【実施例】
【0054】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0055】
[実施例1]
まず、ポリビニルアルコールの完全ケン化物(ケン化度98mol%)1.5kgを水に加熱溶解させて、6500mlの23wt%水溶液を得た。該水溶液に、フェノール樹脂0.75kgを水溶液としたものを加え、更に気孔生成剤として馬鈴薯デンプン1kg(平均粒子径45μm)を加えた。
【0056】
次に、37%ホルムアルデヒド水溶液を1000ml加えた後、炭化ケイ素から成る砥粒(GC#3000、平均粒子径4μm)を7kg加えて混合し、均一なスラリーを調製した。続いて、該スラリーに酸触媒として70%濃硫酸水溶液を1000ml加えた。なお、これらの混合調製は、ゲージ圧が−0.09MPaの減圧下で行った。
【0057】
調製したスラリーを型枠に注入して、60℃で24時間保持し、アセタール化反応を進行させて固化させた。固化したものを型枠から取り出して水洗し、未反応のホルムアルデヒドと硫酸を除去した。その後、乾燥させて、更に120℃で20時間の熱処理を行った。熱処理を施したものを所望の形状に加工して砥石を完成させた。
【0058】
作製した砥石を用いて、円周600mm、長さ1100mm、ビッカース硬度220HVの銅がメッキされたグラビア製版ロールに湿式研磨を行った。研磨前後の表面粗さと光沢度を測定して砥石の研磨性能を評価した。ここでは、(株)ミツトヨ製SV−3100を用いて、JIS B 0601:1994の表面粗さ規格に基づいて算術平均粗さRaを測定した。また、コニカミノルタ(株)製MULTI GLOSS 268を用いて、JIS Z 8741:1997の鏡面光沢度‐測定方法に基づいて測定角度60°の鏡面光沢度を測定した。
【0059】
評価結果を表1に示す。研磨前のワークの表面粗さRaが0.148μmであったのに対し、研磨後の表面粗さRaは0.017μmであった。また、光沢度は、研磨前が150であったのに対して、研磨後は580であった。
【0060】
なお、表1には、参考としてバフ研磨前後の表面粗さと光沢度を併せて示す(比較例11)。この結果から、本発明の砥石を用いれば、バフ研磨と同等の鏡面研磨が可能であることがわかった。
【0061】
[実施例2]
実施例2では、気孔生成剤としてコーンスターチ(平均粒子径45μm)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で砥石を作製した。
【0062】
作製した砥石について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。実施例2の砥石も、バフ研磨と同等の鏡面研磨が可能であることがわかった。
【0063】
[実施例3]
実施例3では、砥粒としてGC#4000、平均粒子径3μmの炭化ケイ素粉末を用いた以外は、実施例1と同様の方法で砥石を作成した。
【0064】
作製した砥石について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。実施例3の砥石も、バフ研磨と同等の鏡面研磨が可能であることがわかった。
【0065】
[実施例4]
実施例4では、砥粒としてGC#2500、平均粒子径6μmの炭化ケイ素粉末を用いた以外は、実施例1と同様の方法で砥石を作成した。
【0066】
作製した砥石について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。実施例4の砥石も、バフ研磨と同等の鏡面研磨が可能であることがわかった。
【0067】
[実施例5]
実施例5では、砥粒の配合量を、砥粒とポリビニルアルコールと熱硬化性樹脂の合計量の70質量%とし、ポリビニルアルコールとフェノール樹脂の配合量を30質量%とした以外は、実施例1と同様の方法で砥石を作成した。
【0068】
作製した砥石について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。実施例5の砥石も、バフ研磨と同等の鏡面研磨が可能であることがわかった。
【0069】
[実施例6]
実施例6では、砥粒の配合量を、砥粒とポリビニルアルコールと熱硬化性樹脂の合計量の80質量%とし、ポリビニルアルコールとフェノール樹脂の配合量を20質量%とした以外は、実施例1と同様の方法で砥石を作成した。
【0070】
作製した砥石について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。実施例6の砥石も、バフ研磨と同等の鏡面研磨が可能であることがわかった。
【0071】
[実施例7]
実施例7では、ポリビニルアルコールの配合量を、ポリビニルアルコールと熱硬化性樹脂の合計量の50質量%とした以外は、実施例1と同様の方法で砥石を作成した。
【0072】
作製した砥石について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。実施例7の砥石も、バフ研磨と同等の鏡面研磨が可能であることがわかった。
【0073】
[実施例8]
実施例8では、ポリビニルアルコールの配合量を、ポリビニルアルコールと熱硬化性樹脂の合計量の80質量%とした以外は、実施例1と同様の方法で砥石を作成した。
【0074】
作製した砥石について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。実施例8の砥石も、バフ研磨と同等の鏡面研磨が可能であることがわかった。
【0075】
[実施例9]
実施例9では、気孔生成剤の平均粒子径を30μmとした以外は、実施例1と同様の方法で砥石を作製した。
【0076】
作製した砥石について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。実施例9の砥石も、バフ研磨と同等の鏡面研磨が可能であることがわかった。
【0077】
[実施例10]
実施例10では、気孔生成剤の平均粒子径を60μmとした以外は、実施例1と同様の方法で砥石を作製した。
【0078】
作製した砥石について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。実施例10の砥石も、バフ研磨と同等の鏡面研磨が可能であることがわかった。
[実施例11]
実施例11では、気孔生成剤の配合量をポリビニルアルコールと熱硬化性樹脂の合計量の40質量%とした以外は、実施例1と同様の方法で砥石を作製した。
【0079】
作製した砥石について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。実施例11の砥石も、バフ研磨と同等の鏡面研磨が可能であることがわかった。
【0080】
[実施例12]
実施例12では、気孔生成剤の配合量をポリビニルアルコールと熱硬化性樹脂の合計量の50質量%とした以外は、実施例1と同様の方法で砥石を作製した。
【0081】
作製した砥石について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。実施例12の砥石も、バフ研磨と同等の鏡面研磨が可能であることがわかった。
【0082】
[比較例1]
比較例1では、砥粒としてGC#1500、平均粒子径7μmの炭化ケイ素粉末を用いた以外は、実施例1と同様の方法で砥石を作製した。
【0083】
作製した砥石について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。比較例1の砥石では、研磨後の表面粗さRaが大きく、光沢度も低い値となり、鏡面研磨はできなかった。これは、砥粒の粒子径が大きく、鏡面研磨を行うには研削力が強すぎるためと考えらえる。
【0084】
[比較例2]
比較例2では、砥粒としてGC#6000、平均粒子径2μmの炭化ケイ素粉末を用いた以外は、実施例1と同様の方法で砥石を作製した。
【0085】
作製した砥石について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。比較例2の砥石では、研磨後の表面粗さRaが大きく、光沢度も低い値となり、鏡面研磨はできなかった。これは、砥粒の粒子径が小さく、鏡面研磨を行うには研削力が弱すぎるためと考えらえる。
【0086】
[比較例3]
比較例3では、砥粒の配合量を、砥粒とポリビニルアルコールと熱硬化性樹脂の合計量の85質量%とし、ポリビニルアルコールとフェノール樹脂の配合量を15質量%とした以外は、実施例1と同様の方法で砥石を作製した。
【0087】
作製した砥石について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。比較例3の砥石では、研磨後の表面粗さRaが大きく、光沢度も低い値となり、鏡面研磨はできなかった。これは、砥石の砥粒配合率が高すぎて砥石の研磨面で目詰まりが発生したためと考えらえる。
【0088】
[比較例4]
比較例4では、砥粒の配合量を、砥粒とポリビニルアルコールと熱硬化性樹脂の合計量の60質量%とし、ポリビニルアルコールとフェノール樹脂の配合量を40質量%とした以外は、実施例1と同様の方法で砥石を作製した。
【0089】
作製した砥石について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。比較例4の砥石では、研磨後の表面粗さRaが大きく、光沢度も低い値となり、鏡面研磨はできなかった。これは、ポリビニルアセタール樹脂と熱硬化性樹脂の含有量が増えて砥粒の自己脱落が生じにくくなり、砥石の研磨面で目詰まりが発生したためと考えらえる。
【0090】
[比較例5]
比較例5では、ポリビニルアルコールの配合量を、ポリビニルアルコールと熱硬化性樹脂の合計量の42質量%とした以外は、実施例1と同様の方法で砥石を作製した。
【0091】
作製した砥石について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。比較例5の砥石では、研磨後の表面粗さRaが大きく、光沢度も低い値となり、鏡面研磨はできなかった。これは、ポリビニルアセタール樹脂の含有量が減り、砥石の弾性が低下したためと考えられる。
【0092】
[比較例6]
比較例6では、ポリビニルアルコールの配合量を、ポリビニルアルコールと熱硬化性樹脂の合計量の92質量%とした以外は、実施例1と同様の方法で砥石を作製した。
【0093】
作製した砥石について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。比較例6の砥石では、研磨後の表面粗さRaが大きく、光沢度も低い値となり、鏡面研磨はできなかった。これは、ポリビニルアセタール樹脂の含有量が増えて耐水性が低下し、研磨中に膨潤して目詰まりが発生したためであると考えらえる。
【0094】
[比較例7]
比較例7では、気孔生成剤の平均粒子径を15μmとした以外は、実施例1と同様の方法で砥石を作製した。
【0095】
作製した砥石について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。比較例7の砥石では、研磨後の表面粗さRaが大きく、光沢度も低い値となり、鏡面研磨はできなかった。これは、気孔径が小さく弾性や研磨屑の排出性が低いためであると考えられる。
【0096】
[比較例8]
比較例8では、気孔生成剤の平均粒子径を70μmとした以外は、実施例1と同様の方法で砥石を作製した。
【0097】
作製した砥石について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。比較例8の砥石では、研磨後の表面粗さRaが大きく、光沢度も低い値となり、鏡面研磨はできなかった。これは、気孔径が大きくなり鏡面研磨を行うには研削力が弱すぎるためと考えらえる。
【0098】
[比較例9]
比較例9では、気孔生成剤の配合量をポリビニルアルコールと熱硬化性樹脂の合計量の30質量%とした以外は、実施例1と同様の方法で砥石を作製した。
【0099】
作製した砥石について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。比較例9の砥石では、研磨後の表面粗さRaが大きく、光沢度も低い値となり、鏡面研磨はできなかった。これは、気孔が少ないため弾性が十分でなく、かつ目詰まりも発生したためであると考えらえる。
【0100】
[比較例10]
比較例10では、気孔生成剤の配合量をポリビニルアルコールと熱硬化性樹脂の合計量の60質量%とした以外は、実施例1と同様の方法で砥石を作製した。
【0101】
作製した砥石について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。比較例10の砥石では、研磨後の表面粗さRaが大きく、光沢度も低い値となり、鏡面研磨はできなかった。これは、気孔が多くて鏡面研磨を行うには研削力が強すぎるためと考えらえる。
【0102】
【表1】
【0103】
表1に示されるように、実施例1〜12で作製した鏡面仕上げ用砥石は、バフ研磨と同等の鏡面研磨が可能であることがわかる。また、本発明の範囲を超えた材料を用いて作製した比較例1〜10は、研磨後の表面粗さRaが大きく、光沢度も低い値となり、鏡面研磨はできなかった。
【0104】
以上のことから、本発明であれば、銅メッキのような軟質金属を鏡面研磨することができる砥石を製造できることが明らかになった。
【0105】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。