特許第6845983号(P6845983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6845983
(24)【登録日】2021年3月3日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】スリットランプ
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/15 20060101AFI20210315BHJP
   A61B 3/135 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   A61B3/15
   A61B3/135
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-192186(P2016-192186)
(22)【出願日】2016年9月29日
(65)【公開番号】特開2018-51071(P2018-51071A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】馬場 大輔
(72)【発明者】
【氏名】名倉 章弘
(72)【発明者】
【氏名】清水 一成
(72)【発明者】
【氏名】中村 健二
【審査官】 山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−220029(JP,A)
【文献】 特開2009−056247(JP,A)
【文献】 特開2002−136480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/15
A61B 3/135
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者眼を検査するための装置本体が搭載される可動部と、
前記可動部を移動させる駆動部を備える移動機構と、
前記可動部を被検者眼に対して可動させるために検者によって操作される操作部材と、
前記操作部材の操作信号として操作パラメータを検出する操作検出手段と、
前記操作検出手段からの操作パラメータを前記駆動部の駆動信号に変換すると共に前記駆動部を駆動させる駆動パラメータを制御することによって、前記駆動部の駆動制御を行う駆動制御手段と、
前記操作パラメータと前記駆動パラメータとの対応関係がそれぞれ設定された駆動制御モードを複数有し、前記駆動制御モードの一つを予め設定するための駆動設定手段と、
を備え、
前記駆動制御手段は、前記駆動設定手段によって予め設定された一つの駆動制御モードに基づいて、前記駆動部の駆動制御を行うことを特徴とするスリットランプであって、
各駆動制御モードでの前記操作パラメータと前記駆動パラメータとの対応関係は、操作パラメータが所定の閾値を超えた場合に関して、各駆動制御モードでの対応関係が異なることを特徴とするスリットランプ。
【請求項2】
被検者眼を検査するための装置本体が搭載される可動部と、
前記可動部を移動させる駆動部を備える移動機構と、
前記可動部を被検者眼に対して可動させるために検者によって操作される操作部材と、
前記操作部材の操作信号として操作パラメータを検出する操作検出手段と、
前記操作検出手段からの操作パラメータを前記駆動部の駆動信号に変換すると共に前記駆動部を駆動させる駆動パラメータを制御することによって、前記駆動部の駆動制御を行う駆動制御手段と、
前記操作パラメータと前記駆動パラメータとの対応関係がそれぞれ設定された駆動制御モードを複数有し、前記駆動制御モードの一つを予め設定するための駆動設定手段と、
を備え、
前記駆動制御手段は、前記駆動設定手段によって予め設定された一つの駆動制御モードに基づいて、前記駆動部の駆動制御を行うことを特徴とするスリットランプであって、
各駆動制御モードでの前記操作パラメータと前記駆動パラメータとの対応関係は、操作パラメータが所定の閾値を下回る場合に関して、各駆動制御モードでの対応関係が異なることを特徴とするスリットランプ。
【請求項3】
前記操作部材は、前記可動部を上下動させるために検者によって360度以上回転可能に設けられた回転部を備え、
前記操作検出手段は、前記回転部に対する操作パラメータを検出することを特徴とする請求項1〜2のいずれかのスリットランプ。
【請求項4】
前記操作検出手段は、前記回転部に対する操作パラメータとして、前記回転部の回転量と回転速度の少なくともいずれかを検出し、
前記駆動制御手段は、前記駆動パラメータとして、前記駆動部の駆動量又は駆動速度を制御することを特徴とする請求項のいずれかのスリットランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検者眼を検査するためのスリットランプに関する。
【背景技術】
【0002】
眼科装置では、被検者眼と装置との位置合わせのために、装置本体或いは顎受が移動される。例えば、スリットランプと呼ばれる細隙灯顕微鏡では、メカニカルな上下動機構が一般的であった(例えば、特許文献1参照)。また、近年では、電動の移動機構が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−83429号公報
【特許文献2】特開2014−12034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のスリットランプの場合、操作部材が操作されたときの装置本体の移動速度又は移動量は固定されていたので、検者の個人差に応じた操作が困難であった。特に、スリットランプは、眼に対する装置本体の微妙な調整が要求され、モータ駆動においても、メカニカルな操作感も要求される。
【0005】
本開示は、上記問題点を鑑み、検者に応じた操作を容易に行うことができるスリットランプを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は、以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
(1)
被検者眼を検査するための装置本体が搭載される可動部と、
前記可動部を移動させる駆動部を備える移動機構と、
前記可動部を被検者眼に対して可動させるために検者によって操作される操作部材と、
前記操作部材の操作信号として操作パラメータを検出する操作検出手段と、
前記操作検出手段からの操作パラメータを前記駆動部の駆動信号に変換すると共に前記駆動部を駆動させる駆動パラメータを制御することによって、前記駆動部の駆動制御を行う駆動制御手段と、
前記操作パラメータと前記駆動パラメータとの対応関係がそれぞれ設定された駆動制御モードを複数有し、前記駆動制御モードの一つを予め設定するための駆動設定手段と、
を備え、
前記駆動制御手段は、前記駆動設定手段によって予め設定された一つの駆動制御モードに基づいて、前記駆動部の駆動制御を行うことを特徴とするスリットランプであって、
各駆動制御モードでの前記操作パラメータと前記駆動パラメータとの対応関係は、操作パラメータが所定の閾値を超えた場合に関して、各駆動制御モードでの対応関係が異なることを特徴とする。
(2)
被検者眼を検査するための装置本体が搭載される可動部と、
前記可動部を移動させる駆動部を備える移動機構と、
前記可動部を被検者眼に対して可動させるために検者によって操作される操作部材と、
前記操作部材の操作信号として操作パラメータを検出する操作検出手段と、
前記操作検出手段からの操作パラメータを前記駆動部の駆動信号に変換すると共に前記駆動部を駆動させる駆動パラメータを制御することによって、前記駆動部の駆動制御を行う駆動制御手段と、
前記操作パラメータと前記駆動パラメータとの対応関係がそれぞれ設定された駆動制御モードを複数有し、前記駆動制御モードの一つを予め設定するための駆動設定手段と、
を備え、
前記駆動制御手段は、前記駆動設定手段によって予め設定された一つの駆動制御モードに基づいて、前記駆動部の駆動制御を行うことを特徴とするスリットランプであって、
各駆動制御モードでの前記操作パラメータと前記駆動パラメータとの対応関係は、操作パラメータが所定の閾値を下回る場合に関して、各駆動制御モードでの対応関係が異なることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<概要>
以下、本実施形態に係る眼科装置の概要について説明する。本実施形態に係る眼科装置は、装置本体と被検者眼との相対位置を調整するために可動部を可動させる駆動部を備える移動機構と、駆動部の駆動を制御する制御部と、を備えてもよい。
【0009】
装置本体は、例えば、被検者眼を検査するための光学系を備えてもよく、より詳細には、被検者眼を観察又は撮影するための光学系を備えてもよい。
【0010】
可動部は、例えば、装置本体が搭載される可動部であってもよい。つまり、移動機構は、眼に対して装置本体を移動させるための駆動部を備える移動機構であってもよい。
この場合、装置本体を移動させるための移動機構としては、例えば、中空モータを用いた機構が用いられてもよい。もちろん、これに限定されず、駆動部を備える周知の移動機構が用いられてもよい。
【0011】
可動部は、例えば、顎受が搭載される可動部であってもよい。つまり、移動機構は、装置本体に対して眼を移動させるための駆動部を備える移動機構であってもよい。この場合、顎受を移動させるための移動機構としては、駆動部を備える周知の移動機構が用いられてもよい。この場合、顎受移動機構に限定されず、額当て等を移動させる構成であってもよい。
【0012】
制御部は、可動部を被検者眼に対して可動させるために検者によって操作される操作部材からの操作信号に応じて、駆動部を駆動させてもよい。操作部材としては、例えば、ジョイスティック、トラックボール、タッチパネル、スイッチ機構等のユーザーインターフェースであってもよい。
【0013】
操作部材としては、検者による操作を検出するセンサを備えてもよい。制御部は、センサからの操作信号に応じて、駆動部を駆動させてもよい。センサとしては、例えば、ジョイスティックの回転ノブの回転操作を検出するためのセンサ、電動ジョイスティックの傾倒操作を検出するためのセンサ、トラックボールの回転操作を検出するためのセンサ、押圧センサであってもよい。移動機構は、モータを備えてもよい。
【0014】
移動機構は、モータ駆動によって、上下左右前後の少なくともいずれかに可動部を移動させる移動機構であってもよい。
【0015】
より詳細には、本実施形態に係る眼科装置は、可動部を上下動させる駆動部を備える上下動機構と、可動部を上下動させるために検者によって操作される上下操作部材と、上下操作部材の操作信号を検出する検出部と、を備えてもよい。この場合、制御部は、検出部で検出された操作信号を、可動部を上下動させるための駆動信号に変換し、駆動信号に基づき駆動部を駆動させてもよい。
【0016】
本実施形態に係る眼科装置としては、被検者眼を観察又は撮影するための光学系を備えてもよく、例えば、スリットランプ、であってもよい。また、眼科装置は、例えば、眼底撮影装置(例えば、眼底カメラ、光干渉断層計)であってもよい。もちろん、これに限定されず、被検者眼を検査するための光学系を備える装置であれば、本実施形態の適用は可能である。
【0017】
<初期化動作>
本実施形態において、初期化動作を作動させるか否かを検者が予め設定するための初期化設定部が設けられてもよい。初期化設定部は、眼科装置の制御部(プロセッサ)であってもよく、駆動部の駆動を制御する制御部と同一であってもよいし、他の制御部であってもよい。
【0018】
初期化動作を作動させるように予め設定された場合、初期化動作として、例えば、制御部は、駆動部の駆動を制御し可動部を初期位置に移動させる。
【0019】
一方、初期化動作を作動させないように予め設定された場合、例えば、制御部は、初期化動作を作動させない。そして、制御部は、可動部を移動させるために設けられた操作部材からの操作信号を待機してもよい。操作部材からの操作信号としては、例えば、ジョイスティックの回転ノブの回転操作、電動ジョイスティックの傾倒操作、トラックボールの回転操作、スイッチ操作等に基づく操作信号であってもよい。
【0020】
なお、初期化設定部にて予め設定された設定内容については、記憶部に記憶されてもよく、制御部は、記憶部に予め記憶された設定内容に基づいて初期化動作を行うか否かを制御してもよい。記憶部の設定内容において、初期化動作を作動させる設定の場合、初期化動作が行われる。
【0021】
前述の初期化設定部によれば、検者の好みに応じて初期化を行うかどうかを予め設定できると共に、初期化の度にスイッチ操作を行う必要もないので、検者の手間を省くことができる。
【0022】
より詳細には、初期化動作を作動させるように設定された場合、例えば、複数の検者が同一の装置を扱うような場合において、可動部を一律に初期位置に配置できるので、各検者による個人差(例えば、座高の違い等による検査位置の違い)を平均化でき、複数の検者においても比較的スムーズな検査を行うことができる。また、各被検者による個人差(例えば、座高の違い等による検査位置の違い)を平均化でき、比較的スムーズな検査を行うことができる。
【0023】
一方、初期化動作を作動させるように設定されなかった場合、従来のメカニカルな移動機構に慣れた検者において、従来と同様の操作感を踏襲でき、検者にとってスムーズな検査を行うことができる。初期化設定部は、メカニカルな移動機構が一般的であるスリットランプにおいて特に有利である。
【0024】
なお、初期化動作を行うタイミングとして、例えば、制御部は、電源投入又は電源消去の際、初期化動作を行うようにしてもよい。ここで、制御部は、初期化動作を作動させるように予め設定された場合、電源投入又は電源消去の際に駆動部を制御し、可動部を初期位置に移動させてもよい。なお、電源投入又は電源消去の際とは、例えば、電源投入の時点であってもよいし、電源投入から所定時間内(例えば、数秒以内)であってもよい。
【0025】
例えば、本装置には、装置本体の電源のON/OFFを行うための電源スイッチが設けられ、制御部は、電源スイッチからのスイッチ信号に基づいて装置の電源を制御すると共に、初期化動作を行うようにしてもよい。電源スイッチは、検者によって操作される操作部材であってもよい。また、電源スイッチは、眼科装置が載置されるテーブルに設けられ、テーブル上での眼科装置の移動に連動して、スイッチ信号を制御部に入力してもよい。また、電源スイッチを含む電源ユニットは、眼科装置とは別の位置に配置され眼科装置と電気的に接続された構成であってもよいし、眼科装置の装置本体に搭載されてもよい。なお、電源スイッチに限定されず、他の操作部材が操作されたタイミングにおいて、制御部は、初期化動作を行うようにしてもよい。
【0026】
初期化動作として、制御部は、予め設定された初期位置に可動部を移動させてもよい。初期位置としては、例えば、可動部の可動範囲の中間位置であってもよいし、リミット位置であってもよいが、これらに限定されない。なお、初期位置は、任意に予め設定可能であってもよい。
【0027】
なお、初期化動作の具体的構成としては、可動部の位置を検出するための位置検出センサが用いられてもよい。例えば、可動部の位置をリアルタイムで検出可能な位置検出センサ(例えば、エンコーダ、ポテンショメータ)が設けられ、記憶部に記憶された初期位置に可動部が移動されてもよい。また、初期位置に対応する位置に可動部が到達したことを検出するための位置検出センサ(例えば、フォトセンサ)が設けられ、可動部が初期位置に到達したタイミングにて可動部が停止されてもよい。
【0028】
初期化設定部としては、検者によって操作される操作部材からの操作信号に基づいて、初期化動作を作動させるか否かを検者が予め設定できるようにしてもよい。ここで、初期化設定部は、操作部材と電気的に接続され、操作部材からの操作信号を受け付けてもよい。
【0029】
例えば、初期化設定部は、初期化動作を作動させるか否かを設定するための検者からの操作信号を受け付け、設定内容を変更してもよい。初期化設定部は、例えば、初期化動作を行う第1のモードと、初期化動作を行わない第2のモードとの間でモード設定を行うようにしてもよい。
【0030】
初期化動作の設定を予め行うための操作部材としては、初期化動作の設定とは異なる用途のために設けられた操作部材が用いられてもよい。つまり、初期化動作の設定を行うための操作部材は、検査で用いられる操作部材が兼用してもよい。上記のような構成によれば、装置構成の簡略化が可能である。例えば、電気的構成が少ないスリットランプにおいて、特に有利である。もちろん、初期化動作の設定を予め行うための操作部材として、専用スイッチが設けられてもよい。
【0031】
例えば、初期化設定部は、装置本体による検査を開始するためのトリガを発する検査開始スイッチからの操作信号を受け付け、初期化動作の設定を予め行うようにしてもよい。検査開始スイッチは、例えば、装置本体に設けられた撮影光学系による撮影開始のトリガ信号を発するための撮影開始スイッチ(例えば、レリーズスイッチ)であってもよい。
【0032】
なお、前述の検査開始スイッチは、被検眼に対して可動部を移動させるために検者によって操作される操作部材(例えば、ジョイスティック)のいずれか(例えば、頂部、側部)に設けられてもよいし、装置筐体のいずれかの位置に設けられてもよい。検査で用いられる操作部材としては、検査開始スイッチに限定されず、例えば、照明光源を点灯させるためのスイッチであってもよいし、装置の電源をON/OFFするためのスイッチであってもよい。
【0033】
なお、初期化動作を作動させるか否かを検者が予め設定するための初期化設定モードが設けられてもよい。例えば、制御部は、電源投入の際での指示受付部からの信号に基づいて、初期化設定モードに移行するか否かを判別してもよい。より詳細には、電源投入時における操作部材からの操作信号の有無に応じて、初期化設定モードに移行するか否かを判別してもよい。この場合、操作信号の有無としては、例えば、電源投入の際のスイッチのON/OFFであってもよいし、スイッチONの継続時間であってもよい。より詳細には、操作部材としての操作スイッチが所定時間以上長押しされることによって、初期化設定モードに移行され、スイッチが押された時間が所定時間よりも短い場合、予め設定された通常の用途に対応する動作が行われてもよい。長押し操作によれば、通常のスイッチ操作との区別が容易であり、誤操作を回避しやすい。
【0034】
なお、初期化設定モードにおいては、スイッチの操作に応じて、初期化動作を作動させるか否かが切り換えられてもよい。また、所定時間内におけるスイッチの操作回数又は操作時間に応じて、初期化動作を作動させるか否かが設定されてもよい。
【0035】
なお、電源投入の際に初期化設定モードが設けられることで、通常の装置操作と、初期化設定の操作とを分離させることができる。したがって、通常の装置操作における誤操作を回避できる。なお、初期化設定モードが、電源投入の際でなくとも、初期化設定の有無が設定できるという一定の効果は得られる。
【0036】
なお、上記においては、操作部材からの操作信号に応じて、初期化動作を作動させるか否かを検者が予め設定可能な構成としたが、これに限定されない。つまり、初期化動作とは異なる設定を行う場合においても、本実施形態の適用は可能である。また、初期化動作の設定と、初期化動作とは異なる他の設定(例えば、リミット到達時にブザー音を発生させるかどうかの設定、フィルタの光路への挿入時に照明光量を自動的に調整するかどうかの設定、等)の両方を行えるようにしてもよい。例えば、同一の操作部材からの操作信号に基づいて、複数の設定を可能としてもよく、装置構成を簡略化させることができる。
【0037】
<駆動制御モードの設定>
初期化動作とは異なる他の設定としては、操作部材からの操作信号に応じて駆動部の駆動制御を行う際の操作駆動制御に関し、複数の操作駆動制御から予め選択的に設定できるようにしてもよい。
【0038】
例えば、制御部は、センサからの操作信号を駆動部の駆動信号に変換すると共に、駆動部を駆動させる駆動パラメータを制御することによって駆動部の駆動制御を行うようにしてもよい。制御部によって制御される駆動パラメータとしては、例えば、駆動部の駆動量と駆動速度の少なくとも何れかであってもよい。また、制御部は、操作部からの操作信号として、操作部の操作量と操作速度の少なくともいずれかである操作パラメータを検出し、検出された操作パラメータに応じて駆動パラメータを制御してもよい。
【0039】
本実施形態において、操作信号と駆動パラメータとの対応関係がそれぞれ設定された駆動制御モードを複数有し、駆動制御モードの一つを予め設定するための駆動設定部が設けられてもよい。制御部は、駆動設定部によって予め設定された一つの駆動制御モードに基づいて、操作部からの操作信号に対応する駆動部の駆動制御を行ってもよい。
【0040】
この場合、各駆動制御モードにおいて、操作信号と駆動パラメータとの対応関係が設定され、対応関係が記憶部に予め記憶されてもよく、例えば、各駆動制御モードにおいて、対応関係として、操作信号と駆動パラメータとの対応関係を示すテーブル(例えば、図5図7参照)が設定されてもよいし、操作信号と駆動パラメータとの対応関係を示す関係式が設定されてもよい。つまり、各駆動制御モードは、操作信号と駆動パラメータとの関係が予め対応づけられ、対応関係が記憶部に予め記憶されたモードであってもよい。
【0041】
例えば、駆動制御モードとして、第1の駆動制御モードと、第2の駆動制御モードのいずれかが選択的に設定可能であってもよく、第1の駆動制御モードでは、操作信号に対応する駆動パラメータが第1の対応関係(例えば、図5(a))に設定され、第2の駆動制御モードでは、操作信号に対応する駆動パラメータの少なくとも一部が、第1の対応関係よりも大きい第2の対応関係(例えば、図5(b))に設定されてもよい。
【0042】
例えば、第1の駆動制御モードに予め設定された場合、制御部は、第1の駆動制御モードに基づいて、駆動部の駆動制御を行う。この場合、操作信号に対する駆動パラメータが比較的小さく設定されているので、比較的ゆっくりと装置本体を動かしてアライメントを行うことができる、あるいは、被検眼に対して比較的精密なアライメントを行うことができる。
【0043】
例えば、第2の駆動制御モードに予め設定された場合、制御部は、第2の駆動制御モードに基づいて、駆動部の駆動制御を行う。この場合、操作信号に対する駆動パラメータが比較的大きく設定されているので、比較的早く装置本体を動かしてアライメントを行うことができる、あるいは、被検眼と装置本体とのずれが大きい場合であっても、迅速にアライメントを行うことができる。
【0044】
上記のように、複数の駆動制御モードから検者が所望する駆動制御モードを予め選択できることによって、検者の好みに応じた操作制御を容易に行うことができる。
【0045】
なお、例えば、駆動制御モードとして、少なくとも3つ以上の駆動制御モードから、一つの駆動制御モードを選択的に設定可能であってもよい。この場合、前述の第1の駆動制御モードと第2の駆動制御モードに加え、第3の駆動制御モードが選択的に設定可能であってもよく、操作信号に対応する駆動パラメータの少なくとも一部が、第1の対応関係よりも小さい第3の対応関係に設定されてもよい(例えば、図5(c)参照)。これによれば、第1の駆動制御モードよりも、さらなる精密なアライメントを好む検者に有利である。なお、選択的に設定可能な駆動制御モードを、2つ又は3つ程度に予め限定することで、検者の設定の手間を軽減できる。
【0046】
また、駆動制御モードの設定を予め行うための操作部材としては、初期化設定部と同様、駆動制御モードの設定とは異なる用途のために設けられた操作部材が用いられてもよい。このような構成によれば、装置構成の簡略化が可能である。例えば、電気的構成が少ないスリットランプにおいて、特に有利である。
【0047】
例えば、駆動設定部は、前述の初期化設定部と同様、装置本体による検査を開始するためのトリガを発する検査開始スイッチからの操作信号を受け付け、駆動制御モードの設定を予め行うようにしてもよい。
【0048】
なお、駆動設定部は、各駆動制御モードでの操作部材の操作パラメータと駆動部の駆動パラメータとの対応関係に関し、想定される操作パラメータ全体に関して、各駆動制御モードでの対応関係が異なる設定を行うようにしてもよい(図5(a)〜図5(c)参照)。このような設定によれば、装置本体を大きく動かしたい場合及び装置本体の位置を微調整する場合での操作感を、検者のニーズに合わせて容易に設定できる。
【0049】
なお、駆動設定部は、各駆動制御モードでの操作部材の操作パラメータと駆動部の駆動パラメータとの対応関係に関し、操作パラメータが所定の閾値を超えた場合に関して、各駆動制御モードでの対応関係が異なる設定を行うようにしてもよい(図6(a)〜図6(c)参照)。このような設定によれば、装置本体の位置を微調整する場合の操作感を統一させ、装置本体を大きく動かしたい場合での操作感を、検者のニーズに合わせて容易に設定できる。
【0050】
なお、駆動設定部は、各駆動制御モードでの操作部材の操作パラメータと駆動部の駆動パラメータとの対応関係に関し、操作パラメータが所定の閾値を下回る場合に関して、各駆動制御モードでの対応関係が異なる設定を行うようにしてもよい(図7(a)〜図7(c)参照)。このような設定によれば、装置本体を大きく動かしたい場合での操作感を統一させ、装置本体の位置を微調整する場合の操作感を、検者のニーズに合わせて容易に設定できる。
【0051】
<報知部>
本実施形態に係る眼科装置において、初期化設定部による設定結果を報知する報知部が設けられてもよい。報知部は、初期化動作を行う第1のモードと、初期化動作を行わない第2のモードとの切換を報知してもよい。また、報知部は、切り換えられたモード内容に対応する報知を行うようにしてもよい。
【0052】
報知部は、音声発生部を備えてもよく、制御部は、音声発生部を制御し、設定内容を音声にて報知してもよい。この場合、初期化設定モードにおける設定内容の切り換わりの際、音声を発するようにしてもよい。これによれば、報知部を簡略化できる。
【0053】
また、報知部は、可視光源を備えてもよく、制御部は、可視光源を制御し、設定内容を光源の制御(例えば、光源のON/OFF)にて報知してもよい。
【0054】
上記のような報知部が設けられることによって、ディスプレイを持たない装置であっても、検者は、設定内容、設定の切り換わり等を容易に確認できる。特に、スリットランプは、ディスプレイを持たず顕微鏡部による直接観察が一般的であり、上記のような報知部によれば、簡単な構成で、設定内容を検者に報知可能である。
【0055】
<実施例>
以下、本実施形態に係る実施例を図面に基づき説明する。ここでは眼科装置としてスリットランプを例に挙げて説明する。図1は、スリットランプの一例を示す外観図である。図2は、スリットランプの光学系及び制御系の一例を示す図である。図3は、図1のスリットランプを軸A−Aで切断して見たときの断面図である。
【0056】
スリットランプ100は、顔支持ユニット100aと本体100bに大別される。被検者側に設けられた顔支持ユニット100aは、被検者の額を支持する額当て11と、顎を支持する顎台12を持ち、2本の支柱13を介してベース21に固定されている。本体100bは、テーブル1に対して上下方向の高さ位置が調整される可動部200bと、可動部200bを支持する固定部200aを持つ。
【0057】
可動部200bの筐体内には、照明ユニット60、顕微鏡ユニット(観察・撮影ユニット)70、スリットランプ100全体の動作制御をする制御部85が設けられる。固定部200bの筐体内には、被検者眼Eに対して可動部200bを上下移動させるための上下移動機構200が設けられる。
【0058】
照明ユニット60は、可視光源(照明用光源)61、コンデンサレンズ62、可変アパーチャ63、可変スリット64、投影レンズ65、プリズムミラー66を備え、被検者眼Eの観察部位を照明する。可視光源61からの光束(可視光)は、コンデンサレンズ62を透過して可変アパーチャ63及び可変スリット64を照明する。アパーチャ63及びスリット64を通過した光束は、投影レンズ65を透過してプリズムミラー66で反射され、眼Eに投射される。なお、可視光源61には、ハロゲンランプ、LED等周知のものが使用される。
【0059】
顕微鏡ユニット70は、対物レンズ71、変倍光学系72、ハーフミラー73、結像レンズ74、正立プリズム75、視野絞り76、接眼レンズ77を持つ。被検者眼Eで反射された光束は、対物レンズ71、変倍光学系72、ハーフミラー73、結像レンズ74を透過して、正立プリズム75で反射される。プリズム75で反射された光束は、視野絞り76、接眼レンズ77を透過して、検者の眼Fに入射する。ハーフミラー73で反射された光束は、リレーレンズ78を透過してカメラ(撮像素子)80に入射する。なお、カメラ80には、可視光に感度を持つCCDを備えた周知のデジタルカメラ等が使用される。制御部85は後述するスイッチ22bからの指令信号に基づきカメラ80の撮影画像を取り込み、モニタ87に表示させる。
【0060】
上下移動機構200は、テーブル1に固定されるベース21と、ベース21に対して水平方向(前後左右方向)にスライド可能に設置された筐体21aと、筐体21a内に設置され、その一部が筐体21aの図示を略す開口を介して外側に現れる操作部材であるジョイスティック22と、筐体21a内に設置された駆動部50を備える。
【0061】
ジョイスティック22は、検者に把持されて回転操作される回転ノブ(回転部)22aと、撮影(画像取得)のトリガ信号を入力するスイッチ22bと、ジョイスティック22を略鉛直方向(Y方向)に挿通するシャフト(支持部材)22cと、回転ノブ22aの回転角度を検知する周知のロータリーエンコーダ22dから構成される。
【0062】
駆動部50は、回転軸L1を中心として回転可能に設けられた中空のブラシレスモータ(以下、モータと記す)51を持つ。なお、本実施例の上下移動機構200の詳細については、特開2014−12034号公報を参照されたい。
【0063】
可動部200bは、ベース21に対して略鉛直に延びるベースシャフト23と、照明ユニット60を支持するアーム24と、顕微鏡ユニット70を支持するアーム25を備える。なおアーム24とアーム25は中心軸Bを中心に個々に水平方向に回転可能に支持されており、これにより照明ユニット60と顕微鏡ユニット70が中心軸Bを中心に個別に回転されるようになる。
【0064】
更に本実施形態では、本体部100aに、固定部200aに対する可動部200bの上下位置を検知するための位置検出部が設けられている。例えば、位置検出部は、可動部200b側に固定されて可動部200bと連動して上下動される板部54と、固定部200a側に固定され板部54が通過する開口を持つ3つのセンサー55a〜55cとから構成される。
【0065】
可動部200bが上下動され、板部54が3つのセンサー55a〜55c全てによって検知されると、制御部85によって可動部200bが下限に有ることが検知される。板部54がセンサー55aのみで検知されると可動部200bが上限にあることが検知される。また本実施形態では、板部54がセンサー55a及び55bで検知され、センサー55cで検知されない場合は、本体部100aが可動範囲の中間位置(図示を略すアイレベルマーカーの位置)にあるとする。
【0066】
初期化動作が行われる場合、モータ51の駆動により、板部54がセンサー55a及び55bで検知されるまで可動部200bが上下動され、初期位置が自動的に簡単に合わせられる。なお、センサーには、フォトインタラプタ等の光センサー、磁気センサー、機械式センサー等の周知のセンサーが用いられる。
【0067】
以上の構成により、検者の操作でジョイスティック22が水平方向(前後左右方向)にスライドされると、周知のスライド機構によって、被検者眼Eに対して本体100bが水平方向に移動する。一方、回転ノブ22aがシャフト22bを軸として水平方向に回転されると、エンコーダ22dによってその回転方向及び回転速度等が検知される。制御部85はエンコーダ22dからの出力信号に基づき、モータ51の回転を制御する。制御部85の駆動制御でモータ51が回転すると、中空部51aに形成された雌ネジ51bに沿って雄ネジ52が上下動され、可動部200b全体が上下に移動される。
【0068】
制御部85は装置全体の駆動制御をする。制御部85には上述の回転ノブ22a、スイッチ22b、エンコーダ22d、センサー55a〜55c、モータ51、センサー56、モニタ87の他、メモリ81、光量調整ノブ300、電源スイッチ400、音声発生部500、等が接続される。メモリ81には、エンコーダ22dで検知されたジョイスティック22(回転ノブ22a)の回転パルス(回転量)に対する、モータ51の回転パルス(回転量)の関係が対応付けて記憶されている。またメモリ81にはエンコーダ22dで検知されるジョイスティック22の回転方向とモータ51の回転方向が関連付けて記憶されている。制御部85は、ジョイスティック22からの入力信号に基づきモータ51の回転量及び回転方向を制御してもよい。なお、メモリ81には、初期化動作に関する設定内容が記憶されてもよい。
【0069】
光量調整ノブ300は、可視光源61の光量を調整するための回転ノブであり、光量調整ノブ300が操作されると、制御部85は、可視光源61の光量を調整してもよい。なお、光量調整ノブ300は、可視光源61のON/OFFスイッチを兼用してもよい。また、電源スイッチ400は、装置の電源のON/OFFスイッチであり、制御部85は、電源スイッチ400からの信号に基づいて電源のON/OFFを行ってもよい。また、音声発生部500は、音声報知部として用いられてもよい。
【0070】
図4は、本実施例に係る眼科装置の動作に関する一例を示すフローチャートである。電源スイッチ400が操作されて電源が装置に投入されると、制御部85は、操作スイッチ(例えば、スイッチ22b)からの操作信号に応じて、各種モード設定を行うか否かの判別処理を行う。操作スイッチONが所定時間(例えば、5秒間)以上継続すると、制御部85は、各種モード設定に移行する(後述する)。
【0071】
操作スイッチONが所定時間(例えば、5秒間)以上継続しなければ、上下動イニシャル設定モード(後述する)にて設定されたモードに応じた動作を行う。ここで、電源投入時に初期化動作を行う第1のモードに設定されている場合、制御部85は、モータ51の駆動で本体100bを上下動させ、位置検出部の検出結果に基づき可動部200bの高さを初期位置に合わせる。その後、制御部85は、上記初期化動作を実施せず、センサー56からの操作信号を待機する。
【0072】
一方、電源投入時に初期化動作を行わない第2のモードに設定されている場合、制御部85は、上記初期化動作を実施せず、センサー56からの操作信号を待機する。この場合、結果として、電源投入の際、前回の電源消去時の位置に本体100bが配置された状態となる。
【0073】
次に、検者は、顔支持ユニット100aに被検者の顔を固定して、眼Eと本体100bの位置合わせをする。ジョイスティック22の水平移動で、眼Eと本体100bの前後左右の位置合わせが行われる。次に、眼Eに対して本体100b(照明ユニット60及び顕微鏡ユニット70)の高さを合わせる。検者がジョイスティック22の回転ノブ22aを回転すると、その回転量及び回転速度、回転方向が周知のエンコーダ22dで検知され、検知結果が制御部85に出力される。制御部85は、エンコーダ22dの検知結果に基づいてモータ51を駆動させる。
【0074】
眼Eと本体100bとのアライメントが完了したら、検者は、光量調整ノブ300を操作し、可視光源61を点灯すると共に、可視光源61の光量調整を行う。ここで、制御部85は、照明ユニット60の可視光源61を点灯し、照明光(光束)を被検者眼Eに投光する。これによって顕微鏡ユニット70を介して眼Eが観察されるようになる。検者は、眼Eを観察しながら、必要に応じて回転ノブ22aの回転操作を行い、移動部200b(照明ユニット60及び顕微鏡ユニット70)の細かなアライメントを行う。ここで、検者によってスイッチ22bが操作されると、制御部85は、カメラ80の撮影画像を取り込み、外部のモニタ87に表示させる。
【0075】
ここで、スリットランプは、眼に対して装置本体を微妙に調整する必要があるので、初期化動作を行うか否かを設定できる構成を設けることによって、検者のニーズに応じた制御が可能となる。また、スリットランプにおいては、他の装置に比べて、電源のON/OFFが頻繁に行われる傾向があり、初期化動作を行うか否かを選択できる構成を設けることによるメリットは大きいといえる。
【0076】
なお、テーブル上にスリットランプが載置された場合において、テーブル上でのスリットランプのスライドに連動して電源のON/OFFが行われる場合においても、本実施例の適用は可能である。この場合、テーブル上でのスリットランプの位置を検出するためのセンサが用いられてもよい。
【0077】
<上下動イニシャル設定モード>
ここで、操作スイッチONが所定時間(例えば、5秒間)以上継続すると、制御部85は、音声発生部500によってブザーを発生させる。ブザー発生後、操作スイッチOFFになると、制御部85は、上下動イニシャル設定モードに移行する。
【0078】
上下動イニシャル設定モードにおいて、操作スイッチが1回押されると、制御部85は、電源投入時に初期化動作を行う第1のモードに設定し、ブザーを1回鳴らす。これによって、第1のモードに設定されたことが検者に報知される。さらに、操作スイッチが1回押されると、制御部85は、電源投入時に初期化動作を行わない第2のモードに設定し、ブザーを連続して2回鳴らす。これによって、第2のモードに設定されたことが検者に報知される。さらに、操作スイッチが1回押されると、制御部85は、第1のモードに設定し、ブザーを1回鳴らす。
【0079】
つまり、制御部85は、操作スイッチの操作信号に応じて、第1のモードと第2のモードとの間でのモード切換を行ってもよい。また、制御部85は、設定されたモードを、ブザーを用いて報知してもよい。この場合、設定されたモードに応じて異なる音声を用いることによって、検者は、設定されたモードを容易に確認できる。なお、異なる音声としては、例えば、上記のようにブザーの回数であってもよいし、音の種類(例えば、高音、低音)、音の大小であってもよい。
【0080】
上下動イニシャル設定モードにおいてモード設定が行われた後、電源スイッチ400が操作され電源が消去されると、上下動イニシャル設定モードが終了される。ここで、再度電源が投入され、操作スイッチONが所定時間(例えば、5秒間)以上継続しなければ、制御部85は、設定されたモードに対応する動作を行う。
【0081】
なお、上記のように電源投入時において、操作部材の操作に基づくモード設定を可能とすることによって、モード設定完了後においては、操作スイッチを他の用途に用いることができると共に、誤操作を確実に回避できる。
【0082】
なお、音声によるモード報知は、電気的な構成が照明光源、撮影カメラ等に限定されるスリットランプにおいて、特に有用である。スリットランプにおいても、モニタが利用されうるが、撮影カメラに接続されるのみであり、撮影カメラによって取り込まれた画像が表示される程度である。また、スリットランプに撮影カメラが装着されない場合も十分にあり得る。音声によるモード報知は、電気的にシンプルなスリットランプの構成を複雑化させる必要はなく、簡単な構成で済ますことが可能である。
【0083】
<他の設定モード>
なお、電源投入の後、操作スイッチONが所定時間(例えば、5秒間)以上継続してブザーが発生し、さらに、操作スイッチONが所定時間(例えば、5秒間)以上継続した場合、制御部85は、ブザーを発する共に、上下動イニシャル設定モードとは異なる第2の設定モードに移行してもよい。
【0084】
第2の設定モードとしては、例えば、本体100bが上下動のリミット位置に達したときのブザー音を設定するためのブザー設定モードであってもよい。ブザー設定モードにおいては、例えば、制御部85は、リミット到達時において音声発生部500によるブザー音を発生させる第1のモードと、リミット到達時においてブザー音を発生させない第2のモードとの間でのモード切換を、操作スイッチの操作信号に応じて行ってもよい。この場合、追加的に、ブザー音の大小を設定できてもよい。
【0085】
第2の設定モードにおいてモード設定が行われた後、電源スイッチ400が操作され電源が消去されると、第2の設定モードが終了される。ここで、再度電源が投入され、操作スイッチONが所定時間(例えば、5秒間)以上継続しなければ、制御部85は、第2の設定モードにおいて設定されたモードに対応する動作を行う。
【0086】
上記のように同一の操作スイッチによる操作を経て、初期化動作を行うかどうかを設定するための設定モード(例えば、上下動イニシャル設定モード)とは異なる第2の設定モードに移行可能とすることによって、簡単な構成で複数のモード設定を行うことができる。
【0087】
また、ブザー設定モードを設けることで、リミット到達時におけるブザー音の有無又は大小を設定できる。これによって、例えば、ブザー音を活用したい検者と、ブザー音を煩わしいと感じる検者の両方のニーズに対応することができる。
【0088】
<駆動制御モードの設定>
第2の設定モードとしては、例えば、回転ノブ22aの操作パラメータに対するモータの駆動パラメータとの対応関係がそれぞれ設定された複数の駆動制御モードに関し、複数の駆動制御モードから検者が選択的に一つの駆動制御モードを設定するための駆動設定モードであってもよい。
【0089】
この場合、センサで検知された回転ノブ22aの回転量に対する、モータ51の回転量との対応関係がそれぞれ設定された複数の駆動制御モードに関し、複数の駆動制御モードから検者が選択的に一つの駆動制御モードを設定するための駆動設定モードであってもよい。
【0090】
例えば、制御部85は、回転ノブ22aの回転量に対応するモータ51の回転量が第1の対応関係に設定された第1の駆動制御モード(図5(a)参照)と、回転ノブ22aの回転量に対応するモータ51の回転量が第1の対応関係よりも大きく設定された第2の駆動制御モード(図5(b)参照)と、回転ノブ22aの回転量に対応するモータ51の回転量が第1の対応関係よりも小さく設定された第3の駆動制御モード(図5(c)参照)と、の間でのモード切換を、操作スイッチの操作信号に応じて行ってもよい。ここで、操作スイッチとしては、例えば、カメラ80による撮影開始に用いられるスイッチ22bが用いられてもよい。
【0091】
この場合、例えば、回転ノブ22aの回転量に対応するモータ51の回転量に関し、第1の駆動制御モードを1とすると、第2の駆動制御モードでは、1.5に設定され、第3の駆動制御モードでは、0.5に設定されてもよい。各駆動制御モードにおける回転ノブ22aの回転量に対応するモータ51の回転量は、これらに限定されない。
【0092】
駆動設定モードにおいて、操作スイッチが1回押されると、制御部85は、第1の駆動制御モードに設定し、ブザーを1回鳴らす。これにより、第1の駆動制御モードに設定されたことが検者に報知される。さらに、操作スイッチが1回押されると、制御部85は、第2の駆動制御モードに設定し、ブザーを連続して2回鳴らす。これにより、第2の駆動制御モードに設定されたことが検者に報知される。
【0093】
さらに、操作スイッチが1回押されると、制御部85は、第3の駆動制御モードに設定し、ブザーを連続して3回鳴らす。これにより、第3の駆動制御モードに設定されたことが検者に報知される。さらに、操作スイッチが1回押されると、制御部85は、第1の駆動制御モードに設定し、ブザーを1回鳴らす。
【0094】
駆動設定モードにおいてモード設定が行われた後、電源スイッチ400が操作され電源が消去されると、駆動設定モードが終了される。ここで、再度電源が投入され、操作スイッチONが所定時間(例えば、5秒間)以上継続しなければ、設定された駆動制御モードに対応する動作を行う。
【0095】
制御部85は、予め設定された駆動制御モードに基づいて、回転ノブ22aの回転量に応じて、モータ51の回転量を制御する。検者は、回転ノブ22aの回転操作を行い、眼に対する装置本体のアライメントを行う。
【0096】
ここで、回転ノブ22aは、可動部200bを上下動させるために検者によって360度以上回転可能に設けられ、回転ノブ22aの回転操作による操作信号がセンサーによって検出される。さらに、センサーからの検出結果に基づいてモータ51が駆動される。これによって、機械式のスリットランプと同様の操作感が実現される。
【0097】
さらに、回転ノブ22aの回転操作とモータ51の駆動パラメータとの対応関係に関して、複数のモードが選択的に設定可能であるので、検者が好む操作感を容易に選択できる。ここで、スリットランプの使用者としては、眼に対して装置本体をより微妙に調整したい検者がおり、この場合、第3の駆動制御モードが設定されることで、アライメント調整がより精密に実現される。また、スリットランプでは、眼と装置本体との大きな位置ズレを装置本体の移動によってより素早く解消したい検者がおり、この場合、第2の駆動制御モードが設定されることで、アライメント調整がより素早く実現される。
【0098】
なお、上記説明においては、装置本体の上下動機構での操作駆動制御を例としたが、これに限定されず、装置本体の前後左右移動機構での操作駆動制御においても、本実施形態の適用は可能である。例えば、電動ジョイスティックの傾倒操作に対する駆動パラメータの制御に関して、複数の駆動制御モードが設けられ、予め設定可能であってもよい。
【0099】
なお、上記実施例に関し、第2の設定モードとしては、例えば、センサで検知された回転ノブの回転速度に対する、モータの回転速度との対応関係が設定された駆動制御モードを設定するための駆動設定モードであってもよい。
【0100】
なお、制御部は、例えば、回転ノブの回転量に基づいてモータの回転量を制御する共に、回転ノブの回転速度に基づいてモータの回転速度を制御してもよい。この場合、駆動設定部は、回転ノブの回転量とモータの回転量との対応関係と、回転ノブの回転速度とモータの回転速度との対応関係の少なくともいずれかが、予め選択的に変更可能であってもよい。また、回転ノブからの操作信号に基づく駆動部の制御に関して、例えば、特開平6−7292号公報、特開2014−12035号公報等に記載された制御手法が用いられてもよい。
【0101】
なお、上記説明においては、初期化設定モードとの併用を例としたが、これに限定されず、駆動設定モードを独立して実施することも可能であることはいうまでもない。
【0102】
なお、上記スリットランプには、レーザ照射光学系が設けられてもよく、これによって、被検眼に対するレーザ照射の位置決めにおいて、検者が好む操作感を容易に選択できる。
【0103】
なお、上記実施例においては、スリットランプを例として説明したが、他の眼科装置への適用も可能である。例えば、眼に対する微妙なアライメント調整、メカニカルな操作感が要求される装置において、特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
図1】本実施例に係るスリットランプの一例を示す外観図である。
図2】本実施例に係るスリットランプの光学系及び制御系の一例を示す図である。
図3図1のスリットランプを軸A−Aで切断して見たときの断面図である。
図4】本実施例に係る眼科装置の動作に関する一例を示すフローチャートである。
図5】本実施例に係る駆動制御モードの一例を示す図である。
図6】本実施例に係る駆動制御モードの一例を示す図である。
図7】本実施例に係る駆動制御モードの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0105】
85 制御部
200 上下動機構
200b 可動部
500 音声発生部


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7