が0.18mmで、内径が0.16mm程度にすることが好ましい。そして、このように構成された複数のケーブル状圧力センサ51を二組に分け、一方が縦糸で他方が横糸になるように組み付けて織布状に形成することで触覚センサが得られる。
【0042】
本実施形態に係る触覚センサでは、ケーブル状圧力センサ51が、複数のセンサ電線51aで構成されているため、強度が大きくなるとともに、感度がよくなる。また、撚りが入ることによって各ケーブル状圧力センサ51は外力によってより曲がり易くなるとともに軸方向に伸縮し易くなるため、ケーブル状圧力センサ51によって構成される触覚センサは被検出物に沿ってより撓み易くなる。さらに、ケーブル状圧力センサ51を複数のセンサ電線51aで構成することで、一部のセンサ電線51aが切れても、他のセンサ電線51aで、ケーブル状圧力センサ51としての機能を維持することができる。
【0043】
また、ケーブル状圧力センサ51およびそれを用いた触覚センサのそれ以外の作用効果は、前述したケーブル状圧力センサ11およびそれを用いた触覚センサ10の作用効果と同様である。さらに、ケーブル状圧力センサ51の変形例として、各センサ電線51aとして用いるセンサ電線を、ケーブル状圧力センサ11に代えて、ケーブル状圧力センサ31または41で構成してもよい。
【0044】
(第5実施形態)
図11は、本発明の第5実施形態に係る触覚センサ(図示せず)を構成するケーブル状圧力センサ61の断面を示している。ケーブル状圧力センサ61は、円筒状の圧電体62の内周面に薄い内部導体層63を形成するとともに、圧電体62の外周面に薄い外部導体層64を形成し、さらに外部導体層64の外周面に絶縁性シース65を形成して構成されている。圧電体62、内部導体層63および外部導体層64からなる中心部分は、前述したケーブル状圧力センサ11と同じ構成をしている。なお、外部導体層64は、極細、例えば直径が0.08mmの銅線またはメッキ銅線を圧電体62の外周面に巻き付けて構成してもよい。
【0045】
絶縁性シース65は、極薄のポリエステルテープを外部導体層64の外周面に巻き付けて形成されており、厚みは15μm〜100μm、好ましくは50μm程度に設定されている。そして、このように構成された複数のケーブル状圧力センサ61を縦糸と横糸になるように編み付けて織布状に形成することで触覚センサが得られる。本実施形態に係る触覚センサでは、各ケーブル状圧力センサ61の強度が増すため、破損が防止され長寿命化が図れる。また、ケーブル状圧力センサ61およびそれを用いた触覚センサのそれ以外の作用効果は、前述したケーブル状圧力センサ11およびそれを用いた触覚センサ10の作用効果と同様である。また、ケーブル状圧力センサ61の変形例として、中心部分を、ケーブル状圧力センサ11に代えて、ケーブル状圧力センサ31,41,51のいずれかで構成してもよい。
【0046】
また、本発明は、前述した各実施形態に限るものでなく適宜、変更して実施することが可能である。例えば、前述した実施形態では、触覚センサ10等を農作物を収穫するためのロボットの把持部に取り付けられる手袋形のものとしているが、本発明に係る触覚センサは、これに限らず、種々の機械、器具に形を代えて利用することができる。例えば、医療用の義手や義足、リハビリテーション用のマッサージ器具、超音波探傷検査での検査器具など種々の分野で利用することができる。この場合、触覚センサの形状は目的に応じたものにする。要は、外部からの圧力を測定したり、圧電体を変形させることで目的を達成したりする機械器具であれば触覚センサの利用が可能である。
【0047】
また、前述したケーブル状圧力センサ11,31等を構成する各部分の材質や寸法についても適宜変更が可能である。例えば、ケーブル状圧力センサ11,31等の直径は、8μm〜100μmの範囲に設定することができる。さらに、前述した各実施形態では、触覚センサ10等の縦糸11aと横糸11bをすべて、ケーブル状圧力センサ11,31,41,51,61のいずれかで構成しているが、縦糸11aと横糸11bの一方をケーブル状圧力センサ11,31,41,51,61のいずれかで構成し、他方を一般の繊維などで構成してもよい。この場合、横糸11bとして、ケーブル状圧力センサ11,31,41,51,61のいずれかを用いる方がより好ましい。さらに、内部導体層13,33等の内部に、柔軟性および伸縮性に優れた極細の繊維などを充填してもよい。