特許第6845872号(P6845872)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6845872
(24)【登録日】2021年3月2日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】拡張可能なフレキシブルホース
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/12 20060101AFI20210315BHJP
   F16L 55/00 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   F16L11/12 Z
   F16L55/00 M
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-554569(P2018-554569)
(86)(22)【出願日】2016年4月29日
(65)【公表番号】特表2019-515200(P2019-515200A)
(43)【公表日】2019年6月6日
(86)【国際出願番号】IB2016052435
(87)【国際公開番号】WO2017187233
(87)【国際公開日】20171102
【審査請求日】2019年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】509008020
【氏名又は名称】フィット エッセピア
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メッザリラ,アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ビゴロ,バレンティノ
(72)【発明者】
【氏名】バッタグリア,ルカ
(72)【発明者】
【氏名】ペトロニッリ,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ブッチ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】セガリン,アレッサンドロ
【審査官】 渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−071385(JP,A)
【文献】 特開平03−157599(JP,A)
【文献】 特開2013−228005(JP,A)
【文献】 特開平11−236983(JP,A)
【文献】 特開2001−041361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/12
F16L 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体、特に水、を輸送する拡張可能なフレキシブルホースであって、
− 第1の弾性ポリマー材料で作られた少なくとも1つの内側層(10)と、
− 第2の弾性ポリマー材料で作られた少なくとも1つの外側層(20)と、
− 前記少なくとも1つの内側層(10)と前記少なくとも1つの外側層(20)の間に介在する少なくとも1つの繊維素材補強層(30)と、を含み、
前記少なくとも1つの内側層(10)および前記少なくとも1つの外側層(20)は、一体的管状部材(50)を形成するように相互に結合し、前記少なくとも1つの繊維素材補強層(30)は前記一体的管状部材(50)に埋め込まれており、
前記一体的管状部材(50)は、前記一体的管状部材(50)を通って流れる液体によって付加される前記作動圧力下で自動的に拡張して、その元の外径を増加させ、および、再度前記元の外径となるために、前記作動圧力が停止すると自動的に回復するような弾性を有し、
前記少なくとも1つの繊維素材補強層(30)が、液体が前記一体的管状部材(50)を通って流れていないときの休止形態と、前記一体的管状部材(50)が前記作動圧力によって拡張するときの作動形態の間での動作を許容し、
2バールの作動圧力下で、前記ホースが外径を元の外径に対して少なくとも1.3倍に拡張するように、前記一体的管状部材(50)と前記少なくとも1つの繊維素材補強層(30)とが互いに協働することを特徴とするホース
【請求項2】
前記一体的管状部材(50)の前記自動的な拡張は、前記少なくとも1つの繊維素材層(30)の、前記休止形態から前記作動形態への動作を促進し、前記一体的管状部材(50)の前記自動的な回復は、前記少なくとも1つの繊維素材層(30)の、前記作動形態から前記休止形態への戻り動作を促進することを特徴とする請求項1に記載のホース
【請求項3】
前記少なくとも1つの繊維素材補強層(30)および前記一体的管状部材(50)が、拡張時に、前記一体的管状部材(50)の最大外径を規定するために、前記繊維素材補強層(30)が前記一体的管状部材(50)を捕捉するように、相互に構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のホース
【請求項4】
前記少なくとも1つの繊維素材補強層(30)は、前記少なくとも1つの内側層(10)の前記外面(12)上に、複数の非被覆領域(13)を残すように配置され、前記少なくとも1つの外側層(20)と前記少なくとも1つの内側層(10)とは、前記非被覆領域(13)に対応して互いに連結することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のホース
【請求項5】
前記少なくとも1つの繊維素材補強層(30)が、編物、織物、または結節から成る群から選択されることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のホース
【請求項6】
前記少なくとも1つの繊維素材補強層(30)が、鎖状トリコットタイプ、ダイヤモンド編タイプ、放射状タイプ、両面編タイプ、または編み込みタイプであることを特徴とする請求項に記載のホース
【請求項7】
前記一体的管状部材(50)と前記少なくとも1つの繊維素材補強層(30)とが、2バールの作動圧力下で、前記ホースの外径を、元の径の少なくとも1.4倍に、好適には元の径の少なくとも1.45倍に、より好適には元の径の少なくとも1.5倍に、拡張するように、互いに協働することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のホース
【請求項8】
前記一体的管状部材(50)および前記少なくとも1つの繊維素材補強層(30)は、5バールの作動圧力下における前記一体的管状部材(50)の長さ方向の伸張が、前記一体的管状部材(50)に液体が流れていない場合の元の長さに対して20%未満であり、好適には前記一体的管状部材(50)に液体が流れていない場合の元の長さに対して15%未満であるように、互いに協働することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のホース。
【請求項9】
前記一体的管状部材(50)が、ASTM D2240(3”)に従って測定された、30ショアAから50ショアAのショアA硬度を有することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のホース。
【請求項10】
液体、特に水、を輸送するホース組立体であって、
− 請求項1から9のいずれか一項に記載の拡張可能なフレキシブルホースと、
− 前記ホースの拡張を促進する作動圧力を前記ホース内に生成するための、少なくとも1つの規制部すなわち少なくとも1つの流量制限器(61)であって、前記ホース内部に配置されるか又は前記ホースに連結されている、前記少なくとも1つの規制部すなわち少なくとも1つの流量制限器(61)と、
を備えていることを特徴とするホース組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、一般に、フレキシブルホース(可撓性ホース、柔軟なホース、flexible hose)の技術分野に適用可能であり、特に、好適には、水を輸送するための灌漑用ホースまたは水撒き用ホース(ガーデンホース)であるフレキシブルホースに関し、このホースは、拡張可能であり、すなわち、流体が内部を通過する際に自動的に拡張し、液体の圧力が停止すると自動的に収縮することを許容する(susceptible)。
【0002】
[定義]
ここで使用されている表現「繊維素材(textile)補強層」、またはその派生語は、層を支持するための、層に取り付けられた少なくとも1つの繊維素材糸(textile yarn)で構成される層を意味する。「繊維素材補強層」は、通常、四角形、長方形、またはひし形の、層の非拘束部分(free portions、自由部分)を残すように、支持層上に配置されている。
【0003】
ここで使用されている表現「繊維素材糸」、またはその派生語は、他の寸法と比較して、長さが顕著に長いということを条件とする、任意の形状および任意の材料で製造された長尺の糸状部材を含む。例えば、繊維素材糸は、ポリマー糸であってもよく、当該ポリマー糸は単一構造であってもよいし、またはその代わりに複数の基本糸の集合体、または長方形の断面を有する織物の帯状体で構成されてもよい。
【0004】
ここで使用されている表現「繊維素材編物層」または「編物」またはその派生語は、支持層に設けられ、複数のチェーン状の編目または編物を形成するように互いに連結された、少なくとも2つの糸または糸の群で構成された層を意味する。
【0005】
ここで使用されている表現「繊維素材織物層」または「織物」またはその派生語は、逆向きの傾斜(opposite inclination)をつけて支持層上に設けられるとともに、織物を形成するように互いに交互に連結された、少なくとも2つの糸または糸の群で構成された層を意味する。織物では、糸は、まず別の糸の上に、次にその下に交互に織り合わせられる。傾斜角によっては、織物は布地としても知られている。
【0006】
ここで使用されている表現「繊維素材結節層」または「結節」またはその派生語は、逆向きの傾斜をつけて支持層上に設けられ、1または複数の結び目によって互いに相互連結された、少なくとも2つの糸または糸の群で構成された層を意味する。結節では、糸は結び目によって課せられた制約により、別の糸に対して滑動することはできない。
【0007】
ここで使用される表現「親和性材料(compatible materials)」またはその派生語は、互いに化学的および/または物理的な親和性を有することを意味し、すなわち、接合されると、接触面を介した張力またはせん断応力の伝達を支援するように構成された接合点を形成する材料である。したがって、同一の材料は、または同一ベースの母材を有する材料である場合は常に、最大レベルの親和性を有する。
【0008】
ここで使用される表現、ポリマーの「母材」またはその派生語は、完成品の分子構造を提供可能なポリマー材料を意味する。
【0009】
ここで使用される表現「提供する」またはその派生語は、対象の工程ステップのための、対象の要素の生成、準備を意味し、したがって、単純な取り出しおよび想定される保管から、予熱および/または化学的および/または物理的処理などまでの、対象の関与するステップを最適に活用するための予防的処理を含む。
【0010】
ここで使用される表現「膜(film)」またはその派生語は、厚さが0.5mmよりも小さいポリマー材料の層を意味する。
【背景技術】
【0011】
[従来技術]
ホース、特に、外側の被覆(jacket)および内側のフレキシブルチューブを含む消防ホースはよく知られている。
【0012】
外側の被覆は通常、合成繊維素材ファイバ(synthetic textile fiber)で構成され、既定の内径を有している。一方で内側チューブはゴムで構成され、チューブを流れる水流によって伝達される作動圧力(working pressure)が付加されると、被覆の内径と一致する外径まで拡張されるように設計されている。
【0013】
結果として、内側チューブが使用時のホース全体の内径を決定する。一方で、不使用時、つまり、ホースに水が流れていないとき、内側ホースはつぶれて平坦となり、ホース全体のかさばりが比較的小さくなり、リールで保管することが可能になる。
【0014】
この種のホースは、被覆と内側チューブを別々に製造し、その後で組み立てなければいけないため、製造が困難かつ面倒である。
さらに、この種のホースは専門の操作者によって使用されるものであり、重量がある上にかさばり、取り扱いが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第3028290号公報
【特許文献2】米国特許第4009734号公報
【特許文献3】欧州特許第2520840号公報
【特許文献4】欧州特許第2778491号公報
【特許文献5】欧州特許第0623776号公報
【特許文献6】欧州特許第0527512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、顕著な効率性および比較的低価格の、拡張可能なフレキシブルホースを提供することにより、上記欠点の少なくとも一部を克服することである。
【0017】
本発明の別の目的は、単純かつ迅速な方法で製造可能な、拡張可能なフレキシブルホースを提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、インライン方式で自動的に製造可能な、拡張可能なフレキシブルホースを提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、扱いやすい拡張可能なフレキシブルホースを提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、比較的高い破裂圧力を有する拡張可能なフレキシブルホースを提供することである。
【0021】
本発明の別の目的は、かさばりを最小限にする拡張可能なフレキシブルホースを提供することである。
【0022】
本発明の別の目的は、保管が単純かつ実用的な、拡張可能なフレキシブルホースを提供することである。
【0023】
本発明の別の目的は、破損した場合に修理できる拡張可能なフレキシブルホースを提供することである。
【0024】
本発明の別の目的は、長さをカスタマイズできる拡張可能なフレキシブルホースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
この目的、および他の目的は、本明細書で説明、表示および/または特許請求の範囲に記載の、液体を輸送するフレキシブルホース、特に、水を輸送する拡張可能な灌漑用ホースおよび水撒き用ホース、並びに、ホースを含むホースの組立体によって達成される実現される。
【0026】
本ホースは灌漑用ホースまたは水撒き用ホースとして典型的な、波形ではなく(非波形)、コイル型ではない(非コイル型)、管状構造を有する。ポリマー層が管状に形成されてもよい。
【0027】
波形ホースの例は米国特許第3028290号によって公知であり、一方でコイル型ホースは米国特許第4009734号によって公知である。
【0028】
フレキシブルホースは、第1のポリマー弾性材料の少なくとも1つの内側層と、第2のポリマー弾性材料の少なくとも1つの外側層と、それらの間に介在する少なくとも1つの繊維素材補強層を備えてもよい。
【0029】
少なくとも1つの内側層および少なくとも1つの外側層が結合されて、少なくとも1つの一体的管状部材を形成することができる。一体的管状部材は、少なくとも1つの繊維素材層と一体化し、少なくとも1つの繊維素材層を組み込むことができる。
【0030】
上記を実現するために、少なくとも1つの外側層と少なくとも1つの内側層が、少なくとも1つの繊維素材補強層によって被覆されていない少なくとも1つの内側層の外側面の領域に対応して、相互に(reciprocally)結合されてもよい。換言すると、少なくとも1つの外側層と少なくとも1つの内側層は、少なくとも1つの繊維素材層の繊維素材糸で占められている範囲以外で相互に結合されてもよい。
【0031】
一体的管状部材は、管状部材を通って流れる作動流体によって付加される圧力下で自動的に拡張し、および場合によっては伸張し、その元の直径および場合によってはその元の長さを増加させ、ならびに、作動圧力が停止すると、元の直径および場合によっては元の長さに戻すために、自動的に収縮するように、弾性を適切に有することができる。
【0032】
拡張は外観上明らかで識別可能であるが、伸張はそれほど明らかではなく、最終的に外観で感知することはできない。言い換えると、伸張は発生する場合としない場合とがあり、伸張は拡張よりも顕著に識別が困難である。
【0033】
上記を実現するために、一体的管状部材を形成する第1のポリマー弾性材料および第2のポリマー弾性材料が適切に選択される。
【0034】
第1のポリマー弾性材料および第2のポリマー弾性材料は、エラストマーまたは熱可塑性エラストマーとすることができる。
【0035】
適切なTPEは、PP/SEBSまたはPP/EPDMのようなTPE−S、あるいはエチレン−オクテンコポリマーのようなTPE−Oであってもよい。
【0036】
適切なエラストマーは天然ゴムまたはラテックスであってもよい。
【0037】
一体的管状部材は、ASTM D2240(3”)に従って測定された、30ショアAから50ショアAのショアA硬度を有することができる。
【0038】
少なくとも1つの繊維素材層の繊維素材糸はポリエステル、ナイロン6,6、ポリビニル・アルコール、パラ系アラミドファイバ、メタ系アラミドファイバ、レーヨンであってもよい。
【0039】
有利なことに、少なくとも1つの繊維素材層の繊維素材糸は、BISFA(7章)に従って測定された、30%未満、好適には25%未満の破断点伸び率を有することができる。
【0040】
有利なことに、少なくとも1つの繊維素材層の繊維素材糸は、BISFA(7章)に従って測定された、少なくとも50cN/texの靱性を有することができる。
【0041】
適切な参考文献として参照される欧州特許第2520840号および/または欧州特許第2778491号によって教示されるように、それ自体が公知の方法で、ホースに挿入されるか、またはホースと連結される1または複数の規制部(restrictions)すなわち流量制限器(flow restrictor)によって、自動的拡張、および場合によっては自動的伸張が促進される。ホースの片方の端部は、例えば蛇口のような、輸送対象の液体を供給する手段に適切に連結することができる。
【0042】
知られているように、応力が発生した(stressed)場合のフレキシブルホース内の繊維素材補強層は、種類に応じて軸方向(長手軸方向、長軸方向)に伸張するか、および/または半径方向に拡張する傾向にある。
【0043】
一体的管状部材および少なくとも1つの繊維素材補強層は、2バール(2bar、2×10Pa)の作動圧力下で、ホースは元の外径(original outer diameter)の少なくとも1.3倍の外径に拡張し、好適には元の直径の1.4倍に拡張し、より好適には元の直径の1.45倍に拡張し、さらに好適には元の外径の1.5倍に拡張するように、適切に互いに協働することができる。
【0044】
一方で、一体的管状部材および前記少なくとも1つの繊維素材補強層は、5バール(5bar、5×10Pa)の作動圧力下で、一体的管状部材の長さの伸張が、一体的管状部材に液体が流れていない場合の元の長さに対して20%未満であり、好適には、一体的管状部材に液体が流れていない場合の元の長さに対して15%未満であるように、互いに協働することができる。
【0045】
有利なことに、本発明の拡張可能ホースの少なくとも1つの繊維素材補強層は、液体が一体的管状部材を通って流れていない休止状態における休止形態と、一体的管状部材がその中を流れる液体の作動圧力によって作用をうけるときの作動形態の間を移動することを許容する。
【0046】
作動形態において、少なくとも1つの繊維素材補強層は半径方向に膨張し、場合によっては軸方向に延伸し、一体的管状部材の拡張および場合によっては伸張を伴う。
【0047】
繊維素材補強層の糸が弾性かもしくは剛性か、ならびに繊維素材補強層の種類に依存して、このような拡張、および場合による伸張は、程度の差はあるが、識別可能である。
【0048】
しかしながら、繊維素材補強層の糸は、その拡張の際に一体的管状部材で効果的に動作するために、好適には剛性であってもよい。
【0049】
好適には、少なくとも1つの繊維素材補強層および一体的管状部材が、拡張および場合によっては伸張する時に、最大径および場合によっては最大長さを決定するために、繊維素材補強層が一体的管状部材を捕捉する(intercept、遮る)ように相互に構成することができる。
【0050】
言い換えると、所定のホース内部圧力に対して、少なくとも1つの繊維素材補強層の半径方向の最大拡張および場合によっては軸方向の最大伸張が、ホース全体の半径方向の最大拡張および場合によっては軸方向の最大長さを決定するように、少なくとも1つの繊維素材補強層の半径方向の最大拡張(maximum enlargement)および場合によっては軸方向の最大伸張(maximum enlongation)は、一体的管状部材の半径方向の最大拡張および場合によっては軸方向の最大伸張よりも小さい。
【0051】
一体的管状部材の自動的収縮は、ホース内部の圧力が停止すると、少なくとも1つの繊維素材補強層を休止形態に戻すことを適切に可能とする。
【0052】
一体的管状部材のこの自動収縮は、その弾性のみにより実現可能であり、他の助力は不要である。特に、本発明のホースはコイルばねや同様の自動収縮手段を必要としない。
【0053】
上記の一または複数の特徴の結果、使い勝手がよく実用的な拡張可能なフレキシブルホースを取得することが可能である。
【0054】
本発明に従ったフレキシブルホースは、先行技術の拡張可能ホースの欠点を取り除きつつ、「古典的な」フレキシブルホースの有利な点に、拡張可能ホースのすべての有利な点を組み合わせることを可能にする。
【0055】
実際、本発明に従ったフレキシブルホースは比較的高い破裂圧力を有し、「古典的な」フレキシブルホースの破裂圧力と比較しても遜色ない。
【0056】
実際、少なくとも1つの繊維素材補強層は高破裂圧力、および、それに伴うホースのより高い耐久性を確保している。
【0057】
さらに、少なくとも1つの外側層がポリマー材料で構成されているという事実の結果、フレキシブルホースは単純であり、湿った土の上でひきずることで付着した残留土および/または泥を迅速に掃除することができる。
【0058】
さらに、本発明に従ったフレキシブルホースの全体的な嵩高さ(bulkiness)は最小限に抑えられている。これにより、例えば、極めて小さな空間にも保管することが可能である。さらに、古典的なホースリールにも容易に保管することができる。
【0059】
さらに、本発明に従ったフレキシブルホースは、故障または破損の場合に、「古典的な」ホースのように修復可能である。また、例えば、ホースが断裂した場合に、元の付属品を、もしあるならば市場のフレキシブルホース用の古典的付属品と交換することも可能である。
【0060】
ただし、本発明のホースにおいて、複数の層を互いに連結するための、端部を連結する付属品または要素は不要であることは理解されるであろう。実際、本発明のホースにおいて、すべての要素が一体化しており、具体的には、少なくとも1つの繊維素材補強層は一体的管状部材に渡って一体化している。
【0061】
本発明のホースを、全構成の特徴を維持しながら、任意のサイズに切断することも可能である。上記は本ホースのメートル単位でのカスタマイズによる商品化をも可能にする。
【0062】
好適には、本発明に従った拡張可能ホースの繊維素材補強層は、繊維素材結節層または繊維素材編物層であってもよい。好適には、繊維素材編物層の編目はトリコットタイプ、放射状タイプ、ダイヤモンドタイプ、あるいは両面編または編み込み式であってもよい。
【0063】
第1の繊維素材層が、拡張時に最大径を決定するために一体的管状部材を捕捉するように、少なくとも1つの第1の繊維素材層および一体的管状部材は、相互に(mutually)構成(configure)されている。
【0064】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項にて説明される。
【0065】
本発明の更なる特徴および有利な点が、拡張可能なフレキシブルホース1の好適で包括的な実施形態の詳細な説明を読むことで、明らかとなるであろう。当該特徴および有利な点は、添付の図面を参照して、限定的ではない例として説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1図1はホース1の使用時の実施形態の概略図である。
図2図2はホース1の使用時の実施形態の概略図である。
図3図3はホース1の休止時の実施形態の概略図である。
図4図4は圧力下での図4のホース1の実施形態の、概略側面図である。
図5図5はダイヤモンド編タイプの繊維編物補強層の例を示している
図6図6は両面編タイプの繊維編物補強層を含むホース1の例を示している。
図7図7は編込みタイプの繊維編物補強層を含むホース1の例を示している。
図8図8は繊維織物補強層の例を示している。
図9図9は繊維織物補強層の例を示している。
図10図10は繊維結節補強層の例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0067】
上記図面を参照すると、拡張可能ホース1が、液体を輸送するために有利に使用されている。具体的には、フレキシブルホース1は、水を輸送するための灌漑用ホースまたは水撒き用ホースであってもよい。
【0068】
図3および図4で具体的に示されているように、拡張可能ホース1はポリマー内側層10およびポリマー外側層20を含んでもよい。
【0069】
拡張可能なフレキシブルホース1は、トリコットタイプの鎖編による繊維素材編物層30をさらに含んでもよい。
【0070】
上記の構造によるフレキシブルホース1が後述されるが、本発明に従ったホースは、添付の請求項によって決定される仕様に従った他の層を含んでもよいことは理解されるであろう。
【0071】
例えば、二重の繊維素材補強層や、または上記層の内側または外側に1または複数の追加のポリマー層が備わっていてもよい。
【0072】
上記の構造によるフレキシブルホース1が後述されるが、ここに説明されている技術的特徴が、添付の請求項によって決定される仕様に従った、少なくとも3層を含むホースに適用されることはさらに理解されるであろう。
【0073】
水を輸送するための水撒き用ホースが以下で参照されるが、拡張可能なフレキシブルホース1は、添付の請求項によって決定される仕様に従って、いかなる目的を有してもよいし、いかなる液体を輸送してもよい。
【0074】
好適ではあるが排他的ではない実施形態において、内側層10および外側層20は、ポリプロピレン(PP)に基づく母材を有するスチレン系熱可塑性エラストマー(TPE−S)で構成されてもよく、例えば、ASTM D2240(3”)に従って測定された、40ショアA硬度を有するNilflex(登録商標)SH(タロ プラスト エス.ピー.アー)であってもよい。このような材料は、ASTM D412/Cに従って測定された約6.5MPaの引張強度、および、ASTM D412/Cに従って測定された約880%の破断点伸び率を有している。
【0075】
具体的には、内側層10は1.5mmから2.5mmの厚さを有することができ、好適には1.6mmから2mmの厚さを有することができる。
【0076】
好適ではあるが排他的ではない実施形態において、繊維素材補強層30はポリエステル(PET)系糸で構成されてもよく、例えば、550dtexの線密度を有するBrilen GLE(登録商標)(ブライアン テック エス.アー.製)であってもよい。このような糸は、BISFA(7章)に従って測定された42.7+/−4.2Nの最大引張強度、BISFA(7章)に従って測定された12.5+/−2.5%の破断点伸び率、およびBISFA(7章)に従って測定された75.5+/−7cN/texの靱性を有している。
【0077】
第1の繊維素材補強層30は内側層10の外面12上に、当該外面上に複数の開放領域13(open area)を残すように配置されることができる。当該複数の開放領域13は、外側層20の内面21の対応する部分13’に直接面している。
【0078】
内側層10と外側層20とは、非被覆領域13、13’の各々と一致して相互に固着されることができる。
【0079】
内側層10と外側層20の間の固着は、互いに親和性を有する材料を利用して、または内側層と外側層の間に介在する粘着性材料による層によって確保されてもよい。
【0080】
このような結合を有効にするために、内側層10および外側層20は一体的管状部材50を形成し、この内部で繊維素材補強層30が一体化または埋め込まれていてもよい。
【0081】
ホースの全ポリマー層に、考えうる同一材料を選択することで、一体的管状部材50の機械的挙動を均一にし、材料間の最大限の親和性を確保する。
【0082】
図1および2に具体的に示されているように、ホース1の端部51、52に適切な相互結合要素を備えてもよい。
【0083】
例えば、各々の結合器60、61を備えてもよい。
【0084】
好適ではあるが排他的ではない実施形態において、結合器60は例えばメス結合器であってもよく、ホース1を、例えば蛇口Rなどの使用場所に連結するように構成されてもよい。一方で、結合器61はオス結合器であってもよく、例えばランスまたはスプリンクラーのような、1または複数のスプリンクラー付属品Dにホース1を連結するように構成されてもよい。
【0085】
別の実施形態では、ホース1の端部52は、例えばランスまたはスプリンクラーのような、スプリンクラー付属品Dに強固に結合されてもよい。この場合、ホース1は結合器61を含んでおらず、それ以上のスプリンクラー付属品に結合することはできない。もう片方の端部51で、ホース1を、例えば蛇口Rなどの使用場所に連結するために、結合器60が備わっていてもよい。
【0086】
上記の特徴の結果、拡張可能なホース1は、ホース1の内部で流れる水によって付加される作動圧力によって、自動的に拡張し、および場合によっては伸張し、結果としてその元の直径、および場合によってはその元の長さを増加させることを許容することができる。
【0087】
上記を実現するために、それ自体が公知の方法で、ホース内部の、またはホースと結合された少なくとも1つの規制部を備えることができる。
【0088】
好適ではあるが排他的ではない実施形態において、それ自体が公知の方法で、少なくとも1つの規制部が、結合器61内に配置された流量制限器によって規定されることができる。
【0089】
一方で、ホース1は、例えば肥厚部など、一または複数の規制部を内部に含むことができる。
【0090】
少なくとも1つの規制部は、例えばランス(lance)またはスプリンクラーのようなスプリンクラー付属品Dを備えていてもよい。
【0091】
少なくとも1つの規制部は、規制部の上流の圧力がホース1の内部に作用し、それによりホース1を軸Xに対して直角な半径方向に拡張し、場合によっては同じ軸Xに沿ってホース1を軸方向に伸張するような、圧力損失(pressure drop)を生じさせることができる。
【0092】
実際には、ホース1が例えば蛇口Rなどの使用場所に結合されると、蛇口を開いたときに、ホース1を流れる水が、図1および図2に示されているように、ホース1の半径方向の拡張、および場合によっては軸方向の伸長を促進する。いずれの場合も、伸張は極めて小さく、拡張と比べて顕著に小さい。
【0093】
言い換えると、水流は、水がその中を流れていない時のホース1と同一の元の直径D0(図3)から、作動時の直径D1(図4)へと、ホース1の移行を促進する。
【0094】
元の直径D0から作動時の直径D1への移行は徐々に行われる。
【0095】
対照的に、蛇口Rを閉めると、ホース1は自動的に収縮し、よって元の直径および場合によっては元の長さに回復する。
【0096】
上記を達成するために、一体的管状部材50および繊維素材層30は互いに協働することが可能である。
【0097】
より正確には、一体的管状部材50は、例えば、水によって付加される作動圧力下で自動的に半径方向に拡張し、例えば作動圧力が停止すると、自動的に収縮するような弾性を有することができる。
【0098】
一方で一体的管状部材50の拡張は、図3の、水がホースを流れていないときの休止形態から、図4の、作動圧力下にあるときの作動形態へと、繊維素材補強層30の移行を促進する。
【0099】
反対に、作動圧力が停止したときに、一体的管状部材50の自動収縮が、繊維素材補強層30をその休止形態に戻す。
【0100】
作動圧力下で、ホースの直径の増加および場合によっては長さの増加に加え、ホースの全体的な厚さの菲薄化がさらに発生する。上記の構造および材料により、圧力下で壁厚さは約半分に減少する。
【0101】
繊維素材補強層30は、一体的管状部材50が拡張したときに、最大径を決定するために一体的管状部材50を捕捉するように適切に構成することができる。
【0102】
上記を実施するために、繊維素材補強層30の糸および一体的管状部材50の材料は、例えば上記のように適切に選択されてもよい。
【0103】
編物である繊維素材補強層30は、図3および4に示されるトリコットタイプの鎖編でもよく、または、同一出願人名義の欧州特許第0623776号の教示に従って製造されてもよい。
【0104】
その代わりに、編物である繊維素材補強層30は図5に示されるダイヤモンド編タイプであってもよく、または、同一出願人名義の欧州特許第0527512号によって教示される放射状タイプでもよい。
【0105】
別の実施形態では、編物である繊維素材補強層30は図6に示される両面編タイプであってもよく、または、図7に示される編込みタイプであってもよい。
【0106】
編物構造の代わりに、第1の繊維素材補強層30は織物または結節によるものであってもよい。図8および9は織物である繊維素材補強層の2つの例を示しており、糸の向き、数および構成がそれぞれ異なる。図10は結節である繊維補強層の例を示している。
【0107】
2バール(2bar、2×10Pa)の作動圧力下で、ホースは、その外径を元の外径の少なくとも1.3倍、好適には元の径の少なくとも1.4倍、より好適には元の径の少なくとも1.45倍、さらに好適には元の径の少なくとも1.5倍に拡張するように、一体的管状部材および少なくとも1つの繊維素材補強層は互いに協働してもよい。
【0108】
例えば、上記のような構造を有し、上記の材料で製造された、休止時に9mmの内径、休止時に14.5mmの外径、および80g/mt(メートル当たり重量)の重量を備えたホースを用いた場合、異なる内部作動圧力での拡張は、以下の表1のように発生する。
【0109】
【表1】
【0110】
これらのデータが、材料および/もしくはホースの内径または外径または重量/mtなどのホースの特徴に応じて変化しうることは理解されるであろう。
【0111】
5バール(5bar、5×10Pa)の作動圧力下で、一体的管状部材50の長さ方向の伸張が、元の長さに対して20%未満、好適には元の長さに対して15%未満であるように、一体的管状部材50および繊維素材補強層30が互いに協働することができる。
【0112】
この膜20は、下部層、特に繊維素材層を保護することを目的としており、さらに、ホースに外観を持たせる役割を果たしている。また、外部からの化学物質への抵抗や、地表でのホースの滑りに関しても重要である。実際、この膜はぬかるんだ地面や庭での使用によるホースの付着物を最小限に抑える。
【0113】
上記の説明から、本発明は、意図する目的を達成することは明らかである。
【0114】
本発明は様々な修正および変更を受け入れる余地があり、それらはすべて、添付する請求項で示された発明概念に該当する。すべての詳細事項は本発明の請求範囲から逸脱することなく、他の技術的等価要素と置き換えられてもよく、材料は要件に応じて異なるものであってもよい。
【0115】
本発明は添付図面を具体的に参照して説明されているが、詳細な説明および請求項の中で使用されている参照符号は本発明の情報をより分かりやすくさせるために使用されており、本発明の請求範囲を限定するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10