(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0011】
<1.ポンプシステムの全体構成>
まず、
図1を参照しつつ、本実施形態に係るポンプシステム1の全体構成の一例について説明する。
【0012】
図1に示すように、ポンプシステム1(流体移送システムの一例)は、モータ制御システム2と、ポンプ3とを有する。モータ制御システム2は、モータ4と、電力変換部5と、巻線切替器6と、電流センサ7と、制御部8とを有する。
【0013】
ポンプ3(流体移送装置の一例)は、モータ4により駆動されて流体を移送する。本明細書における「流体」には、液体、気体、それらの混合物(例えばミスト状の液体を混合した気体など)等が含まれる。また、本明細書における「ポンプ」は、流体を移送可能な装置であれば特に限定されるものではなく、例えば非容積式のポンプ(遠心ポンプ、斜流ポンプ、軸流ポンプ等)、容積式のポンプ(ピストンポンプ、歯車ポンプ、ねじポンプ、真空ポンプ等)、非容積式のコンプレッサ・送風機(遠心式、軸流式等)、容積式のコンプレッサ・送風機(ピストン式、ダイヤフラム式、ルーツ式等)等が含まれる。
【0014】
モータ4は、複数の巻線を備えており、ポンプ3を駆動する。本実施形態では、モータ4は例えば3相交流モータであり、3相交流電力の相(U相、V相、W相)ごとに設けられた第1巻線41(41A,41B,41C)及び第2巻線42(42A,42B,42C)を有する。モータ4は、同期型及び誘導型のいずれでもよいし、回転型及び直動型のいずれでもよい。
【0015】
電力変換部5は、直流電力を3相の交流電力に変換してモータ4に出力する。電力変換部5に入力される直流電力は、例えば交流電源(図示省略)から供給される交流電力をコンバータ(図示省略)により電力変換して生成してもよいし、例えば直流発電機やバッテリ等(図示省略)から供給されてもよい。電力変換部5は、図示しない制御部と、電力変換回路(
図2参照)とを有する。電力変換部5の制御部は、図示しない上位コントローラからの速度指令Spに基づいて所望の周波数の3相交流電力を発生するように電力変換回路を制御し、モータ4に電力を供給する。これにより、モータ4及びポンプ3の速度が制御される。本明細書における「速度」は、モータ4及びポンプ3が回転型である場合には回転速度(単位時間当たりの回転数)、モータ4及びポンプ3が直動型である場合にはストローク速度(単位時間当たりのストローク数)である。
【0016】
巻線切替器6は、制御部8からの切替指令Swに基づいてモータ4の複数の巻線の接続状態を切り替える。本実施形態では、巻線切替器6は、電力変換部5から出力された電力が、第1巻線41のみに供給される接続状態(以下、「第1接続状態」ともいう)と、第1巻線41及び第2巻線42の両方に供給される接続状態(以下、「第2接続状態」ともいう)と、を切り替える。
【0017】
電流センサ7は、電力変換部5から上記巻線切替器6により接続状態となった巻線に流れる交流電流を各相ごとに検出し、検出した電流Dcを制御部8に送信する。電流センサ7は、例えばモータ4に内蔵されてもよいし、モータ4の外部に設置されてもよい。
【0018】
制御部8は、巻線切替器6に切替指令Swを送信し、図示しない上位コントローラからの速度指令Sp及び電流センサ7からの電流Dcのうちの少なくとも速度指令Spに基づいて、上記第1接続状態と第2接続状態が切り替わるように巻線切替器6を制御する。制御部8は、例えば、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータとして構成される(後述の
図10参照)。
【0019】
なお、上述したポンプシステム1の構成は一例であり、上述の内容に限定されるものではない。例えば、電力変換部5や巻線切替器6が制御部8を一体的に備えた構成としてもよい。この場合、制御部8と電力変換部5の図示しない制御部とを共通化してもよい。また例えば、上記構成に加えて、ポンプ3によって移送される流体の物理量(例えば流量、圧力、密度、粘度、濃度、温度等)を検出する物理量センサを設けてもよい(後述の
図8参照)。
【0020】
<2.モータ制御システムの回路構成>
次に、
図2を参照しつつ、モータ制御システム2の回路構成の一例について説明する。なお、電力変換部5の制御部については図示を省略している。
【0021】
図2に示すように、電力変換部5は、一対の直流母線51A,51Bと、平滑コンデンサ52と、スイッチング素子53A〜53Fとを有する。直流母線51A,51Bは、図示しないコンバータ又は図示しない直流発電機やバッテリ等の正極及び負極にそれぞれ接続されている。平滑コンデンサ52の両端部は、直流母線51A,51Bにそれぞれ接続されている。スイッチング素子53Aとスイッチング素子53B、スイッチング素子53Cとスイッチング素子53D、スイッチング素子53Eとスイッチング素子53Fは、互いに電気的に直列に接続されており、各組の両端部が直流母線51A,51Bにそれぞれ接続されている。各スイッチング素子53A〜53Fは、例えばSiCやGaN等の半導体により構成されている。
【0022】
スイッチング素子53A〜53Fは、図示しない上位コントローラからの速度指令Spに応じて、直流母線51A側から直流母線51B側への電流を通す状態と遮断する状態とを切り替える。これにより、電力変換部5は、上位コントローラからの速度指令Spに応じてモータ4に3相交流電力を出力する。
【0023】
モータ4は、3相交流電力の相ごとに上述した第1巻線41A,41B,41C及び第2巻線42A,42B,42Cを有する。第1巻線41と第2巻線42は、電気的に直列に接続されている。第1巻線41の一方側は、電流センサ7を介して電力変換部5に接続されている。また、第1巻線41の他方側と第2巻線42の一方側との間の中間部は、巻線切替器6のダイオードブリッジ61に接続されている。また、第2巻線42の他方側は、巻線切替器6のダイオードブリッジ62に接続されている。
【0024】
巻線切替器6は、モータ4の第1巻線41A,41B,41Cの他方側から出力される3相の交流電力を整流するための6つのダイオード61A〜61Fを備えた上述のダイオードブリッジ61を有する。また、巻線切替器6は、モータ4の第1巻線41A,41B,41Cの他方側を短絡させるためのスイッチング素子63と、モータ4の第1巻線41を保護するためのコンデンサ64とを有する。上記スイッチング素子63は、例えばSiCやGaN等の半導体により構成されている。また、ダイオードブリッジ61の直流出力側には、2つのダイオード65A,65Bが設けられている。ダイオードブリッジ61と、スイッチング素子63と、コンデンサ64と、電力変換部5の平滑コンデンサ52とは、互いに電気的に並列となるように接続されている。
【0025】
また、巻線切替器6は、モータ4の第2巻線42A,42B,42Cの他方側から出力される3相の交流電力を整流するための6つのダイオード62A〜62Fを備えた上述のダイオードブリッジ62を有する。また、巻線切替器6は、モータ4の第2巻線42A,42B,42Cの他方側を短絡させるためのスイッチング素子66と、モータ4の第2巻線42を保護するためのコンデンサ67とを有する。上記スイッチング素子66は、例えばSiCやGaN等の半導体により構成されている。また、ダイオードブリッジ62の直流出力側には、2つのダイオード68A,68Bが設けられている。ダイオードブリッジ62と、スイッチング素子66と、コンデンサ67と、電力変換部5の平滑コンデンサ52とは、互いに電気的に並列となるように接続されている。
【0026】
スイッチング素子63,66は、制御部8からの切替指令Swに応じて、第1巻線41A,41B,41Cの他方側の短絡及び開放と、第2巻線42A,42B,42Cの他方側の短絡及び開放とを切り替える。第1巻線41A,41B,41Cの他方側が短絡され、且つ、第2巻線42A,42B,42Cの他方側が開放された場合には、電力変換部5の出力電力が第1巻線41のみに供給される第1接続状態となる。反対に、第1巻線41A,41B,41Cの他方側が開放され、且つ、第2巻線42A,42B,42Cの他方側が短絡された場合には、電力変換部5の出力電力が第1巻線41及び第2巻線42の両方に供給される第2接続状態となる。このようにして、巻線切替器6は、制御部8からの切替指令Swに応じて、上述した第1接続状態と第2接続状態とを切り替える。
【0027】
なお、上述したモータ制御システム2の回路構成は一例であり、上述の内容に限定されるものではない。例えば、巻線切替器6のスイッチング素子63,66を電磁開閉器等の機械的スイッチとしてもよい。仮にモータ制御システム2を電気自動車(EV)等に適用する場合には、巻線切替時のモータのショックを軽減して乗り心地に影響を与えないようにするために高速な応答性を備えた半導体スイッチング素子とするのが好ましい。しかし本実施形態のようにポンプシステムに適用する場合には、ポンプの運転に支障がなければ多少のショックは許容されるため、電磁開閉器等の機械的スイッチとすることも可能である。
【0028】
また、巻線切替器6の回路構成を、分離された第1巻線41と第2巻線42との間に電力変換部5と同様の回路構成を備えた切替回路を設けた構成(いわゆる交流切替方式)としてもよい(後述の
図9参照)。また、電力変換部5として、交流電力を直接、振幅や周波数が異なる交流電力に変換するマトリクスコンバータを用いてもよい。
【0029】
<3.モータ特性とポンプ特性>
次に、
図3A及び
図3Bを参照しつつ、モータ特性とポンプ特性の一例について説明する。
【0030】
まず、
図3Aを用いてモータ特性について説明する。巻線切替器6により、第1巻線41及び第2巻線42の両方が接続された第2接続状態に切り替えられた場合、モータ4の駆動力に寄与する巻線数が増大する。このため、
図3Aの左側に示すように、モータ4は、大きなトルクを出力可能である一方、出力可能な速度は低めに制限される、低速モータの特性を備える。この低速モータの特性により出力可能なトルク及び速度の範囲を図中に出力可能範囲Om1として示す。この場合、モータ効率の高い領域(例えば90%以上)を表す高効率範囲Hm1は、低速領域において広いトルク範囲に亘る。
【0031】
一方、巻線切替器6により、第1巻線41のみが接続された第1接続状態に切り替えられた場合、モータ4の駆動力に寄与する巻線数が減少する。このため、
図3Aの中央に示すように、モータ4は、低速から高速に亘る幅広い速度範囲においてトルクを出力可能である一方、出力可能なトルクは小さめに制限される、高速モータの特性を備える。この高速モータの特性により出力可能なトルク及び速度の範囲を図中に出力可能範囲Om2として示す。この場合、モータ効率の高い領域(例えば90%以上)を表す高効率範囲Hm2は、低トルク領域において幅広い速度範囲に亘る。
【0032】
モータ4は、巻線切替器6により上記第1接続状態及び第2接続状態のいずれにも切り替え可能であることから、
図3Aの右側に示すように、モータ4は、上述の低速モータの特性と高速モータの特性とを兼ね備える。この低速モータと高速モータの特性を兼ね備えた場合の出力可能なトルク及び速度の範囲を図中に出力可能範囲Om3として示す。その結果、モータ効率の高い領域(例えば90%以上)を表す高効率範囲Hm3は、低速領域において幅広いトルク範囲に亘り、且つ、低トルク領域において幅広い速度範囲に亘る。このように、モータ制御システム2においては、モータ4の高効率範囲を拡張できる。
【0033】
次に、
図3Bを用いてポンプ特性について説明する。
図3Bの左側に示すポンプ特性は、
図3Aの左側に示すモータ特性に対応している。すなわち、巻線切替器6により第2接続状態に切り替えられた場合、上述のようにモータ4が低速モータの特性を備える。このため、
図3Bの左側に示すように、ポンプ3は、高い揚程まで吐出可能である一方、吐出可能な流量は低めに制限される、低流量ポンプの特性を備える。この低流量ポンプの特性により吐出可能な揚程及び流量の範囲を図中に吐出可能範囲Op1として示す。この場合、ポンプ効率の高い領域(例えば90%以上)を表す高効率範囲Hp1は、低流量領域において広い揚程範囲に亘る。
【0034】
図3Bの中央に示すポンプ特性は、
図3Aの中央に示すモータ特性に対応している。すなわち、巻線切替器6により第1接続状態に切り替えられた場合、上述のようにモータ4は高速モータの特性を備える。このため、
図3Bの中央に示すように、ポンプ3は、低流量から高流量に亘る幅広い流量範囲において運転可能である一方、吐出可能な揚程は低めに制限される、高流量ポンプの特性を備える。この高流量ポンプの特性により吐出可能な揚程及び流量の範囲を図中に吐出可能範囲Op2として示す。この場合、ポンプ効率の高い領域(例えば90%以上)を表す高効率範囲Hp2は、低揚程領域においてやや幅広い流量範囲(低流量域以外の中流量〜高流量の範囲)に亘る。
【0035】
図3Bの右側に示すポンプ特性は、
図3Aの右側に示すモータ特性に対応している。すなわち、上述のようにモータ4は、低速モータの特性と高速モータの特性とを兼ね備える。このため、
図3Bの右側に示すように、ポンプ3は、低流量ポンプの特性と高流量ポンプの特性とを兼ね備える。この低流量ポンプと高流量ポンプの特性を兼ね備えた場合の吐出可能な揚程及び流量の範囲を図中に吐出可能範囲Op3として示す。その結果、ポンプ効率の高い領域(例えば90%以上)を表す高効率範囲Hp3は、低流量領域において幅広い揚程範囲に亘り、且つ、低揚程領域において幅広い流量範囲に亘る。このように、ポンプシステム1においては、ポンプ3の高効率範囲を拡張できる。
【0036】
<4.モータ効率とポンプ効率>
次に、
図4を参照しつつ、モータ効率とポンプ効率の関係の一例について説明する。
【0037】
図4に示すように、モータ4への入力(入力電力)をMI、モータ4の損失をMLとすると、入力MIから損失MLを差し引いた部分がモータ4の出力(機械出力)MOとなる。この場合、モータ効率MEは、入力MIに対する出力MOの比を百分率(%)で表した値となる。なお、損失MLは、例えば機械損、鉄損、銅損等である。
【0038】
ポンプシステム1においては、モータ4の出力MOがポンプ3への入力(機械入力)PIとなる。ポンプ3の損失をPLとすると、入力PIから損失PLを差し引いた部分がポンプ3の出力(機械出力)POとなる。この場合、ポンプ効率PEは、入力PIに対する出力POの比を百分率(%)で表した値となる。なお、損失PLは、例えば機械損失、水力損失、漏れ損失等である。
【0039】
ポンプシステム1においては、モータ効率MEが高くなるとポンプ3への入力PIも相対的に大きくなる。ここで、ポンプ3が容積式である場合、ポンプの損失PLは流量等によらずに略一定(低流量域での損失の増加は非常に少ない)である。このため、モータ効率MEが高いほど(ポンプ3への入力PIが大きいほど)ポンプ効率PEについても高くなるので、モータ効率を向上することによるポンプ効率(低〜高流量域)を向上させる効果は特に大きい。一方、ポンプ3が非容積式である場合、ポンプの損失PLのうち、機械損失や水力損失は流量等によらずに略一定であるが、漏れ損失は中流量〜高流量域では変動は少ないが低流量域で増大する性質を有する。このため、上述の
図3Bの中央に示すように、高流量ポンプの特性において低流量域では効率が低下する。但し、漏れ損失の変動が少ない流量域ではポンプの損失PLが略一定となるため、上記容積式の場合と同様、モータ効率MEが高いほどポンプ効率PEについても高くなる。したがって、本発明は容積式及び非容積式のポンプのいずれに対しても有効であるが、特に容積式のポンプに対して有効であり、好適である。
【0040】
<5.制御部の制御内容>
次に、
図5〜
図7を参照しつつ、制御部8による巻線切替制御の一例について説明する。なお、制御部8による以下の制御内容は、後述するCPU901(
図10参照)が実行するプログラムにより実装される。但し、制御内容の一部又は全部がASICやFPGA、その他の電気回路等の実際の装置により実装されてもよい。
【0041】
(5−1.第1接続状態から第2接続状態へ切り替え)
図5は、第1接続状態から第2接続状態に切り替える例である。
図5に示すように、ステップS10では、制御部8は巻線切替器6を制御して、第1巻線41のみが接続された第1接続状態とする。これにより、モータ4は高速モータの特性となり、ポンプ3は高流量ポンプの特性となる。
【0042】
ステップS20では、制御部8は、速度指令Spが所定の第1しきい値TV1よりも小さいか否か、又は、電流Dcが所定の第2しきい値TV2よりも大きいか否か、又は、速度指令Spが上記第1しきい値TV1よりも小さく、且つ、電流Dcが上記第2しきい値TV2よりも大きいか否か、を判定する。第1しきい値TV1は、例えば
図3Bの右側に示すように、低流量ポンプの最大流量である流量F1に対応したモータ速度(速度指令)である。また例えば、第2しきい値TV2は、高流量ポンプの最大揚程である揚程T1に対応したモータ電流である。上記3つの判定条件のいずれかが満たされるまで本ステップを繰り返し(S20:NO)、上記3つの判定条件のいずれかが満たされた場合には(S20:YES)、次のステップS30に移る。
【0043】
ステップS30では、制御部8は巻線切替器6を制御して、第1巻線41及び第2巻線42の両方が接続された第2接続状態に切り替える。これにより、モータ4は低速モータの特性となり、ポンプ3は低流量ポンプの特性となる。以上により、本フローを終了する。
【0044】
上記制御内容により、例えばモータ4を高速モータの特性としてポンプ3を高速駆動させている状態(高流量域)から、モータ4の速度を減少させてポンプ3の流量を減少させた場合に、ポンプ3が低流量ポンプの特性に切り替わるので、低流量域におけるポンプ効率の低下を抑制できる。
【0045】
また例えば、上記高流量域において、例えば流体の濃度、密度、粘度等が上昇したことに起因してモータ4の出力トルク(電流Dc)が増大した場合には、ポンプ3が低流量ポンプの特性に切り替わるので、必要な揚程を確保してポンプ3の駆動を継続できる。またこのとき、流量を減少させるので、例えば流体の処理装置(スラリー処理装置等)を過剰な負荷を想定して設計する必要がなくなり、最適設計することが可能となる。さらに、例えば異物の噛み込みや目詰まり等に起因してモータの出力トルク(電流Dc)が増大した場合には、流量を減少させることで過電流の発生や装置の破損、故障等を防止でき、安全性や信頼性を向上できる。
【0046】
(5−2.第2接続状態から第1接続状態へ切り替え)
図6は、上記
図5とは反対に、第2接続状態から第1接続状態に切り替える例である。
図6に示すように、ステップS110では、制御部8は巻線切替器6を制御して、第1巻線41及び第2巻線42の両方が接続された第2接続状態とする。これにより、モータ4は低速モータの特性となり、ポンプ3は低流量ポンプの特性となる。
【0047】
ステップS120では、制御部8は、速度指令Spが上記第1しきい値TV1よりも大きいか否か、又は、電流Dcが上記第2しきい値TV2よりも小さいか否か、又は、速度指令Spが上記第1しきい値TV1よりも大きく、且つ、電流Dcが上記第2しきい値TV2よりも小さいか否か、を判定する。上記3つの判定条件のいずれかが満たされるまでは本ステップを繰り返し(S120:NO)、上記3つの判定条件のいずれかが満たされた場合には(S120:YES)、次のステップS130に移る。
【0048】
ステップS130では、制御部8は巻線切替器6を制御して、第1巻線41のみが接続された第1接続状態に切り替える。これにより、モータ4は高速モータの特性となり、ポンプ3は高流量ポンプの特性となる。以上により、本フローを終了する。
【0049】
(5−3.第1接続状態、第2接続状態、第1接続状態の順で切り替え)
図7は、ポンプ3が例えば容積式ポンプ(例えば真空ポンプ)やコンプレッサ等である場合に好適な例である。本フローは、例えばポンプ3の起動時に開始される。
【0050】
図7に示すように、ステップS210では、制御部8は巻線切替器6を制御して、第1巻線41のみが接続された第1接続状態とする。これにより、モータ4は高速モータの特性となり、ポンプ3は高流量ポンプの特性となる。
【0051】
ステップS220では、制御部8は、電流Dcが上記第2しきい値TV2よりも大きいか否かを判定する。電流Dcが上記第2しきい値TV2よりも小さい場合には本ステップを繰り返し(S220:NO)、電流Dcが上記第2しきい値TV2よりも大きくなった場合には(S220:YES)、次のステップS230に移る。
【0052】
ステップS230では、制御部8は巻線切替器6を制御して、第1巻線41及び第2巻線42の両方が接続された第2接続状態に切り替える。これにより、モータ4は低速モータの特性となり、ポンプ3は低流量ポンプの特性となる。
【0053】
ステップS240では、制御部8は、電流Dcが上記第2しきい値TV2よりも小さいか否かを判定する。電流Dcが上記第2しきい値TV2よりも大きい場合には本ステップを繰り返し(S240:NO)、電流Dcが上記第2しきい値TV2よりも小さくなった場合には(S240:YES)、次のステップS250に移る。
【0054】
ステップS250では、制御部8は巻線切替器6を制御して、第1巻線41のみが接続された第1接続状態に切り替える。これにより、モータ4は高速モータの特性となり、ポンプ3は高流量ポンプの特性となる。以上により、本フローを終了する。
【0055】
上記制御内容により、次のような効果を得る。例えば、真空ポンプやコンプレッサ等における容積式のポンプ3の場合、起動時は大気圧との差圧が低いため低トルクで高速駆動して大流量を移送し、差圧が大きくなるにつれてトルクが上昇するので高トルクで低速駆動して流量を減少させ、所定の圧力を維持する、といった運転が行われる。その後、差圧が低くなった場合には再び低トルクで高速駆動して大流量を移送し、同様の運転を繰り返す。したがって、上記制御内容によれば、上記の運転に対応するようにポンプの特性を高流量ポンプ、低流量ポンプ、高流量ポンプと切り替えることができるので、高い効率を維持しながらポンプ3を運転することができる。
【0056】
また、巻線切替を行わない一般的なポンプに比べて、モータ4のトルク及び速度(ポンプ3の揚程及び流量に相当)について幅広い領域に対応することができる。例えば、流量変動への対応、圧力(揚程)変動への対応、流体密度の異なる各種流体への対応、流体粘度の異なる各種流体への対応、スラリー濃度等濃度の異なる各種流体への対応、温度変化によって生じる流体特性の変化への対応等、柔軟な対応が可能となる。
【0057】
<6.本実施形態による効果の例>
以上説明したように、本実施形態のポンプシステム1は、流体を移送するポンプ3と、複数の巻線41,42を備え、ポンプ3を駆動するモータ4と、複数の巻線41,42の接続状態を切り替える巻線切替器6と、速度指令Spに基づいてモータ4に電力を供給してポンプ3の速度を制御する電力変換部5と、速度指令Spに基づいて複数の巻線41,42の接続状態を切り替えるように、巻線切替器6を制御する制御部8とを有する。
【0058】
これにより、モータ4の速度に応じて複数の巻線41,42の接続状態を切り替えることにより、モータ4の速度変化に応じてモータ効率を最適化することができる。これにより、ポンプ3における流量の幅広い範囲においてポンプ効率の低下を抑制することが可能となる。したがって、特に流量が変動する条件でポンプ3が運転される場合に、大幅な省電力化を実現できる。
【0059】
また、本実施形態において、複数の巻線41,42が第1巻線41及び第2巻線42を含み、制御部8が、第1巻線41が接続された状態から、速度指令Spが所定の第1しきい値TV1よりも小さくなった場合に、第1巻線41及び第2巻線42が接続された状態に切り替えるように、巻線切替器6を制御する場合には、次のような効果を得る。
【0060】
上記制御により、例えばモータ4を高速モータの特性としてポンプ3を高速駆動させている状態(高流量域)から、モータ4の速度を減少させてポンプ3の流量を減少させた場合に、ポンプ3が低流量ポンプの特性に切り替わるので、低流量域におけるポンプ効率の低下を抑制できる。
【0061】
また、本実施形態において、ポンプシステム1が、接続された状態の巻線の電流を検出する電流センサ7をさらに有し、制御部8が、速度指令Spと検出された電流Dcに基づいて複数の巻線41,42の接続状態を切り替えるように、巻線切替器6を制御する場合には、次のような効果を得る。
【0062】
すなわち、モータ4の速度及び電流Dcに応じて複数の巻線41,42の接続状態を切り替えることにより、モータ4の速度変化及びトルク変化に応じてモータ効率を最適化することができる。これにより、ポンプ3における流量及び揚程の幅広い範囲において効率の低下を抑制することが可能となる。したがって、特に流量や揚程が変動する条件でポンプ3が運転される場合に、大幅な省電力化を実現できる。
【0063】
また、本実施形態において、複数の巻線41,42が第1巻線41及び第2巻線42を含み、制御部8が、第1巻線41が接続された状態から、電流Dcが所定の第2しきい値TV2よりも大きくなった場合に、第1巻線41及び第2巻線42が接続された状態に切り替えるように、巻線切替器6を制御する場合には、次のような効果を得る。
【0064】
上記制御により、例えばモータの第1巻線41を接続させてポンプ3を高速駆動させている状態(高流量域)において、モータ4の出力トルクが増大した場合に第1巻線41及び第2巻線42に切り替えることにより、高い効率を維持しながら、ポンプ3の流量を減少させつつ揚程を増大させることができる。
【0065】
これにより、例えば高流量ポンプの特性において水処理設備等において流体中のスラリー濃度が上昇したことに起因してモータ4の出力トルク(電流Dc)が増大した場合には、低流量ポンプの特性に切り替えることで必要な揚程を確保させ、ポンプ3の駆動を継続できる。また、流量を減少させることで過剰な負荷を想定してスラリー処理装置を設計する必要がなくなり、最適設計することが可能となる。また、例えば異物の噛み込みや目詰まり等に起因してモータ4の出力トルク(電流Dc)が増大した場合には、流量を減少させることで過電流の発生や装置の破損、故障等を防止でき、安全性や信頼性を向上できる。
【0066】
また、本実施形態において、ポンプ3が容積式のポンプやコンプレッサであり、制御部8が、ポンプ3の起動時に第1巻線41が接続された状態に切り替え、電流Dcが第2しきい値TV2よりも大きくなった場合に第1巻線41及び第2巻線42が接続された状態に切り替え、電流Dcが第2しきい値TV2よりも小さくなった場合に第1巻線41が接続された状態に切り替えるように、巻線切替器6を制御する場合には、次のような効果を得る。
【0067】
例えば真空ポンプやコンプレッサ等における容積式のポンプは、起動時は大気圧との差圧が低いため低トルクで高速駆動して大流量を移送し、差圧が大きくなるにつれてトルクが上昇するので高トルクで低速駆動して流量を減少させ、所定の圧力を維持する。その後、差圧が低くなった場合には再び低トルクで高速駆動して大流量を移送し、同様の運転を繰り返す。したがって、本実施形態によれば上記の運転に対応するように第1巻線41、第1巻線41及び第2巻線42、第1巻線41の切り替えを実行することにより、高い効率を維持しながら運転することができる。
【0068】
<7.変形例>
なお、開示の実施形態は、上記に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例について説明する。
【0069】
(7−1.流体の物理量を使用する場合)
図8を参照しつつ、本変形例に係るポンプシステム1Aの全体構成の一例について説明する。
【0070】
図8に示すように、ポンプシステム1Aは、上述したポンプシステム1の構成に加えて、ポンプ3によって移送される流体の物理量を検出する物理量センサ9を有する。本明細書における「物理量」には、例えば流量、圧力、密度、粘度、濃度、温度等が含まれ、「物理量センサ」には、例えば流量計、圧力計、密度計、粘度計、濃度計、温度計等が含まれる。
【0071】
物理量センサ9は、例えばポンプ3の吐出口(図示省略)や吸込口(図示省略)、あるいは、吐出口や吸込口に接続された配管やチューブ(図示省略)における検出する物理量に好適な適宜の場所等に設置される。なお、物理量センサ9の数は単数でも複数でもよい。物理量センサ9は、検出した物理量Pqを制御部8に送信する。
【0072】
これにより、制御部8は、前述の
図5〜
図7に示す制御を実行する際に、例えば速度指令Spに加えて流量を判定要素として用いたり、電流Dcに加えて又は代えて圧力や密度、粘度、濃度等を判定要素として用いたり、新たに温度を判定要素に加えることが可能となる。その結果、ポンプ3が使用される流体移送システム(図示省略)への適合性がより高い巻線切替制御を行うことが可能となる。物理量を判定要素とした具体例としては、例えば以下のような場合が考えられる。
【0073】
(7−1−1.ポンプ3の吐出圧(揚程)を変動させる場合(圧力・流量を判定要素とする場合))
例えば吐出圧が変動する条件でポンプ3を運転する場合、物理量センサ9として圧力センサがポンプ3の吐出口近傍に設けられる。このとき、流量センサがポンプ3の吐出口側等に設けられてもよい。そして、低吐出圧の場合は所定の低圧力側設定値、高吐出圧の場合は所定の高圧力側設定値が設定される。例えば、低吐出圧から高吐出圧に切り替える際は、圧力設定値が低圧力側設定値から高圧力側設定値に切り替わり、所定の流量を確保するように圧力の上昇に応じて巻線切替制御が実行され、高圧力側設定値を維持するようにポンプ3の運転(モータ4の制御)が行なわれる。
【0074】
実質的な物理量を監視することにより、精度良く巻線切替制御を行なうことができるとともに、一般的なポンプに比べ幅広い領域での吐出圧(揚程)の変動が可能である。
【0075】
(7−1−2.ポンプ3(送風機)の吐出流量を変動させる場合(流量・圧力を判定要素とする場合))
例えばポンプ3(送風機)から吐出する空気等を水槽の底部から水中に散気する場合、物理量センサ9として流量センサがポンプ3(送風機)の吐出側等に設けられる。このとき、圧力センサがポンプ3(送風機)の吐出口近傍に設けられてもよい。低流量の場合は所定の低流量側設定値、高流量の場合は所定の高流量側設定値が設定される。例えば、高流量から低流量に切り替える際は、流量設定値が高流量側設定値から低流量側設定値に切り替わり、所定の圧力(水深等に対応する圧力)を確保するように流量の低下に応じて巻線切替制御が実行され、低流量側設定値を維持するようにポンプ3(送風機)の運転(モータ4の制御)が行なわれる。
【0076】
上記と同様、実質的な物理量を監視することにより精度良く巻線切替制御を行なうことができる。また、一般的なポンプ(送風機)では、低流量(低速度)領域では水深や配管抵抗等に対応する吐出圧力を維持するためのモータのトルクを確保できない場合があり、流量の変動領域が狭くなるが、上記の巻線切替制御により、一般的なポンプ(送風機)に比べ幅広い領域での流量の変動が可能である。
【0077】
また本変形例によれば、例えば流量計や圧力計等の物理量センサは、通常、ポンプ3が使用される流体処理システムにおいて予め設置されている。このような既存設備を流用することで、新たに物理量センサを設置する必要が無くなりコストを削減できる。
【0078】
(7−2.巻線切替器の別の回路構成)
図9を参照しつつ、本変形例に係るモータ制御システム2Aの全体構成の一例について説明する。なお、
図9において、前述の
図2と同様の構成には同符号を付し、説明を省略する。
【0079】
モータ制御システム2Aでは、第1巻線41と第2巻線42とが互いに分離した状態でモータ4Aに内蔵されている。第1巻線41の一方側は、電流センサ7を介して電力変換部5に接続されている。また、第1巻線41の他方側と第2巻線42の一方側とは、個別に巻線切替器6Aに接続されている。また、第2巻線42の他方側は、第2巻線42A,42B,42C同士が互いに電気的に接続され、中性点NP1を構成する。
【0080】
巻線切替器6Aは、三相交流電力の相ごとに設けられた3つのスイッチング素子69A,69B,69Cと、3つのスイッチング素子69D,69E,69Fとを有する。各スイッチング素子69A〜69Fは、例えばSiCやGaN等の半導体により構成されるが、前述のように電磁開閉器等の機械的スイッチとしてもよい。スイッチング素子69A,69B,69Cの一方側は互いに電気的に接続され、中性点NP2を構成する。スイッチング素子69A,69B,69Cの他方側と、スイッチング素子69D,69E,69Fの一方側とは、第1巻線41の他方側にそれぞれ接続されている。また、スイッチング素子69D,69E,69Fの他方側は、第1巻線41の一方側にそれぞれ接続されている。
【0081】
スイッチング素子69A,69B,69Cは、制御部8からの切替指令Swに応じて、バイパス回路60から第1巻線41A,41B,41Cへの電流を通す状態と、バイパス回路60から第1巻線41A,41B,41Cへの電流を遮断する状態とを、切り替える。スイッチング素子69D,69E,69Fは、制御部8からの切替指令Swに応じて、第1巻線41A,41B,41Cから第2巻線42A,42B,42Cへの電流を通す状態と、第1巻線41A,41B,41Cから第2巻線42A,42B,42Cへの電流を遮断する状態とを、切り替える。
【0082】
例えばスイッチング素子69A,69B,69Cが閉成され、且つ、スイッチング素子69D,69E,69Fが開成された場合には、電力変換部5の出力電力が第1巻線41のみに供給される第1接続状態となる。反対に、例えばスイッチング素子69A,69B,69Cが開成され、且つ、スイッチング素子69D,69E,69Fが閉成された場合には、電力変換部5の出力電力が第1巻線41及び第2巻線42の両方に供給される第2接続状態となる。このようにして、巻線切替器6は、制御部8からの切替指令Swに応じて、上述した第1接続状態と第2接続状態とを切り替える。
【0083】
本変形例においても、上記実施形態と同様の効果を得る。
【0084】
なお、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。その他、一々例示はしないが、上記実施形態や各変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【0085】
<8.制御部のハードウェア構成例>
次に、
図10を参照しつつ、上述した制御部8のハードウェア構成例について説明する。
【0086】
図10に示すように、制御部8は、例えば、CPU901と、ROM903と、RAM905と、ASIC又はFPGA等の特定の用途向けに構築された専用集積回路907と、入力装置913と、出力装置915と、記録装置917と、ドライブ919と、接続ポート921と、通信装置923とを有する。これらの構成は、バス909や入出力インターフェース911を介し相互に信号を伝達可能に接続されている。
【0087】
プログラムは、例えば、ROM903やRAM905、記録装置917等に記録しておくことができる。
【0088】
また、プログラムは、例えば、フレキシブルディスクなどの磁気ディスク、各種のCD・MOディスク・DVD等の光ディスク、半導体メモリ等のリムーバブルな記録媒体925に、一時的又は非一時的(永続的)に記録しておくこともできる。このような記録媒体925は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することもできる。この場合、これらの記録媒体925に記録されたプログラムは、ドライブ919により読み出されて、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置917に記録されてもよい。
【0089】
また、プログラムは、例えば、ダウンロードサイト・他のコンピュータ・他の記録装置等(図示せず)に記録しておくこともできる。この場合、プログラムは、LANやインターネット等のネットワークNWを介し転送され、通信装置923がこのプログラムを受信する。そして、通信装置923が受信したプログラムは、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置917に記録されてもよい。
【0090】
また、プログラムは、例えば、適宜の外部接続機器927に記録しておくこともできる。この場合、プログラムは、適宜の接続ポート921を介し転送され、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置917に記録されてもよい。
【0091】
そして、CPU901が、上記記録装置917に記録されたプログラムに従い各種の処理を実行することにより、上記の
図5〜
図7等に示す制御内容が実現される。この際、CPU901は、例えば、上記記録装置917からプログラムを直接読み出して実行してもよいし、RAM905に一旦ロードした上で実行してもよい。更にCPU901は、例えば、プログラムを通信装置923やドライブ919、接続ポート921を介し受信する場合、受信したプログラムを記録装置917に記録せずに直接実行してもよい。
【0092】
また、CPU901は、必要に応じて、例えばマウス・キーボード・マイク(図示せず)等の入力装置913から入力する信号や情報に基づいて各種の処理を行ってもよい。
【0093】
そして、CPU901は、上記の処理を実行した結果を、例えば表示装置や音声出力装置等の出力装置915から出力してもよく、さらにCPU901は、必要に応じてこの処理結果を通信装置923や接続ポート921を介し送信してもよく、上記記録装置917や記録媒体925に記録させてもよい。