特許第6845932号(P6845932)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6845932
(24)【登録日】2021年3月2日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20210315BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20210315BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20210315BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20210315BHJP
【FI】
   H01M4/04 A
   H01M4/139
   H01M4/02 Z
   H01M4/13
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-528350(P2019-528350)
(86)(22)【出願日】2018年3月8日
(86)【国際出願番号】JP2018008886
(87)【国際公開番号】WO2019008827
(87)【国際公開日】20190110
【審査請求日】2019年12月12日
(31)【優先権主張番号】特願2017-130559(P2017-130559)
(32)【優先日】2017年7月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505083999
【氏名又は名称】ビークルエナジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸城 博行
(72)【発明者】
【氏名】木舩 素成
(72)【発明者】
【氏名】有島 康夫
【審査官】 高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/057324(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/040562(WO,A1)
【文献】 特開2015−135747(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/066768(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/081594(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極箔の上に活物質合剤層が形成され、該活物質合剤層の上に絶縁層が形成された電極を有する二次電池の製造方法であって、
前記活物質合剤層を形成する活物質合剤を含む活物質合剤スラリと、前記絶縁層を形成する絶縁性粒子を含む絶縁層用分散液とを前記電極箔の上に同時に塗布して前記活物質合剤層と前記絶縁層とを形成する工程を含み、
前記絶縁性粒子は、板状を有し、前記絶縁性粒子の厚みをd、長辺長さをaとした場合に、該絶縁性粒子のアスペクト比a/dは2.0以上5.0以下であり、
前記活物質合剤を構成する合剤粒子の粒子径は、前記絶縁性粒子の長辺長さよりも大きいことを特徴とする二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記絶縁性粒子は、セラミックス粒子であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池の製造方法。
【請求項3】
前記セラミックス粒子は、ベーマイトであることを特徴とする請求項2に記載の二次電池の製造方法。
【請求項4】
前記セラミックス粒子は、長辺長さが5μm以上であることを特徴とする請求項2に記載の二次電池の製造方法。
【請求項5】
前記セラミックス粒子のアスペクト比a/dは、3.0以上4.0以下であることを特徴とする請求項2に記載の二次電池の製造方法。
【請求項6】
前記活物質合剤層において互いに隣り合う前記合剤粒子の間の隙間は0μmよりも大きく5μmよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の二次電池の製造方法。
【請求項7】
活物質合剤を含む活物質合剤スラリと絶縁性粒子を含む絶縁層用分散液とを電極箔の上に同時に塗布して活物質合剤層と絶縁層とが形成された電極を有する二次電池であって、 前記絶縁性粒子は、板状を有し、前記絶縁性粒子の厚みをd、長辺長さをaとした場合に、該絶縁性粒子のアスペクト比a/dは2.0以上5.0以下であり、
前記活物質合剤を構成する合剤粒子の粒子径は、前記絶縁性粒子の長辺長さよりも大きいことを特徴とする二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の製造方法に関し、例えば電気自動車やハイブリッド型電気自動車等の動力用電源に用いる二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド型の電気自動車や純粋な電気自動車等の動力源として大容量(Wh)の二次電池が開発されており、その中でもエネルギー密度(Wh/kg)の高い非水溶液系のリチウムイオン二次電池が注目されている。また、排気ガスを抑制し環境性能を重視する観点からも、自動車には電動化による走行が指向されており、大容量の電池が求められている。また、電気モーターを駆動する電源として用いられる電池には大電流を出力できるような特性が求められている。
【0003】
リチウムイオン二次電池の基本構成として正極電極と負極電極とそれらを電気的に絶縁するためのセパレータから構成されている。正極、負極電極が備えるそれぞれの帯状の金属箔の表面には、リチウムイオンを挿入・脱離可能な活物質合剤が塗布されて合剤層が形成されている。これらの正極電極と負極電極は、互いに重ね合わされた状態で捲回されて電極群として成形される。そして、缶あるいはラミネート外装体に入れられて電解液に含浸された状態で封入される。
【0004】
正極電極と負極電極との間には、ポリエチレンやポリプロピレンからなる多孔性フィルムセパレータが介在されて絶縁されている。近年においては、内部短絡の防止や耐熱性能の向上を図るため、セパレータの表面にセラミックスから成る無機質層を設けたり、電極の表面にセラミックス層を設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-285605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
安全性を担保するために、負極合剤層の上にセラミックス層を形成することが提案されている。しかしながら、従来の負極合剤層とセラミックス層は、スラリ状の負極合剤を塗工し、乾燥により溶媒を蒸発させて負極合剤層を形成し、その後で、負極合剤層の上にセラミックス層を形成する、いわゆる逐次形成が行われていた。負極合剤層には、溶媒の蒸発により互いに隣り合う負極合剤の合剤粒子の間に隙間が形成され、この隙間が負極合剤層の厚さ方向に連続してイオン移動経路となる。しかし、負極合剤層の上にセラミックス層を形成することによって、負極合剤の合剤粒子の間の隙間にセラミックス粒子が進入し、イオン移動経路の閉塞が発生する課題があった。特許文献1には、電極表面上に絶縁層を設けて電極間の短絡の保護する点について記載されている。一方で、電極製造工程によって生じる電極合剤層と絶縁層の隙間についてまでは記載が無い。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、イオン移動経路の閉塞を生じることなく絶縁層を効率よく形成することができ、電極に形成される活物質合剤層の性能を阻害することなく、より絶縁信頼性を向上させた二次電池の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に関する二次電池の製造方法は、電極箔の上に活物質合剤層が形成され、該活物質合剤層の上に絶縁層が形成された電極を有する二次電池の製造方法であって、前記活物質合剤層を形成する活物質合剤を含む活物質合剤スラリと、前記絶縁層を形成する絶縁性粒子を含む絶縁層用分散液とを前記電極箔の上に同時に塗布して前記活物質合剤層と前記絶縁層とを形成する工程を含み、前記絶縁性粒子は、板状を有し、前記絶縁性粒子の厚みをd、長辺長さをaとした場合に、該絶縁性粒子のアスペクト比a/dは2.0以上5.0以下であり、前記活物質合剤を構成する合剤粒子の粒子径は、前記絶縁性粒子の長辺長さよりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電極反応に寄与する溶媒和リチウムイオンのイオン移動経路を確保でき、より電極性能としての出力特性を向上させ、かつ絶縁信頼性を向上させた二次電池の製造方法を提供することが可能となる。
【0010】
本発明に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態1に係る角形二次電池の外観斜視図。
図2図1に示す角形二次電池の分解斜視図。
図3図2に示す角形二次電池の電極捲回群の分解斜視図。
図4】実施形態1における電極断面摸式図および電極表面外観図。
図5】電極の断面を拡大して模式的に示す図。
図6】実施形態1におけるセラミックス粒子の模式形状図。
図7】塗工装置の一例を示す模式図。
図8】二次電池の負極電極を製造する工程を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の二次電池の実施形態について説明する。
【0013】
[実施形態1]
図1は、本実施形態に係る角形二次電池100の外観斜視図である。
電池缶11は、一対の幅広面11b、一対の幅狭面11c、及び底面11dを備える。上面部には開口部11aを有しており、電極群40を収納する。電池缶11の上面部は電池蓋12により覆われている。また、この電池蓋12には負極外部端子21、正極外部端子22、注液口14を塞ぐ注液栓15、及びガス排出弁13が設けられている。
【0014】
図2は、図1に示す角形二次電池の分解斜視図である。
角形二次電池100は、正負の電極を捲回した扁平な電極群40と、電極群40を収容する扁平角形の電池缶11と、電池缶11の開口部11aを封止する電池蓋12と、電池蓋12に固定されて電池缶11に収容される絶縁部材3とを備える。
【0015】
負極外部端子21は、絶縁部材2を介して電池蓋12上に配置され、電池缶11の内部で負極集電板31と接続される。負極集電板31は電極群40の負極集電箔411と溶接されて接続される。正極外部端子22側も同様であり、正極外部端子22は、絶縁部材2を介して電池蓋12上に配置され、電池缶11の内部で正極集電板32と接続される。正極集電板32は電極群40の正極集電箔421と溶接されて接続される。電池蓋12には、負極外部端子21と、正極外部端子22と、負極集電板31と、正極集電板32が一体に固定されており、蓋組立体としてサブアッセンブリ化されている。
【0016】
電極群40は、サブアッセンブリ化された蓋組立体に取り付けられ、袋状に形成された絶縁シート4に収容された状態で電池缶11に収容される。このような構成を取ることによって集電板や電極群が電池缶11に短絡しない構造となっている。なお、絶縁シート4は、側面部4c、底面部4b、開口部4aから構成されている。
【0017】
図3は、図2に示す電極群40の一部を展開した捲回構造を示す分解斜視図である。
負極集電箔411に負極合剤層412が形成されて成る負極電極41と、正極集電箔421に正極合剤層422が形成されて成る正極電極42は、セパレータ43、44を介して対向した配置を保ちながら軸Aの周りに捲回されて電極が積層されており、電極群40を構成している。
【0018】
電極群40は、セパレータ43、44を介在させて積層した正負の電極41、42を、捲回軸Aに平行な軸芯の周りに捲回して扁平形状に成形した構成を有する。セパレータ43、44は、例えば、多孔質のポリエチレン樹脂によって製作され、負極電極41と正極電極42との間を絶縁すると共に、最外周に捲回された負極電極41の外側にもセパレータ43、44が捲回されている。
【0019】
負極電極41は、負極集電箔411の表面に負極合剤層412が設けられており、図3では明示されていないが、負極合剤層412の表面を被覆するように絶縁層413が設けられている。また、正極電極42は、集電箔421の表面に正極合剤層422が設けられている。
【0020】
図4は負極電極41の裁断前の構成を説明する模式図であり、図4(a)は断面図、図4(b)は平面図である。
【0021】
負極電極41は、図4(a)に示すように、負極集電箔411の両面に負極合剤層412が形成されており、さらに各負極合剤層412の表面をそれぞれ覆うように絶縁層413が形成されている。
【0022】
図4(b)の平面図では、負極合剤層412を示すために、絶縁層413で覆われていない部分を表示しているが、実際に使用するものは、負極合剤層412が設けられた部分は全面が絶縁層413で被覆されるように形成される。図4(b)に示す負極電極41は、裁断前の状態であり、幅方向中央CLで左右2つに分かれるように裁断され、2枚の負極電極41とされる。
【0023】
図5は、負極電極の断面を拡大して模式的に示す図である。図5では、負極電極の一方面側の構成のみを示し、他方面側の構成は省略している。
【0024】
負極電極41は、図5に示すように、負極集電箔(電極箔)411の上に負極合剤層412が形成され、負極合剤層412の上に絶縁層413が形成されている。負極合剤層412は、負極合剤粒子412aを有し、絶縁層413は、セラミックス粒子413aを有している。
【0025】
負極合剤層412と絶縁層413は、負極合剤スラリと絶縁層用分散液とを負極集電箔411の上に同時に塗布することにより形成される。ここで「同時に塗布」とは、負極合剤スラリと絶縁層用分散液とを予め層状に重ね合わせた状態とし、その重ね合わせた状態のまま負極集電箔411の上に塗布する場合であり、また、負極集電箔411の上に先に負極合剤スラリを塗布し、負極合剤スラリの表面が乾燥する前のウエットな状態で負極合剤スラリの上に絶縁層用分散液を塗布する場合も含まれる。
【0026】
負極合剤スラリ(活物質合剤スラリ)は、負極活物質合剤と溶媒を含み、絶縁層用分散液は、絶縁性粒子と溶媒を含む。負極合剤スラリは、例えば、負極活物質として黒鉛質炭素粉末100重量部に対して、増粘調整剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液を添加、混合後に、結着剤として1重量部のSBRを添加し、混練後に粘度調整することにより作製される。絶縁層用分散液は、セラミックス粒子413aとしてベーマイトを選択し、樹脂系またはゴム系の一方または両方の結着剤を含有する溶媒に分散させることによって作製される。
【0027】
負極合剤スラリと絶縁層用分散液は、負極集電箔411の上に同時に塗布されて、その後で同時に乾燥される。したがって、負極合剤層412と絶縁層413には、それぞれの溶媒の蒸発により、互いに隣り合う負極合剤の合剤粒子の間、及び、互いに隣り合う絶縁性粒子の間に隙間(空孔)が形成され、これらの隙間が負極合剤層412及び絶縁層413の厚さ方向に連続してイオン移動経路414が形成される。本実施形態では、負極合剤の合剤粒子の間の隙間は、0μmよりも大きく5μmよりも小さい。
【0028】
図6は、実施形態1におけるセラミックス粒子の模式形状図である。
絶縁層413は、絶縁性粒子であるセラミックス粒子413aを含む。セラミックス粒子413aは、図6に示すように板状を有しており、厚みをd、長辺長さをaとした場合に、アスペクト比=a/dは2.0以上5.0以下が好ましく、さらには3.0以上4.0以下である板状粒子を選択的に使用するのがより好ましい。セラミックス粒子413aは、長辺長さaが負極合剤の合剤粒子412aの粒子径以下となる大きさを有している。すなわち、負極合剤を構成する合剤粒子412aの粒子径は、絶縁性粒子の長辺長さaよりも大きい。本実施形態では、セラミックス粒子413aは、長辺長さaの長さが5μm以上である。
【0029】
絶縁層413を形成するにあたり、構成する絶縁性粒子には多孔質の無機粒子を用いることが好ましく、より薄い膜厚で被覆性の良好な絶縁層413を設けるには角張った菱面を有する板状粒子を用いることがより好ましい。
【0030】
図7は、塗工装置の一例を示す模式図である。
塗工装置70は、負極集電箔411が捲回された集電箔ロール73と、集電箔ロール73から引き出された負極集電箔411が巻き掛けられるバックアップロール74と、バックアップロール74に巻き掛けられた負極集電箔411の上に負極合剤スラリを塗布するダイ71と、負極合剤スラリの上に絶縁層用分散液を塗布するダイ72とを有している。
【0031】
そして、塗工装置70は、負極集電箔411の上に塗布された負極合剤スラリと絶縁層用分散液を乾燥させる乾燥機79と、乾燥されて形成された負極電極41を乾燥機79から取り出すロール80と、ロール80により取り出された負極電極41を捲回する巻き取りローラ81を有している。
【0032】
ダイ71は、供給ポンプ76を介して負極合剤スラリを貯留するタンク75と接続され、ダイ72は、供給ポンプ78を介して絶縁層用分散液を貯留するタンク77と接続されている。負極合剤スラリは、ダイ71より供給され、絶縁層用分散液はダイ72より供給されて、集電箔ロール73から搬送されてバックアップロール74にて塗工面として配置された負極集電箔411の一方面に塗布される。
【0033】
ダイ71とダイ72は、負極集電箔411の搬送方向に互いに所定距離だけ離れた位置に配置されている。本実施形態では、ダイ71とダイ72は、バックアップロール74に対向する位置でかつ、バックアップロール74の回転方向前側と後ろ側に所定の間隔を開けて離れた位置に配置されている。
【0034】
ダイ71は、負極集電箔411の上に負極合剤スラリを塗布し、ダイ72は、負極合剤スラリの表面が乾燥する前のウエットな状態で負極合剤スラリの上に絶縁層用分散液を塗布する。負極合剤層412の表面が乾燥する時間は予め決まっており、例えば塗布後30秒が経過するまでの間は、ウエットな状態を保っている。ダイ72は、かかる秒数が経過する前に絶縁層用分散液を塗布可能な位置に配置されている。
【0035】
本実施形態の塗工装置70では、負極合剤スラリの表面がウエットな状態を保ったまま、乾燥機79に入る構成となっている。したがって、ダイ72は、ダイ71から乾燥機79までの間の位置に配置されていればよい。
【0036】
負極合剤スラリは、タンク75より、供給ポンプ76によって適切な厚みになるように制御されてダイ71に送られる。また、絶縁層用分散液は、タンク77より、供給ポンプ78によって適切な厚みになるように制御されてダイ72に送られる。絶縁層用分散液は、負極合剤スラリよりも粘度が低く設定されており、負極合剤層412の上に塗布した際に、迅速かつ円滑に広がり、負極合剤層412の表面を全面に亘って均一に被覆する。
【0037】
液状で構成された負極合剤層412と絶縁層413は、負極集電箔411に塗布された状態で乾燥機79内に搬入され、乾燥機79内を搬送されながら、適切な温度と乾燥風を与えられて溶媒成分が蒸発され、同時に乾燥される。したがって、隣り合う負極合剤の間、及び、隣り合う絶縁粒子の間に隙間が形成され、負極集電箔411から絶縁層413の表面まで継続した空孔構造となり、イオン移動経路414が形成される。
【0038】
負極合剤層412と絶縁層413が乾燥された負極電極41は、乾燥した状態でローラ81に巻きとられる。そして、同様の処理により、集電箔の他方面にも負極合剤スラリと絶縁層用分散液が塗布され、負極合剤層412と絶縁層413が形成される。
【0039】
なお、図7に示す塗工装置70では、ダイ71とダイ72を互いに離れた位置に配置した構成を有しているが、これに限定されるものではなく、負極合剤スラリの表面が乾燥する前のウエットな状態で負極合剤スラリの上に絶縁層用分散液を塗布することができればよい。例えば、負極合剤スラリと絶縁層用分散液を予め層状に重ね合わせた状態で一つのダイから吐出させて、その重ね合わせた状態のまま負極集電箔411の上に同時に塗布する構成としても良い。
【0040】
図8は、負極電極を作成する方法を示すフローチャートである。
負極電極41を作成する方法は、負極合剤スラリと絶縁層用分散液とを負極集電箔411の上に同時に塗布する塗布工程(ステップS101)と、負極集電箔411の上に塗布されている負極合剤スラリと、負極合剤スラリの上に塗布されている絶縁層用分散液とを同時に乾燥させる乾燥工程(ステップS102)と、乾燥後に一対のロールプレスの間に挟んでプレスするプレス工程(ステップS103)と、適切な大きさに裁断する裁断工程(ステップS104)を含む。
【0041】
次に、角形二次電池の具体的な製造方法の一例について説明する。
負極電極は、例えば、以下のように作成することができる。まず、負極活物質として黒鉛質炭素粉末100重量部に対して、増粘調整剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液を添加、混合後に、結着剤として1重量部のSBRを添加し、混練後に粘度調整して負極合剤スラリを作製する。次に、この負極合剤スラリを、例えば、厚さ8μmの銅箔(負極集電箔)の両面に箔露出部を残して塗布することで負極合剤層412を形成する。
【0042】
そして、別途作製した絶縁層用分散液を、負極合剤層412の液状表面に塗布して絶縁層413を形成する。これにより、負極合剤層412と絶縁層413は、ウエットな状態で塗布形成される。その後、乾燥、プレス、裁断の各工程を経て、負極合剤層412と絶縁層413の二層を有する負極電極を作製することができる。例えば、銅箔を含まない負極活物質塗布部(負極合剤層+絶縁層)の厚さ(表裏両面の合計)が74μmの負極電極41を得ることができる。
【0043】
正極合剤層422は、例えば、以下のように製作することができる。まず、正極活物質として層状ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(化学式Li(NixCoyMn1-x-y)O)100重量部に対し、導電材として合計7重量部の鱗片状黒鉛やアセチレンブラックと結着剤として3重量部のポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFという)とを添加し、これに分散溶媒としてN−メチルピロリドン(以下、NMPという)を添加し、混練して正極合剤スラリを製作する。次に、この正極合剤スラリを、例えば、厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に箔露出部を残して塗布することで正極合剤層422を形成する。その後、乾燥、プレス、裁断の各工程を経て、例えば、アルミニウム箔を含まない正極活物質塗布部の厚さ(表裏両面の合計)が70μmの正極電極42を得ることができる。なお、正極合剤層422の表面にも、負極電極41と同様に絶縁層を形成してもよい。
【0044】
そして、セパレータ43、44を介して正極電極42と負極電極41を重ねて捲回し、捲回電極群40を製作する。具体的には、図示しない軸芯にセパレータ43、44の各先端部を溶着させ、セパレータ43、44と、正極電極42、負極電極41とを交互に重ねて捲回する。このとき、正極電極42の巻始め側端部が負極電極41の巻始め側端部よりも捲回後の捲回電極群40の内側に位置するように、正極電極42の巻始め側端部を負極電極41の巻始め側端部よりも軸芯側に配置して捲回する。
【0045】
図2に示すように捲回電極群40は袋状の絶縁シート4に収容され、電池蓋12が電池缶11に接合され、電池蓋12を電池缶11の上部開口に封止溶接し、注液口14から電池缶11内に非水電解液を注入し、その後、注液口14に注液栓15を封止溶接することによって角形二次電池100が製作される。注液口14から注入された非水電解液は、電池缶11に収納されている捲回電極群40へ浸潤することになる。非水電解液としては、例えばエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとを体積比で1:2の割合で混合した混合溶液中へ六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1モル/リットルの濃度で溶解したものを用いることができる。
【0046】
本実施形態の二次電池の製造方法は、負極合剤スラリと絶縁層用分散液とを負極集電箔411の上に同時に塗布して負極集電箔411の上に負極合剤層412を形成し、負極合剤層412の上に絶縁層413を形成する工程を含む。そして、セラミックス粒子413aは、板状を有し、そのアスペクト比a/dは2.0以上5.0以下であり、負極合剤を構成する合剤粒子412aの粒子径は、セラミックス粒子413aの長辺長さよりも大きいことを特徴としている。
【0047】
従来は、負極合剤層を形成して乾燥させてからセラミックス粒子を塗布していたので、負極合剤層の合剤粒子の間の隙間にセラミックス粒子が進入しやすく、負極合剤層に入り込んだセラミックス粒子が、イオン移動経路の閉塞を生じる恐れがあった。
【0048】
本実施形態によれば、負極合剤スラリと絶縁層用分散液とを負極集電箔411の上に同時に塗布して活物質合剤層412と絶縁層413とを形成する。このように、液状の負極合剤スラリの上に、絶縁層用分散液を塗布することにより、絶縁層413を負極合剤層412の表面に浮上して作製することができる。そして、負極合剤スラリと絶縁層用分散液とを同時に乾燥させることができるので、それぞれの溶媒の蒸発により、負極合剤層412と絶縁層413には、互いに隣り合う負極合剤の合剤粒子の間、及び、互いに隣り合う絶縁性粒子の間に隙間を形成し、これらの隙間により負極合剤層412及び絶縁層413の厚さ方向に連続するイオン移動経路414を形成することができる。したがって、電極反応に寄与するリチウムイオンのイオン移動経路を確保できる。
【0049】
そして、セラミックス粒子413aは、板状を有し、アスペクト比a/dが2.0以上5.0以下であり、負極合剤の合剤粒子412aの粒子径は、セラミックス粒子413aの長辺長さよりも大きい。したがって、負極合剤の合剤粒子412aの間の隙間にセラミックス粒子413aが進入するのを抑制し、イオン移動経路414を確保することができる。
【0050】
また、本実施形態では、セラミックス粒子413aの長辺長さを5μm以上とし、負極合剤層412において互いに隣り合う負極合剤の合剤粒子412aの間の隙間を0μmよりも大きく5μmよりも小さくしている。したがって、負極合剤の合剤粒子412aの間の隙間にセラミックス粒子413aが進入するのを確実に抑制できる。このような構造とすることによって、合剤層と絶縁層に従来よりも多くの継続した空孔構造を有する電極構造を作製することができる。そのため、負極電極の抵抗減少、即ち出力が向上する。また、本実施形態の製造方法により製造された二次電池は、従来よりも薄い厚みで絶縁層の効果を確保することができ、絶縁信頼性が向上する。
【0051】
なお、従来は、負極合剤層及び絶縁層の厚さを薄くすることを目的として、負極合剤層を乾燥させた後にプレスし、プレス後の負極合剤層の上に絶縁層を塗布して形成する逐次形成を行っていた。したがって、従来の負極合剤層と絶縁層の界面は平滑面となっている。一方、本発明では、負極合剤スラリと絶縁層用分散液を同時に塗布して負極合剤層と絶縁層を形成する同時形成を行っている。したがって、本発明の負極合剤層と絶縁層の界面は、従来と比較して凹凸のあるものとなっており、界面を観察することによって、負極合剤層と絶縁層の形成方法が、従来の逐次形成であるか、本発明の同時形成であるかを見分けることができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、前記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0053】
11 電池缶
12 電池蓋
14 注液口
15 注液栓
21 負極外部端子
22 正極外部端子
31 負極集電板
32 正極集電板
40 捲回電極群
41 負極電極
411 負極集電箔
412 負極合剤層
413 絶縁層
42 正極電極
421 正極集電箔
422 正極合剤層
43、44 セパレータ
70 塗工装置
71、72 ダイ
100 角形二次電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8