(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
バインダーを含み、前記バインダーが、カオリン、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト、アタパルジャイト、セピオライト、モンモリロナイト、ベントナイト、イライトおよびメタカオリンならびにあらゆる割合のこれらの2つ以上の混合物から選ばれる粘土または粘土の混合物を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のゼオライト吸着材料。
165℃から185℃の温度にて行い、ならびに炭素原子8個を含有する芳香族炭化水素異性体の画分を含む前記供給原料におよび/または前記脱着剤に、水を添加することによって、炭化水素系溶離液中の含水率を20ppmから150ppmの間に調整する、請求項23から25のいずれか一項に記載のパラキシレンを分離する方法。
【背景技術】
【0002】
パラキシレンは、石油化学の主要な中間体の1つである。パラキシレンは、テレフタル酸無水物もしくはテレフタル酸に、またはメチルテレフタレートに変換されて、次に続いて、例えばジエチレングリコールと重縮合される。得られたポリエステルPETは次いで、とりわけテキスタイル工業向けの、飲料などを包装するための合成繊維または合成樹脂に変換される。
【0003】
パラキシレンは一般に他のC8芳香族異性体から、結晶化によって、または模擬移動床吸着としても既知の工業的クロマトグラフィーによって分離される。結晶化による分離技法は現在、パラキシレンの全生産量の20%未満に相当するのに対して、模擬移動床吸着による分離は現在、パラキシレンのこの生産量の約80%から約85%に相当する。最後に、パラキシレンの全生産量の約2%は、結晶化が仕上げ工程として使用される、上述の2つの技術の組み合せから得られる。
【0004】
工業的クロマトグラフィー分離技法は、液相または気相で行われるが、工業的クロマトグラフィーによる分離は、最も一般的には液相で行われる。
【0005】
模擬移動床分離は本明細書において、広い意味で理解され、即ち模擬向流または模擬並流、即ち「Varicol」法のいずれかであり得る。この種の方法に共通の特徴は、固体吸着材料が固定床で使用され、吸着材料と接触している液体または場合により気体状である流れが、1組の開閉バルブまたはロータリーバルブとして既知の複合シングルバルブ(complex single valve)のどちらかによって制御される。
【0006】
これらの方法で吸着剤として使用される固体吸着材料の有効成分がゼオライトである場合、ゼオライトは、粉末(結晶)の形態で得られ、好ましくは、工業規模において凝集体の形態で使用される。プレートレット、ビーズまたは押出物の形態で凝集したこれらのゼオライト吸着材料は一般に、吸着に関して有効成分を構成するゼオライト粉末と、一般に細粒として既知である、ビーズまたは押出物の形態における結晶の結合性を確保するためのバインダーとから成る。
【0007】
このバインダーは細粒に、細粒がユニット内で使用される間に受ける機械的応力に十分に耐える機械的強度も与える。これらの機械的応力は微粉が形成される原因であり、微粉は方法の操作時間中に性能の低下を生じる。
【0008】
キシレンを擬似移動床(SMB)で分離する方法は、とりわけ流体分配プラトーに関して、この数十年の間に多くの技術的改善を経たが、固体吸着材料の粒子の粒度特性に関しては比較的わずかな変化しかなかった。
【0009】
パラキシレンの分離に使用されるゼオライト吸着材料の化学的特性および微視的特性について記載した先行文献は特に多数あり、例えば例として、特許US3558730、US3663638、US3960774、US7820869、US7812208、US8283274、US8530367およびUS8735643が挙げられる。
【0010】
これらの固体吸着材料の化学的特性に関する一般的な教示は、フォージャサイト構造のゼオライト(ゼオライトLSX、XまたはY)を使用する必要があることであり、該ゼオライトにおける補償イオンは、多量のBa
2+イオンまたは多量のBa
2+イオンおよび少量のK
+イオンである。
【0011】
さらに、吸着材料の微視的特性に関する一般的教示は、好ましくは大きさが1.6μm未満(数平均径)のゼオライトX結晶が使用され得るということである。最新の文献の幾つかは、上記の従来の吸着材料と比べてこれらの吸着材料の物質移動が向上したことにより、キシレン異性体の分離方法の性能を改善するための、サイズが0.5μm未満(US2009/326308)またはサイズが0.1μmから0.4μmの間(CN1267185C)のゼオライトX結晶を主成分とする吸着材料の使用について教示している。
【0012】
さらに触媒の、とりわけ水素化分解法の分野において、ゼオライト担体を使用する場合、合成後処理によってゼオライトFAU(ゼオライトY)結晶にメソ細孔を作ることによって、前記ゼオライトのミクロ細孔への分子のアクセス性を改善しようとすることが慣行である。
【0013】
Inayatら(Angew.Chem.Int.Ed.,(2012),
51,1962−1965)による研究は、メソ細孔性ゼオライトX結晶の合成が可能であることを教示している。このため、ミクロ細孔へのアクセス性が、従来のX結晶のアクセス性と比べて改善されることが期待できる。結果として、当業者は、このようなメソ細孔性ゼオライトX結晶を使用して、キシレン異性体の分離のための効率的な吸着材料を形成したいという傾向にある。
【0014】
しかし、本文献(Inayat,ibid.)は、従来のゼオライトNaXと比べて、合成したメソ細孔性ゼオライトNaXでは、ミクロ細孔容積の23%が消失したことを示している。このことは、キシレン異性体の分離に使用する吸着材料に望まれる、可能な限り大きい選択的吸着容積とは完全に矛盾している。
【0015】
仮説的な物質移動の増大と確認されたミクロ細孔容積の消失との間には、キシレン異性体分離のための、メソ多孔性ゼオライトX結晶を用いて調製した吸着材料の性能が予測できないという観察結果は、避けられない。
【0016】
他方、吸着材料の巨視的特性に関する一般的教示は、最終生成物が含有する非ゼオライト相の量が減少するように、塩基性のアルカリ性溶液の作用の下でバインダーをゼオライトに変換することによって、有効物質の含有率を上昇できるということであり、該非ゼオライト相の量は、粉末形態のゼオライトのみで構成される吸着材料を参照することにより、吸着測定値からまたはXRDピーク強度から定量化され得る。吸着を目的とするバインダーの有効物質へのこのような変換により、さらに、凝集体の機械的強度を維持することが可能となり(US8530367)、機械強度の維持は、吸着材料がユニット内で使用される際に機械的応力に耐えるために必要である。
【0017】
模擬移動床法の分布プラトー技術に関連して、ゼオライト吸着材料の粒度分析特性および形態特性について正確に記載する先行技術文献は、さらにはるかにまれであり、著しく正確ではない。現在、当業者はとりわけ、吸着材料の形成に使用されるゼオライトX結晶の性質の関数として、吸着材料の最適な粒径特性を選択する方法を教示する、いずれの文献も有していないように思われる。
【0018】
先に挙げた文献の幾つか(例えばUS3960774、US7812208、US2009/326308)は、吸着材料で使用するゼオライトX結晶の直径とは無関係に、0.25mmから1.2mm(16−60標準米国メッシュサイズ)の範囲に及ぶ粒径カテゴリ内の押出物、球状物またはビーズの形態の吸着材料を得るための、通常の凝集技法(押出、場合により、円錐台形ミキサー、例えばNautamix(R)における、造粒ドラム、球状化装置における、粉砕、凝集が後続)について記載している。文献US2011/105301の実施例1において、著者らは、粒状化ドラムにおける凝集(「タンブリング」)と、後続の、0.35mmから0.8mmの範囲に及ぶ粒径カテゴリでのふるい分けによって得た、凝集形態の吸着材料を開示している。
【0019】
これらの文献において、吸着材料の粒径に関する数値表示は、実際には、凝集体の選択に使用する2枚のガーゼのメッシュ開口に相当し、即ちこれらは分布の最小および最大の凝集体の下限および上限に相当するが、平均径値は示していない。
【0020】
特許CN1267185は、工業ユニットにおける吸着材料の充填を改善するための、狭い粒径分布の重要性を強調している。CN1267185は、サイズが0.1μmから0.4μmの間で、0.35mmから0.8mmの間の直径を有する粒子形態の、以下の分布:粒径カテゴリ0.60mmから0.80mmが20重量%から25重量%、粒径カテゴリ0.46mmから0.60mmが50重量%から60重量%および粒径カテゴリ0.35mmから0.46mmが20重量%から30重量%を満足するX結晶を主成分とする、吸着材料を開示している。
【0021】
標準形成技法によって得た凝集体の粒径分布が一般に対数正規則に従うことを考慮すると、0.25mmから1.2mmの間(例えばUS7820869およびUS2009/326308における)、または0.35mmから0.8mmの間(例えばUS2011/105301における)の粒径分布は、分布の標準偏差の関数としての、中央値の領域内、即ち約0.55mmから0.65mmにある、凝集体のふるい分けから得た重量平均径に相当する。
【0022】
文献US8530367は、押出、圧縮または凝集によって得たビーズまたは押出物の形態の吸着材料の数平均径のみを、即ち0.4mmから2mm、特に0.4mmから0.8mmの範囲に及ぶ数平均径を開示しているが、分布の最小凝集体および最大凝集体の下限および上限については述べていない。最も微細な凝集粒子がサイクロン処理および/もしくはふるい分けによって除去され得る、ならびに/または、例えば押出物の場合、過度に粗い粒子がふるい分けまたは粉砕によって除去され得ることが示されているに過ぎない。
【0023】
0.4mmの数平均径が、分布の標準偏差に応じて通例0.45mmから0.55mmのより高い体積平均径に相当し、同様に、0.8mmの数平均径ならば約0.9mmから1.0mmの体積平均径に相当することに留意されたい。文献US7452840およびUS8530367の実施例は、押出によって得た0.7mmに等しい同等の径を有する凝集体を開示し、凝集体は2.1μmの従来のゼオライトX結晶から調製された凝集体および直径が16μmに縮小したゼオライトX結晶から調製された凝集体の両方について粉砕およびふるい分けに供される。
【0024】
結果として、先行技術は、吸着材料に使用したゼオライトX結晶の性質とは無関係に、吸着材料の粒径が不変のままであることを示している。
【0025】
RuthvenによってPrinciples of Adsorption and Adsorption Processes,p.243に記載された物質移動に対する抵抗の理論式を参照すると、吸着材料のサイズは、物質移動を促進するために場合により縮小が求められるパラメータであり、これは、結晶間の拡散抵抗(「マクロ孔抵抗」としても既知)が吸着材料の直径の二乗に比例しているためである。しかし、吸着材料のサイズの縮小は、次いで工業用途での吸着材料の使用中に生じる影響によって制限され、これは、吸着材料の粒径によって、工業ユニットの圧力損失および充填の均一性が決まるためである。
【0026】
さらに、コンクリート粒状物に関する文献において、広い粒径分布を有する不規則形状粒子から成る混合物では、粒子の形状が真球度から逸脱すると、緻密性が低下することが既知である。さらに、小型粒子がより大型の粒子間の隙間に滞留するようになるため、緻密性が粒径分布の広がりと共に上昇する(Cumberland and Crawford,The Packing of particles,Elsevier,Amsterdam,(1987);German,Introduction to particle packing in Powder packing characteristics,(1989)pp.1−20)。
【0027】
所与の吸着材料によって最大の生産性を実現するために最大化することが望まれる吸着材料床の緻密性は、充填モードにも依存している。工業ユニットへの吸着材料の充填は、ビーズ間に残る空隙率(床多孔率:εb)を可能な限り低減するために、可能な限り高密度で行う必要がある。
【0028】
特別な配慮を行わない「疎」装填と「高密度」装填との差は、簡単には、最大の10%バルク充填密度(床1m
3当たりの吸着材料のグラム数)である。高密度装填を行うための最適な方法は、床の全面への吸着材料の均質な「雨」を生成することに、およびレベルを十分に低速に(数時間)上昇させることに存する。各種の市販の装置(Densicat(R)、Catapac(R)、Calipac(R))はこのことを行うために存在する。この原理は、(精密に測定した角速度で)回転する一連の水平ストラップまたはホイールを介して吸着剤の制御速度での鉛直流を再開して、吸着材料を中心から周囲へスプレーすることに存する。
【0029】
特許出願WO2008/152319は、特に有利な形成技法、即ちアトマイズ化によって得た、制御されたサイズおよび形態で、非常に高い真球度を有する凝集体について記載している。前記文献は、アトマイズ化によって、十分に高密度であり、機械的強度が高く、50μmから600μm、好ましくは50μmから500μmのサイズ範囲(平均径)において非常に良好な真球度を有するビーズが得られることを示している。しかし、前記文献は、ゼオライト結晶の性質の関数としての、吸着材料の最適な特性(とりわけサイズおよび形態)を選択する方法については教示していない。
【0030】
さらに、炭素原子8個を含有する芳香族画分からパラキシレンを分離する生産効率を常に改善しようとすることが、現行の目的である。この目的を達成するために、上述の先行技術は、1つの解決策が吸着材料内の細粒内の物質移動を改善すること、床容積当たりの吸着材料の量を増加すること、および床の多孔率を低下させること、即ちより緻密でより高密度の吸着材料床を利用可能にすることであり得ることを教示している。
【0031】
RuthvenがPrinciples of Adsorption and Adsorption Processes,p.243に記載した、物質移動抵抗の理論式により、この目的を達成する解決策の1つは、ゼオライト吸着材料ビーズのサイズを縮小することでもある。しかし、ビーズのサイズをさらに大幅に縮小することに直接関連する欠点の1つは、圧力の損失が結果として増大することである。圧力の損失の増大を補償するためには、吸着材料床に印加しなければならない圧力を増大させ、このため床中のゼオライト吸着材料を破損する危険を冒す必要がある。
【0032】
このため、先行技術によって、より優先的には、ビーズサイズ(体積平均径)がおよそ0.5mmの値より小さいゼオライト吸着材料内のゼオライト結晶のサイズをさらに縮小することに存する解決策が推奨される。
【0033】
このため、補償イオンが主にバリウムイオンまたはバリウムイオンおよびカリウムイオンであり、模擬移動床中でパラキシレンを分離するためにユニットにおける圧力損失を増大させることなく、パラキシレンの生産効率をさらに上昇させることを可能にする、X型のゼオライトFAUの結晶を含む凝集体の形態のゼオライト吸着材料に対する要求がなお存在する。
【0034】
X型ゼオライト中に存在する補償イオンをキャラクタリゼーションするために上で使用した「主に」という用語は、前記X型ゼオライトのカチオンサイトに存在するイオンの全モル量に対して50%を超えるイオンのモル量を意味する。前記ゼオライトXのすべてのカチオン部位が荷電補償カチオンによって占有され、該ゼオライトがこれらの使用中に電子的に中性であることが理解されるべきである。
【0035】
上記の模擬移動床中でのパラキシレンの分離のための用途におけるなおより効率的なゼオライト吸着材料に対する要求は、以下の性質を兼ね備えるゼオライト吸着材料に対する要求によっても表され得る:
−単位床容積当たりの可能な限り大きいゼオライト吸着材料の選択的吸着容積、即ち:α)選択的吸着が内部で生じるミクロ多孔率を構成するゼオライトの、考えられる最大のゼオライト含有率;
β)考えられる最小の細粒多孔率(高い細粒密度)
γ)吸着材料床の考えられる最小の多孔率(高い緻密性)
−ゼオライト吸着材料内の考えられる最速の物質移動、即ち炭化水素分子が吸着材料の外部からゼオライト吸着材料のゼオライト結晶のコアまで進行する最短時間。
【0036】
即ち、最適なミクロ細孔移動および改善されたマクロ細孔移動をどちらも兼ね備え、同時に単位床容積当たり十分な選択的吸着容積を維持して、模擬移動床技法を使用する分離ユニットにおいてパラキシレンを分離する方法でこれらを使用する間の生産性の増大を最大化する、ゼオライト吸着材料に対する要求がなお存在する。
【発明を実施するための形態】
【0043】
このため、第1の態様により、本発明は、ゼオライト吸着材料であって:
−階層的多孔性を有するX型のゼオライトFAUの形態の結晶相の含有率が、吸着材料の全質量に対して、50重量%から99重量%の間、好ましくは80重量%から98重量%であり;
−酸化バリウム(BaO)として表されるバリウムイオン(Ba
2+)の含有率が吸着材料の全質量に対して、10重量%超、好ましくは15重量%超、非常に好ましくは20重量%超、さらにより好ましくは23重量%超、またはさらに33重量%超であり、有利には酸化バリウム含有率が吸着材料の全重量に対して、23重量%から42重量%の間、典型的には30重量%から40重量%の間であり;
−酸化カリウム(K
2O)として表されるカリウムイオン(K
+)の含有率が吸着材料の全質量に対して、25重量%未満、好ましくは0重量%から20重量%の間、さらにより好ましくは0重量%から15重量%の間、非常に好ましくは0重量%から10重量%の間であり;ならびに
−体積平均径が0.2mmから0.6mmの間、好ましくは0.3mmから0.6mmの間である
ゼオライト吸着材料に関する。
【0044】
好ましい実施形態において、本発明のゼオライト吸着材料は、窒素吸着(後述するtプロット法)によって測定した、20m
2・g
−1超、好ましくは30m
2・g
−1超、より好ましくは30m
2・g
−1から200m
2・g
−1の間、より優先的には30m
2・g
−1から150m
2・g
−1の間の外表面積を有する。
【0045】
別の好ましい実施形態により、本発明のゼオライト吸着材料は、窒素吸着(後述するtプロット法)によって測定した、20m
2・g
−1超、好ましくは30m
2・g
−1超、より好ましくは30m
2・g
−1から200m
2・g
−1の間、より優先的には30m
2・g
−1から150m
2・g
−1の間の外表面積を有し、前記外表面積は、2nmから50nmの間の平均径を有するメソ細孔群に関連している。先行文の「関連する」という用語は、メソ細孔群がゼオライト結晶の外表面積に加えて、外表面積の測定値に寄与することを示す。
【0046】
以下のテキストでは、別途指摘しない限り、値の範囲の制限は、この範囲に、とりわけ「の間」および「...から...まで」という表現に含まれる。
【0047】
「階層的多孔性を有するゼオライト」という用語は、ミクロ細孔およびメソ細孔の両方を含有するゼオライト、即ちミクロ多孔性およびメソ多孔性の両方であるゼオライトを意味する。「メソ細孔性ゼオライト」という用語は、ミクロ多孔性ゼオライト結晶が、ミクロ細孔性と併せて、例えばUS7785563に記載されているように、透過型電子顕微鏡(TEM)によってただちに同定可能である、ナノメートルサイズの内部空洞を有する(メソ細孔性)、ゼオライトを意味する。
【0048】
好ましくは、本発明において、後述するtプロット法で定義される、40m
2・g
−1から400m
2・g
−1の間、好ましくは40m
2・g
−1から200m
2・g
−1の間およびより好ましくは40m
2・g
−1から150m
2・g
−1の間の外表面積を有する、「階層的多孔性を有するゼオライト」または「メソ細孔性ゼオライト」が使用される。
【0049】
本発明において、ゼオライト吸着材料または階層的多孔性を有するゼオライトの外表面積は、真空下(P<6.7×10
−4Pa)で300℃から450℃の間の温度にて9時間から16時間の範囲に及ぶ時間にわたって、好ましくは400℃にて10時間にわたって脱気した後、77Kの温度にて窒素吸着等温線からtプロット法によって計算する。
【0050】
メソ細孔の平均径は、Barrett−Joyner−Halenda法(BJH method,E.P.Barrett,L.G.Joyner,P.P.Halenda,“The Determination of Pore Volume and Area Distributions in Porous Substances.I.Computations form Nitrogen Isotherms”,J.Am.Chem.Soc.,73(1),(1951),373−380)によって、77Kにおける窒素物理吸着等温線の吸着アームから求める。
【0051】
有利には、平均径Dmの関数としてdV/dDmまたはdV/dlogDmによってグラフ表示される、本発明による吸着材料のメソ細孔についてこのように求めた平均径体積分布は、狭い単峰形分布に相当する。
【0052】
「単峰形分布」という用語は、ピークを1個のみ有する分布を意味する。平均径単峰形分布はこのため単一のピークを特徴とし、該ピークの頂点の平均径値は、「最頻値」またはもしくは優勢な値として既知であり、分布の最も高頻度の値に相当する。分布が谷によって隔離された2個のピークを有する場合、該分布は二峰性と言われる。本発明は、二峰性またはさらに多峰性分布の場合に、即ち不連続性によって隔離された、値の集中区域が複数存在する分布には関連しない。このような分布は、各種の平均径を有する複数の細孔群が存在することに特徴的である。
【0053】
メソ細孔の平均径分布をキャラクタリゼーションするために使用される「狭い」という用語は、キャラクタリゼーション技法で後述するように、最頻値付近の分布中央高幅が20nm未満、好ましくは15nm未満、好ましくは10nmから0.1nmの間、およびより好ましくは5nmから0.5nmの間であることを示している。
【0054】
本発明のゼオライト吸着材料に、単独でまたは他の同じもしくは異なるメソ細孔性もしくは非メソ細孔性ゼオライト結晶との混合物として含まれる(1または複数の)メソ細孔性ゼオライトの結晶は、バインダーによって凝集する。本発明の好ましい態様により、バインダー含有率は、ゼオライト吸着材料のゼオライト含有率を最適化するように可能な限り低いが、該物質を結合するのに十分である。
【0055】
本発明のゼオライト吸着材料に含まれるバインダーは、当業者に既知の従来のバインダーから選ばれ、該バインダーは、ゼオライト化可能であってもよく、またはゼオライト化可能でなくてもよい。このバインダーは、粘土または粘土の混合物を含み、好ましくは粘土または粘土の混合物から成る。これらの粘土は、好ましくはカオリン、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト、アタパルジャイト、セピオライト、モンモリロナイト、ベントナイト、イライトおよびメタカオリンならびにあらゆる割合のこれらの2つ以上の混合物からも選ばれる。
【0056】
本発明において、上記の「バインダー」は、本発明のゼオライト吸着材料(または凝集ゼオライト物質)中のゼオライト結晶の結合を確実にする凝集バインダーである。このバインダーは、焼成後にゼオライト性結晶構造を有さないという点で、ゼオライト結晶とも異なり、このことはバインダーが多くの場合不活性、より正確には吸着およびイオン交換に対して不活性と言われる理由である。
【0057】
特に好ましい態様により、本発明のゼオライト吸着材料中に存在するバインダーは、1つ以上の粘土のみから、好ましくは1つの粘土だけから成る。
【0058】
本発明によるゼオライト吸着材料は、1つ以上の他の成分も、0から5%の間、好ましくは0から1%の間、より好ましくは0から0.5%の量で含み得て、該パーセンテージはゼオライト吸着材料の全重量に対して重量ベースで表される。このまたはこれらの他の(1または複数の)成分は一般に、残分の前記ゼオライト吸着材料の添加剤および他の合成助剤である。
【0059】
このような他の成分の例はとりわけ、焼成後の添加剤の灰分、シリカなどを含む。これらの他の成分は一般に、残分または微量の形態で存在し、本発明の少なくとも1つのメソ細孔性ゼオライトを含むゼオライト吸着材料に何らかの結合または結合性を与えるために使用されないことを理解すべきである。
【0060】
本発明のゼオライト吸着材料は、粉末または結晶の凝集の専門家である当業者に周知である形態などの各種の形態、とりわけゼオライト結晶であってよく、例えば非制限的な方式で、本発明のゼオライト性凝集物質は、ビーズ、ヤーン、押出物などの形態、および全体的に好ましくはビーズの形態であってよい。
【0061】
本発明の好ましい実施形態により、ゼオライト吸着材料は、階層的多孔性を有するゼオライトXを含み、補償イオンが主にバリウムまたはバリウムおよびカリウムであるゼオライト凝集体の形態であり、前記吸着材料は、従来の吸着材料と比べて特定のサイズおよび形態特性を有する。
【0062】
「主にバリウムまたはバリウムおよびカリウム」という表現は、ゼオライト吸着材料が:
−酸化バリウム(BaO)として表される、吸着材料の全質量に対して10重量%超、好ましくは15重量%超、非常に好ましくは20重量%超、さらにより好ましくは23重量%超、またはさらに33重量%超のバリウムの含有率であって;有利には、吸着材料の全重量に対して23重量%から42重量%の間および典型的には30重量%から40重量%の間の酸化バリウム含有率ならびに
−酸化カリウム(K
2O)として表される、吸着材料の全質量に対して25重量%未満、好ましくは0重量%から20重量%の間、さらにより好ましくは0重量%から15重量%の間および非常に好ましくは0重量%から10重量%のカリウムの含有率
を有することを意味する。
【0063】
また別の好ましい実施形態により、酸化バリウムBaOおよび酸化カリウムK
2O以外のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物のイオンの全含有率として表される、バリウムおよびカリウム以外のアルカリ金属またはアルカリ土類の金属イオンの全含有率は、吸着材料の全質量に対して0から5%の間である。
【0064】
先に示したように、本発明の使用は、有利には、従来の吸着材料と比べて特定のサイズおよび形態特性を有するゼオライト吸着材料を包含する。
【0065】
特に、驚くべきことに、階層的多孔性を有するゼオライトXを含む0.7mmの平均体積径を有する凝集体に対して、しかし圧力の損失を著しく増大させることなく平均径がさらに縮小され得るビーズの形態を選択することによって、生産性が改善されることが見出されている。
【0066】
このため、0.2mmから0.6mmの間、好ましくは0.3mmから0.6mmの間の平均体積径に加えて、本発明のゼオライト吸着材料は、有利にはビーズの形態、好ましくは、真球度特性が:
−平均鈍りが70%から100%の間、好ましくは80%から100%の間、好ましくは85%から100%の間およびさらにより好ましくは90%から100%の間であり;
−0%の伸び率を有する粒子のパーセンテージが5から100の間、好ましくは10から100の間および好ましくは25から100の間である
ようなビーズの形態である。
【0067】
好ましい実施形態により、本発明のゼオライト吸着材料は以下の真球度特性も有する:10%未満の伸び率を有する粒子のパーセンテージが50から100の間、好ましくは70から100の間および好ましくは80から100の間である。
【0068】
真球度を測定する方法は、当業者に周知であり、キャラクタリゼーション技法で後述する。
【0069】
本発明のゼオライト吸着材料は、窒素吸着によって測定した、20m
2・g
−1超、好ましくは30m
2・g
−1超、より好ましくは30m
2・g
−1から200m
2・g
−1の間およびより優先的には30m
2・g
−1から150m
2・g
−1の間の外表面積を有する。
【0070】
また別の好ましい実施形態により、本発明によるゼオライト吸着材料は、1.00から2.00の間、好ましくは1.00から1.80の間、より好ましくは1.15から1.80の間およびさらにより好ましくは1.15および1.60の間のSi/Al原子比を有する。
【0071】
本発明のゼオライト吸着材料は、好ましくは、水銀圧入(ゼオライト吸着材料の無水質量に対して)によって測定した1.0g・cm
−3から1.4g・cm
−3の間および好ましくは1.1g・cm
−3から1.3g・cm
−3の間の細粒密度ならびに水銀圧入によって測定した、0.20cm
3・g
−1から0.40cm
3・g
−1の間および好ましくは0.20cm
3・g
−1から0.35cm
3・g
−1の間のマクロ細孔およびメソ細孔に含有される全容積(マクロ細孔容積およびメソ細孔容積の和)(ゼオライト吸着材料の無水物換算質量に対して表した。)を有する。
【0072】
本発明の文脈においてまた好ましいゼオライト吸着材料は、77Kの温度にて窒素(N
2)吸着等温線からtプロット法によって評価したミクロ細孔容積が0.180cm
3・g
−1から0.290cm
3・g
−1の間、好ましくは0.180cm
3・g
−1から0.270cm
3・g
−1の間であるゼオライト吸着材料である。ミクロ細孔容積の前記測定値は、300℃から450℃の間の温度にて9時間から16時間の範囲に及ぶ時間にわたる、好ましくは400℃にて10時間にわたる真空(P<6.7×10
−4Pa)下での脱気後に計算する。
【0073】
加えて、本発明のゼオライト吸着材料は、有利には、0.2から1の間、好ましくは0.4から0.8の間およびさらにより好ましくは0.45から0.65の間の比(マクロ細孔容積)/(マクロ細孔容積+メソ細孔容積)を有する。
【0074】
本発明の文脈において、機械的強度は、サイズが1.6mm未満の凝集体に適したShell法シリーズSMS1471−74によって測定する。先に定義したゼオライト吸着材料について測定したこの機械的強度は一般に、1MPaから4MPaの間、好ましくは1.5MPaから4MPaの間、より好ましくは1.8MPaから4MPaの間および全体的に好ましくは2MPaから4MPaの間である。
【0075】
本発明の別の主題は、先に定義したゼオライト吸着材料を調製する方法であって、前記方法は、少なくとも:
a)40m
2・g
−1から400m
2・g
−1の間、好ましくは40m
2・g
−1から200m
2・g
−1の間およびより好ましくは40m
2・g
−1から150m
2・g
−1の間の外表面積を有する階層的多孔性を有する、少なくとも1つのFAU型のゼオライトの結晶を、場合によりゼオライト化性である、少なくとも80%の粘土または粘土の混合物を含むバインダーならびに場合により5%までの添加剤およびまた、凝集物質を形成させる量の水によって凝集させ、凝集体を50℃から150℃の間の温度にて乾燥させ;乾燥させた凝集体を、酸化性ガスおよび/または不活性ガス流下で、とりわけ酸素、窒素、空気、乾燥および/または除炭酸空気、場合により乾燥および/または除炭酸した酸素欠乏空気などのガスを用いて、150℃を超える、典型的には180℃から800℃の間、優先的には200℃から650℃の間の温度にて、数時間、例えば2から6時間にわたって焼成する工程;
b)工程a)で得た凝集体をアルカリ塩基性溶液と接触させることによって、バインダーの全部または一部を場合によりゼオライト化する工程;
c)バリウムイオンおよび/またはカリウムイオンの溶液と接触させることによって、工程a)および/または工程b)からの凝集体を(1回または複数回)カチオン交換する工程;
d)カリウムイオンの溶液と接触させることによって、工程c)からの凝集体を場合によりさらにカチオン交換する工程;
e)工程c)またはd)で得た凝集体を、50℃から150℃の間の温度にて洗浄および乾燥する工程;ならびに
f)工程e)で得た凝集体を、酸化性ガスおよび/または不活性ガス流下で、とりわけ酸素、窒素、空気、乾燥および/または除炭酸空気、場合により乾燥および/または除炭酸した酸素欠乏空気などのガスを用いて、100℃から400℃の間、好ましくは200℃から300℃の間の温度にて、所望の含水率および強熱減量の関数として決定された時間、典型的には1から6時間にわたって活性化することによって、本発明によるゼオライト吸着材料を製造する工程
を含む。
【0076】
好ましい実施形態により、前記少なくとも1つのゼオライトFAUは、好ましくは1.00から1.50の間、好ましくは1.05から1.40の間、およびさらにより好ましくは1.10から1.40の間のSi/Al原子比を有する。先に示したように、上記の方法の工程a)で使用した結晶の外表面積は、真空下(P<6.7×10
−4Pa)で300℃から450℃の間の温度にて9時間から16時間の範囲に及ぶ時間にわたって、好ましくは400℃にて10時間にわたって脱気した後、77Kの温度にて窒素吸着等温線からtプロット法によって計算する。
【0077】
好ましくは、有利には、先に定義した方法の工程a)で使用する、本発明の吸着材料のゼオライトFAU結晶は、0.1μmから20μmの間、好ましくは0.5μmから20μmの間、より好ましくは0.5μmから10μmの間、好ましくは0.5μmから5μmの間の数平均径を有する。
【0078】
工程a)で使用した大きい外表面積を有するゼオライトFAU結晶は、当業者に既知の各種の方法に従って、例えばInayatらによってAngew.Chem.Int.Ed.,
51,(2012),1962−1965に記載された合成法に従って得ることができる。
【0079】
シーディングによるならびに/または合成操作条件、例えば合成混合物のSiO
2/Al
2O
3比、ナトリウム含有率およびアルカリ度を調整することによる合成法によって、またはもしくはゼオライトFAU結晶の後処理のための従来方法に従って、前記結晶を調製することも可能である。
【0080】
後処理方法は一般に、例えばD.Verboekendらによって記載されているような(Adv.Funct.Mater.,22,(2012),pp.916−928)、固体を脱アルミネートする(dealuminate)1回以上の酸処理であって、水酸化ナトリウムによる1回以上の洗浄が後続して形成されたアルミニウム系残基を除去する、酸処理、またはもしくは、例えば特許出願WO2013/106816に記載されているように、酸の作用および酸処理の効力を改善する構造化剤の作用を併用する処理のどちらかによって、すでに形成されたゼオライト網目から原子を除去することに存する。
【0081】
これらのゼオライトの直接合成方法(即ち後処理以外の合成方法)は一般に、1つ以上の構造化剤または犠牲テンプレートを包含する。
【0082】
使用され得る犠牲テンプレートは、当業者に既知のいずれの種類でもよく、とりわけ特許出願WO2007/043731に記載されているものでよい。好ましい実施形態により、犠牲テンプレートは、有利には、有機シランから、より優先的には[3−(トリメトキシシリル)プロピル]オクタデシルジメチルアンモニウムクロリド、[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ヘキサデシルジメチルアンモニウムクロリド、[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ドデシルジメチルアンモニウムクロリド、[3−(トリメトキシシリル)プロピル]オクチルアンモニウムクロリド、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アニリン、3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリメトキシシラン、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−N’−(4−ビニルベンジル)エチレンジアミン、トリエトキシ−3−(2−イミダゾリン−1−イル)プロピルシラン、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]尿素、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、[3−(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、[2−(シクロヘキセニル)エチル]−トリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3−クロロプロピル)トリメトキシシランおよびまたあらゆる割合のこれらの2つ以上の混合物から選ばれる。
【0083】
上に挙げた犠牲テンプレートのうち、[3−(トリメトキシシリル)プロピル]オクタデシルジメチルアンモニウムクロリド、即ちTPOACが最も特に好ましい。
【0084】
より高いモル質量の犠牲テンプレート、例えばPPDA(ポリジアリルジメチルアンモニウムポリマー)、PVB(ポリビニルブチラール)およびメソ細孔の直径を増大させるための、当分野で既知の他のオリゴマー性化合物も使用してよい。
【0085】
本発明の方法の好ましい実施形態により、除去するための犠牲テンプレートの存在下で調製した、先に記載したような階層的多孔性を有する少なくとも1つのゼオライトFAUの結晶の凝集は、工程a)で行う。
【0086】
この除去は、当業者に既知の方法に従って、例えば焼成によって、および非限定的な方式で行ってよく、犠牲テンプレートを含むゼオライト結晶の焼成は、酸化性ガスおよび/または不活性ガス流下で、とりわけ酸素、窒素、空気、乾燥および/または除炭酸空気、場合により乾燥および/または除炭酸した酸素欠乏空気などのガスを用いて、150℃超、具体的には180℃から800℃の間、優先的には200℃から650℃の間の1つ以上の温度にて、数時間、例えば2から6時間にわたって行ってよい。ガスの性質、温度上昇ランプおよび連続温度ステージならびにこれらの期間は、犠牲テンプレートの性質の関数として適応される。
【0087】
任意選択の犠牲テンプレートの除去の追加の工程は、本発明の凝集ゼオライト物質を調製する方法の間のいつでも実施してよい。前記犠牲テンプレートの除去はこのため、ゼオライト結晶の焼成によって、凝集工程a)の前に、または工程a)の間の凝集体の焼成と同時に行ってよい。
【0088】
工程a)の凝集が各種のモードによって得た、階層的多孔性を有する複数のゼオライトの凝集を含む場合、本発明の文脈からの逸脱とはならない。
【0089】
FAU型ゼオライトの合成は一般に、ナトリウム媒体(Naカチオン)中で実施される。このように得たゼオライトFAU結晶は、主にまたはさらに排他的に、ナトリウムカチオンを含む。しかし、犠牲テンプレートの任意選択による除去前または後に、Na形態での合成中に、1回以上のカチオン交換が行われた結晶を使用することは、この工程が工程a)および工程a)におけるこれの実施を行う前に行われる場合、本発明の文脈からの逸脱とはならない。この場合、工程c)および場合により交換工程d)は、結果として不要になる。
【0090】
工程a)で使用するゼオライトFAU結晶および本発明による凝集体中のゼオライトFAU結晶のサイズは、走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定する。先に示したように、好ましくは、元素の平均径は、0.1μmから20μmの間である。このSEM観測によって、例えば(ゼオライト化工程中に変換されなかった。)残留バインダーを含む非ゼオライト相または凝集体中の他のアモルファス相の存在を確認することも可能となる。
【0091】
本文献において、「数平均径」または「サイズ」は、とりわけゼオライト結晶に使用される。これらの大きさを測定する方法は、本明細書にて後に説明する。
【0092】
凝集および形成(工程a)は、当業者に既知のいずれの技法、例えば押出、圧縮、造粒プレイス、造粒ドラムでの凝集、アトマイズ化などに従って、好ましくは造粒プレート、造粒ドラムでの凝集、アトマイズ化などによって行ってよい。
【0093】
使用する凝集バインダー(後述の定義を参照のこと。)およびゼオライトの割合は、典型的には、全重量(バインダー+ゼオライト)に対して、先行技術の、即ち1%から50重量%の割合である。ビーズ、押出物などの形態にかかわらず、工程a)から得た凝集体は、好ましくは0.2mmから0.6mmの間、好ましくは0.3mmから0.6mmの間の体積平均径を有する。
【0094】
工程a)の後、最も微細な凝集体は、サイクロン処理および/もしくはふるい分けによって除去でき、ならびに/または極めて粗い凝集体は、例えば押出物の場合、ふるい分けもしくは粉砕によって除去することができる。
【0095】
本発明のゼオライト性凝集物質に含まれるバインダーは、粘土または粘土の混合物を含み、好ましくは粘土または粘土の混合物から成る。これらの粘土は、好ましくはカオリン、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト、アタパルジャイト、セピオライト、モンモリロナイト、ベントナイト、イライトおよびメタカオリンならびにあらゆる割合のこれらの2つ以上の混合物からも選ばれる。
【0096】
任意選択によるゼオライト化工程b)において、工程a)で使用する凝集バインダーは、少なくとも80%,好ましくは少なくとも90%、より好ましくは(preferabkly)少なくとも95%、より詳細には少なくとも96重量%の少なくとも1つのゼオライト化性粘土を含有し、他の鉱物バインダー、例えばベントナイト、アタパルジャイトなども含有し得る。「ゼオライト化性粘土」という用語は、通常、アルカリ塩基性溶液の作用によってゼオライト性物質に変換できる粘土または粘土の混合物を意味する。ゼオライト化性粘土は一般に、カオリン、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイトおよび/またはメタカオリンの群に属する。カオリンが好ましく、最も普通に使用される。
【0097】
工程a)で場合により使用される添加剤のうち、ゼオライト合成の専門家である当業者に既知であるシリカ源は、例えばコロイダルシリカ、珪藻土、パーライト、焼成灰(フライアッシュ)、砂または固体シリカの他のいずれかの形態であり得る。
【0098】
工程a)の間に、ゼオライトFAU結晶およびバインダーに加えて、他の添加剤、例えば凝集促進のためのまたは形成される凝集体の硬化を改善するための添加剤、例えばリグニン、デンプン、カルボキシメチルセルロースおよび当業者に既知の他の添加剤も添加してよい。
【0099】
工程a)に含まれる焼成では、ガスの性質、温度上昇ランプおよび連続温度ステージ、ならびにそれぞれの期間も、除去される犠牲テンプレートの性質の関数としておよび凝集工程a)で使用するバインダーの性質の関数として適応される。
【0100】
特に、凝集バインダーが1つ以上のゼオライト化性粘土を含有する場合、焼成によってゼオライト化性粘土、典型的には、カオリンをメタカオリンに変換することが可能となり、メタカオリンはその後、ゼオライト化工程(工程b))の間にゼオライトに変換することができる。この原理は、Zeolite Molecular Sieves,D.W.Breck著,John Wiley and Sons,New York,(1973),p.314−315で概説されている。
【0101】
凝集バインダーのゼオライト化は、当業者に現在周知のいずれの方法によっても行われ、例えば工程a)から得た生成物を、アルカリおよび一般に塩基性水溶液、例えば水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウム水溶液に浸漬することによって行ってよい。
【0102】
原則として、アルカリゼオライト化溶液の濃度は、好ましくは0.5Mから5Mである。ゼオライト化は、好ましくは高温で、室温より高い温度にて、典型的には、約80℃から100℃、例えば、室温(即ち約20℃)とゼオライト化溶液の沸点との間の温度にて行う。ゼオライト化工程の期間は一般に、数十分間から数時間との間、好ましくは約1時間から8時間の間である。
【0103】
カチオン交換工程c)およびd)は、当業者に既知の標準方法に従って、通常、工程a)から得た凝集体をバリウムおよび/またはカリウム塩、例えば塩化バリウム(BaCl
2)および/または塩化カリウム(KCl)に、高い酸化バリウム含有率、即ち吸着材料の全質量に対して、好ましくは10重量%超、好ましくは15重量%超、非常に好ましくは20重量%超、さらにより好ましくは23重量%超、またはさらに33重量%超を迅速に得られるように、室温から100℃の間および好ましくは80℃から100℃の間の水溶液中で接触させることによって行う。
【0104】
有利には、バリウムの含有率(酸化バリウムBaOとして表す。)は、吸着材料の全重量に対して、23重量%から42重量%の間、典型的には30重量%から40重量%の間である。交換したいゼオライトのカチオンに対して大過剰量のバリウムイオンで、典型的には、およそ10から12の過剰量を、有利には連続交換を行うことにより、交換することが好ましい。
【0105】
任意選択によるカリウム交換(工程d)を、バリウム交換(工程c)の前および/または後に行ってよい。先に示したように、工程a)において、バリウムイオンもしくはカリウムイオンまたはバリウムイオンおよびカリウムイオンをすでに含有するゼオライトFAU結晶を凝集させ(工程a)の前の、出発FAU型ゼオライト中に存在するカチオン、典型的にはナトリウムカチオンの、バリウムイオンもしくはカリウムイオンまたはバリウムイオンおよびカリウムイオンとの事前交換し、ならびに工程c)および/またはd)を省略する(または省略しない)ことも可能である。
【0106】
驚くべきことに、出願人は、ゼオライト結晶の構造の相対的な脆弱性のために困難であり得るカチオン交換工程が、前記ゼオライト結晶の(いったん交換した吸着材料の質量に対する)固有の外表面積およびミクロ細孔容積の性質に影響を及ぼさないことを確認している。
【0107】
(1回または複数回の)カチオン交換工程の後、次いで、好ましくは水による洗浄が一般に行われ、このように得た凝集体の乾燥が後続する。
【0108】
乾燥に後続する活性化は、従来、当業者に既知の方法に従って、例えば一般に100℃から400℃の間、好ましくは200℃から300℃の間の温度にて、所望の含水率および強熱減量の関数として求めた時間、典型的には1から6時間にわたって行う。
【0109】
上記のゼオライト吸着材料は、モレキュラーシーブが普通使用される用途に、とりわけ分離方法、最も詳細には異性体を分離する工業的方法において、全体的に好適で有利な性質を有する。
【0110】
このため、第3の態様により、本発明は、炭素原子8個を含有する芳香族画分からのパラキシレンの分離のための、本発明による、ちょうど定義したような、少なくとも1つのゼオライト吸着材料の使用に関する。
【0111】
少なくともBa(K)XPH型ゼオライト(バリウムまたはバリウムおよびカリウムによって交換された、階層的多孔性を有するゼオライトXの場合)を含むゼオライト吸着材料を包含する本発明による使用により、生産効率が先行技術と比べてさらに改善された、C8芳香族炭化水素の混合物からパラキシレンを分離する方法を提案することができる。
【0112】
このためまた別の態様により、本発明は、定義したばかりの少なくとも1つのゼオライト吸着材料を使用する、C8芳香族炭化水素の混合物からパラキシレンを分離する方法に関する。
【0113】
全体的に驚くべきことに、少なくとも1つのゼオライトBa(K)XPHを含む少なくとも1つのゼオライト吸着材料を使用する本発明の方法により、先行技術に対してさらに改善された、パラキシレンに対する生産効率が得られるようになることが見出された。
【0114】
より詳細には、本発明は、生産効率が改善された、C8芳香族炭化水素の混合物からパラキシレンを分離する方法に関し、該改善は、先に定義され、階層的多孔性を有するゼオライトXを含み、補償イオンが主にバリウムまたはバリウムおよびカリウムである、ゼオライト吸着材料を使用することによって得られ、前記吸着材料は、従来の吸着材料と比べて特定のサイズおよび形態特性を有する。
【0115】
より詳細には、本発明は、先に定義したゼオライト吸着材料をパラキシレン吸着剤として使用することに存する、芳香族C
8異性体画分からパラキシレンを分離する方法に関し、前記方法は液相法で行われるが、気相法でも行われる。
【0116】
好ましい実施形態において、本発明は、炭素原子8個を含有する異性体を含有する芳香族炭化水素供給原料から高純度パラキシレンを製造する方法であって、少なくとも以下の:
a)供給原料を好適な吸着条件下で、先に定義したゼオライト吸着材料の床と接触させて、パラキシレンを優先的に吸着させる工程、
b)吸着材料床を脱着条件下で、優先的にトルエンまたはパラジエチルベンゼンである脱着剤と接触させる工程、
c)吸着材料床から、脱着剤および少なくとも選択的に吸着されている供給原料の生成物を含有する流れを除去する工程、
d)吸着材料床から、脱着剤およびパラキシレンを含有する流れを除去する工程、
e)工程c)から得た流れを、脱着剤を含有する第1流および少なくとも選択的に吸着された供給原料の生成物を含有する第2流に分離する工程、ならびに
f)工程d)から得た流れを、脱着剤を含有する第1流およびパラキシレンを75%以上、好ましくは99.7%以上、好ましくは少なくとも99.8%の純度レベルで含有する第2流に分離する工程
を含む方法に関する。
【0117】
該方法は、場合により以下の:
g)結晶化装置における結晶化工程であって、工程f)から得たパラキシレンの結晶化から成り、第1に、この母液に浸漬されたパラキシレンの結晶と、第2に、模擬移動床吸着ユニットの入口にて新しい供給原料との混合物として一部または完全に再利用され得る母液を得られるようにする、工程および
h)工程g)から得た結晶を洗浄する工程であって、この後にパラキシレンが少なくとも99.7%および好ましくは少なくとも99.8%の純度で回収される、工程
も含んでよい。
【0118】
所望の生成物はこのため、分取吸着液体クロマトグラフィー(バッチ式)により、有利には模擬移動床にて、即ち模擬向流または模擬並流を用いて、およびより詳細には模擬向流を用いて分離除去することができる。
【0119】
模擬向流を用いた模擬移動床クロマトグラフィー分離は、先行技術において周知である。原則として、模擬移動床分離ユニットは、閉ループ内で相互連結された吸着材料の複数の床を含有する、少なくとも1個の吸着カラムを備える。模擬移動床分離ユニットは、少なくとも3つの、場合により4つまたは5つのクロマトグラフィー区画を備え、これらの区画はそれぞれ少なくとも1つの床またはカラム部から成り、2個の連続する供給箇所または抜き出し箇所の間に含まれる。
【0120】
典型的には、分画される少なくとも1つの供給原料および(場合により溶離剤として既知の)脱着剤が供給され、少なくとも1つのラフィネートおよび1つの抽出物が取り出される。供給箇所および抜き出し箇所は時間が経つにつれて変更され、典型的には、同期様式で、場合により、「Varicol」型の分画中には非同期様式で、床の下部に向かって移動される。
【0121】
定義により、動作区画はそれぞれ番号で呼ばれる:
・区画1=脱着剤の注入と抽出物の取り出しの間の、(抽出物に含有される)所望の生成物の脱着の区画;
・区画2=抽出物の取り出しと分画される供給原料の注入との間の、ラフィネートの化合物の脱着の区画;
・区画3=供給原料の注入とラフィネートの取り出しとの間の、所望の生成物の吸着の区画;および
・ラフィネートの取り出しと脱着剤の注入との間の区画4。
【0122】
模擬向流型の工業吸着ユニットの動作条件は、一般に以下の通りである:
・床数:4から24;
・区画の数:少なくとも4;
・温度:100から250℃、好ましくは150から190℃;
・処理温度におけるキシレンの気泡圧力と3MPaとの間の圧力;
・脱着剤の流速の供給原料の流速に対する比:0.7から2.5(例えば、独立型吸着ユニットでは0.9から1.8および結晶化ユニットと組み合された吸着ユニットでは0.7から1.4);
・リサイクル度:2から12、好ましくは2.5から5;
・所与の床での脱着剤の2回の注入の間の時間に相当する、サイクル時間:有利には4から18分の間。
【0123】
特許US2985589、US5284992およびUS5629467の教示も参照してよい。
【0124】
工業的模擬並流吸着ユニットの動作条件は一般に、一般に0.8から7の間であるリサイクル度を除いて、模擬向流を用いて機能するユニットと同様である。特許US4402832およびUS4498991を参照してよい。
【0125】
脱着溶媒は、沸点がトルエンなどの供給原料の沸点よりも低い脱着剤であってよいが、沸点がパラジエチルベンゼン(PDEB)などの供給原料の沸点よりも高い脱着剤であってもよい。C
8芳香族画分中に含有されるパラキシレンの吸着のための本発明による吸着材料の選択性は、900℃にて測定した吸着材料の強熱減量が一般に4.0%から8.0%の間および好ましくは4.7%から6.7%の間である場合に最適である。強熱減量には、水および少量の二酸化炭素が含まれる。
【0126】
炭化水素系溶離液中の含水率を優先的には、炭素原子8個を含有する芳香族炭化水素異性体画分を含む供給原料および/または脱着剤に水を添加することによって、165℃から185℃の処理温度で20ppmから150ppmの間に調整して、最適生産効率結果を得るようにする。
【0127】
より精密には、本発明の目的は、模擬移動床吸着によるパラキシレンを分離する方法で使用する固体吸着材料を最適化して、この方法の性能を最大化することである。一般に、キシレンを含有する供給原料の分離に望ましい性能は、少なくとも99.7%に等しい、さらに99.8%またはさらに99.9%の抽出物流中の所望の生成物の純度のための最大生産効率ならびに少なくとも90%に等しい、またさらに95%超および好ましくは97%超またはさらに98%超の所望の生成物の全収率である。
【0128】
本発明をここで後続する実施例によって説明し、実施例の目的は、本発明のある実施形態を例証することであるが、添付請求の範囲で請求されるような、前記発明の範囲を限定しない。
【実施例】
【0129】
キャラクタリゼーション技法
ゼオライト結晶の粒径−メソ細孔の検出
本発明によるゼオライト吸着材料が含有するゼオライトFAU結晶の数平均径の概算は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観測によって行う。
【0130】
吸着材料中のゼオライト結晶のサイズを概算するために、画像一式を少なくとも5000の倍率で撮影する。次いで、専用ソフトウェアを使用して、少なくとも200個の結晶の直径を測定する。精度はおよそ3%である。
【0131】
US7785563に示されているように、TEMによって、吸着材料に含有されるゼオライト結晶が、充填ゼオライト結晶(即ち非メソ多孔性)または充填ゼオライト結晶の凝集体またはメソ多孔性結晶(メソ多孔性が明らかに目視できる
図1のTEM画像と、充填結晶を示す
図2のTEM画像との比較を参照のこと。)であるかを確認することもできる。このためTEM観測によって、メソ細孔の存在または非存在を描出することもできる。好ましくは、本発明による方法の吸着材料は、極めて主として、即ち典型的には、充填結晶ではなく、数により80%超および好ましくは90%超のメソ細孔性ゼオライト結晶を含有する。この統計分析は、有利には、少なくとも50枚のTEMまたはSEM画像(イオン研磨によって得たサンプルの断面でのSEM)を分析することによって行う。
【0132】
ゼオライト吸着材料の化学分析−Si/Al比および交換度
ゼオライト吸着材料の元素化学分析は、当業者に既知の各種の分析技法に従って行ってよい。これらの技法のうち、規格NF EN ISO 12677:2011に記載されているような、波長分散型分光器(WDXRF)、例えばBruker社のTiger S8装置でのX線蛍光化学分析の技法を挙げることができる。
【0133】
X線蛍光は、サンプルの元素組成を確認するための、X線範囲の原子の光ルミネセンスを利用する非破壊スペクトル技法である。一般に、X線のビームを用いた、または電子の衝撃による原子の励起によって、原子の基底状態に戻った後に、特定の放射線が発生する。X線蛍光スペクトルは、元素の化学結合にごくわずかしか依存しないという利点を有するため、定性的にも定量的にも精密な測定値が得られる。各酸化物、通例BaO、Na
2OおよびK
2Oの較正後に、0.4重量%未満の測定不確定性が従来得られている。
【0134】
これらの元素化学分析によって、ゼオライト性吸着材料および前記吸着材料の調製中に使用するゼオライトのSi/Al原子比の確認と、イオン交換の質の確認との両方が可能となる。本発明の説明において、Si/Al原子比の測定不確定性は±5%である。
【0135】
イオン交換の質は、交換後のゼオライト凝集体中に残存する酸化ナトリウムNa
2Oのモル数に関連する。より詳細には、バリウムイオンとの交換度は、酸化バリウムBaOのモル数と、組み合せ(BaO+Na
2O)のモル数との間の比を評価することによって概算される。同様に、バリウムイオンおよび/またはカリウムイオンによる交換度は、酸化バリウム+酸化カリウムの組み合せ(BaO+K
2O)のモル数と、組み合せ(BaO+K
2O+Na
2O)のモル数との間の比を評価することによって概算される。各種の酸化物の含有率が、無水ゼオライト吸着材料の全重量に対する重量パーセンテージとして示されていることに留意されたい。
【0136】
ゼオライト吸着材料のゼオライト画分の質量の量
ゼオライト画分の質量の量(結晶相の含有率)は、当業者に既知の、省略形がXRDの、X線回折分析によって測定される。この分析は、Brukerブランドの装置で行い、次いでゼオライト画分の量を、好適な参照(検討中の吸着材料のカチオン性条件処理と同じカチオン性処理条下で、100%結晶性とされる同じ化学的性質のゼオライト)のピーク強度を参照とするディフラクトグラムのピーク強度から評価する。結晶相の含有率へのアクセスを可能とするピークは、9°から37°の間の角2θ区画の最も強いピーク、即ちそれぞれ11°から13°の間、22°から26°の間および31°から33°の間の角2θ範囲で見られるピークである。
【0137】
ゼオライト吸着材料の粒径
本発明による方法のゼオライト吸着材料の体積平均径の測定は、規格ISO 13322−2:2006による撮像による吸着材料のサンプルの粒径分布の分析によって、カメラの対物レンズの前にサンプルを通過させるコンベヤベルトを使用して行う。
【0138】
次いで、規格ISO 9276−2:2001を利用して、粒径分布から体積平均径を計算する。本文献において、「体積平均径」または「サイズ」という名称は、ゼオライト吸着材料に使用する。本発明の文脈で有用である吸着材料のサイズ範囲での精度は、およそ0.01mmである。
【0139】
ゼオライト吸着材料の形状係数
走査型電子顕微鏡法により、ゼオライト吸着材料の形態の観測および目視評価が可能となる。映像取り込みおよび画像解析に基づく形態計測により、粒子の形態に特徴的な定量化可能なパラメータが利用できるようになる。各種の市販デバイスが存在し、一例として、インターネットページwww.malvern.com、www.retsch−technology.comまたはwww.occhio.beに記載されている、Malvern製のMorphologi G2、Retsch製のCamsizer、Occhio製のAlpaga 500 Nanoの装置を挙げることができる。
【0140】
Alpaga 500 Nano装置を使用して、試験を行う各サンプルに付き10000個の粒子を取り込み、各粒子について伸び率および真円度のパラメータを計算する。
【0141】
これらの計算に使用する数学的ツールは、E.Pirardの博士論文(1993,University of Liege,253ページ)、Euclidian morphometry of flat figures.Applications to the analysis of granular materialsで詳説されている。The descriptive and quantitative representation of particle shape and morphologyという名称の文献が、参考文献ISO/DIS 9276−6で入手できる。
【0142】
真球度は、例えば特許出願WO 2008/152 319に記載されているような、以下の2つのパラメータを使用して評価する:
−真円度は、パーセンテージで表され、粒子の輪郭点に正接である、粒子に内接する円の分布モーメントから、複雑なフィルタリングによって計算する;真円度は、粒子の曲率半径の変動を表し、摩耗工程における細粒の成熟度を反映する。穏やかな凹凸は、極めて突出している凹凸よりも重要である。粒子の形状が完全な真球度に近づけば近づくほど、真円度は100%に近くなる;
−伸び率は、パーセンテージで表され、場合により文献では「楕円形状係数」と呼ばれ、粒子の慣性楕円の長軸aおよび短軸bとの間の比から、式A=100(1−a/b)に従って計算する。伸び率は球状物では0に等しく、真球度から逸脱する形状では増大し、繊維などの細長い粒子では100に近づく傾向がある。
【0143】
ゼオライト吸着材料の機械的強度
本発明に記載するゼオライト吸着材料の床の粉砕強度は、Shell法シリーズSMS1471−74(Shell Method Series SMS1471−74 Determination of Bulk Crushing Strength of Catalysts.Compression−Sieve Method)に従ってキャラクタリゼーションされ、該Shell法シリーズはVinci Technologies社が販売するBCS Tester装置に関連付けられている。この方法は、最初は3mmから6mmの触媒のキャラクタリゼーション向けであったが、425μmふるいの使用に基づき、とりわけ粉砕中に生じる微粉を分離することが可能となる。425μmふるいの使用は、1.6mm超の直径を有するゼオライト吸着材料になお適しているが、キャラクタリゼーションが望まれる吸着材料の粒径に従って適応させるべきである。
【0144】
本発明による方法で使用する吸着材料は、好ましくはビーズの形態であり、0.2mmから0.6mmの間および特に0.3mmから0.6mmの間の体積平均径を有する。結果として、Shell法規格SMS1471−74で示した425μmふるいの代わりに100μmふるいを使用する。
【0145】
測定プロトコルは以下の通りである:事前に適切なふるい(100μm)によってふるい分けして、事前に(Shell法規格SMS1471−74に示された300℃の代わりに)250℃のオーブン内で少なくとも2時間乾燥させたゼオライト吸着材料の20cm
3のサンプルを、内断面が既知の金属製シリンダに入れる。このサンプルに対して、鋼球の床5cm
3を通じてピストンによって加える力を段階的に増大させて、吸着材料凝集体にピストンによって加えられる力をより良好に分散させる(直径が厳密に1.6mm未満の球形状の粒子には、直径2mmのボールを使用)。各種の圧力段階で得た微粉をふるい分け(約100μmのふるい)によって分離して、秤量する。
【0146】
バルク粉砕強度は、ふるいを通過する微粉の累積量がサンプルの0.5重量%である、メガパスカル(MPa)での圧力によって求める。この値は、得られた微粉の質量を吸着材料床に印加された力の関数としてグラフにプロットして、累積微粉0.5質量%まで内挿することによって得る。機械的バルク粉砕強度は、典型的には、数百kPaから数十MPaの間および一般に0.3MPaから3.2MPaの間である。精度は従来、0.1MPa未満である。
【0147】
メソ細孔のミクロ細孔容積、外表面積および直径
吸着材料の結晶性も、吸着材料のミクロ細孔容積を測定して、これを好適な参照(同じバインダー含有率を有し、同じカチオン性処理条件下で100%結晶性ゼオライトまたは理論的ゼオライトを有する、吸着材料)のミクロ細孔容積と比較することによって評価する。このミクロ細孔容積は、窒素などのガスの、これらの液化温度における吸着等温線の測定から求める。
【0148】
吸着の前に、ゼオライト吸着材料を300℃から450℃の間で、9時間から16時間の間の時間にわたって、真空下(P<6.7×10
−4Pa)で脱気する。次いで、77Kにおける窒素吸着等温線の測定をMicromeritics製のASAP 2020M装置で、0.002から1の間の比P/P
0を有する相対圧にて少なくとも35個の測定点を取って行う。
【0149】
ミクロ細孔容積および外表面積は、得られた等温線から、tプロット法により、規格ISO 15901−3:2007を適用して、ジュラ−ハーキンスの式(Harkins−Jura equation)によって統計的厚さtを計算することによって求める。ミクロ細孔容積および外表面積は、それぞれy軸から原点までおよび線形進行の傾きから、0.45から0.57nmの間のtプロットの点に対する線形回帰によって得る。評価したミクロ細孔値は、無水吸着材料1グラム当たりの液体吸着質のcm
3で表す。外表面積は、無水吸着材料1グラム当たりのm
2で表す。
【0150】
Barrett−Joyner−Halenda法(BJH法、1951に提案)による77Kにおける窒素吸着等温線の相互貫入によっても、細孔径分布およびとりわけメソ細孔分布を得ることが可能となる。容積によるメソ細孔径分布は、平均細孔径の関数としての曲線dV/d(d)によって表される。
【0151】
マクロ細孔およびメソ細孔容積ならびに細粒密度
マクロ細孔容積およびメソ細孔容積は、水銀圧入ポロシメトリーによって測定する。Micromeritics製のAutopore(R)9500水銀ポロシメータを使用して、マクロ細孔およびメソ細孔に含有される細孔容積の分布を分析する。
【0152】
規格ASTM D4284−83に関連する装置の操作マニュアルに記載されている実験方法は、事前に秤量した吸着材料のサンプル(測定されるゼオライト性粒状物質)(既知の強熱減量)をポロシメータセルに入れ、次いで最初の脱気(少なくとも10分間にわたって30μmHgの真空圧)後、セルに水銀を所与の圧力(0.0036MPa)で充填し、次いで圧力を段階的に400MPaまで上昇させて印加して、水銀をサンプルの細孔網目に徐々に浸透させるものである。
【0153】
印加圧力と見かけの細孔径との間の関係は、円筒状細孔、水銀と細孔壁との間の140°の接触角および485ダイン/cmの水銀表面張力を仮定することによって確立される。印加圧力の関数として導入された水銀の累積量を記録する。水銀がすべての細粒間物間空隙を充填する以上の値を0.2MPaに設定し、この値を超えると、水銀が粒状物質の細孔に浸透すると考えられる。次いで、この圧力(0.2MPa)における水銀の累積体積をポロシメータセルの容積から引き、この差を無水換算粒状物質の質量、即ち強熱減量について補正した前記物質の質量で割ることによって、細粒体積(Vg)を計算する。細粒密度は、粒状物体積(Vg)の逆数であり、1cm
3当たりの無水吸着材料のグラム数で表す。
【0154】
粒状物質のマクロ細孔容積は、0.2MPaから30MPaの間の圧力にて導入された水銀の累積体積であるとして定義され、見かけの直径が50nm超の細孔に含有される容積に相当する。粒状物質のメソ細孔容積は、30MPaから400MPaの間の圧力にて導入された水銀の累積体積であるとして定義される。
【0155】
本出願において、cm
3・g
−1で表されるゼオライト吸着材料のマクロ細孔容積およびメソ細孔容積は、このように水銀圧入によって測定され、無水換算のサンプルの質量、即ち強熱減量について補正した前記物質の質量に関連付けられる。
【0156】
ゼオライト吸着材料の強熱減量
強熱減量は、規格NF EN 196−2(April 2006)に記載されているように、酸化雰囲気下で、950℃±25℃の温度での空気中でサンプルを焼成することによって求められる。測定値の標準偏差は、0.1%未満である。
【0157】
[実施例A]
XPH結晶からのペーストの調製
Inayatら(Angew.Chem.Int.Ed.,51,(2012),1962−1965)の手順に従って合成したメソ細孔性ゼオライトX結晶の無水換算値1600g、カオリンの無水換算値350g、商品名Klebosol(R)30の商標名で販売されているコロイダルシリカ130g(30重量%のSiO
2および0.5%のNa
2Oを含有)および混合物の押出を可能にする量の水から成る、均質混合物。形成を行う前のペーストの強熱減量は、44%である。
【0158】
[実施例B]
直径1.6μmのX結晶からのペーストの調製
特許出願WO 2008/009845)の手順Bに記載された手順に従って合成したゼオライトX結晶の無水換算値1600g、カオリンの無水換算値300g、Klebosol(R)30の商標名で販売されているコロイダルシリカ130g(30重量%のSiO
2および0.5%のNa
2Oを含有)および混合物の押出を可能にする量の水から成る、均質混合物を調製する。
【0159】
[実施例C]
押出/粉砕/ふるい分けによる凝集吸着材料の調製
上の手順AまたはBに従って調製したペーストを用いて開始し、直径1.6mmの押出物を形成する。押出物を80℃の通風オーブン内で終夜乾燥させる。押出物を次いで、550℃にて窒素流下で2時間、次いで550℃にて除炭酸空気流下で2時間焼成し、次いで粉砕して、所望の粒径におけるふるい分けによって細粒、即ち粒径0.4mmの粉砕物質(体積平均径が0.4mmに等しくなるように、0.3から0.5mmの間の等直径を有する粉砕物質の選択によって得られる。)を得る。
【0160】
[実施例D]
造粒/ふるい分けによる凝集吸着材料の調製
手順AまたはBに従って調製したペーストを造粒プレート上で使用して、凝集吸着材料のビーズを作製する。得られたビーズのふるい分けによる選択は、所望の粒径にて行い、即ち:
−粒径0.4mmのビーズ:体積平均径が0.4mmに等しくなるように、0.3から0.5mmの間の直径を有するビーズの選択;
−粒径0.54mmのビーズ:体積平均径が0.54mmに等しくなるように、0.3から0.8mmの間の直径を有するビーズの選択;
−粒径0.7mmのビーズ:体積平均径が0.7mmに等しくなるように、0.4から1.0mmの間の直径を有するビーズの選択。
【0161】
ビーズを80℃の通風オーブン内で終夜乾燥させる。ビーズを次いで窒素流下で550℃にて2時間、次いで除炭酸乾燥空気流下で550℃にて2時間にわたって焼成する。
【0162】
[実施例E]
ゼオライト化(任意選択)
実施例CまたはDで得た粒状物またはビーズを100℃±1℃の温度に調節したジャケット付きガラス製反応装置に入れ、濃度100g・L
−1の水酸化ナトリウム水溶液1.5Lを次いで添加し、反応媒体を3時間撹拌しておく。粒状物を次いで3回の連続洗浄操作で水により洗浄して、続いて反応装置を空にする。10から10.5の間である洗浄水の最終pHを測定することによって、洗浄効果を確認する。
【0163】
[実施例F]
交換−活性化
工程CまたはDまたは場合によりEで得た粒状物またはビーズを、95℃の0.7Mバリウムクロリド(BaCl
2)水溶液によって4工程で交換する。各工程において、溶液/固体の質量の体積比は20mL・g
−1であり、交換は毎回4時間継続する。各交換の間、固体を複数回洗浄して、過剰なBaCl
2を遊離させる。次いで、固体を80℃にて2時間乾燥させ、最終的に250℃の温度にて窒素流下で2時間にわたって活性化させる。
【0164】
[比較例1]
粒径0.4mmの粉砕物質(即ち、非球状成分)の形態の吸着材料を、実施例A、CおよびEに記載した連続工程から調製する。この吸着材料を、記載した技法に従ってキャラクタリゼーションする。
【0165】
全バリウム交換度は97%であり、強熱減量(900℃にて測定)は5.5%である。真空下での400℃、10時間にわたる脱気後の77Kにおける窒素吸着等温線からtプロット法に従って測定したミクロ細孔容積および外表面積はそれぞれ0.192cm
3・g
−1および70m
2・g
−1である。
【0166】
水銀浸透によって測定した、マクロ細孔およびメソ細孔に含有される全容積(マクロ細孔容積およびメソ細孔容積の和)は、0.33cm
3・g
−1である。比(マクロ細孔容積)/(マクロ細孔容積+メソ細孔容積)は、0.6に等しい。吸着材料の細粒密度(無水換算サンプルの質量を、0.2MPaの圧力にて導入した水銀の体積から評価したサンプルの体積で割ることによって計算)は、1.10g・cm
−3無水換算値である。
【0167】
吸着材料を使用して、内径0.77cmおよび長さ1mで、端部に濾過用格子を備えたステンレス鋼カラムに充填する。強熱減量を5.5%にて測定した吸着材料を用いて、少なくとも3回の充填を行って、吸着材料の平均充填密度値を概算して、0.730±0.010g・cm
−3を得て、これにより床多孔率、即ちカラム容積に対する吸着材料の細粒間の空隙の割合を37.3±0.8%として評価することが可能となる。粉砕形態の吸着材料の真円度は57%であり、伸び率は9%である。
【0168】
[実施例2]
(本発明による)
吸収材料を、実施例A、DおよびEに記載した連続工程から粒径0.4mmのビーズの形態で調製する。このように調製した吸着材料を、記載した技法に従ってキャラクタリゼーションする。
【0169】
全バリウム交換度は96.4%であり、強熱減量(900℃にて測定)は5.40%である。真空下での400℃、10時間にわたる脱気後の77Kにおける窒素吸着等温線からtプロット法に従って測定したミクロ細孔容積および外表面積はそれぞれ、0.195cm
3・g
−1および63m
2・g
−1である。
【0170】
水銀浸透によって測定した、マクロ細孔およびメソ細孔に含有される全容積(マクロ細孔容積およびメソ細孔容積の和)は、0.31cm
3・g
−1である。比(マクロ細孔容積)/(マクロ細孔容積+メソ細孔容積)は、0.65に等しい。吸着材料の細粒密度(無水換算サンプルの質量を、0.2MPaの圧力にて導入した水銀の体積から評価したサンプルの体積で割ることによって計算)は、1.14g・cm
−3無水換算値である。
【0171】
このように調製した吸着材料を使用して、内径0.77cmおよび長さ1mで、端部に濾過用格子を備えたステンレス鋼カラムに充填する。強熱減量を5.4%にて測定した吸着材料の複数回の充填を行って、吸着材料の平均充填密度値を概算して、0.764±0.008g・cm
−3を得て、これにより床多孔率、即ちカラム容積に対する吸着材料の細粒間の空隙の割合を33.0±0.7%として評価することが可能となる。
【0172】
ビーズの形態の吸着材料の真円度は77%であり、伸び率は3%である。
【0173】
実施例1および実施例2の吸着材料の比較によって、真球度に近い形態を示す、真円度が77%の凝集体による充填中の床多孔率が、真円度が57%の粉砕凝集体による充填中に得た床多孔率より完全に低い、4%超であることが示される。床多孔率がより低い床により、凝集体の緻密性がより大きい、即ち床容積当たりの吸着材料の量がより多いことが示され、結果として、パラキシレンの分離におけるこれらの吸着材料の使用中の生産効率がより高くなる。特に、生産効率は、単位時間当たりおよび床容積当たりの生産されたパラキシレンの量に相当する。
【0174】
[実施例3]
充填試験およびキシレン分離性能
吸着材料は、異なる粒径:0.4mm−0.54mm(本発明による)および0.7mm(比較)の、真円度が80%に等しいビーズの形態で、以下の連続工程から調製する:
−階層的多孔性を有するX型ゼオライトFAU(メソ細孔性ゼオライトFAU X)の結晶から開始する吸着材料のための、工程A、DおよびF
−直径1.6μmのX結晶から開始する吸着材料のための、工程B、D、EおよびF。
【0175】
これらの各種の吸着材料に試験を行い、直径2cmの直列の12個のカラムから成る模擬向流クロマトグラフィーパイロットで、パラキシレンの分離におけるこれらの性能を評価する。複数のカラム長:0.5m、1mまたは2mを使用してよい。最後のカラムと最初のカラムとの間の循環は、リサイクルポンプによって行う。各カラム間の連結部にて、分離される供給原料または脱着剤のどちらかを注入してもよい。ラフィネートまたは抽出物のどちらかも抜き出してよい。
【0176】
一式のカラムおよび供給弁を175℃のオーブンに入れ、圧力を15バール(1.5MPa)超に維持する。各種の注入箇所または抜き出し箇所の移動は、調整され得る置換期間(permutation time)に従ってシミュレートする。床は、以下の構成に従って、4つのクロマトグラフィー区画に分割する:
−脱着剤の注入と抽出物の抜き出しとの間の2床
−抽出物の抜き出しと供給原料の注入との間の5床
−供給原料の注入とラフィネートの抜き出しとの間の3床
−ラフィネートの抜き出しと脱着剤の注入との間の2床。
【0177】
供給原料は、21.3%のパラキシレン、19.6%のオルトキシレン、45.1%のメタキシレンおよび14.0%のエチルベンゼンで構成される。使用する脱着剤は、パラジエチルベンゼンである。上のパーセンテージは、重量パーセンテージとして表されている。
【0178】
第1段階において、以下で「A(比較)」と表記する、先行技術による吸着材料を使用する試験を行う。A(比較)は、凝集体(真円度80%)の真球度のために、より小さい床多孔率により、カラムの充填の最適化を可能にする、粉砕物質ではなく、球状ビーズ(工程D)を得るために造粒によって行う形成工程を除いて、特許WO 2008/009845の実施例4と同じ方法で調製した、数平均径1.6μmのゼオライトX結晶から調製した粒径0.7mmの吸着材料である。本試験によって、99.7%の純度および少なくとも98%の収率でパラキシレンを得るために必要な供給原料および脱着剤の注入速度を求めることが可能となる。
【0179】
長さ2mの、参照吸着材料を充填したカラムを使用して、供給原料を40.8g・min
−1の速度で、脱着剤を48.7g・min
−1の速度で注入することによって、パラキシレンを収率98.5%で抽出物として得る。第1のカラムと最後のカラムとの間で測定した圧力差は、3.5バール(0.35MPa)であった。
【0180】
その後、同じ注入速度、即ち供給原料の速度および脱着剤の速度を適用することにより、ならびに99.7%の純度を得られるように吸着装置における区画流速を調節することによって、すべての吸着材料に試験を行った。収率を表1に示し、表1では必要な最低収率レベルが98%であることが示されている。
【0181】
2m長のカラムに最初に、XPH結晶で調製した吸着材料の、参照吸着材料と同じ粒径、即ち0.7mmのビーズを充填する。供給原料および脱着剤の注入速度を適用することによって、98.5%の収率が達成される。これらの動作条件下で、第1のカラムと最後のカラムとの間で測定した圧力差(ΔP)は、参照の場合と比較して上昇し、3.7バール(0.37MPa)まで上昇する。この圧力上昇を考慮すると、当業者は、線形圧力損失がビーズの粒径が縮小するにつれて増大することを考慮して、XPH結晶から調製した吸着材料ビーズの直径を縮小しようとは思わないだろう。
【0182】
しかし、階層的多孔性を有するゼオライトX結晶(XPH)を主成分とする吸着材料の粒径が縮小したビーズ、即ち本発明による吸着材料(本明細書では以下、「A(発明)」と表記)を使用する試験により、参照ケースに等しい供給原料および脱着剤の流速、それぞれ40.8g・min
−1および48.7g・min
−1で注入し、同時により短いカラムを使用して、即ちより少量の吸着材料を使用して、このようにすることでユニット内での圧力損失を上昇させずに、収率が少なくとも98%のパラキシレン(純度99.7%)を得られることが示される。同じカラム長および直径1.6μmの従来のゼオライトX結晶で調製した吸着材料の同じ粒径のビーズを用いて行った比較試験によって、要求される性能のパラキシレンを得ることはできない(収率98%未満)。
【0183】
例えば、粒径0.54mmの本発明による吸着材料を用いると、1mカラムが使用でき、パラキシレンが収率98.5%で製造でき、粒径0.4mmの本発明による吸着材料を用いると、0.5mカラムが使用でき、パラキシレンが収率98.7%で製造できる。これらの試験では、第1のカラムと最後のカラムとの間で測定した圧力差は、それぞれ3.4バール(0.34MPa)および3.5バール(0.35MPa)であり、参照ケースより低いか、または同一である。
【0184】
本実施例において、本発明によるゼオライト吸着材料、即ち粒径(体積平均径)が0.4mmおよび0.54mmのXPH型の結晶を主成分とする2つの吸着材料を使用することにより、同じ注入供給原料の流速ならびに純度/収率性能でのカラム長の短縮が可能となり、このことによって(従来型のX結晶を主成分とする)従来の吸着材料に対する生産効率の向上が可能となると思われる。特に、生産効率は、単位時間当たりおよび床容積当たりの生産されたパラキシレンの量に相当する。
【0185】
【表1】