(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記多孔質基材が、セラミックス材料、金属材料、及び高分子材料からなる群から選択される少なくとも1種で構成される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の複合材料。
【発明を実施するための形態】
【0011】
複合材料
図1に本発明による複合材料10の一例が示される。
図1に示されるように、複合材料10は、多孔質基材12と、層状複水酸化物(LDH)セパレータ14とを備える。多孔質基材12は凹凸面12aを有する。LDHセパレータ14は凹凸面12aに沿って設けられ、かつ、最外面が凹凸面12aに対応した凹凸形状14aを有する。そして、LDHセパレータ14の厚さTは凹凸形状14aの高低差Hよりも小さい。このように、LDHセパレータ14に所定の凹凸形状14aを付与することで、見掛けの面積を変化させることなくLDHセパレータ14の表面積を増大することができる。その結果、見掛け面積及び厚さが同等の平らなLDHセパレータに比して、亜鉛二次電池等の電池内における抵抗を有意に低減することができる。
【0012】
すなわち、LDHセパレータ14の表面積が増大することで、電池内において電解液との接触面積が増えることになるため、電解液中の水酸化物イオンをより効率的に通過させることができ、結果として電池内におけるLDHセパレータ14の抵抗が低減される。もっとも、LDHセパレータ14が厚すぎると凹凸形状14aによる表面積増大による効果を打ち消してしまい、電池内におけるLDHセパレータ14の抵抗は実質的に低減されないこととなる。これは、
図3に示されるように、LDHセパレータ14’が厚すぎると、LDHセパレータ14’は平らなLDHセパレータ14bを仮想的に含んだ形状となるため、電池内における水酸化物イオンの伝導経路は平らなLDHセパレータに対して実質的に増加しないこととなり、それ故抵抗は低減されないといえる。それどころか、厚すぎるLDHセパレータ14’は平らなLDHセパレータ14bに余分な凹凸形状14aが付加された構造となるため、平らなLDHセパレータ14bよりも抵抗は高くなるといえる。この点、本発明のLDHセパレータ14は、LDHセパレータ14の厚さTが凹凸形状14aの高低差Hよりも小さいことで、
図3に示されるような仮想的な平らなLDHセパレータ14bを含まない形状となり、それ故上記不都合を解消することができる。すなわち、亜鉛二次電池等の電池内における抵抗を有意に低減することができる。
【0013】
特に、LDHセパレータ14は、一般的に広く用いられる樹脂セパレータとは異なり、硬いセラミックスセパレータであるが故に、凹凸形状14aを付与しやすく、かつ、付与した凹凸形状14aを安定的に保持できるとの利点がある。実際、多孔質基材12の製造時に多孔質基材12に凹凸面12aを付与しさえしておけば、多孔質基材12にLDHセパレータ14を(特許文献1〜3に開示されるような)公知の手法に基づき形成するだけで、凹凸形状14aを有するLDHセパレータ14を簡単に作製することができる。すなわち、LDHセパレータ14は多孔質基材12の凹凸面12aの形状が反映された凹凸形状14aを必然的に有することとなる。なお、多孔質基材12への凹凸面12aの付与は、多孔質基材12の製造において押出成型やプレス加工等の成形工程を採用することで容易に行うことができる。したがって、本発明の複合材料10は、起伏に富んだ凹凸形状14aを付与するのに極めて適した構成であるといえる。
【0014】
前述のとおり、LDHセパレータ14は、多孔質基材12の凹凸面12aに沿って設けられ、それ故、最外面が凹凸面12aに対応した凹凸形状14aを有する。その上、LDHセパレータ14の厚さTが凹凸形状14aの高低差Hよりも小さい。LDHセパレータ14の厚さTは、
図1に示されるように、LDHセパレータ14の表面に対して法線方向に切断した場合の断面厚として定義される。また、凹凸形状14aの高低差Hは、
図1に示されるように、凹凸形状14aの最大山高さ(トップ)と最大谷深さ(ボトム)の差として定義される。厚さTと高低差Hは、T<Hの関係を満たし、好ましくはT<0.5H、より好ましくはT<0.2H、さらに好ましくはT<0.1Hの関係を満たす。こうすることで、LDHセパレータ14の表面積を有意に増大することができる。Hとの関係におけるTの下限は特に限定されないが、典型的にはT>0.01Hであり、より典型的にはT>0.05Hである。
【0015】
典型的には、LDHセパレータ14は、ある切断面(例えば凹凸形状14aが最も顕著に観察される切断面)で観察した場合に、LDHセパレータ14の最外面における凹凸形状14aに沿って測定される表面長さL
2が、LDHセパレータ14の見掛け長さL
1よりも長くなるといえる。例えば
図1に示される構成において、表面長さL
2は、凹凸形状14aに沿って点線で描かれるジグザグ線の長さであり、表面長さL
2は凹凸を考慮しないで計測されるLDHセパレータ14の直線距離である。すなわち、表面長さL
2と見掛け長さL
1は典型的にはL
2>L
1の関係を満しており、好ましくはL
2>1.1L
1、より好ましくはL
2>1.2L
1、さらに好ましくはL
2>1.3L
1である。こうすることで、LDHセパレータ14の表面積を有意に増大することができる。表面長さL
2の上限は特に限定されないが、典型的にはL
2<2.0L
1であり、より典型的にはL
2<1.5L
1である。
【0016】
凹凸形状14aは規則的な形状であってもよいし、不規則形状であってもよい。典型的には、凹凸形状14aは規則的な形状である。規則的な凹凸形状14aは製造しやすく、また、LDHセパレータ14の全体にわたってムラ無く均一に表面積を増大させやすいとの利点がある。
【0017】
凹凸形状14aは視認可能なマクロ形状を含むのが好ましい。ここでいうマクロ形状は、顕微鏡を用いることなく肉眼で観察すれば確認できる形状を意味する。マクロ形状の例としては、(
図1に示されるような)断面がジグザグになる形状、断面が波型になる構造、断面が矩形凹凸になる形状、複数の凸部(例えば角柱、角錐、円柱、円錐等)が配列された構造、格子状構造等が挙げられる。これらのマクロ形状は規則的な形状であることが望ましく、例えば凹部と凸部がそれぞれ所定のピッチで設けられた構造が挙げられる。この場合、断面形状が周期的なパターンで形成されたものとなる。なお、凹凸形状14aは、互いに平行な面で切断されるかぎり位置によらず常に同じ断面形状となるような、二次元的に特性付けられた表面プロファイルであってもよいし、互いに平行な面で切断されても位置に応じて断面形状が変化するような、三次元的に特性付けられた表面プロファイルであってもよい。したがって、二次元的な凹凸形状は、ある特定の向きで切断した場合には凹凸形状は観察されないが、それと異なる向き(例えば垂直な向き)に切断した場合には凹凸形状が観察されることになる一方、三次元的な凹凸形状はいかなる向きで切断しても凹凸形状が確認されることになる。二次元的な凹凸形状の場合、LDHセパレータ14を形成するための多孔質基材12の製造において押出成形を採用することで、高い生産性で且つ容易に凹凸面12aを付与することができ、その凹凸面12aに追随する形で凹凸形状14aを有するLDHセパレータ14を形成させることができる。三次元的な凹凸形状の場合、多孔質基材12の製造において、凹凸面12aを付与可能な金型を用いたプレス加工(スタンピング)を採用することで、高い生産性で且つ容易に凹凸面12aを付与することができ、その凹凸面12aに追随する形で凹凸形状14aを有するLDHセパレータ14を形成させることができる。凹凸形状14aがマクロ形状を含む場合、電極板(すなわち正極板及び/又は負極板)はLDHセパレータ14の凹凸形状14a及び/又は多孔質基材12の凹凸形状(例えば凹凸面12a)と適合する形に構成されるのが好ましい。こうすることで、電極板と複合材料10との間で無駄な隙間を無くすことができる。
【0018】
あるいは、凹凸形状14aは顕微鏡観察可能なミクロ形状を含むものであってもよい。ここでいうミクロ形状は、マクロ形状のように視認可能ではないが、顕微鏡(例えば倍率1万倍以上)で観察すれば確認できる形状を意味する。例えば、典型的なミクロ形状による凹凸形状は、互いに隣接する凸部(トップ)と凹部(ボトム)の高さの差が0.05〜10μmであり、互いに隣接する凸部(トップ)間の距離が0.05μm〜10μmのものである。ミクロ形状の例としては、モスアイ構造、複数の凸部(例えば角柱、角錐、円柱、円錐等)が配列された構造、格子状構造等が挙げられる。これらのミクロ形状は規則的な形状であることが望ましい。また、ミクロ形状もまた、マクロ形状と同様、二次元的な凹凸形状及び三次元的な凹凸形状のいずれであってもよいが、典型的には三次元的な凹凸形状である。ミクロ形状は、算術平均粗さRaが0.02〜5μmであるのが好ましく、より好ましくは0.05〜3μm、さらに好ましくは0.1〜2μmである。凹凸形状14aがミクロ形状のみで構成される場合には、LDHセパレータ14が巨視的には一般的な平らなセパレータと変わらない形状となるため、正極及び/又は負極をLDHセパレータ14の特殊形状に合わせる必要が無く、板状等の一般的な形状の正極及び/又は負極を採用できるとの利点がある。
【0019】
凹凸形状14aは上述したようなマクロ形状及びミクロ形状の両方を含むものであってもよい。例えば、凹凸形状14aがマクロ形状を含み、そのマクロ形状の表面がミクロ形状を含むものであってもよい。あるいは、凹凸形状14aがマクロ形状の領域とミクロ形状の領域とを別々に含むものであってもよい。
【0020】
LDHセパレータ14の厚さTは5μm以下であるのが好ましく、より好ましくは0.1〜4μm、さらに好ましくは0.2〜3μmである。このように薄いことで望ましい低抵抗をより効果的に実現することができる。
【0021】
LDHセパレータ14は層状複水酸化物(LDH)を含むセパレータであり、亜鉛二次電池に組み込まれた場合に、正極板と負極板とを水酸化物イオン伝導可能に隔離するものである。すなわち、LDHセパレータ14は水酸化物イオン伝導セパレータとしての機能を呈する。好ましいLDHセパレータ14はガス不透過性及び/又は水不透過性を有する。換言すれば、LDHセパレータ14は不透過性及び/又は水不透過性を有するほどに緻密化されているのが好ましい。なお、本明細書において「ガス不透過性を有する」とは、特許文献2及び3に記載されるように、水中で測定対象物(すなわちLDHセパレータ14及び/又は多孔質基材12)の一面側にヘリウムガスを0.5atmの差圧で接触させても他面側からヘリウムガスに起因する泡の発生がみられないことを意味する。また、本明細書において「水不透過性を有する」とは、特許文献2及び3に記載されるように、測定対象物(例えばLDHセパレータ14及び/又は多孔質基材12)の一面側に接触した水が他面側に透過しないことを意味する。すなわち、LDHセパレータ14がガス不透過性及び/又は水不透過性を有するということは、LDHセパレータ14が気体又は水を通さない程の高度な緻密性を有することを意味し、透水性を有する多孔性フィルムやその他の多孔質材料ではないことを意味する。こうすることで、LDHセパレータ14は、その水酸化物イオン伝導性に起因して水酸化物イオンのみを選択的に通すものとなり、電池用セパレータとしての機能を呈することができる。このため、充電時に生成する亜鉛デンドライトによるセパレータの貫通を物理的に阻止して正負極間の短絡を防止するのに極めて効果的な構成となっている。LDHセパレータ14は水酸化物イオン伝導性を有するため、正極板と負極板との間で必要な水酸化物イオンの効率的な移動を可能として正極板及び負極板における充放電反応を実現することができる。
【0022】
LDHセパレータ14は層状複水酸化物(LDH)を含み、好ましくはLDHで構成される。一般的に知られているように、LDHは、複数の水酸化物基本層と、これら複数の水酸化物基本層間に介在する中間層とから構成される。水酸化物基本層は主として金属元素(典型的には金属イオン)とOH基で構成される。LDHの中間層は、陰イオン及びH
2Oで構成される。陰イオンは1価以上の陰イオン、好ましくは1価又は2価のイオンである。好ましくは、LDH中の陰イオンはOH
−及び/又はCO
32−を含む。また、LDHはその固有の性質に起因して優れたイオン伝導性を有する。
【0023】
一般的に、LDHは、M
2+1−xM
3+x(OH)
2A
n−x/n・mH
2O(式中、M
2+は2価の陽イオンであり、M
3+は3価の陽イオンであり、A
n−はn価の陰イオンであり、nは1以上の整数であり、xは0.1〜0.4であり、mは0以上である)の基本組成式で代表されるものとして知られている。上記基本組成式において、M
2+は任意の2価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはMg
2+、Ca
2+及びZn
2+が挙げられ、より好ましくはMg
2+である。M
3+は任意の3価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはAl
3+又はCr
3+が挙げられ、より好ましくはAl
3+である。A
n−は任意の陰イオンでありうるが、好ましい例としてはOH
−及びCO
32−が挙げられる。したがって、上記基本組成式において、M
2+がMg
2+を含み、M
3+がAl
3+を含み、A
n−がOH
−及び/又はCO
32−を含むのが好ましい。nは1以上の整数であるが、好ましくは1又は2である。xは0.1〜0.4であるが、好ましくは0.2〜0.35である。mは水のモル数を意味する任意の数であり、0以上、典型的には0を超える又は1以上の実数である。もっとも、上記基本組成式は、一般にLDHに関して代表的に例示される「基本組成」の式にすぎず、構成イオンを適宜置き換え可能なものである。例えば、上記基本組成式においてM
3+の一部または全部を4価またはそれ以上の価数の陽イオンで置き換えてもよく、その場合は、上記一般式における陰イオンA
n−の係数x/nは適宜変更されてよい。
【0024】
例えば、LDHの水酸化物基本層は、Ni、Ti、OH基、及び場合により不可避不純物で構成されてもよい。LDHの中間層は、上述のとおり、陰イオン及びH
2Oで構成される。水酸化物基本層と中間層の交互積層構造自体は一般的に知られるLDHの交互積層構造と基本的に同じであるが、本態様のLDHは、LDHの水酸化物基本層を主としてNi、Ti及びOH基で構成することで、優れた耐アルカリ性を呈することができる。その理由は必ずしも定かではないが、本態様のLDHにはアルカリ溶液に溶出しやすいと考えられる元素(例えばAl)が意図的又は積極的に添加されていないためと考えられる。そうでありながらも、本態様のLDHは、アルカリ二次電池用セパレータとしての使用に適した高いイオン伝導性も呈することができる。LDH中のNiはニッケルイオンの形態を採りうる。LDH中のニッケルイオンは典型的にはNi
2+であると考えられるが、Ni
3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。LDH中のTiはチタンイオンの形態を採りうる。LDH中のチタンイオンは典型的にはTi
4+であると考えられるが、Ti
3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。不可避不純物は製法上不可避的に混入されうる任意元素であり、例えば原料や基材に由来してLDH中に混入しうる。上記のとおり、Ni及びTiの価数は必ずしも定かではないため、LDHを一般式で厳密に特定することは非実際的又は不可能である。仮に水酸化物基本層が主としてNi
2+、Ti
4+及びOH基で構成されるものと想定した場合には、対応するLDHは、一般式:Ni
2+1−xTi
4+x(OH)
2A
n−2x/n・mH
2O(式中、A
n−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、好ましくは1又は2であり、0<x<1、好ましくは0.01≦x≦0.5、mは0以上、典型的には0を超える又は1以上の実数である)なる基本組成で表すことができる。もっとも、上記一般式はあくまで「基本組成」と解されるべきであり、Ni
2+やTi
4+等の元素がLDHの基本的特性を損なわない程度に他の元素又はイオン(同じ元素の他の価数の元素又はイオンや製法上不可避的に混入されうる元素又はイオンを含む)で置き換え可能なものとして解されるべきである。
【0025】
あるいは、LDHの水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti及びOH基を含むものであってもよい。中間層は、上述のとおり、陰イオン及びH
2Oで構成される。水酸化物基本層と中間層の交互積層構造自体は一般的に知られるLDHの交互積層構造と基本的に同じであるが、本態様のLDHは、LDHの水酸化物基本層をNi、Al、Ti及びOH基を含む所定の元素ないしイオンで構成することで、優れた耐アルカリ性を呈することができる。その理由は必ずしも定かではないが、本態様のLDHは、従来はアルカリ溶液に溶出しやすいと考えられていたAlが、Ni及びTiとの何らかの相互作用によりアルカリ溶液に溶出しにくくなるためと考えられる。そうでありながらも、本態様のLDHは、アルカリ二次電池用セパレータとしての使用に適した高いイオン伝導性も呈することができる。LDH中のNiはニッケルイオンの形態を採りうる。LDH中のニッケルイオンは典型的にはNi
2+であると考えられるが、Ni
3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。LDH中のAlはアルミニウムイオンの形態を採りうる。LDH中のアルミニウムイオンは典型的にはAl
3+であると考えられるが、他の価数もありうるため、特に限定されない。LDH中のTiはチタンイオンの形態を採りうる。LDH中のチタンイオンは典型的にはTi
4+であると考えられるが、Ti
3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti及びOH基を含んでいさえすれば、他の元素ないしイオンを含んでいてもよい。もっとも、水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti及びOH基を主要構成要素として含むのが好ましい。すなわち、水酸化物基本層は、主としてNi、Al、Ti及びOH基からなるのが好ましい。したがって、水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti、OH基及び場合により不可避不純物で構成されるのが典型的である。不可避不純物は製法上不可避的に混入されうる任意元素であり、例えば原料や基材に由来してLDH中に混入しうる。上記のとおり、Ni、Al及びTiの価数は必ずしも定かではないため、LDHを一般式で厳密に特定することは非実際的又は不可能である。仮に水酸化物基本層が主としてNi
2+、Al
3+、Ti
4+及びOH基で構成されるものと想定した場合には、対応するLDHは、一般式:Ni
2+1−x−yAl
3+xTi
4+y(OH)
2A
n−(x+2y)/n・mH
2O(式中、A
n−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、好ましくは1又は2であり、0<x<1、好ましくは0.01≦x≦0.5、0<y<1、好ましくは0.01≦y≦0.5、0<x+y<1、mは0以上、典型的には0を超える又は1以上の実数である)なる基本組成で表すことができる。もっとも、上記一般式はあくまで「基本組成」と解されるべきであり、Ni
2+、Al
3+、Ti
4+等の元素がLDHの基本的特性を損なわない程度に他の元素又はイオン(同じ元素の他の価数の元素又はイオンや製法上不可避的に混入されうる元素又はイオンを含む)で置き換え可能なものとして解されるべきである。
【0026】
LDHセパレータ14は多孔質基材12と複合化されている。すなわち、LDHセパレータ14は、LDH膜として多孔質基材12上に形成されていてもよいし、多孔質基材12の孔内にLDHが充填された複合層として形成されていてもよい(この場合はLDH膜が無くてもよい)。また、両者の組合せであってもよい。すなわち、LDH膜の一部が多孔質基材12の孔内に組み込まれた構成であってもよい。この場合、LDHセパレータ14は、LDH膜と、多孔質基材12の孔内にLDHが充填された複合層とで構成されることになる。いずれにしても、LDHセパレータ14は多孔質基材12の凹凸面12aに沿って設けられているため、LDHセパレータ14は多孔質基材12の凹凸面12aの形状が反映された凹凸形状14aを有する。
【0027】
多孔質基材12は凹凸面12aを有する。凹凸面12aは、
図1に示されるように多孔質基材12の一方の側にのみ設けられてもよいし、
図2に示される複合材料10’のように多孔質基材12の両側に設けられてもよい。多孔質基材12の両側に凹凸面12aが設けられる場合であっても、抵抗を低減する観点から、LDHセパレータ14は一方の側の凹凸面12aにのみ設けられるのが好ましい。
【0028】
多孔質基材12は透水性を有し、それ故亜鉛二次電池に組み込まれた場合に、電解液がLDHセパレータ14に到達可能となることはいうまでもないが、多孔質基材12があることでLDHセパレータ14により安定に水酸化物イオンを保持することも可能となる。また、多孔質基材12により強度を付与できるため、LDHセパレータ14を薄くして低抵抗化を図ることもできる。
【0029】
多孔質基材12は、セラミックス材料、金属材料、及び高分子材料からなる群から選択される少なくとも1種で構成されるのが好ましく、より好ましくはセラミックス材料及び/又は高分子材料、さらに好ましくは高分子材料である。多孔質基材は、セラミックス材料で構成されるのがより好ましい。この場合、セラミックス材料の好ましい例としては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、スピネル、カルシア、コージライト、ゼオライト、ムライト、フェライト、酸化亜鉛、炭化ケイ素、及びそれらの任意の組合せが挙げられ、より好ましくは、アルミナ、ジルコニア、チタニア、及びそれらの任意の組合せであり、特に好ましくはアルミナ及びジルコニアであり、最も好ましくはアルミナである。これらの多孔質セラミックスを用いると緻密性に優れたLDHセパレータ14を形成しやすい。金属材料の好ましい例としては、アルミニウム、亜鉛、及びニッケルが挙げられる。高分子材料の好ましい例としては、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ポリフェニレンサルファイド、親水化したフッ素樹脂(四フッ素化樹脂:PTFE等)、、セルロース、ナイロン、ポリエチレン及びそれらの任意の組合せが挙げられる。上述した各種の好ましい材料から電池の電解液に対する耐性として耐アルカリ性に優れたものを適宜選択するのが更に好ましい。
【0030】
複合材料10の製造方法は多孔質基材12に凹凸面12aを付与すること以外は特に限定されず、既に知られるLDH含有機能層及び複合材料の製造方法(例えば特許文献1〜3を参照)の諸条件を採用するか又はそれらを適宜変更することにより作製することができる。すなわち、公知の手法に従い多孔質基材12にLDHセパレータ14を形成すれば、凹凸面12aに追随する形で凹凸形状14aを有するLDHセパレータ14を得ることができる。例えば、(1)凹凸面12aを有する多孔質基材12を用意し、(2)多孔質基材12に酸化チタンゾル或いはアルミナ及びチタニアの混合ゾルを塗布して熱処理することで酸化チタン層或いはアルミナ・チタニア層を形成させ、(3)ニッケルイオン(Ni
2+)及び尿素を含む原料水溶液に多孔質基材を浸漬させ、(4)原料水溶液中で多孔質基材12を水熱処理して、LDH含有機能層(LDHセパレータ14)を多孔質基材12に形成させることにより、複合材料10を製造することができる。特に、上記工程(2)において酸化チタン層或いはアルミナ・チタニア層を多孔質基材12に形成することで、LDHの原料を与えるのみならず、LDH結晶成長の起点として機能させて多孔質基材の表面に高度に緻密化されたLDH含有機能層(LDHセパレータ14)をムラなく均一に形成することができる。また、上記工程(3)において尿素が存在することで、尿素の加水分解を利用してアンモニアが溶液中に発生することによりpH値が上昇し、共存する金属イオンが水酸化物を形成することによりLDHを得ることができる。また、加水分解に二酸化炭素の発生を伴うため、陰イオンが炭酸イオン型のLDHを得ることができる。
【0031】
電池
本発明の好ましい態様によれば、本発明の複合材料をセパレータとして備えた電池が提供される。この電池は、典型的には、正極と、負極と、電解液と、この電解液と接触し、かつ、正極と負極を隔離する複合材料とを備える。この態様の電池は二次電池であるのが好ましく、二次電池は、ニッケル亜鉛二次電池、酸化銀亜鉛二次電池、酸化マンガン亜鉛二次電池、亜鉛空気二次電池、及びその他各種のアルカリ亜鉛二次電池、並びにリチウム空気二次電池等、水酸化物イオン伝導性セラミックスセパレータを適用可能な各種二次電池であることができる。特に、ニッケル亜鉛二次電池及び亜鉛空気二次電池が好ましい。