(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来のインストルメントパネルの裏側にワイヤハーネスが配設される構造として、
図6に示す構造が知られている。
図6は、インストルメントパネル100を裏側からみた斜視図である。
【0003】
図6に示す如く、インストルメントパネル100の裏側には、インテグレーションパネル101が組み付けられ、車両用部品110を構成している。インテグレーションパネル101には、ワイヤハーネス102が配索され、ワイヤハーネス102の分岐した先端には、電装品103やコネクタ104、105、106、107が接続されている。
【0004】
ここで、電装品103は、例えば、各種警報やタイマー制御機能等を集約したユニットである。コネクタ104は、例えば、メータ接続用のコネクタである。コネクタ105は、例えば、インストルメントパネル100に装着される電装品と接続するためのコネクタである。コネクタ106は、例えば、車体側のコネクタと接続するためのコネクタである。そして、コネクタ107は、インストルメントパネル100から離れた位置にある車体側のコネクタと接続するコネクタである。
【0005】
図示したように、インテグレーションパネル101には、自由状態となったワイヤハーネス102の分岐部102aを仮固定するための仮固定部108が設けられている。そして、分岐部102aには仮係止用クリップ(図示せず)が取り付けられ、その仮係止用クリップを仮固定部108に取り付けることで、分岐部102aが、インテグレーションパネル101から垂れ下がることが防止される(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
また、従来のワイヤハーネスを車両の狭小スペースに配索し、固定するバンドクランプとして、
図7に示す構造が知られている。
図7(A)は、バンドクランプ111を示す斜視図であり、
図7(B)は、バンドクランプ111を車体に固定した状態を示す断面図である。
【0007】
図7(A)に示す如く、バンドクランプ111は、主に、ワイヤハーネス118(
図7(B)参照)を巻き付けるバンド112と、バンド112と一体に成形されバンドを支持する本体部113と、本体部113と一体に成形され車体係止用のクリップ部114と、を有している。そして、クリップ部114は、本体部113よりも外面に突出する楕円形状の皿部115と、皿部115の中央より突設する支軸部116と、支軸部116の先端から折り返し状に突出する一対の係止羽根部117と、を有している。
【0008】
図7(B)に示す如く、ワイヤハーネス118に取り付けたバンドクランプ111のクリップ部114を車体パネル119の係止穴120に係止することで、ワイヤハーネス118を狭小な配索スペースに配索している(例えば、特許文献2参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一般に、部品メーカーでは、インストルメントパネル100やインテグレーションパネル101を成形した後、インストルメントパネル100とインテグレーションパネル101とを組み付け、車両用部品110を形成し、その車両用部品110を完成車メーカーへ納入する。一方、完成車メーカーでは、部品メーカーから納入された上記車両用部品110等を車体フレーム等に組み付けながら車両を完成させる。
【0011】
図6を用いて上述したように、ワイヤハーネス102には、インストルメントパネル100から離れた位置にある車体側のコネクタと接続するコネクタ107もある。そのコネクタ107が接続されたワイヤハーネス102の分岐部102aが、車両用部品110から垂れ下がった状態にて搬送すると、ワイヤハーネス102の分岐部102aが、積層して搬送されるその他の車両用部品110と衝突し、車両用部品110を破損させてしまう恐れがあった。
【0012】
そこで、車両用部品110のインテグレーションパネル101には、自由状態となったワイヤハーネス102の分岐部102aを仮固定するための仮固定部108が設けられている。しかしながら、仮固定部108は、上記搬送時の破損の問題を解消するために設けられた構造であり、車両用部品110が車体フレームに組み付けられる際には不要となり、車両用部品110の製造コストを低減し難いという問題がある。同様に、分岐部102aに取り付けられた仮係止用クリップも、車両用部品110が車体フレームに組み付けられる際には不要となり、コストアップの要因となる問題がある。
【0013】
また、
図7(A)及び
図7(B)を用いて上述したように、ワイヤハーネス118に取り付けたバンドクランプ111のクリップ部114を車体パネル119の係止穴120に係止することで、ワイヤハーネス118を狭小な配索スペースに配索している。
【0014】
ここで、
図6を用いて上述した車両用部品110のインテグレーションパネル101に仮固定部108を設けることなく、例えば、インテグレーションパネル101に仮固定用穴を形成し、
図7(A)に示すバンドクランプ111を用いて、ワイヤハーネス102の分岐部102aを仮固定することも考えられる。
【0015】
しかしながら、バンドクランプ111を用いて仮固定した場合でも、車両用部品110が車体フレームに組み付けられる際には、一度、バンドクランプ111のクリップ部114を仮固定用穴から取り外す必要がある。特に、仮固定用穴が狭小エリアに設けられた場合等、
図7(B)に示すように、工具を用いて皿部115を持ち上げ、係止穴120から係止羽根部117の係止状態を解消しなければならない。その結果、皿部115や係止羽根部117の形状が変形し、あるいは、破損し、仮固定に用いたバンドクランプ111では、本固定時に必要とする保持力や耐久性が得られず、新しいバンドクランプ111に取り替えなければならず、コストアップの要因を解決し難いという問題がある。
【0016】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、ハーネスクリップのアンカー部に仮保持用係止部と本保持用係止部とを形成し、簡易な操作にてハーネスクリップの仮保持状態を解消することで、仮保持時と本保持時の両方に使用できるハーネスクリップ及びハーネスクリップの固定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のハーネスクリップでは、ワイヤハーネスが固定される基部と、前記基部から立設する主柱部と、
前記主柱部を挟むように前記基部に設けられた一対のロック孔と、前記主柱部を挟むように設けられ、その一端側が前記主柱部に固定されその他端側が自由端となる
ことで前記主柱部に対して近づきあるいは離れることが可能な一対のアンカー部と、を備え、前記アンカー部には、それぞれ前記一端側に設けられ
、第1の固定部材に対して係止される仮保持用係止部と、前記他端側に設けられ
、第2の固定部材に対して係止される本保持用係止部と、
前記他端側に設けられ、前記ロック孔に対して係止されるロック部と、を有し、
前記仮保持用係止部は、前記ロック部が前記ロック孔に対して係止されない状態にて前記第1の固定部材に対して係止されると共に、前記ロック部が前記ロック孔に対して係止された状態にて前記第1の固定部材から引き抜かれ、前記本保持用係止部は、前記ロック部が前記ロック孔に対して係止された状態にて前記第2の固定部材に対して係止されることを特徴とする。
【0019】
また、本発明のハーネスクリップでは、前記基部の前記主柱部が立設する側面には、前記ロック孔よりも外側に押圧用傘部が設けられていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明のハーネスクリップの固定方法では、
第1の固定部材に設けられた仮保持用穴と、第2の固定部材に設けられ前記仮保持用穴より径が大きい本保持用穴と、に対して係止可能なハーネスクリップの固定方法であって、基部と、前記基部から立設する主柱部と、前記主柱部を挟むように設けられその一端側が前記主柱部に固定されその他端側が自由端となる一対のアンカー部と、前記主柱部を挟むように前記基部に設けられた一対のロック孔と、を有するハーネスクリップを準備し、ワイヤハーネスの一部を取付け部材により
前記基部に固定する工程と、
前記仮保持用穴に対して、
前記一端側から前記主柱部及び前記アンカー部を挿入し
、前記アンカー部を前記主柱部に対して近づけることで、前
記アンカー部に設けられた仮保持用係止部を前記仮保持用穴の縁部の前記
第1の固定部材に係止させ、前記ハーネスクリップの仮保持状態を成す工程と、
前記主柱部及び前記アンカー部を前記仮保持用穴に対して更に
挿入し、
前記アンカー部を前記主柱部に対して近づけることで、前記アンカー部の前記他端側に設けられたロック部を前記ロック孔内に挿入し、前記ロック部を前記ロック孔の縁部の前記基部に係止させ、前記ハーネスクリップの移行状態を成すことで、前記ハーネスクリップの前記仮保持状態を解消する工程と、を有することを特徴とする。
【0022】
また、本発明のハーネスクリップの固定方法では、前記ハーネスクリップの前記移行状態にて、
前記主柱部及び前記アンカー部を前記仮保持用穴から引き抜いた後、前記移行状態の
前記主柱部及び前記アンカー部を前記本保持用穴に挿入し、前記アンカー部に設けられた本保持用係止部を前記本保持用穴の縁部の前記
第2の固定部材に係止させ、前記ハーネスクリップの本保持状態を成す工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明のハーネスクリップでは、一対のアンカー部が、基部から立設する主柱部を挟むように形成されている。アンカー部の一端側は主柱部と一体に形成され、アンカー部の他端側は基部側へ延在すると共に自由端として形成されている。そして、アンカー部には、仮保持用係止部及び本保持用係止部が形成されている。この構造により、1つのハーネスクリップにより、仮保持状態と本保持状態とを実現することができ、材料コストが低減されると共に、製造コストも低減される。
【0025】
また、本発明のハーネスクリップでは、アンカー部の先端側にロック部が形成され、基部には主柱部を挟むように一対のロック孔が形成されている。この構造により、仮保持用穴に対して、仮保持状態のハーネスクリップを押し込む作業により、ロック部がロック孔に係止され、ハーネスクリップの移行状態が形成される。そして、上記移行状態では、仮保持用穴からハーネスクリップを簡単に引き抜くことができ、ハーネスクリップの損傷を防ぎながら、作業者の作業性が向上される。
【0026】
また、本発明のハーネスクリップでは、基部には主柱部の周囲に押圧用傘部が形成されている。この構造により、ハーネスクリップが、本保持用穴に係止され、固定される状態において、本保持用係止部と押圧用傘部とが、固定部材をしっかりと挟み込み、ハーネスクリップが本保持用穴に対してしっかりと固定される。
【0027】
また、本発明のハーネスクリップの固定方法では、ハーネスクリップのアンカー部には、仮保持用係止部と本保持用係止部とが形成され、ハーネスクリップを仮保持用穴に対して仮保持用係止部まで挿入することで、ハーネスクリップの仮保持状態が実現される。上記仮保持状態において、更に、仮保持用穴に対してハーネスクリップを押し込むことで、上記仮保持状態を解消することができる。この固定方法により、ドライバー等の工具を用いることなく、簡単にハーネスクリップの仮保持状態を解消でき、ハーネスクリップが損傷し、取り替えることが無くなり、材料コストが低減される。
【0028】
また、本発明のハーネスクリップの固定方法では、仮保持用穴に対してハーネスクリップを押し込むことで、アンカー部のロック部が、基部に設けられたロック孔に係止されたハーネスクリップの移行状態を実現できる。この固定方法により、仮保持用穴から移行状態のハーネスクリップを簡単に引き抜くことができ、作業者の作業性が向上される。
【0029】
また、本発明のハーネスクリップの固定方法では、仮保持用穴から引き抜いた移行状態のハーネスクリップを本保持用穴に挿入することで、ハーネスクリップの本保持状態を実現できる。この固定方法により、1つのハーネスクリップにより、仮保持状態と本保持状態とを実現することができ、材料コストが低減される。
【0030】
また、本発明のハーネスクリップの固定方法では、本保持用穴の径は、仮保持用穴の径よりも大きく形成されている。この固定方法により、移行状態のハーネスクリップを本保持用穴に挿入する際に、アンカー部の変位量が少なくなり、アンカー部への外的負荷が小さくなり、アンカー部が破損し難くなる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の一実施形態に係るハーネスクリップを図面に基づき詳細に説明する。尚、本実施形態の説明の際には、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0033】
図1(A)は、本実施形態のハーネスクリップ10を説明する斜視図である。
図1(B)は、本実施形態のハーネスクリップ10を説明する図であり、
図1(A)のA−A線方向の断面図である。尚、以下の説明では、上下方向はハーネスクリップ10の高さ方向を示し、左右方向はハーネスクリップ10の長手方向の幅方向を示し、前後方向はハーネスクリップ10の短手方向の幅方向を示している。
【0034】
図1(A)及び(B)に示す如く、ハーネスクリップ10は、主に、その一主面11A側にワイヤハーネス31(
図2(A)参照)が固定される基部11と、基部11の他の主面11B側に立設する主柱部12と、主柱部12の先端から基部11側に向けて延在する一対のアンカー部13、14と、アンカー部13、14に形成される仮保持用係止部15、16及び本保持用係止部17、18と、アンカー部13、14の先端側に形成されるロック部19、20と、基部11に形成される一対のロック孔21、22と、基部11の他の主面11B側に形成される押圧用傘部23と、を備えている。そして、ハーネスクリップ10は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂により一体成形され、特に、アンカー部13、14は、一定の外力が加わることで主柱部12側へと撓み、変位する形状となっている。
【0035】
ワイヤハーネス31は、例えば、車幅方向に延在するリーンフォースメント52(
図5参照)に配索され、リーンフォースメント52は、インストルメントパネル51(
図5参照)内に組み付けられる。ワイヤハーネス31には、複数のハーネスクリップ10が取付けられ、インストルメントパネル51から垂れ下がることなく、リーンフォースメント52に沿って配索される。尚、ワイヤハーネス31の構造は、例えば、メインの電線束と、その電線束から分岐する多数の分岐部を有し、電線束とその分岐部の先端部にはコネクタ部が設けられている公知の構造であり、ここでは詳細の説明は割愛する。
【0036】
基部11は、例えば、略直方体形状であり、紙面左右方向に延在して形成されている。基部11の長手方向(紙面左右方向)が、ワイヤハーネス31の延在方向に位置するように、ハーネスクリップ10はワイヤハーネス31に取付けられる。
【0037】
主柱部12は、基部11の他の主面11B側から、基部11と垂直となる様に紙面上下方向に延在して形成されている。主柱部12は、略直方体形状であり、基部11の長手方向の中心位置に配置されている。そして、主柱部12は、ハーネスクリップ10が本保持用穴42(
図3参照)や仮保持用穴34(
図2(A)参照)に係止され、固定された際に、変形したり、破損しない剛性を有するように設計されている。
【0038】
アンカー部13、14は、紙面左右方向において、主柱部12を挟むように形成されている。アンカー部13、14の一端側が主柱部12の先端側に一体に形成され、アンカー部13、14の他端側が自由端として形成されている。そして、アンカー部13、14は、主柱部12の先端側から基部11側へと向けて、主柱部12から離れる様に外側へ向けて形成されている。
【0039】
この構造により、アンカー部13、14は、丸印24にて示す主柱部12と一体に形成された部位を支点として、紙面左右方向へと撓みながら変位することができる。例えば、ハーネスクリップ10を本保持用穴42や仮保持用穴34に挿入することで、アンカー部13、14が、本保持用穴42や仮保持用穴34の縁部と当接し、主柱部12側へと外力を受けることで、アンカー部13、14の位置が、主柱部12側へと変位する。
【0040】
仮保持用係止部15、16は、アンカー部13、14の中央領域の同じ高さの位置であり、アンカー部13、14の外側面に形成されている。仮保持用係止部15、16の形状は、例えば、アンカー部13、14の内側面側へ向けて窪み、略「L字」形状の段差形状である。そして、アンカー部13、14が外力を受けていない状態では、仮保持用係止部15、16の離間幅W1が、仮保持用穴34の径φ1(
図2(A)参照)よりも広くなるように設計されている。
【0041】
本保持用係止部17、18は、アンカー部13、14の他端側の同じ高さの位置であり、アンカー部13、14の外側面に形成されている。本保持用係止部17、18の形状は、例えば、アンカー部13、14の内側面側へ向けて窪み、略「L字」形状の段差形状である。詳細は後述するが、ハーネスクリップ10の移行状態において、アンカー部13、14が外力を受けていない状態では、本保持用係止部17、18の離間幅W2(
図2(B)参照)が、本保持用穴42の径φ2(
図3参照)よりも広くなるように設計されている。
【0042】
ロック部19、20は、アンカー部13、14の他端側の先端部に形成されている。ロック部19、20の形状は、例えば、アンカー部13、14の内側面側へ向けて窪み、略「L字」形状の段差形状となっている。
【0043】
ロック孔21、22は、紙面左右方向において、主柱部12を挟むように基部11に形成されている。ロック孔21、22は、押圧用傘部23よりも内側に形成され、基部11を紙面上下方向に貫通して形成されている。詳細は後述するが、ロック孔21、22には、ハーネスクリップ10の仮保持状態後、本保持状態へと移行する前にロック部19、20が挿入される。
【0044】
尚、ロック孔21、22の形状は、基部11を貫通する形状に限定するものではなく、基部11の他の主面11B側から形成される凹部形状でも良く、ロック部19、20が挿入され、ロック部19、20が係止される形状であれば良い。
【0045】
押圧用傘部23は、基部11の他の主面11B側に一体に形成されている。押圧用傘部23は、例えば、主柱部12を囲むように環状の楕円形状に形成され、その先端側に向けて基部11から離間し下方に向かって傾斜している。そして、押圧用傘部23は、本保持用係止部17、18よりも外側に配置され、ハーネスクリップ10の本保持状態時には、固定部材41(
図3参照)を上面から押圧し、固定部材41を本保持用係止部17、18と挟み込むように保持する。
【0046】
図2(A)は、本実施形態のハーネスクリップ10の仮保持状態を説明する断面図である。
図2(B)は、本実施形態のハーネスクリップ10の仮保持状態から本保持状態へと移行する前の移行状態を説明する断面図である。尚、
図2(A)及び(B)では、
図1(A)に示すA−A線方向に対応した断面を示している。
【0047】
図2(A)に示す如く、ハーネスクリップ10の基部11の一主面11A上には、ワイヤハーネス31の一部がビニールテープ等の取付け部材32により固定されている。そして、ハーネスクリップ10の主柱部12及びアンカー部13、14が、リーンフォースメント等の固定部材33に設けられた仮保持用穴34に挿入され、仮保持用係止部15、16が、仮保持用穴34の縁部に位置する固定部材33の下面に引っ掛かることで、ハーネスクリップ10が、仮保持用穴34に係止され、固定される。
【0048】
図1(B)に示す如く、アンカー部13、14が外力を受けていない状態では、仮保持用係止部15、16の離間幅W1が、仮保持用穴34の径φ1よりも広くなるように設計されている。
【0049】
仮保持用穴34に対して主柱部12及びアンカー部13、14を挿入することで、アンカー部13、14が仮保持用穴34の縁部に当接し、矢印35にて示す方向に外力を受け、アンカー部13、14が主柱部12側へと変位する。そして、主柱部12及びアンカー部13、14が、仮保持用係止部15、16の位置まで挿入されると、アンカー部13、14が、逆方向である主柱部12から離れる方向へと戻り、仮保持用係止部15、16が、仮保持用穴34の縁部に位置する固定部材33の下面に引っ掛かる。この状態により、ハーネスクリップ10が仮保持用穴34から抜けなくなり、ハーネスクリップ10の仮保持状態が実現される。
【0050】
図2(B)に示す如く、上述したハーネスクリップ10の仮保持状態から、更に、主柱部12及びアンカー部13、14を仮保持用穴34内へと押し込むことで、ハーネスクリップ10の仮保持状態が解除される。そして、矢印36にて示すように、アンカー部13、14が、仮保持用穴34の縁部に位置する固定部材33により主柱部12側へと押されることで、アンカー部13、14の先端のロック部19、20が、ロック孔21、22内に挿入される。
【0051】
その後、ハーネスクリップ10を仮保持用穴34から引き抜く方向へと戻すことで、アンカー部13、14が、逆方向である主柱部12から離れる方向へと戻り、ロック部19、20が、ロック孔21、22の縁部に位置する基部11の側面に引っ掛かる。そして、アンカー部13、14が外力を受けていない状態においても、ロック部19、20が、ロック孔21、22から抜けなくなり、ハーネスクリップ10の移行状態が実現される。
【0052】
ここで、アンカー部13、14は、主柱部12側へ凸な曲面の略弓型形状として形成されている。この構造により、矢印35、36に示す方向の外力を受けることで、アンカー部13、14が、略「くの字」形状に折れ曲がる方向には撓み易くなる。その一方、ハーネスクリップ10の移行状態において、アンカー部13、14は主柱部12から離れる方向へと戻ろうとするが、略「I字」形状に反り返る方向には撓み難くなる。
【0053】
その結果、ロック部19、20が、一度、ロック孔21、22に係止されると、ロック部19、20が、ロック孔21、22の縁部の側面に引っ掛かっているため、ロック部19、20が折れる等しない限りは、ロック部19、20が、ロック孔21、22から抜け出ないため、ハーネスクリップ10の移行状態が維持される。
【0054】
ハーネスクリップ10の移行状態では、ロック部19、20が、ロック孔21、22に係止されることで、仮保持用係止部15、16の離間幅W3が、仮保持状態前の仮保持用係止部15、16の離間幅W1(
図1(B)参照)よりも狭くなる。更に、仮保持用係止部15、16の離間幅W3が、仮保持用穴34の径φ1よりも狭くなる。この構造により、移行状態のハーネスクリップ10は、簡単に仮保持用穴34から引き抜くことができる。
【0055】
図3は、本実施形態のハーネスクリップ10の本保持状態を説明する断面図である。尚、
図3では、
図1(A)に示すA−A線方向に対応した断面を示している。
【0056】
図3に示す如く、仮保持用穴34(
図2(B)参照)から引き抜かれたハーネスクリップ10は、その移行状態にて、例えば、車体フレーム等の固定部材41に設けられた本保持用穴42に挿入される。そして、本保持用係止部17、18が、本保持用穴42の縁部に位置する固定部材41の下面に引っ掛かることで、ハーネスクリップ10が、本保持用穴42に係止され、固定される。
【0057】
上述したように、ハーネスクリップ10の移行状態では、本保持用係止部17、18の離間幅W2(
図2(B)参照)が、本保持用穴42の径φ2よりも広くなるように設計されている。
【0058】
主柱部12及びアンカー部13、14を本保持用穴42内に挿入することで、アンカー部13、14が本保持用穴42の縁部に当接し、矢印43にて示す方向に外力を受け、アンカー部13、14が主柱部12側へと変位する。図示したように、ロック部19、20は、ロック孔21、22内にて主柱部12側へと移動するスペースを有している。
【0059】
その後、主柱部12及びアンカー部13、14が、本保持用係止部17、18の位置まで挿入されると、アンカー部13、14が、逆方向である主柱部12から離れる方向へと戻り、本保持用係止部17、18が、本保持用穴42の縁部に位置する固定部材41の下面に引っ掛かる。この状態により、ハーネスクリップ10が本保持用穴42から抜けなくなり、ハーネスクリップ10の本保持状態が実現される。
【0060】
本実施形態では、ハーネスクリップ10は、上記仮保持状態から作業者による押し込み作業により、上記移行状態と成り、仮保持用穴34から簡単にハーネスクリップ10を引き抜くことが出来る。この構造により、仮保持用穴34からハーネスクリップ10を引き抜く際に、ドライバー等の工具等により押圧用傘部23やアンカー部13、14等を破損し、変形させることがない。その後、移行状態のハーネスクリップ10を本保持用穴42に挿入することで、ハーネスクリップ10の本保持状態を実現できる。
【0061】
つまり、ハーネスクリップ10が、上記仮保持状態の時だけでなく、上記本保持状態時にも使用されることで、部品数の低減が実現され、材料コストを低減することができる。更には、固定部材33には、ハーネスクリップ10を係止するための仮保持用穴34のみを形成すればよく、ハーネスクリップ10の仮保持用の特別な係止構造を形成する必要がなく、製造コストも低減することができる。
【0062】
また、本保持用穴42の径φ2が、仮保持用穴34の径φ1よりも大きく設定されている。例えば、本保持用穴42の径φ2が7mmであり、仮保持用穴34の径φ1が5mmである。この構造により、移行状態のハーネスクリップ10を本保持用穴42へ挿入する際のアンカー部13、14の変位量が少なくなり、アンカー部13、14への外的負荷が小さくなり、アンカー部13、14が破損し難くなる。
【0063】
次に、本発明の他の実施形態に係るハーネスクリップの固定方法を図面に基づき詳細に説明する。尚、本実施形態の説明の際には、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0064】
図4は、本実施形態のハーネスクリップ10の固定方法を説明するフローチャートである。
図5(A)は、本実施形態のハーネスクリップの固定方法を説明する斜視図である。
図5(B)は、本実施形態のハーネスクリップの固定方法を説明する正面図である。
【0065】
図4に示す如く、本実施形態のハーネスクリップ10の固定方法では、主に、以下のステップS1〜ステップS4の工程を有している。主に、ステップS1〜ステップS2の工程は、部品メーカー側にて行われ、ステップS3〜ステップS4の工程は完成車メーカーにて行われる。尚、以下のハーネスクリップ10の固定方法の説明では、適宜、上述した
図1〜
図3の説明を参照する。
【0066】
先ず、ステップS1では、
図1(A)及び(B)に示すハーネスクリップ10を準備し、例えば、インストルメントパネル51内に組み付けられるリーンフォースメント52に設けられた仮保持用穴(図示せず)や本保持用穴(図示せず)に対応する位置のワイヤハーネス31にハーネスクリップ10を固定する。尚、リーンフォースメント52には、ワイヤハーネス31を配索するための、複数の本保持用穴や仮保持用穴が形成されているが、以下の説明では、仮保持用穴は、
図2(A)及び(B)に示す仮保持用穴34を用いて説明し、本保持用穴は、
図3に示す本保持用穴42を用いて説明する。
【0067】
図2(A)に示すように、押圧用傘部23よりも外側の基部11の両端部近傍にて、ワイヤハーネス31が、ビニールテープ等の取付け部材32により固定される。尚、ワイヤハーネス31には、リーンフォースメント52の仮保持用穴34や本保持用穴42に合わせて複数のハーネスクリップ10が取付けられる。
【0068】
次に、ステップS2では、
図2(A)及び
図3に示すように、ハーネスクリップ10を仮保持用穴34や本保持用穴42に対して挿入し、ハーネスクリップ10の仮保持状態や本保持状態を形成し、リーンフォースメント52にワイヤハーネス31を配索する。
【0069】
先ず、
図3に示すように、リーンフォースメント52の本保持用穴42に対してハーネスクリップ10を固定する。この場合には、ハーネスクリップ10の主柱部12及びアンカー部13、14を挿入し続けることで、本保持用係止部17、18が、本保持用穴42の縁部に位置するリーンフォースメント52の下面に引っ掛かり、ハーネスクリップ10が本保持用穴42に固定される。
【0070】
ここで、本保持用穴42に対して、ハーネスクリップ10を本保持用係止部17、18の形成位置まで一度に挿入するため、その挿入途中にて、ロック部19、20が、ロック孔21、22内に挿入され、ハーネスクリップ10の上記移行状態が成されている。その結果、図示したように、ハーネスクリップ10が、一度、仮保持状態と成らない場合でも、ロック部19、20が、ロック孔21、22の縁部の側面に引っ掛かっている。尚、作業者が、ハーネスクリップ10のアンカー部13、14を指で抓み、ハーネスクリップ10の上記移行状態を形成してから、ハーネスクリップ10を本保持用穴42に挿入する場合でも良い。
【0071】
一方、ワイヤハーネス31の分岐部31Aは、車体フレーム側に配索されるワイヤハーネス(図示せず)に接続されるため、この時点では、リーンフォースメント52の仮保持用穴34に固定される。この場合には、
図2(A)及び(B)に示すように、ハーネスクリップ10の主柱部12及びアンカー部13、14を仮保持用係止部15、16の形成位置まで挿入し、仮保持用係止部15、16が、仮保持用穴34の縁部に位置するリーンフォースメント52の下面に引っ掛かることで、ハーネスクリップ10が仮保持用穴34に固定される。
【0072】
部品メーカーでは、ステップS1〜ステップS2までの工程を終えて、リーンフォースメント52等をインストルメントパネル51内に組み付け、その後、インストルメントパネル51を完成車メーカーへと納入する。
【0073】
図5(B)に示すように、複数の上記インストルメントパネル51は、搬送用ラック53内に積込まれ、車両により輸送される。このとき、ワイヤハーネス31の分岐部31Aは、仮保持用穴34に固定されることで、組み付けられたインストルメントパネル51内に収まっている。そして、ワイヤハーネス31の分岐部31Aが、搬送用ラック53の下方側へと垂れ下がることがなく、輸送時の揺れ等により、ワイヤハーネス31の分岐部31Aが、搬送用ラック53内の他のインストルメントパネル51と衝突することが防止される。その結果、搬送用ラック53の上記輸送時や工場内での搬送用ラック53の搬送時に、インストルメントパネル51が破損することが防止される。
【0074】
次に、ステップS3では、インストルメントパネル51を車体フレーム(図示せず)に組み付けた後、ハーネスクリップ10を仮保持用穴34に対して更に押し込み、ハーネスクリップ10の上記移行状態を形成し、仮保持用穴34からハーネスクリップ10を引き抜く。
【0075】
図2(B)を用いて上述したように、ハーネスクリップ10を仮保持用穴34に対して更に押し込むことで、ロック部19、20が、ロック孔21、22の縁部に位置する基部11の側面に引っ掛かり、ハーネスクリップ10の移行状態となる。そして、移行状態のハーネスクリップ10は、上記W3<φ1の関係により、簡単に仮保持用穴42から引き抜くことができる。
【0076】
最後に、ステップS4では、上記移行状態のハーネスクリップ10を車体フレーム側の本保持用穴42に固定し、ワイヤハーネス31の分岐部31Aと車体フレーム側に配索されたワイヤハーネス(図示せず)とを接続する。
【0077】
図3を用いて上述したように、上記移行状態にてハーネスクリップ10を本保持用穴42に挿入し、本保持用係止部17、18が、本保持用穴42の縁部に位置する車体フレームの下面に引っ掛かることで、ハーネスクリップ10が、本保持用穴42に固定される。
【0078】
本実施形態のハーネスクリップ10では、アンカー部13、14に仮保持用係止部15、16及び本保持用係止部17、18が形成されることで、1つのハーネスクリップ10にて、仮保持状態と本保持状態の両状態を実現することができる。そして、仮保持状態のハーネスクリップ10を更に仮保持用穴34に押し込む簡単な作業にて、ハーネスクリップ10を仮保持用穴34から引き抜くことができ、作業性が向上される。特に、狭小スペースにて、ハーネスクリップ10の仮保持状態と本保持状態とを形成し、ワイヤハーネス31を配索する場合には、上記簡単な作業により作業性が向上される。
【0079】
そして、ハーネスクリップ10を仮保持用穴34から引き抜く際に、工具を用いることなく、ハーネスクリップ10へ加える外的負荷を最小限に留めることで、引き続き、ハーネスクリップ10を本保持状態でも使用することができる。また、リーンフォースメント52側にも仮保持用穴34を形成するだけでよく、製造コストも低減することができる。
【0080】
尚、本実施形態では、車両のインストルメントパネル51内に組み付けられるリーンフォースメント52にワイヤハーネス31を配索する場合について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、車両のその他の部材や車両以外の航空機等、ワイヤハーネスが配索される構造において、本実施形態のハーネスクリップ10を用いることで、上述した効果と同様な効果が得られる。
【0081】
また、ハーネスクリップ10の固定方法では、部品メーカー側と完成車メーカー側にてそれぞれ作業が行われる場合について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、部品メーカー側にて、ワイヤハーネス31の取付け作業性を向上させるために、ワイヤハーネス31の一部をハーネスクリップ10を介して一時的に仮保持用穴34に保持し、その後、本保持用穴42に対してハーネスクリップ10を固定する場合に用いても良い。つまり、上述したステップS1〜ステップS4の工程の作業を1箇所の工場内にて行う場合でも良い。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲にて種々の変更が可能である。