(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
<添加剤、表面処理剤>
本発明の添加剤は、ラテックス凝集反応用試薬に用いられるラテックス粒子に添加するための添加剤であって、前記ラテックス粒子が、ブロッキング処理されていないラテックス粒子であり、親水性繰り返し単位(A):全繰り返し単位中、60質量%超99質量%以下と、疎水性繰り返し単位(B):全繰り返し単位中、1質量%以上40質量%未満とを有し、重量平均分子量が3000以上のポリマーを含むことを特徴とするものである。
本発明の表面処理剤は、ラテックス凝集反応用試薬に用いられるラテックス粒子の表面処理に使用するための表面処理剤であって、親水性繰り返し単位(A):全繰り返し単位中、60質量%超99質量%以下と、疎水性繰り返し単位(B):全繰り返し単位中、1質量%以上40質量%未満とを有し、重量平均分子量が3000以上のポリマーを含むことを特徴とするものである。
ここで、本明細書において、「ブロッキング処理されていないラテックス粒子」とは、アルブミン、カゼイン、ゼラチン、スキムミルク等の生物由来物質、ブロッキング試薬N101(日油社)、ブロッキング試薬N102(日油社)、Lipidure(登録商標)−BL103、BL203、BL802(日油社)等の合成ポリマー等を用いたブロッキング処理(表面処理)が未だ施されていないラテックス粒子のことをいう。
また、本明細書において、「表面処理」とは、特定ポリマーがラテックス粒子の表面の一部又は全部に付着するように特定ポリマーとラテックス粒子とを直接接触させることをいう。
なお、本発明の添加剤、表面処理剤は、特定ポリマーに該当するもののうち、1種のみを含んでいても2種以上を含んでいてもよい。また、本明細書において、数値範囲等を表す「A〜B」はA以上、B以下を意味し、A及びBをその数値範囲に含む。
次に、特定ポリマーについて説明する。
【0022】
(繰り返し単位(A))
特定ポリマーは、親水性繰り返し単位(A)を有する。これにより、添加剤、表面処理剤を用いた際に、ラテックス粒子への非特異吸着を抑制しやすくなる。
また、特定ポリマーは、親水性繰り返し単位(A)を、全繰り返し単位中60質量%超99質量%以下有する。繰り返し単位(A)の含有量が60質量%以下であると、ラテックス凝集反応用試薬保存中における凝集が発生しやすくなる。また、99質量%を超えると、特定ポリマーがラテックス粒子に充分に付着せず、上記と同様にラテックス凝集反応用試薬保存中における凝集が発生しやすくなる。
【0023】
また、「親水性」とは、水との親和力が強い性質を持つことを意味する。具体的には1種の繰り返し単位のみからなるホモポリマー(実施例の測定法による数平均分子量が1万程度のもの)とした場合に、常温(25℃)において純水100gに対して1g以上溶解する場合にはその繰り返し単位は親水性である。
【0024】
上記繰り返し単位(A)の含有量は、ラテックス凝集反応用試薬保存中における凝集を抑制する観点から、全繰り返し単位中、好ましくは65質量%以上、より好ましくは70質量%以上、特に好ましくは75質量%以上であり、また、特定ポリマーを粒子に付着させた後に、粒子表面から剥離しにくくなる観点から、全繰り返し単位中、好ましくは97.5質量%以下、特に好ましくは95質量%以下である。
特に、繰り返し単位(A)の含有量を75質量%以上とすることによって、ラテックス凝集反応用試薬を高温条件下で長期間保存した場合でもラテックス粒子が凝集しにくくなる。
なお、各繰り返し単位の含有量は
13C−NMR等により測定可能である。
【0025】
また、特定ポリマーとしては、ポリアルキレングリコール鎖、双性イオン構造、複素環基(モルホリノ基等)、エステル結合、アミド結合、ヒドロキシ基、エポキシ基、イソシアナート基、ブロックイソシアナート基、無水カルボン酸基及びアミノ基から選ばれる1種又は2種以上を繰り返し単位(A)に含むものが好ましい。なお、特定ポリマーは、上記ポリアルキレングリコール鎖等を繰り返し単位(A)の主鎖に有していても側鎖に有してもよいが、繰り返し単位(A)の側鎖に有するのが好ましい。上記特定ポリマーの中では、ポリアルキレングリコール鎖、双性イオン構造、複素環基、エステル結合及びアミド結合から選ばれる1種又は2種以上を繰り返し単位(A)に含む特定ポリマーがより好ましい。
双性イオン構造としては、第4級アンモニウム塩型カチオン性官能基と、−(C=O)O
-、−SO
3-及び−O−(O=P−O
-)−O−から選ばれる1価又は2価のアニオン性官能基とを有するものが好ましい。
ポリアルキレングリコール鎖としては、−(R
1O)n−で表されるものが好ましい(R
1は、炭素数2〜4のアルカンジイル基を示し、nは、平均値で2〜100を示す)。
R
1で示されるアルカンジイル基の炭素数は、好ましくは2又は3であり、より好ましくは2である。
また、R
1で示されるアルカンジイル基は直鎖状でも分岐状でもよく、具体的には、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基等が挙げられる。これらの中でも、本発明の所望の効果や入手容易性等の観点から、エタン−1,2−ジイル基が好ましい。なお、n個のR
1は同一でも異なっていてもよい。
nは、平均値で2〜100を示すが、好ましくは平均値で4〜90であり、より好ましくは平均値で8〜90であり、更に好ましくは平均値で8〜60であり、更に好ましくは平均値で8〜40であり、特に好ましくは平均値で9〜25である。
なお、本明細書における各「平均値」はNMRで測定できる。例えば、下記式(2)の構造について、
1H−NMRを測定し、R
1で示されるアルカンジイル基と、R
2で示されるアルキル基の末端のメチル基との、それぞれのプロトンピークの積分値を比較することで、nの平均値を算出可能である。
【0026】
繰り返し単位(A)としては、不飽和結合を末端又は非末端に有するモノマーに由来する繰り返し単位が挙げられる。具体的には、(メタ)アクリルアミド系モノマーに由来する繰り返し単位(以下、(メタ)アクリルアミド系繰り返し単位とも称する)、(メタ)アクリレート系モノマーに由来する繰り返し単位(以下、(メタ)アクリレート系繰り返し単位とも称する)、スチレン系モノマーに由来する繰り返し単位(以下、スチレン系繰り返し単位とも称する)、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系モノマーに由来する繰り返し単位等が挙げられる。なお、繰り返し単位(A)としてこれらのうち1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、繰り返し単位(A)としては、(メタ)アクリルアミド系繰り返し単位、(メタ)アクリレート系繰り返し単位、スチレン系繰り返し単位が好ましく、(メタ)アクリルアミド系繰り返し単位、(メタ)アクリレート系繰り返し単位がより好ましい。なお、(メタ)アクリレート系繰り返し単位の含有量は、繰り返し単位(A)全量に対して、0〜90質量%が好ましく、0〜80質量%がより好ましく、0〜70質量%が特に好ましい。
なお、上記のとおり繰り返し単位(A)は、ポリアルキレングリコール鎖、双性イオン構造や、モルホリノ基等の複素環基等を側鎖等に有していてもよい。また、これら基のうち1種を単独で有していても2種以上を有していてもよい。
【0027】
ここで、繰り返し単位(A)のうち、ポリアルキレングリコール鎖を側鎖に有する親水性繰り返し単位(以下、繰り返し単位(A−1)とも称する)について具体的に説明する。
繰り返し単位(A−1)としては、上記不飽和結合を末端又は非末端に有するモノマーとして例示したモノマー種と同様のモノマーに由来する繰り返し単位が挙げられるが、(メタ)アクリレート系繰り返し単位が特に好ましい。
【0028】
また、繰り返し単位(A−1)は、ポリアルキレングリコール鎖の末端に水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基が結合していることが好ましい。このような繰り返し単位(A−1)としては、例えば、下記式(1)で表される構造を側鎖に有する親水性繰り返し単位が挙げられ、斯かる場合、下記式(2)で表される親水性繰り返し単位が好ましい。
【0030】
〔式(1)中、
R
2は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、
R
1及びnは、前記と同義である。〕
【0032】
〔式(2)中、
R
3は、水素原子又はメチル基を示し、
R
4は、−O−、*−(C=O)−O−、*−NR
5−(C=O)−(R
5は、水素原子又は炭素数1〜10の有機基を示し、*は、式(2)中のR
3が結合している炭素原子と結合する位置を示す)又はフェニレン基を示し、
その他の記号は式(1)中の記号と同義である。〕
【0033】
ここで、式(1)及び(2)中の各記号について説明する。
【0034】
R
2は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。R
2で示されるアルキル基の炭素数は、本発明の所望の効果や入手容易性等の観点から、好ましくは1〜3であり、より好ましくは1又は2であり、更に好ましくは1である。また、R
2で示されるアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
斯様なR
2の中でも、本発明の所望の効果や入手容易性等の観点から、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、水素原子、炭素数1又は2のアルキル基がより好ましく、水素原子又はメチル基が更に好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0035】
また、R
4は、−O−、*−(C=O)−O−、*−NR
5−(C=O)−又はフェニレン基を示す。斯かるフェニレン基としては、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基が挙げられる。
【0036】
また、上記R
5で示される有機基の炭素数は1〜10であるが、好ましくは1〜6である。上記有機基としては、炭化水素基が挙げられる。斯かる炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を包含する概念である。
【0037】
上記R
5における脂肪族炭化水素基は直鎖状でも分岐状でもよく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基が挙げられる。
また、上記脂環式炭化水素基は、単環の脂環式炭化水素基と橋かけ環炭化水素基に大別される。上記単環の脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。また、橋かけ環炭化水素基としては、イソボルニル基等が挙げられる。
また、上記芳香族炭化水素基としては、フェニル基等のアリール基が挙げられる。
【0038】
上述のようなR
4の中でも、*−(C=O)−O−が特に好ましい。
【0039】
繰り返し単位(A−1)を構成するモノマーとしては、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いたものでもよい。
【0040】
次に、繰り返し単位(A)のうち、双性イオン構造を側鎖に有する親水性繰り返し単位(以下、繰り返し単位(A−2)とも称する)について具体的に説明する。
繰り返し単位(A−2)としては、上記不飽和結合を末端又は非末端に有するモノマーとして例示したモノマー種と同様のモノマーに由来する繰り返し単位が挙げられるが、(メタ)アクリレート系繰り返し単位が特に好ましい。具体的には、下記式(3)又は(4)で表される親水性繰り返し単位が挙げられる。なお、式(3)で表される親水性繰り返し単位と式(4)で表される親水性繰り返し単位の両方を含んでいてもよい。
【0042】
〔式(3)中、
R
6は、水素原子又はメチル基を示し、
R
7は、炭素数2〜4のアルカンジイル基を示し、
R
8は、炭素数1〜10のアルカンジイル基を示し、
R
9、R
10及びR
11は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、
qは、平均値で1〜10を示す。〕
【0044】
〔式(4)中、
Yは、−(C=O)O
-、−(O=S=O)O
-、−O(O=S=O)O
-、−(S=O)O
-、−O(S=O)O
-、−OP(=O)(OR
17)O
-、−OP(=O)(R
17)O
-、−P(=O)(OR
17)O
-、又は−P(=O)(R
17)O
-を示し(R
17は炭素数1〜3のアルキル基を示す)、
R
12は、水素原子又はメチル基を示し、
R
13及びR
14は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の2価の有機基を示し、
R
15及びR
16は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の炭化水素基を示す。〕
【0045】
式(3)中、R
7は、炭素数2〜4のアルカンジイル基を示す。なお、R
7が複数ある場合、R
7は同一でも異なっていてもよい。
また、R
7で示されるアルカンジイル基の炭素数は、好ましくは2又は3であり、より好ましくは2である。
また、R
7で示されるアルカンジイル基は直鎖状でも分岐状でもよく、具体的には、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基等が挙げられる。これらの中でも、本発明の所望の効果や入手容易性等の観点から、エタン−1,2−ジイル基が好ましい。
【0046】
また、R
8は、炭素数1〜10のアルカンジイル基を示す。
R
8で示されるアルカンジイル基の炭素数は、好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜4であり、更に好ましくは2又は3であり、特に好ましくは2である。
また、R
8で示されるアルカンジイル基は直鎖状でも分岐状でもよく、好適な具体例としては、上記R
7で示されるアルカンジイル基と同様のものが挙げられる。
【0047】
また、R
9、R
10及びR
11は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示すが、炭素数1〜8の炭化水素基が好ましい。斯かる炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜4であり、より好ましくは1又は2であり、特に好ましくは1である。
また、上記炭化水素基としては、アルキル基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基が挙げられるが、アルキル基が好ましい。
上記アルキル基は直鎖状でも分岐状でもよく、好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
【0048】
また、qは、平均値で1〜10を示すが、好ましくは平均値で1〜7であり、より好ましくは平均値で1〜4であり、更に好ましくは1である。
【0049】
式(3)で表される繰り返し単位を構成するモノマーとしては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、(2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシエチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2'−(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2'−(トリブチルアンモニオ)エチルホスフェート等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いたものでもよい。
【0050】
式(4)中、Yとしては、−(C=O)O
-が好ましい。なお、R
17で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。
また、式(4)中、R
13及びR
14は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の2価の有機基を示す。斯かる2価の有機基の炭素数は、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6である。
また、上記2価の有機基としては、2価の炭化水素基が好ましく、2価の脂肪族炭化水素基がより好ましい。当該2価の脂肪族炭化水素基は、直鎖状でも分岐状でもよい。また、2価の脂肪族炭化水素基としては、アルカンジイル基が好ましい。例えば、メタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基等が挙げられる。
【0051】
また、式(4)中、R
15及びR
16は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の炭化水素基を示す。当該炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4である。
R
15及びR
16で示される炭化水素基としては、アルキル基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基が挙げられるが、アルキル基が好ましい。当該アルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
【0052】
式(4)で表される繰り返し単位を構成するモノマーとしては、N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−プロピルスルホベタイン等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いたものでもよい。
【0053】
ここで、特定ポリマーとしては、繰り返し単位(A)として(メタ)アクリルアミド系繰り返し単位を少なくとも含むものが好ましい。(メタ)アクリルアミド系繰り返し単位の含有量は、繰り返し単位(A)全量に対して、10〜100質量%が好ましく、20〜100質量%がより好ましく、30〜100質量%が特に好ましい。
【0054】
(メタ)アクリルアミド系繰り返し単位は、上記ポリアルキレングリコール鎖や双性イオン構造を側鎖に有するものであってもよいが、下記式(5)又は(6)で表される親水性繰り返し単位が特に好ましい。なお、式(5)で表される親水性繰り返し単位と式(6)で表される親水性繰り返し単位の両方を含んでいてもよい。また、繰り返し単位(A)としては、ラテックス凝集反応用試薬保存中における凝集を抑制する観点から、式(6)で表される親水性繰り返し単位を少なくとも含むものがより好ましい。
【0056】
〔式(5)中、
R
18は、水素原子又はメチル基を示し、
R
19及びR
20は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。〕
【0058】
〔式(6)中、
R
21は、水素原子又はメチル基を示し、
R
22及びR
23は、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルカンジイル基を示す。〕
【0059】
式(5)中、R
19及びR
20は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はヒドロキシアルキル基を示す。
【0060】
R
19、R
20で示されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜3である。
また、上記R
19、R
20で示されるアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよく、好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。
【0061】
また、R
19、R
20で示されるヒドロキシアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜3である。ヒドロキシアルキル基に含まれるアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよく、ヒドロキシアルキル基の好適な具体例としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシイソプロピル基が挙げられる。なお、ヒドロキシアルキル基におけるヒドロキシ基の置換位置は任意である。
【0062】
式(5)で表される繰り返し単位を構成するモノマーとしては、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
式(6)中、R
22及びR
23は、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルカンジイル基を示す。斯かるアルカンジイル基の炭素数は、好ましくは1〜2である。
また、上記アルカンジイル基は直鎖状でも分岐状でもよいが、直鎖状が好ましい。好適な具体例としては、メタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基が挙げられる。
【0064】
式(6)で表される繰り返し単位を構成するモノマーとしては、4−(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
【0065】
なお、特定ポリマーは、繰り返し単位(A)として、アニオン性繰り返し単位を含んでいてもよい。当該繰り返し単位としては、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基等のアニオン性基を有する繰り返し単位が挙げられ、これらを1個有していてもよく、2個以上有していてもよい。繰り返し単位(A)が有するアニオン性基は、塩を形成していてもよく、その場合の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;有機アンモニウム塩等が挙げられる。
アニオン性繰り返し単位を構成するモノマーとしては、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその塩;(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸又はその塩;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホ基含有重合性不飽和モノマー又はその塩;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等のリン酸基含有重合性不飽和モノマー又はその塩が挙げられる。また、アニオン性繰り返し単位を構成するモノマーは、アクリル酸エステルの加水分解物;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸の酸無水物の加水分解物;グリシジルメタクリレートや(4−ビニルベンジル)グリシジルエーテル等のエポキシ基への酸性基含有チオールの付加物などを用いて得ることもできる。アニオン性繰り返し単位は、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いたものでもよい。
【0066】
(繰り返し単位(B))
本発明の特定ポリマーは、疎水性繰り返し単位(B)を有する。これにより、添加剤、表面処理剤を用いた際に特定ポリマーがラテックス粒子に付着しやすくなる。
【0067】
また、「疎水性」とは、水との親和力が弱い性質を持つことを意味する。具体的には1種の繰り返し単位のみからなるホモポリマー(実施例の測定法による数平均分子量が1万程度のもの)とした場合に、常温(25℃)において純水100gに対して1g未満しか溶解しない場合にはその繰り返し単位は疎水性である。
【0068】
繰り返し単位(B)の含有量は、全繰り返し単位中、1質量%以上40質量%未満である。繰り返し単位(B)の含有量が1質量%未満であると、特定ポリマーがラテックス粒子に充分に付着せず、ラテックス凝集反応用試薬保存中における凝集が発生しやすくなる。また、40質量%以上の場合も、ラテックス凝集反応用試薬保存中における凝集が発生しやすくなる。
上記繰り返し単位(B)の含有量は、特定ポリマーが粒子に付着しやすくなる観点から、全繰り返し単位中、好ましくは2.5質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、また、ラテックス凝集反応用試薬保存中における凝集を抑制する観点から、全繰り返し単位中、好ましくは38質量%以下、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、特に好ましくは25質量%以下である。
特に、繰り返し単位(B)の含有量を25質量%以下とすることによって、ラテックス凝集反応用試薬を高温条件下で長期間保存した場合でもラテックス粒子が凝集しにくくなる。
また、特定ポリマーとしては、ケト基、エステル結合、アミド結合及び芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基等のアリール基、フェニレン基等のアリーレン基)から選ばれる1種又は2種以上を繰り返し単位(B)に含むものが好ましい。なお、特定ポリマーは、上記ケト基等を繰り返し単位(B)の主鎖に有していても側鎖に有してもよいが、繰り返し単位(B)の側鎖に有するのが好ましい。
【0069】
繰り返し単位(B)としては、不飽和結合を末端又は非末端に有するモノマーに由来する繰り返し単位が挙げられる。具体的には、(メタ)アクリルアミド系モノマーに由来する繰り返し単位、(メタ)アクリレート系モノマーに由来する繰り返し単位、スチレン系モノマーに由来する繰り返し単位等が挙げられる。また、繰り返し単位(B)としてこれらのうち1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、スチレン系モノマーとしては、スチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、4−エチルスチレン、4−イソプロピルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。
これらの中でも、繰り返し単位(B)としては、(メタ)アクリルアミド系繰り返し単位、(メタ)アクリレート系繰り返し単位、スチレン系繰り返し単位が好ましく、(メタ)アクリルアミド系繰り返し単位、(メタ)アクリレート系繰り返し単位がより好ましい。
【0070】
繰り返し単位(B)としては、疎水性の向上や非特異吸着抑制の観点から、下記式(7)又は(8)で表される疎水性繰り返し単位が好ましく、アルキル(メタ)アクリレート由来の疎水性繰り返し単位、式(8)で表される疎水性繰り返し単位がより好ましい。
なお、式(7)で表される疎水性繰り返し単位と式(8)で表される疎水性繰り返し単位の両方を含んでいてもよい。
【0072】
〔式(7)中、
R
31は、水素原子又はメチル基を示し、
R
32は、−O−、*−(C=O)−O−、*−(C=O)−NR
34−、*−NR
34−(C=O)−(R
34は、水素原子又は炭素数1〜10の有機基を示し、*は、式(7)中のR
31が結合している炭素原子と結合する位置を示す)又はフェニレン基を示し、
R
33は、炭化水素基を示す。〕
【0074】
〔式(8)中、
R
35は、水素原子又はメチル基を示し、
Zは、ホルミル基又はケト基を有する有機基を示す。〕
【0075】
式(7)中の各記号について説明する。
式(7)中、R
32は、−O−、*−(C=O)−O−、*−(C=O)−NR
34−、*−NR
34−(C=O)−又はフェニレン基を示す。斯かるフェニレン基としては、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基が挙げられる。
R
32の中でも、本発明の所望の効果や入手容易性等の観点から、*−(C=O)−O−、*−(C=O)−NR
34−、フェニレン基が好ましく、*−(C=O)−O−、*−(C=O)−NR
34−がより好ましく、*−(C=O)−O−、*−(C=O)−NH−が特に好ましい。
【0076】
また、R
33は、炭化水素基を示す。当該炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜30であり、より好ましくは1〜24であり、更に好ましくは1〜18であり、特に好ましくは1〜14である。
また、R
34で示される有機基の炭素数は1〜10であるが、好ましくは1〜6である。上記有機基としては、炭化水素基が挙げられる。
【0077】
ここで、R
33、R
34における炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を包含する概念である。また、直鎖状、分岐状のいずれでもよく、環構造を含んでいてもよい。
上記R
33、R
34における脂肪族炭化水素基は直鎖状でも分岐状でもよく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基が挙げられる。
また、上記脂環式炭化水素基は、単環の脂環式炭化水素基と橋かけ環炭化水素基に大別される。上記単環の脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。また、橋かけ環炭化水素基としては、イソボルニル基等が挙げられる。
また、上記芳香族炭化水素基としては、フェニル基等のアリール基が挙げられる。
これらの中でもR
33としては、アルキル基が好ましい。その炭素数は上記と同様に、好ましくは1〜30であり、より好ましくは1〜24であり、更に好ましくは1〜18であり、特に好ましくは1〜14である。
【0078】
式(7)で表される繰り返し単位を構成するモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
次に、式(8)中の各記号について説明する。
式(8)中、R
35は、水素原子又はメチル基を示すが、好ましくは水素原子である。
【0080】
また、Zは、ホルミル基又はケト基を有する有機基を示す。当該有機基の総炭素数としては、4以上が好ましく、4〜13がより好ましく、5〜11が更に好ましく、6〜9が特に好ましい。ホルミル基又はケト基の個数は特に限定されず1個以上であればよいが、1個が好ましい。
また、Zとしては、エステル結合又はアミド結合を有するものが好ましい。エステル結合又はアミド結合の個数は特に限定されないが、1個が好ましい。
Zとしては、ホルミル基又はケト基を1個有し、且つエステル結合又はアミド結合を1個有する有機基が好ましく、下記式(9)で表される基がより好ましい。
【0082】
〔式(9)中、
X
1は、−O−又は−NH−を示し、
X
2は、ホルミル基又はケト基を有する炭素数3〜12(好ましくは炭素数4〜10、より好ましくは炭素数5〜8)の有機基を示し、
*は、結合手を示す。〕
【0083】
X
1としては、−NH−が好ましい。
X
2としては、下記式(10)で表される基が好ましい。
【0085】
〔式(10)中、
R
36は、炭素数2〜10(好ましくは炭素数3〜8、より好ましくは炭素数4〜6)の直鎖状又は分岐状のアルカンジイル基を示し、
X
3は、ホルミル基又は−(C=O)−CH
3を示し、
*は、結合手を示す。〕
【0086】
X
2の好適な具体例としては、下記式(11)又は(12)で表される基が挙げられる。中でも、式(11)で表される基がより好ましく、式(13)で表される基が特に好ましい。
【0088】
〔式(11)中、
R
37〜R
40は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基又はエチル基を示し、
*は、結合手を示す。〕
【0090】
〔式(12)中、
R
41〜R
44は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基又はエチル基を示し、
*は、結合手を示す。〕
【0092】
〔式(13)中、*は、結合手を示す。〕
【0093】
式(8)で表される繰り返し単位を構成するモノマーとしては、ジアセトン(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0094】
なお、特定ポリマーは、繰り返し単位(A)及び繰り返し単位(B)をそれぞれ、1種以上ずつ含有していればよい。また、特定ポリマーは、繰り返し単位(A)及び(B)以外の繰り返し単位を含有していてもよい。
【0095】
(分子量)
本発明で用いる特定ポリマーの重量平均分子量は3000以上である。重量平均分子量が3000未満であると、粒子表面に付着しにくくなり、ラテックス凝集反応用試薬保存中における凝集が発生しやすくなる。
特定ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、粒子表面への吸着力、プロゾーン抑制効果の観点から、好ましくは4000以上、より好ましくは5000以上、更に好ましくは6000以上、更に好ましくは7000以上、更に好ましくは8000以上、更に好ましくは9000以上、更に好ましくは1万以上、更に好ましくは1.5万以上、更に好ましくは2万以上、更に好ましくは5万以上、更に好ましくは7万以上、更に好ましくは10万以上、更に好ましくは12.5万以上、特に好ましくは15万以上であり、また、粒子表面にリガンドを固定した場合の、リガンドにおける抗体抗原反応の感度を維持する等の観点から、好ましくは100万以下、より好ましくは30万以下、更に好ましくは27万以下、更に好ましくは25万以下、特に好ましくは22.5万以下である。
また、特定ポリマーの数平均分子量(Mn)としては、500〜10万が好ましく、700〜95000がより好ましく、1000〜90000が更に好ましく、1500〜85000が更に好ましく、3000〜80000が更に好ましく、10000〜75000が特に好ましい。
また、分子量分布(Mw/Mn)としては、1〜10が好ましく、1.5〜8がより好ましく、1.8〜7が更に好ましく、2〜6が特に好ましい。
なお、上記重量平均分子量、数平均分子量及び分子量分布は、後述する実施例に記載の方法に従い測定すればよい。
なお、プロゾーンとは、標的物質(抗原等)が過剰状態となる場合に、リガンドと標的物質との反応(抗原抗体反応等)による粒子の凝集が抑制されて、標的物質の濃度を正確に測定できなくなる現象をいう。
【0096】
(その他物性)
特定ポリマーとしては水溶性のものが好ましい。また、特定ポリマーとしては、水の他に、有機溶媒(例えば、アセトン、エタノール、N−メチルピロリドン等)に溶解するものであってもよい。
ここで、本明細書において、0.5質量%のポリマー固形分となるように特定ポリマーを水(25℃)に添加・混合した場合に目視で透明となるときは、その特定ポリマーは水溶性というものとする。
また、0.5質量%のポリマー固形分となるように特定ポリマーを上記有機溶媒(25℃)に添加・混合した場合に目視で透明となるときは、その特定ポリマーは上記有機溶媒に溶解するというものとする。
【0097】
また、特定ポリマーは共重合体であればよく、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0098】
また、特定ポリマーは、例えば、各繰り返し単位を誘導するモノマーを混合し、この混合物を、必要に応じて、水、アセトニトリル、エクアミドB−100(出光興産社製)等の溶媒に溶解又は分散させ、重合開始剤を加えてラジカル重合することにより得ることができる。
【0099】
上記重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤であれば特に限定されるものではないが、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシジイソブチレート、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)・二塩酸塩、過硫酸塩、過硫酸塩一亜硫酸水素塩系等が挙げられる。
また、重合開始剤の使用量は、全モノマーの合計100質量部に対して、0.001〜10質量部が好ましく、0.01〜5質量部がより好ましい。また、重合温度は20〜100℃が好ましく、重合時間は0.5〜48時間が好ましい。
【0100】
また、本発明の添加剤、表面処理剤中、特定ポリマーの含有量としては、0.01〜100質量%が好ましく、0.1〜80質量%がより好ましい。
【0101】
本発明の添加剤、表面処理剤は特定ポリマーの他に溶剤を含んでいてもよい。溶剤としては、水;エタノール、メタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル;ジメチルホルムアミド等のアミド;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド等が挙げられる。
【0102】
そして、後記実施例に示すように、ブロッキング処理されていないラテックス粒子に特定ポリマーを添加すること、特定ポリマーを用いてラテックス粒子の表面を処理することによって、ラテックス粒子をラテックス凝集反応用試薬に含有せしめて保存した場合におけるラテックス粒子の凝集が抑制され、ラテックス粒子の保存安定性が向上する。また、非特異吸着によるラテックス粒子の凝集が引き起こす検出ノイズを低減する効果も期待できる。さらに、プロゾーン抑制効果等も有する。
したがって、特定ポリマーは、ブロッキング処理されていないラテックス粒子への添加剤、ラテックス粒子の表面処理剤として有用であり、表面処理方法に使用することができる。また、本発明の添加剤、表面処理剤は、ブロッキング剤、ラテックス粒子凝集抑制剤、ラテックス粒子保存安定化剤、検出ノイズ低減剤などとして使用することができ、また、プロゾーン抑制剤として使用してもよい。特定ポリマーは、ブロッキング剤として従来用いられてきたアルブミン、カゼイン、ゼラチン、スキムミルク等の生物由来物質の代替品としての利用が期待できる。
なお、本明細書において、「ブロッキング」とは、ラテックス粒子への非特異吸着を抑制することをいう。ラテックス粒子への非特異吸着の抑制は、ラテックス粒子への非特異吸着に起因するラテックス粒子の凝集が引き起こす検出ノイズを低減することを包含する概念である。
【0103】
<表面改質ラテックス粒子>
本発明の表面改質ラテックス粒子は、特定ポリマーをラテックス粒子の表面に有するものである。
本明細書において、「ラテックス粒子」とは、ラテックス凝集反応用試薬に用いられるラテックス粒子を意味し、溶剤に分散している状態のラテックス粒子、溶剤と共存していない状態のラテックス粒子のいずれをも包含する概念である。本発明の表面改質ラテックス粒子において、ラテックス粒子としては、特定ポリマー以外の物質ではブロッキング処理されていないラテックス粒子が好ましい。
また、「表面改質ラテックス粒子」は、ラテックス粒子表面の一部又は全部に特定ポリマーが直接接触しているものをいう。
【0104】
ラテックス粒子の平均粒子径としては、0.01〜10μmが好ましく、0.05〜1μmがより好ましい。平均粒子径を0.05μm以上とすることにより、光学シグナルの増感効果が向上する。また、10μm以下とすることにより、溶剤中での分散安定性が向上する。
ラテックス粒子の平均粒子径は、レーザー回析・散乱粒子径分布測定により測定される、リガンド固定化及び表面処理前の体積平均粒子径を意味する。
【0105】
ラテックス粒子としては、標的物質に対するリガンドが固定化されたものが好ましい。リガンドとしては標的物質に対する抗体又は抗原が挙げられる。
また、リガンドは、ラテックス粒子に化学結合で固定化されていても、物理吸着で固定化されていてもよいが、化学結合で固定化されているのが好ましい。本発明によれば、リガンドとラテックス粒子が化学結合で固定化された場合におけるプロゾーンを抑制することができる。
なお、ラテックス粒子の調製やリガンドの固定化は常法に従って行えばよい。例えば、化学結合法による固定化は、ラテックス粒子の表面に化学修飾し、或いは官能基を導入するなどして行えばよい。
【0106】
ラテックス粒子としては、重合性不飽和芳香族化合物、重合性不飽和カルボン酸化合物、重合性不飽和スルホン酸化合物又はその塩、重合性カルボン酸エステル化合物、重合性不飽和カルボン酸アミド化合物、重合性不飽和ニトリル化合物、ハロゲン化ビニル化合物、及び共役ジエン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を用いて得られる粒子が好ましく、重合性不飽和芳香族化合物、重合性不飽和カルボン酸化合物、重合性不飽和スルホン酸化合物又はその塩、及び重合性カルボン酸エステル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を用いて得られる粒子がより好ましい。
【0107】
このような化合物として、具体的には、スチレン、クロロスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルナフタレン、(メタ)アクリル酸α−ナフチル、(メタ)アクリル酸β−ナフチルなどの重合性不飽和芳香族化合物;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などの重合性不飽和カルボン酸化合物;スチレンスルホン酸ソーダなどの重合性不飽和スルホン酸化合物又はその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、エチレングリコール−ジ−(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニルなどの重合性カルボン酸エステル化合物等が挙げられる。また、上記化合物として、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクロレイン、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ブタジエン、イソプレン、酢酸ビニル、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニルなどを用いてもよい。
【0108】
これらのうち、化学結合により固定化させる場合には、重合性不飽和芳香族化合物由来の繰り返し単位と、重合性不飽和カルボン酸化合物及び重合性不飽和スルホン酸化合物又はその塩から選ばれる少なくとも1種由来の繰り返し単位とを含む共重合体が好ましく、特に、スチレンと、重合性不飽和カルボン酸化合物及び重合性不飽和スルホン酸化合物又はその塩から選ばれる少なくとも1種との共重合体がより好ましい。
一方、物理吸着により固定化させる場合にはポリスチレンのみにより粒子を製造することもできる。
【0109】
<表面改質ラテックス粒子の製造方法>
本発明の表面改質ラテックス粒子の製造方法は、特定ポリマーとラテックス粒子とを接触させる接触工程を含むことを特徴とするものである。斯かる製造方法において、ラテックス粒子としては、ブロッキング処理されていないラテックス粒子が好ましい。
上記接触は、液相中で行うのが好ましい。この場合に用いる溶媒としては、上記添加剤、表面処理剤に配合できる溶剤と同様のものが挙げられる。
また、接触とは、特定ポリマーがラテックス粒子の表面の一部又は全部に付着するように特定ポリマーとラテックス粒子とを直接接触させることをいう。具体的には、シェーカー等を用いて特定ポリマーを含む液相中でラテックス粒子を分散させる方法等が挙げられる。
接触時間は通常10分間〜10時間である。接触温度は特に限定されないが、通常10〜60℃である。
なお、本発明の表面改質ラテックス粒子の製造方法は、接触工程の後、残余の特定ポリマーを遠心分離等により分離する分離工程を含んでいてもよい。
【0110】
<ラテックス凝集反応用試薬>
本発明のラテックス凝集反応用試薬は、本発明の表面改質ラテックス粒子又は本発明の表面改質ラテックス粒子の製造方法により得られた表面改質ラテックス粒子を含むものである。
本発明のラテックス凝集反応用試薬中、表面改質ラテックス粒子の含有量は、0.1〜3質量%が好ましく、0.1〜1質量%がより好ましく、0.1〜0.6質量%が特に好ましい。
本発明のラテックス凝集反応用試薬は、表面改質ラテックス粒子の他に、水溶性高分子、溶剤を含んでいてもよい。水溶性高分子としては、例えば、ポリエチレングリコール、多価アルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、サッカロース、デキストラン、プルラン、ポリアミノ酸、アルギン酸、アミノエタンスルホン酸誘導体、アミノプロパンスルホン酸誘導体のほか、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、ブロックエース、アラビアゴム、蛋白質分解物、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド等が挙げられる。溶剤は、上記表面処理剤に配合できる溶剤の他、リン酸緩衝液、グリシン緩衝液、グッド緩衝液、トリス緩衝液、アンモニア緩衝液等の各種緩衝液が挙げられる。
さらに、本発明のラテックス凝集反応用試薬は、必要に応じて、塩類、界面活性剤、防腐剤等を含んでいてもよい。
本発明のラテックス凝集反応用試薬は、ラテックス凝集法による検体中の標的物質の検出に有用である。
【0111】
<キット>
本発明のラテックス凝集法による検体中の標的物質の検出に用いるためのキットは、本発明のラテックス凝集反応用試薬を備えることを特徴とするものである。
本発明のキットとしては、本発明のラテックス凝集反応用試薬(第2試薬とも称する)に加えて、反応緩衝液(第1試薬とも称する)を更に備えるものが好ましい。
第1試薬は、上記水溶性高分子を含んでいてもよい。また、第1試薬は、溶剤、ラテックス凝集測定用増感剤を含んでいてもよい。溶剤としては水性媒体が挙げられる。該水性媒体としては、上記各種緩衝液が挙げられる。
また、上記ラテックス凝集測定用増感剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
また、本発明のキットは、上記第1試薬及び第2試薬の他に、陽性コントロール、陰性コントロール、血清希釈液等を備えていてもよい。陽性コントロール、陰性コントロールの媒体は、測定しうる標的物質が含まれていない血清、生理食塩水のほか、上記水性媒体等の溶剤でもよい。
【0112】
本発明のキットは、一般的な、ラテックス凝集法による検体中の標的物質の検出に用いるためのキットと同様にして、標的物質の検出に使用できる。また、常法に従い標的物質の濃度も測定できる。
【0113】
<標的物質の検出方法>
本発明の標的物質の検出方法は、本発明のラテックス凝集反応用試薬と検体とを混合する混合工程、及び前記混合工程により生じた凝集反応を光学的に検出する検出工程を含むことを特徴とするものである。
標的物質とは、通常、抗原、ウイルス、病原体、抗体、自己抗体など免疫反応を引き起こすおそれがあり、検出する対象となるものをいう。
標的物質としては、例えば、レセプター、酵素、血中タンパク(例えばガン胎児性タンパク)、感染症関連抗原(例えばB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、梅毒病原体、ヒト免疫不全ウイルス、病原性大腸菌等の抗原)等の抗原や、これら抗原に対する抗体が挙げられる。抗体には、特定の抗原に対する結合性を有する限り、抗体のフラグメント等も含まれる。
【0114】
(混合工程)
混合工程は、本発明のラテックス凝集反応用試薬と検体とを混合する工程である。
検体としては、血清や血漿、尿、唾液等の各種生物学的液体サンプル、糞便や食品の検体粉砕物等が挙げられる。測定サンプルとして、アルブミンやグロブリン等のタンパク質、pH緩衝液、アミノ酸、界面活性剤等で検体を希釈した検体希釈液を用いてよい。
【0115】
混合工程における混合温度は、通常4〜50℃の範囲であり、好ましくは15〜40℃の範囲、より好ましくは30〜40℃の範囲である。
また、混合時間は、通常60分間以下である。混合液のpHは、通常5〜10の範囲であり、抗体と抗原との複合体の安定性がより良好になる点で、混合液のpHは6〜9の範囲がより好ましい。
【0116】
(検出工程)
検出工程は、混合工程により生じた凝集反応を光学的に検出する工程である。この工程により、検体中の標的物質が検出され、更に標的物質の濃度も測定できる。
【0117】
検出工程は、粒子凝集の度合いを自動的に追跡できる公知の装置を用いて行えばよい。このような装置としては、例えば、散乱光強度、透過光強度、吸光度等を検出できる光学機器が挙げられる。
粒子凝集の度合いを光学的に検出する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、(1)凝集の形成を濁度の増加としてとらえる比濁法、(2)凝集の形成を粒度分布又は平均粒径の変化としてとらえる方法、(3)凝集の形成による前方散乱光の変化を積分球を用いて測定し、透過光強度との比を比較する積分球濁度法等が挙げられる。
上記の測定法においては、例えば、異なる時点で少なくとも2つの測定値を得、これらの時点間における測定値の増加分、すなわち、増加速度に基づき凝集の度合いを求める速度試験(レートアッセイ)や、反応の終点と考えられるある時点で1つの測定値を得、この測定値に基づき凝集の度合いを求める終点試験(エンドポイントアッセイ)を利用できるが、測定の簡便性、迅速性の点から、比濁法による速度試験が好ましい。
【0118】
本発明の標的物質の検出方法を用いた免疫ラテックス凝集反応測定に適する臨床検査自動機としては、例えば、日立7070、7150、7170、7180、LPIA−A700、S500などの市販の自動分析機が挙げられる。
【0119】
そして、本発明の標的物質の検出方法によれば、濁度又は吸光度の計測において、低値領域の吸光度変化とバックグラウンドとの差が明瞭となる。これにより、標的物質の検出感度を高めることができる。また、プロゾーンの発生を抑制することができる。
【実施例】
【0120】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、実施例7及び8は参考例である。
【0121】
実施例における分子量の測定条件は以下に示すとおりである。
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、東ソー社製TSKgel α−Mカラムを用い、流量:0.5ミリリットル/分、溶出溶媒:NMP溶媒(H
3PO
4:0.016M、LiBr:0.030M)、カラム温度:40℃の分析条件で、ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0122】
〔合成例1〕
4−アクリロイルモルホリン(以下、ACMOと称する(興人フィルム&ケミカルズ社製))2.0g、エチレンオキシドの平均付加モル数9のメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(以下、M90Gと称する(新中村化学工業社製))2.5g及びジアセトンアクリルアミド(以下、DAAMと称する)0.5gからなるモノマー組成物を、水40.05gに混合してフラスコに入れ、撹拌子で撹拌した。これに窒素を吹き込みながら60℃まで昇温し、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)・二塩酸塩の10質量%水溶液5g、及び連鎖移動剤としてα−チオグリセロール0.01gを添加した。これを3時間重合させた後、室温まで冷却した。得られた共重合体を共重合体(P1)とする。
得られた共重合体(P1)のGPCによる重量平均分子量(Mw)は107400であり、Mw/Mnは4.01であった。
【0123】
〔合成例2〕
モノマー組成物を、ACMO 2.0g、M90G 2.25g、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン(以下、GLBTと称する(大阪有機化学工業社製))0.25g及びメチルメタクリレート(以下、MMAと称する)0.5gからなるモノマー組成物に変更した以外は、合成例1と同様にして共重合体を合成した。得られた共重合体を共重合体(P2)とする。
【0124】
〔合成例3〕
モノマー組成物を、ACMO 1.5g、N,N−ジメチルアクリルアミド(以下、DMAAと称する)0.25g、M90G 1.0g、エチレンオキシドの平均付加モル数23のメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(以下、M230Gと称する(新中村化学工業社製))1.25g、GLBT 0.75g及びMMA 0.25gからなるモノマー組成物に変更した以外は、合成例1と同様にして共重合体を合成した。得られた共重合体を共重合体(P3)とする。
【0125】
〔合成例4〕
モノマー組成物を、ACMO 1.0g、DMAA 0.5g、M90G 1.25g、M230G 1.25g及びDAAM 1.0gからなるモノマー組成物に変更した以外は、合成例1と同様にして共重合体を合成した。得られた共重合体を共重合体(P4)とする。
【0126】
〔合成例5〕
モノマー組成物を、ACMO 2.0g、DMAA 2.5g及びDAAM 0.5gからなるモノマー組成物に変更した以外は、合成例1と同様にして共重合体を合成した。得られた共重合体を共重合体(P5)とする。
【0127】
〔合成例6〕
モノマー組成物を、ACMO 1.0g、DMAA 1.75g、M230G 1.0g、GLBT 0.25g及びMMA 1.0gからなるモノマー組成物に変更した以外は、合成例1と同様にして共重合体を合成した。得られた共重合体を共重合体(P6)とする。
【0128】
〔合成例7〕
モノマー組成物を、DMAA 2.0g、M90G 1.5g及びDAAM 1.5gからなるモノマー組成物に変更した以外は、合成例1と同様にして共重合体を合成した。得られた共重合体を共重合体(P7)とする。
【0129】
〔合成例8〕
モノマー組成物を、DMAA 3.5g及びDAAM 1.5gからなるモノマー組成物に変更した以外は、合成例1と同様にして共重合体を合成した。得られた共重合体を共重合体(P8)とする。
【0130】
〔合成例9〕
モノマー組成物を、ACMO 1.0g、DMAA 3.0g及びMMA 1.0gからなるモノマー組成物に変更した以外は、合成例1と同様にして共重合体を合成した。得られた共重合体を共重合体(P9)とする。
【0131】
〔合成例10〕
モノマー組成物を、ACMO 2.0g、M90G 2.75g及びMMA 0.25gからなるモノマー組成物に変更した以外は、合成例1と同様にして共重合体を合成した。得られた共重合体を共重合体(P10)とする。
【0132】
〔合成例11〕
モノマー組成物を、ACMO 1.0g、M230G 2.25g及びDAAM 1.75gからなるモノマー組成物に変更した以外は、合成例1と同様にして共重合体を合成した。得られた共重合体を共重合体(P11)とする。
【0133】
〔比較合成例1〕
モノマー組成物を、ACMO 2.0g、M90G 2.5g、DAAM 0.5gからなるモノマー組成物に変更した以外は、合成例1と同様にして共重合体を合成した。得られた共重合体を共重合体(P12)とする。
【0134】
〔比較合成例2〕
モノマー組成物を、ACMO 0.5g、M90G 2.25g、GLBT 0.25g及びMMA 2.0gからなるモノマー組成物に変更した以外は、合成例1と同様にして共重合体を合成した。得られた共重合体を共重合体(P13)とする。
【0135】
〔参考例〕
ACMO由来の繰り返し単位からなるホモポリマー、DMAA由来の繰り返し単位からなるホモポリマー、M90G由来の繰り返し単位からなるホモポリマー、M230G由来の繰り返し単位からなるホモポリマー、GLBT由来の繰り返し単位からなるホモポリマーをそれぞれ合成し(いずれも数平均分子量約1万)、ホモポリマー1gを純水100gに添加したところ、常温(25℃)で溶解した。
また、DAAM由来の繰り返し単位からなるホモポリマー、MMA由来の繰り返し単位からなるホモポリマーをそれぞれ合成し(いずれも数平均分子量約1万)、ホモポリマー1gを純水100gに添加したところ、常温(25℃)で溶解しきらなかった。
【0136】
〔調製例1 R1バッファーの調製〕
HEPES 1.19g及び塩化ナトリウム1gを蒸留水70gに溶解した。得られた水溶液をアジ化ナトリウムの2質量%水溶液4.5gと混合した後、pHを約7.5に調整し、合計100gの水溶液を得た。
得られた水溶液を、R1バッファーとする。なお、R1バッファーにおいて、アジ化ナトリウムの濃度は0.09質量%である。
【0137】
〔調製例2 R2バッファーの調製(1)〕
HEPES 1.19g及び塩化ナトリウム1gを蒸留水70gに溶解した。得られた水溶液をアジ化ナトリウムの2質量%水溶液4.5gと混合した後、pHを約7.5に調整し、合計100gの水溶液を得た。
得られた水溶液を、R2バッファー(1)とする。なお、R2バッファー(1)において、アジ化ナトリウムの濃度は0.09質量%である。
【0138】
〔調製例3 R2バッファーの調製(2)〕
HEPES 1.19g及び塩化ナトリウム1gを蒸留水70gに溶解した。得られた水溶液をアジ化ナトリウムの2質量%水溶液4.5gと混合し、これに共重合体(P5)の10質量%水溶液を加えた後、pHを約7.5に調整し、合計100gの水溶液を得た。
得られた水溶液を、R2バッファー(2)とする。なお、R2バッファー(2)において、共重合体(P5)の濃度は2質量%、アジ化ナトリウムの濃度は0.09質量%である。
【0139】
〔実施例1〕
(ラテックス粒子への抗体固定化)
免疫診断用ラテックス粒子(カルボキシ基を表面に有するタイプ、平均粒子径:0.082μm(JSRライフサイエンス製IMMUTEX P0011))の5.3質量%水分散液1.4mL、0.5M HEPESバッファー0.75mL、及び蒸留水4.9mLを混合した。この粒子分散液に、抗CRP抗体(ウサギ)の16.3mg/mL水溶液を0.46mL添加し、室温で1時間撹拌した。次いで、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(以下、WSCと称する(同仁化学社製))の1質量%水溶液を0.15mL添加し、室温で1時間撹拌した。次に、この粒子分散液を0.51mLずつ遠心管に移し替え、15,000rpmにて10分間遠心分離して、未反応の抗CRP抗体やWSCを含む上清を除去し、抗体固定化ラテックス粒子を沈殿として回収した。
(表面処理剤によるラテックス粒子の表面処理(ブロッキング処理されていないラテックス粒子への添加剤の添加))
次いで、共重合体(P1)の0.5質量%水溶液1mLを準備し、これを上記抗体固定化ラテックス粒子に添加し、アルミブロックシェーカーで1時間分散させた。次に、得られた粒子分散液を15,000rpmにて10分間遠心分離し、残余の共重合体(P1)を含む上清を除去した。このようにして、共重合体(P1)で表面処理された抗体固定化ラテックス粒子の分散液(表面改質ラテックス粒子分散液)を得た。
(ラテックス凝集反応用試薬の調製)
次いで、上記表面処理された抗体固定化ラテックス粒子の分散液に、調製例2で得たR2バッファー(1)5mLを添加し、ラテックス凝集反応用試薬1を得た。
【0140】
〔実施例2〜4〕
共重合体(P1)を、共重合体(P2)、共重合体(P3)、共重合体(P4)にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にしてラテックス凝集反応用試薬2〜4を得た。
【0141】
〔実施例5、6〕
カルボキシ基を表面に有するタイプの免疫診断用ラテックス粒子を、カルボキシ基を表面にもたないタイプの免疫診断用ラテックス粒子(平均粒子径:0.121μm、JSRライフサイエンス製IMMUTEX P2117)に変更し、共重合体(P1)を、共重合体(P5)、共重合体(P6)に変更した以外は、実施例1と同様にしてラテックス凝集反応用試薬5、6を得た。
【0142】
〔実施例7〜11〕
共重合体(P1)を、共重合体(P7)、共重合体(P8)、共重合体(P9)、共重合体(P10)、共重合体(P11)にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にしてラテックス凝集反応用試薬7〜11を得た。
【0143】
〔比較例1〕
共重合体(P1)を、共重合体(P12)に変更した以外は、実施例1と同様にしてラテックス凝集反応用試薬12を得た。
【0144】
〔比較例2〕
共重合体(P1)を、共重合体(P13)に変更した以外は、実施例1と同様にしてラテックス凝集反応用試薬13を得た。
【0145】
〔比較例3〕
共重合体(P1)を、牛血清アルブミン(BSA)に変更した以外は、実施例1と同様にしてラテックス凝集反応用試薬14を得た。
【0146】
〔比較例4〕
カルボキシ基を表面に有するタイプの免疫診断用ラテックス粒子を、カルボキシ基を表面にもたないタイプの免疫診断用ラテックス粒子(平均粒子径:0.121μm、JSRライフサイエンス製IMMUTEX P2117)に変更し、共重合体(P1)を、牛血清アルブミン(BSA)に変更した以外は、実施例1と同様にしてラテックス凝集反応用試薬15を得た。
【0147】
〔比較例5〕
共重合体(P5)を表面処理剤(ブロッキング処理されていないラテックス粒子への添加剤)でなく増感剤として使用した比較例として、牛血清アルブミンで予め表面処理された抗体固定化ラテックス粒子と共重合体(P5)とを分散媒中に添加したラテックス凝集反応用試薬を調製した。
すなわち、カルボキシ基を表面にもたないタイプの免疫診断用ラテックス粒子(平均粒子径:0.121μm、JSRライフサイエンス製IMMUTEX P2117)の5.3質量%水分散液1.4mL、0.5M HEPESバッファー0.75mL、及び蒸留水4.9mLを混合した。この粒子分散液に、抗CRP抗体(ウサギ)の16.3mg/mL水溶液を0.46mL添加し、室温で1時間撹拌した。次に、この粒子分散液を遠心管に移し替え、15,000rpmにて10分間遠心分離して、未反応の抗CRP抗体を含む上清を除去し、抗体固定化ラテックス粒子を沈殿として回収した。
次いで、牛血清アルブミン(BSA)の0.5質量%水溶液1mLを準備し、これを上記抗体固定化ラテックス粒子に添加し、アルミブロックシェーカーで1時間分散させた。次に、得られた粒子分散液を15,000rpmにて10分間遠心分離し、残余の牛血清アルブミン(BSA)を含む上清を除去した。このようにして、牛血清アルブミン(BSA)で表面処理された抗体固定化ラテックス粒子の分散液を得た。
次いで、上記表面処理された抗体固定化ラテックス粒子の分散液に、調製例3で得たR2バッファー(2)5mLを添加し、ラテックス凝集反応用試薬16を得た。
【0148】
〔比較例6〕
共重合体(P1)の0.5質量%水溶液を、蒸留水に変更した以外は、実施例1と同様にしてラテックス凝集反応用試薬17を得た。
【0149】
〔比較例7〕
カルボキシ基を表面に有するタイプの免疫診断用ラテックス粒子を、カルボキシ基を表面にもたないタイプの免疫診断用ラテックス粒子(平均粒子径:0.121μm、JSRライフサイエンス製IMMUTEX P2117)に変更し、共重合体(P1)の0.5質量%水溶液を、蒸留水に変更した以外は、実施例1と同様にしてラテックス凝集反応用試薬18を得た。
【0150】
〔試験例1 安定性評価試験〕
各実施例及び比較例で調製したラテックス凝集反応用試薬を4℃で一晩静置し、沈殿の有無を目視で観察し以下の基準で評価した。また、各実施例及び比較例で調製したラテックス凝集反応用試薬を4℃で一晩静置した後、更に37℃で一週間静置し、沈殿の有無を目視で観察し以下の基準で評価した。これらの結果を表1〜2に示す。
(安定性評価基準)
AA:粒子の沈殿が確認されなかった
A:粒子の沈殿がほとんど確認されなかった
B:粒子の沈殿が僅かに確認された
C:粒子の沈殿がはっきりと確認された
【0151】
【表1】
【0152】
【表2】
【0153】
表1に示すとおり、共重合体(P1)〜(P11)を用いて抗体固定化ラテックス粒子の表面を処理した場合(実施例1〜11)は、粒子の沈殿の発生が抑制されていた。このことから、本発明の特定ポリマーを、ブロッキング処理されていないラテックス粒子に添加すること、すなわち、本発明の特定ポリマーを用いてラテックス粒子の表面を処理することによって、ラテックス凝集反応用試薬保存中におけるラテックス粒子の凝集を抑制できることがわかる。
表2に示すとおり、重量平均分子量が3000未満の共重合体(P12)を用いて抗体固定化ラテックス粒子の表面を処理した場合(比較例1)や、繰り返し単位(A)の含有量が60質量%、繰り返し単位(B)の含有量が40質量%の共重合体(P13)を用いて抗体固定化ラテックス粒子の表面を処理した場合(比較例2)、BSAを用いて抗体固定化ラテックス粒子の表面を処理した場合(比較例3、4)には、粒子の沈殿がはっきりと確認された。
また、抗体固定化ラテックス粒子と共重合体(P5)とを分散媒中に添加した場合(比較例5)も、粒子の沈殿がはっきりと確認された。比較例5で用いた抗体固定化ラテックス粒子はBSAで既に表面処理されているため、試薬中で共重合体(P5)が抗体固定化ラテックス粒子の表面に処理されるものではない。このことから、本発明の特定ポリマーを増感剤等のように試薬中に単に共存させるのみでは粒子の沈殿は抑制されず、粒子の沈殿を抑制するためには、本発明の特定ポリマーを、ブロッキング処理されていないラテックス粒子に添加すること、すなわち、本発明の特定ポリマーを用いてラテックス粒子の表面を処理することが必要であることがわかった。
【0154】
〔試験例2 抗原抗体反応性評価試験〕
検体として標的物質(CRP抗原)の生理食塩水希釈液又は生理食塩水3μL、及び第1試薬として調製例1で得たR1バッファー100μLを測定セルに加えて撹拌した。次いで、第2試薬として実施例1で調製したラテックス凝集反応用試薬100μLを測定セルに加え撹拌した後、日立7180形自動分析装置を使用し、主波長:570nm、副波長:800nm、測定温度:37℃の条件にて免疫ラテックス凝集測定を行い、抗原抗体反応の反応性を確認した。なお、標的物質の生理食塩水希釈液の濃度は、0mg/dL、0.05mg/dL、0.1mg/dL、0.25mg/dL、0.5mg/dL、1mg/dL、2mg/dL、4mg/dLとしてそれぞれ試験を行った。
また、実施例3、実施例4、比較例3のラテックス凝集反応用試薬を第2試薬として用いて、上記と同様にして抗原抗体反応の反応性を確認した。
試験例2の結果を
図1に示す。
図1に示すとおり、共重合体(P1)、(P3)、(P4)を用いて抗体固定化ラテックス粒子の表面を処理した場合(実施例1、3、4)は、プロゾーン抑制効果が得られた。