(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明では、自動二輪車1が前進する方向を前として、前後左右の方向を定義する(即ち、自動二輪車1に乗車した運転者から見た方向で左右方向を定義する)。また、鉛直方向上側及び下側を上側及び下側と定義する。また、位置関係、大きさ、又は形状等を説明する用語は、その用語の意味が完全に成立している状態だけでなく、その用語の意味が略成立している状態も含むものとする。また、AがBに取り付けられていると称したときにおいて、AがBに直接取り付けられている構成だけでなく、他の取付部材等を介してAがBに取り付けられている構成も含むものとする。
【0013】
初めに、自動二輪車(鞍乗型車両)1の概要について、
図1から
図4を参照して説明する。
図1は、自動二輪車1の側面図である。
図2は、自動二輪車1のフレーム構成及びラジエータ取付位置を示す拡大側面図である。
図3は、自動二輪車1の平面図である。
図4は、自動二輪車1の正面図である。
【0014】
図1に示すように、自動二輪車1は、エンジン40と、フロントタイヤ41と、リアタイヤ42と、を備える。これらの部材は、
図2に示す車体フレーム10によって支持されている。車体フレーム10は、ヘッドパイプフレーム11と、メインフレーム12と、ロアフレーム13と、リアフレーム17と、リアステー18と、を含んで構成されている。
【0015】
ヘッドパイプフレーム11には、図略のステアリングシャフトを挿入するためのシャフト挿入孔が形成されている。ヘッドパイプフレーム11の上部には、
図1から
図3に示すアッパーブラケット43が取り付けられている。アッパーブラケット43及び図略のロアブラケットには、左右一対で配置されるフロントフォーク44を挿入するためのフォーク挿入孔がそれぞれ形成されている。この構成により、アッパーブラケット43及びロアブラケットは、フロントフォーク44を支持している。フロントフォーク44の下部にはフロントタイヤ41が回転可能に取り付けられている。また、フロントタイヤ41の上部には、フロントフェンダ45が配置されている。
【0016】
ヘッドパイプフレーム11には、メインフレーム12及びロアフレーム13が接続されている。メインフレーム12は、左右一対で配置されており、ヘッドパイプフレーム11の上部から後方(後ろ斜め下方)に延びるようにそれぞれ配置されている。ロアフレーム13は、左右一対で配置されており、ヘッドパイプフレーム11の下部から後方(後ろ斜め下方)に延びるようにそれぞれ配置されている。ロアフレーム13の後端にはエンジン40が取り付けられている。
【0017】
メインフレーム12の後端には、左右一対のリアフレーム17がそれぞれ取り付けられている。リアフレーム17は、メインフレーム12の後端から後方(後ろ斜め上方)に延びるように配置されている。リアフレーム17の下方には、左右一対のリアステー18が配置されている。リアステー18は、後方(後ろ斜め上方)に延びるように配置されている。リアステー18の前端は、フレーム連結部材16を介してリアフレーム17の前端に取り付けられている。
【0018】
リアステー18の前端には、図略のスイングアームブラケットを介して、スイングアーム46が取り付けられている。スイングアーム46は、後方に延びるように配置されており、スイングアーム46の後部にはリアタイヤ42が回転可能に取り付けられている。エンジン40で発生した動力は、図略のドライブチェーンを介してリアタイヤ42に伝達される。
【0019】
アッパーブラケット43には、ステアリングハンドル51が取り付けられている。上述のようにアッパーブラケット43には、フロントフォーク44が取り付けられているため、運転者はステアリングハンドル51を回動させることで、自動二輪車1の操舵を行うことができる。ステアリングハンドル51の前方には、車速、エンジン回転速度、及び警告情報等を表示可能なメータ装置52が配置されている。メータ装置52の更に前方には、前方を照射するためのヘッドランプ53が配置されている。
【0020】
アッパーブラケット43の後方には、エンジン40に供給するための燃料が貯留される燃料タンク54が配置されている。燃料タンク54の下方には、エンジン40が配置されている。燃料タンク54の後方には、運転者が着座するためのシート55が配置されている。シート55の下方には、シート55に着座した運転者が足を載せるためのステップ56が配置されている。運転者は、シート55に着座し、燃料タンク54及びその下方を足で挟み、ステップ56に足を載せることで、体を安定させるとともに重心を左右に移動させて操舵の一部を行う。
【0021】
フロントタイヤ41の後方には、ラジエータ60及びファンシュラウド80が配置されている。ラジエータ60の内部には、エンジン40を冷却するための冷却水(冷却媒体)が流れている。ラジエータ60は、外気との熱交換によって、この冷却水の放熱を行う。具体的には、自動二輪車1の高速走行時には走行風がラジエータ60に当たることで外気と冷却水が熱交換される。一方、自動二輪車1の停止時及び低速走行時には、ラジエータ60の後方(外気流れ方向の上流)に配置されたファンシュラウド80の内部のファン70が外気を吸引することで、ラジエータ60に外気が当たり、冷却水の温度が下げられる。なお、ラジエータ60及びファンシュラウド80の詳細な構成及び配置については後述する。また、ファン70とファンシュラウド80を合わせてラジエータ導風装置100と称する。
【0022】
エンジン40で発生した排気ガスは、エンジン40に接続されたエキゾーストパイプ57を介して排出される。
図2に示すように、エキゾーストパイプ57は、エンジン40の前端かつ上部から前斜め下方に向かって延びるとともに、その後に下方に延びるように配置されている。また、本実施形態の自動二輪車1は多気筒(詳細には二気筒)のエンジン40なので、エンジン40には気筒数に応じた本数のエキゾーストパイプ57が接続されている。この複数のエキゾーストパイプ57は、自動二輪車1の下部(エンジン40の下方)において1つにまとめられて、後方に延びるように配置されている。エキゾーストパイプ57の後端には、排気音を軽減するためのサイレンサ58が接続されている。自動二輪車1の排気ガスは、このサイレンサ58を介して外部へ排出される。
【0023】
自動二輪車1は、
図1等に示すように、フロントカウル21と、サイドカウル24と、を備える。フロントカウル21は、主に車体前部、具体的には
図4等に示すようにヘッドランプ53の周囲、
図1等に示すようにメータ装置52の下方、フロントタイヤ41の上方等の部分に配置されている。
【0024】
サイドカウル24は、主に車体側面、具体的には、
図1等に示すように、燃料タンク54の下方、シート55の前方、フロントタイヤ41の後方、スイングアーム46の前方等の部分に配置されている。サイドカウル24は、複数のカウル部材から構成されている。また、サイドカウル24には、複数の第1カウル開口部31と、第2カウル開口部32と、第3カウル開口部33と、が形成されている。
【0025】
サイドカウル24は、側面視においてフロントカウル21の後方であって、ステアリングハンドル51及び燃料タンク54の下方を含む部分に配置されている。第1カウル開口部31は、側面視においてステアリングハンドル51の下方又は燃料タンク54の下方であって、上下方向の位置がヘッドランプ53と同じかその下方となる位置に形成されている。
【0026】
第2カウル開口部32は、サイドカウル24のうち上下方向の中央部を構成している部分であって、かつ、前後方向において主に燃料タンク54の前部と重なる位置に形成されている。また、第2カウル開口部32は、2つのカウル部材の境界部分に形成されている。第2カウル開口部32は、第1カウル開口部31の下方に形成されている。
【0027】
第3カウル開口部33は、サイドカウル24のうち上下方向の下部を構成している部分であって、かつ、前後方向において主に燃料タンク54の中央部と重なる位置に形成されている。また、第3カウル開口部33は、2つのカウル部材の境界部分に形成されている。
【0028】
次に、ラジエータ60及びラジエータ導風装置100について更に
図5から
図8を参照して詳細に説明する。
図5は、ラジエータ60及びラジエータ導風装置100を前方から見た斜視図である。
図6は、ラジエータ60及びラジエータ導風装置100を後方から見た斜視図である。
図7は、ラジエータ60及びラジエータ導風装置100の側面図である。
図2から
図8では、ラジエータ60に導入される外気(常温外気)、及び、ラジエータ60を通過して高温となった外気(高温外気)の流れを太線の矢印で示している。
図8は、ファンシュラウド80の導風構造を模式的に示す正面図である。
【0029】
図5及び
図6に示すように、ラジエータ60は、導入タンク61と、コア62と、送出タンク63と、を備える。導入タンク61及び送出タンク63は、コア62の左右方向の一方側と他方側に配置されている。本実施形態では、略直方体状のコア62の左側に略直方体状の導入タンク61が配置され、右側に略直方体状の送出タンク63が配置されている。本実施形態では、自動二輪車1の左右方向と、コア62の長手方向と、は同じ方向である。また、ラジエータ60は、上部に近づくに連れて前部に近づくように傾斜して配置されている。
【0030】
図6に示すように、導入タンク61の背面の上部には、アッパホース61aが接続されている。アッパホース61aはエンジン40に接続されており、エンジン40を通過することで高温となった冷却水はアッパホース61aを介して導入タンク61に導入される。コア62には、導入タンク61から高温の冷却水が供給される。コア62は図略のフィン等を備えており、高温の冷却水と外気との熱交換を行うことで、冷却水の温度を低下させる。送出タンク63には、コア62から温度が下がった冷却水が供給される。また、送出タンク63の背面の下部には、ロアホース63aが接続されている。ロアホース63aはエンジン40に接続されており、コア62を通過することで温度が低下した冷却水がエンジン40に再び供給される。また、
図6及び
図7に示すように、送出タンク63の上方には、リザーバタンク69が配置されている。
【0031】
ラジエータ60は、上述のロアフレーム13に取り付けられている。具体的には、
図6及び
図7に示すように、コア62の上側には第1フレーム取付部65aが形成されており、導入タンク61の背面側には第2フレーム取付部65bが形成されており、送出タンク63の背面側には第3フレーム取付部65cが形成されている。また、
図5に示すように、ロアフレーム13は左右一対で配置されており、左右のロアフレーム13は、下方に近づくに連れてロアフレーム13同士の間隔が広くなるように配置されている。第1フレーム取付部65aは、左右一対のロアフレーム13の合流箇所の近傍かつ下方に位置しており、ロアフレーム13の一方(本実施形態では左側)に取り付けられている。また、第2フレーム取付部65bは左側のロアフレーム13に取り付けられており、第3フレーム取付部65cは右側のロアフレーム13に取り付けられている。
【0032】
また、ラジエータ60の上部及び下部には、ラジエータ60とファンシュラウド80を取り付けるためのシュラウド取付部67が形成されている。
【0033】
ラジエータ導風装置100は、ラジエータ60の後部に取り付けられており、外気を吸引することでラジエータ60のコア62に外気を当てる。ラジエータ導風装置100は、ファン70と、ファンシュラウド80と、を備えている。
【0034】
ファン70は、ファンシュラウド80の内部に配置されており、外気を吸引するための吸引流を発生させる。ファン70は、
図8に示すように軸流ファンであり、複数の羽根71aと、羽根71aの径方向外側に設けられるリング部71bと、羽根71aを回転させる動力を発生させる電動のモータ72と、を備えている。また、羽根71aとリング部71bとを合わせて回転部71と称する。回転部71の回転方向は、
図8に鎖線で示すように、正面視で時計回りである。また、羽根71aは、正面視で時計回りに回転することにより、前方から後方へ向かう気体の流れを生じさせる。モータ72は、ファンシュラウド80(詳細には後壁部83)に取り付けられており、ファンシュラウド80の後方からモータ72に電源を供給するハーネスが延びている。
【0035】
ファンシュラウド80は、ファン70を覆うことで、ファン70が吸引した外気をラジエータ60のコア62に適切に当てるとともに、コア62を通過することで高温となった高温外気を外部へ排出する。ファンシュラウド80は、ファン70を径方向外側に広げた略円形の部分と、高温外気を排出するために左右方向外側にへ延びている部分と、を有している。このようにファン70は、コア62と異なり矩形ではない。そのため、コア62には、背面にファンシュラウド80が設けられた第1領域と、ファンシュラウド80が設けられていない第2領域と、が存在する。第1領域は、主として自動二輪車1の停止時及び低速走行時に使用される。また、第2領域は、主として自動二輪車1の高速走行時に使用される。
【0036】
図5から
図7に示すように、ファンシュラウド80には、上壁部81と、下壁部82と、後壁部83と、左排出開口部84と、右排出開口部85と、前方突出部86と、ラジエータ取付部87と、が形成されている。また、ファンシュラウド80は樹脂製であり、金型等を用いて成型されている。
【0037】
上壁部81は、少なくともファン70の上側を覆う部分を含む壁部である。下壁部82は、少なくともファン70の下側を覆う部分を含む壁部である。後壁部83は、上壁部81と下壁部82を接続しており、少なくともファン70の後側を覆う部分を含む壁部である。なお、コア62を通過した高温外気は、これらの壁部によりガイドされ、左右方向外側にそれぞれ設けられた左排出開口部84及び右排出開口部85から排出される(詳細は後述)。
【0038】
前方突出部86は、ファンシュラウド80の下部から前方に突出している。前方突出部86の前端は、ラジエータ60よりも前方である。また、前方突出部86は、後方に近づくに連れて上方(即ちコア62側)に近づくように傾斜した傾斜面(ガイド面)を有している。この構成により、ラジエータ60の下方を流れる外気がコア62を通過するようにガイドすることができる。
【0039】
また、前方突出部86はコア62の下方に設けられているため、路面から跳ねた石等からコア62を保護するという機能も有している。特に、本実施形態では、前方突出部86の左右方向の長さは、フロントタイヤ41(あるいはフロントフェンダ45)の左右方向の長さよりも大きい。更に、正面視において、前方突出部86は、フロントタイヤ41の左端から右端までと重なるように配置されている。言い換えれば、前方突出部86の左端(右端)は、フロントタイヤ41の左端(右端)よりも左側(右側)に位置している。なお、前方突出部86は、左右方向においてフロントタイヤ41と完全に重なっていなくても良く、重なっている範囲が存在すれば、路面から跳ねた石から保護するという効果を発揮することができる。
【0040】
ラジエータ取付部87は、ラジエータ60のシュラウド取付部67に対応する位置に形成されている。即ち、ラジエータ取付部87は、上壁部81から更に上方に突出するように形成されるとともに、下壁部82から更に下方に突出するように形成されている。本実施形態では、上部2箇所及び下部2箇所で、ラジエータ60とファンシュラウド80が連結されている。
【0041】
次に、ラジエータ導風装置100によってガイドされる高温外気の流れについて説明する。なお、気体の流れは様々な要因で変化するとともに、全ての気体が同じ経路に沿って流れる訳ではないため、以下では高温外気の主要な流れについて説明する。
【0042】
ファン70によって吸引された外気は、コア62を通過して高温外気となり、ファンシュラウド80に導入される。ここで、
図7に示すように、回転部71(羽根71a)は、後壁部83に対して隙間を有するように配置されている。従って、羽根71aを通過した高温外気は後壁部83に当たり、後壁部83に沿って進んだ後に、上壁部81及び下壁部82の少なくとも一方にガイドされて排出される。
【0043】
このように、ファンシュラウド80の内壁部は何れも高温外気をガイドする導風ガイドとして機能する。以下では、
図8に示すように、ファンシュラウド80を第1導風ガイド91から第8導風ガイド98に分けて説明する。なお、第1導風ガイド91、第2導風ガイド92、及び第7導風ガイド97は、上壁部81の一部である。また、第3導風ガイド93から第6導風ガイド96は、下壁部82の一部である。なお、第8導風ガイド98は、ファンシュラウド80の内壁部から径方向内側に突出している部分である。
【0044】
以下、それぞれの導風ガイドの形状及び機能について説明する。ここで、羽根71aは正面視で時計回りに回転しているため、回転部71によって吸引された高温外気も正面視で時計回りとなるような流れ(かつ径方向外側へ広がるような流れ)が生じ易くなる。そのため、以下の説明では、上流又は下流と称したときには、正面視で時計回り(回転部71の回転方向)となる方向の流れの上流又は下流を意味する。また、以下では、説明の便宜上、第1導風ガイド91から順番に説明するが、ファン70によって送られた高温外気は、初めに第1導風ガイド91にガイドされるとは限られず、初めに第2導風ガイド92から第8導風ガイド98の何れかにガイドされることもある。
【0045】
第1導風ガイド91は、回転部71(羽根71a)の回転中心と中心が同じであって回転部71よりも大径の円弧状の部分である。言い換えれば、第1導風ガイド91は、回転部71の同心円状の部分を有している。従って、羽根71aと同心の円弧状の第1導風ガイド91を設けることで、高温外気をスムーズに下流側に流すことができる。
【0046】
第2導風ガイド92は、回転部71の回転中心を中心とする円の所定の点から接線方向かつ回転部71の回転方向に延びる直線状のガイドである。従って第2導風ガイド92は、接線導風ガイドである。第2導風ガイド92は、第1導風ガイド91の下流側に接続されている。従って、第2導風ガイド92は、第1導風ガイド91の円弧から延びる接線状のガイドと表現することもできる。また、第2導風ガイド92は、下流側(左右方向外側)に近づくに連れて下方に近づくように傾斜している。この構成により、第1導風ガイド91に沿って円弧状にガイドされていた高温外気の一部をスムーズに左右方向外側かつ下側へガイドすることができる。また、第2導風ガイド92の下流側の端部には別の導風ガイドは接続されておらず、左排出開口部84が形成されている。このように、左排出開口部84は、左右方向外側の端部に形成されている。従って、第2導風ガイド92によって直線状にガイドされた高温外気は外部へ排出される。
【0047】
ここで、第1導風ガイド91は高温外気をスムーズにガイドできるが、第1導風ガイド91にガイドされている段階では、様々な方向へ向かう高温外気が多い。そのため、仮に、第1導風ガイド91から左排出開口部84に直接繋がる場合、高温外気の排出方向を精度良く制御することが困難である。この点、第2導風ガイド92を設けることにより、所望の方向(詳細は後述)へ高温外気を排出できる。
【0048】
第1導風ガイド91及び第2導風ガイド92を通過した高温外気は、全て第2導風ガイド92に沿うようにガイドされる訳ではなく、下方に向かうように流れる高温外気もあれば、時計回りに回転するように流れる高温外気も存在する。
【0049】
第3導風ガイド93は、第2導風ガイド92の下方及び左右方向外側を含む位置に形成されている。左排出開口部84は、第2導風ガイド92、第3導風ガイド93、及びそれらを接続する後壁部83によって形成されている。第3導風ガイド93は、下流側(左右方向外側)に近づくに連れて下方に近づくように傾斜している直線状のガイドである。この構成により、第2導風ガイド92から下方に流れた高温外気をスムーズに左右方向外側かつ下側にガイドすることができる。特に、本実施形態では第3導風ガイド93と第2導風ガイド92はともに下方かつ左右方向外側へ向いているため、高温外気を同じ方向(所望の方向)へガイドすることができる。また、第3導風ガイド93は、第2導風ガイド92よりも左右方向の外側に位置しているため、第2導風ガイド92から真下方向に向かう高温外気だけでなく、斜め下方に向かう高温外気も第3導風ガイド93でガイドできる。
【0050】
第4導風ガイド94は、第3導風ガイド93の左右方向内側に接続されている。第4導風ガイド94は、回転部71の回転中心を中心とする円の所定の点から接線方向かつ回転部71の回転方向に延びる直線状のガイドである。従って第4導風ガイド94は、接線導風ガイドである。第4導風ガイド94は、第3導風ガイド93とは反対側に傾斜しており、第3導風ガイド93とは左右方向の反対側に高温外気をガイドする。
【0051】
第5導風ガイド95は、第4導風ガイド94の一端側(下流側)に接続されている。第5導風ガイド95は、第4導風ガイド94と同様、接線導風ガイドである。第5導風ガイド95は、第4導風ガイド94によってガイドされた高温外気等をガイドする。また、第5導風ガイド95は第4導風ガイド94と同様に右下がりに傾斜しているが、傾斜角度は第4導風ガイド94より小さい。
【0052】
第6導風ガイド96は、第5導風ガイド95の一端側(下流側、左右方向外側)に接続されている直線状の導風ガイドである。第6導風ガイド96は、第5導風ガイド95によってガイドされた高温外気等をガイドする。また、第6導風ガイド96の下流側の端部には別の導風ガイドは接続されておらず、右排出開口部85が形成されている。このように、右排出開口部85は、左右方向の外側に形成されている。第6導風ガイド96によって直線状にガイドされた高温外気は右排出開口部85から外部へ排出される。第6導風ガイド96は第5導風ガイド95と同じ方向に傾斜しているが、傾斜角度は第5導風ガイド95より大きい。また、第6導風ガイド96と第3導風ガイド93は、傾斜角度(傾斜面と鉛直方向とがなす鋭角)の大きさは同じである。そのため、高温外気を左右で同じ角度にガイドできる。
【0053】
第7導風ガイド97は、第6導風ガイド96の上方に形成されている直線状の導風ガイドである。右排出開口部85は、第6導風ガイド96、第7導風ガイド97、及びそれらを接続する後壁部83によって形成されている。また、第7導風ガイド97の傾斜角度は、第6導風ガイド96の傾斜角度と同じである。この構成により、所望の方向へ高温外気を排出できる。
【0054】
第8導風ガイド98は、第7導風ガイド97の左右方向内側に接続されているとともに、第7導風ガイド97から更に左右方向内側に延びる導風ガイドである。第8導風ガイド98の左右方向の内側の端部は、回転軸方向で見たときに、回転部71と重なっている。この構成により、時計回りに流れる高温外気を第7導風ガイド97に沿う方向にガイドすることができる。
【0055】
このように、高温外気は、それぞれの導風ガイドによってスムーズに案内される。特に、本実施形態では、円弧状のガイド(第1導風ガイド91)及び接線導風ガイド(第2導風ガイド92、第4導風ガイド94、及び第5導風ガイド95)を含んでいるため、高温外気に渦(乱流)等が発生しにくい。従って、高温外気を一層スムーズに排出できる。更に、本実施形態では、各導風ガイドは、高温外気の回転方向に合わせた形状となっている。そのため、各導風ガイド(特に接線導風ガイド)は左右方向の中央を通る仮想線に対して非対称となっている。以上により、高温外気を一層スムーズに排出できる。その結果、ラジエータ導風装置100は新たな外気を吸引し易くなるため、ラジエータ60の冷却効率を上昇させることができる。
【0056】
次に、高温外気を排出する方向について説明する。仮に、後壁部83が設けられておらず、高温外気をファンシュラウド80から真後ろに排出した場合を考える。本実施形態の自動二輪車1では、ラジエータ60の後方にエンジン40が配置されているため、高温外気を真後ろに排出した場合、高温外気がエンジン40によって更に高温となり、周囲に拡散する可能性がある。更に、本実施形態の自動二輪車1はサイドカウル24を備えるため、側面からの放熱が生じにくく、サイドカウル24内で熱が滞留又は循環する可能性がある。
【0057】
また、仮に下壁部82が設けられておらず、高温外気をファンシュラウド80から真下に排出した場合を考える。本実施形態ではファンシュラウド80の下方にエキゾーストパイプ57が配置されているため、高温外気を真下に排出した場合、高温外気が高温のエキゾーストパイプ57に当たる。その結果、高温外気が更に高温となり、周囲に拡散する可能性がある。また、本実施形態の自動二輪車1はサイドカウル24を備えるため、側面からの放熱が生じにくく、サイドカウル24内で熱が滞留又は循環する可能性がある。
【0058】
また、仮に上壁部81が設けられておらず、高温外気をファンシュラウド80から真上に排出した場合、ファンシュラウド80の上方は燃料タンク54等によって閉鎖されているため、高温外気を適切に排出することができない。
【0059】
ここで、ファンシュラウド80から排出される高温外気を左右方向外側にのみ排出する場合、後方に流れた高温外気が運転者に当たり易くなる。以上を考慮し、本実施形態では、ファンシュラウド80の左右方向の端部に形成された左排出開口部84及び右排出開口部85から、左右方向外側かつ下側を成分として含む方向に高温外気を排出する。以上により、高温外気を効率的に自動二輪車1の外部に排出しつつ、高温外気が運転者へ当たることを防止できる。
【0060】
また、本実施形態では、上述したように、ラジエータ60及びファンシュラウド80は、傾斜して配置されている。従って、後壁部83は、下方に近づくに連れて後方に近づくように傾斜している。従って、
図2等に示すように、高温外気は、後方の成分を有する方向に排出される。ここで、ファン70は外気を後方に向かって吸引するため、排出時も後方の成分を含ませることで、高温外気の流れにも依存するが、高温外気をスムーズに排出できる可能性がある。
【0061】
左排出開口部84及び右排出開口部85から排出された高温外気は、サイドカウル24に形成された第2カウル開口部32を介して外部に排出される。そのため、第2カウル開口部32は、左排出開口部84又は右排出開口部85の延長線上に形成されている。言い換えると、左側においては、
図4等に示すように、左排出開口部84をガイド方向(第2導風ガイド92又は第3導風ガイド93の傾斜方向)に延長した仮想空間の少なくとも一部が、第2カウル開口部32を通る。同様に、右側においては、右排出開口部85をガイド方向(第6導風ガイド96又は第7導風ガイド97の傾斜方向)に延長した仮想空間の少なくとも一部が、第2カウル開口部32を通る。更に、本実施形態では、左排出開口部84又は右排出開口部85から、第2カウル開口部32までの経路において、第2カウル開口部32を塞ぐような別の部材は配置されていない。従って、
図2に示すように、側面視において第2カウル開口部32から右排出開口部85を視認することができる(左側も同様)。
【0062】
また、本実施形態では、第2カウル開口部32は、上述のように、燃料タンク54(詳細には燃料タンク54の前部)の下方に位置している。そのため、第2カウル開口部32は、シート55及びステップ56よりも比較的前方に形成されている。そのため、第2カウル開口部32から排出された高温外気が運転者に当たりにくい構成となっている。
【0063】
以上の構成により、左排出開口部84又は右排出開口部85から排出された高温外気を効率的に自動二輪車1の外部に排出することができる。そのため、ラジエータ60の周囲(特に後方)の温度が上がりにくくなる。そのため、電装部品等のレイアウトの自由度を向上させることができる。例えばラジエータ60の後端よりも後方であって、燃料タンク54の後端よりも前方にエンジン40の上方にECU等の電装品を配置することも可能である。
【0064】
以上に説明したように、本実施形態の自動二輪車1は、ラジエータ60と、ファン70と、ファンシュラウド80と、を備える。ラジエータ60は、外気と冷却媒体との熱交換により冷却媒体の温度を下げる。ファン70は、外気を吸引することで、外気流れ方向の上流側に配置されたラジエータ60に外気を当てる。ファンシュラウド80は、ファン70の少なくとも一部を覆うとともに、ファン70が吸引してラジエータ60を通過した外気である高温外気を外部に排出する。ファンシュラウド80には、排出開口部(左排出開口部84及び右排出開口部85)と、導風ガイド(第1導風ガイド91から第8導風ガイド98)と、が形成されている。排出開口部は、高温外気を外部に排出する。導風ガイドは、高温外気が、排出開口部から、左右方向外側を成分として含む方向に向かって排出されるように当該高温外気をガイドする。
【0065】
これにより、高温外気を左右方向外側に排出できるため、自動二輪車1を構成する部材に高温外気が当たりにくくなるので、排熱性を向上させることができる。そのため、耐熱用の保護部材等の使用量が低減できる場合は、自動二輪車1のコストを下げることができる。また、電装部品等のレイアウトの自由度を向上させることができる。
【0066】
また、本実施形態の自動二輪車1において、導風ガイドは、左右方向外側かつ下側である斜め下方から高温外気が排出されるようにガイドする。
【0067】
これにより、高温外気の排出方向において、下方を避けることで自動二輪車1を構成する部材に高温外気が更に当たりにくくなる。
【0068】
また、本実施形態の自動二輪車1において、エンジン40で発生した排気ガスが通るエキゾーストパイプ57を備える。導風ガイドは、正面視において、水平方向よりも下側であって、かつ、エキゾーストパイプ57に向かう方向を避けた方向から高温外気が排出されるようにガイドする。
【0069】
これにより、高温外気が高温のエキゾーストパイプ57に当たりにくくなる。そのため、高温外気がエキゾーストパイプ57によって更に高温化しにくくなるので、排熱性の低下を防止できる。
【0070】
また、本実施形態の自動二輪車1において、ファン70は、羽根71aを回転させることで外気の吸引を行う。ファン70の回転軸方向で見たときに、導風ガイドは、ファン70の回転中心を中心とする円の所定の点から接線方向かつファン70の回転方向に延びる接線導風ガイド(第2導風ガイド92、第4導風ガイド94、第5導風ガイド95)を含む。
【0071】
これにより、高温外気が整流されるので、高温外気が外部に排出され易くなり、排熱性を一層向上させることができる。
【0072】
また、本実施形態の自動二輪車1において、ファンシュラウド80には、左方向外側を成分として含む方向に高温外気を排出する左排出開口部84と、右方向外側を成分として含む方向に高温外気を排出する右排出開口部85と、が形成されている。接線導風ガイドには、左排出開口部84に向けて高温外気をガイドするもの(第2導風ガイド92)と、右排出開口部85に向けて高温外気をガイドするもの(第4導風ガイド94及び第5導風ガイド95)と、が含まれている。ファン70の回転軸方向で見たときに、接線導風ガイドが左右方向の中央を通る仮想線に対して非対称である。
【0073】
これにより、排出開口部及び接線導風ガイドが左右両方に設けられることとなるので、高温外気が更に外部に排出され易くなるため、排熱性をより一層向上させることができる。
【0074】
また、本実施形態の自動二輪車1において、ファンシュラウド80には、ファン70の下方側を覆う下壁部82が形成されている。
【0075】
これにより、高温外気が下方に流れにくくなるため、自動二輪車1を構成する部材に高温外気が更に当たりにくくなる。
【0076】
また、本実施形態の自動二輪車1において、ラジエータ60の下方の少なくとも一部を覆うとともに、後方に近づくに連れて上方に近づくように傾斜又は湾曲しているガイド面を有する前方突出部86を備える。
【0077】
これにより、外気がラジエータ60に導入され易くなる。また、地面から石等が跳ねた場合でもラジエータ60が破損しにくくなる。
【0078】
また、本実施形態の自動二輪車1において、ファン70は軸流ファンである。ファンシュラウド80には、ファン70の後方側を覆う後壁部83が形成されている。導風ガイドは、後壁部83に当たった高温外気をガイドして排出開口部から排出する。
【0079】
後壁部83が形成されていることで、高温外気が後方に流れることを防止できる。また、後壁部83が形成されていることで、軸流ファンを用いた場合であっても、高温外気を左右方向外側を成分として含む方向に排出し易くなる。
【0080】
また、本実施形態の自動二輪車1は、少なくともファンシュラウド80の左右方向外側に配置されるカウル(フロントカウル21、サイドカウル24)を備える。カウルには、ファンシュラウド80の排出開口部から排出された高温外気を外部へ排出するための第2カウル開口部32が形成されている。
【0081】
これにより、カウルを備える自動二輪車1であっても、高温外気を外部に排出し易くできる。
【0082】
また、本実施形態の自動二輪車1において、排出開口部をガイド方向に延長した仮想空間の少なくとも一部が、第2カウル開口部32を通る。
【0083】
これにより、第2カウル開口部32を介して高温外気が更に外部に排出され易くなる。
【0084】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0085】
<カウル>上記実施形態の自動二輪車1は複数のカウルを備えるが、カウルを配置する位置、カウルを分割する位置、カウルに形成する開口部は、上記実施形態で示した構成に限られない。また、第2カウル開口部32は、複数のカウルの境界ではなく、単一のカウルに形成された貫通孔であっても良い。
【0086】
<ラジエータ>上記実施形態では、ラジエータ60は傾斜して配置されている。これに代えて、ラジエータを傾斜させずに(側面視においてラジエータの前面が鉛直方向に沿うように)配置しても良い。また、上記実施形態ではコア62は略直方体状であるが、コアが湾曲している(具体的には左右方向外側に近づくに連れて前方に近づくように湾曲している)形状であっても良い。上記実施形態では、コア62の左右方向の外側に導入タンク61及び送出タンク63が配置されるが、コアの上下方向の外側に導入タンク及び送出タンクが配置される構成であっても良い。また、ラジエータ60の取付構造及び取付位置等が上記実施形態と異なっていても良い。
【0087】
<ファン>上記実施形態ではファン70は軸流ファンであるが遠心ファンであっても良い。また、羽根71aの枚数は何枚であっても良いし、リング部71bが設けられていなくても良い。上記実施形態ではファン70はファンシュラウド80に取り付けられているが、別の部材(例えばラジエータ60)に取り付けられていても良い。なお、自動二輪車1の高速走行時にファン70を回転させても良いし、自動二輪車1の低速走行時にファン70の回転を停止させても良い。
【0088】
<ファンシュラウドの全体構成>上記実施形態のファンシュラウド80は、円形の部分と左右方向に延びる部分とから構成されているが、異なる形状(例えば円形部分が直方体形状)であっても良い。また、上記実施形態のファンシュラウド80は、上壁部81、下壁部82、及び後壁部83を備えるが、少なくとも1つが省略されていたり、各壁部の一部に開口部が形成されていても良い。また、ファンシュラウド80は、ラジエータ60の一部ではなく全体を覆う構成であっても良い。また、ファンシュラウド80は、ラジエータ60に取り付けられているが、別の部材に取り付けられていても良い。
【0089】
<前方突出部>上記実施形態では前方突出部86はラジエータ60の下方に配置されているが、別の位置(例えばラジエータ60の側方又は上方)に配置されていても良い。また、前方突出部86は、省略されていても良いし、ファンシュラウド80とは別の部材であっても良い。
【0090】
<導風ガイド>上記実施形態では、様々な特徴を有する複数の導風ガイドを説明したが、全てを備えている必要はなく、一部のみを備える構成であっても良い。従って、接線導風ガイドを備えない構成であっても良いし、接線導風ガイドが左右対称であっても良い。また、上記実施形態では、左右方向の両側から高温外気を排出するが、左右方向の一方のみから高温外気を排出する構成であっても良い。
【0091】
<駆動源>上記実施形態では、自動二輪車1は動力機関(駆動源)としてエンジン40を備える構成であるが、エンジンに代えて又は加えて他の動力機関である電動モータを用いても良い。この場合、ラジエータは、電動モータ及びインバータのうち少なくとも何れかで発生した熱を冷却するために用いられる。
【0092】
<本発明の適用対象>本実施形態では、舗装地でのスポーツ走行を主目的とする自動二輪車に本発明を適用する例を説明したが、他の自動二輪車(モトクロスタイプ、ネイキッドタイプ、又はクルーズタイプ等)にも本発明を適用できる。また、本発明は、自動二輪車以外の他の鞍乗型車両(運転者が跨って乗る車両)に適用することができる。他の鞍乗型車両としては、主として非舗装地を走行するための全地形対応車(ATV、All Terrain Vehicle)、水上オートバイ(PWC、Personal Water Craft)等を挙げることができる。