【文献】
Journal of Neuroimmunology, 2012, Vol. 247, pp. 25-31
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ヒトインターロイキン33(IL−33)に結合する単離されたヒトのモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片であって、IL−33媒介性シグナル伝達を抑制する又は減弱させ、配列番号:274番と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR);及び配列番号:282番と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含み、前記HCVRは、それぞれ、配列番号276番、配列番号278番及び配列番号280番のアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2及びHCDR3)を含み、そして前記LCVRは、それぞれ、配列番号284番、配列番号286番及び配列番号288番のアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2及びLCDR3)を含む、前記単離されたヒトのモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片。
前記炎症性の疾患又は障害が、喘息、アレルギー、アナフィラキシー、アトピー性皮膚炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、炎症性腸疾患、多発性硬化症、関節炎、アレルギー性鼻炎、好酸球性食道炎、及び乾癬からなる群から選択される、請求項11に記載の抗体、抗原結合性断片又は医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の記載に入る前に、本発明は、記載される特定の方法及び実験条件に限定されるものではなく、かかる方法及び条件も異なる場合があることは理解されるべきである。また、本明細書で使用する用語は、あくまでも個々の実施形態を説明するためのであり、限定を意図したものではなく、その理由は、本発明の範囲は添付のクレームによってのみ限定されるからである。
【0049】
特に明記しないかぎり、本明細書で使用するすべての技術的及び科学的用語は、本発明の属する技術分野の当業者が一般的に理解する意味と同じ意味を持つ。本明細書中で使用する場合、「約」という用語は、具体的に記述された数値に関して使用する場合、その値は記述値から1%以下で変動し得ることを意味する。例えば、本明細書中で使用する場合、「約100」には99及び101及びその間のすべての数値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)が含まれる。
【0050】
本明細書に記載の類似又は同等な任意の方法及び物質を使用して本発明の実施又は試験が可能であるが、その好ましい方法及び物質をここに記載する。
【0051】
定義
「インターロイキン−33」、「IL−33」、など、本明細書中で使用する場合、配列番号307番のアミノ酸配列を有するヒトIL−33タンパク質をいう。本明細書でタンパク質、ポリペプチド及びタンパク質断片という場合はいずれも、ヒト種でないことが明確に指示されていない限り(例えば、「マウスIL−33」、「サルIL−33」など)、それぞれヒトのタンパク質、ポリペプチド又はタンパク質断片を指すことを意図する。
【0052】
本明細書中で使用する場合、「IL−33に結合する抗体」又は「抗IL−33抗体」は、IL−33タンパク質の可溶性断片に結合する、抗体及びその抗原結合性断片を含む。可溶性IL−33分子は、天然IL−33タンパク質並びに組換えIL−33タンパク質変異体、例えば、単量体の及び二量体のIL−33構築物などを含む。
【0053】
「抗体」という用語は、本明細書中で使用する場合、特定の抗原(例えば、IL−33)と特異的に結合又は相互作用する、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む任意の抗原結合分子又は分子複合体を意味する。「抗体」という用語は、互いにジスルフィド結合により連結される、ポリペプチド鎖4本、重(H)鎖2本及び軽(L)鎖2本、並びにそれらの多量体(例えば、IgM)を含む、免疫グロブリン分子を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書では、HCVR又はV
H)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常
領域は、C
H1、C
H2及びC
H3の3つのドメインを含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本
明細書では、LCVR又はV
Lと略す)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つ
のドメイン(C
L1)を含む。V
H及びV
L領域はさらに、より保存性の高いフレームワー
ク領域(FR)と呼ばれる領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に細分することができる。各V
H及びV
Lは、3つのCDR及び4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端へ向かってFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4という順序で並んでいる。本発明の異なる実施形態では、抗IL−33抗体(又はその抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖細胞系配列と同一でよく、又は天然もしくは人工的に改変されてよい。アミノ酸コンセンサス配列は、2つ以上のCDRの並行分析に基づいて定義してよい。
【0054】
「抗体」という用語は、本明細書中で使用する場合、全抗体分子の抗原結合性断片も含む。抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合性断片」などという用語は、本明細書中で使用する場合、天然に生じる、酵素的に得ることができる、合成される、又は遺伝子的に操作される、抗原に特異的に結合して複合体を形成するあらゆるポリペプチド又は糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合性断片は、例えば、タンパク質分解、又は抗体の可変ドメイン(及び必要に応じ、定常ドメイン)をコードするDNAの操作及び発現を含む遺伝子組換え操作技術など、任意の好適な標準的技術を使用した、全抗体分子に由来するものであってよい。このようなDNAは公知であり、及び/又は、例えば、市販されているもの、DNAライブラリー(例えば、ファージ−抗体ライブラリーを含む)からすぐに入手可能、又は合成可能である。DNAは、例えば、1つ以上の可変及び/又は定常ドメインの好適な立体配置への配置決定、又はコドンの導入、システイン残基の作製、修飾、アミノ酸の付加もしくは削除などを行うために、化学的に又は分子生物学的技術を使用して配列決定及び操作してよい。
【0055】
抗原結合性断片の非限定的な実施例としては、(i)Fab断片;(ii)F(ab'
)2断片;(iii)Fd断片;(iv)Fv断片;(v)一本鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAb断片;並びに(vii)抗体の超可変領域(例えば、CDR3ペプチドなど単離した相補性決定領域(CDR))又は拘束されたFR3−CDR3−FR4ペプチドを模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位が含まれる。操作による他の分子、例えば、ドメイン特異性抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR融合抗体、二重特異性抗体(diabodies)、三重特異性抗体(triabodies)、四重特異性抗体(tetrabodies)、小型抗体(minibodies)、ナノ抗体(nanobodies)(例えば、1価ナノ抗体(nanobodies)、2価ナノ抗体(nanobodies)など)、小モジュール免疫薬(SMIP)、及びサメIgNAR可変ドメインなどもまた、本明細書中で使用する場合、表現「抗原結合性断片」内に包含される。
【0056】
抗体の抗原結合性断片は、一般に、少なくとも1つの可変ドメインを含む。可変ドメインは、任意の大きさ又はアミノ酸組成であってよく、一般に、1つ以上のフレームワーク配列に隣接する又はフレームされる、少なくとも1つのCDRを含む。V
Lドメインと会
合するV
Hドメインを有する抗原結合性断片では、V
H及びV
Lドメインは、任意の好適な
配置決定で互いに位置してよい。例えば、可変領域は、二量体で、V
H−V
H、V
H−V
L又はV
L−V
Lの二量体を含有してよい。別の方法では、抗体の抗原結合性断片は、V
H又は
V
Lの単量体ドメインを含有してよい。
【0057】
ある実施形態では、抗体の抗原結合性断片は、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合した少なくとも1つの可変ドメインを含有してよい。可変及び定常ドメインの非限定的で例示的な立体配置は、以下を含む本発明の抗体の抗原結合性断片内に見出されてよい:(i)V
H−C
H1;(ii)V
H−C
H2;(iii)V
H−C
H3;(iv)V
H−C
H1−C
H2;(v)V
H−C
H1−C
H2−C
H3;(vi)V
H−C
H2−C
H3;(vii)V
H
−C
L;(viii)V
L−C
H1;(ix)V
L−C
H2;(x)V
L−C
H3;(xi)V
L
−C
H1−C
H2;(xii)V
L−C
H1−C
H2−C
H3;(xiii)V
L−C
H2−C
H
3;及び(xiv)V
L−C
L。上記に挙げた例示的な立体配置を含む、可変及び定常ドメインの任意の配置では、可変及び定常ドメインは、互いに直接結合しあっても、又は、完全もしくは部分的ヒンジ領域もしくはリンカー領域により結合しても、どちらでもよい。ヒンジ領域は、少なくとも2個(例えば、5、10、15、20、40、60又はそれ以上)のアミノ酸で構成されてよく、隣接する可変領域及び/又は定常ドメイン間に単一ポリペプチド分子で柔軟又は半柔軟な結合をする。さらに、本発明の抗体の抗原結合性断片は、互いに及び/又は1つ以上の単量体のV
HもしくはV
Lドメインと非共有的に会合した(例えば、ジスルフィド結合(複数可))、上記の可変及び定常ドメイン立体配置のいずれかのホモ二量体又はヘテロ二量体(又は他の多量体)を含んでよい。
【0058】
全抗体分子の場合と同様に、抗原結合性断片は、単一特異性又は多重特異性(例えば、二重特異性)であってよい。抗体の多重特異性抗原結合性断片は、一般に、少なくとも2つの異なる可変ドメインを含んでよく、これにおいて、各可変ドメインは、別々の抗原又は同一抗原の異なるエピトープに特異的に結合することができる。本明細書に開示する例示的な二重特異性抗体フォーマットを含めて、いかなる多重特異性抗体フォーマットも、当該技術分野で利用可能なルーチンの技術を用いて、本発明の抗体の抗原結合性断片の文脈においての使用に適用できる。
【0059】
本発明の抗体は、補体依存性細胞障害(CDC)又は抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を介して機能し得る。「補体依存性細胞障害」(CDC)とは、補体存在下で本発明の抗体による抗原発現細胞の溶解をいう。「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」(ADCC)とは、Fc受容体(FcRs)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が、標的細胞上に結合した抗体を認識して、その標的細胞に溶解をもたらす、細胞媒介性反応をいう。CDC及びADCCは、当該技術分野で周知かつ利用可能な試験法を使用して測定できる。(例えば、米国特許第5,500,362号および5,821,337号、およびClynes et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci. (USA)95:652−656を参照のこと。)抗体の定常領域は、補体を固定し細胞依存性細胞障害を媒介する抗体の能力において重要である。したがって、抗体のアイソタイプは、その抗体が細胞障害を媒介するために望ましいか否かに基づいて選択してよい。
【0060】
本発明のある実施形態では、本発明の抗IL−33抗体はヒトの抗体である。「ヒト抗体」という用語は、本明細書中で使用する場合、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変及び定常領域を有する抗体を含むことを意図する。本発明のヒト抗体は、例えばCDR、特にCDR3の、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム又は部位特異的変異誘発、又はインビボ体細胞変異により導入される変異)を含んでよい。しかしながら、「ヒト抗体」という用語は、本明細書中で使用する場合、マウスなど他の哺乳類動物種の生殖細胞系に由来するCDR配列をヒトフレームワーク配列上に融合させた抗体を含むことは意図していない。
【0061】
本発明の抗体は、いくつかの実施形態では、組換えヒト抗体である。「組換えヒト抗体」という用語は、本明細書中で使用する場合、宿主細胞に移入させた組換え発現ベクターを用いて発現させる抗体(下記で詳述)、組換え、コンビナトリアルヒト抗体・ライブラリー(combinatorial human antibody library)(下記で詳述)から単離される抗体、トランスジェニック動物(例えば、マウス)からヒト免疫グロブリン遺伝子用に単離される抗体(例えば、Taylor et al.(1992)Nucl.Acids Res.20:6287−6295を参照のこと)、又はヒト免疫グロブリン遺伝子配列を他のDNA配列にスプライシングする他の任意の手段により調製、発現、作製又は単離される抗体などのように、組換え手段により調製、発現
、作製、又は単離されるすべてのヒト抗体を含むことを意図する。このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変及び定常領域を有する。しかしながら、ある実施形態では、このような組換えヒト抗体は、インビトロで変異(すなわち、ヒトIg配列用のトランスジェニック動物の配列を使用した場合には、インビボで体細胞変異)を起こしやすいことから、組換え抗体のV
H及びV
L領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系V
H及びV
L配列に由来し関連する配列でありながら、インビボヒト抗体生殖細胞系レパートリーに天然に存在し得ない配列である。
【0062】
ヒト抗体は、ヒンジ領域の異質性(heterogeneity)に関連して2種の形態をとり得る。ある形態では、免疫グロブリン分子は、およそ150〜160kDaの安定な4鎖構築体を含み、そこでは各二量体が重鎖間のジスルフィド結合により結び付けられている。別の形態では、二量体は、鎖間のジスルフィド結合では結合しておらず、共有結合した軽鎖及び重鎖からなる約75〜80kDaの分子が形成される(半抗体)。これらの形態はアフィニティー精製後であっても分離が極めて困難であった。
【0063】
この第2の形態がそのままの状態のさまざまなIgGアイソタイプに出現する頻度は、抗体のヒンジ領域アイソタイプに関連する構造的な違いによるが、これに限定されない。ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域において単一のアミノ酸を置換することにより、第2の形態の出現頻度を(Angal et al.(1993)Molecular Immunology 30:105)ヒトIgG1ヒンジ使用時に観察されたレベルまで有意に低下させることができる。本発明は、所望の抗体形態の収量改善のために、例えば、製造において望ましい変異を、ヒンジ、C
H2又はC
H3領域内に1つ以上有する抗体を包含する。
【0064】
本発明の抗体は単離された抗体であってよい。本明細書中で使用する場合、「単離された抗体」とは、その天然環境の少なくとも1つの成分から同定、分離され、及び/又は回収された抗体を意味する。例えば、生物の少なくとも1つの成分、又は、中に抗体が天然に存在するもしくは天然で産生される組織もしくは細胞から分離又は除去された抗体は、本発明のための「単離された抗体」である。単離された抗体はまた、組換え細胞内にあるインサイチュ抗体も含む。単離された抗体は、精製又は単離ステップに少なくとも1回供された抗体である。ある実施形態によれば、単離した抗体は、他の細胞物質及び/又は化学薬品を実質的に含まないものでよい。
【0065】
本発明は、抗IL−33抗体を中和及び/又は遮断することを含む。本明細書中で使用する場合、抗体を「中和する」又は「遮断する」とは、IL−33に結合することにより、(i)IL−33もしくはIL−33断片とIL−33受容体成分(例えば、ST2、IL−1RAcPなど)との相互作用を妨害する;及び/又は(ii)IL−33の少なくとも1つの生物学的機能を抑制する抗体を指すことを意図する。IL−33を中和又は遮断する抗体による抑制は、適切な試験法を用いて検出可能であれば完全である必要はない。IL−33抑制検出のための例示的な試験法は、本明細書の作業実施例に記載されている。
【0066】
本明細書に開示する抗IL−33抗体は、その抗体が由来する生殖細胞系配列の対応する部分と比較して、重鎖及び軽鎖の可変ドメインのフレームワーク及び/又はCDR領域における1個以上のアミノ酸の置換、挿入及び/又は欠失を含んでよい。かかる変異は、本明細書に開示するアミノ酸配列を、例えば、公共の抗体配列データベースから入手可能な生殖細胞系配列と比較することにより容易に確認可能である。本発明は、本明細書に開示する任意のアミノ酸配列に由来する抗体及びその抗原結合性断片を含み、これにおいて、1つ以上のフレームワーク及び/又はCDR領域内の1個以上のアミノ酸を、その抗体が由来する生殖細胞系配列の対応する残基(複数可)に、又は他のヒト生殖細胞系配列の
対応する残基(複数可)に、又は対応する生殖細胞系の残基(複数可)の保存的アミノ酸置換に変異させる(このような配列変化を、本明細書では集合的に「生殖細胞系変異」という)。当該技術分野の当業者であれば、本明細書に開示する重鎖及び軽鎖可変領域配列から開始して、1つ以上の個別の生殖細胞系変異又はその組み合わせを含む、多数の抗体及び抗原結合性断片を容易に作製することができる。ある実施形態では、V
H及び/又は
V
Lドメイン内のすべてのフレームワーク及び/又はCDR残基を変異させて、その抗体
が由来する元の生殖細胞系配列の残基に復帰させる。他の実施形態では、例えば、FR1の最初の8個のアミノ酸もしくはFR4の最後の8個のアミノ酸に見られる変異残基のみ、又はCDR1、CDR2もしくはCDR3に見られる変異残基のみ、といったように、特定の残基に限って変異させて元の生殖細胞系配列に復帰させる。他の実施形態では、フレームワークの1つ以上及び/又はCDR残基(複数可)を、別の生殖細胞系配列(すなわち、抗体がもともと由来する生殖細胞系配列とは異なる生殖細胞系配列)の対応する残基(複数可)に変異させる。さらに、本発明の抗体は、フレームワーク及び/又はCDR領域内の2つ以上の生殖細胞系変異の任意の組み合わせを含有してよく、例えば、これにおいて、ある個々の残基を特定の生殖細胞系配列の対応する残基に変異させ、一方、元の生殖細胞系配列とは異なるある他の残基を維持する又は異なる生殖細胞系配列の対応する残基に変異させる。一旦得られた、1つ以上の生殖細胞系変異を含有する抗体及び抗原結合性断片は、1つ以上の所望の性質、例えば、結合特異性の改善、結合親和性の上昇、拮抗的又は作動的生物学的性質の改善又は向上(場合に応じて)、免疫原性低下などについて容易に試験することができる。この一般的な方法で得られた抗体及び抗原結合性断片は、本発明に包含される。
【0067】
本発明はまた、1つ以上の保存的置換を有する本明細書に開示のHCVR、LCVR、及び/又はCDRアミノ酸配列の任意の変異体を含む抗IL−33抗体も含む。例えば、本発明は、本明細書に開示の任意のHCVR、LCVR、及び/又はCDRアミノ酸配列に対して、例えば、10又はそれより少数、8又はそれより少数、6又はそれより少数、4又はそれより少数の保存的アミノ酸置換を含む、HCVR、LCVR、及び/又はCDRアミノ酸配列を有する抗IL−33抗体を含む。
【0068】
用語「エピトープ」は、抗体分子の可変領域内にあるパラトープとして知られる抗原特異的結合部位と相互作用する抗原決定基をいう。一つの抗原が1つ以上のエピトープを有する場合がある。したがって、1つの抗原上で、異なる抗体がそれぞれ異なる場所に結合することができ、生物学的作用が異なる場合がある。エピトープは、立体構造(conformational)又は線形のどちらでもよい。立体構造エピトープは、線形ポリペプチド鎖の異なるセグメントのアミノ酸を空間的に並列させて作製する。線形エピトープは、ポリペプチド鎖内の隣接するアミノ酸残基で作製したエピトープである。状況によっては、エピトープは、糖類部分、ホスホリル基、又はスルホニル基を抗原上に含んでよい。
【0069】
「実質的な同一性」又は「実質的に同一な」という用語は、核酸又はその断片に言及する場合、適切なヌクレオチドの挿入又は欠失により別の核酸(又はその相補鎖)と最適にアラインメントを行った時に、以下に考察するFASTA、BLAST又はGapなど周知の配列同一性アルゴリズムの任意の方法で測定したヌクレオチド配列同一性が、ヌクレオチド塩基の少なくとも約95%、及びさらに好ましくは少なくとも約96%、97%、98%又は99%であることを指す。基準核酸分子に対して実質的な同一性を有する核酸分子は、場合によっては、基準核酸分子によりコードされるポリペプチドと同一の又は実質的に類似のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。
【0070】
ポリペプチドにおいて「実質的な類似性」又は「実質的に類似の」という用語を使用する場合、2つのペプチド配列が、GAP又はBESTFITプログラムなどでデフォルト
の重み付けを使用して最適にアラインメントを行った場合に、少なくとも95%の配列同一性、よりさらに好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一ではない残基の位置は保存的アミノ酸置換により異なる。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、化学的性質(例えば、電荷又は疎水性)が類似する側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基で置換されることである。一般に、保存的アミノ酸置換では、タンパク質の機能的性質は実質的に変化しない。保存的置換により2個以上のアミノ酸配列が互いに異なる場合、配列同一性のパーセント又は類似性の程度は、上方調節を行ってその置換の保存的性質について補正してよい。この調節を行う手段は、当業者に周知である。例えば、Pearson(1994) Methods Mol.Biol.24: 307−331を参照のこと。化学的性質が類似する側鎖を有するアミノ酸群の例としては、(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン;(2)脂肪族ヒドロキシル基の側鎖:セリン及びスレオニン;(3)アミド含有側鎖:アスパラギン及びグルタミン;(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン;(5)塩基性側鎖:リシン、アルギニン、及びヒスチジン;(6)酸性側鎖:アスパラギン酸及びグルタミン酸、並びに(7)硫黄含有側鎖のシステイン及びメチオニンが挙げられる。好ましい保存的アミノ酸置換群は、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リシン−アルギニン、アラニン−バリン、グルタミン酸−アスパラギン酸、及びアスパラギン−グルタミンである。別の方法では、保存的置換は、Gonnet et al.(1992)Science 256: 1443−1445に開示されているPAM250 log尤度マトリックスにおいて正値を有する任意の変化である。「中程度に保存的」置換は、PAM250 log尤度マトリックスにおいて非負値を有する任意の変化である。
【0071】
ポリペプチドの配列類似性は、配列同一性ともいわれ、一般に配列解析ソフトウェアを使用して測定する。タンパク質分析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含め、種々の置換、欠失及び他の改変に割り当てられている類似性測定値を使用して類似配列を照合する。例えば、GCGソフトウェアには、Gap及びBestfitなどのプログラムが含有されており、これらをデフォルトのパラメータで使用して、異なる生物種からの相同ポリペプチドなど密接に関連するポリペプチド間で、又は野生型タンパク質とその変異タンパク質との間で、配列相同性又は配列同一性を決定することができる。例えば、GCGバージョン6.1を参照のこと。ポリペプチド配列は、GCGバージョン6.1付属プログラムであるFASTAを使用してデフォルト又は推奨パラメータを用いて比較することもできる。FASTA(例えば、FASTA2及びFASTA3)により、クエリー及び検索配列間で最良重複領域のアラインメント及び配列同一性のパーセントが得られる(Pearson(2000)、前出)。本発明の配列を異なる生物の多数の配列を含むデータベースと比較する場合に好ましい別のアルゴリズムは、デフォルトのパラメータを用いる、コンピュータプログラムBLAST、特にBLASTP又はTBLASTNである。例えば、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403−410及びAltschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389−402を参照のこと。
【0072】
「炎症性の疾患又は障害」とは、本明細書中で使用する場合、病理により、全体的又は部分的に、免疫系細胞の、例えば、数の変化、遊走速度の変化、又は活性化の変化をもたらす疾患、障害又は病理学的状態をいう。免疫系細胞には、例えば、T細胞、B細胞、単球もしくはマクロファージ、抗原提示細胞(APC)、樹状細胞、ミクログリア、NK細胞、好中球、好酸球、肥満細胞などの、免疫学に特異的に関連する細胞、例えば、サイトカイン産生内皮細胞又は上皮細胞が含まれる。本明細書中で「炎症性の疾患又は障害」とは、ある実施形態において、喘息、(ステロイド抵抗性喘息、ステロイド感受性喘息、好酸球性喘息又は非好酸球性喘息、アレルギー、アナフィラキシー、多発性硬化症、炎症性腸疾患(例えば、クローン病又は潰瘍性大腸炎)、慢性閉塞性肺疾患(COPD、喫煙又
は受動喫煙への暴露が関連する又は関連しないもの、原因の一部であるもの、又は原因となって引き起こされたもの)、狼瘡、アトピー性皮膚炎、乾癬、強皮症などの線維化疾患、シェーグレン症候群、血管炎(ベーチェット病、巨細胞動脈炎、ヘノッホ−シェーンライン紫斑病及びチャーグ−ストラウス病を含む)及び関節炎からなる群から選択される免疫障害又は病態である。別の実施形態では、関節炎は、関節リウマチ、変形性関節症、及び乾癬性関節炎からなる群から選択される。別の実施形態では、「炎症性の疾患又は障害」は、TH
1型応答又はTH
2型応答を含む免疫障害又は病態である。
【0073】
「IL−33媒介性シグナル伝達を抑制する又は減弱させる」という語句は、本明細書中で使用する場合、IL−33がST2及びIL−1RAcPを介してシグナル伝達を刺激する程度をいい、IL−33が本明細書に記載するIL−33抗体などの拮抗薬の非存在下でST2及びIL−1RAcPを介してシグナル伝達を刺激する程度に比して、本明細書に記載するIL−33抗体などの拮抗薬の存在下で減退する程度を指す。抑制の程度を調べるには、試料を可能性の高い阻害剤/拮抗薬で処理し、阻害剤/拮抗薬で未処理の対照試料と比較する。対照試料、すなわち、拮抗薬で未処理の試料に相対活性値100%を割り当てる。対照に対する活性値が約90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、もしくは20%又はそれ未満であれば、抑制達成とする。抑制エンドポイントには、例えば、サイトカイン放出などのように、炎症、又は細胞の脱顆粒、分泌もしくは活性化の指標について予め設定された量又はパーセンテージを含んでよい。ST2及びIL−1RAcPを介するIL−33シグナル伝達の抑制は、本明細書実施例6に記載のようなインビトロ試験法でIL−33シグナル伝達を評価することにより測定可能である。さらに、分子がIL−33の拮抗であるか否かの判定にはインビボ試験法を使用できる。例えば、ヒトIL−33の発現についてホモ接合性であるアレルゲン感作動物の肺炎症におけるIL−33に対する抗体作用を評価するために実施例11及び12に記載のようなインビボ試験法を使用してよい。動物をアレルゲンに感作させた後、動物の亜群を本発明の抗IL−33抗体又は陰性アイソタイプ・コントロール抗体いずれかで処置する。その後、動物を屠殺し、細胞の浸潤、並びにサイトカイン測定(IL−4及びIL−5)を評価するため肺を回収する。拮抗薬として有効なIL−33抗体は、IL−4及びIL−5などのサイトカインを低下させる傾向とともに肺炎症細胞を低下させる傾向を示さなければならない。
【0074】
抗体の生物学的特徴
本発明は、ヒトIL−33に結合し、IL−33媒介性シグナル伝達を抑制する又は減弱させる、抗IL−33抗体及びその抗原結合性断片を含む。抗IL−33抗体が「IL−33媒介性シグナル伝達を抑制する又は減弱させる」とみなされるのは、例えば、抗体が、(1)細胞ベースのバイオアッセイにおけるIL−33媒介性シグナル伝達の抑制;(2)IL−33誘発性のヒト好塩基球脱顆粒の抑制;(3)ヒトPBMCによるIL−33誘発性IFNγ産生の抑制;(4)哺乳類においてアレルゲン、例えば、IL−4又はIL−5に暴露されると上昇する、サイトカインレベルの低下;並びに(5)アレルゲン(例えば、チリダニ(HDM)への急性又は慢性的暴露で生じた肺炎症の抑制)からなる群から選択される1つ以上の性質を示す場合とする。
【0075】
細胞ベースのバイオアッセイでのIL−33媒介性シグナル伝達の抑制とは、例えば、本明細書実施例6に定義するアッセイフォーマット、又は実質的に類似の試験法を用いて、抗IL−33抗体又はその抗原結合性断片が、IL−33受容体と、IL−33の結合に応答して検出可能なシグナルを発するレポーターエレメント(reporter element)とを発現している細胞の発するシグナルを抑制する又は低下させることを意味する。例えば、本発明は、細胞ベース遮断バイオアッセイで、例えば、本明細書実施例5で定義されるアッセイフォーマット又は実質的に類似の試験法を用いて測定した場合に、ヒトST2を発現している細胞でのIL−33媒介性シグナル伝達を、IC
50約2nM
未満、約1nM未満、約900pM未満、約800pM未満、約700pM未満、約600pM未満、約500pM未満、約400pM未満、約350pM未満、約300pM未満、約250pM未満、約200pM未満、約150pM未満、約100pM未満、約90pM未満、約80pM未満、約70pM未満、約60pM未満、約50pM未満、約40pM未満、約30pM未満、約20pM未満、又は約10pM未満で遮断する抗体及びその抗原結合性断片を含む。
【0076】
IL−33誘発性のヒト好塩基球脱顆粒の抑制とは、抗IL−33抗体又はその抗原結合性断片が、インビトロで、例えば、実施例7の試験系又は実質的に類似の試験法を使用して測定した場合に、IL−33誘発性の好塩基球脱顆粒の程度を抑制又は低下させることを意味する。例えば、本発明は、インビトロヒト好塩基球脱顆粒アッセイで、例えば、本明細書実施例7で定義されるアッセイフォーマット又は実質的に類似の試験法を用いて測定した場合に、ヒトIL−33(例えば、最終濃度約100pM)の存在下でIC
50約500pM未満、約400pM未満、約350pM未満、約300pM未満、約250pM未満、約200pM未満、約150pM未満、約100pM未満、約90pM未満、約80pM未満、約70pM未満、約60pM未満、約50pM未満、約40pM未満、約30pM未満、約20pM未満、又は約10pM未満でヒト好塩基球脱顆粒を抑制する抗体及びその抗原結合性断片を含む。
【0077】
ヒトPBMCによるIL−33誘発性IFNγ産生の抑制とは、抗IL−33抗体又はその抗原結合性断片が、例えば、実施例8の試験系又は実質的に類似の試験法を使用して測定した場合に、ヒトIL−12の存在下でヒトIL−33で処理したPBMCからのIFNγ放出量を抑制又は低下させることを意味する。例えば、本発明は、IL−33誘発性IFNγ放出アッセイ、例えば、本明細書実施例8で定義されるアッセイフォーマット又は実質的に類似の試験法を用いて測定した場合に、ヒトIL−12の存在下で、IL−33誘発性のIFNγ放出をIC
50約50nM未満、約25nM未満、約20nM未満、約15nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約1nM未満、約900pM未満、約800pM未満、約700pM未満、約600pM未満、約500pM未満、未満約400pM又は約300pM未満で抑制する抗体及びその抗原結合性断片を含む。
【0078】
ある実施形態では、本発明の抗IL−33抗体及び抗原結合性断片は、IL−33のIL−33受容体(例えば、ST2)への結合を遮断する。例えば、本発明は、インビトロでのIL−33のST2への結合を、ELISA法に基づくイムノアッセイ、例えば、本明細書実施例4で定義されるアッセイフォーマット又は実質的に類似の試験法を用いて測定した場合に、IC
50値約15nM未満で遮断する抗IL−33抗体を含む。ある実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合性断片は、ELISA法に基づくイムノアッセイ、例えば、本明細書実施例4で定義されるアッセイフォーマット又は実質的に類似の試験法を用いて測定した場合に、インビトロでのIL−33のST2への結合をIC
50値約10nM未満、約5nM未満、約900pM未満、約800pM未満、約700pM未満、約600pM未満、約500pM未満、約400pM未満、約300pM未満、約280pM未満、約260pM未満、約250pM未満、約240pM未満、約230pM未満、約220pM未満、約200pM未満、約180pM未満、約160pM未満、又は約150pM未満で遮断する。
【0079】
しかしながら、他の実施形態では、本発明のある抗IL−33抗体及び抗原結合性断片は、IL−33媒介性シグナル伝達を抑制する又は減弱させる能力を有しているにもかかわらず、遮断しない又は部分的にしかIL−33とST2の相互作用を遮断しない。このような抗体及びその抗原結合性断片を、本明細書で「間接的ブロッカー」という場合がある。理論上は結合していないため、本発明の間接的ブロッカーは、IL−33のST2結合ドメインと重複する又は一部のみ重複するエピトープでIL−33に結合することによ
り機能するが、それでもなおIL−33/ST2相互作用を直接遮断せずにIL−33媒介性シグナル伝達を妨害すると考えられる。
【0080】
本発明は、可溶性IL−33分子に高い親和性で結合する抗IL−33抗体及びその抗原結合性断片を含む。例えば、本発明は、IL−33に、表面プラズモン共鳴により、例えば、本明細書実施例3で定義されるアッセイフォーマットを用いて測定した場合に、K
D約10nM未満で結合する(例えば、25℃又は37℃で)抗体及び抗体の抗原結合性
断片を含む。ある実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合性断片は、表面プラズモン共鳴により、例えば、本明細書実施例3で定義されるアッセイフォーマット又は実質的に類似の試験法を用いて測定した場合に、IL−33にK
D約5nM未満、約2nM未満、約
1nM未満、約800pM未満、約600pM未満、約500pM未満、約400pM未満、約300pM未満、約200pM未満、約180pM未満、又は約160pM未満で結合する。
【0081】
本発明はまた、表面プラズモン共鳴により25℃又は37℃で、例えば、本明細書実施例3で定義されるアッセイフォーマット又は実質的に類似の試験法を用いて測定した場合に、約10分を超える解離半減期(t
1/2)でIL−33に特異的に結合する抗IL−3
3抗体及びその抗原結合性断片を含む。ある実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合性断片は、IL−33に、表面プラズモン共鳴により25℃又は37℃で、例えば、本明細書実施例3で定義されるアッセイフォーマット又は実質的に類似の試験法を用いて測定した場合に、約20分を超える、約30分を超える、約40分を超える、約50分を超える、約60分を超える、約70分を超える、約80分を超える、約90分を超える、約100分を超えるt
1/2で結合する。
【0082】
本発明の抗体は、前述の生物学的特徴を1つ以上、又はその任意の組み合わせを有してよい。本発明の抗体の他の生物学的特徴は、本明細書の作業実施例を含めた本願開示の総説より当該技術分野の当業者には明らかとなろう。
【0083】
Fc改変体を含む抗IL−33抗体
本発明のある実施形態によれば、FcRn受容体への抗体の結合性を、例えば、中性pHに比して酸性pHで高める又は減退させる、1つ以上の変異を含むFcドメインを含む、抗IL−33抗体を提供する。例えば、本発明は、FcドメインのC
H2又はC
H3領域における変異を含む抗IL−33抗体を含み、これにおいて、変異(複数可)により酸性環境(例えば、pH範囲約5.5〜約6.0のエンドソームで)におけるFcドメインのFcRnに対する親和性が高まる。こうした変異により、動物に投与した場合、抗体の血清中半減期が長くなり得る。このようなFc改変の非限定的な実施例には、例えば、250位(例えば、E又はQ);250及び428位(例えば、L又はF);252位(例えば、L/Y/F/W又はT)、254位(例えば、S又はT)、並びに256位(例えば、S/R/Q/E/D又はT)での改変;又は428位及び/又は433位(例えば、H/L/R/S/P/Q又はK)及び/又は434位(例えば、H/F又はY)での改変;又は250及び/又は428位での改変;又は307もしくは308位(例えば、308F、V308F)、及び434位での改変が含まれる。ある実施形態では、改変には、428L(例えば、M428L)及び434S(例えば、N434S)の改変;428L、259I(例えば、V259I)、及び308F(例えば、V308F)の改変;433K(例えば、H433K)及び434(例えば、434Y)の改変;252、254、及び256(例えば、252Y、254T、及び256E)の改変;250Q及び428Lの改変(例えば、T250Q及びM428L);並びに307及び/又は308の改変(例えば、308F又は308P)が含まれる。さらに別の実施形態では、改変には、265A(例えば、D265A)及び/又は297A(例えば、D297A)の改変が含まれる。
【0084】
例えば、本発明は、250Q及び248L(例えば、T250Q及びM248L);252Y、254T及び256E(例えば、M252Y、S254T及びT256E);428L及び434S(例えば、M428L及びN434S);並びに433K及び434F(例えば、H433K及びN434F)からなる群から選択される1つ以上の変異対又は変異群を含むFcドメインを含む抗IL−33抗体を含む。上述のFcドメイン変異、及び本明細書に開示する抗体の可変ドメイン内の他の変異について可能な全組み合わせは、本発明の範囲内であることが意図される。
【0085】
本発明はまた、キメラ重鎖定常(C
H)領域を含む抗IL−33抗体を含み、これにお
いて、かかるキメラC
H領域は2つ以上のイムノグロブリン・アイソタイプのC
H領域に由来するセグメントを含む。例えば、本発明の抗体は、ヒトIgG1、ヒトIgG2又はヒトIgG4分子に由来するC
H2ドメインの一部又はすべてを含むキメラC
H領域を、ヒトIgG1、ヒトIgG2又はヒトIgG4分子に由来するC
H3ドメインの一部又はすべ
てと組み合わせて含んでよい。ある実施形態によれば、本発明の抗体は、キメラのヒンジ領域を有するキメラC
H領域を含む。例えば、キメラのヒンジは、ヒトIgG1、ヒトI
gG2又はヒトIgG4のヒンジ領域に由来する「アッパーヒンジ(upper hinge)」のアミノ酸配列(EUナンバリングの216〜227位のアミノ酸残基)を、ヒトIgG1、ヒトIgG2又はヒトIgG4のヒンジ領域に由来する「ロワーヒンジ(lower hinge)」配列(EUナンバリングの228〜236位のアミノ酸残基)と組み合わせて含んでよい。ある実施形態によれば、キメラのヒンジ領域は、ヒトIgG1又はヒトIgG4のアッパーヒンジ(upper hinge)に由来するアミノ酸残基、及びヒトIgG2ロワーヒンジ(lower hinge)に由来するアミノ酸残基を含む。ある実施形態では、本明細書に記載するキメラC
H領域を含む抗体は、抗体の治
療的又は薬物動態的性質に悪影響を与えることなく改変されたFcエフェクター機能を示す。(例えば、2013年2月1日提出の米国仮出願第61/759,578号を参照の
こと)。
【0086】
エピトープマッピング及び関連技術
本発明は、IL−33の1個以上のアミノ酸と相互作用する抗IL−33抗体を含む。例えば、本発明は、IL−33のST2相互作用ドメイン内に位置する1個以上のアミノ酸と相互作用する抗IL−33抗体を含む。抗体が結合するエピトープは、IL−33の3つ以上の(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上の)アミノ酸の単一連続配列で構成されてよい。別の方法では、エピトープは、IL−33の複数の非連続アミノ酸(又はアミノ酸配列)で構成されてよい。
【0087】
ポリペプチド又はタンパク質内で抗体が「1個以上のアミノ酸と相互作用する」か否かを判定するために当該技術分野の当業者に知られている種々の技術を使用できる。例示的な技術には、例えば、Antibodies, Harlow and Lane (Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harb., NY)に記載されているようなルーチンの交叉ブロッキングアッセイ(cross−blocking assay)、アラニンスキャン変異解析、ペプチドブロット解析(peptide blots analysis)(Reineke, 2004,
Methods Mol Biol 248:443−463)、及びペプチド開裂解析が含まれる。さらに、抗原のエピトープ切り出し(epitope excision)、エピトープ抽出及び化学的な修飾などの方法を使用することができる(Tomer,
2000, Protein Science 9:487−496)。抗体が相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を同定するために使用できる別の方法は、水素/重水素交換を質量分析法で検出する方法である。一般的な用語で言うと、水素/重水素交換方法
では、対象とするタンパク質を重水素で標識した後、その重水素標識タンパク質に抗体を結合させる。次に、タンパク質/抗体複合体を水に移し、抗体で保護された残基(重水素標識されたまま)を除くすべての残基で水素−重水素交換を起こさせる。抗体解離後、標的タンパク質をプロテアーゼで切断し質量分析を行うことで、重水素標識されている残基がわかれば、それが抗体が相互作用する特定のアミノ酸ということになる。例えば、Ehring(1999)Analytical Biochemistry 267(2):252−259; Engen and Smith(2001)Anal.Chem.73:256A−265Aを参照のこと。
【0088】
本発明は、本明細書に記載する具体的に例示される抗体(例えば、H1M9559N、H1M9566N、H1M9568N、H4H9629P、H4H9633P、H4H9640P、H4H9659P、H4H9660P、H4H9662P、H4H9663P、H4H9664P、H4H9665P、H4H9666P、H4H9667P、H4H9670P、H4H9671P、H4H9672P、H4H9675P、H4H9676P、H1M9565Nなど)のいずれかと同一のエピトープに結合する抗IL−33抗体をさらに含む。同様に、本発明はまた、IL−33への結合について、本明細書に記載する具体的に例示される抗体のいずれか(例えば、H1M9559N、H1M9566N、H1M9568N、H4H9629P、H4H9633P、H4H9640P、H4H9659P、H4H9660P、H4H9662P、H4H9663P、H4H9664P、H4H9665P、H4H9666P、H4H9667P、H4H9670P、H4H9671P、H4H9672P、H4H9675P、H4H9676P、H1M9565Nなど)と競合する抗IL−33抗体も含む。
【0089】
ある抗体が、基準となる抗IL−33抗体について、それと同一のエピトープに結合、又はそれとの結合について競合するか否かは、当該技術分野で既知であり本明細書で例示されているルーチンの方法により容易に測定できる。例えば、被験抗体が、基準となる本発明の抗IL−33抗体と同一のエピトープに結合するかどうかを測定する場合は、基準抗体をIL−33タンパク質と結合させる。次いで、IL−33分子への被験抗体の結合能力を評価する。被験抗体が、基準抗IL−33抗体との飽和結合に続いてIL−33に結合することができれば、被験抗体は基準抗IL−33抗体とは異なるエピトープに結合するという結論を出すことができる。一方、被験抗体が、基準抗IL−33抗体との飽和結合に続いてIL−33分子に結合することができなければ、被験抗体は、基準となる本発明の抗IL−33抗体が結合したエピトープと同一のエピトープに結合し得るということである。被験抗体で結合が見られないのは、やはり基準抗体と同一のエピトープに結合することによるものなのか、又は結合が観察されなかったことには立体的遮断(steric blocking)(又は別の現象)が関与しているのか、ということを確認するため、さらなるルーチンの実験(例えば、ペプチドの変異及び結合解析)を行うこともできる。この種の実験は、ELISA、RIA、Biacore、フローサイトメトリーなど当該技術分野で利用可能な定量的又は定性的な抗体結合試験法で実施することができる。本発明のある実施形態によれば、2つの抗体は、例えば、1、5、10、20又は100倍過剰の1つの抗体が、もう一方の抗体の結合を、競合結合アッセイで測定した場合に(例えば、Junghans et al., Cancer Res.1990:50:1495−1502を参照のこと)少なくとも50%で、しかし好ましくは75%、90%、さらには99%で抑制する場合に、同一の(又は重複する)エピトープに結合する。別の方法では、1つの抗体の結合を減少させる又は排除する、抗原の本質的にすべてのアミノ酸変異が、もう一方の抗体の結合を減少させる又は排除する場合に、2つの抗体は同一のエピトープに結合するとみなされる。1つの抗体の結合を減少させる又は排除するアミノ酸変異の亜群がもう一方の抗体の結合を減少させる又は排除する場合に限り、2つの抗体は「重複エピトープ」を有するとみなす。
【0090】
抗体が基準抗IL−33抗体と結合について競合する(又は結合で交差競合(cross−competes)する)ことを検討するため、上記の結合方法を2つの方向から実施する。第1の方向は、基準抗体を飽和条件下でIL−33タンパク質に結合させた後、被験抗体のIL−33分子への結合を評価する。第2の方向では、被験抗体を飽和条件下でIL−33分子に結合させた後、基準抗体のIL−33分子への結合を評価する。この2つの方向において、第1の(飽和)抗体のみがIL−33分子に結合することができれば、被験抗体と基準抗体はIL−33への結合について競合するという結論が導き出される。当該技術分野の当業者には認識されるように、結合について基準抗体と競合する抗体は、必ずしも基準抗体と同一のエピトープに結合するわけではないが、重複する又は隣接するエピトープに結合することにより基準抗体の結合を立体的に遮断し得る。
【0091】
ヒト抗体の調製
完全ヒトモノクローナル抗体を含めたモノクローナル抗体の作製方法は当該技術分野で知られている。本発明の文脈においてヒトIL−33に特異的に結合するヒト抗体を作製するために、そのような既知のあらゆる方法を使用できる。
【0092】
VELOCIMMUNE(商標)技術、例えば、又は他の任意の既知の完全ヒトのモノクローナル抗体作製方法を用いて、ヒト可変領域及びマウスの定常領域を有する、IL−33に対する高親和性キメラ抗体を初めに単離する。下記実験の項にあるように、抗体の特徴付けを行い、親和性、選択性、エピトープなどを含めた望ましい特徴で選択する。必要に応じ、マウスの定常領域を、所望のヒト定常領域、例えば野生型又は改変IgG1もしくはIgG4と置換し完全ヒト抗IL−33抗体を作製する。選択定常領域は個々の用途により異なるが、高親和性抗原結合及び標的特異性といった特徴は可変領域内に存在する。場合によっては、完全ヒト抗IL−33抗体を抗原陽性B細胞から直接単離する。
【0093】
生物学的同等
本発明の抗IL−33抗体及び抗体断片は、記載の抗体のアミノ酸配列とは異なるがヒトIL−33に結合する能力を保有するアミノ酸配列を有するタンパク質を包含する。このような改変抗体及び抗体断片は、親配列と比較した場合にアミノ酸の付加、欠失、又は置換を1つ以上含んでいるが、記載の抗体の生物学的活性と本質的に同等な生物学的活性を示す。同様に、抗IL−33抗体をコードする本発明のDNA配列は、開示の配列と比較した場合にヌクレオチドの付加、欠失、又は置換を1つ以上含むが、本質的に本発明の抗IL−33抗体又は抗体断片と生物学的に同等である抗IL−33抗体又は抗体断片をコードする配列を包含する。このような改変アミノ酸及びDNA配列の例については上述している。
【0094】
2つの抗原結合タンパク質、すなわち抗体は、例えば、それらが医薬的同等物又は医薬的代替物であって、類似した実験条件で同一モル用量を単回又は頻回投与した場合に、吸収される速度及び程度が有意な差を示さない場合に、それらは生物学的に同等であるとみなされる。いくつかの抗体は、吸収の程度は同等であるが吸収速度はそうではない場合でも、かかる吸収速度の差が意図したもので標識に反映されること、有効な体内薬物濃度(例えば、慢性使用)達成のために不可欠ではないこと、及び特定の試験済み製剤には医学的に有意とされないこと、という理由で生物学的に同等であるとみなされ得る場合は、これらの抗体は同等物又は医薬的代替物とみなされることになる。
【0095】
ある実施形態では、2つの抗原結合タンパク質は、安全性、純度、及び力価において臨床上意義のある差がない場合は生物学的に同等である。
【0096】
ある実施形態では、2つの抗原結合タンパク質は、患者が基準処方物と生物学的処方物とを切り替えずに継続治療を行った場合と比較して、臨床上有意な免疫原性の変化を含む
有害事象リスクの上昇又は有効性の低下が予測されることなくそれらを1回以上切り替えることができる場合、生物学的に同等である。
【0097】
ある実施形態では、2つの抗原結合タンパク質は、これらがともに1つの使用条件又は複数の使用条件に対して一般的な1つの作用機序又は複数の作用機序で、かかる機序が知られている程度に作用する場合は生物学的に同等である。
【0098】
生物学的同等性を、インビボ及びインビトロ法で示してよい。生物学的同等性測定には、例えば、(a)抗体又はその代謝物の血中、血漿中、血清中、又は他の生物学的流体中の濃度を時間の関数として測定する、ヒト又は他の哺乳類におけるインビボ試験;(b)ヒトインビボでの生物学的利用能データに関してこれまでに相関があるとともに、それを十分に予測できる、インビトロ試験;(c)抗体(又はその標的)の適切な薬理学的急性作用を時間の関数として測定する、ヒト又は他の哺乳類におけるインビボ試験;並びに(d)抗体の安全性、有効性、又は生物学的利用能もしくは生物学的同等性を確立する、よく管理された臨床試験における測定が含まれる。
【0099】
本発明の抗IL−33抗体の生物学的に同等な変異体を、例えば、残基又は配列の置換を各種作製する、又は生物学的活性には必要のない末端又は内部の残基もしくは配列を削除することにより構築してよい。例えば、生物学的活性に不可欠ではないシステイン残基は、再生時に分子間に不必要又は不適切なジスルフィド架橋が形成されないようにするために、削除又は他のアミノ酸との置換が可能である。他の文脈では、生物学的に同等である抗体は、抗体のグリコシル化の特性が改変される、例えば、グリコシル化を排除又は除去する、アミノ酸の変更を含む抗IL−33抗体変異体を含んでよい。
【0100】
種選択性及び種交差反応性
ある実施形態によれば、本発明は、ヒトIL−33には結合するが他の種のIL−33には結合しない抗IL−33抗体を提供する。本発明はまた、ヒトIL−33及び1種以上の非ヒト種からのIL−33に結合する抗IL−33抗体を含む。例えば、本発明の抗IL−33抗体は、ヒトIL−33に結合してよく、また、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、スナネズミ、ブタ、ネコ、イヌ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ラクダ、カニクイザル、マーモセット、霊長類又はチンパンジーの1種以上のIL−33に、場合に応じて、結合しても結合しなくてもよい。本発明のある例示的な実施形態によれば、ヒトIL−33及びカニクイザル(例えば、Macaca fascicularis種)のIL−33に特異的に結合する抗IL−33抗体を提供する。
【0101】
免疫複合体
本発明は、細胞毒素、化学療法薬、免疫抑制剤又は放射性同位元素などの治療的部分(「免疫複合体」)に抱合させた抗IL−33モノクローナル抗体を包含する。細胞障害剤には細胞に有害な任意の薬剤が含まれる。免疫複合体を形成するための好適な細胞障害剤及び化学療法薬の例は、従来技術において既知である(例えば、国際公開第05/103081号を参照のこと)。
【0102】
多重特異性抗体
本発明の抗体は、単一特異性、二重特異的、又は多重特異性であってよい。多重特異性抗体は、1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに特異的であってよく、又は、2つ以上の標的ポリペプチドに特異的な抗原結合ドメインを含有してよい。例えば、Tutt
et al., 1991, J.Immunol.147:60−69; Kufe
r et al., 2004, Trends Biotechnol.22:238−244を参照のこと。本発明の抗IL−33抗体を、別の機能性分子、例えば、別のペプチド又はタンパク質と結合又は共発現させてよい。例えば、抗体又はその断片を、別の
抗体又は抗体断片など1つ以上の他の分子種(molecular entities)に機能的に結合させ(例えば、化学的共役、遺伝子融合、非共有性会合又はその他により)、第2の結合特異性を有する二重特異性又は多重特異性抗体を作製することができる。例えば、本発明は、免疫グロブリンの1本の腕はヒトIL−33又はその断片に対して特異的であり、免疫グロブリンのもう一方の腕は第2の治療標的に対して特異的である又は治療的部分に抱合される、二重特異性抗体を含む。
【0103】
本発明の文脈において使用可能な例示的な二重特異性抗体フォーマットでは、第1の免疫グロブリン(Ig)のC
H3ドメイン及び第2のIgのC
H3ドメインを使用し、これにおいて、第1及び第2のIgのC
H3ドメインは少なくとも1個のアミノ酸が互いに異な
り、かつ、少なくとも1個のアミノ酸の違いにより、アミノ酸の違いがない二重特異性抗体に比してタンパク質Aへの二重特異性抗体の結合を減少させる。ある実施形態では、第1のIgのC
H3ドメインはタンパク質Aに結合し、第2のIgのC
H3ドメインには、H95R改変(IMGTエキソンナンバリングによる;EUナンバリングによるH435R)などのタンパク質A結合を減少又は消失させる変異が含まれている。第2のC
H3は、
Y96F改変(IMGTによる;EUによるY436F)をさらに含んでよい。第2のC
H3内に見ることができるさらなる改変には、IgG1抗体の場合はD16E、L18M
、N44S、K52N、V57M、及びV82I(IMGTによる;EUによるD356E、L358M、N384S、K392N、V397M、及びV422I);IgG2抗体の場合はN44S、K52N、及びV82I(IMGTによる;EUによるN384S、K392N、及びV422I);並びにIgG4抗体の場合はQ15R、N44S、K52N、V57M、R69K、E79Q、及びV82I(IMGTによる;EUによるQ355R、N384S、K392N、V397M、R409K、E419Q、及びV422I)が含まれる。上記の二重特異性抗体フォーマットに対する変形は本発明の範囲内であることを意図するものである。
【0104】
本発明の文脈において使用可能な他の例示的な二重特異性フォーマットには、これらに限定されることなく、例えば、scFvベース又は二重特異性抗体(diabody)の二重特異性フォーマット、IgG−scFv融合体、二重可変ドメイン(DVD:dual variable domain)Ig、クアドローマ(Quadroma)、knobs−into−holes、一般的軽鎖(例えば、knobs−into−holesを有する一般的な軽鎖など)、CrossMab、CrossFab、(SEED)body、ロイシンジッパー、Duobody、IgG1/IgG2、二重作用性Fab(DAF:dual acting Fab)IgG、及びMab
2二重特異性フォーマッ
トが含まれる(上述のフォーマット総説は、例えば、Klein et al.2012, mAbs 4:6, 1−11及びその記載内の引用を参照のこと)。二重特異性抗体は、ペプチド/核酸コンジュゲーションを使用して構築することもでき、例えば、これにおいては、オルトゴナルな化学反応性を有する非天然アミノ酸を使用して部位特異性の抗体−オリゴヌクレオチドのコンジュゲートを作製し、これが組成、価数及び幾何が明確な多量体の複合体に自己組織化する。(例えば、Kazane et al., J.A
m.Chem.Soc.[Epub: Dec.4, 2012]を参照のこと)。
【0105】
pH依存結合
本発明は、IL−33にpH依存的に結合する抗体及びその抗原結合性断片を提供する。例えば、本発明の抗IL−33抗体は、中性pHに比して酸性pHでIL−33への低い結合性を示してよい。別の方法では、本発明の抗IL−33抗体は、中性pHに比して酸性pHで、その抗原への高い結合性を示してよい。
【0106】
場合によっては、「中性pHに比して酸性pHでのIL−33への低い結合性」は、中性pHでIL−33に結合する抗体のK
D値に対する、酸性pHでIL−33に結合する
抗体のK
D値の比(又はその逆)で表される。例えば、抗体又はその抗原結合性断片は、
抗体又はその抗原結合性断片が約3.0以上の酸性/中性K
D比を示す場合は、本発明の目的の「中性pHに比して酸性pHでのIL−33への低い結合性」を示すと考えてよい。ある例示的な実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合性断片の酸性/中性K
D比は、約
3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0
、13.5、14.0、14.5、15.0、20.0,25.0、30.0、40.0、50.0、60.0、70.0、100.0又はそれ以上であり得る。
【0107】
pH依存性結合特性を有する抗体は、例えば、中性pHに比して酸性pHでの特定抗原に対する結合の低下(又は増強)について抗体母集団をスクリーニングすることにより得てよい。さらに、アミノ酸レベルでの抗原結合ドメインの改変で、pH依存的特徴を有する抗体を得ることができる。例えば、抗原結合ドメインの1個以上のアミノ酸(例えば、CDR内)をヒスチジン残基と置換することにより、中性pHに比して酸性pHでの抗原結合性の低い抗体が得られる。本明細書中で使用する場合、表現「酸性pH」とは、pH約6.0以下、約5.5以下、又は約5.0以下を意味する。表現「酸性pH」は、pH値
約6.0、5.95、5.9、5.85、5.8、5.75、5.7、5.65、5.6、5.55、5.5、5.45、5.4、5.35、5.3、5.25、5.2、5.15、5.1、5.05、5.0、又はそれ未満を含む。本明細書中で使用する場合、表現「中性pH」は、pH
約7.0〜約7.4を意味する。表現「中性pH」は、pH値約7.0、7.05、7.1、
7.15、7.2、7.25、7.3、7.35、及び7.4を含む。
【0108】
治療的処方物及び投与
本発明は、本発明の抗IL−33抗体又はその抗原結合性断片を含む医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物を、移行、送達、忍容性などで改善が得られる好適な担体、賦形剤などの薬剤とともに処方する。多数の適切な処方物を、すべての薬剤師に公知のRemington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、PAに見出すことができる。これらの処方物には、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、小胞含有脂質(陽イオン又は陰イオン)(LIPOFECTIN(商標)、Life Technologies、カリフォルニア州カールスバッド)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油型及び油中水型エマルジョン、エマルジョンカーボワックス(さまざまな分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、及びカーボワックス含有半固体混合物が含まれる。Powell et al.”Compendium of excipients for parenteral formulations” PDA(1998)J Pharm Sci Technol 52:238−311も参照のこ
と。
【0109】
患者に投与する抗体用量は、患者の年齢及びサイズ、標的疾患、病態、投与経路などにより異なってよい。好ましい用量は、一般に、体重又は体表面積にしたがって計算する。本発明の抗体を、成人患者におけるIL−33活性に関連する病態又は疾患の治療に使用する場合、本発明の抗体を、通常、約0.01〜約20mg/kg体重、さらに好ましく
は約0.02〜約7、約0.03〜約5、又は約0.05〜約3mg/kg体重での単回投
与で静脈内に投与することが有利であり得る。病態の重症度に応じ、治療の頻度及び継続期間を調整することができる。抗IL−33抗体投与に有効な用量及びスケジュールは、経験的に決定してよく、例えば、患者の進行度を定期評価でモニタリングし、それにしたがって用量を調整することができる。さらに、用量の種間スケーリングを当該技術分野で周知の方法を用いて実施することができる(例えば、Mordenti et al.,
1991, Pharmaceut.Res.8:1351)。
【0110】
種々の送達システムが公知であり、本発明の医薬組成物の投与に使用できる。例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセル、変異ウイルスを発現することができる組換え細胞、受容体介在性エンドサイトーシスへの封入がある(例えば、Wu et al., 1987, J.Biol.Chem.262:4429−4432を参照のこと)。導
入方法には、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、経鼻、硬膜外、及び経口経路が含まれるが、これらに限定されない。組成物を、任意の好都合な経路、例えば注入又はボーラス注射で、上皮又は粘膜皮膚内膜(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜及び腸管粘膜など)を介した吸収により投与してよく、また、他の生物学的に活性な薬剤とともに投与してよい。投与は、全身又は局所で行うことができる。
【0111】
本発明の医薬組成物は、標準的な針及び注射器を用いて皮下又は静脈内に送達可能である。さらに、皮下送達に関しては、ペン送達デバイスには、本発明の医薬組成物の送達適用が用意されている。かかるペン送達デバイスは、再使用可能又は使い捨てであってよい。再使用可能ペン送達デバイスは、一般に、医薬組成物を含有する交換式カートリッジを使用する。一旦カートリッジ内の医薬組成物をすべて投与し、カートリッジが空になると、その空のカートリッジを容易に廃棄し医薬組成物が含有されている新しいカートリッジと交換することができる。その後、そのペン送達デバイスは再度使用することができる。使い捨てペン送達デバイスでは交換式カートリッジはない。むしろ、使い捨てペン送達デバイスはデバイス内のレザバーに医薬組成物が予め充填されて提供される。一旦レザバーの医薬組成物がなくなると、デバイスは丸ごと廃棄される。
【0112】
多数の再使用可能ペン及び自動注入送達デバイスが、本発明の医薬組成物の皮下送達で適用される。ほんの数例として、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford,
Inc、イギリス、ウッドストック)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems、スイス、ベルゲドルフ)、HUMALOG MIX75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co.、インディアナ州インディア
ナポリス)、NOVOPEN(商標)I、II及びIII(Novo Nordisk、デンマーク、コペンハーゲン)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk、デンマーク、コペンハーゲン)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson、ニュージャージー州フランクリン・レイクス)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、及びOPTICLIK(商標)(Sanofi−Aventis、ドイツ、フランクフルト)が含まれるが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物の皮下送達に適用される使い捨てペン送達デバイスの例には、ほんの数例として、SOLOSTAR(商標)ペン(Sanofi−Aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、及びKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標)自動注入器(Amgen、カリフォルニア州サウザンドオークス)、PENLET(商標)(Haselmeier、ドイツ、シュツットガルト)、EPIPEN(Dey、L.P.)、及びHUMIRA(商標)ペン(Abbott Labs、イリノイ州アボットパーク)が含まれるが、これらに限定されない。
【0113】
ある状況では、医薬組成物は、制御放出システムで送達することができる。ある実施形態では、ポンプを使用してよい(Langer、前出; Sefton、1987、CR
C Crit.Ref. Biomed.Eng.14:201を参照のこと)。別の実施形態では、高分子材料を使用できる;Medical Applications of Controlled Release, Langer and Wise (eds.), 1974, CRC Pres., Boca Raton, Floridaを参照のこと。さらに別の実施形態では、制御放出システムを、組成物の標的の近傍に配置し、そのため、全身用量の一分割用量だけですむ(例えば、Goodson, 1
984, in Medical Applications of Controlled Release,前出、vol. 2、pp.115−138を参照のこと)。他の制御放出システムは、Langer, 1990, Science 249:1527−1533の総説で考察されている。
【0114】
注射用調製物には、静脈内、皮下、皮内及び筋肉内注射、点滴などの剤形を含んでよい。これらの注射用調製物は、公知の方法で調製してよい。例えば、注射用調製物を、例えば、上記の抗体又はその塩を、注射用に一般的に使用される無菌水溶性媒体又は油性媒体に溶解、懸濁又は乳化させて調製してよい。注射用水溶性媒体として、例えば、生理食塩水、グルコース及び他の補助剤を含有する等張液などがあり、これらをアルコール(例えば、エタノール)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO−50(硬化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加体)]などの適切な可溶化剤と組み合わせて使用してよい。油性媒体として、例えば、ゴマ油、ダイズ油などを使用し、これらを安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等の可溶化剤などと組み合わせて使用してよい。このようにして調製した注射剤を好ましくは適切なアンプルに充填する。
【0115】
有利には、上記の経口又は非経口用の医薬組成物を、活性成分の用量にふさわしい適切な単位用量の剤形に調製する。単位用量のかかる剤形には、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤などが含まれる。前述の抗体含有量は、一般に、単位用量の剤形あたり約5〜約500mgであり、特に注射形態では、前述の抗体を約5〜約100mgで含有し、また他の剤形では約10〜約250mgで含有することが好ましい。
【0116】
抗体の治療的使用
本願発明者らが実施したマウスモデル系を使用する実験は、IL−33拮抗により治療、予防及び/又は改善が可能なさまざまな疾患及び病態の同定に寄与した。例えば、マウスIL−33DNAの流体力学的送達により、肺粘液蓄積を誘導しマウスでの血清総IgEを上昇させた。さらに、mIL−33DNA送達により、マイクロアレイ解析で測定したところ、ST2及び下流のさまざまなサイトカインが上方制御された。本願発明者らがIL−33ノックアウトマウスを使用して実施した実験でも、IL−33拮抗によりさまざまな治療上の利益が得られる可能性が高いことが明らかとなった。例えば、巨視的スコアリング及び皮膚浸潤は、IMQ誘導性乾癬モデルの野生型マウスとIL−33
-/-マウ
スの間で比較できることがわかった。さらに、IL−33
-/-マウスは、アレルゲン誘導
性肺炎症モデルにおいて好酸球増加症及び残留粘液蓄積の低下を示した。
【0117】
本発明の抗体は、特に、IL−33の発現、シグナル伝達、もしくは活性が関連又は介在する、又はIL−33とIL−33リガンド(例えば、ST2)との相互作用を遮断又はIL−33活性及び/又はシグナル伝達を抑制することにより治療可能である、任意の疾患もしくは障害の治療、予防及び/又は改善に有用である。例えば、本発明は、喘息(例えば、アレルギー性喘息、非アレルギー性喘息、重度の難治性喘息、喘息増悪、ステロイド抵抗性喘息、ステロイド感受性喘息、好酸球性喘息又は非好酸球性喘息など)、アトピー性皮膚炎、乾癬、他の炎症性障害、アレルギー、アナフィラキシー、心血管疾患、中枢神経系疾患、疼痛、関節炎(例えば、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎など)、巨細胞動脈炎、血管炎(ベーチェット病及びチャーグ−ストラウス症候群)、ヘノッホ−シェーンライン紫斑病、多発性硬化症、炎症性腸疾患(例えば、クローン病又は潰瘍性大腸炎)、狼瘡、及びシェーグレン症候群の治療方法を提供する。
【0118】
本発明の抗体はまた、1つ以上の線維化疾患の治療、予防及び/又は改善にも有用である。本発明の抗IL−33抗体を投与することにより治療可能な例示的な線維化疾患には、肺線維症(例えば、特発性肺線維症、ブレオマイシン誘導性肺線維症、アスベスト誘導
性肺線維症、及び閉塞性細気管支炎症候群)、慢性喘息、急性肺損傷及び急性呼吸困難(例えば、細菌性肺炎誘導性線維症、外傷誘導性線維症、ウイルス性肺炎誘導性線維症、人工呼吸器誘導性線維症、非肺敗血症誘導性線維症及び吸引誘導性線維症)に関連する線維症、珪肺症、放射線誘発性線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD、喫煙又は受動喫煙への暴露が関連する又は関連しないもの、原因の一部であるもの、又は原因となって引き起こされたもの)、強皮症、眼線維症、皮膚線維症(例えば、強皮症)、肝線維症(例えば、肝硬変、アルコール誘導性肝線維症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、胆管損傷、原発性胆汁性肝硬変、感染もしくはウイルス誘導性肝線維症、自己免疫性肝炎、腎(腎性)線維症、心臓線維症、アテローム性動脈硬化、ステント再狭窄、及び骨髄線維症を含む。
【0119】
本明細書に記載する治療方法の文脈において、抗IL−33抗体は、単独療法(すなわち、唯一治療剤として)又は1つ以上の追加治療剤との併用で(これらの例は、本明細書の他の項に記載する)投与してよい。
【0120】
併用療法及び処方物
本発明は、本明細書に記載する抗IL−33抗体を1つ以上のさらなる治療的活性成分と組み合わせることを含む組成物及び治療的処方物、及びかかる組み合わせをそれを必要とする被検者に投与することを含む治療方法を含む。
【0121】
本発明の抗IL−33抗体を、例えば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−9、IL−11、IL−12、IL−13、IL−17、IL−18、IL−21、IL−23、IL−25、IL−26などのサイトカインに結合する低分子サイトカイン阻害剤もしくは抗体、又はこれらの受容体それぞれに対する拮抗薬を含むサイトカイン阻害剤と、配合処方及び/又は組み合わせ投与をしてよい。
【0122】
本発明の抗IL−33抗体はまた、抗ウイルス薬、抗生物質、鎮痛薬、コルチコステロイド、ステロイド、酸素、抗酸化剤、金属キレート剤、IFN−γ、及び/又はNSAIDと組み合わせて投与及び/又は配合処方してよい。
【0123】
さらなる治療的活性成分(複数可)を、本発明の抗IL−33抗体投与の直前、同時、又は直後に投与してよい。(本願開示の目的のために、かかる投与レジメンを、さらなる治療的活性成分「と組み合わせた」抗IL−33抗体投与とみなす)。本発明は、本発明の抗IL−33抗体が、本明細書の他の項に記載するように、1つ以上のさらなる治療的活性成分(複数可)とともに配合処方される医薬組成物を含む。
【0124】
投与レジメン
本発明のある実施形態によれば、抗IL−33抗体(又は抗IL−33抗体と本明細書で言及する任意のさらなる治療的活性薬剤との組み合わせを含む医薬組成物)の複数用量をある一定期間被験者に投与してよい。本発明のこの態様による方法は、複数用量の本発明の抗IL−33抗体を被験者に順次投与することを含む。本明細書中で使用する場合、「順次投与する」とは、抗IL−33抗体の各用量を被検者に異なる時間ポイントで、例えば、予め設定された間隔(例えば、時間、日、週又は月)で区切った異なる日に投与することを意味する。本発明は、患者に単一の初回用量で抗IL−33抗体投与後、1つ以上の第2用量で抗IL−33抗体を投与し、必要に応じ、さらに1つ以上の第3用量で抗IL−33抗体を順次投与することを含む方法を含む。
【0125】
「初回用量」、「第2用量」、及び「第3用量」という用語は、本発明の抗IL−33抗体を時間的順序で投与することをいう。したがって、「初回用量」とは、治療レジメン
開始時に投与する用量であり(「ベースライン用量」とも言う)、「第2用量」は、初回用量後に投与する用量、並びに「第3用量」は、第2用量後に投与する用量である。初回、第2、及び第3用量はすべて同量の抗IL−33抗体を含有してよいが、一般に投与頻度の点で互いに異なる場合がある。しかしながら、ある実施形態では、初回、第2及び/又は第3用量における抗IL−33抗体含有量は、治療期間中、互いに異なる(例えば、適宜、増減を調整)。ある実施形態では、2以上の(例えば、2、3、4、又は5)用量を治療レジメン開始時に「負荷投与」として投与した後、以降の用量を低頻度で(例えば、「維持量」)投与する。
【0126】
本発明のある例示的な実施形態では、各第2及び/又は第3用量を直近の先行投与から1〜26(例えば、1、1
1/2、2、2
1/2、3、3
1/2、4、4
1/2、5、5
1/2、6、6
1/2、7、7
1/2、8、8
1/2、9、9
1/2、10、10
1/2、11、11
1/2、12、12
1/2、13、13
1/2、14、14
1/2、15、15
1/2、16、16
1/2、17、17
1/2、1
8、18
1/2、19、19
1/2、20、20
1/2、21、21
1/2、22、22
1/2、23、
23
1/2、24、24
1/2、25、25
1/2、26、26
1/2、又はそれ以上)週間後に投与する。「直近の先行投与」という語句は、本明細書中で使用する場合、一連の複数投与において、他の用量が介在しない順序で、直後の用量の投与に先立ち患者に投与する抗IL−33抗体の用量を意味する。
【0127】
本発明のこの態様による方法は、任意の数の第2及び/又は第3用量の抗IL−33抗体を患者に投与することを含んでよい。例えば、ある実施形態では、第2用量を1回のみ患者に投与する。他の実施形態では、2以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、又はそれ以上)の第2用量を患者に投与する。同様に、ある実施形態では、第3用量を1回のみ患者に投与する。他の実施形態では、2以上の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、又はそれ以上)の第3用量を患者に投与する。
【0128】
複数の第2用量を使用する実施形態では、各第2用量を、他の第2用量と同一頻度で投与してよい。例えば、各第2用量を、直近の先行投与から1〜2週間又は1〜2か月後に患者に投与してよい。同様に、複数の第3用量を使用する実施形態では、各第3用量を、他の第3用量と同一頻度で投与してよい。例えば、各第3用量を直近の先行投与から2〜12週間後に患者に投与してよい。本発明のある実施形態では、第2及び/又は第3用量を患者に投与する頻度は治療レジメン期間中を通して異なり得る。投与頻度は、臨床検査後の個々の患者の必要性に応じ、治療期間中に医師が調整してもよい。
【0129】
本発明は、2〜6の負荷投与を第1頻度(例えば、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、1か月に1回、2か月に1回など)で患者に投与し、その後、2以上の維持量を低頻度で患者に投与する投与レジメンを含む。例えば、本発明のこの態様によれば、負荷投与を1か月に1回の頻度で投与した場合は、6週間に1回、2か月に1回、3か月に1回などで維持量を患者に投与してよい。
【0130】
抗体の診断用使用
本発明の抗IL−33抗体を、IL−33、又は試料中のIL−33発現細胞を検出及び/又は測定するため、例えば、診断するために使用することもできる。例えば、抗IL−33抗体、又はその断片を、IL−33の異常発現を特徴とする病態又は疾患を診断するため(例えば、過剰発現、低発現、発現の欠如など)に使用してよい。IL−33の例示的な診断アッセイは、例えば、患者から得た試料を本発明の抗IL−33抗体と接触させることを含んでよく、ここでは、抗IL−33抗体を検出可能標識又はレポーター分子で標識する。別の方法では、未標識抗IL−33抗体を、それ自体が検出可能に標識された第2抗体と組み合わせて診断用途に使用できる。検出可能標識又はレポーター分子は、
3H、
14C、
32P、
35S、又は
125Iなどの放射性同位元素;フルオレセインイソチオシア
ネート、又はローダミンなどの蛍光又は化学発光部分;又はアルカリホスファターゼ、βガラクトシダーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、又はルシフェラーゼなどの酵素であり得る。試料中のIL−33を検出又は測定するために使用可能な具体的試験法の例には、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び蛍光活性化細胞分類(FACS)を含む。
【0131】
本発明のIL−33診断アッセイに使用可能な試料には、検出可能量のIL−33タンパク質、又はその断片を正常又は病理学的状態で含有する、患者から得ることが可能な任意の組織又は流体の試料が含まれる。一般に、健常な患者(例えば、IL−33の異常なレベル又は活性に関連する疾患又は病態に罹患していない患者)から得た特定試料中におけるIL−33レベルを測定し、最初にIL−33のベースライン、すなわち標準のレベルを設定する。次いで、このIL−33のベースライン値を、IL−33関連の疾患又は病態を有することが疑われる各患者から得た試料で測定されたIL−33レベルと比較する。
【0132】
実施例
以下の実施例は、本発明の方法及び組成物をいかに使用し作製するかについての開示及び説明を完全に当業者に提供するために提案するものであり、本発明者らが該発明者らの発明であるとみなす範囲を限定することは意図していない。使用する数字に関し、正確さを保証するべく試みがなされた(例えば、量、温度など)が、一部の実験上の誤差及び偏差は考慮されるべきである。特に指定しない限り、部は重量部、分子量は平均分子量、温度はセ氏、及び圧力は大気圧又はその近傍圧である。
【実施例】
【0133】
実施例1
ヒトIL−33に対するヒト抗体の作製
ヒトIL−33を含む免疫原を、免疫応答を刺激するためにアジュバントとともに、ヒト免疫グロブリンの重鎖及びκ軽鎖可変領域をコードするDNAを含む、VELOCIMMUNE(登録商標)マウスに直接投与した。抗体免疫応答をIL−33特異的イムノアッセイにより監視した。所望の免疫応答が達成されたら、脾細胞を回収してマウス骨髄腫細胞と融合させ、細胞の活動性を保存するとともにハイブリドーマ細胞株を形成した。IL−33特異性抗体を産生する細胞株を同定するために、ハイブリドーマ細胞株をスクリーニングし選択した。この手法を使用し、抗IL−33キメラ抗体(すなわち、ヒト可変ドメイン及びマウスの定常ドメインを有する抗体)を幾つか得た。この方法で作製した例示的抗体を、H1M9559N、H1M9566N、H1M9568N及びH1M9565Nという名称にした。キメラ抗体から得たヒト可変ドメインをその後ヒト定常ドメイン上にクローニングし、本明細書に記載する完全ヒト抗IL−33抗体を作製した。
【0134】
また、抗IL−33抗体を、米国特許第2007/0280945A1号に記載のように、骨髄腫細胞とは融合させずに、抗原陽性B細胞から直接単離した。この方法を使用して、完全ヒト抗IL−33抗体(すなわち、ヒト可変ドメイン及びヒト定常ドメイン)を幾つか得た;この方法で作製した例示的抗体を、H4H9629P、H4H9633P、H4H6940P、H4H9659P、H4H9660P、H4H9662P、H4H9663P、H4H9664P、H4H9665P、H4H9666P、H4H9667P、H4H9670P、H4H9671P、H4H9672P、H4H9675P、及びH4H9676Pという名称にした。
【0135】
本実施例の方法に従って作製した例示的抗IL−33抗体の、ある生物学的性質を、下記実施例に詳述する。
【0136】
実施例2.
重鎖及び軽鎖の可変領域アミノ酸配列
表1に、重鎖及び軽鎖の可変領域アミノ酸配列対、及びCDR配列、選択した抗IL−33抗体とその対応する抗体識別名称を記載する。
【0137】
【表1】
【0138】
本明細書では、抗体は、一般に以下の命名法にしたがっている:接頭辞Fc(例えば、“H1M”、又は“H4H”)の後に、識別数字(例えば、表1に示すように「9559」、「9566」、又は「9629」)があり、接尾辞「P」、又は「N」が続く。したがって、この命名法に則ると、本明細書における抗体は、例えば、「H1M9559N」、「H1M9566N」、「H4H9629P」などと表記される。本明細書で使用する抗体名称に付された接頭辞H1M及びH4Hは、抗体の特定Fc領域のアイソタイプを指す。例えば、「H1M」抗体は、マウスIgG1Fcを有し、「H4H」抗体はヒトIgG4Fcを有する。当該技術分野の当業者に認識されるように、特定のFcアイソタイプを有する抗体は、異なるFcアイソタイプを有する抗体に変換可能である(例えば、マウスIgG1Fcを有する抗体を、ヒトIgG4を有する抗体に変換可能であるなど)が、いずれの場合も、可変ドメイン(CDRを含む)(表1に識別数字で示されている)は同
一のままであり、その結合特性は、Fcドメインの性質にかかわらず同一又は実質的に類似であることが予測される。
【0139】
実施例3.
表面プラズモン共鳴で測定した抗体のヒトIL−33への結合性
精製抗IL−33モノクローナル抗体に結合するIL−33の平衡解離定数(K
D値)
を、Biacore4000instrumentを使用しリアルタイム表面プラズモン共鳴バイオセンサーで測定した。Biacoreセンサー表面を、抗マウスのウサギ・ポリクローナル抗体(GE、#BR−1008−38)又は抗ヒトFcマウス・モノクローナル抗体(GE、#BR−1008−39)いずれかとのアミンカップリングにより最初に誘導体化し、それぞれ、マウス又はヒトIgG4定常領域に発現した抗IL−33モノクローナル抗体を捕捉した。Biacore結合試験はすべて、0.01M ADA p
H7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、及び0.05%v/v界面活性剤T
ween−20(ABS−ETランニング緩衝液)で実施した。ABS−ETランニング緩衝液(100nM〜3.7nMの範囲で、3倍希釈)に調製した、各種濃度のヒトIL
−33(hIL−33;R&D Systems、#3625−IL−010/CF)又はC末端ヘキサヒスチジンタグとともに発現されるカニクイザルIL−33(MfIL−33−6His;配列番号xx番)を、抗IL−33モノクローナル抗体捕捉表面上に流量30μL/分で注入した。hIL−33又はMfIL−33−6Hisと捕捉モノクローナル抗体との会合を4分間監視し、ABS−ETランニング緩衝液内での解離について10分間監視した。pHを低くしたことによる各抗IL−33抗体とhIL−33又はMfIL−33−6Hisとの結合への影響を、インラインpH追跡(in−ライン pH
chase)試験フォーマットを用い、0.01M ADA pH6.0、0.15M
NaCl、3mM EDTA、及び0.05%v/v界面活性剤Tween−20(AB
S−ET pH6緩衝液)で試験した。これを達成するため、hIL−33又はMfIL−33−6Hisのいずれかと捕捉モノクローナル抗体との会合をABS−ETランニング緩衝液内で4分間監視した。hIL−33又はMfIL−33−6HisのいずれかをABS−ETランニング緩衝液中で30秒解離させた後、ABS−ET pH6緩衝液を3分間注入し、低pH条件下でのアナライトの解離を測定した。結合動態実験を25℃及び37℃の両温度で実施した。動態の会合(k
a)及び解離(k
d)定数は、Scrubber2.0c curve fittingソフトウェアを使用し、リアルタイム・セン
サーグラムを1:1結合モデルに当てはめて測定した。結合解離平衡定数(K
D)及び解
離半減期(t
1/2)を以下の動態速度定数としての計算した:
K
D(M)=k
d/k
a及びt
1/2(分)=ln(2)/(60
*k
d)
【0140】
各種抗IL−33モノクローナル抗体に25℃及び37℃で結合するhIL−33及びMfIL−33−6Hisの結合動態パラメータを表2から5に示す。表2に示すように、25℃では、hIL−33はK
D値78pM〜757pMの範囲で抗IL−33抗体に
結合した。表3に示すように、37℃では、hIL−33はK
D値411pM〜2.03nMの範囲で抗IL−33抗体に結合した。25℃及び37℃両温度で、1つの抗IL−33抗体は弱い結合性を示したため、その結合動態パラメータを1:1結合モデルを用いて当てはめることはできなかった。表4に示すように、25℃では、MfIL−33−6Hisは、K
D値333pM〜38nMの範囲で抗IL−33抗体に結合した。表55に示
すように、37℃では、MfIL−33−6HisはK
D値1nM〜48.6nMの範囲で抗IL−33抗体に結合した。
【0141】
【表2】
【0142】
【表3】
【0143】
【表4】
【0144】
【表5】
【0145】
実施例4.
抗IL−33抗体はヒトST2受容体へのIL−33の結合を遮断する
ヒトIL−33(hIL−33)又はヒトST2受容体に結合するカニクイザルIL−33 に対する抗IL−33抗体の遮断能力を、競合サンドイッチELISAを使用して測定した。C末端ヒトIgG1Fcタグ(hST2−hFc;配列番号306番)とともに発現した、ヒトST2タンパク質の細胞外ドメインの一部分を、PBS緩衝液中濃度1(g/mLで96ウェルマイクロタイタープレート上に4℃で一晩コーティングした。続
いて、非特異的結合部位をBSAの0.5%(w/v)PBS溶液を用いてブロッキング
した。一定濃度の30pMビオチン化hIL−33タンパク質(R&D Systems、Cat#3625−IL/CF)(ビオチン−hIL−33)又はヘキサヒスチジンタグとともに発現させた(MfIL−33−6His;配列番号305番)150pMカニ
クイザルIL−33いずれかを、抗体の最終濃度が0〜100nMの範囲になるよう抗体の系列希釈に別々に添加した。抗体/IL−33混合物は、室温にて1時間インキュベートしてから、hST2−hFcコーティングしたマイクロタイタープレートに移した。室温にて1時間インキュベートした後、ウェルを洗浄し、プレートに結合したビオチン−hIL−33を、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)と抱合させたストレプトアビジン(Thermo Scientific, Cat#N200)で検出し、プレートに結合したMfIL−33−6Hisは、抗Hisモノクローナル抗体(Qiagen、#34460)と抱合させたHRPで検出した。全試料をTMB溶液(BD Biosciences、#51−2607KC)と反応させて呈色反応を起こさせ、次いで、1M硫酸による酸性化で反応を停止させてから、Victor X5マイクロプレートリーダーで450nmの吸光度を測定した。データ解析を、sigmoidal dose−response model within Prism(商標)ソフトウェアを使用して実施した。IC
50値は、プレートにコーティングしたhST2−hFcに結合するビオチン−hIL−33又はMfIL−33−6Hisを、最高シグナルから50%まで低下させるのに必要とされる抗体濃度と定義され、この計算値を遮断力価の指標として用いた。遮断パーセントは、IL−33単独のシグナルとバックグラウンド(HRPで抱合させた第2抗体又はストレプトアビジン単独の時のシグナル)との差に対する、抗体存在下で観察されたシグナル低下の比率として計算した。一定濃度のビオチン−hIL−33又はMfIL−33−6His単独について測定した吸光度を、0%遮断と定義し、IL−33未添加について測定した吸光度を100%遮断と定義する。各抗体の最高濃度含有ウェルの吸光度値を、最大遮断パーセントを測定するために使用した。
【0146】
【表6】
【0147】
表6に示すように、20の抗体の結合実験を2日に分けて実施した。全20の抗IL−33抗体は、hST2−hFcに結合するビオチン−hIL−33をIC
50値140pM〜22nMの範囲、最大遮断パーセント46%〜88%の範囲で遮断した。20中18の抗IL−33抗体は、表6に示すように、hST2−hFcに結合するMfIL−33−6HisをIC
50値220pM〜13nMの範囲、及び最大遮断パーセント38%〜92%の範囲で遮断した。被験抗体H4H9629PとH4H9633Pの2つは、hST2−hFcに結合するMfIL−33−6Hisに対し測定可能な遮断を示さなかった。
【0148】
実施例5.
Biacore解析により示される、抗IL−33モノクローナル抗体に結合するIL−33のST2による抑制
抗IL−33抗体の、予め形成したIL−33とST2との複合体への結合能力を、リアルタイム表面プラズモン共鳴バイオセンサーが付属したBiacore T−200 instrumentを使用して試験した。実験は、0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、及び0.05%v/v界面活性剤Tween−20(HBS−ET)で構成されるランニング緩衝液を用いて25℃にて実施した。Biacoreセンサー表面を、抗mycタグ特異的モノクローナル抗体とのアミンカップリング法により最初に誘導体化し(クローン#9E10)、この誘導体化されたセンサー上で、C末端myc−myc−ヘキサヒスタジンタグとともに発現させたヒトST2タンパク質(hST2−MMH;配列番号323番)をおよそ160応答単位(RU)捕捉した。次いで、捕捉したhST2−MMH表面を、ヒトIL−33(hIL−33;R&D
Systems、#3625−IL−010/CF)100nMを3分間注入することにより飽和状態にし、その後、抗IL−33モノクローナル抗体溶液100nMを3分間注入した。リアルタイム結合応答を実験中の全期間監視し、抗IL−33抗体を予め形成したhIL−33と捕捉したhST2−MMHとの複合体に注入してから3分後に観察された結合応答を記録し、表にまとめ表7に示した。抗IL−33モノクローナル抗体の抗mycタグ捕捉表面への非特異的結合は観察されなかった。表7に示すように、17の被験抗体は、予めhST2−MMHと複合体を作製した後、hIL−33への測定可能な結合を示さなかったが、3抗体(H1M9565N、H1M9566N、及びH1M9568N)は予めhST2−MMHと複合体を作製した後でhIL−33に結合した。
【0149】
【表7】
【0150】
実施例6.
抗IL−33抗体によるIL−33媒介性受容体シグナル伝達の抑制
インターロイキン−33(IL−33)は、付属タンパク質IL−1RAcPと会合する、toll様/インターロイキン−1受容体スーパーファミリー・メンバーであるST2のリガンドである(総説は、Kakkar and Lee, 2008を参照のこと)。IL−33によりST2/IL−1RAcPが活性化されると、MyD88(ミエロイド系分化因子88)及びTRAF6(TNF受容体関連因子6)などの下流分子を介してシグナル伝達カスケードが誘発され、特にNFκB(核因子−κB)の活性化を引き起こす。抗IL−33抗体を試験する、生物学的に関連するバイオ試験系を作成するため、ヒト胚性腎細胞(HEK293)を安定に移入させ、ヒトST2(NP_057316、accession番号1−556のアミノ酸)をルシフェラーゼ・レポーターとともに発現させた[NFκB応答配列(5x)−ルシフェラーゼ−IRES−GFP](HEK293/hST2/NFkB−ルシフェラーゼ細胞株)。HEK293細胞株はIL−1RAcPを内因的に発現し、HEK293細胞のIL−33によるNFκB活性化がこれまでに示されている(Schmitz et al., Immunity 23:479−490(2005))。安定な細胞株を単離し、10%FBS、DMEM、NEAA
、ペニシリン/ストレプトマイシン、及びG418に維持した。
【0151】
バイオアッセイ用に、HEK293/hST2/NFkB−ルシフェラーゼ細胞を、0.1%w/v FBS及びOPTIMEM(Invitrogen、#31985−07
0)を含有する低濃度血清媒体にウェルあたり10,000細胞で96ウェルアッセイプ
レート上に播種し、その後、37℃、5%CO
2で一晩インキュベートした。翌日、IL
−33の用量反応を測定するため、ヒトIL−33(hIL−33;R&D Systems、#3625−IL)又はC末端ヘキサヒスチジンタグとともに発現させたカニクイザルIL−33(MfIL−33−6His;配列番号305番)を1:3で系列的に希釈し、開始時10nMから徐々に0.0002nMまで減らした範囲の細胞に添加し、こ
の他に、IL−33未含有の対照試料を用意した。抑制を測定するため、抗体を系列的に希釈して細胞に添加し、その後、一定濃度のIL−33を添加した(ヒトのアッセイには10pMのhIL−33、及びサルのアッセイには5pM MfIL−33−6His)。抗体の3倍系列希釈を実施してから、開始時100nMから徐々に0.002nMまで
減らした範囲又は開始時10nMから徐々に0.0002nMまで減らした範囲の細胞に
添加する。抗体の希釈系列に加え、一定濃度のIL−33は含有するが抗体は一切含有しないウェルも含めた。37℃で5.5時間5%CO
2にインキュベーションした後、ルシフェラーゼ活性をVictor X(Perkin Elmer)プレートリーダーを用いて検出し、結果をPrism5の非線形回帰(4パラメータ・ロジスティック)で分析した。結果を表8に示す。
【0152】
【表8】
【0153】
抗IL33抗体20中18例は、表8に示すように、ヒトIL−33のHEK293/hST2/NFkB−ルシフェラーゼ細胞刺激をIC
50値7.5pM〜29nMの範囲で
遮断した。被験抗体のうちH1M9566NとH1M9568Nの2抗体は、hIL−33を部分的に抑制し、それぞれの最大抑制は48%と66%、またIC
50値は950pMと250pMであった。抗IL33抗体20中18例は、表8に示すように、MfIL−33−6HisのHEK293/hST2/NFkB−ルシフェラーゼ細胞刺激をIC
50値660pM〜130nMの範囲で遮断した。被験抗体のうちH1M9566NとH1M9568Nの2抗体は、MfIL−33−6Hisを部分的に抑制し、それぞれの最大抑制は61%と34%、またIC
50値は1.5nMと3.5nMであった。
【0154】
実施例7.
抗IL−33抗体によるIL−33誘発性ヒト好塩基球脱顆粒の抑制
本発明の選択抗IL−33抗体の特徴インビトロでさらに評価するために、IL−33誘発性好塩基球脱顆粒を遮断する能力を測定した。末梢血単核細胞(PBMC)を異なるヒトの提供者2人の新鮮全血から密度勾配遠心により精製した。K2 EDTA全血を、RPMI1640に1:1で希釈し、Ficoll−Paque(GE Healthcare、#17−1440−03)上に慎重に置き、遠心分離してPBMCを分離した。PBMCを含有する間期層を吸引し、新しい管に移し、MACS BSA溶液(Militenyi Biotec、#130−091−376)とMACSリンス溶液(Militenyi Biotec、#130−091−222)を1:20で希釈して構成したMACS緩衝液で2回洗浄した。その後、精製したPBMCを、MACS緩衝液100μL中約3.0x10
6細胞/mLの最終濃度でV字底96ウェルプレートに置いた。好塩基球をPBMC母集団に含有させるため、Ca
++もMg
++も含まないDulbeccoのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)50μLにIL−3(Sigma、#H7166−10UG)1ngを入れたものを細胞懸濁液に加えた後、37℃で10分間インキュベートした。
【0155】
本発明の2つの異なる例示的抗IL−33抗体(H4H9675P及びH4H9659P)又はアイソタイプ・コントロール抗体の系列希釈(1:3)を10nM〜4.6pM
の範囲で作製し、この他に抗体を含まない対照を用意した。各溶液を、固定濃度100pM(最終濃度)のヒトIL−33(R&D Systems、#6325−IL/CF)又はIL−33未含の陰性対照と混合し、それからPBMCに添加した。全条件を2連で試験した。
【0156】
ヒトIL−33及び抗体を細胞に添加した後、好塩基球脱顆粒を促すために細胞を37℃で20分間インキュベートした。その後、アッセイプレートを氷上で5分間冷却して脱顆粒を停止させた。脱顆粒測定に使用した好塩基球母集団の分析を行えるようにするため、抗HLA−DR−FITC(Beckman Coulter、#IM0463U)、抗CD123−APC(BD、#560087)、及び抗CD203c−PE(Beckman Coulter、#IM3575)それぞれについて20μL(製造者の指示に従い)を、各試料に加え、試料を4℃で20分間暗所に保持した。次いで、細胞を遠心分離し、DPBSで洗浄した後、2%ホルムアルデヒド(固定緩衝液)に4℃で再懸濁した。翌日、固定された細胞をBD FACSCanto IIで分析し、好塩基球脱顆粒レベルを測定した。結果を表9及び10にまとめた。
【0157】
【表9】
【0158】
【表10】
【0159】
表9に示すように、100pMでは、ヒトIL−33は異なる提供者2人に好塩基球脱顆粒を誘導し、平均脱顆粒パーセントは提供者655687が68.8%及び提供者65
5688が61.6%であった。
【0160】
表10に示すように、1抗IL33抗体H4H9675Pは、100pMヒトIL−33惹起により誘導された脱顆粒好塩基球を提供者655687ではIC
50値132.9p
Mで、また提供者655688ではIC
50値97.12pMで遮断した。もう一方の抗I
L33抗体H4H9659Pは、100pMヒトIL−33惹起により誘導された脱顆粒好塩基球を提供者655687ではIC
50値578.6pMで、また提供者655688
ではIC
50値446.5pMで遮断した。対照的に、アイソタイプ・コントロールではい
ずれの被験提供者の好塩基球脱顆粒も遮断しなかった。
【0161】
実施例8.
抗IL−33抗体による、IL−33誘発性のヒトPBMCからのIFN−γの抑制
本発明の抗IL−33抗体の特徴をさらに明らかにするため、末梢血単核細胞(PBMC)を使用する一次細胞ベースアッセイを用いた。本実施例で使用したアッセイは、Smithgall et al.in International Immunology, 2008, vol.20(8)pp.1019−1030により発表されている結果を基にした。このアッセイ用に、異なる提供者3人の新鮮全血から得たPBMCを密度勾配遠心により精製した。簡単に言うと、K2 EDTA全血をRPMI1640で2倍希釈し、Ficoll−Paque(GE Healthcare、#17−1440−03)上に慎重に置いて20分間遠心分離した。PBMCを含有する間期層を吸引し、新しい管に移してPBSで2回洗浄した。単離したPBMCを、10%FBS、L−グルタミン2mM、ペニシリン100U/mL、及びストレプトマイシン100μg/mLを添加したRPMI1640に最終濃度5x10
5細胞/mLで丸底96ウェルプレートに
置いた。次いで、細胞を50g/mLのヒトIL−12(hIL−12;R&D Systems、#219−IL−025/CF)及び10nM〜0.64pMのヒトIL−3
3(hIL−33;R&D Systems、#3625−IL−010/CF)単独を系列希釈したものとともに、又は260pMのhIL−33と100nM〜6.4pMの
各種抗体を系列希釈したものとの組み合わせとともにインキュベートした。最終容積はウェルあたり200μLであった。各条件を3連で試験した。抗体を存在させた場合は、それらを予めhIL−33とインキュベーションしてから30分後に細胞に加えた。
【0162】
細胞を、5%CO
2の加湿したインキュベーターで37℃にて一晩インキュベートし、
その後、培養上清中のIFNγレベルをELISA(R&D Systems、#DY285)により測定した。ELISAでは、製造者の指示に従い、96ウェル平底プレートを捕捉抗体でコーティングした。洗浄とブロッキングの後、未希釈の培養上清100μLをプレートに加え、2時間インキュベートした。その後の洗浄及び検出を製造者の指示に従い行った。
【0163】
hIL−12存在下のヒトIL−33は、表11に示すように、異なる被験提供者3人のヒト全PBMCからのIFNγ放出を274pM〜39pMのEC
50値で誘導した。抗IL−33抗体11例を、提供者#603486及び#603487からのPBMCを使用して試験し、抗IL−33抗体3例は、提供者#603491からのPBMCを使用して試験した。提供者#603486及び#603487で試験した抗IL−33抗体全11例は、表12に示すように、260pMのIL−33により誘導されたヒトPBMCからのIFNγ放出を、IC
50値175pM〜22nMの範囲で遮断した。提供者#603491で試験したIL−33抗体3例いずれも、260pMのhIL−33により誘導されたヒトPBMCからのIFNγ放出を遮断するのではなく、IFNγ放出を56.1p
M〜189nMのEC
50値で上昇させた。
【0164】
【表11】
【0165】
【表12】
【0166】
【表13】
【0167】
本発明は、本明細書に記載の具体的実施例によりその範囲を限定されるものではない。実際、本明細書に記載の他のさまざまな変更例が、これまでの記載及び添付図面から当該分野の当業者には明らかとなろう。かかる変更も添付のクレームの範囲内であることが意図される。
【0168】
実施例9
バイオレイヤー干渉法を使用したヒトIL−33交差競合
パネルの種々の抗IL−33モノクローナル抗体間の結合競合を、Octet(登録商標)HTXバイオセンサー(ForteBio、A Division of Pall
Life Sciences)を使用してリアルタイム、非標識バイオレイヤー干渉法で測定した。実験は、0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、0.05%v/v界面活性剤Tween−20、及び0.1mg/ml BSA(HBS−ET
kinetics buffer)緩衝液を使用し、プレートを速度1000rpmで撹拌しながら25℃にて実施した。2抗体がヒトIL−33への結合について互いに競合することができたかどうかを評価するため、予備混合アッセイフォーマットを使用し、これにおいては、100nMのヒトIL−33(R&D Systems;#3625−IL−010/CF)と500nMの異なる抗IL−33モノクローナル抗体(以後、mAb−2と呼ぶ)とを、結合競合アッセイに先立ち少なくとも2時間予備混合した。抗マウスFcポリクローナル抗体(Pall ForteBio Corp、#18−5088;以後、AMCと呼ぶ)又は抗ヒトFcポリクローナル抗体(Pall ForteBio Corp、#18−5060;以後、AHCと呼ぶ)いずれかでコーティングしたOctetバイオセンサーを、まず、個々の抗IL−33モノクローナル抗体20μg/mLを含有するウェルに3分間浸し、それぞれに、マウスFc又はヒトFcを発現している抗IL−33モノクローナル抗体(以後、mAb−1と呼ぶ)を捕捉した。捕捉ステップに続き、Octetバイオセンサー上の、何も結合していない抗マウスFcポリクローナル抗体及び抗ヒトFcポリクローナル抗体を、それぞれ、マウスFc又はヒトFcとともに非特異的モノクローナル抗体200μg/mLを含有するウェルに4分間浸して飽和させた。最後に、Octetバイオセンサーを、ヒトIL−33 100nMとmAb−2
500nMとの予備混合試料を含有するウェルに4分間浸漬した。各サイクルの終了時、非共有結合により捕捉した抗IL−33抗体と、結合した、ヒトIL−33とmAb−2とで予め作製した複合体とを、HCl 10mMとを20秒ずつ交互に3回浸漬してからHBS−ET kinetics bufferに浸す方法でバイオセンサーから除去した。バイオセンサーを、実験の各ステップごとにHBS−ET kinetics bufferで洗浄した。リアルタイム結合応答を結合イベントの間監視し、各ステップ終了時の結合応答(単位:nm)を記録した。解析中、与えられたmAb−2(mAb−1=mAb−2の場合、すなわち、マトリックスの対角線沿い)の自己−自己のバックグラウンド結合シグナルを、mAb−2の全結合イベントで観察されたシグナル(交差競合マトリックスの対応列)から減算し、バックグラウンドを補正した結果を
図1に示している。ヒトIL−33と各種mAb−2試料それぞれとで予め作製した複合体へのmAb−1
の結合応答を測定し、各種抗IL−33モノクローナル抗体のそれぞれに対する競合的/非競合的挙動を検討した。
【0169】
図1に示すように、黒色フォントで記載した明灰色欄は自己−競合の結合応答を表す。双方向に互いに競合する抗体は、結合順序とは無関係に、黒色欄に白色フォントで表されている。黒色フォントと暗灰色で強調表示されている細胞は、ヒトIL−33への結合が弱い抗IL−33モノクローナル抗体を表し、一方向の交差競合が見られる。実験で使用したアイソタイプ・コントロールは、暗灰色の欄に白色フォントで表されている。白色欄の黒色フォントは抗体間で競合が見られなかったことを表しており、これは抗体それぞれが別個の結合エピトープを有することが示唆される。
【0170】
実施例10.
バイオレイヤー干渉法を使用したサルIL−33交差競合
パネルの種々の抗IL−33モノクローナル抗体間の結合競合を、Octet(登録商標)HTXバイオセンサー(ForteBio、A Division of Pall
Life Sciences)を使用してリアルタイム、非標識バイオレイヤー干渉法で測定した。実験は、0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3m
M EDTA、0.05%v/v界面活性剤Tween−20、及び0.1mg/ml BSA(HBS−ET kinetics buffer)緩衝液を使用し、プレートを速度1000rpmで撹拌しながら25℃にて実施した。C末端ヘキサヒスチジンタグとともに発現させた組換えサルIL−33(MfIL−33−6His;SEQ ID:xx)への結合について2抗体が互いに競合することができたかどうかを評価するために、2μg/mLのMfIL−33−6Hisを含有するウェルにバイオセンサーを85秒間浸すことにより、抗penta−His抗体でコーティングしたOctetバイオセンサー(Fortebio Inc、#18−5079)上に、およそ0.15nm結合単位の
MfIL−33−6Hisを最初に捕捉した。その後、抗原捕捉バイオセンサーを、mAb−1の50μg/mL溶液含有ウェルに5分間浸漬させ、第1の抗IL−33モノクローナル抗体(以後、mAb−1と呼ぶ)で飽和させた。その後、バイオセンサーを、第2の抗IL−33モノクローナル抗体(以後、mAb−2と呼ぶ)の50μg/mL溶液含有ウェルに4分間浸した。バイオセンサーを、実験の各ステップごとにHBS−ET kinetics bufferで洗浄した。リアルタイム結合応答を実験の間監視し、各結合ステップの最大結合応答を記録した。予めmAb−1と作製した複合体MfIL−33−6HisへのmAb−2の結合応答を測定し、各種抗IL−33モノクローナル抗体のそれぞれに対する競合的/非競合的挙動を検討した。
【0171】
図2に示すように、黒色フォントで記載した明灰色欄(対角線沿い)は自己−競合を表す(mAb−1=mAb−2)。双方向に競合する抗体は、結合順序とは無関係に、黒色欄に白色フォントで表されている。白色欄の黒色フォントは抗体間で競合が見られなかったことを表しており、これは抗体それぞれが別個の結合エピトープを有することが示唆される。暗灰色の欄の白色フォントは実験で使用したアイソタイプ・コントロールを表す。
【0172】
実施例11.
インビボモデルでのmAb試験;急性HDM誘導性肺炎症モデルによる、肺炎症でIL−33が果たす役割の検討
関連インビボモデルにおける抗IL−33抗体H4H9675Pの影響を検討するため、急性HDM誘導性肺炎症試験を、マウスIL−33の代わりにヒトIL−33を発現するホモ接合体マウスにおいて実施した(IL−33 HumInマウス)。
【0173】
IL−33 HumInマウスに、チリダニ抽出物(HDM;Greer、#XPB70D3A2.5)50μgを1Xリン酸緩衝生理食塩液(PBS)20μL(n=17)
又は1X PBS 20μL(n=3)に希釈したものいずれかを週5日で2週間経鼻投与した。HDM惹起マウスの亜群には、25mg/kgの抗IL−33抗体、H4H9675(n=6)又はアイソタイプ・コントロール抗体(n=6)いずれかの皮下注射を、HDM初回投与の3日前に開始し、その後、HDM惹起終了時まで週2回注射した。HDM初回経鼻投与の15日後、すべてのマウスを屠殺し、それぞれ肺を回収した。マウス各群の実験上の用量及び処置プロトコルを表14に示す。
【0174】
【表14】
【0175】
サイトカイン分析用肺回収物:
放血後、各マウスから右肺の前葉及び中葉を取り出し、1X Haltプロテアーゼ阻害剤カクテル(Pierce、#78430)を添加した、組織タンパク質抽出試薬(1X T−PER試薬;Pierce、#78510)溶液を含有する管に入れた。以後の全ステップを氷上で実施した。T−PER試薬(プロテアーゼ阻害剤カクテル含有)の容積を、組織対T−PER比が1:8(w/v)に一致するよう各試料について調整した。肺試料を、使い捨て乳棒(Kimble Chase、#749625−0010)を使用して管内で手で均質化した。得られた溶解物を遠心分離し組織片をペレットにした。可溶性タンパク質抽出物を含有する上清を新たな管に移し、さらなる分析時まで4℃で保存した。
【0176】
肺タンパク抽出物内の総タンパク量を、Bradfordアッセイを用いて測定した。アッセイ用に、希釈した抽出物試料10μLを96ウェルプレートに2連で置き、200μLの1X Dye Reagent(Biorad、#500−0006)とともに混合した。ウシ血清アルブミン(Sigma、#A7979)を、1X T−Per試薬中700μg/mLで系列希釈を開始したものを標準として使用し、抽出物の正確なタンパク質濃度を測定した。5分間インキュベーションを室温にて行った後、Molecular Devices SpectraMax M5プレートリーダーで595nmでの吸光度を測定した。総タンパク質含有量を測定するためのデータ解析は、GraphPad
Prism(商標)ソフトウェアを使用して実施した。
【0177】
肺タンパク抽出物内のサイトカイン濃度を、Proinflammatory Panel1(マウス)多重免疫測定キット(MesoScale Discovery,#K
15048D−2)を使用し製造者の指示に従い測定した。簡単に言うと、50μL/ウェルの較正用標準及び試料(Diluent41に希釈)を、予め捕捉抗体でコーティングしたプレートにに加え、700rpmで撹拌しながら室温にて2時間インキュベートし
た。その後、プレートを、0.05%(w/v)Tween−20含有1X PBSで3
回洗浄し、Diluent45で希釈した25μLのDetection Antibody Solutionを加えた。さらに2時間、撹拌下で室温にてインキュベーションした後、プレートを3回洗浄し、150μLの2倍Read Bufferを各ウェルに加えた。電気化学発光をMSD Spector(登録商標)装置で直ちに計測した。データ解析をGraphPad Prism(商標)ソフトウェアを使用して実施した。
【0178】
各群の全マウスの肺総タンパク質抽出物内の各サイトカイン濃度を、Bradfordアッセイで測定した抽出物総タンパク質含有量に標準化し、表15に示すように、各群について、総肺タンパク質mgあたりのサイトカインの平均pg(pg/mg肺タンパク、±SD)として表した。
【0179】
サイトカイン分析用肺回収物:
HDMを2週間投与されたIL−33 HumInマウスの肺で放出されたサイトカインIL−4及びIL−5のレベルは、生理食塩水緩衝液で惹起したIL−33 HumInマウスより有意に高かった。対照的に、急性HDM惹起期間中に抗IL−33抗体の処置を受けたIL−33 HumInマウスでは、未処理のHDM又はアイソタイプ・コントロールを投与されたIL−33 HumInマウスに比較して肺内IL−4及びIL−5レベルを低下させる傾向があった。
【0180】
【表15】
【0181】
肺細胞浸潤分析用の肺回収物
放血後、各マウスから右肺後葉を取り出し、およそ2〜3mmの角切りにした後、20μg/mLのDNAse(Roche、#10104159001)及び0.7U/mL
のリベラーゼTH(Roche、#05401151001)をハンクス平衡塩類溶液(HBSS)(Gibco、#14025)に希釈した溶液を含有する管に入れ、それを37℃水浴で20分間でインキュベートし、5分おきにボルテックスによる撹拌を行った。エチレンジアミン四酢酸(Gibco、#15575)を最終濃度10mMで加えて反応を停止させた。続いて、各肺をgentleMACS dissociator(登録商標)(Miltenyi Biotec、#130−095−937)を使用して分離し、その後、70μmフィルターでろ過し、遠心分離した。得られた肺のペレットを1mL
の1X赤血球溶解緩衝液(Sigma、#R7757)に再懸濁し赤血球を除去した。3分間室温にてインキュベーションした後、3mLの1X DMEMを加えて赤血球溶解緩衝液を不活化させた。その後、細胞懸濁液を遠心分離し、得られた細胞ペレットを、5mLのMACS緩衝液(autoMACS Running Buffer;Miltenyi Biotec、#130−091−221)に再懸濁した。再懸濁した試料を70μmフィルターでろ過し、ウェルあたり1x10
6細胞を96ウェルV字底プレートに置
いた。その後、細胞を遠心分離し、ペレット1X PBSで洗浄した。第2遠心分離の後、細胞生存率を測定するため、細胞ペレットを、1X PBSで1:1000に希釈したLIVE/DEAD(登録商標)Fixable Aqua Dead Cell Stain(Life Technologies、#L34957)100μLに再懸濁し、遮光して室温で20分間インキュベートした。1X PBS洗浄を1回行った後、10μg/mLの精製ラット抗マウスCD16/CD32Fc Block(クローン:2.
4G2;BD Biosciences、#553142)を含有するMACS緩衝液溶液で細胞を4℃で10分間インキュベートした。細胞を1回洗浄してから、MACS緩衝液に希釈した適切な抗体混合物(表16に記載の)内で遮光しながら4℃で30分間インキュベートした。抗体をインキュベーションした後、細胞をMACS緩衝液で2回洗浄し、BD cytofix(BD Biosciences、#554655)に再懸濁してから、遮光して4℃で15分間インキュベートした。細胞をその後洗浄してMACS緩衝液に再懸濁し、BD FACS管(BD Biosciences、#352235)に移して、好酸球、グループ2自然リンパ球(ILC2)及びリンパ球についてフローサイトメトリーで分析した。
【0182】
活性化CD4T細胞を、生きている、CD45
+、SSC
Lo、FSC
Lo、CD3
+、CD19
-、CD4
+、CD8
-、及びCD69
+細胞と定義した。活性化B細胞を、生きている、CD45
+、SSC
Lo、FSC
Lo、CD3
-、CD19
+、及びCD69
+細胞と定義した。好酸球を、生きている、CD45
+、GR1
-、CD11c
lo、SiglecF
hiと定義した。ILC2細胞を、生きている、CD45
+、系列−(系列:CD19、CD3、C
D11b、CD11c、F4/80)、CD127+、Sca
-1
+、ST2
+と定義した
。親母集団(CD4、±SD)内の活性化細胞(CD69
+)の頻度として表した、活性
化CD4細胞のデータを表17に示す。
【0183】
【表16】
【0184】
肺細胞浸潤分析:
表17に示すように、HDMを2週間投与されたIL−33 HumInマウスの肺における活性化CD4
+T細胞、好酸球、及びILC2の頻度は、1X PBS対照で惹起
したIL−33 HumInマウスより有意に高かった。対照的に、急性HDM惹起の期間中、抗IL−33抗体で処置したIL−33 HumInマウスでは、未処理のHDM又はアイソタイプ・コントロールを投与されたIL−33 HumInマウスに比較してこれらの浸潤頻度が低下する傾向が観察された。
【0185】
HDMで2週間惹起したIL33 HumInマウスの肺では、1X PBS対照で惹起したIL33 Huminマウスと比較して活性化B細胞の頻度が上昇する傾向が観察された。抗IL−33抗体で処置すると、未処理HDM又はアイソタイプ・コントロールを投与したIL−33 HumInマウスに比較して、HDM惹起したIL33 HumInマウスの肺では、肺の活性化B細胞頻度の有意な低下が観察された。
【0186】
【表17】
【0187】
実施例12:インビボモデルにおけるmAb試験;慢性HDM誘導性線維症及び重度の肺炎症モデルによる、肺炎症でIL−33が果たす役割の検討
抗IL−33抗体H4H9675Pのへの影響を関連インビボモデルで測定するため、慢性HDM誘導性線維症及び重度の肺炎症試験を、マウスIL−33の代わりにヒトIL−33を発現するホモ接合体マウスにおいて実施した(IL−33 HumInマウス)。
【0188】
IL−33 HumInマウスに、1Xリン酸緩衝生理食塩液(PBS)20μLで希釈した50μgチリダニ抽出物(HDM;Greer、#XPB70D3A2.5)又は
1X PBS 20μLいずれかを週5日、12週間経鼻投与した。IL33 HumInマウスの第2の対照群には、抗体処置開始時の疾患重症度を評価するために、HDM抽出物50μgを1X PBS 20μLに希釈して週5日、4週間投与した。HDM惹起マウス2群に、HDM惹起開始から4週間後に、抗IL−33抗体H4H9675P、又はアイソタイプ・コントロール抗体のいずれかを25mg/kg皮下注射し、その後は、HDM惹起終了時まで1週間に2回(8週間の抗体処置)投与する。試験第85日目、すべてのマウスを屠殺し、それぞれの肺を回収した。マウス各群の実験上の用量及び処置プロトコルを表18に示す。
【0189】
【表18】
【0190】
サイトカイン分析用肺回収物:
放血後、各マウスから右肺の前葉及び中葉を取り出し、1X Haltプロテアーゼ阻害剤カクテル(Pierce、#78430)を添加した、組織タンパク質抽出試薬(1X T−PER試薬;Pierce、#78510)溶液を含有する管に入れた。以後の全ステップを氷上で実施した。T−PER試薬(プロテアーゼ阻害剤カクテル含有)の容積を、組織対T−PER比が1:8(w/v)に一致するよう各試料について調整した。肺試料を、使い捨て乳棒(Kimble Chase、#749625−0010)を使用して管内で手で均質化した。得られた溶解物を遠心分離し組織片をペレットにした。可溶性タンパク質抽出物を含有する上清を新たな管に移し、さらなる分析時まで4℃で保存した。
【0191】
肺タンパク抽出物内の総タンパク量を、Bradfordアッセイを用いて測定した。アッセイ用に、希釈した抽出物試料10μLを96ウェルプレートに2連で置き、200μLの1X Dye Reagent(Biorad、#500−0006)とともに混合した。ウシ血清アルブミン(BSA;Sigma、#A7979)を、1X T−Per試薬中700μg/mLで系列希釈を開始したものを標準として使用し、抽出物のタンパク質濃度を測定した。5分間インキュベーションを室温にて行った後、Molecular Devices SpectraMax M5マイクロプレートリーダーで595nmでの吸光度を測定した。BSA標準に基づいた総肺抽出物タンパク質含有量を測定す
るためのデータ解析は、GraphPad Prism(商標)ソフトウェアを使用して実施した
【0192】
肺タンパク抽出物内のサイトカイン濃度を、Proinflammatory Panel1(マウス)多重免疫測定キット(MesoScale Discovery,#K
15048D−2)を使用して製造者の指示に従い測定した。簡単に言うと、50μL/ウェルの較正用標準及び試料(Diluent41に希釈)を、予め捕捉抗体でコーティングしたプレートにに加え、700rpmで撹拌しながら室温にて2時間インキュベートした。その後、プレートを、0.05%(w/v)Tween−20含有1X PBSで
3回洗浄し、Diluent45で希釈した25μLのDetection Antibody Solutionを加えた。さらに2時間、撹拌下で室温にてインキュベーションした後、プレートを3回洗浄し、150μLの2倍Read Bufferを各ウェルに加えた。電気化学発光をMSD Spector(商標)装置で直ちに計測した。データ解析をGraphPad Prismソフトウェアを使用して実施した。
【0193】
各群の全マウスの肺総タンパク質抽出物内の各サイトカイン濃度基を、Bradfordアッセイで測定した抽出物総タンパク質含有量に標準化し、表19に示すように、各群について、総肺タンパク質mgあたりのサイトカインの平均pg(pg/mg肺タンパク、±SD)として表した。
【0194】
【表19】
【0195】
肺サイトカイン分析:
HDMを4及び12週間投与されたIL−33 HumInマウスの肺で放出されたサイトカインIL−4及びIL−5のレベルは、1X PBSで惹起したIL−33 HumInマウスより有意に高かった。対照的に、慢性HDM惹起期間中に抗IL−33抗体の処置を受けたIL−33 HumInマウスでは、未処理のHDM又はアイソタイプ・コントロールを投与されたIL−33 HumInマウスに比較して肺内IL−4及びIL−5レベルを低下させる傾向があった。