【実施例】
【0019】
図1は、本発明による異物選別システム200の内部構造を示す側面図である。
図1に示すように、最上流部にはホッパ1と定量供給部4が設けられる。これに続く風力選別装置80は、風力により毛髪やビニール片などを分離する。形状選別装置70は、2段の金網部材と振動フィーダを備え、所定のものより大きな形状のものと、小さすぎる形状のものを除き、所定のサイズの選別対象物を通過させる。本実施例では、風力選別装置80を形状選別装置70の下側に設けたが、風力選別装置80を形状選別装置70の上流に設けた構成としてもよい。
【0020】
図1及び
図2に示すように、磁力選別装置90は鉄片など金属片の異物を分離する。磁力選別装置90は、かまぼこ形のネオジム磁石を永久磁石体に採用している。これにより、磁力面が回転筒5の円弧状に沿った軸方向に長い強力な磁界を形成できる。磁力選別装置90の下部のメインシュート11には、金属探知機95が組み込まれる。金属探知機95は、アルミニウム片などの非磁性金属片22を分離する。金属探知機95には、発信コイルと受信コイルがあり、非磁性金属片22が通過すると、受信コイルの電圧が変化するので、仕分け板95aを作動させて、非磁性金属片22の異物を非磁性金属片投げ入れシュート18に導く。
【0021】
金属探知機95が組み込まれた磁力選別装置90の下流に、色彩選別装置85が設けられる。磁力選別装置90のメインシュート11を出た選別対象物20は、搬送ベルト(図示せず)を介して、色彩選別装置85のホッパ1に入る。ホッパ1で受けた選別対象物20は、フィーダ120で選別部40に送り出す。選別部40は、CCDカメラ41によって撮像したカラー画像と、NIR(近赤外線)カメラ42で撮像された画像を分析して、同じ形状の選別対象物でも色が異なれば異物として分離する。色彩選別装置85は、白色光に加えて近赤外線光を用いて異物を検出する。これにより高精度に選別対象物20を選別することができる。例えば、選別対象物20がチアシードの場合、チアシードは茶色であるのに対し、混在した木屑は灰色のため、白色光源43とCCDカメラ41のカラー画像によって検知し、エアー噴射ノズル45によって吹き飛ばして分離する。一方、虫糞は茶色であるため、白色光源43とCCDカメラ41のカラー画像では、チアシードとの判別がつかないが、NIR(近赤外線)カメラ42の画像では灰色に受光されるため、チアシードと区別されてエアー噴射ノズル45によって吹き飛ばして分離する。異物は吹き飛ばされ、異物投げ入れシュート47に送り出され、異物受けボックス48に集められる。良品は、良品投入シュート49と搬送ベルト(図示せず)を介して、X線選別装置100のホッパ1に送り出される。
【0022】
X線選別装置100は、X線発生器27と、
X線検知器28を備え、
X線検知器28が撮像した画像を分析してガラスを含む異物を分離する。選別対象物20はベルト111で図面左方向に送り出される。
X線検知器28の画像を解析して異物を検知すると、仕分け板115が下がり、異物を異物シュート25に送り出し、異物受けボックス38に集める。良品は、仕分け板115が上がったままなので、良品投げ入れシュート29から良品受けボックス26に集められる。
【0023】
図2は、
図1の磁力選別装置90の内部構造を示す側面図である。磁力選別装置90は、鉄片などの金属片21を分離する。分離された金属片21は金属片投げ入れシュート10に送り込まれ、金属片受けボックス36に集められる。磁力選別装置90には、形状選別装置70を通過した選別対象物が供給されるが、
図2に示すように、ホッパ1及び定量供給機構4を配置してもよい。ホッパ1は、屋根部分に設けられ、選別対象物を収容する。定量供給機構4は、一対のローラ2、3からなり、回転筒5の上方に定量ずつ選別対象物20を供給する。ローラ2、3は対向して設けられ、羽根によりホッパ1の選別対象物を掴み取り回転筒5の上方に落とす。回転筒5は、摩耗に強く、厚さが薄い(厚さ1mm以下)ステンレス製のドラムからなる。回転筒5は、中空となっており、中空の内部には、永久磁石体6が設けられる。永久磁石体6により、選別対象物20に含まれる金属片21を回転筒5の表面に吸着させて分離する。選別対象物の食品は、例としてゴマ、米、小麦粉の粒などがあげられる。
【0024】
図2に示すように、磁力選別装置90における回転筒5の上部後方に落下防止板8が設けられ、回転筒5の下部前方には分離調節板7が設けられる。落下防止板8は、定量供給機構4からの選別対象物20を受け止め、回転筒5の回転方向にスライド回動して選別対象物20を回転筒5前方側に送り出す。回転筒5に吸着された鉄などの磁性を有する金属片21は、回転筒5が回転して吸着した金属片21が永久磁石体6から離れると磁力が及ばなくなり、自重で下方に落下する。磁力の影響を受けない食品(良品)の選別対象物20は、回転筒5の前側下方のメインシュート11に落下する。分離調節板7は、角度の調節が可能であり、前方に落下する良品の選別対象物20と、回転筒5に吸着された後に回転筒5の真下から後方に向かって落下する金属片21とを分離する。
【0025】
図3は、
図2に示す磁力選別装置90における回転筒5の内部構成を示す正面図である。回転筒5は、モータ30で駆動されるベルト51により常時回転する。永久磁石体6は、軸31が回転筒5の軸心に一致して設置され、回転筒5の選別対象物20が落下する側(
図1の右上方向)に磁石が向くようにして固定される。軸31は両端が軸受で支持される。磁界は、回転筒5の長手方向(左右方向)に沿って長く生成される。回転筒5の内部へファン12により空気を送り込める。この空気は、永久磁石体6の軸31に形成された一方の軸孔13を通って回転筒5の内部に入った後、回転筒5の内部の空気は、永久磁石体6の軸に形成された他方の軸孔13’を通って外部に出る。この空気の流動により永久磁石体6を冷却できる。軸孔13、13’に加えて空冷手段16を設けることができる。空冷手段16は、ファン12と軸孔13、13’の空気流路19から構成される。
【0026】
図4及び
図5は、回転筒5に使用される永久磁石体6を示す。永久磁石体6の長さは約90cmである。複数のネオジム磁石32が、軸31に取付けられた扇形の軟鉄ヨーク33で挟み込まれた構造である。軸31には軸孔13、13’が形成されている。ネオジム磁石32の反対側には3本の連結棒のバランサー52が取付けられる。ネオジム磁石32は、
図6に示すように、かまぼこ形の形状に形成されており、そのかまぼこ形の頂部の湾曲面が回転筒5の内面に臨むように取り付けられる。
【0027】
図5は、永久磁石体6の平面図である。軸31には、軸孔13、13’が形成され、一方の軸孔13から回転筒5の内部に空気が入り込み、他方の軸孔13’から空気が出るため、回転筒5の内部を冷やすことができる。従って軸孔13、13’は空気流路19となる。ネオジム磁石32は、それぞれが軟鉄ヨーク33で挟み込まれる。左右には、固定部材34、34’が設けられ、ボルトで全体が固定される。これに限るものではないが、ネオジム磁石32の厚さは約12.5mm、軟鉄ヨーク33の厚さは約3mmである。固定部材34、34’を含む横幅は、約450mmである。軸31の径は約40mmである。回転筒5の径は約22cmであるが、回転筒5の横幅(左右方向)は約45cmと長く、そのため、選別対象物20は、帯状の滝のようにメインシュート11に向かって落下する。
【0028】
図6は、回転筒5を含む永久磁石体6の左側面図である。回転筒5の直径は、約220mmである。ネオジム磁石32は、板状のもので、一方がS極の面で、他方がN極の面である。その外形はかまぼこ形である。頂部の湾曲面の外周Lが回転筒5の円周に合わせて長くされている。ネオジム磁石32の円弧状の角度は、例えば約110度である。軟鉄ヨーク33は、板状で扇形をしており、孔があって軸31に取り付けられる。
図6に示すように、回転筒5に吸着した金属片21は、回転筒5が回転して磁力が及ばなくなると、点線のような弾道で下方向に落下する。落下した金属片21は、金属固定手段21に引き寄せられる。
【0029】
図7は、ネオジム磁石32のS極とN極の配列を示す図である。ネオジム磁石32は隣り合う磁極が同じとなるように直列に結合される。このような配列により、磁力線57を回転筒5の外側に向かって、かつ軸方向に沿って生成する。磁力の強さは約1.4テスラ以上である。
【0030】
図8は、落下防止板8の動作を示す説明図である。(A)は、選別対象物20が回転筒5の上部に落下している状態で、一部は、回転筒5が回転しているので、前方に搬送されるが、落下防止板8で受け止められた選別対象物20は、回転筒5の登り坂を登れずに貯留される場合がある。(B)は、落下防止板8が送り出し手段15で回動され、選別対象物20が前方に送り出されることを示す。回動の速度は、回転筒5の回転速度と同じにする。(C)は、落下防止板8が元の位置に戻されることを示す。送り出し手段15は、ステッピングモータと、アームで構成できる。定量供給機構4のローラ2、3の回転制御は、落下防止板8を回動させる時間帯と、回動が停止される時間帯に分けられ、間歇回転駆動される。ローラ2、3は、回動して所定量の選別対象物20を落下させる時間と、停止して選別対象物を落下させない時間とに分けられ、これを繰り返す。ローラ2、3の回動が停止している時間帯では、落下防止板8が動く。落下防止板8は選別対象物20を前方に送り出した後、元の位置に戻る。
【0031】
図9は、金属固定手段50の平面図及び斜視図である。金属片固定手段50は、複数のマグネット棒53からなる。マグネット棒53は内部にネオジム磁石53aが、同じ極が向い合せとなるように配列されている。これにより周囲に、長さ方向に沿って長い磁界を生成できる。ネオジム磁石53aは摩耗に弱いため、外側をステンレス管53bで覆って保護している。ネオジム磁石53aを、ステンレス管53bから引き出すと、ステンレス管53bの磁力がなくなるので、吸着していた金属が離れて落下する。そのため、異物(磁性体の金属、鉄片など)をかき落とす必要がなく、運転終了後の異物の回収が容易になる。
【0032】
図10は、金属固定手段50のマグネット棒53の内部構成を示す図である。(A)は、マグネット棒24を電磁石で構成した例である。(B)は、ネオジム磁石で構成した例である。マグネット棒53を(A)、(B)いずれで構成してもよい。電磁石で構成した場合、スイッチの操作1つで、異物を受皿に回収できる。金属片固定手段50を金属片投げ入れシュート10に設けたので、分離し落下させた金属片21の運転終了後の回収が容易になる。
【0033】
図11は、磁力選別装置90の筐体9に組み込み可能なX線選別装置100の内部構成を示す図である。X線選別装置100には、ガイド35、ガイド35の下側に設けられる複数のサブシュート14、X線発生器27、
X線検知器28、複数(本実施例では4本)のエアー噴射ノズル17、複数(本実施例では4本)のX線検知異物投げ入れシュート25、X線検知異物受けボックス38、良品受けボックス26が設けられる。X線検知異物受けボックス38には、X線検知器28で検出されたガラスや石、プラスチック片などが集められる。
図11に示すように、サブシュート14の奥行幅(前後方向)は、メインシュート11の奥行幅より狭くなっている。これは選別対象物20をエアー噴射ノズル17の近くを通過させ、吹き飛ばしを良好に行なうためである。
【0034】
X線発生器27は、フィラメントと、ターゲットからなり、ターゲットからX線が出射する。
X線検知器28は、X線を検知するセンサーであり、落下する選別対象物20を撮像する。
X線検知器28は金属片を検出可能であるが、磁力選別装置90及び金属探知機95で分離されているので、ガラス、石それにプラスチック片などを主に検出する。なお、図示しないが、
X線検知器28には、画像を解析する処理部が接続される。処理部は画像解析により異物が落下していると判定すれば、異物に対応したエアー噴射ノズル17を駆動する信号を出力する。
【0035】
図12は、X線選別装置100の内部に設けられるガイド35の斜視図である。メインシュート11は、左右長さが約45cmなので、4つのサブシュート17に分割し、エアー噴射ノズルも4つが設けられる。上段の絞り込み板は左右方向の絞り込みを決めており、高さを調節して高くすることにより、個々のシュートの左右幅が広くなり、高さを低くすることにより、個々のシュートの左右幅が狭くなる。下段の絞り込み板は前後方向の絞り込みを決めており、高さを調節して高くすることで個々のシュートの前後幅が広くなり、高さを低くすることにより個々のシュートの前後幅が狭くなる。
【0036】
図13は、X線選別装置100のサブシュート17の説明図(正面図)である。この実施例では、サブシュート14は、第1サブシュート14a、第2サブシュート14b、第3サブシュート14c、第4サブシュート14dの4つで形成されている。
X線検知器28は、サブシュート14の前方側に、サブシュート14と交差するように水平に設けられる。また、第1サブシュート14a、第2サブシュート14b、第3サブシュート14c、第4サブシュート14dに対応して、第1エアー噴射ノズル17a、第2エアー噴射ノズル17b、第3エアー噴射ノズル17c、第4エアー噴射ノズル17dからなるエアー噴射ノズル17が設けられる。X線検知の異物をエアー噴射ノズルで吹き飛ばしやすいよう幅広のメインシュート11をガイド35で絞り込み、ガイド35に続く4本のサブシュート14を形成した。エアー噴射ノズル17で吹き飛ばされなかった選別対象物20は、真下に落下して、良品受けボックス26に集められる。
【0037】
図14は、X線選別装置100に備えられるサブシュート14の説明図(背面図)である。サブシュート14の後方には、X線発生器27がサブシュート14と交差するように設けられる。X線発生器27の下側には、第1サブシュート14a、第2サブシュート14b、第3サブシュート14c、第4サブシュート14dのそれぞれに対応して、第1X線検知異物投げ入れシュート25a、第2X線検知異物投げ入れシュート25b、第3X線検知異物投げ入れシュート25c、第4X線検知異物投げ入れシュート25dからなるX線検知異物投げ入れシュート25が設けられる。X線検知異物投げ入れシュート25には、エアー噴射ノズル17で吹き飛ばされたX線検知異物24が送り込まれ、X線検知異物24はX線検知異物受けボックス38に集められる。
【0038】
図15は、
X線検知器28で撮像した画像の例である。第1サブシュート14aと第2サブシュート14bには、落下する良品の選別対象物20が撮像されているが、第3サブシュート14cと第4サブシュート14dには、ガラス又は石又はプラスチック片などのX線検知異物24が撮像されている。処理部(図示せず)はこれを画像解析し、X線検知異物24を検知する。
【0039】
図16は、
図15の画像に対応しエアー噴射ノズル17の噴射を行う説明図である。処理部(図示せず)は、第3サブシュート14cと第4サブシュート14dに異物があると検知したら、第3エアー噴射ノズル17cと第4エアー噴射ノズル17dに信号を出力し、ノズルを短い時間「閉」から「開」として、エアーを噴射させる。第1エアー噴射ノズル17a、第2エアー噴射ノズル17b、第3エアー噴射ノズル17c及び第4エアー噴射ノズル17dのエアー噴射ノズル17には、コンプレッサ19から連続して圧縮空気が送り込まれる。そのため、連続してノズルを開くことができる。
【0040】
図17は、磁力選別装置の筐体に金属探知機とX線選別装置を組み込んだ例を示す説明図である。この構造は、金属探知機とX線選別装置の間を搬送ベルトで連結する構造ではないので、設置面積を小さくでき、システムを狭い場所でも構築できる。
【0041】
ガイド35によって、落下通路の前後左右の幅が小さくなり、目詰まりが発生しやすくなるので、微小な振動を加える加振装置(図示せず)を備えている。振動は、強い振動と弱い振動を交互に加えて、選別対象物20が滑り落ちやすくしている。また、サブシュート14は、メインシュートより前後左右の幅が小さくなるので、選別対象物20の幅寄せに時間がかかる場合がある。そのため、ローラ(2、3)は、間歇回転駆動される。落下する選別対象物20は、連続的には落下されず、落下しない時間と落下する時間の繰り返しとなる。選別対象物20が落下しない時間帯が、サブシュート14の幅寄せ時間に費やされる。
【0042】
X線選別装置100は、ガイド35を設けたので、磁力選別装置90の筐体9に組み込み容易である。複数のサブシュートと複数のエアー噴射ノズルを設け、
X線検知器が撮像した画像を解析し、異物の映っているサブシュートに対応するエアー噴射ノズルを駆動して、エアーにより異物を分離するようにしたので、サブシュート間の影響がなく、異物と一緒に分離される良品を少なくできる。
【0043】
磁力選別装置90によれば、永久磁石体6に、かまぼこ形のネオジム磁石を使用したので、長い強力な磁界が形成され金属片の分離性能を向上できる。また、落下防止板8を回動させたので、回転筒上部に選別対象物が滞留することがない。回転筒5の内部を冷却できるので、回転筒が選別対象物の衝突の熱によって変色するなどの不都合を防止できる。