(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の塗料樹脂は、アルキド−アクリル樹脂を含有しており、好ましくは、アルキド−アクリル樹脂からなる。
【0025】
アルキド−アクリル樹脂は、アルキド樹脂と、そのアルキド樹脂に対してグラフト重合可能な重合性モノマー成分(後述するアルキル(メタ)アクリレートなどを含む。)とのグラフト重合体である。
【0026】
アルキド樹脂としては、酸化重合性基を有するアルキド樹脂が用いられる。
【0027】
酸化重合性基は、酸化重合可能な多重結合を有する基であって、例えば、不飽和脂肪酸および/または油脂に由来する不飽和炭素結合(炭素二重結合または炭素三重結合)が挙げられる。
【0028】
すなわち、アルキド樹脂に、不飽和脂肪酸および/または油脂に由来する不飽和炭素結合を導入することによって、酸化重合性基を有するアルキド樹脂が得られる。
【0029】
具体的には、酸化重合性基を有するアルキド樹脂は、例えば、多価アルコールと、多塩基酸と、不飽和脂肪酸および/または油脂とを縮合反応させることによって得られる。
【0030】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロプレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ヘキサンジオールなどの2価アルコール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール、例えば、ペンタエリスリトールなどの4価アルコール、例えば、ジペンタエリスリトール、マンニトール、D−ソルビトールなどの6価アルコールなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0031】
多価アルコールとして、好ましくは、3価アルコール(より好ましくは、グリセリン)、4価アルコール(より好ましくは、ペンタエリスリトール)が挙げられ、さらに好ましくは、それらの併用が挙げられる。
【0032】
3価アルコールおよび4価アルコールが併用される場合、それらの併用割合は、3価アルコールおよび4価アルコールの総量100質量部に対して、3価アルコールが、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、例えば、20質量部以下、好ましくは、15質量部以下である。また、4価アルコールが、例えば、99質量部以上、好ましくは、95質量部以上であり、例えば、80質量部以下、好ましくは、85質量部以下である。
【0033】
多塩基酸としては、例えば、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、無水コハク酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、テトラヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0034】
多塩基酸として、好ましくは、無水フタル酸が挙げられる。
【0035】
また、必要に応じて、多塩基酸と一塩基酸とを併用することもできる。
【0036】
一塩基酸としては、例えば、安息香酸、t−ブチル安息香酸、ヘキサヒドロ安息香酸、ケイ皮酸などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。一塩基酸として、好ましくは、安息香酸が挙げられる。
【0037】
なお、多塩基酸と一塩基酸とを併用する場合、一塩基酸の割合は、多塩基酸と一塩基酸との総量100質量部に対して、一塩基酸が、通常、0質量部を超過し、例えば、15質量部以下、好ましくは、10質量部以下である。
【0038】
不飽和脂肪酸としては、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する脂肪酸であれば、特に制限されず、公知の不飽和脂肪酸が挙げられる。
【0039】
不飽和脂肪酸として、好ましくは、固形ヨウ素価が比較的高い脂肪酸(すなわち、不飽和炭素結合を比較的多く有する脂肪酸)が挙げられ、具体的には、乾性油脂肪酸、半乾性油脂肪酸が挙げられる。
【0040】
なお、乾性油脂肪酸と半乾性油脂肪酸とは、厳密に区別されないが、通常、乾性油脂肪酸は、固形ヨウ素価が130以上の脂肪酸であり、また、半乾性油脂肪酸は、固形ヨウ素価が100以上130未満の脂肪酸である。
【0041】
乾性油脂肪酸および半乾性油脂肪酸としては、例えば、魚油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、亜麻仁油(アマニ油)脂肪酸、桐油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、ケシ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻実油脂肪酸、ブドウ核油脂肪酸、トウモロコシ油脂肪酸、トール油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、クルミ油脂肪酸、ゴム種油脂肪酸、ハイジエン酸脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0042】
乾性油脂肪酸および半乾性油脂肪酸として、好ましくは、脱水ヒマシ油脂肪酸が挙げられる。
【0043】
また、必要に応じて、乾性油脂肪酸および/または半乾性油脂肪酸と、不乾性油脂肪酸と併用することができる。なお、不乾性油脂肪酸は、通常、固形ヨウ素価が100未満の脂肪酸である。
【0044】
不乾性油脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、水添ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0045】
なお、乾性油脂肪酸および/または半乾性油脂肪酸と、不乾性油脂肪酸とを併用する場合、それらの併用割合は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、適宜設定される。
【0046】
油脂としては、不飽和炭素結合を有する油脂が挙げられ、具体的には、例えば、魚油、脱水ヒマシ油、サフラワー油、亜麻仁油(アマニ油)、桐油、大豆油、ゴマ油、ケシ油、エノ油、麻実油、ブドウ核油、トウモロコシ油、トール油、ヒマワリ油、綿実油、クルミ油、ゴム種油などの乾性油または半乾性油が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0047】
油脂として、好ましくは、亜麻仁油(アマニ油)が挙げられる。
【0048】
これら不飽和脂肪酸および/または油脂は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0049】
不飽和脂肪酸および/または油脂として、好ましくは、不飽和脂肪酸および油脂の併用が挙げられる。
【0050】
不飽和脂肪酸および油脂が併用される場合、それらの併用割合は、不飽和脂肪酸および油脂の総量100質量部に対して、不飽和脂肪酸が、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上であり、例えば、40質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。また、油脂が、例えば、60質量部以上、好ましくは、70質量部以上であり、例えば、90質量部以下、好ましくは、80質量部以下である。
【0051】
また、必要に応じて、公知の不飽和脂肪酸および/または油脂と、飽和脂肪酸と併用することができる。なお、不飽和脂肪酸および/または油脂と、飽和脂肪酸とを併用する場合、それらの併用割合は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、適宜設定される。
【0052】
そして、酸化重合性基を有するアルキド樹脂の製造では、例えば、多価アルコールと、多塩基酸(さらに、必要により配合される一塩基酸(以下同様。))と、不飽和脂肪酸および/または油脂(さらに、必要により配合される飽和脂肪酸(以下同様。))とを混合して、通常、170〜280℃で3〜15時間、常圧または加圧下で縮合反応(およびエステル交換反応)させる。
【0053】
この反応において、多価アルコールと、多塩基酸と、不飽和脂肪酸および/または油脂との配合割合は、多価アルコールの水酸基1モルに対して、多塩基酸のカルボキシル基と、不飽和脂肪酸および/または油脂のカルボキシル基との総モルが、例えば、0.5モル以上、好ましくは、0.6モル以上であり、例えば、1.1モル以下、好ましくは、1.0モル以下である。
【0054】
また、多塩基酸と、不飽和脂肪酸および/または油脂との割合は、それらの有するカルボキシル基の総モルに対して、多塩基酸の有するカルボキシル基が、例えば、50モル%以上、好ましくは、60モル%以上であり、例えば、90モル%以下、好ましくは、80モル%以下である。
【0055】
また、不飽和脂肪酸および/または油脂(総量)の有するカルボキシル基が、例えば、10モル%以上、好ましくは、20モル%以上であり、例えば、50モル%以下、好ましくは、40モル%以下である。
【0056】
質量基準では、多価アルコールと、多塩基酸と、不飽和脂肪酸および/または油脂との総量100質量部に対して、多価アルコールが、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上であり、例えば、40質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。また、多塩基酸が、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上であり、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下である。また、不飽和脂肪酸および/または油脂(総量)が、例えば、30質量部以上、好ましくは、40質量部以上であり、例えば、70質量部以下、好ましくは、60質量部以下である。
【0057】
また、縮合反応(およびエステル交換反応)においては、必要に応じて、溶剤(例えば、キシレン、トルエン、メチルイソブチルケトン、後述する弱溶剤など)や、公知の触媒を、適宜の割合で添加することができる。また、反応終了後、公知の方法により、溶剤や触媒を除去することができる。
【0058】
これにより、アルキド樹脂の分子内に不飽和脂肪酸残基(油脂が用いられる場合、油脂中の不飽和脂肪酸残基を含む。)が導入され、その結果、酸化重合性基を有するアルキド樹脂が得られる。
【0059】
アルキド樹脂における不飽和脂肪酸および油脂の割合(以下、油長と称する。)は、例えば、10質量%以上、好ましくは、30質量%以上、より好ましくは、40質量%以上であり、例えば、90質量%以下、好ましくは、70質量%以下、より好ましくは、60質量%以下である。
【0060】
なお、油長とは、アルキド樹脂の原料中における不飽和脂肪酸および油脂(さらに、必要により配合される飽和脂肪酸)の質量割合であり、下記の式で求められる。
【0061】
油長(質量%)=(脂肪酸または油脂の質量/アルキド樹脂原料の総質量)×100
油長が上記範囲であれば、得られる塗料樹脂を塗料ベース樹脂として用いた場合に、酸化硬化性に優れ、また、架橋密度、初期光沢、耐候性および初期乾燥性に優れた塗膜が得られる。
【0062】
また、油長が上記範囲であれば、アルキド樹脂の分子内に、不飽和脂肪酸および油脂に由来する炭化水素基が適度に導入されるため、弱溶剤による希釈性(溶剤に対する溶解性)に優れる。
【0063】
また、アルキド樹脂の酸価は、例えば、3.5mgKOH/g以上、好ましくは、6.5mgKOH/g以上であり、例えば、16.0mgKOH/g以下、好ましくは、12.5mgKOH/g以下である。
【0064】
なお、酸価は、JIS K 5601−2−1(1999年)に準拠して測定される(以下同様)。
【0065】
また、アルキド樹脂は、必要に応じて、溶剤(後述する弱溶剤など)に溶解または分散させ、溶液または分散液として調製することができる。
【0066】
このような場合、アルキド樹脂の溶液または分散液における不揮発分濃度は、例えば、30質量%以上、好ましくは、40質量%以上であり、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
【0067】
アルキド樹脂の溶液または分散液(固形分60質量%)の酸価は、例えば、3.5mgKOH/g以上、好ましくは、6.5mgKOH/g以上であり、例えば、16.0mgKOH/g以下、好ましくは、12.5mgKOH/g以下である。
【0068】
重合性モノマー成分は、上記のアルキド樹脂に対してグラフト重合可能なモノマーであって、例えば、エチレン性不飽和基を有するモノマーなどが挙げられる。
【0069】
具体的には、重合性モノマー成分は、(A)環構造含有(メタ)アクリレートと、(B)炭素数10〜35のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートと、(C)スチレン類と、(D)後述する(d1)〜(d3)で示されるカルボキシル基末端−単官能(メタ)アクリル化合物の少なくとも1種とを含有する。
【0070】
なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートと定義され、また、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルと定義される。
【0071】
(A)環構造含有(メタ)アクリレートは、1つ以上の環構造を有する(メタ)アクリレートである。
【0072】
環構造としては、脂環および/または芳香環が挙げられる。
【0073】
脂環は、炭素を含む元素が環状に結合した構造であり、かつ、芳香族性(後述)を有しない構造を示す。なお、炭素が環状に結合し、かつ、芳香族性を有しない構造中にヘテロ原子が単数または複数含有されている構造(複素脂環)は、脂環に含まれる。
【0074】
芳香環とは、炭素を含む元素が環状に結合した構造であり、かつ、芳香族性を有する構造を示す。芳香族性とは、(4n+2)π電子系(nは自然数)を有する環を意味する。
【0075】
なお、炭素が環状に結合し、かつ、芳香族性を有する構造中にヘテロ原子が単数または複数含有されている構造(複素芳香環)は、芳香環に含まれる。
【0076】
(A)環構造含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、1つの脂環を有する(メタ)アクリレート、2つ以上の脂環を有する(メタ)アクリレート、1つの芳香環を有する(メタ)アクリレート、2つ以上の芳香環を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0077】
1つの脂環を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキセニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、(2−エチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(メタ)アクリレート、(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル(メタ)アクリレートなどの1つの環からなる飽和脂環基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0078】
2つ以上の脂環を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、アダマンチルメチル(メタ)アクリレート、2−メチルアダマンチル(メタ)アクリレート、ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、ビシクロ[4.4.0]デカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロペンタニル(メタ)アクリレート、トリシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレートなどの2個以上の環からなる飽和脂環基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0079】
1つの芳香環を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0080】
2つ以上の芳香環を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビフェニル(メタ)アクリレート、エトキシ化オルト−フェニルフェノール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0081】
これら(A)環構造含有(メタ)アクリレートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0082】
(A)環構造含有(メタ)アクリレートとして、好ましくは、2つ以上の脂環を有する(メタ)アクリレートが挙げられ、より好ましくは、イソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0083】
(B)アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数10〜35のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(以下、C10〜35アルキル(メタ)アクリレートと称する。)が用いられる。
【0084】
C10〜35アルキル(メタ)アクリレートとして、具体的には、例えば、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、1−メチルトリデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート、テトラコシル(メタ)アクリレート、トリアコンチル(メタ)アクリレートなどの直鎖状または分岐状の炭素数10〜35のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0085】
これら(B)C10〜35アルキル(メタ)アクリレートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0086】
(B)C10〜35アルキル(メタ)アクリレートとして、好ましくは、炭素数10〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、より好ましくは、炭素数11〜15のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、とりわけ好ましくは、炭素数12〜14のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレートが挙げられ、さらに好ましくは、ドデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0087】
(C)スチレン類は、スチレンおよびその誘導体であって、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
【0088】
これら(C)スチレン類は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0089】
(C)スチレン類として、好ましくは、スチレンが挙げられる。
【0090】
(D)カルボキシル基末端−単官能(メタ)アクリル化合物としては、下記(d1)〜(d3)で示される化合物が挙げられる。
【0091】
(d1)下記式(1)で示される(メタ)アクリル酸のカプロラクトン付加物。
【0092】
CH
2=C(R
1)CO[O(CH
2)
5CO]
nOH (1)
(式(1)中、R
1は、水素原子、メチル基を示し、nは、1〜10を示す。)
(d2)下記式(2)で示されるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物の酸無水物変性体。
【0093】
CH
2=C(R
1)COOR
2O[CO(CH
2)
5O]
nH (2)
(式(2)中、R
1は、水素原子、メチル基を示し、R
2は、エチレン基、プロピレン基およびテトラメチレン基からなる群から選択される少なくとも1種を示し、nは、1〜10を示す。)
(d3)下記式(3)で示される(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物の酸無水物変性体。
【0094】
CH
2=C(R
1)COO(C
mH
2mO)
nH (3)
(式(3)中、R1は、水素原子、メチル基を示し、mは、2〜4を示し、nは、1〜10を示す。)
以下において、上記(d1)〜(d3)で示される化合物のそれぞれについて、詳述する。
【0095】
(d1)で示される化合物は、下記式(1)で示される(メタ)アクリル酸のカプロラクトン付加物である。
【0096】
CH
2=C(R
1)CO[O(CH
2)
5CO]
nOH (1)
(式(1)中、R
1は、水素原子、メチル基を示し、nは、1〜10を示す。)
上記式(1)において、R
1は、水素原子および/またはメチル基を示し、好ましくは、水素原子を示す。
【0097】
また、上記式(1)において、nは、(メタ)アクリル酸1モルに対するカプロラクトンの平均付加モル数であり、1以上、好ましくは、2以上であり、10以下、好ましくは、5以下、より好ましくは、3以下である。
【0098】
このような(メタ)アクリル酸のカプロラクトン付加物は、(メタ)アクリル酸にε−カプロラクトンを付加反応(開環付加)させることにより、得ることができる。
【0099】
(メタ)アクリル酸は、アクリル酸および/またはメタアクリル酸であり、好ましくは、アクリル酸である。
【0100】
ε−カプロラクトンとしては、特に制限されず、市販品をそのまま使用することができる。
【0101】
(メタ)アクリル酸とε−カプロラクトンとを反応(開環付加)させる方法としては、特に制限されず、公知の方法(例えば、特開昭62−135521、特開昭60−67446などに記載の方法)を採用することができる。
【0102】
また、(メタ)アクリル酸のカプロラクトン付加物は、例えば、(メタ)アクリル酸と、カプロラクトンが開環したω−ヒドロキシカプロン酸との、エステル化反応(縮合重合)によっても得られる。
【0103】
(d1)(メタ)アクリル酸のカプロラクトン付加物として、具体的には、例えば、ω−カルボキシ−モノカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、ω−カルボキシ−ジカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、ω−カルボキシ−トリカプロラクトン(モノメタ)アクリレート、ω−カルボキシ−テトラカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、ω−カルボキシ−ペンタカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなどの、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0104】
また、(メタ)アクリル酸のカプロラクトン付加物は、市販品として入手することもできる。そのような市販品としては、例えば、アロニックスM−5300(ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、東亜合成製)などが挙げられる。
【0105】
(d1)上記式(1)で示される(メタ)アクリル酸のカプロラクトン付加物の酸価は、例えば、45mgKOH/g以上、好ましくは、135mgKOH/g以上であり、例えば、310mgKOH/g以下である。
【0106】
(d2)で示される化合物は、下記式(2)で示されるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物の、酸無水物変性体である。
【0107】
CH
2=C(R
1)COOR
2O[CO(CH
2)
5O]
nH (2)
(式(2)中、R
1は、水素原子、メチル基を示し、R
2は、エチレン基、プロピレン基およびテトラメチレン基からなる群から選択される少なくとも1種を示し、nは、1〜10を示す。)
上記式(2)において、R
1は、水素原子および/またはメチル基を示し、好ましくは、水素原子を示す。
【0108】
また、上記式(2)において、R
2は、エチレン基、プロピレン基およびテトラメチレン基からなる群から選択される少なくとも1種を示し、好ましくは、エチレン基を示す。
【0109】
また、上記式(2)において、nは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート1モルに対するカプロラクトンの平均付加モル数であり、1以上、好ましくは、2以上であり、10以下、好ましくは、5以下である。
【0110】
(d2)で示される化合物を得るには、例えば、まず、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとε−カプロラクトンとを反応(開環付加)させ、上記式(2)で示されるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物を得る。その後、上記式(2)で示されるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物と、酸無水物とを反応させる。
【0111】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数が2〜4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0112】
これらヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0113】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとして、好ましくは、炭素数が2のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、より好ましくは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0114】
ε−カプロラクトンとしては、特に制限されず、市販品をそのまま使用することができる。
【0115】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとε−カプロラクトンとを反応(開環付加)させる方法としては、特に制限されず、公知の方法(例えば、特開平10−7774参照などに記載の方法)を採用することができる。
【0116】
なお、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物は、市販品として入手することもできる。そのような市販品としては、例えば、プラクセルFA−1、プラクセルFA−2、プラクセルFA−2D、プラクセルFA−3、プラクセルFA−4、プラクセルFA−5、プラクセルFA−10L、プラクセルFM−1、プラクセルFM−2、プラクセルFM−2D、プラクセルFM−3、プラクセルFM−4、プラクセルFM−5(いずれもダイセル化学社製)(プラクセル(PLACCEL)は登録商標)などが挙げられる。
【0117】
これらヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0118】
そして、上記のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物と、酸無水物とを反応させることにより、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物の酸無水物変性体(すなわち、(d2)で示される化合物)を得ることができる。
【0119】
酸無水物としては、ジカルボン酸一無水物、トリカルボン酸一無水物、テトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0120】
ジカルボン酸一無水物としては、例えば、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水2−アルキル(C12〜C18)コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、ハイミック酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラブロモフタル酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物などが挙げられる。
【0121】
トリカルボン酸一無水物としては、例えば、無水トリメリット酸、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2−無水物などが挙げられる。
【0122】
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸2無水物、5−(2,5−オキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0123】
これら酸無水物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0124】
酸無水物として、好ましくは、ジカルボン酸一無水物が挙げられ、塗膜硬度の観点から、より好ましくは、無水コハク酸、無水フタル酸が挙げられ、さらに好ましくは、無水コハク酸が挙げられる。
【0125】
そして、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物と、酸無水物との反応では、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物と酸無水物とを所定割合で配合し、必要に応じて、公知の溶剤、公知の触媒などの存在下において、加熱する。
【0126】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物と酸無水物との配合割合は、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物中のヒドロキシル基に対する酸無水物中の無水カルボン酸基との当量比(無水カルボン酸基/ヒドロキシル基)が、例えば、0.5以上、好ましくは、0.67以上であり、例えば、1以下、好ましくは、0.91以下である。
【0127】
また、反応条件としては、酸素ガス、または、不活性ガス−酸素ガス混合気雰囲気下において、加熱温度が、例えば、60℃以上、好ましくは、80℃以上であり、例えば、140℃以下、好ましくは、110℃以下である。また、加熱時間が、例えば、4時間以上、好ましくは、8時間以上であり、例えば、20時間以下、好ましくは、12時間以下である。
【0128】
これにより、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物の酸無水物変性体(すなわち、(d2)で示される化合物)が得られる。
【0129】
(d2)上記式(2)で示されるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物の酸無水物変性体の酸価は、例えば、40mgKOH/g以上、好ましくは、60mgKOH/g以上であり、例えば、280mgKOH/g以下、好ましくは、150mgKOH/g以下である。
【0130】
(d3)で示される化合物は、上記式(3)で示される(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物の、酸無水物変性体である。
【0131】
CH
2=C(R
1)COO(C
mH
2mO)
nH (3)
(式(3)中、R1は、水素原子、メチル基を示し、mは、2〜4を示し、nは、1〜10を示す。)
上記式(3)において、R
1は、水素原子および/またはメチル基を示し、好ましくは、水素原子を示す。
【0132】
また、上記式(3)において、mは、2以上であり、4以下、好ましくは、3以下である。
【0133】
すなわち、上記式(3)で示される(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物は、炭素数2〜4のオキシアルキレン(C
mH
2mO)を有している。
【0134】
炭素数2〜4のオキシアルキレンとしては、オキシエチレン(−CH
2CH
2O−)、オキシトリメチレン(−CH
2CH
2CH
2O−)、オキシテトラメチレン(−CH
2CH
2CH
2CH
2O−)などの直鎖状オキシアルキレン、例えば、オキシプロピレン(−CH
2CH(CH
3)O−)、オキシブチレン(−CH
2CH(CH
2CH
3)O−、−CH(CH
3)CH(CH
3)O−)などの分岐状オキシアルキレンなどが挙げられ、好ましくは、直鎖状オキシアルキレン、より好ましくは、オキシエチレンが挙げられる。
【0135】
また、上記式(3)において、nは、(メタ)アクリル酸1モルに対するアルキレンオキサイドの平均付加モル数であり、1以上、好ましくは、2以上であり、10以下、好ましくは、5以下である。
【0136】
(d3)で示される化合物を得るには、例えば、まず、(メタ)アクリル酸と、アルキレンオキサイドとを反応(開環付加)させ、上記式(3)で示される(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物を得る。その後、上記式(3)で示される(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物と、酸無水物とを反応させる。
【0137】
(メタ)アクリル酸は、アクリル酸および/またはメタアクリル酸であり、好ましくは、アクリル酸である。
【0138】
アルキレンオキサイドとしては、炭素数2〜4のアルキレンオキサイドが挙げられ、具体的には、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、トリメチレンオキサイド(オキセタン)、ブチレンオキサイドなどの炭素数2〜4の環状エーテル化合物が挙げられる。
【0139】
これらアルキレンオキサイドは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0140】
なお、アルキレンオキサイドが2種類以上併用される場合、その付加形態は特に制限されず、例えば、ランダム付加、ブロック付加などであってもよい。
【0141】
アルキレンオキサイドとして、好ましくは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが挙げられ、より好ましくは、エチレンオキサイドが挙げられる。
【0142】
(メタ)アクリル酸に、アルキレンオキサイドを付加させる方法としては、特に制限されず、公知の方法を採用することができる。
【0143】
(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物として、より具体的には、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリトリメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレートなどの水酸基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、例えば、(モノ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(モノ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(モノ)トリメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(モノ)ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(モノ)テトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの水酸基末端モノアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0144】
これら(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0145】
(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物として、好ましくは、水酸基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられ、より好ましくは、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0146】
なお、(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物は、市販品として入手することもできる。そのような市販品としては、例えば、ブレンマーPEシリーズ、ブレンマーAEシリーズ、ブレンマーPPシリーズ、ブレンマーAPシリーズ、ブレンマーPEPシリーズ、ブレンマーAEPシリーズ、ブレンマーPETシリーズ、ブレンマーAETシリーズ、ブレンマーPPTシリーズ、ブレンマーAPTシリーズ(いずれも、日本油脂製)などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0147】
そして、上記の(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物と、酸無水物とを反応させることにより、(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物の酸無水物変性体(すなわち、(d3)で示される化合物)を得ることができる。
【0148】
酸無水物としては、上記した酸無水物が挙げられ、好ましくは、ジカルボン酸一無水物が挙げられ、硬化物(後述)の硬度の観点から、より好ましくは、無水コハク酸、無水フタル酸が挙げられ、さらに好ましくは、無水コハク酸が挙げられる。
【0149】
そして、(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物と、酸無水物との反応では、例えば、(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物と酸無水物とを所定割合で配合し、必要に応じて、公知の溶剤、公知の触媒などの存在下において、加熱する。
【0150】
(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物のカプロラクトン付加物と酸無水物との配合割合は、例えば、(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物中のヒドロキシル基に対する酸無水物中の無水カルボン酸基との当量比(無水カルボン酸基/ヒドロキシル基)が、例えば、0.5以上、好ましくは、0.67以上であり、例えば、1以下、好ましくは、0.91以下である。
【0151】
また、反応条件としては、酸素雰囲気下、または、不活性ガス−酸素ガス混合気雰囲気下において、加熱温度が、例えば、60℃以上、好ましくは、80℃以上であり、例えば、140℃以下、好ましくは、110℃以下である。また、加熱時間が、例えば、4時間以上、好ましくは、8時間以上であり、例えば、20時間以下、好ましくは、12時間以下である。
【0152】
これにより、(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物の酸無水物変性体(すなわち、(d3)で示される化合物)が得られる。
【0153】
(d3)上記式(3)で示される(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物の酸無水物変性体の酸価は、例えば、55mgKOH/g以上、好ましくは、95mgKOH/g以上であり、例えば、400mgKOH/g以下、好ましくは、300mgKOH/g以下である。
【0154】
これら(D)カルボキシル基末端−単官能(メタ)アクリル化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0155】
このような(D)カルボキシル基末端−単官能(メタ)アクリル化合物は、弱溶剤に対する希釈性を向上させる非極性基(式(1)および式(2)中の(CH
2)
5、式(3)中の(C
mH
2mO)
nなど)と、他の樹脂に対する相溶性を向上させる極性基(C=O基など)とを併有している。
【0156】
そのため、(D)カルボキシル基末端−単官能(メタ)アクリル化合物を用いることにより、弱溶剤による希釈性と、他の樹脂に対する相溶性とを兼ね備える塗料樹脂を得ることができる。
【0157】
(D)カルボキシル基末端−単官能(メタ)アクリル化合物として、分散性の観点から、好ましくは、(d1)上記式(1)で示される(メタ)アクリル酸のカプロラクトン付加物が挙げられる。
【0158】
また、重合性モノマー成分は、上記(A)〜(D)の他、任意成分として、上記(A)〜(D)と共重合可能な重合性モノマー(以下、(E)その他の重合性モノマーとする。)を含むことができる。
【0159】
(E)その他の重合性モノマーとしては、例えば、ヒドロキシル基含有重合性モノマー、カルボキシル基含有重合性モノマー(ただし、上記(d1)〜(d3)で示される(D)カルボキシル基末端−単官能(メタ)アクリル化合物を除く(以下同様)。)、3級アミノ基含有重合性モノマー、4級アンモニウム基含有重合性モノマーなどが挙げられる。
【0160】
ヒドロキシル基含有重合性モノマーとしては、例えば、ヒドロキシル基とエチレン性不飽和基とを併有するモノマーが挙げられ、具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(別名(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル)、2,3−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。ヒドロキシル基含有重合性モノマーとして、好ましくは、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートが挙げられ、より好ましくは、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0161】
カルボキシル基含有重合性モノマーとしては、例えば、カルボキシル基とエチレン性不飽和基とを併有するモノマーが挙げられ、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などのα,β−不飽和カルボン酸が挙げられる。また、例えば、上記のヒドロキシル基含有アルキル(メタ)アクリレートと、上記した酸無水物とのハーフエステル化物なども挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。カルボキシル基含有重合性モノマーとして、好ましくは、α,β−不飽和カルボン酸が挙げられ、より好ましくは、(メタ)アクリル酸が挙げられる。
【0162】
3級アミノ基含有重合性モノマーとしては、例えば、3級アミノ基とエチレン性不飽和基とを併有するモノマーが挙げられ、具体的には、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(別名(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル)、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジ−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレートなどのN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。3級アミノ基含有重合性モノマーとして、好ましくは、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、より好ましくは、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0163】
4級アンモニウム基含有重合性モノマーとしては、例えば、4級アンモニウム基とエチレン性不飽和基とを併有するモノマーが挙げられ、具体的には、上記3級アミノ基含有重合性モノマーと4級化剤(エピハロヒドリン、ハロゲン化ベンジル、ハロゲン化アルキルなど)とを反応させて得られる4級化物が挙げられる。
【0164】
3級アミノ基含有重合性モノマーの4級化物として、より具体的には、例えば、2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムブロマイド、2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムジメチルホスフェートなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウム塩、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムブロマイドなどの(メタ)アクリロイルアミノアルキルトリアルキルアンモニウム塩などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0165】
また、(E)その他の重合性モノマーとしては、さらに、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、へプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレートなどの炭素数9以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートなども挙げられる。
【0166】
また、(E)その他の重合性モノマーとしては、さらに、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルピロリドン、ビニルオキサゾリン、アクリロイルモルホリンなども挙げられる。
【0167】
これら(E)その他の重合性モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0168】
(E)その他重合性モノマーとして、好ましくは、ヒドロキシル基含有重合性モノマー、カルボキシル基含有重合性モノマー、3級アミノ基含有重合性モノマー、4級アンモニウム基含有重合性モノマーの単独使用または併用が挙げられる。
【0169】
(E)その他の重合性モノマーとして、ヒドロキシル基含有重合性モノマー、カルボキシル基含有重合性モノマー、3級アミノ基含有重合性モノマー、4級アンモニウム基含有重合性モノマーを用いると、顔料粒子表面の電荷をコントロールすることができ、塗料樹脂を塗料分散剤(顔料分散剤)として用いた場合の顔料分散性が向上する。
【0170】
さらに、(E)その他重合性モノマーとして、顔料分散性の向上の観点から、とりわけ好ましくは、ヒドロキシル基含有重合性モノマーと、カルボキシル基含有重合性モノマーと、3級アミノ基含有重合性モノマーおよび/または4級アンモニウム基含有重合性モノマーとの併用が挙げられる。
【0171】
重合性モノマー成分において、各成分の含有割合は、本発明の優れた効果を損なわない範囲において、適宜設定される。
【0172】
具体的には、重合性モノマー成分の総量に対して、(A)環構造含有(メタ)アクリレートの含有割合が、例えば、20質量%以上、好ましくは、22質量%以上であり、例えば、40質量%以下、好ましくは、38質量%以下である。
【0173】
また、重合性モノマー成分の総量に対して、(A)環構造含有(メタ)アクリレートのモル濃度が、例えば、0.901モル/kg以上、好ましくは、0.991モル/kg以上であり、例えば、1.802モル/kg以下、好ましくは、1.712モル/kg以下である。
【0174】
(A)環構造含有(メタ)アクリレートの含有割合が上記下限を上回っていれば、弱溶剤に対する希釈性の向上を図ることができ、また、上記上限を下回っていれば、塗膜の耐候性の向上を図ることができる。
【0175】
また、重合性モノマー成分の総量に対して、(B)C10〜35アルキル(メタ)アクリレートの含有割合が、例えば、10質量%以上、好ましくは、12質量%以上であり、例えば、20質量%以下、好ましくは、18質量%以下である。
【0176】
また、重合性モノマー成分の総量に対して、(B)C10〜35アルキル(メタ)アクリレートのモル濃度が、例えば、0.380モル/kg以上、好ましくは、0.456モル/kg以上であり、例えば、0.760モル/kg以下、好ましくは、0.684モル/kg以下である。
【0177】
(B)C10〜35アルキル(メタ)アクリレートの含有割合が上記下限を上回っていれば、弱溶剤に対する希釈性の向上を図ることができ、また、上記上限を下回っていれば、塗膜の乾燥性の向上を図ることができる。
【0178】
また、重合性モノマー成分の総量に対して、(C)スチレン類の含有割合が、例えば、40質量%以上、好ましくは、45質量%以上であり、例えば、60質量%以下、好ましくは、55質量%以下である。
【0179】
また、重合性モノマー成分の総量に対して、(C)スチレン類のモル濃度が、例えば、3.846モル/kg以上、好ましくは、4.327モル/kg以上であり、例えば、5.769モル/kg以下、好ましくは、5.288モル/kg以下である。
【0180】
(C)スチレン類の含有割合が上記下限を上回っていれば、塗膜の光沢性の向上を図ることができ、また、上記上限を下回っていれば、塗膜の耐候性の向上を図ることができる。
【0181】
また、重合性モノマー成分の総量に対して、(D)カルボキシル基末端−単官能(メタ)アクリル化合物の含有割合が、例えば、0.2質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上であり、例えば、4.5質量%以下、好ましくは、3.0質量%以下、より好ましくは、2.5質量%以下である。
【0182】
また、重合性モノマー成分の総量に対して、(D)カルボキシル基末端−単官能(メタ)アクリル化合物のモル濃度が、例えば、0.0067モル/kg以上、好ましくは、0.017モル/kg以上であり、例えば、0.15モル/kg以下、好ましくは、0.1モル/kg以下である。
【0183】
(D)カルボキシル基末端−単官能(メタ)アクリル化合物の含有割合が上記下限を上回っていれば、弱溶剤に対する希釈性、および、塗料分散剤と用いた場合の顔料分散性の向上を図ることができ、また、上記上限を下回っていれば、塗膜の耐水性の向上を図ることができる。
【0184】
また、重合性モノマー成分が、(E)その他の重合性モノマーを含有する場合、重合性モノマー成分の総量に対して、(E)その他の重合性モノマーの含有割合(総量)が、例えば、1質量%以上、好ましくは、3質量%以上であり、例えば、9質量%以下、好ましくは、7質量%以下である。
【0185】
とりわけ、重合性モノマー成分が、カルボキシル基含有重合性モノマーを含有する場合、その含有割合は、重合性モノマー成分の総量に対して、例えば、0.05質量%以上、好ましくは、0.08質量%以上であり、例えば、1.7質量%以下、好ましくは、1.3質量%以下である。
【0186】
カルボキシル基含有重合性モノマーの含有割合が上記下限を上回っていれば、塗料分散剤と用いた場合の顔料分散性の向上を図ることができ、また、上記上限を下回っていれば、塗膜の耐水性の向上を図ることができる。
【0187】
また、重合性モノマー成分が、ヒドロキシル基含有重合性モノマーを含有する場合、その含有割合は、重合性モノマー成分の総量に対して、例えば、1.0質量%以上、好ましくは、3.0質量%以上であり、例えば、10質量%以下、好ましくは、7.0質量%以下である。
【0188】
ヒドロキシル基含有重合性モノマーの含有割合が上記下限を上回っていれば、塗料分散剤と用いた場合の顔料分散性の向上を図ることができ、また、上記上限を下回っていれば、塗膜の耐水性の向上を図ることができる。
【0189】
また、重合性モノマー成分が、3級アミノ基含有重合性モノマーおよび/または4級アンモニウム基含有重合性モノマーを含有する場合、その含有割合は、重合性モノマー成分の総量に対して、例えば、0.3質量%以上、好ましくは、0.6質量%以上であり、例えば、2.5質量%以下、好ましくは、1.2質量%以下である。
【0190】
3級アミノ基含有重合性モノマーおよび/または4級アンモニウム基含有重合性モノマーの含有割合が上記下限を上回っていれば、塗料分散剤と用いた場合の顔料分散性の向上を図ることができ、また、上記上限を下回っていれば、塗膜の耐水性の向上を図ることができる。
【0191】
そして、アルキド樹脂に、上記の重合性モノマー成分をグラフト重合させることにより、アルキド−アクリル樹脂を得ることができる。
【0192】
グラフト重合方法としては、特に制限されず、公知の方法を採用することができる。具体的には、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下において、アルキド樹脂と重合性モノマー成分とを混合し、加熱(および必要によりエネルギー線照射)することにより、グラフト重合させる。
【0193】
アルキド樹脂と重合性モノマー成分との混合割合は、重合性モノマー成分100質量部に対して、アルキド樹脂が、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、1質量%以上であり、例えば、10質量部以下、好ましくは、7.0質量部以下である。
【0194】
アルキド樹脂の割合が上記範囲であれば、他の樹脂との相溶性の向上を図ることができる。
【0195】
また、アルキド樹脂および重合性モノマー成分とともに、必要に応じて、重合開始剤を配合することができる。
【0196】
重合開始剤は特に限定されず、アルキド樹脂の種類、重合性モノマー成分の種類、および、反応条件などに応じて適宜選択される。重合開始剤として、具体的には、例えば、ラジカル重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられる。
【0197】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ系化合物、パーオキサイド系化合物、スルフィド類、スルフィン類、スルフィン酸類、ジアゾ化合物、レゾックス系化合物などが挙げられ、好ましくは、アゾ系化合物、パーオキサイド系化合物が挙げられる。
【0198】
アゾ系化合物としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリン酸などが挙げられる。
【0199】
パーオキサイド系化合物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、カプリエルパーオキサイド、2,4−ジクロルベンゾイルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシビパレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ヘキシルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、イソプロピルパーオキシジカーボネート、イソブチルパーオキシジカーボネート、s−ブチルパーオキシジカーボネート、n−ブチルパーオキシジカーボネート、2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサエノート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−エチルヘキサノエート、1,1,2−トリメチルプロピルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−アミルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1,2−トリメチルプロピルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシイソノナエート、1,1,2−トリメチルプロピルパーオキシ−イソノナエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−へキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−アミルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエートなどの有機過酸化物などが挙げられる。
【0200】
これらラジカル重合開始剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0201】
光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−シクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、4−メチルベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0202】
これら光重合開始剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0203】
重合開始剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。重合開始剤として、好ましくは、ラジカル重合開始剤が挙げられ、より好ましくは、パーオキサイド系化合物が挙げられ、さらに好ましくは、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−エチルヘキサノエートが挙げられる。
【0204】
重合開始剤の配合割合は、重合性モノマー成分100質量部に対して、例えば、1.5質量部以上、好ましくは、3.0質量部以上であり、例えば、5.0質量部以下、好ましくは、4.0質量部以下である。
【0205】
アルキド樹脂、重合性モノマー成分および重合開始剤の配合方法は、特に制限されず、例えば、アルキド樹脂を入れた反応容器に重合性モノマー成分と重合開始剤との混合物を滴下する方法、例えば、アルキド樹脂と重合性モノマー成分の一部とを入れた反応容器に、重合性モノマー成分の残部と重合開始剤とを滴下する方法、例えば、アルキド樹脂と重合性モノマー成分とを入れた反応容器に重合開始剤を滴下する方法、例えば、重合性モノマー成分を入れた反応容器にアルキド樹脂と重合開始剤とを滴下する方法、例えば、アルキド樹脂を入れた反応容器に重合性モノマー成分と重合開始剤の一部との混合物を滴下し、その後時間を空けて重合開始剤の残部を滴下する方法などが挙げられる。
【0206】
反応温度は、例えば、50〜150℃であり、また、反応時間は、例えば、3〜20時間である。
【0207】
これにより、重合性モノマー成分の重合体((メタ)アクリル樹脂)が、アルキド樹脂に対してグラフト重合し、アルキド−アクリル樹脂が得られる。
【0208】
なお、アルキド−アクリル樹脂は、アクリル変性されたアルキド樹脂(アクリル変性アルキド樹脂)、および/または、アルキド変性されたアクリル樹脂(アルキド変性アクリル樹脂)である。
【0209】
より具体的には、上記の反応では、重合性モノマー成分の重合体(アクリル樹脂)が、アルキド樹脂に対してグラフト付加するため、反応生成物を、アクリル樹脂により変性されたアルキド樹脂(すなわち、アクリル変性アルキド樹脂)と称する場合がある。
【0210】
また、反応生成物において、重合性モノマー成分の重合体(アクリル樹脂)が主成分である場合には、反応生成物を、アルキド樹脂により変性されたアクリル樹脂(すなわち、アルキド変性アクリル樹脂)と称する場合がある。
【0211】
なお、アルキド−アクリル樹脂において、通常、重合性モノマー成分は、重合体(アクリル樹脂)としてアルキド樹脂に対してグラフト付加するが、必要により、重合性モノマー成分が、単量体として、アルキド樹脂に対してグラフト付加していてもよい。
【0212】
得られるアルキド−アクリル樹脂の重量平均分子量(GPC測定:ポリスチレン換算)は、例えば、10,000以上、好ましくは、20,000以上であり、例えば、50,000以下、好ましくは、40,000以下である。
【0213】
そして、このようなアルキド−アクリル樹脂を含有する塗料樹脂は、弱溶剤による希釈性と、他の樹脂に対する相溶性とを兼ね備えることができる。
【0214】
具体的には、この塗料樹脂では、アルキド樹脂に対してグラフト重合可能な重合性モノマー成分が、上記(d1)〜(d3)で示される(D)カルボキシル基末端−単官能(メタ)アクリル化合物を含有している。そして、(D)カルボキシル基末端−単官能(メタ)アクリル化合物は、弱溶剤に対する希釈性を向上させる非極性基(式(1)および式(2)中の(CH
2)
5、式(3)中の(C
mH
2mO)
nなど)と、他の樹脂に対する相溶性を向上させる極性基(C=O基など)とを併有している。そのため、塗料樹脂は、弱溶剤による希釈性と、他の樹脂に対する相溶性とを兼ね備えることができる。
【0215】
そのため、弱溶剤を含む塗料組成物において、塗料ベース樹脂、塗料分散剤(顔料分散剤)などとして、好適に用いることができる。
【0216】
すなわち、塗料組成物は、弱溶剤、塗料ベース樹脂、顔料、塗料分散剤(顔料分散剤)などを含有している。このような塗料組成物の総量に対して、上記の塗料樹脂を、後述する所定量以上の割合で含有させることにより、塗料樹脂を塗料ベース樹脂として作用させることができる。また、塗料組成物の総量に対して、上記の塗料樹脂を、後述する所定量未満の割合で含有させることにより、塗料樹脂を塗料分散剤(顔料分散剤)として作用させることができる。
【0217】
より具体的には、上記の塗料樹脂を塗料分散剤(顔料分散剤)として用いる場合には、塗料組成物は、上記した塗料樹脂とは異なるベース樹脂と、弱溶剤と、顔料と、塗料分散剤(顔料分散剤)とを含有する。
【0218】
ベース樹脂としては、例えば、アルキド樹脂(長油アルキド樹脂など)、ロジンフェノール樹脂、ロジンエステル樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、石油樹脂、アルキド変性アクリル樹脂(上記のアルキド−アクリル樹脂を除く。)、シリコーンアクリル樹脂、変性シリコーンアクリル樹脂(アルキド変性シリコーンアクリル樹脂など)、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂(ノボラック変性エポキシ樹脂)、ポリエステル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、セルロース樹脂などの公知のベース樹脂が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0219】
ベース樹脂として、好ましくは、アルキド樹脂(長油アルキド樹脂)が挙げられる。
【0220】
ベース樹脂の含有割合(固形分)は、塗料組成物の総量に対して、例えば、15質量%以上、好ましくは、25質量%以上であり、例えば、55質量%以下、好ましくは、45質量%以下である。
【0221】
弱溶剤としては、高沸点芳香族炭化水素系溶剤を含んでいてもよい脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられ、具体的には、ミネラルターペンやミネラルスピリットなどの石油系炭化水素に代表されるような、高引火点、高沸点、低有害性である溶剤を示す。
【0222】
弱溶剤は、一般に、強溶剤(トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチルなどのエステル系溶剤、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤などを主成分とする溶剤)と比べて、環境に与える影響が少なく、低有害性、かつ、低臭気である。
【0223】
一方、弱溶剤は、低極性であるため、一般的には、塗料樹脂に対する希釈性や相溶性に劣る。
【0224】
このような弱溶剤としては、例えば、パラフィン系溶剤、ナフテン系溶剤、植物油系溶剤などが挙げられる。
【0225】
具体的には、弱溶剤として、例えば、ミネラルスピリット、ホワイトスピリット、ミネラルターペン、イソパラフィン、ソルベント灯油、芳香族ナフサ、VM&Pナフサ、ソルベントナフサなどの混合溶剤が挙げられる。
【0226】
また、弱溶剤として、例えば、n−ブタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソノナン、n−デカン、n−ドデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロブタン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類などの単成分溶剤が挙げられる。
【0227】
これら弱溶剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0228】
弱溶剤として、好ましくは、混合溶剤が挙げられ、より好ましくは、ミネラルスピリッが挙げられる。
【0229】
弱溶剤の含有割合は、塗料組成物の総量に対して、例えば、20質量%以上、好ましくは、30質量%以上であり、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下である。
【0230】
顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化鉄、硫酸バリウム、シリカ、クレー、タルク、キナクリドン系顔料、アゾ系顔料、ニトロソ系顔料、フタロシアニン系顔料などの公知の顔料が挙げられる。これら顔料は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0231】
顔料の含有割合は、塗料組成物の総量に対して、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上であり、例えば、40質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。
【0232】
塗料分散剤(顔料分散剤)としては、上記した塗料樹脂が用いられる。
【0233】
塗料分散剤(顔料分散剤)の含有割合(固形分)は、塗料組成物の総量に対して、例えば、0.05質量%以上、好ましくは、0.10質量%以上であり、例えば、0.70質量%未満、好ましくは、0.50質量%以下である。
【0234】
なお、詳しくは後述するように、本発明の塗料樹脂を塗料組成物のベース樹脂として用いることもできるが、本発明の塗料樹脂を塗料分散剤(顔料分散剤)として用いる場合には、好ましくは、本発明の塗料樹脂をベース樹脂として用いることなく、その他の樹脂をベース樹脂として用いる。
【0235】
このような場合において、塗料分散剤(顔料分散剤)の含有割合(固形分)は、ベース樹脂(本発明の塗料樹脂とは異なる樹脂)(固形分)に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.2質量%以上、より好ましくは、0.4質量%以上であり、例えば、1.4質量%以下、好ましくは、1.2質量%以下である。
【0236】
本発明の塗料樹脂を塗料分散剤として使用する場合は、その塗料分散剤は、本発明の塗料樹脂とは異なる樹脂からなるベース樹脂に対する添加量が少量であっても、優れた分散性を発現することができる。
【0237】
とりわけ、塗料分散剤(顔料分散剤)の含有割合(固形分)が、ベース樹脂に対して0.1質量%以上であれば、優れた分散性を発現することができる。
【0238】
一方、上記の塗料分散剤(顔料分散剤)の含有割合(固形分)が、ベース樹脂に対して0.1質量%未満であっても、顔料を分散することができる。また、顔料分散剤の添加量を少なくすることにより、顔料分散剤がベース樹脂の塗膜物性に影響を与えることを抑制できる。
【0239】
さらに、塗料組成物は、必要により、添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、乾燥剤(ドライヤー)、垂れ防止剤、防錆剤、可塑剤、塗膜表面調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤などの公知の添加剤が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0240】
添加剤の含有割合は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0241】
そして、上記したベース樹脂、弱溶剤、顔料および塗料分散剤(顔料分散剤)を公知の方法で混合することにより、上記した塗料樹脂を塗料分散剤(顔料分散剤)として含有する塗料組成物を得ることができる。
【0242】
このような塗料分散剤(顔料分散剤)および塗料組成物は、アルキド樹脂に対して重合性モノマー成分が重合したアルキド−アクリル樹脂を含有しており、かつ、そのグラフト重合可能な重合性モノマー成分が、上記(A)〜(D)成分を含有するため、弱溶剤による希釈性と、他の樹脂に対する相溶性とを兼ね備えることができる。
【0243】
さらに、この塗料分散剤は、上記の塗料樹脂を含有するため、顔料分散性に優れる。
【0244】
また、上記の塗料樹脂を塗料ベース樹脂として用いる場合には、塗料組成物は、上記した塗料樹脂(塗料ベース樹脂)と、弱溶剤と、顔料とを含有する。
【0245】
上記した塗料樹脂(塗料ベース樹脂)の含有割合(固形分)は、塗料組成物の総量に対して、例えば、15質量%以上、好ましくは、25質量%以上であり、例えば、55質量%以下、好ましくは、45質量%以下である。
【0246】
また、塗料組成物は、必要により、上記の塗料樹脂以外のベース樹脂(以下、塗料樹脂以外のベース樹脂と称する。)を含有することができる。塗料樹脂以外のベース樹脂の含有割合は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0247】
弱溶剤としては、上記した弱溶剤が挙げられる。また、その含有割合は、上記と同様、塗料組成物の総量に対して、例えば、20質量%以上、好ましくは、30質量%以上であり、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下である。
【0248】
顔料としては、上記した顔料が挙げられる。また、その含有割合は、上記と同様、塗料組成物の総量に対して、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上であり、例えば、40質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。
【0249】
さらに、塗料組成物は、必要により、添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、塗料分散剤(顔料分散剤(上記の塗料樹脂を除く。)、乾燥剤、防錆剤、可塑剤、塗膜表面調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤などの公知の添加剤が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0250】
添加剤の含有割合は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0251】
そして、上記した塗料樹脂(塗料ベース樹脂)、弱溶剤および顔料(さらに、塗料樹脂以外のベース樹脂および添加剤)を公知の方法で混合することにより、上記した塗料樹脂を塗料ベース樹脂として含有する塗料組成物を得ることができる。
【0252】
このような塗料ベース樹脂および塗料組成物は、アルキド樹脂に対して重合性モノマー成分が重合したアルキド−アクリル樹脂を含有しており、かつ、そのグラフト重合可能な重合性モノマー成分が、上記(A)〜(D)成分を含有するため、弱溶剤による希釈性と、他の樹脂に対する相溶性とを兼ね備えることができる。
【0253】
さらに、この塗料ベース樹脂は、上記の塗料樹脂を含有するため、乾燥性に優れており、また、耐候性に優れた塗膜を得ることができる。
【0254】
塗膜を製造する方法は、特に制限されず、被塗物に対して塗料組成物を公知の方法で塗布し、乾燥させる。
【0255】
塗布方法としては、特に制限されず、例えば、ロールコーター、バーコーター、ドクターブレード、メイヤーバー、エアナイフなど、塗布の際に、一般的に使用される機器を用いた塗布や、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、はけ塗り、スプレー塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工といった公知の塗布方法が採用される。
【0256】
乾燥条件としては、乾燥温度が、例えば、10℃以上、好ましくは、20℃以上であり、例えば、50℃以下、好ましくは、40℃以下である。また、乾燥時間が、例えば、12時間以上、好ましくは、24時間以上である。
【0257】
これにより、塗料組成物を硬化させることができる。その結果、塗料組成物の硬化物として、塗膜が得られる。
【0258】
このような塗膜は、弱溶剤による希釈性と、他の樹脂に対する相溶性とを兼ね備える塗料組成物を硬化して得られるため、生産性に優れ、また、均一性(顔料分散性)、乾燥性、耐候性、耐水性などの各種物性に優れる。
【0259】
そのため、塗膜は、例えば、建築物の鉄部および木部、鉄鋼構造物の中塗りおよび上塗りなどの分野において、好適に用いられる。
【実施例】
【0260】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0261】
実施例1
<アルキド樹脂の合成>
反応容器に表1記載の原料と、還流溶剤としてのキシレン96質量部とを仕込み、240℃まで昇温し、水分離器で反応系内の水分を除去しながら酸価が20mgKOH/g以下となるまで反応させ、アルキド樹脂(油長55.7%)のキシレン溶液を製造した。
【0262】
そして、アルキド樹脂のキシレン溶液の酸価が20mgKOH/g以下となった時点で、減圧蒸留によってキシレンを除去し、放冷した。その後、得られたアルキド樹脂をミネラルスピリット(LAWS;シェルケミカルズジャパン製(以下同様))2037質量部で希釈し、不揮発分(固形分)60.0質量%のアルキド樹脂のミネラルスピリット溶液を得た。
【0263】
得られたアルキド樹脂のミネラルスピリット溶液(固形分60質量%)の酸価は9.5mgKOH/gであった。
【0264】
【表1】
【0265】
<アルキド−アクリル樹脂の合成>
上記で得られたアルキド樹脂のミネラルスピリット溶液(不揮発分60.0質量%)13.7質量部(すなわち、アルキド樹脂8.22質量部)と、ミネラルスピリット138.2質量部とを反応容器に仕込み、窒素ガスを通気しながら撹拌して120℃まで昇温した。
【0266】
次いで、120℃を保持しながら、表2記載の重合性モノマー成分と、重合開始剤としての1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−エチルヘキサノエート7.06質量部との混合物を、2時間かけて反応容器に滴下した。
【0267】
そして、混合物の滴下終了後、120℃で4時間熟成し、アルキド−アクリル樹脂(塗料樹脂)を得た。
【0268】
その後、80℃まで冷却して、36.8質量部のミネラルスピリットを反応容器に加え、褐色透明で粘稠なアルキド−アクリル樹脂の溶液(不揮発分56.0質量%)を得た。
【0269】
得られたアルキド−アクリル樹脂の重量平均分子量を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した。
【0270】
具体的には、サンプルをテトラヒドロフランに溶解して(濃度1.0g/L)、示差屈折率検出器(RID)を備えるGPCによって測定し、その後、得られたクロマトグラム(チャート)から、標準ポリスチレンを検量線として、樹脂の重量平均分子量(Mw)を算出した。得られた樹脂の重量平均分子量は31,300であった。測定装置および測定条件は下記の通りである。
【0271】
データ処理装置:HLC−8220GPC(東ソー製)
示差屈折率検出器:HLC−8220GPCに内蔵されたRI検出器
カラム:TSKgel SuperHZM−H(東ソー製)2本
移動相:テトラヒドロフラン
カラム流量:0.35mL/分
試料濃度:1.0g/L
注入量:10μL
測定温度:40℃
分子量マーカー:標準ポリスチレン(POLYMER LABORATORIES社製標準物質)(POLYSTYRENE−MEDIUM MOLECULAR WEIGHT CALIBRATION KITを使用)
【0272】
【表2】
【0273】
なお、表2中の略号の詳細を下記する。
【0274】
エヌジェルブCM−275:アルキルメタクリレート、C12アルキルメタクリレートとC14アルキルメタクリレートとの混合物、新日本理化株式会社製
M−5300:アロニックスM−5300、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、東亜合成製
<塗料組成物1の調製>
上記で得られたアルキド−アクリル樹脂(塗料樹脂)を、塗料分散剤として用い、塗料組成物1を得た。
【0275】
すなわち、上記で得られたアルキド−アクリル樹脂の溶液(不揮発分56.0質量%)0.65質量部(すなわち、顔料分散剤としてのアルキド−アクリル樹脂0.364質量部)と、ベース樹脂としてのアルキド樹脂(固形分58質量%、ミネラルスピリット42質量%、商品名ハリフタール764−58、ハリマ化成社製)64.30質量部と、溶剤としてのミネラルスピリット(LAWS;シェルケミカルズジャパン製)8.39質量部と、顔料としての酸化チタンJR−603(テイカ製)19.86質量部と、乾燥剤としてのオクチル酸コバルト/オクチル酸ジルコニウム混合物(固形分54質量%、ミネラルスピリット46質量%、固形分質量比(1/3.4))4.15質量部と、垂れ防止剤としてのA−S−A T−380−20BS(固形分20質量%、ミネラルスピリット80質量%、伊藤製油社製)2.65質量部と配合し、3本ロールミルにより混練し、塗料組成物1を調製した。
【0276】
<塗料組成物2の調製>
上記で得られたアルキド−アクリル樹脂(塗料樹脂)を、塗料ベース樹脂として用い、塗料組成物2を得た。
【0277】
すなわち、上記で得られたアルキド−アクリル樹脂の溶液(不揮発分56.0質量%)64.95質量部(すなわち、ベース樹脂としてのアルキド−アクリル樹脂36.37質量部)と、溶剤としてのミネラルスピリット8.39質量部と、顔料としての酸化チタンJR−603(テイカ製)19.86質量部と、乾燥剤としての乾燥剤としてのオクチル酸コバルト/オクチル酸ジルコニウム混合物(固形分54質量%、ミネラルスピリット46質量%、固形分質量比(1/3.4))4.15質量部と、垂れ防止剤としてのA−S−A T−380−20BS(固形分20質量%、ミネラルスピリット80質量%、伊藤製油社製)2.65質量部と配合し、3本ロールミルにより混練し、塗料組成物2を調製した。
【0278】
実施例2〜12および比較例1〜3
アルキド−アクリル樹脂の合成における重合性モノマー成分の処方を、表3〜5に記載の処方に変更した以外は、実施例1と同じ方法でアルキド−アクリル樹脂(塗料樹脂)を合成し、そのアルキド−アクリル樹脂を用いて塗料組成物1および塗料組成物2を得た。
【0279】
なお、比較例3では、アルキド−アクリル樹脂を用いなかった。
【0280】
具体的には、比較例3では、顔料分散剤としてのアルキド−アクリル樹脂を用いることなく、ベース樹脂としてのアルキド樹脂64.95質量部を用いて、塗料組成物1を調製した。また、ベース樹脂としてのアルキド−アクリル樹脂を用いなかった。すなわち、塗料組成物2を調製しなかった。
【0281】
表3〜表5に、重合性モノマー成分の総量に対する(D)カルボキシル基末端−単官能(メタ)アクリル化合物のモル濃度(mol/kg)を併せて示す。
【0282】
<評価>
以下の方法により、塗料樹脂の希釈性および相溶性を評価し、また、塗料樹脂を塗料分散剤として用いた場合の分散性を評価し、さらに、塗料樹脂を塗料ベース樹脂として用いた場合の乾燥性を評価した。その結果を、表3〜5に示す。
【0283】
(1)弱溶剤による希釈性
まず、50mLサンプル管に試料を5g採取し、25℃に調整しながらミネラルスピリットを滴下し、ガラス棒で撹拌した。そして、この操作を、希釈限界まで繰り返すことにより、塗料樹脂の弱溶剤に対する希釈性(溶解性)を評価した。
【0284】
なお、液温は50mLサンプル管に水銀温度系を直接入れて測定した。また、滴定の終点は、液に濁りを生じ、沈殿物が生じた時とした。
【0285】
そして、下記式により希釈性評価値を算出して、希釈性を評価した。
【0286】
希釈性評価値 = 使用したミネラルスピリットの量(mL)/試料採取量(5g)
なお、評価の基準を下記する。
A :希釈性評価値が10以上
B :希釈性評価値が2以上10未満
C :希釈性評価値が2未満
(2)他の樹脂に対する相溶性
塗料樹脂と、その他の樹脂とを、その他の樹脂/塗料樹脂=9/1(質量比)の割合で混合し、混合ワニスを調製した。
【0287】
そして、得られたワニスを4milアプリケーターにてガラス板に塗布し、溶剤を蒸発させ、塗膜を形成した。そして、得られた塗膜の曇り度をヘーズメーター(日本電色工業株式会社製NDH−5000)を用いて測定した。
【0288】
これにより、他の樹脂に対する相溶性を評価した。
【0289】
なお、その他の樹脂としては、長油アルキド樹脂(商品名ハリフタール764−58ハリマ化成社製)、アルキド変性アクリル樹脂(商品名ハリアクロン8283−F1、ハリマ化成社製)、アクリル樹脂(商品名ハリアクロン7819−F8、ハリマ化成社製)、および、ウレタン変性アルキド樹脂(商品名ハリフタールSC−3050、ハリマ化成社製)を用いた。
【0290】
なお、評価の基準を下記する。
A :塗膜の透明度が1%未満
B :塗膜の透明度が1%以上、15%未満
C :塗膜の透明度が15%以上
(3)分散性
各実施例および各比較例において得られた塗料組成物1を、室温で10日間保存した後、顔料の分離状況を目視観察した。
【0291】
そして、分離沈降した顔料の層の厚さ(瓶の底からの距離(cm))と、塗料組成物1の液面高さ(瓶の底から液面までの距離(cm))とを求め、下記式により分散性評価値を算出して、分散性を評価した。
【0292】
分散性評価値=[顔料の層の厚さ(cm)/塗料組成物1の液面高さ(cm)]×100
なお、評価の基準を下記する。
A+:分散性評価値が0(分離沈降した顔料の層がない。)
A :分散性評価値が0を超過し、1未満
B :分散性評価値が1以上、5未満
C :分散性評価値が5以上
(4)乾燥性
JIS K 5600−1−1(1999年)の〈試験一般(条件及び方法)〉を一部変更した以下の方法により、乾燥性を評価した。
【0293】
すなわち、各実施例および各比較例で得られた塗料組成物2を、厚さ3mmのガラス板(150mm×70mm)上に、フィルムアプリケーターAP250(太佑機材製)を用いて塗装した。
【0294】
その後、塗装されたガラス板を、23℃、50%RHの室内に静置し、24時間後の乾燥状態を評価した。
【0295】
なお、評価の基準を下記する。
A+:塗面の中央を親指と人差指とで強く挟んで、塗面に指紋によるへこみが付かず、塗膜の動きが感じられず、また、塗面の中央を指先で急速に繰り返しこすって、塗面にすり跡が付かない状態(硬化乾燥)。
A :塗面の中央を指先で静かに軽くこすって塗面にすり跡が付かない状態(半硬化乾燥)。
B :塗面の中央に指先で軽く触れて、指先が汚れない状態(指触乾燥)。
【0296】
【表3】
【0297】
【表4】
【0298】
【表5】
【0299】
なお、表中の略号の詳細を下記する。
【0300】
エヌジェルブCM−275:アルキルメタクリレート、C12アルキルメタクリレートとC14アルキルメタクリレートとの混合物、新日本理化株式会社製
M−5300:アロニックスM−5300、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、東亜合成製