特許第6846024号(P6846024)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6846024モード多重光信号の測定装置、光受信装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6846024
(24)【登録日】2021年3月3日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】モード多重光信号の測定装置、光受信装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/079 20130101AFI20210315BHJP
   G01M 11/00 20060101ALI20210315BHJP
   G01M 11/02 20060101ALI20210315BHJP
   H04B 10/25 20130101ALI20210315BHJP
   H04J 14/04 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   H04B10/079 150
   G01M11/00 Q
   G01M11/02 N
   H04B10/25
   H04J14/04
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-181458(P2017-181458)
(22)【出願日】2017年9月21日
(65)【公開番号】特開2019-57839(P2019-57839A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2019年8月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】相馬 大樹
(72)【発明者】
【氏名】多賀 秀徳
(72)【発明者】
【氏名】釣谷 剛宏
【審査官】 対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−156308(JP,A)
【文献】 特開2009−268029(JP,A)
【文献】 特開2016−167762(JP,A)
【文献】 特開2017−036967(JP,A)
【文献】 特開2012−227764(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0003826(US,A1)
【文献】 WAKAYAMA Y. et al.,DMD measurement of 114-SDM transmission fibre using low-coherence interferometry with digital holographic processing,ECOC 2015,米国,IEEE,2015年
【文献】 CHEN H. S. et al.,Experimental Demonstration of 2 x 2 MIMO Based on Mode Group Division Multiplexing over 250m GI-MMF,Asia Communications and Photonics Conference and Exhibision,IEEE,2010年12月,page 429-430
【文献】 TSEKREKOS C. P. et al.,Design Considerations for a Transparent Mode Group Diversity Multiplexing Link,PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS,米国,IEEE,2006年11月15日,VOL. 18, NO. 22,page 2359-2361
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 14/04
H04B 10/25
H04B 10/079
G01M 11/00−11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モード多重光通信システムの伝送特性を測定する測定装置であって、
前記モード多重光通信システムの光受信装置から、前記光受信装置が各モードで受信した信号から各モードで送信された信号を生成する処理で使用する複数の行列を受信する受信手段と、
前記複数の行列の各要素に基づき前記モード多重光通信システムの伝送特性を測定する測定手段と、
を備え
前記複数の行列の数は、前記処理のタップ数に等しく、
前記複数の行列の各行列は異なる時刻に対応し、前記処理において前記光受信装置が対応する時刻に受信した信号を変換するために使用され、
前記測定手段は、前記複数の行列の各行列の同じ行の複数の要素のうちの対角要素を除く要素の合計値に基づき、第1モードから前記第1モード以外のモードへのモード間クロストークを測定することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
モード多重光通信システムの伝送特性を測定する測定装置であって、
前記モード多重光通信システムの光受信装置から、前記光受信装置が各モードで受信した信号から各モードで送信された信号を生成する処理で使用する複数の行列を受信する受信手段と、
前記複数の行列の各要素に基づき前記モード多重光通信システムの伝送特性を測定する測定手段と、
を備え、
前記複数の行列の数は、前記処理のタップ数に等しく、
前記複数の行列の各行列は異なる時刻に対応し、前記処理において前記光受信装置が対応する時刻に受信した信号を変換するために使用され、
前記測定手段は、前記複数の行列の各行列の同じ列の複数の要素のうちの対角要素を除く要素の合計値に基づき、第1モード以外のモードから前記第1モードへのモード間クロストークを測定することを特徴とする測定装置。
【請求項3】
モード多重光通信システムの伝送特性を測定する測定装置であって、
前記モード多重光通信システムの光受信装置から、前記光受信装置が各モードで受信した信号から各モードで送信された信号を生成する処理で使用する複数の行列を受信する受信手段と、
前記複数の行列の各要素に基づき前記モード多重光通信システムの伝送特性を測定する測定手段と、
を備え、
前記複数の行列の数は、前記処理のタップ数に等しく、
前記複数の行列の各行列は異なる時刻に対応し、前記処理において前記光受信装置が対応する時刻に受信した信号を変換するために使用され、
前記測定手段は、前記光受信装置に対向する光送信装置が各モードの光信号を同じ送信電力で送信しているときの前記複数の行列の各行列の同じ行の複数の要素の合計値を求め、各行の合計値の比較によりモード依存損失を測定することを特徴とする測定装置。
【請求項4】
モード多重光通信システムの伝送特性を測定する測定装置であって、
前記モード多重光通信システムの光受信装置から、前記光受信装置が各モードで受信した信号から各モードで送信された信号を生成する処理で使用する複数の行列を受信する受信手段と、
前記複数の行列の各要素に基づき前記モード多重光通信システムの伝送特性を測定する測定手段と、
を備え、
前記複数の行列の数は、前記処理のタップ数に等しく、
前記複数の行列の各行列は異なる時刻に対応し、前記処理において前記光受信装置が対応する時刻に受信した信号を変換するために使用され、
前記測定手段は、前記複数の行列の内、第1行の対角要素が最大である第1行列と、前記複数の行列の内、第2行の対角要素が最大である第2行列と、を判定し、前記第1行列に対応する時刻と、前記第2行列に対応する時刻と、の差に基づき、モード間遅延差を測定することを特徴とする測定装置。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載の測定装置としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項6】
モード多重光通信システムの光受信装置であって、
受信するモード多重光信号に含まれる既知データ列に基づき、前記光受信装置が各モードで受信した信号から各モードで送信された信号を生成する処理で使用する複数の行列を求める行列判定手段と、
前記複数の行列の各要素に基づき前記モード多重光通信システムの伝送特性を測定する測定手段と、
を備え
前記複数の行列の数は、前記処理のタップ数に等しく、
前記複数の行列の各行列は異なる時刻に対応し、前記処理において前記光受信装置が対応する時刻に受信した信号を変換するために使用され、
前記測定手段は、前記複数の行列の各行列の同じ行の複数の要素のうちの対角要素を除く要素の合計値に基づき、第1モードから前記第1モード以外のモードへのモード間クロストークを測定することを特徴とする光受信装置。
【請求項7】
モード多重光通信システムの光受信装置であって、
受信するモード多重光信号に含まれる既知データ列に基づき、前記光受信装置が各モードで受信した信号から各モードで送信された信号を生成する処理で使用する複数の行列を求める行列判定手段と、
前記複数の行列の各要素に基づき前記モード多重光通信システムの伝送特性を測定する測定手段と、
を備え、
前記複数の行列の数は、前記処理のタップ数に等しく、
前記複数の行列の各行列は異なる時刻に対応し、前記処理において前記光受信装置が対応する時刻に受信した信号を変換するために使用され、
前記測定手段は、前記複数の行列の各行列の同じ列の複数の要素のうちの対角要素を除く要素の合計値に基づき、第1モード以外のモードから前記第1モードへのモード間クロストークを測定することを特徴とする光受信装置。
【請求項8】
モード多重光通信システムの光受信装置であって、
受信するモード多重光信号に含まれる既知データ列に基づき、前記光受信装置が各モードで受信した信号から各モードで送信された信号を生成する処理で使用する複数の行列を求める行列判定手段と、
前記複数の行列の各要素に基づき前記モード多重光通信システムの伝送特性を測定する測定手段と、
を備え、
前記複数の行列の数は、前記処理のタップ数に等しく、
前記複数の行列の各行列は異なる時刻に対応し、前記処理において前記光受信装置が対応する時刻に受信した信号を変換するために使用され、
前記測定手段は、前記光受信装置に対向する光送信装置が各モードの光信号を同じ送信電力で送信しているときの前記複数の行列の各行列の同じ行の複数の要素の合計値を求め、各行の合計値の比較によりモード依存損失を測定することを特徴とする光受信装置。
【請求項9】
モード多重光通信システムの光受信装置であって、
受信するモード多重光信号に含まれる既知データ列に基づき、前記光受信装置が各モードで受信した信号から各モードで送信された信号を生成する処理で使用する複数の行列を求める行列判定手段と、
前記複数の行列の各要素に基づき前記モード多重光通信システムの伝送特性を測定する測定手段と、
を備え、
前記複数の行列の数は、前記処理のタップ数に等しく、
前記複数の行列の各行列は異なる時刻に対応し、前記処理において前記光受信装置が対応する時刻に受信した信号を変換するために使用され、
前記測定手段は、前記複数の行列の内、第1行の対角要素が最大である第1行列と、前記複数の行列の内、第2行の対角要素が最大である第2行列と、を判定し、前記第1行列に対応する時刻と、前記第2行列に対応する時刻と、の差に基づき、モード間遅延差を測定することを特徴とする光受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モード多重光通信システムの伝送特性の監視・測定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
伝送容量の拡大のため、モード多重技術を使用するモード多重光通信システムが提案されている。モード多重光通信システムの光送信装置は、例えば、複数の基本モードの光信号のうちの1つ以外をモード変換器で異なる高次モードの光信号に変換し、1つの基本モード及び複数の高次モードの光信号をモード多重してマルチモード光ファイバ(以下、単に光ファイバと呼ぶ。)に出力する。また、モード多重光通信システムの光受信装置は、光ファイバから受信するモード多重光信号のモード分離を行い、モード変換により総ての光信号を基本モードにした後、光電変換を行って復調・復号を行う。
【0003】
モード多重光通信システムでは、所謂、モード間クロストーク(以下、MXTと表示)つまり、あるモードで送信されるべき光信号から、他のモードの光信号が生成されることが生じ得る。また、モード多重光通信システムにおけるモード多重光信号の損失はモード毎に異なる。これは、モード依存損失(以下、MDLと表示)と呼ばれる。さらに、モード多重光通信システムにおけるモード多重光信号の伝搬遅延もモード毎に異なる。これは、モード間遅延差(以下、DMDと表示)と呼ばれる。
【0004】
MXT、MDL及びDMDは、モード多重光信号の品質や、光受信装置における信号処理の処理負荷に影響を与えるため、モード多重光通信システムにおいては、MXT、MDL及びDMDといった伝送特性の監視・測定を行うことが重要になる。ここで、特許文献1はMXTの測定方法を開示し、非特許文献1は、MDLの測定方法を開示し、特許文献2は、DMDの測定方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−167762号公報
【特許文献2】特開2017−036967号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】G.Labroille,et al.,"Mode selective 10−mode multiplexer based on multi−plane light conversion",OFC,Th3E.5,2016年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記先行技術文献の構成は、いずれも、アウトオブサービスで測定を行うものであり、サービス提供中、つまり、インサービスで測定を行うことはできない。つまり、MXT、MDL及びDMDといったモード多重光通信システムの伝送特性をリアルタイムで監視・測定することができない。
【0008】
本発明は、モード多重光通信システムの伝送特性をインサービスで測定できる測定装置、光受信装置及びプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によると、モード多重光通信システムの伝送特性を測定する測定装置は、前記モード多重光通信システムの光受信装置から、前記光受信装置が各モードで受信した信号から各モードで送信された信号を生成する処理で使用する複数の行列を受信する受信手段と、前記複数の行列の各要素に基づき前記モード多重光通信システムの伝送特性を測定する測定手段と、を備え、前記複数の行列の数は、前記処理のタップ数に等しく、前記複数の行列の各行列は異なる時刻に対応し、前記処理において前記光受信装置が対応する時刻に受信した信号を変換するために使用され、前記測定手段は、前記複数の行列の各行列の同じ行の複数の要素のうちの対角要素を除く要素の合計値に基づき、第1モードから前記第1モード以外のモードへのモード間クロストークを測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、モード多重光通信システムの伝送特性をインサービスで測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態によるモード多重光通信システムの構成図。
図2】一実施形態による測定装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態は例示であり、本発明を実施形態の内容に限定するものではない。また、以下の各図においては、実施形態の説明に必要ではない構成要素については図から省略する。
【0013】
図1は、モード多重光通信システムの構成図である。光送信装置の変換部50は、多重数と同じ数だけ設けられており、基本モードの光信号をそれぞれ所定の伝搬モード(以下、単にモードと呼ぶ。)に変換する。なお、基本モードのまま伝送する光信号が入力される変換部50は、実質的にはモード変換を行わない。多重部51は、各モードの光信号をモード多重して、マルチモード光ファイバを含む光伝送路60に送信する。光受信装置の分離部52は、光伝送路60から受信するモード多重光信号のモード分離を行い、各モードの光信号を対応する変換部53に出力する。変換部53は、入力される光信号のモードを基本モードに変換する。なお、基本モードのまま伝送された光信号が入力される変換部53は、実質的にはモード変換を行わない。光受信部54は、対応する変換部53からの光信号の光電変換を行い、処理部55に出力する。
【0014】
上述したMXTにより、ある光受信部54が受信する光信号には、対応する変換部50に入力された光信号とは異なる光信号の成分が含まれている。したがって、光受信部54が出力する電気信号は、対応する変換部50に入力された光信号に対応する成分のみならず、他の変換部50に入力された光信号に対応する成分も含まれる。このため、処理部55は、所謂、MIMO(多入力多出力)処理を行い、各変換部50に入力された光信号により搬送されている情報を取り出す。具体的には、処理部55は、モード多重光通信システムのチャネル行列を求め、さらに、この逆行列を求める。この逆行列を使用することで、処理部55は、光送信装置に入力された個々の光信号により搬送されている情報を取り出す。なお、この逆行列は、例えば、光送信装置が各光信号に含めて繰り返し送信する、それぞれが光受信装置において既知のデータ列に基づき処理部55が推定・判定する。
【0015】
例えば、処理部55が3タップのMIMO処理を行う場合について説明する。なお、以下では、説明の簡略化のため、2つの光信号がモード多重されているものとする。時刻tにおいて、光送信装置が送信した1番目の光信号に対応する電気信号をT(t)とし、2番目の光信号に対応する電気信号をT(t)とし、時刻t、(t−1)及び(t−2)において、1番目の光信号に対応する光受信部54が出力する電気信号をそれぞれR(t)、R(t−1)、R(t−2)とし、2番目の光信号に対応する光受信部54が出力する電気信号をそれぞれR(t)、R(t−1)、R(t−2)とすると、T(t)及びT(t)は以下の式(1)により求められる。
【0016】
【数1】
ここで、H、H及びHは、それぞれ、以下の様に表される。
【0017】
【数2】
要素a〜a、要素b〜b、要素c〜c、要素d〜dは、タップ係数とも呼ばれ、それぞれ、上述した様に、光信号に含められる既知のデータ列に基づき処理部55がその値を判定する。なお、以下の説明では、当該技術分野で使用される表現と同様に、逆行列H、H及びHを纏めて、以下の逆行列Hで表現する。
【0018】
【数3】
ここで、要素a〜dは、それぞれ、a={a,a,a}、要素b={b,b,b}、c={c,c,c}、d={d,d,d}で示されるベクトルである。また、式(1)を、当該技術分野で使用される表現と同様に、逆行列Hを使用して以下の式(2)の様に表現するものとする。
【0019】
【数4】
【0020】
ここで、要素R及びRは、それぞれ、R={R(t)、R(t−1)、R(t−2)}、R={R(t)、R(t−1)、R(t−2)}で示されるベクトルである。
【0021】
図1に戻り、処理部55は、復調・復号に使用するこの逆行列Hを測定装置(監視装置)6に出力する。測定装置6は、この逆行列HからMXT、MDL及びDMDを監視・測定する。図2は、測定装置6の構成図である、受信部61は、光受信装置が出力する逆行列Hを受信して保存する。MXT測定部62、MDL測定部63及びDMD測定部64は、それぞれ、受信部61が保存している逆行列Hに基づきMXT、MDL及びDMDを測定し、測定結果を保存部65に保存する。なお、光受信装置は、例えば、受信する光信号に含まれる既知データ列に基づき逆行列Hを更新する度に更新後の逆行列Hを測定装置6に出力し、MXT測定部62、MDL測定部63及びDMD測定部64は、それぞれ、受信部61が保存している逆行列Hが更新されると、MXT、MDL及びDMDを測定し、測定結果を保存部65に保存する。
【0022】
以下では、MXT測定部62、MDL測定部63及びDMD測定部64での処理についてそれぞれ説明する。なお、以下の説明では、LP01モード、LP11aモード、LP11bモードの3つの光信号がモード多重されている場合について説明する。この場合、行列Hは、以下の様に3×3行列となる。
【0023】
【数5】
なお、タップ数が3であるものとすると、要素a={a,a,a}である。要素b〜iについても同様である。また、光送信装置が送信したLP01モードの光信号に対応する電気信号をT01とし、LP11aモードの光信号に対応する電気信号をT11aとし、LP11bモードの光信号に対応する電気信号をT11bとし、LP01モードの光信号に対応する光受信部54が出力する電気信号をR01とし、LP11aモードの光信号に対応する光受信部54が出力する電気信号をR11aとし、LP11bモードの光信号に対応する光受信部54が出力する電気信号をR11bとすると、式(2)と同様に、T01、T11a及びT11bは、式(4)に基づき求めることができる。
【0024】
【数6】
【0025】
<MXT測定>
式(4)から、要素b及びcは、それぞれ、LP01モードの光信号からLP11aモード及びLP11bモードの光信号に変換された成分を示している。したがって、要素bとcの合計、つまり、要素b〜bと要素c〜cの合計値は、LP01モードから他の伝搬モードに変換された成分の強さを示すことになり、MXTが測定される。同様に、式(4)から要素d及びgは、それぞれ、LP11aモード及びLP11bモードの光信号からLP01モードの光信号に変換された成分を示している。したがって、要素dと要素gの合計、つまり、要素d〜dと要素g〜gの合計値は、他のモードからLP01モードに変換された成分の強さを示すことになり、MXTが測定される。他のモードについても同様である。
【0026】
この様に、MXT測定部62は、逆行列Hの1つの行の対角要素以外の要素に基づき、MXTを測定することができる。また、MXT測定部62は、逆行列Hの1つの列の対角要素以外の要素に基づき、MXTを測定することができる。
【0027】
<MDL測定>
式(4)から、要素a、b及びcは、それぞれ、光送信装置がLP01モードとして送信する様に処理した光信号のうち、LP01モードとして光受信装置において受信された光信号の成分、LP11aモードとして光受信装置において受信された光信号の成分、及び、LP11bモードとして光受信装置において受信された光信号の成分を示している。したがって、要素a、b及びcの合計、つまり、要素a〜aと、要素b〜bと、要素c〜cの合計値は、光送信装置がLP01モードとして送信する様に処理した光信号の光受信装置における受信電力の合計に対応する値となる。同様に、要素d、e及びfの合計値は、光送信装置がLP11aモードとして送信する様に処理した光信号の光受信装置における受信電力の合計に対応する値となり、要素g、h及びiの合計値は、光送信装置がLP11bモードとして送信する様に処理した光信号の光受信装置における受信電力の合計に対応する値となる。一般的に、光送信装置においては各光信号の送信電力が等しいため、各行成分の合計値の差により、MDLを測定することができる。
【0028】
この様に、MDL測定部63は、逆行列Hの各行の要素を合計し、各行の合計値を比較することでMDLを測定することができる。
【0029】
<DMD測定>
上述した様に、式(3)の逆行列Hの各要素は、タップ数に応じたベクトルであり、例えば、タップ数を3とすると、要素a={a,a,a}である。なお、より一般的にタップ数をn(nは2以上の整数)とすると、a={a,a,a,・・・、a}であり、e={e,e,e,・・・,e}である。ここで、要素aは、LP01モードとして送信され、LP01モードとして受信された光信号のインパルス応答に対応する。つまり、モード多重光通信システムにLP01モードの光信号を入力したときの、LP01モードとして出力される光信号のインパルス応答を示している。同様に、要素eは、LP11aモードとして送信され、LP11aモードとして受信された光信号のインパルス応答に対応する。したがって、要素a〜aのうちの最も大きい値(ピーク)がa(kは1〜nの整数)であり、要素e〜eのうちのの最も大きい値(ピーク)がe(mは1〜nの整数)とすると、kとmとの差がLP01モードとLP11aモードとのDMDに対応するものとなる。他の伝搬モード間のDMDについても同様である。
【0030】
この様に、DMD測定部64は、逆行列Hの2つの対角要素の比較によりモード間遅延差を測定することができる。
【0031】
なお、保存部65に保存された各測定値は、ユーザ操作により任意の記録媒体へコピーされたり、図示しない通信インタフェースを介して出力されたり、図示しないディスプレイに表示されたりする。本実施形態による測定装置6が測定するMXT、MDL及びDMDは、アウトオブサービスで測定した場合より精度的には低くなるが、インサービスで、MXT、MDL及びDMDの傾向を測定することができる。さらに、測定に使用する逆行列Hは、通常、光受信装置がその復調・復号処理で使用するものであり、光受信装置に逆行列Hを出力させる様にする、簡易な変更のみでインサービスでの測定が可能になる。
【0032】
また、本実施形態の測定装置6を図1に示す光受信装置に組み込むことができる。つまり、光受信装置が、モード多重光通信システムの伝送特性の監視を行う構成とすることができる。
【0033】
なお、本発明による測定装置6は、プロセッサ及び記憶部を含むコンピュータを上記測定装置6として動作させるプログラムにより実現することができる。これらコンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。プログラムは、記憶部に記憶され、プロセッサが当該プログラムを実行することで、図2の各部の機能が実現される。
【符号の説明】
【0034】
61:受信部、62:MXT測定部、63:MDL測定部、64:DMD測定部
図1
図2