(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る成形型、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法の実施形態について、図面に基づいて説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0014】
[装置構成]
リードフレームや半導体チップ(以下、単に「チップ」と称する場合がある。)が実装された基板等の成形対象物は樹脂封止することにより電子部品として用いられる。この電子部品は、例えば、携帯通信端末用の高周波モジュール基板、電力制御用モジュール基板、機器制御用基板等として用いられる。成形対象物を樹脂封止する技術の一つとして、BGA(ball grid array)基板等を樹脂封止して半導体パッケージを製造するトランスファ方式がある。このトランスファ方式は、チップが実装された基板等を成形型のキャビティに収容し、成形型のポットに粉粒体状樹脂を固めた樹脂タブレットを供給して加熱,溶融した後、該成形型を型締めした状態で樹脂タブレットが溶融した溶融樹脂をキャビティに供給して硬化させ、型開きして樹脂成形品を製造する方式である。
【0015】
従来のトランスファ方式は、樹脂成形品にボイド(気泡)が発生すると成形不良の原因となることから、成形型にエアベントを設けて、ボイドを防止するために基板やチップの形状等に応じてエアベント等の位置を最適なものに設計する必要がある。また、最適なエアベントを設けたとしても、チップや抵抗、コンデンサなどが存在しない基板の領域の方が、チップ等が存在する領域に比べて溶融樹脂の流動速度が相対的に大きくなり、この速度差に起因して、側方領域からチップ存在領域に溶融樹脂が回り込んで空気(溶融樹脂から発生するガスを含む)を取り囲むため、ボイドが発生し易い。特に、基板に突起状電極を介してチップを有するフリップチップ基板をモールドアンダーフィルする場合、基板とチップとの間の幅狭領域において溶融樹脂の流動速度が小さくなるため、チップが存在しない側方領域から幅狭領域に溶融樹脂が回り込んでボイドが発生し易い。その結果、樹脂成形品の成形不良が発生するといった問題があった。
【0016】
そこで、本実施形態では、成形精度を向上させる成形型C、樹脂成形装置D及び樹脂成形品の製造方法を提供する。以下において、平面視矩形状のフリップチップ基板を成形対象物の一例として説明し、重力方向を下、重力方向とは反対方向を上として説明することがある。
【0017】
図1には、樹脂成形装置Dの模式図が示されている。本実施形態における樹脂成形装置Dは、成形モジュール3と供給モジュール4と制御部6と搬送機構とを備えている。成形モジュール3は、成形対象物を粉粒体状樹脂又は液状樹脂で樹脂封止するための成形型Cを含んでいる。制御部6は、樹脂成形装置Dの動作を制御するソフトウェアとして、HDDやメモリ等のハードウェアに記憶されたプログラムで構成されており、コンピュータのCPUにより実行される。つまり、制御部6は、成形モジュール3、供給モジュール4及び搬送機構の動作を制御する。
【0018】
なお、粉粒体状樹脂は、粉粒体状の樹脂だけでなく、粉粒体状の樹脂を押し固めた固形樹脂で形成される樹脂タブレットを含んでおり、いずれも加熱により溶融して液状となる溶融樹脂となる。この粉粒体状樹脂は、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でも良い。熱硬化性樹脂は、加熱すると粘度が低下し、さらに加熱すると重合して硬化し、硬化樹脂となる。本実施形態における粉粒体状樹脂は、取扱いの容易性から固形樹脂で形成される樹脂タブレットが好ましく、さらに、チップと基板との間に溶融樹脂を確実に充填するために、微粒子化したフィラーを含む高流動性の熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【0019】
成形モジュール3は、樹脂封止前基板Sa(成形対象物の一例)を樹脂封止して樹脂封止済基板Sb(樹脂成形品の一例)を成形する。この成形モジュール3は、複数(本実施形態では3つ)設けられており、夫々の成形モジュール3を独立して装着又は取り外しできる。成形モジュール3の詳細は後述する。
【0020】
供給モジュール4は、基板供給機構43と基板整列機構44と樹脂供給機構45と基板収容部46とを含み、搬送機構に含まれるローダ41とアンローダ42の待機位置になる。基板供給機構43は、ストックしている樹脂封止前基板Saを基板整列機構44に受け渡す。樹脂封止前基板Saには、1つの半導体チップが、又は複数個の半導体チップが縦方向及び/又は横方向に整列して、実装されている。基板整列機構44は、基板供給機構43から受け渡された樹脂封止前基板Saを搬送に適した状態にする。樹脂供給機構45は、樹脂タブレットT(樹脂材料の一例)をストックしており、樹脂タブレットTを搬送に適した状態に配置する。
【0021】
搬送機構は、樹脂封止前の半導体チップが実装された樹脂封止前基板Saや樹脂タブレットTを搬送するローダ41と、樹脂封止後の樹脂封止済基板Sbを搬送するアンローダ42とを含んでいる。ローダ41は、基板整列機構44から複数(本実施形態では4個)の樹脂封止前基板Saを受け取り、また、樹脂供給機構45から複数(本実施形態では6個)の樹脂タブレットTを受け取って、レール上を供給モジュール4から各成形モジュール3まで移動し、各成形モジュール3に樹脂封止前基板Saと樹脂タブレットTを受け渡すことが可能である。アンローダ42は、樹脂封止済基板Sbを成形モジュール3から取り出して、レール上を各成形モジュール3から基板収容部46まで移動し、基板収容部46に樹脂封止済基板Sbを収容することができる。樹脂封止済基板Sbでは、半導体チップが、溶融樹脂が固化した硬化樹脂により封止されている。
【0022】
以下、成形モジュール3について詳述する。
【0023】
図2に示すように、成形モジュール3は、平面視矩形状の下部固定盤31の四隅にタイバー32が立設されており、タイバー32の上端付近には平面視矩形状の上部固定盤33が設けられている。下部固定盤31と上部固定盤33の間には平面視矩形状の可動プラテン34が設けられている。可動プラテン34は、四隅にタイバー32が貫通する孔が設けられており、タイバー32に沿って上下に移動可能である。下部固定盤31の上には、可動プラテン34を上下に移動させる装置である型締め機構35が設けられている。型締め機構35は、可動プラテン34を上方に移動させることにより成形型Cの型締めを行い、可動プラテン34を下方に移動させることにより成形型Cの型開きを行うことができる。型締め機構35の駆動源は、特に限定されないが、例えば、サーボモータ等の電動モータを用いることができる。
【0024】
成形型Cは、下型LMと上型UMとを有する成形型本体Mを含んでいる。下型LM及び上型UMは、互いに対向して配置される金型等で構成されている。
【0025】
下型LMには、樹脂封止前基板Saを、半導体チップ等が実装されている面を上にして載置する基板セット部が形成されている。また、下型LMには、樹脂封止前基板Sa及び樹脂タブレットTを加熱する下側ヒータ36が内蔵されている。さらに、下型LMには、樹脂タブレットT(加熱により溶融する樹脂)が充填される円筒状のポット21が焼き嵌め等により固定されている。ポット21の円柱状の空間の下方には、サーボモータ等の電動モータ(不図示)により駆動されるプランジャ25が上下移動可能に内挿されている。
【0026】
上型UMには、溶融樹脂が供給される平面視矩形状のキャビティMCが形成されており、このキャビティMCを加熱する上側ヒータ37が内蔵されている。上型UMは、キャビティMCが形成されたキャビティブロックと、ポット21からキャビティMCに向けて溶融樹脂を流動させるランナ22を有するカルブロックとを含み、キャビティブロックにはキャビティMCから空気を排出するエアベント26が設けられている。キャビティブロックとカルブロックは別部材として上型UMに固定されている。カルブロックには、溶融樹脂がランナ22からキャビティMCへ流入する入り口であるゲート23が設けられている。さらに、上型UMには、後述する流路制限機構Rが備えられている。なお、キャビティブロックとカルブロックとを一体部材として構成しても良い。また、エアベント26は、キャビティブロックとは別体のエアベントブロックとして構成しても良い。
【0027】
図3〜
図4を用いて成形型本体Mを詳述する。
図3には、上方から見たキャビティMCの概略平面図が示されている。
図4は、
図3の紙面に垂直な方向(上下方向)でのIV−IV線概略断面図である。なお、本実施形態では、チップ13の表面を露出成形する場合について記載しているが(
図4参照)、チップ13の表面を樹脂封止する場合であっても良い。
【0028】
図3に示すように、ゲート23は、キャビティMCの一辺Sの中央部分に設けられており、このゲート23を介して、上述したポット21からランナ22へと流動する溶融樹脂がキャビティMCに供給される。キャビティMCの一辺Sに対向する他辺Eには、エアベント26が設けられており、このエアベント26を介してキャビティMCから空気を排出することができる。
図3〜
図4に示すように、本実施形態における樹脂封止前基板Saは、基板11上で二次元アレイ状に配置された複数の突起状電極12にチップ13が電気的に接続された基板(フリップチップ基板)で構成されている。突起状電極12及びチップ13は、平面視において、基板11の中央領域に実装されており、基板11の中央領域がチップ存在領域となっており、基板11の中央領域を囲む周辺領域がチップ不存在領域となっている。チップ13は、半導体上に多数の電子素子や配線を実装したICチップ等で構成されている。
【0029】
このようなフリップチップ基板では、ゲート23から供給された溶融樹脂は、キャビティMCの一辺S(流動始端)から他辺E(流動終端)に向けて流動する。このとき、チップ13が配置されていない基板11の側方領域(キャビティMCの一辺Sから他辺Eまでを接続する両側辺に沿った領域)では、チップ13が存在するチップ存在領域(基板11の中央領域)に比べて溶融樹脂の流動速度が相対的に大きくなり、この速度差に起因して、側方領域からチップ存在領域に溶融樹脂が回り込んで空気(溶融樹脂から発生するガスを含む)を取り囲むため、ボイドが発生し易い。特に、基板11に突起状電極12を介してチップ13を有するフリップチップ基板の場合、基板11とチップ13との間の幅狭領域(突起状電極12が存在する領域)において、チップ13が存在しない側方領域より溶融樹脂の流動速度が相対的に小さくなるため、側方領域から幅狭領域に溶融樹脂が回り込んでボイドが発生し易い。
【0030】
そこで、本実施形態の成形型本体Mは、キャビティMCの一辺S及び他辺Eと交わる両側辺の側にキャビティMCの内部を流動する溶融樹脂の側方流路15を絞る流路制限機構Rを有している。この流路制限機構Rは、溶融樹脂の供給開始から所定時間、側方流路15を絞る(側方流路15の流路断面積を小さくする)ことにより、側方流路15を流動する溶融樹脂の流量を低下させる。流路制限機構Rは、一対の可動ブロック16(制限部材の一例)で構成されている。本実施形態における可動ブロック16は直方体で、可動ブロック16の幅W2は、側方流路15の幅W1(すなわちチップ13の側辺からキャビティMCの壁面までの最小幅)の約90%である。側方流路15の幅W1の幅に対する可動ブロック16の幅W2の割合は、溶融樹脂の粘度やチップ13と基板11の隙間のサイズ、突起状電極12の大きさと数などを考慮して適宜設定すれば良いが、約50%以上であることが好ましい。側面視において、基板11とチップ13との間の幅狭領域(基板11とチップ13との間の間隙領域)がある高さに夫々の可動ブロック16の先端16a(下側の端面)が位置することにより、側方流路15を絞った状態にする。換言すると、可動ブロック16は、側方流路15を絞った状態において、側面視で基板11とチップ13との間の幅狭領域に先端16aが重なっている。この可動ブロック16は、不図示のエアシリンダやサーボモータ等の駆動力により、キャビティMC内に挿入する、又はキャビティMC内から抜去することが可能となっており、キャビティMCの側方流路15を絞った状態と、側方流路15を全開にした状態とに変動させることができる。本実施形態における可動ブロック16は、上型UMに上下移動自在に備えられており、キャビティMCの側方流路15のうち、チップ13と対向するほぼ全領域に設けられている。
【0031】
なお、側面視において基板11とチップ13との間の幅狭領域に位置する可動ブロック16の先端16aの基板11からの高さは、基板11とチップ13との間の幅狭領域と側方流路15とにおいて、溶融樹脂の流動速度が近付くように設定されている。所定時間経過後に、可動ブロック16を移動させて、側方流路15を絞った状態から側方流路15を全開にした状態に変化させる。そのタイミングは、チップ13と基板11の隙間のサイズや、突起状電極12の大きさと数、溶融樹脂の粘度などの要素を考慮して、キャビティMCの外方側から内方側に溶融樹脂が回り込むことがないように調整すれば良い。例えば、溶融樹脂が流動終端(他辺E)に到達した時点で可動ブロック16を全開にした状態にしても良いし、基板11とチップ13との間の幅狭領域全体に溶融樹脂が注入された時であっても良い。あるいは、シミュレーションにより、基板11とチップ13との間の幅狭領域と側方流路15とにおいて、溶融樹脂の流動速度が近付くように設定しても良い。
【0032】
このように、キャビティMCの一辺S及び他辺Eと交わる両側辺の側でキャビティMCの内部に流動する溶融樹脂の側方流路15を絞る流路制限機構Rにより、側方流路15における溶融樹脂の流量を低下させる。その結果、溶融樹脂の流動抵抗となるチップ13や突起状電極12が樹脂封止前基板Saに実装されている場合であっても、チップ13が存在しないキャビティMCの外方側における溶融樹脂の流動速度と、チップ13が存在するキャビティMCの内方側における溶融樹脂の流動速度とを近付けることができる。これにより、キャビティMCの内部を流動する溶融樹脂の流動終端(他辺E)において、キャビティMCの外方側とキャビティMCの内方側とにおける溶融樹脂の先頭部分が近付き、外方側から内方側に溶融樹脂が回り込んで空気を取り囲むことが防止される。よって、樹脂封止済基板Sb(樹脂成形品)にボイドが発生し難く、成形精度を向上させることができる。
【0033】
しかも、流路制限機構Rが、側方流路15を絞った状態において、側面視で基板11とチップ13との間の幅狭領域に先端16aが位置する可動ブロック16で構成されていれば、側方流路15において溶融樹脂の流量を確実に低下させることができる。その結果、チップ13が存在しないキャビティMCの外方側における溶融樹脂の流動速度と、基板11とチップ13との間の幅狭領域における溶融樹脂の流動速度とを、近付けることができる。これにより、成形対象物がフリップチップ基板であっても、キャビティMCの内部を流動する溶融樹脂の流動終端(他辺E)において、キャビティMCの外方側とキャビティMCの内方側とにおける溶融樹脂の先頭部分が近付き、外方側から内方側に溶融樹脂が回り込んで空気を取り囲むことが防止される。
【0034】
[樹脂成形品の製造方法]
図1〜
図4を用いて樹脂成形品の製造方法について説明する。
【0035】
図1に示すように、予め、ローダ41を、樹脂タブレットTの収容空間を断熱した状態で加熱しておく。また、予めヒータ36,37に通電して、成形型本体Mを加熱しておく。そして、基板供給機構43から取り出した複数の樹脂封止前基板Saをローダ41に載置する。また、樹脂供給機構45により整列された樹脂タブレットTを、ローダ41の樹脂タブレットTの収容空間に収容する。そして、ローダ41は、樹脂封止前基板Saを成形モジュール3まで搬送し、樹脂封止前基板Saを、半導体チップが実装された側を上方に向けて下型LMの基板セット部に載置すると共に、樹脂タブレットTをポット21内に収容する(供給工程、
図2参照)。
【0036】
次いで、
図2に示すように、型締め機構35により可動プラテン34を上方に移動させて下型LMを上型UMの方向に相対的に移動させることにより、成形型Cの型締めを行う(型締工程)。このとき、可動ブロック16により側方流路15を絞った状態にしておくと共に、エアベント26を介してキャビティMCから空気を排出する(
図3参照)。次いで、下型LMに内蔵された下側ヒータ36により、ポット21に収容された樹脂タブレットTを加熱して溶融させると共に、下型LMに固定された樹脂封止前基板Saを加熱する(成形工程、
図2参照)。
【0037】
次いで、樹脂タブレットTが溶融して溶融樹脂となったとき、プランジャ25を上方に移動させることにより、溶融樹脂を、ポット21からランナ22を介してゲート23に流通させる(成形工程、
図2参照)。溶融樹脂は、ゲート23からキャビティMCに供給される。ヒータ36,37によりキャビティMCをさらに加熱することにより、キャビティMC内の溶融樹脂が硬化し、樹脂封止前基板Saは樹脂封止されて樹脂封止済基板Sb(樹脂成形品)が形成される(成形工程、
図2参照)。この成形工程において、
図3に示すように、ゲート23から供給された溶融樹脂は、キャビティMCの一辺Sから他辺Eに向けて流動する。そして、チップ存在領域に到達した溶融樹脂は、基板11の中央領域において基板11とチップ13との間の幅狭領域に入り込んで流量が低下する。チップ13と基板11との間の突起状電極12も溶融樹脂の流れを塞ぐため、流量を低下させる。このとき、基板11の側方領域において、所定時間、流路制限機構Rにより側方流路15を絞ることにより溶融樹脂の流量を低下させる。その結果、基板11とチップ13との間の幅狭領域と側方流路15とにおいて、溶融樹脂の流動速度が近付いて、キャビティMCの内部を流動する溶融樹脂の流動終端側では溶融樹脂の先頭部分がキャビティMCの他辺Eに略平行になる。これにより、流動終端(他辺E)において外方側から内方側に溶融樹脂が回り込んで、空気を取り囲むことが防止される。よって、樹脂封止済基板Sbにボイドが発生し難く、成形精度を向上させることができる。
【0038】
所定時間経過後に(例えば、キャビティMCの流動終端(他辺E)側にあるチップ13の一辺まで溶融樹脂が到達した時点で)、可動ブロック16を上昇させて(流路制限機構Rを解除して)、側方流路15を開放する。そして、側方流路15の開放空間(キャビティMCのうち可動ブロック16が閉塞していた空間)への溶融樹脂の充填が開始される。このとき、基板11とチップ13との間の幅狭領域に流動する溶融樹脂から発生するガスを開放された空間に逃がすこともできる。その場合は、基板11とチップ13との間の幅狭領域にボイドが発生することを防止できる。なお、可動ブロック16を上昇させるタイミングは、溶融樹脂が基板11の中央領域のほぼ全体に供給された後であれば、任意に設定しても良い。
【0039】
溶融樹脂のキャビティMC内への充填が完了した後、可動プラテン34を下方に移動させることにより成形型Cの型開きを行い、樹脂封止済基板SbをキャビティMCから離型させる。この樹脂封止済基板Sbをアンローダ42により基板収容部46に収容する(収容工程、
図1も参照)。収容工程の前に、ゲートブレイク機構(不図示)により、カルブロックにある不要な硬化樹脂を除去しても良い。
【0040】
[別実施形態]
以下、上述した実施形態と同様の部材については、理解を容易にするため、同一の用語、符号を用いて説明する。
【0041】
<1>
図5に示すように、成形モジュール3は、離型フィルム供給機構38を有していても良い。離型フィルム供給機構38は、リールに巻かれた使用前の離型フィルムFを上型UMと下型LMとの間に送り出す送り出し機構38Aと、樹脂成形に使用された使用済みの離型フィルムFをリールに巻き取る巻き取り機構38Bとを有している。送り出し機構38Aと下型LMとの間にローラ38Aaが、下型LMと巻き取り機構38Bとの間にローラ38Baが設けられており、これらのローラ38Aa、38Baにより離型フィルムFを上型UMに押し付ける。制御部6は、送り出し機構38Aに設けられたモータ(不図示)のトルク(回転速度)と巻き取り機構38Bに設けられたモータ(不図示)のトルク(回転速度)とを制御する。これにより、離型フィルムFの進行方向に対して適度な張力を加えながら離型フィルムFを送り出し機構38Aから送り出すことができる。
【0042】
図6の成形型Cの概略断面図に示すように、本実施形態における成形型Cでは、上述したキャビティMCが形成されたキャビティブロック,可動ブロック16及びエアベント26に加えて、離型フィルムFを上型UMの型面に吸着させる吸着機構(不図示)と、減圧したキャビティMCの外に溶融樹脂の流出を防ぐベントシャッタ26Aと、を含んでいる。本実施形態では、吸着機構により離型フィルムFを上型UMの型面に吸着させることにより、上型UMにおいて可動ブロック16が移動するための隙間(可動ブロック16とキャビティブロックとの間)に溶融樹脂が流入することを防止できる。
【0043】
本実施形態における樹脂成形品の製造方法では、成形工程においてベントシャッタ26Aを下降させることにより、キャビティMCを閉塞する。ベントシャッタ26Aを下降させてキャビティMCを閉塞するタイミングは、ボイドの発生を防止するように、基板11のサイズや幅狭領域の幅、基板11に対する幅狭領域の割合などによって適宜設定することができ、例えば、溶融樹脂が少なくとも基板11の中央領域のほぼ全体に溶融樹脂が供給された直後でも良いし、ゲート23を通過してから所定時間経過した後でも良い。これにより、キャビティMCの内部を流動する溶融樹脂が外部に漏れ出すことを防止できる。
【0044】
<2>
図7に示すように、本実施形態における成形対象物は、基板11の中央領域にチップ13が実装されており、基板11の側方領域にコンデンサ、コイル、抵抗等の複数の個別受動部品14が実装されている。この場合、側方流路15を絞る複数の可動ブロック16A(制限部材の一例)が、個別受動部品14を回避する位置に設置されることとなる。この可動ブロック16Aは、基板11とチップ13との間の幅狭領域における溶融樹脂の流動速度と、個別受動部品14の流動抵抗や実装面積等を加味して、サイズや配置が決定される。つまり、シミュレーションにより、基板11とチップ13との間の幅狭領域と側方流路15とにおいて、溶融樹脂の流動速度が近付くように、可動ブロック16Aのサイズや配置を決定すれば良い。
【0045】
<3>
図8に示すように、本実施形態における成形対象物は、基板11の中央領域にチップ13が実装されており、チップ13の両側方全域にコンデンサ、コイル、抵抗等の複数の個別受動部品14が密集して実装されている。この場合、チップ13の側方領域に流路制限機構Rを配置できないため、側方流路15を絞る一対の可動ブロック16B(制限部材の一例)が、基板11の側方領域のうちチップ13よりもゲート23側に配置されている。その結果、ゲート23からチップ13までの間で、基板11の側方領域における溶融樹脂の流路が絞られ、チップ13が存在しないキャビティMCの外方側における溶融樹脂の流動速度と、基板11とチップ13との間の幅狭領域における溶融樹脂の流動速度とを、近付けることができる。本実施形態における可動ブロック16Bにおいても、基板11とチップ13との間の幅狭領域における溶融樹脂の流動速度と、個別受動部品14の流動抵抗や実装面積等を加味して、サイズや配置が決定される。
【0046】
<4>
図9では、
図8と同様に、成形対象物が、基板11の中央領域にチップ13が実装されており、チップ13の両側方全域に複数の個別受動部品14が密集して実装されたものであり、側方流路15を絞る一対の可動ブロック16C(制限部材の一例)が、基板11の側方領域のうちチップ13よりもゲート23側に配置されている。本実施形態における一対の可動ブロック16Cには、ゲート23からチップ13に向かうにつれて互いの間隔が小さくなるような傾斜面16Caが形成されている。この傾斜面16Caにより、ゲート23からチップ13までの間で、基板11の側方領域における溶融樹脂の一部が基板11の中央領域に誘導され、基板11とチップ13との間の幅狭領域における溶融樹脂の流量を増加させることができる。その結果、チップ13が存在しないキャビティMCの外方側における溶融樹脂の流動速度と、基板11とチップ13との間の幅狭領域における溶融樹脂の流動速度とを、近付けることができる。本実施形態における可動ブロック16Cにおいても、基板11とチップ13との間の幅狭領域における溶融樹脂の流動速度と、個別受動部品14の流動抵抗とを加味して、サイズや配置が決定される。なお、傾斜面16Caは、上述した実施形態における可動ブロック16,16Aに適用しても良い。
【0047】
<5>上述した成形工程において、流路制限機構Rの可動ブロック16,16A,16B,16Cの先端16aを基板11に密着させても良い。この場合でも、可動ブロック16とキャビティMCとの間のクリアランス(側方流路15の幅W1と可動ブロック16の幅W2との差部分)に溶融樹脂が流れ、可動ブロック16がない場合に比べて流路断面積が小さくなることから、側方流路15が絞られることとなる。また、流路制限機構Rの可動ブロック16の先端16aに凹凸部位を施しても良い。この場合、可動ブロック16を基板11に密着させたとき、凹凸部位により側方流路15を絞ることができる。これらの場合、先端16aや凹凸部位が基板11に当接するので、可動ブロック16と基板11との間の間隙を精緻に制御する必要がない。さらに、流路制限機構Rは、可動ブロック16に代えて、常に側方流路15を絞った状態で固定される固定ブロックで構成しても良い。このように、側方流路15を絞ることにより、側方流路15における溶融樹脂の流量を低下させる構成であれば、流路制限機構Rの構造は特に限定されない。
【0048】
<6>下型LMにもキャビティMCを設けて、成形対象物の両面を樹脂封止しても良い。
【0049】
<7>ポット21、キャビティブロック及びカルブロックは、上型UM又は下型LMの何れに設けても良い。また、ゲート23をキャビティMCの一辺S全域に亘って設けても良く、ゲート23の配置や数量は特に限定されない。
【0050】
<8>樹脂封止される成形対象物はフリップチップ基板に限定されず、リードフレームや半導体チップが実装された基板であればどのようなものであっても良い。また、複数の半導体チップが実装された基板を一括して樹脂封止するMAP(molded array packaging)を製造するために、上述した成形型Cや樹脂成形装置Dを用いても良い。
【0051】
<9>上述した実施形態では、フェイスアップのトランスファ方式で説明したが、フェイスダウンのトランスファ方式として、樹脂封止前基板Sa等の成形対象物を上型UMに固定し、キャビティMCを下方LMに設けても良い。
【0052】
<10>上述した実施形態では、チップ13の表面を露出成形する形態で説明したが、チップ13の表面を樹脂封止する形態であっても良い。この場合、ゲート23からエアベント26に向けてチップ13の上面を流れる溶融樹脂の流れを一時的に止める可動ブロック(流路制限機構R)が、チップ13の上方に備えられていても良い。
【0053】
[上記実施形態の概要]
以下、上述の実施形態において説明した成形型C、樹脂成形装置D及び樹脂成形品の製造方法の概要について説明する。
【0054】
(1)成形型Cの特徴構成は、基板11の中央領域にチップ13が配置された樹脂封止前基板Sa(成形対象物)を保持し、樹脂タブレットT(樹脂材料)が供給される平面視矩形状のキャビティMCを有する成形型本体Mを備え、成形型本体Mは、樹脂タブレットT(樹脂材料)が充填されるポット21と、キャビティMCの一辺Sに設けられ、キャビティMCに向けて溶融樹脂(樹脂材料)を供給するゲート23と、一辺Sと交わる両側辺の側でキャビティMCの内部を流動する溶融樹脂(樹脂材料)の流路のうち、チップ13が配置されていない側方流路15を絞る流路制限機構Rと、を含んでいる。
【0055】
本構成では、キャビティMCの一辺Sと交わる両側辺の側でキャビティMCの内部を流動する溶融樹脂の側方流路15を絞る流路制限機構Rを設けている。この流路制限機構Rは、側方流路15を絞ることにより、側方流路15における溶融樹脂の流量を低下させる。その結果、溶融樹脂の流動抵抗となるチップ13が基板11の中央領域に実装されている場合、チップ13が存在しないキャビティMCの外方側の溶融樹脂の流量を低下させることが可能となり、チップ13が存在しないキャビティMCの外方側における溶融樹脂の流動速度と、チップ13が存在するキャビティMCの内方側における溶融樹脂の流動速度とを近付けることができる。これにより、キャビティMCの内部を流動する溶融樹脂の流動終端(他辺E)において、キャビティMCの外方側とキャビティMCの内方側とにおける溶融樹脂の先頭部分が近付き、外方側から内方側に溶融樹脂が回り込んで空気を取り囲むことが防止される。よって、樹脂封止済基板Sb(樹脂成形品)にボイドが発生し難く、成形精度を向上させることができる。
【0056】
(2)流路制限機構Rは、側方流路15を絞った状態から側方流路15を全開にした状態に変化可能に構成されていても良い。
【0057】
本構成のように、流路制限機構Rが側方流路15を絞った状態から側方流路15を全開にした状態に変化可能に構成されていれば、流路制限機構Rが側方流路15を絞った状態の後、側方流路15を全開にした状態にすることが可能となり、溶融樹脂から発生するガスが開放された空間に出ていくこともあり得る。その場合、チップ存在領域にガスが混入してボイドが発生することを防止できる。
【0058】
(3)樹脂封止前基板Sa(成形対象物)は、基板11上で二次元アレイ状に配置された複数の突起状電極12にチップ13が電気的に接続されており、流路制限機構Rは、側方流路15に配置され、側面視で、基板11とチップ13との間の幅狭領域(間隙領域)がある高さに先端16aが位置することにより側方流路15を絞った状態にする可動ブロック16(制限部材)で構成されていれば良い。上記実施形態では、突起状電極12は格子状に配置されている例を示したが、二次元アレイ状に配置されていればよく、例えば、2本のアレイが配置された形態でも良い。
【0059】
基板11に突起状電極12を介してチップ13を有するフリップチップ基板の場合、基板11とチップ13との間の幅狭領域において溶融樹脂の流動速度が小さく、側方領域から幅狭領域に溶融樹脂が回り込んでボイドが発生し易い。本構成のように、流路制限機構Rが、側方流路15を絞った状態において、側面視で基板11とチップ13との間の幅狭領域に先端16aが位置する可動ブロック16で構成されていれば、側方流路15において溶融樹脂の流量を確実に低下させることができる。その結果、チップ13が存在しないキャビティMCの外方側における溶融樹脂の流動速度と、幅狭領域における溶融樹脂の流動速度とを、近付けることができる。これにより、フリップチップ基板であっても、キャビティMCの内部を流動する溶融樹脂の流動終端(他辺E)において、キャビティMCの外方側とキャビティMCの内方側とにおける溶融樹脂の先頭部分が近付き、外方側から内方側に溶融樹脂が回り込んで空気を取り囲むことが防止される。
【0060】
(4)樹脂成形装置Dの特徴構成は、上記(1)〜(3)の何れか一項に記載の成形型Cと、成形型Cを型締めする型締め機構35と、を備えた点にある。
【0061】
本構成では、上述した成形型Cを用いて型締めするため、成形精度を向上させることができる。
【0062】
(5)樹脂成形品の製造方法の特徴は、上記(4)の樹脂成形装置Dを用いた樹脂封止済基板Sb(樹脂成形品)の製造方法であって、成形型Cに樹脂封止前基板Sa(成形対象物)及び樹脂タブレットT(樹脂材料)を供給する供給工程と、樹脂タブレットT(樹脂材料)を加熱した状態で成形型Cを型締めする型締工程と、ゲート23からキャビティMCの内部に溶融樹脂(樹脂材料)を流動させることにより、樹脂封止前基板Sa(成形対象物)の樹脂成形を行う成形工程と、を含み、成形工程では、流路制限機構Rにより側方流路15を絞る点にある。
【0063】
本方法では、成形工程において、流路制限機構Rにより、側方流路15における溶融樹脂の流量を低下させるので、チップ13が存在しないキャビティMCの外方側における溶融樹脂の流動速度と、チップ13が存在するキャビティMCの内方側における溶融樹脂の流動速度とを近付けることができる。これにより、キャビティMCにおける溶融樹脂の流動終端において、キャビティMCの外方側とキャビティMCの内方側とにおける溶融樹脂の先頭部分が近付き、外方側から内方側に溶融樹脂が回り込んで空気を取り囲むことが防止される。よって、樹脂封止済基板Sb(樹脂成形品)にボイドが発生し難く、成形精度を向上させることができる。
【0064】
(6)成形工程では、溶融樹脂(樹脂材料)が基板11の中央領域のほぼ全体に充填された後、流路制限機構Rを解除して側方流路15を開放させても良い。
【0065】
なお、上述した実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。例えば、上述した実施形態(
図4、
図6など)では、チップ13の上面を上型UMの型面に接して樹脂封止してチップ13の上面を露出させた樹脂封止済基板Sbが得られるが、チップ13の上面も樹脂封止するようにしても良い。
【解決手段】基板11の中央領域にチップ13が配置された成形対象物Saを保持し、樹脂材料が供給される平面視矩形状のキャビティMCを有する成形型本体を備え、成形型本体は、樹脂材料が充填されるポットと、キャビティMCの一辺Sに設けられ、キャビティMCに向けて樹脂材料を供給するゲート23と、一辺Sと交わる両側辺の側でキャビティMCの内部を流動する樹脂材料の流路のうち、チップ13が配置されていない側方流路15を絞る流路制限機構Rと、を含んでいる。