特許第6845984号(P6845984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6845984
(24)【登録日】2021年3月3日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】車両用バッテリートレイ
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/04 20060101AFI20210315BHJP
   H01M 50/20 20210101ALI20210315BHJP
【FI】
   B60R16/04 C
   H01M2/10 S
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-78490(P2017-78490)
(22)【出願日】2017年4月11日
(65)【公開番号】特開2018-176961(P2018-176961A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 幸司
(72)【発明者】
【氏名】長坂 芳崇
(72)【発明者】
【氏名】小牧 辰彦
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−070089(JP,A)
【文献】 特表2016−512375(JP,A)
【文献】 特開平01−105478(JP,A)
【文献】 特開2004−288554(JP,A)
【文献】 特開2013−145725(JP,A)
【文献】 特開2015−065073(JP,A)
【文献】 特開2005−119404(JP,A)
【文献】 米国特許第06230834(US,B1)
【文献】 国際公開第2017/022342(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第106098990(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/00−16/08
B60L 53/80
B60K 1/04
H01M 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取付けられる車両用バッテリートレイであって、
バッテリーのための載置面を有する底板部と、
上記底板部の上記載置面に設けられた補強用のリブと、
を備え、
上記リブは、上記バッテリーをその搭載方向にスライド可能に支持する支持部を有し、上記支持部は、上記搭載方向の前方側に延在するにつれてリブ幅がテーパー状に拡張された拡幅部を有する、車両用バッテリートレイ。
【請求項2】
上記支持部は、上記搭載方向に沿ってリブ幅が一定で直線状に延在した部位を有し、この部位の上記搭載方向の前方側に上記拡幅部が連続して設けられている、請求項1に記載の車両用バッテリートレイ。
【請求項3】
上記底板部は、上記載置面の低所に排水口を備え、上記リブは、上記排水口に向けて延在している、請求項1または2に記載の車両用バッテリートレイ。
【請求項4】
上記リブは、上記底板部に対する上記バッテリーの位置決めのための位置決め部を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用バッテリートレイ。
【請求項5】
上記位置決め部は、上記リブのリブ上面に設けられた段差によって構成されている、請求項4に記載の車両用バッテリートレイ。
【請求項6】
上記バッテリーを上記載置面へ導入するための開口部を除いて上記載置面の周りを囲むように上記底板部に立設された外周壁部を備える、請求項1〜のいずれか一項に記載の車両用バッテリートレイ。
【請求項7】
上記外周壁部の内面に設けられ、上記搭載方向にスライドする上記バッテリーと係合することによってこのバッテリーの上下方向の動きを規制する係合部を備える、請求項に記載の車両用バッテリートレイ。
【請求項8】
上記係合部は、樹脂成形によって構成されており、
上記リブは、上記樹脂成形の際の金型の動作方向に沿って延在している、請求項に記載の車両用バッテリートレイ。
【請求項9】
上記底板部は、それぞれが上記車両のパネルとの締結のためのボルト部材が挿入される複数のボルト穴を有し、
上記リブは、上記複数のボルト穴のうち互いに隣接する2つのボルト穴を結ぶ仮想線を横切って延在するように構成されている、請求項1〜のいずれか一項に記載の車両用バッテリートレイ。
【請求項10】
上記底板部は、上記バッテリーを上記載置面に押し付けるためのブラケットにボルト部材を介して締結されるように構成されている、請求項1〜のいずれか一項に記載の車両用バッテリートレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用バッテリートレイに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両に取付けられるこの種のバッテリートレイが開示されている。このバッテリートレイは、バッテリーのための載置面を有し、バッテリーをその搭載方向にスライドさせて載置面に設置できるように構成されている。本構成によれば、バッテリーをそのスライド動作を利用してバッテリートレイに搭載できるため、重量物であるバッテリーを把持してバッテリートレイの載置面に置く場合に比べて作業が楽である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−70089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1に開示のバッテリートレイは、載置面全体が平坦面として構成されている。このため、作業者がバッテリーをスライドさせるときにその下面と載置面との間に生じる摺動抵抗が大きく、作業者の負担が大きい。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、バッテリーを車両へ搭載するときの作業性を向上させることができる車両用バッテリートレイを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
車両に取付けられる車両用バッテリートレイであって、
バッテリーのための載置面を有する底板部と、
上記底板部の上記載置面に設けられた補強用のリブと、
を備え、
上記リブは、上記バッテリーをその搭載方向にスライド可能に支持する支持部を有し、上記支持部は、上記搭載方向の前方側に延在するにつれてリブ幅がテーパー状に拡張された拡幅部を有する、車両用バッテリートレイ、
にある。
【発明の効果】
【0007】
上記の態様において、作業者がバッテリーを底板部の載置面に設置するために搭載方向にスライドさせるとき、このバッテリーの下面は載置面に設けられたリブの支持部と摺動する。このとき、支持部のうちリブとの摺動面の面積は、載置面全体が平坦面である場合のこの平坦面の面積を下回る。このため、バッテリーを搭載方向にスライドさせるときにこのバッテリーの下面に作用する摺動抵抗を低く抑えることができる。
【0008】
以上のごとく、上記の車両用バッテリートレイによれば、バッテリーを車両へ搭載するときの作業性を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1の車両用バッテリートレイに係る車両の一部を示す斜視図。
図2図1中の車両用バッテリートレイの斜視図。
図3図2の車両用バッテリートレイの平面図。
図4図2において、バッテリーが搭載方向にスライドするときの様子を示す斜視図。
図5図2の車両用バッテリートレイにバッテリーが搭載された状態の斜視図。
図6図5のVI-VI線矢視断面図。
図7図6中のA領域の拡大図。
図8参考形態の車両用バッテリートレイの平面図。
図9】実施形態3の車両用バッテリートレイの平面図。
図10】実施形態4の車両用バッテリートレイの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上述の態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0011】
上記の車両用バッテリートレイにおいて、上記リブは、上記搭載方向に沿って延在しているのが好ましい。これにより、バッテリーの下面に作用する摺動抵抗をより低く抑えることで、その搭載方向のスライド動作を円滑化することができる。
【0012】
上記の車両用バッテリートレイにおいて、上記底板部は、上記載置面の低所に排水口を備え、上記リブは、上記排水口に向けて延在しているのが好ましい。これにより、底板部の載置面に流入した水を、リブを利用して排水口へと誘導して溜まりにくくすることができる。
【0013】
上記の車両用バッテリートレイにおいて、上記リブは、上記底板部に対する上記バッテリーの位置決めのための位置決め部を有するのが好ましい。これにより、底板部に対するバッテリーの位置決めにリブを利用できる。
【0014】
上記の車両用バッテリートレイにおいて、上記位置決め部は、上記リブのリブ上面に設けられた段差によって構成されているのが好ましい。これにより、リブにおける簡単な段差構造を利用して位置決め部を構築できる。また、バッテリーが底板部に対して位置決めされたことを段差によるバッテリーの動きを利用してユーザに伝えることができる。
【0015】
上記の車両用バッテリートレイにおいて、上記リブは、上記搭載方向の前方側に延在するにつれてリブ幅が拡張された拡幅部を有するのが好ましい。これにより、リブの拡幅部においては、バッテリーが搭載方向にスライドするにつれてその下面に作用する摺動抵抗が増える。このため、バッテリーのスライド後半の動きを弱めてこのバッテリーがトレイに強く干渉するのを防ぐことができる。
【0016】
上記の車両用バッテリートレイは、上記バッテリーを上記載置面へ導入するための開口部を除いて上記載置面の周りを囲むように上記底板部に立設された外周壁部を備えるのが好ましい。これにより、車両衝突時のバッテリーの動きを外周壁部によって規制することによって、このバッテリーが底板部から抜け出すのを防ぐことができる。
【0017】
上記の車両用バッテリートレイは、上記外周壁部の内面に設けられ上記搭載方向にスライドする上記バッテリーと係合することによってこのバッテリーの上下方向の動きを規制する係合部を備えるのが好ましい。これにより、バッテリーの搭載方向のスライド動作を係合部によって安定させることができる。
【0018】
上記の車両用バッテリートレイにおいて、上記係合部は、樹脂成形によって構成されており、上記リブは、上記樹脂成形の際の金型の動作方向に沿って延在しているのが好ましい。これにより、金型の抜き出し動作がリブによって邪魔されるのを防ぐことができる。
【0019】
上記の車両用バッテリートレイにおいて、上記底板部は、それぞれが上記車両のパネルとの締結のためのボルト部材が挿入される複数のボルト穴を有し、上記リブは、上記複数のボルト穴のうち互いに隣接する2つのボルト穴を結ぶ仮想線を横切って延在するように構成されているのが好ましい。これにより、ボルト部材からトレイに作用する締め付け応力をリブによって吸収することができる。
【0020】
上記の車両用バッテリートレイにおいて、上記底板部は、上記バッテリーを上記載置面に押し付けるためのブラケットにボルト部材を介して締結されるように構成されているのが好ましい。これにより、トレイに設置されたバッテリーをこのトレイ自体に固定することができる。
【0021】
以下、車両用バッテリートレイ(以下、単に「トレイ」という。)の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
なお、本実施形態の説明のための図面において、特にことわらない限り、車両前方を矢印FRで示し、車両内方を矢印INで示し、車両上方を矢印UPで示すものとする。
また、トレイの奥行方向である第1方向を矢印Xで示し、トレイの幅方向である第2方向を矢印Yで示し、トレイの高さ方向である第3方向を矢印Zで示すものとする。特に、第1方向Xのうちトレイに対するバッテリーの搭載方向をX1として示す。
【0023】
(実施形態1)
図1に示されるように、実施形態1に係る車両1は、車室内のフロア2とドアステップ3との間の段差部分に立設壁4を備えている。この立設壁4は、開口部4aを有し、この開口部4aが着脱式のカバー5によって被覆されるように構成されている。
【0024】
実施形態1のトレイ10は、バッテリーBを車両1に搭載するためのものであり、フロア2の下方空間2aに位置する金属製のパネル6に取付けられるように構成されている。
【0025】
カバー5は、立設壁4から取外された状態で開口部4aを開放する。この開放状態では、バッテリーBを車外から水平にスライドさせながらトレイ10に搭載することができ、或いはトレイ10に搭載されているバッテリーBを水平にスライドさせながらトレイ10から車外に取出すことができる。一方で、カバー5は、立設壁4に取付けられた状態で開口部4aを閉鎖する。
【0026】
図2及び図3に示されるように、トレイ10は、バッテリーBを設置するための載置面11aを有する底板部11と、バッテリーBを載置面11aへ導入するための開口部11bを除いて載置面11aの周りを囲むように底板部11に立設された3つの外周壁部12,13,14と、底板部11の載置面11aから上方へ突出する補強用の複数(本実施形態では13)のリブ20と、を備えている。このトレイ10は、樹脂材料で一体成形された樹脂成形品として構成されている。
【0027】
底板部11は、第1方向X及び第2方向Yによって規定される平面上に延在している。この底板部11は、トレイ10を上方から視たときの平面視形状が略方形となるように構成されている。
【0028】
底板部11は、それぞれが載置面11aから下方へ凹んだ3つの凹部15を備えている。第1の凹部15は、第2方向Yの中央位置であり且つ外周壁部14寄りの位置に配置されている。第2の凹部15は、外周壁部12寄りの位置であり且つ第1方向Xについて開口部11b側の位置に配置されている。第3の凹部15は、外周壁部13寄りの位置であり且つ第1方向Xについて開口部11b側の位置に配置されている
【0029】
各凹部15の底面に、即ち載置面11aの低所に排水口15a及びボルト穴15bが設けられている。各排水口15aは、載置面11aの低所に底板部11を貫通するように設けられており、載置面11aへ流入した水の排水のための水抜き穴として構成されている。各ボルト穴15bは、排水口15aと同様に底板部11を貫通しており、トレイ10の底板部11と車両1のパネル6との締結のためのボルト部材30が挿入される挿入穴として構成されている。本実施形態では、底板部11に排水口15aとボルト穴15bが3つずつ設けられている。
【0030】
また、底板部11には、第2方向Yに離間して配置された2つのボルト穴16,16が設けられている。各ボルト穴16は、底板部11を貫通しており、バッテリーBとトレイ10との締結のためのボルト部材31が挿入される挿入穴として構成されている。
【0031】
外周壁部12は、底板部11の第2方向Yの両端部の一方側に設けられ、外周壁部13は、底板部11の第2方向Yの両端部の他方側に設けられている。外周壁部14は、底板部11の第1方向Xの両端部のうち開口部11bとは反対側に設けられている。これら3つの外周壁部12,13,14は、車両衝突時のバッテリーBの動きを規制することによって、このバッテリーBがトレイ10から抜け出すのを防ぐ機能を果たす。
【0032】
外周壁部12の内面と外周壁部14の内面とが連接する領域、及び外周壁部13の内面と外周壁部14の内面とが連接する領域のそれぞれには、バッテリーBの搭載時にこのバッテリーBの前側領域B1に係合する係合部17を備えている。この前側領域B1には、バッテリーBの搭載方向X1の前面及び側面が含まれる。
【0033】
各係合部17は、第1方向Xに延在する平板状の第1係合片17aと、この第1係合片17aから第2方向Yに延在する平板状の第2係合片17bとを有し、これら2つの係合片17a,17bによってトレイ10を上方から視たときの平面視形状が略L字形をなすように構成されている。外周壁部12側の係合部17は、第1係合片17aが外周壁部12の内面から突出し、第2係合片17bが外周壁部14の内面から突出している。外周壁部13側の係合部17は、第1係合片17aが外周壁部13の内面から突出し、第2係合片17bが外周壁部14の内面から突出している。
【0034】
係合部17と底板部11の載置面11aとの間には挿入空間18が形成されている。この挿入空間18は、バッテリーBを搭載方向X1にスライド(「摺動」ともいう。)させるときにその前側領域B1が挿入される空間である。このため、バッテリーBは、その前側領域B1が挿入空間18に挿入されることによって、上下方向(第3方向Z)の動きが2つの係合片17a,17bによって規制される。第2係合片17bは、予定された搭載位置までスライドした後のバッテリーBの上下方向の動きを規制するように構成されている。一方で、第1係合片17aは、搭載位置までスライドした後のバッテリーBのみならず、搭載位置までスライドしている途中のバッテリーBについても、その上下方向の動きを規制するように構成されている。
【0035】
複数のリブ20には、いずれも底板部11を補強する機能を有する複数のリブ21〜27が含まれている。これらのリブ21〜27は、第3方向Zについて概ね同様のリブ高さ(載置面11aからの突出高さ)を有し、いずれもバッテリーBをその搭載方向X1にスライド可能に支持する支持部を有する。この支持部を、バッテリーBのスライドを補助するための「スライド補助部」ということもできる。この支持部は、リブ21〜27のそれぞれのリブ上面21a〜27aによって構成されている(図3参照)。これらのリブ上面21a〜27aはいずれも、搭載方向X1に沿って延在し、且つ3つの外周壁部12,13,14の上面よりも低所に位置している。
【0036】
本構成によれば、作業者がバッテリーBを底板部11の載置面11aに設置するために搭載方向X1にスライドさせるとき、このバッテリーBの下面は載置面11aに設けられた複数のリブ21〜27の支持部であるリブ上面21a〜27aと摺動する。このとき、各リブの摺動面であるリブ上面21a〜27aを合わせた面積は、載置面11a全体が平坦面である場合のこの平坦面の面積を下回る。このため、バッテリーBを搭載方向X1にスライドさせるときにこのバッテリーBの下面に作用する摺動抵抗を低く抑えることができる。
【0037】
リブ21は、底板部11の載置面11aにおいて第2方向Yの中央位置を搭載方向X1に沿って、且つ載置面11aの低所に位置する第1の凹部15の排水口15aに向けて直線状に延在している。また、このリブ21の第2方向Yのリブ幅は一定である。
【0038】
このリブ21は、バッテリーBの下面に作用する摺動抵抗をより低く抑えることで、その搭載方向X1のスライド動作を円滑化する機能(以下、「第1の機能」という。)と、底板部11の載置面11aに流入した水を排水口15aへと誘導して溜まりにくくする機能(以下、「第2の機能」という。)と、を兼ね備えている。
【0039】
上記の第1の機能によれば、トレイ10にバッテリーBを搭載するときの作業者負担を抑えることができる。また、上記の第2の機能によれば、トレイ10内に水が溜まることによって生じる得る不具合(腐食、臭いなど)を解消することができる。
【0040】
ここで、このリブ21以外のリブ22〜27は、リブ21を通る第1方向Xの対称軸について線対称配置されている。このため、以下の記載では、線対称配置されたうちの一方側(図2中の左側)のリブ22〜27についてのみ説明し、他方側(図2中の右側)のリブ22〜27についての説明は省略する。
【0041】
リブ22は、底板部11の載置面11aにおいて第2方向Yの端部を搭載方向X1に沿って、且つ第2の凹部15の排水口15aに向けて直線状に延在している。また、このリブ21の第2方向Yのリブ幅は一定である。このリブ22は、前述の第1の機能及び第2の機能を兼ね備えている。
【0042】
リブ23,24,25はいずれも、底板部11の載置面11aにおいてリブ22よりもリブ21寄りに配置されている。これらのリブ23,24,25はいずれも、搭載方向X1に沿って第2方向Yのリブ幅が一定で直線状に延在した後、この搭載方向X1と交差する斜め方向である、金型の動作方向Dに沿って直線状に延在している。
【0043】
ここでいう「動作方向D」とは、係合部17を樹脂成形するときに使用される金型(図示省略)が載置面11aに平行に動作する方向である。このため、これらのリブ23,24,25はいずれも、前述の第1の機能と、金型の抜き出し動作が邪魔されるのを防ぐ機能(以下、「第3の機能」という。)と、を兼ね備えている。
【0044】
上記の第3の機能によれば、金型の抜き出し動作が円滑化されることによって、トレイ10の樹脂成形に要する時間を短縮できる。
【0045】
リブ26,27はいずれも、底板部11の載置面11aにおいてリブ25よりも搭載方向X1の前方側に配置されている。これらのリブ26,27はいずれも、第1の凹部15に向けて且つ金型の動作方向Dに沿って直線状に延在している。このため、これらのリブ26,27はいずれも、前述の第2の機能及び第3の機能を兼ね備えている。
【0046】
本実施形態では、底板部11の開口部11bの周辺において、いずれも第1方向Xに延在するリブ21,23,24,25が第2方向Yに互いに離間して配置されている。このような配置は、バッテリーBのスライド初期の動作を安定させることができるという作用効果を奏する。このような作用効果を得るために、第1方向Xに延在する少なくとも2つのリブが第2方向Yに互いに離間して配置された構造を採用するのが好ましい。
【0047】
図3に示されるように、リブ21,23〜25はいずれも、底板部11の開口部11b寄りの部位に、底板部11に対するバッテリーBの第1方向Xについての位置決めのための位置決め部20aを備えている。具体的な構造については後述するが、この位置決め部20aは、当該リブのリブ上面21a,23a〜25aの段差を利用したものであり、この段差部分がバッテリーBの搭載方向X1の後側領域B2に係合するように構成されている。このため、これらのリブ21,23〜25はいずれも、バッテリーBの位置決め機能(以下、「第4の機能」という。)を有する。
【0048】
この場合、底板部11に対するバッテリーBの位置決めにリブ21,23〜25を利用できる。また、このとき、簡単な段差構造によって位置決め部20aを構築できる。更に、バッテリーBが底板部11に対して位置決めされたことを段差によるバッテリーBの動きを利用して、即ち、所謂「クリック感」と称呼されるような音や手応えを利用して、ユーザに伝えることができる。
【0049】
この目的のために、位置決め部20aは、1〜3[mm]程度の段差として設定されるのが好ましい。この段差が2[mm]を超えて大きくなり過ぎると、バッテリーBをトレイ10から抜き出すための操作が難しくなる。一方で、この段差が2[mm]を下回って小さくなり過ぎると、本来の目的である位置決めの機能が低下する。
【0050】
上記の第4の機能によれば、底板部11に対するバッテリーBの位置決め操作が簡単であるため、バッテリーBの搭載に要する時間を短縮できる。また、バッテリーBの種類や寸法に合わせて位置決め部20aを配置することによって、バッテリーBの誤組みの発生を防ぐことができる。
【0051】
リブ23〜27はいずれも、金型の動作方向Dに沿って直線状に延在する部位を備え、この部位が拡幅部20bとして構成されている。各拡幅部20bは、搭載方向X1の前方側に延在するにつれてリブ幅d(動作方向Dと直交する方向のリブ幅)が拡張されるように構成されている。即ち、トレイ10を上方から視たときの拡幅部20bの平面視形状がテーパー形状をなしている。
【0052】
本構成によれば、リブ23〜27のそれぞれの拡幅部20bにおいては、バッテリーBが搭載方向X1にスライドするにつれてその下面に作用する摺動抵抗が増える。このため、これらのリブ23〜27はいずれも、バッテリーBのスライド後半の動きを弱めてこのバッテリーBがトレイ10に強く干渉するのを防ぐ機能(以下、「第5の機能」という。)を有する。
【0053】
リブ23〜26はいずれも、第1の凹部15のボルト穴15bと第2の凹部15のボルト穴15bとを結ぶ仮想線L1を横切って延在するように構成されている。また、これらのリブ21,23〜25はいずれも、第2の凹部15のボルト穴15bと第3の凹部15のボルト穴15bとを結ぶ仮想線L2を横切って延在するように構成されている。
【0054】
本構成によれば、ボルト穴15bに挿入されたボルト部材30によってトレイ10がパネル6に締結されるときに、このボルト部材30からトレイ10に作用する締め付け応力をこれらのリブ21,23〜26によって吸収することができる。このため、これらのリブ21,23〜26は、ボルト部材30からトレイ10に作用する締め付け応力を吸収する機能(以下、「第6の機能」という。)を有する。
【0055】
図4に示されるように、車両1にバッテリーBを搭載するとき、ユーザは、ボルト部材30によってパネル6に予め締結されたトレイ10の開口部11bを通じてこのバッテリーBを搭載前位置P1から搭載方向X1にスライドさせる。
【0056】
図5及び図6に示されるように、トレイ10は、バッテリーBの搭載前にボルト部材30によってパネル6に締結される。例えば、第1の凹部15について、この凹部15は、排水口15aを区画する筒部15cを備えており、この筒部15cがパネル6に設けられた貫通穴6aに係合するように構成されている。即ち、筒部15cは、貫通穴6aの内径を若干上回る外径を有する。
【0057】
本構成によれば、排水口15aのための排水経路を、第1の凹部15の筒部15cによってパネル6の下方まで確保してトレイ10内に溜まった水を車外へ確実に排水することが可能になる。また、第1の凹部15の筒部15cを利用してパネル6に対する凹部15の位置決めを簡単に行うことができる。
【0058】
そして、パネル6に対して位置決めされた凹部15は、ボルト穴15bとパネル6に設けられた貫通穴6bとの双方に挿入されたボルト部材30を用いてパネル6に締結される。その後、パネル6に締結されたトレイ10に向けてバッテリーBが押し込まれることによって、このバッテリーBが搭載方向X1にスライドし、搭載前位置P1を通って予定された搭載位置P2に設定される。
【0059】
このとき、バッテリーBは、搭載前位置P1から搭載位置P2のいずれにおいても、前述のように係合部17によって上下方向の動きが規制される。このため、バッテリーBの搭載方向X1のスライド動作を係合部17によって安定させることができる。
【0060】
搭載位置P2に設定された後のバッテリーBは、ボルト部材31と2つのブラケット32,33を用いてトレイ10に締結される。
【0061】
図7に示されるように、バッテリーBは、搭載前位置P1から搭載位置P2に向けて搭載方向X1にスライドする途中で、その後側領域B2がリブ21の位置決め部20aを通る。このとき、位置決め部20aは、リブ21のリブ上面21aに設けられた段差によって構成されている。このため、バッテリーBが搭載位置P2に至るときに、その後側領域B2が自重によって段差を下がってこの段差部分に係合して、バッテリーBが底板部11に対して位置決めされる。
【0062】
なお、図7では、リブ21の位置決め部20aのみを記載しているが、別のリブ23〜25の位置決め部20aによっても同様の位置決め効果が得られる。
【0063】
バッテリーBをトレイ10に締結するとき、底板部11の上方に配置されたブラケット32をバッテリーBの後側領域B2に押し当てた状態で、このブラケット32と底板部11の下方に配置されたブラケット33とをボルト部材31によって締結する。このとき、バッテリーBは、ボルト部材31の締結軸力によって底板部11に押し付けられて固定される。これにより、トレイ10の搭載位置P2に設置されたバッテリーBをこのトレイ10自体に固定することができる。
【0064】
なお、実施形態1に関連して、複数のリブ21〜27のそれぞれについて、当該リブに前述の第1〜第6の機能のうちの少なくとも1つの機能を付与した実施形態を採用することができる。例えば、複数のリブ21〜27はいずれも、第1〜第6の機能のうちのいずれか1つの機能のみを有するように構成されてもよい。
【0065】
以下、実施形態1に関連するその他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明は省略する。
【0066】
(実施形態2)
図8示されるように、参考形態のトレイ110は、リブ23〜27のそれぞれのリブ幅が一定であり、リブ23〜27のそれぞれが前述の拡幅部20bのような部位を備えていない点で実施形態1のトレイ10と相違している。
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0067】
参考形態のトレイ110によれば、複数のリブ21〜27の全てについてリブ幅を統一することができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0068】
なお、参考形態に関連して、リブ23〜27のうちの少なくとも1つのリブについてそのリブ幅を一定にした実施形態を採用することができる。
【0069】
(実施形態3)
図9にされるように、実施形態3のトレイ210は、リブ21〜27とは別のリブ28を備える点で実施形態1のトレイ10と相違している。リブ28は、リブ幅が一定で且つリブ21〜27と同様のリブ高さを有し、第2方向Yに直線状に延在するリブである。このリブ28は、バッテリーBをその搭載方向X1にスライド可能に支持するリブ上面28a(支持部)を有する。このリブ上面28aは、リブ21,24,25のリブ上面21a,24a,25aと面一になるように構成されている。このリブ28は、リブ21,24,25を連結するように構成された連結リブであり、底板部11を補強する本来の機能に加えて、バッテリーBを搭載方向X1にスライド可能に支持する機能と、リブ21,24,25を補強する機能と、を有する。
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0070】
実施形態3のトレイ210によれば、リブ28によって連結されたリブ21,24,25の剛性を高めることができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0071】
なお、実施形態3に関連して、複数のリブを連結するリブ28のような連結リブを複数設けることもできる。この場合、連結リブによって連結されるリブやその数は、必要に応じて適宜に選択可能である。
【0072】
(実施形態4)
図10に示されるように、実施形態4のトレイ310は、前述の係合部17のような部位を備えていない点で実施形態1のトレイ10と相違している。
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0073】
実施形態4のトレイ310によれば、トレイ10の係合部17のような部位を省略することで、この部位の成形にかかるコストを削減できるとともに、この部位の重量分を軽量化することができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0074】
なお、実施形態4に関連して、係合部17の全体を省略する代わりに、この係合部17を構成する2つの係合片17a,17bのうちのいずれか一方のみが省略された実施形態を採用することもできる。
【0075】
本発明は、上記の本実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変形が考えられる。例えば、本実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0076】
上記の実施形態では、バッテリーBをその搭載方向X1にスライド可能に支持するために底板部11の載置面11aに複数のリブ21〜27、或いは複数のリブ21〜28を設ける場合について例示したが、リブの設置数は限定されるものではない。例えば、バッテリーBのためのこの支持機能を、一筆書きように延在する1つのリブによって達成することもできる。
【0077】
上記の実施形態では、底板部11に対するバッテリーBの第1方向Xについての位置決めを行う位置決め部20aについて例示したが、この位置決め部20aに代えて或いは加えて、底板部11に対するバッテリーBの第2方向Yについての位置決めを行う位置決め部を採用することもできる。
【0078】
上記の実施形態では、位置決め部20aがリブ上面の段差を利用した構造である場合について例示したが、位置決めのための構造は段差に限定されるものではなく、段差とは別の構造を採用することもできる。例えば、バッテリーB側の突部に係合可能な切欠きをリブ上面に設け、この切欠きによって位置決め部20aの同様の機能が達成されるようにしてもよい。
【0079】
上記の実施形態では、リブの全体或いは一部が直線状に延在する場合について例示したが、これに代えて、全体或いは一部が曲線状に延在するリブや、複数の突起が直線或いは曲線に沿って断続的に配置されてなるリブなどを採用することもできる。
【0080】
上記の実施形態では、樹脂材料で一体成形されたトレイについて例示したが、トレイの素材は樹脂材料に限定されるものではなく、トレイが樹脂材料以外の材料によって構成されてもよい。また、同種の材料からなる複数の部材を組み合わせることによって、或いは種類の異なる材料からなる複数の部材を組み合わせることによって、トレイが構成されてもよい。
【0081】
上記の実施形態では、底板部11に排水口15aとボルト穴15bが3つずつ設けられる場合について例示したが、排水口15a及びボルト穴15bのそれぞれの設置数は3つ以外であってもよい。また、排水口15aの設置数とボルト穴15bの設置数は、同数であってもよいし、或いは異なる数であってもよい。
【0082】
上記の実施形態では、底板部11を貫通する水抜き穴によって排水口15aが構成される場合について例示したが、排水のための経路を確保することができれば排水口の構成は排水口15aに限定されるものではなく、この排水口15aに代えて、底板部11に設けられた溝などに連通する排水口を使用することもできる。
【0083】
上記の実施形態では、底板部11に3つの外周壁部12,13,14が立設される場合について例示したが、必要に応じて、3つの外周壁部12,13,14のうちの少なくとも1つを省略することもできる。
【0084】
上記の実施形態では、車両1のうちフロア2の下方空間2aに配置されるトレイについて例示したが、トレイの配置場所はフロア2の下方空間2aに限定されるものではなく、車両1のうちバッテリーBの搭載位置の要請に応じた適宜の箇所にトレイを配置することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 車両
6 パネル
10,110,210,310 車両用バッテリートレイ(トレイ)
11 底板部
11a 載置面
11b 開口部
12,13,14 外周壁部
15a 排水口
15b ボルト穴
17 係合部
20,21〜28 リブ
20a 位置決め部(段差)
20b 拡幅部
21a〜28a リブ上面(支持部)
30,31 ボルト部材
32,33 ブラケット
B バッテリー
D 金型の動作方向
L1,L2 仮想線
X1 搭載方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10