(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
脂肪族ポリエステル(A)100重量部に対し、シリカ(B)5〜23重量部と分散助剤(C)8〜23重量部とを含有する脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法であって、
該組成物を構成する脂肪族ポリエステル(A)の全量に対する20〜50重量%及びシリカ(B)を混合する第一工程と、
第一工程で得られた混合物に分散助剤(C)を混合する第二工程と、
第二工程で得られた混合物に残り80〜50重量%の脂肪族ポリエステル(A)を混合する第三工程と、
第三工程で得られた混合物を溶融混練する工程と、を含むことを特徴とする脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
脂肪族ポリエステル(A)100重量部に対し、シリカ(B)5〜23重量部と分散助剤(C)8〜23重量部とを含有する脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法であって、
該組成物を構成する脂肪族ポリエステル(A)全量に対する20〜50重量%及びシリカ(B)を混合する第一工程と、
第一工程で得られた混合物に分散助剤(C)を混合する第二工程と、
第二工程で得られた混合物に残り80〜50重量%の脂肪族ポリエステル(A)の一部を混合する第三工程と、
第三工程で得られた混合物を、残りの脂肪族ポリエステル(A)を逐次添加しながら溶融混練する工程と、を含むことを特徴とする脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
脂肪族芳香族ポリエステル(D)の混合を、脂肪族ポリエステル(A)、シリカ(B)及び分散助剤(C)の溶融混練物に対して、脂肪族芳香族ポリエステル(D)を溶融混練することにより実施する請求項4に記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
第一工程で混合するシリカ(B)が、160℃で揮発する吸着水分量が0.5重量%以上7重量%以下のシリカである請求項1〜5のいずれか一項に記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
分散助剤(C)が、グリセリンエステル系化合物、アジピン酸エステル系化合物、ポリエーテルエステル系化合物及びイソソルバイドエステル系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜6のいずれか一項に記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に記載された製造方法によると、透明性、成形性、及び機械的特性に優れ、さらには生分解性にも優れた樹脂組成物を得ることができる。しかしながら、本発明者が本方法について継続して検討した結果、シリカの分散性向上及び樹脂組成物の引裂強度向上の観点で、上記方法にはさらなる改善の余地があることがわかった。
【0010】
したがって、本発明は、少なくとも脂肪族ポリエステルとシリカと分散助剤を含む樹脂組成物を溶融混練して得るにおいて、安定してシリカの良分散性を確保でき、且つ樹脂組成物の引裂強度を向上する製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、適切な配合量と順番で溶融混練前に脂肪族ポリエステルとシリカと分散助剤を混合することにより、安定してシリカの良分散性を確保でき、且つ樹脂組成物の引裂強度を向上できる製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、例えば下記発明を提供する。
【0013】
[1]脂肪族ポリエステル(A)100重量部に対し、シリカ(B)5〜23重量部と分散助剤(C)8〜23重量部とを含有する脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法であって、
該組成物を構成する脂肪族ポリエステル(A)の全量に対する20〜50重量%及びシリカ(B)を混合する第一工程と、
第一工程で得られた混合物に分散助剤(C)を混合する第二工程と、
第二工程で得られた混合物に残り80〜50重量%の脂肪族ポリエステル(A)を混合する第三工程と、
第三工程で得られた混合物を溶融混練する工程と、を含むことを特徴とする脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【0014】
[2]脂肪族ポリエステル(A)100重量部に対し、シリカ(B)5〜23重量部と分散助剤(C)8〜23重量部とを含有する脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法であって、
該組成物を構成する脂肪族ポリエステル(A)全量に対する20〜50重量%及びシリカ(B)を混合する第一工程と、
第一工程で得られた混合物に分散助剤(C)を混合する第二工程と、
第二工程で得られた混合物に残り80〜50重量%の脂肪族ポリエステル(A)の一部を混合する第三工程と、
第三工程で得られた混合物を、残りの脂肪族ポリエステル(A)を逐次添加しながら溶融混練する工程と、を含むことを特徴とする脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【0015】
[3]第三工程の後、脂肪族芳香族ポリエステル(D)を混合する工程を含む[1]又は[2]に記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【0016】
[4]脂肪族芳香族ポリエステル(D)の混合を溶融混練により実施する[3]に記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【0017】
[5]脂肪族芳香族ポリエステル(D)の混合を、脂肪族ポリエステル(A)、シリカ(B)及び分散助剤(C)の溶融混練物に対して、脂肪族芳香族ポリエステル(D)を溶融混練することにより実施する[4]に記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【0018】
[6]第一工程で混合するシリカ(B)が、160℃で揮発する吸着水分量が0.5重量%以上7重量%以下のシリカである[1]〜[5]のいずれか一つに記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【0019】
[7]分散助剤(C)が、グリセリンエステル系化合物、アジピン酸エステル系化合物、ポリエーテルエステル系化合物及びイソソルバイドエステル系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である[1]〜[6]のいずれか一つに記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【0020】
[8]脂肪族ポリエステル樹脂組成物が成形体である[1]〜[7]のいずれか一つに記載の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、粒径と嵩密度が低いシリカを用いた場合であっても、脂肪族ポリエステル樹脂組成物において、脂肪族ポリエステル(A)中及び/又はさらに加え得る脂肪族芳香族ポリエステル(D)(例えば、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)又はポリブチレンサクシネートテレフターレート(PBST))中に安定してシリカ(B)を良分散させることができ、且つ前記樹脂組成物の引裂強度が向上した製造方法を提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法は、脂肪族ポリエステル(A)と、シリカ(B)と、分散助剤(C)とを必須成分として含有し、かつシリカ(B)を脂肪族ポリエステル(A)100重量部に対して5〜23重量部、分散助剤(C)を脂肪族ポリエステル(A)100重量部に対して8〜23重量部含有する脂肪族ポリエステル樹脂組成物(「本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物」と称する場合がある)を製造する方法である。本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物は、さらに脂肪族芳香族ポリエステル(D)等の他の成分を含んでいてもよい。
【0024】
(脂肪族ポリエステル)
本発明において用いられる脂肪族ポリエステル(A)としては、例えば微生物から生産されるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)(微生物産生PHA)やPLAなどが挙げられる。
【0025】
本発明において、PHAは、一般式:[−CHR−CH
2−CO−O−]で示される繰り返し単位を含む脂肪族ポリエステル樹脂である。
【0026】
PHAは、式(1):[−CHR−CH
2−CO−O−](式中、RはC
nH
2n+1で表されるアルキル基で、nは1以上15以下の整数である。)で示される繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0027】
PHAを生産する微生物としては、PHA類の生産能を有する微生物であれば特に限定されない。例えば、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)(以下、「PHB」と略称する場合がある。)生産菌としては、1925年に発見されたBacillus megateriumが最初で、他にもカプリアビダス・ネケイター(Cupriavidus necator)(旧分類:アルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus、ラルストニア・ユートロフア(Ralstonia eutropha))、アルカリゲネス・ラタス(Alcaligenes latus)などの天然微生物が知られており、これらの微生物ではPHBが菌体内に蓄積される。
【0028】
また、ヒドロキシブチレートとその他のヒドロキシアルカノエートとの共重合体の生産菌としては、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)(以下、「PHBV」と略称する場合がある)およびポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート(以下、「PHBH」と略称する場合がある)生産菌であるアエロモナス・キヤビエ(Aeromonas caviae)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)生産菌であるアルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)などが知られている。特に、PHBHに関し、PHBHの生産性を上げるために、PHA合成酵素群の遺伝子を導入したアルカリゲネス・ユートロファス AC32株(Alcaligenes eutrophus AC32, FERM BP−6038)(T.Fukui,Y.Doi,J.Bateriol.,179,p4821−4830(1997))などがより好ましく、これらの微生物を適切な条件で培養して菌体内にPHBHを蓄積させた微生物菌体が用いられる。また上記以外にも、生産したいPHAに合わせて、各種PHA合成関連遺伝子を導入した遺伝子組換え微生物を用いても良いし、基質の種類を含む培養条件を最適化してもよい。
【0029】
本発明で用いられるPHAの分子量は、目的とする用途で、実質的に十分な物性を示すものであれば、特に制限されない。分子量が低いと得られる成形品の強度が低下する。逆に高いと加工性が低下し、成形が困難になる。それらを勘案して本発明に使用するPHAの重量平均分子量の範囲は、50,000〜3,000,000が好ましく、100,000〜1,500,000がより好ましい。
【0030】
前記重量平均分子量の測定方法は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(昭和電工社製「Shodex GPC−101」)を用い、カラムにポリスチレンゲル(昭和電工社製「Shodex K−804」)を用い、クロロホルムを移動相とし、ポリスチレン換算した場合の分子量として求めることができる。この際、検量線は重量平均分子量31,400、197,000、668,000、1,920,000のポリスチレンを使用して作成する。当該GPCにおけるカラムとしては、前記分子量を測定するのに適切なカラムを使用すればよい。
【0031】
本発明で使用し得るPHAとしては、例えば、PHB〔ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)〕、PHBH〔ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸−コ−3−ヒドロキシヘキサン酸)〕、PHBV〔ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸−コ−3−ヒドロキシ吉草酸)〕、P3HB3HV3HH〔ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸−コ−3-ヒドロキシ吉草酸−コ−3−ヒドロキシヘキサン酸)〕、P3HB4HB〔ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸−コ−4−ヒドロキシ酪酸)〕、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシオクタノエート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシオクタデカノエート)などが挙げられる。これらのなかでも、工業的に生産が容易であるため、PHB、PHBH、PHBV、P3HB3HV3HH、P3HB4HBが好ましい。
【0032】
PHAの繰り返し単位の組成比は、柔軟性と強度のバランスの観点から、3−ヒドロキシブチレート(3HB)の組成比が80モル%〜99モル%であることが好ましく、85モル%〜97モル%であることがより好ましい。3−ヒドロキシブチレート(3HB)の組成比が80モル%未満であると剛性が不足する傾向があり、99モル%より多いと柔軟性が不足する傾向がある。なお、前記PHAの共重合樹脂中の繰り返し単位である各組成比は、ガスクロマトグラフィー等によって測定することできる(例えば、国際公開第2014/020838号参照)。
【0033】
本発明における脂肪族ポリエスエル(A)は低嵩密度でフィード性が悪い微粒シリカ(B)のフィード性を改良するために、また分散助剤(C)を効果的にシリカ(B)の分散に機能させるために、第一〜三工程で使用する脂肪族ポリエステル(A)は粒子状(例えば粉体)であって、そのサイズは小さいほうが好ましい。具体的には、脂肪族ポリエステル(A)の平均粒子径(粒度分布計(マイクロトラック測定装置)により測定される累積50%粒径)は、100〜700μmが好ましく、200μm以上がより好ましく、さらに好ましくは280μm以上であり、また、600μm以下がより好ましく、さらに好ましくは500μm以下である。平均粒子径が100μmよりも小さい場合はそのフィード性やハンドリング性の悪さから生産性が低くなるという問題が発生したりする。一方、平均粒子径が700μmより大きい場合は、シリカ(B)との粒径の差が大きくなり、そのため十分に混ざりにくく、脂肪族ポリエステル(A)とシリカ(B)との混合物が依然嵩高いままでフィード性が悪く生産性に問題が発生する場合や、分散助剤(C)が局所的に過多にシリカ(B)に付着することでシリカ(B)が凝集してしまう可能性がある。
【0034】
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物における脂肪族ポリエステル(A)の含有量は、樹脂組成物の全量(100重量%)に対して、10〜90重量%が好ましく、より好ましくは25〜80重量%、さらに好ましくは35〜80重量%である。上記含有量を10重量%以上とすることにより、効果的に生分解性を発現させたり、脂肪族芳香族ポリエステルの欠点であるタック性を抑制してフィルムなどを成形する場合は生産性や口開き性(耐ブロッキング性)を確保できる傾向にある。一方、上記含有量を90重量%以下とすることにより脂肪族ポリエステルの欠点である低結晶化速度の影響が抑えられて生産性が向上する傾向がある。なお、本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物において脂肪族ポリエステル(A)は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0035】
(シリカ)
本発明において用いられるシリカ(B)としては、特にその種類は限定されないが、汎用性の観点から乾式法あるいは湿式法で製造される合成非晶質シリカが好ましい。また疎水処理、非疎水処理を施したいずれのものも使用可能であり、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0036】
本発明におけるシリカ(B)の配合量(総配合量)は、本発明において配合する脂肪族ポリエステル(A)の総量100重量部に対して、5〜23重量部である。5重量部より少ないとポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)やポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)などの脂肪族芳香族ポリエステル(D)と複合化した際に、引裂強度などの機械特性について十分な改良効果を発現できない場合がある。また、23重量部より多い場合はシリカ(B)を良好に分散させることが難しくなる場合がある。シリカ(B)の上記配合量は、6重量部以上が好ましく、より好ましくは8重量部以上、また、23重量部以下が好ましく、より好ましくは20重量部以下、さらに好ましくは15重量部以下である。
【0037】
本発明における第一工程で混合するシリカ(B)としては、吸着水分量が0.5重量%以上7重量%以下のシリカが好ましい。より好ましくは1重量%以上6重量%以下、さらに好ましくは2重量%以上5重量%以下であり、特に好ましくは2重量%以上4重量%以下である。吸着水分量は、例えば研精工業株式会社製電磁式はかりMX−50を用いて160℃における揮発分を吸着水分量として測定することが出来る。吸着水分量が7重量%より大きい場合、シリカ(B)表面や粒子間に吸着した水分の凝集力でシリカ(B)が分散しにくくなってフィルム成形時にフィッシュアイとなって外観不良を起こす場合がある。また逆に0.5重量%未満の場合には、この僅かに粒子間の残った水分が架橋液膜を形成して表面張力で大きな結合力を生み、シリカ(B)の分配・分散が極端に難しくなる傾向がある。
【0038】
また、本発明に用いられるシリカ(B)の平均一次粒子径は、フィルムやシートの引裂強度を向上させることができ、フィッシュアイ等の外観上の欠陥を生じにくく、透明性を大きく損なうことがなければ特に限定されないが、引裂強度等の機械的特性の向上効果が得られやすく、透明性に優れている点で0.001〜0.1μmであることが好ましく、0.005〜0.05μmであることが特に好ましい。なお、平均一次粒子径は、BET法で得られた比表面積から換算して求められる。
【0039】
(分散助剤)
本発明において用いられる分散助剤(C)としては、例えばエステル系化合物であり、より具体的には、グリセリンエステル系化合物、アジピン酸エステル系化合物、ポリエーテルエステル系化合物、フタル酸エステル系化合物、イソソルバイドエステル系化合物、ポリカプロラクトン系化合物などが例示される。これらのうち、樹脂成分への親和性に優れブリードしにくいことから、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノカプリレート、グリセリンジアセトモノデカノエートなどのグリセリンエステル系化合物;ジエチルヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペートなどのアジピン酸エステル系化合物;ポリエチレングリコールジベンゾエート、ポリエチレングリコールジカプリレート、ポリエチレングリコールジイソステアレートなどのポリエーテルエステル系化合物が好ましく、更にはバイオマス由来成分を多く含むものが組成物全体のバイオマス度を高めることができることから特に好ましい。この様な分散助剤としては、理研ビタミン株式会社の「リケマール」(登録商標)PLシリーズや、ROQUETTE社のPolysorbシリーズなどが例示される。分散助剤は一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0040】
本発明における分散助剤(C)の配合量(総配合量)は、本発明において配合する脂肪族ポリエステル(A)の総量100重量部に対して8〜23重量部である。8重量部未満では、シリカ(B)の分散助剤としての機能を十分に発揮させることができない場合があったり、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)やポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)などの脂肪族芳香族ポリエステル(D)と複合化した際に引裂強度などの機械特性について十分な改良効果を発現できない場合がある。一方、23重量部を超えると、ブリードアウトの原因になる場合がある。分散助剤(C)の上記配合量は、13重量部以上が好ましく、より好ましくは15重量部以上、また、22重量部以下が好ましく、より好ましくは21重量部以下である。
【0041】
(脂肪族芳香族ポリエステル)
本発明で使用する脂肪族芳香族ポリエステル(D)としては、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンセバケートテレフタレート、ポリブチレンアゼレートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)などが挙げられる。ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)とは、1,4−ブタンジオールとアジピン酸とテレフタル酸のランダム共重合体のことをいい、中でも、特表平10−508640号公報等に記載されているような、(a)主としてアジピン酸もしくはそのエステル形成性誘導体またはこれらの混合物35〜95モル%、テレフタル酸もしくはそのエステル形成性誘導体またはこれらの混合物5〜65モル%(個々のモル%の合計は100モル%である)よりなる混合物に、(b)ブタンジオールが含まれている混合物(ただし(a)と(b)とのモル比が0.4:1〜1.5:1)の反応により得られるPBATが好ましい。PBATの市販品としてはBASF社製「エコフレックス F blend C1200」(登録商標)などが挙げられる。またポリブチレンサクシネートテレフターレート(PBST)としては、前記PBATのアジピン酸もしくはそのエステル形成性誘導体の部分をセバシン酸もしくはそのエステル形成性誘導体に置き換わったものが挙げられ、PBSTの市販品としてはBASF社製「エコフレックス FS blend B1100」(登録商標)などが挙げられる。また、脂肪族芳香族ポリエステル(D)は一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。本発明において、脂肪族芳香族ポリエステル(D)と脂肪族ポリエステル(A)を複合化することで、引裂強度などの機械的特性をいっそう改良することが出来る。
【0042】
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物における脂肪族芳香族ポリエステル(D)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、脂肪族ポリエステル(A)100重量部に対して、10〜900重量部が好ましく、より好ましくは25〜400重量部、さらに好ましくは40〜250重量部である。10重量部以上とすることにより、樹脂組成物全体の溶融張力を増加させて成形性や生産性が向上する傾向がある。一方、900重量部以下とすることにより、脂肪族芳香族ポリエステル(D)の欠点であるタック性が抑制されて生産性が向上したり、効率的な生分解性が発現する傾向がある。
【0043】
また、本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で有機系または無機系フィラーなどを含んでいても良い。これらの中でも生分解性およびカーボンニュートラルの観点から、例えば、木屑、木粉、オガ屑などの木質系材料、米殻、米粉、澱粉、コーンスターチ、稲わら、麦わら、天然ゴム等の天然由来の材料が好ましい。これらは一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。当該有機系または無機系フィラーの配合量は、適宜設定することができる。
【0044】
また、本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、通常の添加剤として使用されるシリカ以外の充填剤、顔料、染料などの着色剤、活性炭、ゼオライト等の臭気吸収剤、バニリン、デキストリン等の香料、酸化防止剤、抗酸化剤、耐候性改良剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、撥水剤、抗菌剤、摺動性改良剤、その他の添加剤を一種又は二種以上添加してもよい。当該添加剤の配合量は、適宜設定することができる。
【0045】
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法は、以下の第一工程、第二工程、第三工程、及び溶融混練工程を必須の工程として含む。なお、第一工程、第二工程、及び第三工程は、溶融混練工程に付す混合物を得るための工程であり、これら工程における「混合」は、通常、脂肪族ポリエステル(A)が溶融する温度未満で実施され、すなわち、非溶融状態での混合を意味する。なお、第三工程において残りの脂肪族ポリエステル(A)の一部を添加する場合には、続く溶融混練工程において、残りの脂肪族ポリエステル(A)を逐次添加しながら溶融混練を行なってもよい。
【0046】
第一工程:本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物を構成する脂肪族ポリエステル(A)の全量(100重量%)に対する20〜50重量%及びシリカ(B)を混合する工程
第二工程:第一工程で得られた混合物に分散助剤(C)を混合する工程
第三工程:第二工程で得られた混合物に残り80〜50重量%の脂肪族ポリエステル(A)の一部又は全部を混合する工程溶融混練工程:第三工程で得られた混合物を溶融混練する工程
(溶融混練前材料混合法:第一〜三工程)
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法において脂肪族ポリエステル(A)とシリカ(B)と分散助剤(C)とを溶融混練工程前に混合する第一工程から第三工程の中で、第一工程で混合される脂肪族ポリエステル(A)の量は本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物に含まれる脂肪族ポリエステル(A)の全量(100重量%)に対して20〜50重量%である。20重量%より少ない場合は、混合の際に脂肪族ポリエステル(A)(通常、粉体である)の間隙にシリカ(B)が十分に充填されず原料の減容化が不十分で、シリカ(B)の低嵩密度からフィード性が悪く生産性が低いままであったり、第二工程で添加される分散助剤(C)とシリカ(B)の接触確率が上がることでシリカ(B)が凝集体となりシリカ(B)の分散性が低下する。逆に50重量%より大きいと、第二工程で添加される分散助剤(C)が脂肪族ポリエステル(A)と接触する確率が高くなって浸潤することで、シリカ(B)の分散助剤としての分散助剤(C)の働きが低下してしまう可能性がある。また、上述のように、第三工程で添加(混合)する脂肪族ポリエステル(A)の量は、第一工程で混合した脂肪族ポリエステル(A)の残り全量であってもよいし、当該残りの一部であってもよい。残りの一部の場合は、その後の溶融混練工程の途中で残りの全量を添加することになる。このようにすることで吐出量を高めて、生産性を高めることができる。
【0047】
(溶融混練方法;溶融混練工程)
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法の溶融混練工程においては、単軸押出機、二軸押出機、プラネタリーローラー押出機、バンバリーミキサーなどの公知の混練機を用いることができる。これらのうち、汎用性、そしてシリカ(B)の分配・分散や剪断の制御のし易さから、二軸押出機が好ましい。また、溶融混練機の設定条件としては、脂肪族ポリエステル(A)の熱分解を抑制できることから、シリンダー設定温度を180℃以下とすることが好ましい。
【0048】
(サイドフィード)
前記のように脂肪族ポリエステル(A)の一部を溶融混練工程の途中で添加する場合は、例えば、押出機の途中からサイドフィードするような方法がとられる。サイドフィードすることで吐出量を増加させることができるため生産性を改善することが出来る。サイドフィードする脂肪族ポリエステル(A)の量は、本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物に含まれる脂肪族ポリエステル(A)の全量に対して30〜50重量%が好ましい。また、サイドフィードする位置はスクリュー全長を100%とした場合、川上側から55〜65%の位置が好ましい。
【0049】
(脂肪族芳香族ポリエステルの複合(混合))
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物には、脂肪族芳香族ポリエステル(D)を、脂肪族ポリエステル樹脂組成物を製造する途中あるいは後で複合しても良い。すなわち、本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法は、上述の必須の工程以外にも、脂肪族芳香族ポリエステル(D)を混合する工程を含んでいてもよい。当該工程は通常、第三工程の後に実施される。脂肪族芳香族ポリエステル(D)の混合は、溶融混練によって実施してもよいし、非溶融混練(例えばドライブレンド)によって実施してもよい。より詳しくは、脂肪族芳香族ポリエステル(D)の複合方法(混合方法)としては、前記溶融混練工程において、脂肪族ポリエステル(A)、シリカ(B)、及び分散助剤(C)の混合物を押出機に投入する根元ホッパーと同じ箇所から別フィーダーで脂肪族芳香族ポリエステル(D)を供給して溶融混練を実施しても良いし、脂肪族芳香族ポリエステル(D)を、前記押出機の途中からサイドフィードして溶融混練を実施しても良い。あるいは、前記溶融混練工程を実施して脂肪族ポリエステル(A)、シリカ(B)、及び分散助剤(C)を含む脂肪族ポリエステル樹脂組成物を製造した後に、固形(例えば粉末状、ペレット状等)の当該組成物と脂肪族芳香族ポリエステル(D)とをドライブレンドした上で、二度目の溶融混練を行なって複合化してもよい。なかでも、脂肪族芳香族ポリエステル(D)の混合は、生産性の観点で、溶融混練によって実施する(すなわち、上述の溶融混練工程において実施する)ことが好ましく、特に、脂肪族ポリエステル(A)、シリカ(B)及び分散助剤(C)を含む溶融混練物に対して、脂肪族芳香族ポリエステル(D)を押出機の途中からサイドフィードして溶融混練することにより実施することがより好ましい。
【0050】
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法で得られた脂肪族ポリエステル樹脂組成物は単独で、または種々の樹脂と複合化したり、または種々の樹脂と多層化するなどの成形加工を実施することができる。例えばフィルムまたはシートに加工する際の成形加工方法としては、インフレーション法やTダイ押出法などの公知の方法を用いることができる。具体的な条件については適宜設定すればよいが、例えば、インフレーション法では、インフレーション成形前に除湿乾燥機などでペレットの水分率が500ppm以下になるまで乾燥し、シリンダー設定温度100〜160℃、アダプターおよびダイスの設定温度を130〜160℃にすることが好ましい。
【0051】
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物は、フィルムまたはシートに加工した際に、シリカ分散不良による外観不良の問題がなく、また特にPBATやPBSTと複合化した場合はいっそう高い引裂強度を発現することができる。
【0052】
フィルムまたはシートの厚みについて厳格な規定はないが、厚み1〜100μm程度を一般にフィルム、厚み100μmを超えて2mm程度までをシートとよぶ。
【0053】
本発明のフィルムまたはシートは、農業、漁業、林業、園芸、医学、衛生品、食品産業、衣料、非衣料、包装、自動車、建材、その他の分野に好適に用いることができる。例えば農業用マルチフィルム、林業用燻蒸シート、フラットヤーン等を含む結束テープ、植木の根巻フィルム、おむつのバックシート、包装用シート、ショッピングバック、ゴミ袋、水切り袋、その他コンポストバック等の用途に用いられる。
【0054】
本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法は、脂肪族ポリエステル樹脂組成物を成形加工する工程を含んでいてもよい。成形加工する工程は、上述の溶融混練工程と連続して実施することもできるし、非連続に実施することもできる。成形加工の方法としては、上述の公知の方法が挙げられる。本発明の脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造方法が成形加工する工程を含む場合は、上記製造方法によって成形加工された(すなわち、成形体である)脂肪族ポリエステル樹脂組成物が得られる。成形体としては特に限定されず、上述のように例えばフィルムやシートが挙げられる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0056】
[脂肪族ポリエステル]
本実施例で使用する脂肪族ポリエステルA−1は、国際公開第2013/147139号に記載の方法に準じて得た、3−ヒドロキシヘキサノエート(3HH)組成が11.2モル%のPHBHである。GPCで測定した当該PHBHの重量平均分子量は57万、平均粒子径は330μmであった。以下の実施例および比較例においては、以下の原料も用いた。
A−2:EM5400F[P3HB4HB](Ecomann社製)、平均粒子径:299μm
[シリカ]
B−1:Nipsil LP[湿式シリカ](東ソー・シリカ社製)
B−2:R972[乾式シリカ](日本アエロジル社製)
表1に示すシリカの平均一次粒子径はメーカーカタログ値を記載した。
【0057】
[分散助剤]
C−1:リケマールPL012[グリセリンエステル系化合物](理研ビタミン社製)
C−2:モノサイザーW242[アジピン酸エステル系化合物](DIC株式会社製)
C−3:Polysorb ID46[イソソルバイドエステル系化合物](ROQUETTE社製)
[脂肪族芳香族ポリエステル]
D−1:Ecoflex F Blend C1200(BASF社製):PBAT
D−2:Ecoflex FS Blend B1100(BASF社製):PBST
D−3:GF106/02(Biotec社製):PBAT/澱粉=66/34
[実施例1](脂肪族ポリエステル樹脂組成物の製造)
脂肪族ポリエステルA−1、シリカB−1、及び分散助剤C−1を表1に示した配合比(表中の配合比は、重量部を示す。以下、同じ。)で、まず溶融混練前混合第一工程として全A−1のうちの30重量%と全A−1(100重量部)に対して10重量部のB−1をスーパーミキサーに入れて300rpmで1分混合した。次に、第二工程として全A−1(100重量部)に対して20重量部のC−1を第一工程で得た混合物に添加して、5分混合した。次いで、第三工程として残りの70重量%A−1を第二工程で得た混合物に添加して300rpmで3分混合して、溶融混練前混合原料を得た。
【0058】
次に同方向噛合型二軸押出機(東芝機械社製:TEM−26SS)を用いて前記混合原料全部を
図1に示す第一供給口(13)から一括で投入し、設定温度120〜140℃、スクリュ回転数100rpm(出口樹脂温度155℃)で溶融混練し、脂肪族ポリエステル樹脂組成物を得た。出口樹脂温度はダイスから出てくる溶融した樹脂を直接K型熱電対で測定した。当該脂肪族ポリエステル樹脂組成物をダイスからストランド状に引き取り、ペレット状にカットした。
【0059】
(フィルムの製造)
150mm幅、リップ0.25mmのT型ダイスを装着した単軸押出機ラボプラストミル(東洋精機製作所製、20C200型)を用いて、ダイス設定温度160℃、スクリュー回転数40rpmの条件で上記で得られた脂肪族ポリエステル樹脂組成物を押出し、60℃に温調した冷却ロールで1m/minの速度で引き取り、40μm厚のフィルムを得た。
【0060】
(シリカ分散性[外観性]評価)
上記で得られたフィルムから幅10cm×長さ30cmの面積を任意に10箇所選び、それぞれの箇所において40μm以上のフィッシュアイが1個以下であることが全10箇所において確認できる場合を○、10箇所のうち1箇所でもフィッシュアイが2個以上確認される場合を×と評価した。評価結果を表1に示した。ここでいうフィッシュアイとは、例えば温度可変型偏光顕微鏡で250℃まで加熱しても溶融しないような固形物とし、250℃までの加熱の途中に溶融して固形状態を維持しないものは対象外とした。つまり、フィッシュアイとは、40μm・BR>ネ上のサイズのシリカ凝集体を指す。
【0061】
(シリカ吸着水分量)
研精工業株式会社製電磁式はかりMX−50を用いて160℃における揮発分を測定し、その値を水分量(吸着水分量)として記載した。
【0062】
(ブリードアウト評価)
上記で得られたフィルムから10cm幅×100cm長さを切り出し、ZEBRA社製油性マジックで中央に1本と中央から4cmの間隔で両側に2本長さ方向に線を引いた。それを23℃、50%RHの下で6ヶ月間放置し、成形後から1週間ごとにマジック線の滲みを確認した。滲みは、目視および指で擦って確認した。6ヶ月経っても滲みがない場合を○、6ヶ月間の間に滲みが発生した場合を×とした。評価結果を表1に示した。
【0063】
[実施例2、3]
溶融混練前混合第一工程と第三工程で用いたA−1の配合量を表1に示したように変更した以外は実施例1と同様にして、脂肪族ポリエステル樹脂組成物及びそれからなるフィルムを得、当該フィルムを用いてシリカの分散性とブリードアウトを評価した。評価結果を表1に示す。
【0064】
[実施例4〜7]
使用した脂肪族ポリエステル(A)、シリカ(B)、分散助剤(C)の種類を表1に示したように変更した以外は実施例1と同様にして、脂肪族ポリエステル樹脂組成物及びそれからなるフィルムを得、当該フィルムを用いてシリカの分散性とブリードアウトを評価した。評価結果を表1に示す。
【0065】
[実施例8、9]
使用したシリカ(B)と分散助剤(C)の配合量を表1に示したように変更した以外は実施例1と同様にして、脂肪族ポリエステル樹脂組成物及びそれからなるフィルムを得、当該フィルムを用いてシリカの分散性とブリードアウトを評価した。評価結果を表1に示す。
【0066】
[実施例10]
溶融混練前混合第三工程で用いたA−1の配合量を表1に示したように変更し、第三工程で得られた混合物を
図1に示す第一供給口(13)から投入し、残りのA−1を
図1に示す第二供給口(14)から投入した以外は実施例1と同様にして、脂肪族ポリエステル樹脂組成物及びそれからなるフィルムを得、当該フィルムを用いてシリカの分散性とブリードアウトを評価した。ここで、第二供給口(14)は、スクリュー全長を100%として川上側から62%の位置に設置した。評価結果を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
[比較例1、2]
溶融混練前混合第一工程で用いたA−1の配合量を表2に示したように変更した以外は実施例1と同様にして、脂肪族ポリエステル樹脂組成物及びそれからなるフィルムを得、当該フィルムを用いてシリカの分散性とブリードアウトを評価した。評価結果を表2に示す。
【0069】
[比較例3]
シリカ(B)、分散助剤(C)の配合量を表2に示したように変更した以外は実施例1と同様にして、脂肪族ポリエステル樹脂組成物及びそれからなるフィルムを得、シリカの分散性とブリードアウトを評価した。評価結果を表2に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
実施例1〜3と比較例1、2とを比較した場合、比較例1と2のように第一工程で混合する脂肪族ポリエステルの配合量が本発明で規定する適正範囲を外れるとシリカの分散性に問題が発生することがわかる。また、実施例1と比較例3を比較した場合、比較例3のように本発明で規定する適正範囲を外れる量のシリカと分散助剤を配合するとシリカの分散性およびブリードアウト性に問題が発生することがわかる。一方で、溶融混練前に本発明で示すような適正な混合法をとると、実施例1〜10に示すように種々の材料を用いても分散性の良い状態の樹脂組成物を製造できることがわかる。
【0072】
[実施例11]
使用したシリカ(B)の水分量を表2に示したように変更した以外は実施例1と同様にして、脂肪族ポリエステル樹脂組成物及びそれからなるフィルムを得、シリカの分散性とブリードアウトを評価した。評価結果を表2に示す。
【0073】
[実施例12〜14]
実施例1で製造した脂肪族ポリエステル樹脂組成物(Y−1)と脂肪族芳香族ポリエステルD−1を表3に示す配合比で混合(ドライブレンド)し、得られた混合物を、
図1に示す第一供給口(13)から一括で投入し、設定温度140℃(出口樹脂温度160℃)、スクリュ回転数100rpmで溶融混練し、脂肪族ポリエステル樹脂組成物を得た(当該方法をD−aと称する)。当該脂肪族ポリエステル樹脂組成物をダイスからストランド状に引き取り、ペレット状にカットした。
【0074】
次いで、得られた脂肪族ポリエステル樹脂組成物を実施例1で用いたのと同様の成形機を用いてダイス設定温度160℃で40μm厚のフィルムを得、当該フィルムを用いてシリカの分散性とブリードアウトを評価した。評価結果を表3に示す。
【0075】
(引裂強度の測定)
得られたフィルム(シート)は、エルメンドルフ引裂強度測定器(熊谷理器工業社製)を用い、JIS 8116に準拠して、MD方向の引裂強度を測定した。引裂強度測定結果を表3に示す。
【0076】
[実施例15、16]
使用した脂肪族芳香族ポリエステル(D)の種類を表3に示したように変更した以外は実施例13と同様にして、脂肪族ポリエステル樹脂組成物及びそれからなるフィルムを得、当該フィルムを用いてシリカの分散性、ブリードアウト、および引裂強度を評価した。評価結果を表3に示す。
【0077】
[実施例17]
実施例1の方法で脂肪族ポリエステル樹脂組成物を製造する工程(溶融混練工程)において設定温度を140℃(出口樹脂温度160℃)とし、
図1に示す第一供給口(13)から、A−1、B−1及びC−1を含む混合原料に加えて、D−1を表3に示す配合比で供給した以外は実施例1と同様にして脂肪族ポリエステル樹脂組成物を得た(当該方法をD−bと称する)。次いで実施例13と同様にして脂肪族ポリエステル樹脂組成物からなるフィルムを得、当該フィルムを用いてシリカの分散性、ブリードアウト、および引裂強度を評価した。評価結果を表3に示す。
【0078】
[実施例18]
実施例1の方法で脂肪族ポリエステル樹脂組成物を製造する工程(溶融混練工程)において設定温度を140℃(出口樹脂温度160℃)とし、A−1、B−1及びC−1を含む混合原料を
図1に示す第一供給口から投入することに加えて、
図1に示す第二供給口(14)からD−1を表3に示す配合比で供給した以外は実施例1と同様にして、脂肪族ポリエステル樹脂組成物を得た(当該方法をD−cと称する)。ここで、第二供給口(14)は、スクリュー全長を100%として川上側から62%の位置に設置した。次いで実施例13と同様にして脂肪族ポリエステル樹脂組成物からなるフィルムを得、当該フィルムを用いてシリカの分散性、ブリードアウト、および引裂強度を評価した。評価結果を表3に示す。
【0079】
[比較例4]
比較例1で作製した脂肪族ポリエスエル樹脂組成物(Y−2)を用いた以外は実施例13と同様にして脂肪族ポリエステル樹脂組成物及びそれからなるフィルムを得、当該フィルムを用いてシリカの分散性、ブリードアウト、および引裂強度を評価した。評価結果を表3に示す。
【0080】
【表3】
【0081】
実施例13と比較例4とを比較した場合、実施例13のようにシリカの分散性がよい脂肪族ポリエステル樹脂組成物と脂肪族芳香族ポリエステル(D)とを別途溶融混練して複合化することでシリカの分散性がよく、引裂強度が30N/mm以上と十分に大きいフィルムを得られることがわかる。また、実施例12〜16からわかるように、本発明の製造方法で作製された脂肪族ポリエステル樹脂組成物、例えば実施例1の脂肪族ポリエステル樹脂組成物を用いれば、種々の脂肪族芳香族ポリエステル(D)と複合化しても、また脂肪族芳香族ポリエステル(D)の配合量を変化させてもシリカの分散性がよく、引裂強度が十分に大きいフィルムを得られることがわかる。加えて実施例17や18が好適なシリカ分散性と引裂強度を示すことから、本発明の製造方法においては脂肪族芳香族ポリエステル(D)の複合化法を種々選択できることがわかる。