特許第6846071号(P6846071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6846071
(24)【登録日】2021年3月3日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】掃除具及び基体部
(51)【国際特許分類】
   A47L 13/24 20060101AFI20210315BHJP
   A47L 13/16 20060101ALI20210315BHJP
   A47L 13/38 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   A47L13/24 A
   A47L13/16 A
   A47L13/38 A
【請求項の数】5
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2020-92341(P2020-92341)
(22)【出願日】2020年5月27日
【審査請求日】2020年6月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513100426
【氏名又は名称】川村 久美子
(74)【代理人】
【識別番号】100218280
【弁理士】
【氏名又は名称】安保 亜衣子
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(74)【代理人】
【識別番号】100173864
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 健治
(72)【発明者】
【氏名】川村 久美子
【審査官】 今村 亘
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6504513(JP,B2)
【文献】 特開2006−312095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 13/24
A47L 13/16
A47L 13/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の柄部と、
前記柄部の根元に上部の中央を接続した甲と、
前記甲の下部に設けられ、穂先の先端部に斜面を有した掃引部と、
前記甲の上部付近に線状に配列された複数の保持鈎と、
一端を固定端とし、該固定端に対向する他端を重畳端とし、該重畳端の中央から前記固定端に向かう切れ込みを有する帯状の掃除布であって、前記固定端に沿った前記固定端側の複数の箇所を前記複数の保持鈎が貫通することにより、前記掃除布を前記固定端側で保持し、前記重畳端側を前記先端部を経由して前記甲の上部に至るように周回させ、前記切れ込みにより前記柄部の根元の両側を前記重畳端側が迂回して前記固定端側の上かつ前記複数の保持鈎の上に重畳し、更に前記重畳端側が前記甲の上部から垂れ下がることにより、前記掃除布が前記甲及び前記掃引部を取り巻く掃除布と
を備え
前記複数の保持鈎は前記重畳端側を貫通せず、
直立状態においては、前記重畳端側の自重により前記重畳端側が固定され、前記掃除布は前記斜面の少なくとも一部に接せず、
前記直立状態から前記重畳端側の反対側に傾けた状態においては、前記自重に加え、前記固定端側と前記重畳端側の接触面に生じる摩擦力により前記重畳端側が固定されることを特徴とする掃除具。
【請求項2】
前記保持鈎が、前記甲の上面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の掃除具。
【請求項3】
前記保持鈎が、前記甲の側面の上部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の掃除具。
【請求項4】
前記保持鈎の先端部が、上方に湾曲した折り返し構造を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の掃除具。
【請求項5】
一端を固定端とし、該固定端に対向する他端を重畳端とし、該重畳端の中央から前記固定端に向かう切れ込みを有する帯状の掃除布を巻き付けて用いる基体部であって、
棒状の柄部と、
前記柄部の根元に上部の中央を接続した甲と、
前記甲の下部に設けられ、穂先の先端部に斜面を有した掃引部と、
前記甲の上部付近に線状に配列された複数の保持鈎と、
を備え、
前記固定端に沿った前記固定端側の複数の箇所を前記複数の保持鈎が貫通することにより、前記掃除布を前記固定端側で保持し、前記重畳端側を前記先端部を経由して前記甲の上部に至るように周回させ、前記切れ込みにより前記柄部の根元の両側を前記重畳端側が迂回して前記固定端側の上かつ前記複数の保持鈎の上に重畳し、更に前記重畳端側が前記甲の上部から垂れ下がることにより、前記掃除布が前記甲及び前記掃引部を取り巻き、
前記複数の保持鈎は前記重畳端側を貫通せず、
直立状態においては、前記重畳端側の自重により前記重畳端側が固定され、前記掃除布は前記斜面の少なくとも一部に接せず、
前記直立状態から前記重畳端側の反対側に傾けた状態においては、前記自重に加え、前記固定端側と前記重畳端側の接触面に生じる摩擦力により前記重畳端側が固定されることを特徴とする基体部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は室内の掃除等に好適な掃除具及びこの掃除具の骨格構造となる基体部に関する。
【背景技術】
【0002】
自在箒は「T字箒」とも呼ばれ、長尺の直方体状をなすヘッド部と、ヘッド部の中央にT字をなすように結合した棒状の柄を有している。ここで、ヘッド部の長辺方向とヘッド部の上面の法線方向とで回転面を定義する。自在箒は、柄の下方の先端を支点として、回転面上で180°回転移動可能なように、柄の下方の先端が、ヘッド部の長辺方向の中央の上部で結合されている。ヘッド部の長手方向に整列するようにブラシがヘッド部の下に設けられている。このため、ブラシで掃除する際に、回転面上でヘッド部に対する柄の角度が自在に変えられる。フローリングやタイルなど凹凸の少ない床面上のゴミや埃を掃き集めるのに適するが、使用しているうちにブラシにゴミや埃が絡まってくる。ブラシに絡まったゴミや埃を手作業で除去するのは煩わしく、又、自在箒はヘッド部のみを交換できるものが多いが、ヘッド部を頻繁に交換するのは経済的でない。
【0003】
特許文献1には、可撓性の掃引部を覆う面状カバーを固定する保持具を有する掃除具が記載されており、掃除の際の埃の舞い上がりや、ブラシの間にゴミや埃が入る問題を防ぐ。又、特許文献1に記載の掃除具によると、畳の目の細かい埃までよく取れるとのことである。しかし、特許文献1に記載の掃除具では、面状カバーの保持具がヘッド部(甲)に取り付けられることにより、掃除具全体の厚みが増し、狭い隙間に掃除具が入りにくいという問題があった。例えば、家具間のわずかな隙間や、脚のついた家具の下の狭い隙間等には保持具が障害となり入りにくく、掃除がしにくかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6504513号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記問題点を鑑み、本発明は、室内の狭い隙間まで、簡単かつ有効に掃除可能な掃除具及びこの掃除具の骨格構造となる基体部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様は、(a)棒状の柄部と、(b)柄部の根元に上部の中央を接続した甲と、(c)甲の下部に設けられた掃引部と、(d)甲の上部付近に線状に配列された複数の保持鈎と、(e)一端を固定端とし、固定端に対向する他端を重畳端とし、重畳端の中央からから固定端に向かう切れ込みを有する帯状の掃除布であって、固定端に沿った固定端側の複数の箇所を複数の保持鈎が貫通することにより、掃除布を固定端側で保持し、重畳端側を掃引部の先端を経由して甲の上部に至るように周回させ、切れ込みにより柄部の根元の両側を重畳端側が迂回して固定端側の上に重畳し、更に重畳端側が甲の上部から垂れ下がることにより、掃除布が甲及び掃引部を取り巻く掃除布を備えることを特徴とする掃除具である。
【0007】
本発明の第二の態様は、(a)一端を固定端とし、固定端に対向する他端を重畳端とし、重畳端の中央からから固定端に向かう切れ込みを有する帯状の掃除布を巻き付けて用いる基体部であって、(b)棒状の柄部と、(c)柄部の根元に上部の中央を接続した甲と、(d)甲の下部に設けられた掃引部と、(e)甲の上部付近に線状に配列された複数の保持鈎とを備え、(f)固定端に沿った固定端側の複数の箇所を複数の保持鈎が貫通することにより、掃除布を固定端側で保持し、重畳端側を掃引部の先端を経由して甲の上部に至るように周回させ、切れ込みにより柄部の根元の両側を重畳端側が迂回して固定端側の上に重畳し、更に重畳端側が甲の上部から垂れ下がることにより、掃除布が甲及び掃引部を取り巻くことを特徴とする基体部である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、室内の狭い隙間まで、簡単かつ有効に掃除可能な掃除具及びこの掃除具の骨格構造となる基体部が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る基体部の構造の概略を説明する模式的な右側面図である。
図2図1のA部分の拡大図である。
図3図1の正面図である。
図4図2の状態から掃除布を取り付けた状態の図である。
図5図3の状態から掃除布を取り付けた状態の図である。。
図6図5の背面図である。
図7図4の状態の第1実施形態に係る掃除具を、床面に用いた場合の模式的な部分右側面図である。
図8図8(a)は掃除布の第1形態変形例を示す部分右側面図であり、図8(b)は掃除布の第2形態変形例を示す部分右側面図である。
図9】第1実施形態に係る掃除布の全体展開図である。
図10】第2実施形態に係る掃除具の模式的な部分右側面図である。
図11図11(a)〜(c)は第1実施形態に係る保持鈎のその他の実施形態群1を示す斜視図である。
図12図12(a)は第1実施形態に係る保持鈎の更にその他の実施形態を説明する斜視図であり、図12(b)は図12(a)のA部分の拡大図である。
図13】その他の実施形態に係る掃除具の模式的な部分右側面図である。
図14図14(a)〜(c)は第1実施形態に係る保持鈎のその他の実施形態群2を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して、本発明の第1実施形態、第1及び第2形態変形例、ならびに第2実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。更に、本発明に係る掃除具及びこの掃除具の骨格構造となる基体部、本発明を構成する部材は左右対称形であるものが多く、「左」及び「右」等の表記は説明の便宜上のものであり、使用形態や使用方法を限定するものではないことにも留意すべきである。
【0011】
又、以下に示す本発明の第1実施形態、第1及び第2形態変形例、ならびに第2実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る掃除具は、図1に示すように、基体部として、棒状の柄部11と、その柄部11の先端に設けられた甲14と、その甲14の下部に設けられた掃引部12aと、甲14の上部付近に設けられた断面がL字形状の第1保持鈎(フック)1aを備える。第1実施形態に係る基体部は、図3に示すように、甲14の上部付近に、第1保持鈎1aと同様なL字形状の第2保持鈎1b、第3保持鈎1c及び第4保持鈎1dを更に備える。第1実施形態に係る掃除具においては、L字形状の第1保持鈎1a、第2保持鈎1b、第3保持鈎1c及び第4保持鈎1dで複数の保持鈎1a〜1dを構成し、線状に配列している。図3の正面図の方向から見て、第1保持鈎1a、第2保持鈎1b、第3保持鈎1c及び第4保持鈎1dは、それぞれ逆T字型になっているが例示に過ぎない。第1保持鈎1a、第2保持鈎1b、第3保持鈎1c及び第4保持鈎1dは、それぞれ短冊状のストリップがL字に折れ曲がった構造でもよく、図3の正面図の方向から見て矩形と見える形状でも構わない。
【0013】
図4に示すように、帯状の掃除布21がヘッド部(12a,14)に巻き付けられると、基体部を基本として第1実施形態に係る掃除具が構成される。「帯状」という意味は、ヘッド部(12a,14)を胴として、ヘッド部(12a,14)の周りに巻かれる平面構造を意味する。ヘッド部(12a,14)の周回長が短い場合は、帯の幅の方が帯の長さより長い場合もある。図4に示す掃除布21を展開した様子が図9に示す通りであり、掃除布21は、略矩形の帯の一辺である下辺の中央から内側に向けた切れ込み25の両側に垂れ下がり部21sが分岐し、即ち、左垂れ下がり部21s及び右垂れ下がり部21sを有する。更に掃除布21は、垂れ下がり部21s以外の部分である主面部21fを有し、全体として面状構造である。
【0014】
図9に示すように、帯状の掃除布21の下辺の中央から内側に向けて切れ込み25が設けられている。掃除布21の平面形状については、基体部のヘッド部(12a,14)を周回するように取り巻いて埃やゴミを掃除できればよいので、角が直角であったり辺が真っ直ぐであったりする必要はない。短い帯状の場合は「略矩形」と見なせるが、「矩形」の角がとれたような形状でもよい。掃除布21は不要になった手ぬぐいやタオル等の布生地を再利用する形で構成するのが、資源の再利用という意味で好ましいので、ヘッド部(12a,14)の周りに巻き付けることができる形状であれば矩形である必要はない。図9においては図示の便宜上、切れ込み25には幅がある3角形のスリットの形状で模式的に示しているが例示に過ぎず、幅の無い切れ込みであってもよい。或いは細長い長方形のスリットでもよい。不要になったタオル等の布生地の端からハサミで切り込んだだけでもよい。
【0015】
したがって、図9では掃除布21を切れ込み25の両側に垂れ下がり部21sが分岐し、即ち、左垂れ下がり部21s及び右垂れ下がり部21sを有する二股形状で例示しているが、二股形状に限定されるものではない。便宜上、図9において、掃除布21のうち、垂れ下がり部21s以外の部分を主面部21fと定義する。主面部21fの縦の長さは、図1における甲14の上面から掃引部12aの下端(先端)を通り再び甲14の上面に戻るように巻き付けて覆えるだけ確保できればよい。左垂れ下がり部21s及び右垂れ下がり部21sの縦の長さについては、甲14の上方から下方に、既にヘッド部(12a,14)を周回して覆っている主面部21fの上に重畳して垂れ下がることができるだけあればよい。掃除布21の横幅については、取り扱いやすさの観点からは、図3に示す掃引部12aの下端の長手方向の長さ程度、又は、それより両側1cm程度長い程度が好ましい。但し、不要になった布生地を再利用する場合は、掃除布21の横幅をあまり気にする必要はないが、図9に示すと同じ形状の型紙を、第1実施形態に係る掃除具のセットとして販売し、消費者が型紙に合わせて、不要になったタオル等の布生地を切り出すようにすれば、好都合である。
【0016】
図9における掃除布21の下辺の対辺である上辺付近に、ボタン穴の形状をした細長い第1貫通孔23a、第2貫通孔23b、第3貫通孔23c及び第4貫通孔23dが設けられている。便宜上、第1貫通孔23a〜第4貫通孔23dは、図9においては幅のある横長の貫通孔として図示されているが例示に過ぎず、幅のない単純な切れ目であってもよい。不要になった布生地等の布生地を再利用する場合は、再利用する布生地にナイフやハサミで切り込みを入れただけでよい。第1貫通孔23a〜第4貫通孔23dは、図3に示す第1保持鈎1a〜第4保持鈎1dにそれぞれ対応する位置に設けられるので、第1保持鈎1a〜第4保持鈎1dのピッチ(間隔)に留意して開孔する必要がある。
【0017】
図9に示した形状の型紙を用意しておくことにより、型紙に合わせて、第1貫通孔23a〜第4貫通孔23dを開孔するようにすれば、好ましい位置に第1貫通孔23a〜第4貫通孔23dが設定できる。第1貫通孔23a〜第4貫通孔23dのそれぞれの横幅は、第1保持鈎1a〜第4保持鈎1dの突起部分の横幅と同程度であっても、それより両側1〜10mm程度長い程度であってもいずれでもよいが、掃除布21の強度・耐久性の点からは、隣り合う貫通孔どうしの距離が1cm以上空けられることが好ましい。不要になった布生地を再利用する場合は、第1保持鈎1a〜第4保持鈎1dの突起部分の横幅より狭い横幅を開けておき、再利用する布生地を第1保持鈎1a〜第4保持鈎1dに無理矢理押し込むことにより、貫通させて最終的な横幅を決定してもよい。
【0018】
図9における掃除布21の下辺の対辺である上辺付近が、図4に示すように、線状に配列された複数の保持鈎1a〜1dに保持され、主面部21fが甲14及び掃引部12aを一周以上巻き付けられて覆う。図4及び6に示すように、左垂れ下がり部21s及び右垂れ下がり部21sは柄部11の根元を挟むように甲の上方から甲の側面方向に垂れ下がる。第1実施形態に係る掃除具においては、垂れ下がり部21sと主面部21fの接触面の重畳部分における摩擦力と吸引力で、垂れ下がり部21sが主面部21fに固定され、容易にずれないようになっている。垂れ下がり部21sと主面部21fの接触面は、図4においては甲14及び掃引部12aの右側に位置する。
【0019】
図1及び図3に示すように、第1実施形態に係る柄部11は、下端がヘッド部(12a,14)の長辺方向の中央に当たるように取り付けられて逆T字型のトポロジを構成している。ヘッド部(12a,14)は、横長の直方体状の甲14と、甲14の長手方向を含む一面に連続して固定された掃引部12aで構成される。図1に示す逆T字型のトポロジは、概略としては従来の自在箒やフロアブラシ又はデッキブラシと類似の構造に対応するものであるが、この逆T字型のトポロジで、第1実施形態に係る基体部の骨格構造が構成されている。
【0020】
図3の正面図に示すように、甲14の形状は、上部の端部が丸みを有しているので細長い蒲鉾型に近い形状である。上部の端部が丸みを帯びている分だけ上の辺が短いため、甲14の正面図としての形状は、直方体の長手方向に沿った下面の一辺の長さが対向する上面の一辺の長さに比して長い形状になっている。図3では直方体の長手方向に直交する端面が互いに平行に近く表現されているが、対向する2つの端面が鏡像関係で下に行くほど広がる形状でもよい。2つの端面が広がる形状であれば、正面図としての形状は、台形に近い形状となる。図3の紙面の上方となる、甲14の上方から見た甲14の上面の形状は幅の狭い長方形であり、図3の水平方向にヘッド部(12a,14)及び甲14の長手方向(長辺方向)が定義される。
【0021】
掃引部12aは従来の自在箒の穂(ブラシ部)に対応する部分であり、可撓性の部材が好ましい。図1及び図2に示すように、甲14の長手方向に直交する断面において、掃引部12aの先端(穂先)の形状は、稜線方向が甲14の長手方向と平行となるように山型に切り揃えられた形状である点が従来の自在箒の穂の構造とは異なる。掃引部12aに用いる可撓性の部材の材料としては、ポリプロピレン(PP)等の高分子樹脂のフィラメント状素材、パーム、シダ等の植物性のフィラメント状素材、馬の毛等の動物性のフィラメント状素材が採用可能である。これらの植物性のフィラメント状素材(植物繊維)、高分子樹脂のフィラメント状素材(化学繊維)や動物性のフィラメント状素材(動物繊維)を互いに隣接させ結束集合構造をなすことにより、単体の素材の可撓性に比し、より自由度の大きな可撓性を得ることができる。
【0022】
又、これらの植物性のフィラメント状素材、高分子樹脂のフィラメント状素材、動物性のフィラメント状素材を混合して結束集合構造を達成し、可撓性及び弾力性のある掃引部12aを構成してもよい。例えば、市販されている自在箒の穂の結束集合構造の先端を山型に切り取り、掃引部12aの可撓性を実現してもよい。掃引部12aは可撓性や弾力性に加え、自在箒の穂と同様な柔軟性を有していてもよい。図1及び図2等では掃引部12aの穂先の形状を2等辺3角形で例示しているが、穂先の先端部の形状が甲14の長手方向に沿った線状に収束される断面形状であればよく、2等辺3角形ではなく段差部を有した多角形の断面形状でもよい。或いは、甲14の長手方向に直交する掃引部12aの断面形状は、2等辺三角形の斜辺を鏡像関係に対向する円弧に置き換えた形状でもよい。甲14の長手方向に沿った穂先の先端部の形状は数学的な「線」である必要はなく、一定の太さを有した長方形でよい。従って、穂先の先端部の形状は甲14の長手方向に沿った板状や背鰭状でも構わない。
【0023】
図1〜3に示すように、甲14の上面に第1保持鈎1aが取り付けられている。第1保持鈎1aは、甲14の上面へ固定される中間部分と、この中間部分の上面から上方に伸びL字を構成する突起部分(先端部)から構成される。第1保持鈎1aの中間部分は、図2及び図3を上方から見ると矩形であるが、円形やその他の形状であってもよく、甲14へ固定される形状であればいずれでもよい。第1保持鈎1aの突起部分は、図1〜3においては矩形であるが、その他の形状であってもよく、その詳細についてはその他の実施形態において後述する。第1保持鈎1aの突起部分は、図9に示す掃除布21の上辺付近に設けられた第1貫通孔23aを貫通して掃除布21の一辺側を保持する機能を有する。同様に図3等に示した第2保持鈎1b〜第4保持鈎1bの突起部分は、それぞれ図9に示す掃除布21の上辺付近に設けられた第2貫通孔23b〜第4貫通孔23dを貫通して掃除布21の一辺側を保持する機能を有する。
【0024】
図1において、第1保持鈎1aの突起部分は、中間部分の端に寄せて中間部分に垂直方向に接続されてL字型を構成している。図2に拡大して示すように、第1保持鈎1aは、甲14の上面において突起部分が右側面図の中心から右側に寄る位置で、中間部分に垂直方向に取り付けられるのが好ましい。断面構造としてL字型を構成する第1保持鈎1aの突起部分と中間部分とは、同一素材の一体成型で構成されていてもよいし、別個の部材であってもよい。
【0025】
図3に示す第2保持鈎1b、第3保持鈎1c及び第4保持鈎1dにおいても、第1保持鈎1aと同様の構造で同様に甲14に固定される。図3においては、保持鈎は甲14に4個取り付けられているが、個数は2個以上であればよく、取付位置についても、柄部11の左右において対称か非対称かを問わない。
【0026】
掃除布21の素材として、不要になった手ぬぐいやタオル等の再利用可能な布生地が好適であるが、より具体的に例示すれば、織布・不織布問わず、重ね合わせた際に摩擦力を生じる布状素材であればよく、特に手ぬぐいやタオル等の素材に限定されるものではない。原料としては、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、ビニロン、アクリル、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリオレフィン、綿花、絹、羊毛、麻、パルプ、鉱物繊維等の幅広い種類を採用することができる。更に、アクリル(30%)、ポリエステル(60%)、ポリプロピレン(10%)等のように、複数の素材を任意に組み合わせて掃除布21の素材としてもよい。又、掃除布21はドライタイプでもウェットタイプでもいずれでもよい。
【0027】
掃除布21は、図4のように第1実施形態に係る基体部に巻き付けられた際には、図9に示す面が表となり、掃除の際に埃やゴミを付着する面となる。一方、掃除布21の図9に示す面の裏側の面を表にして第1実施形態に係る基体部に巻き付けると、図9に示す面の裏側の面も掃除に用いることができる。勿論、図9に示す面及びその裏側の面の一方のみを掃除に用いるようにした構造であってもよい。掃除布21として、不要になった手ぬぐいやタオル等の他種々の余り布等を略矩形に裁断し、切れ込みを入れることでも容易に作成することができる。この場合も、図9に示した形状の型紙を用意しておけば、型紙に合わせて切れ込みを入れることができる。
【0028】
主面部21fと垂れ下がり部21sは一体的な面状部材であることが好ましいが、別個の部材の組合せであってもよい。別個の部材である場合は、例えば、主面部21fよりも垂れ下がり部21sの方の単位面積当たりの重量が大きい部材を採用することができる。この場合は、切り込みの入った垂れ下がり部21sと主面部21fとの重畳部分における摩擦力と吸引力を増大させることができる。第1実施形態に係る基体部には、図1に示すように、壁の手すり等に立てかけられるような立てかけ部13が設けられていてもよい。第1実施形態に係る基体部は直立状態で保管してもよいし、横たえて保管してもよい。
【0029】
図4に示すように、第1実施形態に係る基体部のヘッド部(12a,14)への掃除布21の巻き付けにおいては、まず、掃除布21の第1貫通孔21aへ、第1保持鈎1aの突起部分を貫通させ、掃除布21の一端(固定端)を突起部分に保持させる。図4においては図示を省略しているが、第2貫通孔23b、第3貫通孔23c及び第4貫通孔23dについても、それぞれ図3に示す第2保持鈎1b、第3保持鈎1c及び第4保持鈎1dの各突起部分に貫通させ、掃除布21の固定端を各突起部分に保持させる。図4に示すように、掃除布21は、まず主面部21fが図4の紙面右側の方に垂れ下がるように複数の保持鈎1a〜1dにより掃除布21固定端が保持される。主面部21fが図4の紙面左側の方に垂れ下がるように保持されてもよいが、複数の保持鈎1a〜1dから掃除布21の固定端を外れにくくするためには、複数の保持鈎1a〜1dの突起部分が寄っている側に、即ち、図4においては紙面右側の方に主面部21fが垂れ下がるようにする方が望ましい。
【0030】
掃除布21の第2貫通孔23bと第3貫通孔23cとの間の部分は、図6に示すように、柄部11の根元における甲14との接合部位で撓ませてもよいし、柄部11の根元で掃除布21を撓ませたくなければ、掃除布21の固定端側の一部をあらかじめ略半円状等に切り抜いておいてもよい。柄部11の根元で掃除布21を撓ませる場合には、第2貫通孔23bと第3貫通孔23cとの間隔は、第2保持鈎1bと第3保持鈎1cの間隔よりも少し長めになるように、第1保持鈎1a〜第4保持鈎1dの開孔位置を選択し調整すればよいが、掃除布21の固定端側が多少伸びるので、大きな位置調整は不要である。この場合も、型紙として、略半円状等に切り抜きを入れた様式のものを用意しておけば、型紙に合わせて掃除布21を切り出すことにより、柄部11の根元を迂回する形状の掃除布21が容易に実現できる。
【0031】
図4に示すように、線状に配列された複数の保持鈎1a〜1dにより一端(固定端)が保持された掃除布21の主面部21fを、甲14の右側、掃引部12aの右側、掃引部12aの下端、掃引部12aの左側及び甲14の左側を順に覆うように一周させる。図4においては、掃引部12aの下端は主面部21fに直接接せず、掃引部12aの山型部分と主面部21fとの間には空間を有する。図6に示すように、切り込みの入った垂れ下がり部21sの両側、即ち、左垂れ下がり部21s及び右垂れ下がり部21sの切れ込み25側の部分で柄部11の根元を挟むようにする。垂れ下がり部21sの端部(重畳端)側を、柄部11の根元を迂回させて、甲14及び掃引部12aの右側に位置する主面部21fの上に垂らし、主面部21fの上に重畳端側を重畳させる。
【0032】
ここで、垂れ下がり部21sは、甲14の上方において、固定端側に設けられた第1貫通孔23a〜第4貫通孔23dを貫通して突出した複数の保持鈎1a〜1dのそれぞれの上端に接する。第1実施形態に係る掃除具においては、垂れ下がり部21sと主面部21fが重畳する接触面で摩擦力が生じている。本明細書においては、垂れ下がり部21sと主面部21fの接触面を「接触保持面」と呼ぶ。掃除布21については、固定端となる一端は甲14の上部近傍に保持されるが、重畳端となる他端は特定の固定具等による固定はされない。掃除布21は、図4に示す直立状態では垂れ下がり部21sの自重により図4の状態を維持する。
【0033】
掃除布21は、図7に示す使用状態では、垂れ下がり部21sの自重に加え、「接触保持面」の重畳部分における摩擦力と吸引力によって保持されることになる。一般的な面ファスナーは、フック状に起毛された側とループ状に密集して起毛された側とを重畳部分で押し付け、押し付けだけで貼り付く吸引力が発生するが、第1実施形態に係る掃除具の掃除布21にも、面ファスナーと同様なフック状に起毛された側とループ状に密集して起毛された側を用意してもよい。不要になった手ぬぐいやタオル等の再利用可能な布生地を掃除布21として用いる場合は、再利用布生地の起毛が小さいので重畳部分における吸引力は期待できないので、重畳部分における摩擦力を主に利用する。面ファスナーと同様なテープを、再利用布生地の垂れ下がり部21sの接触保持面相当位置と主面部21fの接触保持面相当位置にそれぞれ縫い付け、接触面において面ファスナーと同様な吸引力を再利用布生地で実現するようにしてもよい。
【0034】
(使用形態)
図7に示すように、第1実施形態に係る掃除具は、畳面をはじめとした床面Eに当てて掃き掃除に用いることができる。第1実施形態に係る掃除具は、掃除布21の安定した保持の観点からは、図7に示すように、接触保持面を上側にするように傾けることが好ましい。図7のように傾けた状態においては、垂れ下がり部21sの重量が接触保持面にかかるようになるので、図4に示す直立状態よりも接触保持面の重畳部分における摩擦力と吸引力が増大している。面ファスナーのような吸引力が発生する構造ではない場合は、第1実施形態に係る掃除具を接触保持面が下側になるように傾けた場合は、垂れ下がり部21sが主面部21fを離れて接触保持面が消失し、重畳部分における摩擦力を失うため好ましくない。
【0035】
面ファスナーのような吸引力が発生する構造ではない場合は、第1実施形態に係る掃除具を、接触保持面が下側になるように傾けると、接触保持面を離れた垂れ下がり部21sが床面Eに接触してしまうことにもつながるため好ましくない。垂れ下がり部21sが接触し得る床面Eは、第1実施形態に係る掃除具による掃除が済んでいない部位であることがあり、掃除布21を不要に汚染してしまう可能性がある。面ファスナーのような吸引力が発生する構造ではない場合は、垂れ下がり部21sの接触保持面相当位置と主面部21fの接触保持面相当位置にそれぞれスナップボタンを取り付け、スナップボタンによって吸引力実現するようにしてもよい。
【0036】
以下においては、接触保持面の吸引力が弱い構造を前提に説明する。接触保持面の吸引力が弱い場合は、図7に示すように、第1実施形態に係る掃除具は、主面部21fの一部を床面Eに当てた状態で左向きに移動させて用いる。主面部21fの床面Eとの接触面を「有効接地面」とすると、有効接地面の面積は、掃引部12aの山型部分と主面部21fとの間の空間の確保度合や、掃引部12aの床面Eへの押当て度合で調節することができる。図7においては、掃引部12aの山型の一方の斜面を、主面部21fを介して床面Eに当てた状態を示すが、掃引部12aが可撓性であるならば、掃引部12aが撓む程度までより強く床面Eに押し当てると、有効接地面がより広い状態で使用することができる。掃引部12aを強く床面Eに押し当てた場合は、床面Eに付着した汚れの排除力が強くなる。
【0037】
一方、図7に示す掃引部12aの山型の一方の斜面が主面部21fに接しないように浮かせて左向きに移動させて使用することもできる。この場合、主面部21fの自重が床面Eにかかることになり、特段圧力をかけないために床面Eに付着した汚れの排除力は弱まるが、例えば、畳面等、強く擦ることが不向きな繊細な床面の掃き掃除に好適である。
【0038】
第1実施形態に係る掃除具は、掃引部12aの山型の斜面相当部分以外の側面を、主面部21fを介して床面Eに当てて用いることも可能である。又、掃引部12aの下端の尖端部を、主面部21fを介して床面Eに当てて用いることも可能である。更に、主面部21fを介して掃引部12aの下端の尖端部を一様に床面Eに当てるのではなく、線状の尖端部の一端の点が、主面部21fを介して床面Eに当たるように用いることも可能である。即ち第1実施形態に係る掃除具は、床面Eへの力の加え方を面状、線状又は点状のうちから選択でき、自由度の高い掃き掃除が可能である。例えば畳への第1実施形態に係る掃除具の適用については、主面である畳表の目に沿って、面状又は線状に床面Eへ力を加えて埃等を掃き、畳表と畳縁の境目は、線状又は点状に床面Eへ力を加えて埃等を掻き出す等、多様な掃き掃除の仕方で用いることができる。
【0039】
図7の状態から左向きに移動させると、床面Eとの間で生じる摩擦力により、第1実施形態に係る掃除具の有効接地面は相対的に右向きの力を受ける。これに連動して、図7における主面部21fの下側は右下方向の力を受け、垂れ下がり部21sは左上方向の力を受ける。しかし、接触保持面の重畳部分における摩擦力と吸引力により、垂れ下がり部21sは左上方向にずらさず、主面部21fの下側は右下方向にずらさずに、第1実施形態に係る掃除具の使用を継続することができる。又、第1実施形態に係る掃除具は、図7の状態から右向きに移動させて使用することも可能である。掃引部12aの山型部分の図7紙面右側の斜面と主面部21fとの間に隙間が無くなるまで右向きに移動させると、それ以降の右向きの移動の際には、床面Eとの間で生じる摩擦力により、有効接地面は相対的に左向きの力を受ける。しかし、線状に配列された複数の保持鈎1a〜1dの保持力により、主面部21fはずれることなく、第1実施形態に係る掃除具の使用を継続することができる。即ち、使用のために傾けた第1実施形態に係る掃除具は、傾けた側とその逆側の両方に自在に掃き掃除ができ、より強力に埃等の除去を実現できる。
【0040】
第1実施形態に係る掃除具は、掃除布21が乾いた状態であっても濡れた状態であっても問題なく用いることができる。特に畳掃除においては、畳表の原料であるイグサへの適度な水分補給のために、水分を含ませ固く絞った掃除布21を時々用いることが望ましい。又、畳掃除においては、表面にツヤを出すために「米ぬか拭き」が推奨されているが、掃除布21に含ませる水分の成分についても自由に選択することができる。
【0041】
(第1形態変形例)
第1実施形態に係る掃除具の掃除布21の巻き付け形態の変形例(第1形態変形例)として、図8(a)に示すように、重畳端側で掃引部12aと主面部21fとがほぼ密着するように主面部21fを甲14及び掃引部12aに巻き付け、垂れ下がり部21sを長く垂れ下げる形態が採用できる。第1実施形態に係る掃除具の掃除布21の巻き付け形態との相違は、掃引部12aの山型部分と主面部21fとの間の空間の有無と、垂れ下がり部21sの縦の長さである。第1形態変形例において、それら以外の部材の構造、構造間の配置・接続、使用方法等は、第1実施形態に係る掃除具と同様である。
【0042】
図8(a)に示す第1形態変形例においては、図4に示す第1実施形態に係る巻き付け形態より、垂れ下がり部21sの垂れ下がり部分が長い。図9に示す掃除布21の切れ込み25をより深くすることで、図8(a)に示す第1形態変形例を実現できる。
【0043】
図8(a)に示す第1形態変形例においては、接触保持面を広くすることが容易となり、面ファスナーのような吸引力が発生する構造ではない場合であっても、掃除布21のより強力な巻き付け形態の保持が可能となる。又、第1形態変形例においては、掃引部12aの山型部分と主面部21fとの空間をほぼ無くしているため、有効接地面を少なくすることが可能となる。第1形態変形例は、机や家具の下等の狭い領域で繊細に掃除をしたい場合に特に有効である。
【0044】
図8(a)に示す第1形態変形例の状態から、図4に示す右側面図と同様の状態へ遷移させることも可能である。図8(a)の状態から、垂れ下がり部21sの一部を主面部21f側に移動させることで、容易に図4の状態にすることができる。この場合、垂れ下がり部21sの一部が主面部21f側に移動しているため、図5に示す第1実施形態に係る掃除具の背面図のようにはならず、柄部11の根元付近から下方に、切れ込み部分が一部見えるような背面図となる。巻き付け形態を2段階に遷移させるため、面ファスナーと同様なテープを、主面部21fの2箇所に縫い付け、垂れ下がり部21sの一部に設定された起毛された面を有するテープを、主面部21fの2箇所で接触可能にし、2箇所で面ファスナーと同様な吸引力を実現するようにしてもよい。
【0045】
又、図4に示す第1実施形態に係る巻き付け形態から、図8(a)に示す第1形態変形例の状態へ遷移させることも可能である。図4の状態から、掃除布21の図9に示す切れ込み25を深くし、図8(a)の状態にすることができる。掃除布21の切れ込み25を深くする方法は、ハサミ等の刃物で切る方法でもよいし、容易に裂ける素材であれは手で割く方法でもよい。掃除領域の状態や掃除方法によって、自在に図8(a)の状態と図4の状態とを選択することができる。
【0046】
(第2形態変形例)
第1実施形態に係る掃除具の掃除布21の巻き付け形態の第2形態変形例として、図8(b)に示すように、垂れ下がり部21sを短く垂れ下げる形態が採用できる。第1実施形態に係る巻き付け形態との相違は、掃引部12aの山型部分と主面部21fとの間の空間の程度と、垂れ下がり部21sの縦の長さである。第2形態変形例において、それら以外の部材の構造、構造間の配置・接続、使用方法等は、第1実施形態に係る掃除具と同様である。
【0047】
図8(b)に示す第2形態変形例においては、図4に示す第1実施形態に係る巻き付け形態より、垂れ下がり部21sの垂れ下がり部分が短い。図9に示す掃除布21の切れ込み25を短くすることで、図8(b)に示す第2形態変形例を実現できる。図8(b)に示す第2形態変形例においては、掃引部12aの山型部分と主面部21fとの空間を第1実施形態に係る巻き付け形態より大きくとっているため、有効接地面を大きくすることが可能となる。第2形態変形例は、広い領域を効率よく掃除したい場合に特に有効である。
【0048】
図8(b)に示す第2形態変形例の状態から、図4に示す第1実施形態に係る巻き付け形態へ遷移させることも可能である。図8(b)の状態から、掃除布21の図9に示す切れ込み25を深くし、図4の状態にすることができる。掃除布21の切れ込み25を深くする方法は、ハサミ等の刃物で切る方法でもよいし、容易に裂ける素材であれは手で割く方法でもよい。巻き付け形態を2段階に遷移させるため、起毛された面を有するテープを、主面部21fの2箇所に縫い付け、垂れ下がり部21sの一部に設定された起毛された面を有するテープと2箇所で接触可能にし、2箇所で面ファスナーと同様な吸引力を実現するようにしてもよい。
【0049】
又、図4に示す第1実施形態に係る巻き付け形態から、図8(b)に示す右側面図と同様の状態へ遷移させることも可能である。図4の状態から、垂れ下がり部21sの一部を主面部21f側に移動させることで、容易に図8(b)に示す右側面図と同様の状態にすることができる。掃除領域の状態や掃除方法によって、自在に図8(b)の状態と図4の状態とを選択することができる。勿論、図8(a)に示す取り付け状態の第1形態変形例と図8(b)に示す取り付け状態の第2形態変形例を相互に遷移させることも可能である。
【0050】
第1実施形態に係る掃除具によれば、埃等の付着部材であるカバーを両側から挟むピンチ状の保持具が不要のため、掃除具自体の厚みをより小さくすることができ、机や家具の下等の狭い領域へも容易に侵入させて効率の良い掃除をすることができる。又、ピンチ状の保持具が不要のため、第1実施形態に係る掃除具を、机や家具の下等の狭い領域において、図7に示す使用状態より寝かせて使用することも可能である。
【0051】
第1実施形態に係る掃除具によれば、埃等の付着部材である掃除布21の取り付けが誰でも短時間で容易に行うことができる。掃除布21の一端にある複数の貫通孔に、線状に配列された複数の保持鈎1a〜1dの各突起部分を貫通させて保持し、掃引部12aの尖端部を通るようにほぼ1周巻き付け、他端の垂れ下がり部21sを垂らすだけであり、数秒で取り付けを行うことができる。脱離の場合も同様であり、垂れ下がり部21sの一方を持って巻き付けを解除し、線状に配列された複数の保持鈎1a〜1dの各突起部分から外す等でよく、数秒で行うことができる。第1実施形態に係る掃除具においては、掃除布21の脱着が容易であるにもかかわらず、掃除布21の自重及び接触保持面の重畳部分における摩擦力と吸引力により、図4に示すような直立状態であっても図7に示す傾けた使用状態であっても、容易に脱離することはない。
【0052】
第1実施形態に係る掃除具によれば、掃除布21の素材に限定はなく、掃除布21の替えについては、家庭に元からある素材で容易に準備することができるため、大変経済的である。専用のカバーをわざわざ準備しなければならないという煩わしさから解放され、掃除に取り掛かるフットワークを軽くすることができる。又、家庭で使わなくなって余った布を再利用できるため、ゴミの減少にも役立ち、自然環境にも優しい。
【0053】
第1実施形態に係る掃除具は、掃除領域への力の加え方を面状、線状又は点状のうちから選択できるため、自由度の高い掃き掃除が可能である。第1実施形態に係る掃除具については、広い掃除領域を早く効率よく掃除したい場合は、面状又は線状に力を加えて用い、狭い掃除領域を繊細に丁寧に掃除したい場合は、線状又は点状に力を加えて用いる等、多様な用い方で用いることができる。
【0054】
第1実施形態に係る掃除具によれば、掃除布21の取り付け状態を第1及び第2形態変形例にも容易に遷移でき、接触保持面及び有効接地面の面積を自在に調節することができることから、掃除領域の状態に見合った掃除方法を選択することができる。垂れ下がり部21sの垂れ下がり部分の長さを調節することで、主面部21fのより清潔な部分を選択することができ、主面部21fのより多くの面を掃除に使うことも可能となる。
【0055】
第1実施形態に係る掃除具によれば、突起部分を有する複数の保持鈎1a〜1dについては、掃除布21が巻き付けられると突起部分は掃除布21に覆われるため、取り扱い時のケガや家具等の破損を防ぎながら使用することができる。第1実施形態に係る掃除具によれば、掃き掃除や拭き掃除以外でも、例えば床面のワックスがけ等の用途に好適に用いることができる。
【0056】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る掃除具は、図10に示すように、基体部として、棒状の柄部11と、その柄部11の先端に設けられた甲14と、その甲14の下部に設けられた掃引部12aと、甲14の上部付近に設けられた突起形状の第1保持鈎3aを備える。第2実施形態に係る基体部は、図10においては他部材に隠れているため図示を省略しているが、甲14の上部付近に、それぞれ第1保持鈎3aと同一構造の第2保持鈎、第3保持鈎及び第4保持鈎を更に備える。第2実施形態に係る掃除具においては、第1保持鈎3a、第2保持鈎、第3保持鈎及び第4保持鈎で複数の保持鈎を構成する。第2実施形態に係る掃除具は、第1保持鈎3aを含む複数の保持鈎の形状と固定位置が、第1実施形態に係る掃除具と異なる点である。図10においては柄部11の上部は図示を省略しているが、図1に示す第1実施形態に係る掃除具の柄部11と同様の構造である。第2実施形態に係る掃除具の甲14及び掃引部12aについても、第1実施形態に係る掃除具の甲14及び掃引部12aと同様の構造である。
【0057】
第2実施形態に係る基体部に掃除布21の固定端側が保持され、図9に示す掃除布21の重畳端側が固定端側の上に重畳するように、掃除布21が巻き付けられると、図10に示すように第2実施形態に係る掃除具となる。第2実施形態に係る掃除布21は、図9に示すように、第1実施形態に係る掃除布21と同様の構造であり、略矩形の一辺である下辺の中央から内側に向けた切れ込み25の両側に垂れ下がり部21sが分岐する。即ち、左垂れ下がり部21s及び右垂れ下がり部21sが柄部11の根元を迂回し、切れ込み25の両側に対向する。更に第2実施形態に係る掃除布21は、垂れ下がり部21s以外の部分である主面部21fを有し、全体として面状構造である。
【0058】
図9における掃除布21の下辺となる重畳端の対辺である上辺の固定端付近が、図10に示すように、第1保持鈎3aを含む複数の保持鈎に保持され、主面部21fが甲14及び掃引部12aを一周以上巻き付けられて覆う。図10では隠れた部分であり図示がされていないが、垂れ下がり部21sは柄部11の根元を挟むように甲の上方から甲の側面方向に垂れ下がる。第2実施形態に係る掃除具においては、少なくとも掃除具の使用時において、垂れ下がり部21sと主面部21fとの間で生じた接触面の重畳部分における摩擦力と吸引力で、垂れ下がり部21sが主面部21fに固定され、容易にずれないようになっている。垂れ下がり部21sと主面部21fの接触面は「接触保持面」と定義され、図10においては甲14及び掃引部12aの右側に生じる。
【0059】
図10に示すように、甲14の側面の上部に第1保持鈎3aが取り付けられている。第1保持鈎3aの図10に示される断面形状は、甲14の側面の上部へ固定される垂直部分、この垂直部分の上側から斜め下に伸びる中間部分(斜辺部分)、この中間部分の右端から上方に立ち上がる先端部から構成されるN字形状である。図10においては、第1保持鈎3aの中間部分は掃除布21に隠れており図示されていないが、垂直部分と先端部とを接続する斜辺部分である。第1保持鈎3aの垂直部分は、図10の右側面図を背面側から見ると矩形であるが、円形やその他の形状であってもよく、甲14へ固定される形状であればいずれでもよい。第1保持鈎3aの先端部は、図10の右側面図を背面側から見ると矩形であるが、その他の形状であってもよい。第1保持鈎3aの先端部は、図9に示す掃除布21の上辺付近の固定端側を貫通して保持する機能を有する。
【0060】
第1保持鈎3aの垂直部分、中間部分及び先端部が構成するN字型の断面構造は各折れ曲がり部分が鋭角であるが、垂直部分が甲14の側面の上部に固定され、先端部が上方に凸であればそれぞれの角度は問わない。例えば第1保持鈎3aの垂直部分、中間部分及び先端部を構成する各折れ曲がり部分の角度を直角にした2つのL字によってクランク型の断面構造を構成してもよい。図10においては先端部の上端は甲14の上面より下に位置しているが、甲14の上面と同程度であってもよいし、上面より上に位置してもよい。第1保持鈎3aの垂直部分、中間部分及び先端部は、すべて同一素材の一体成型で構成されていてもよいし、別個の部材であってもよい。
【0061】
第1保持鈎3aと同一構造の、第2実施形態に係る第2保持鈎、第3保持鈎及び第4保持鈎においても、第1保持鈎3aと同様の構造及び機能であり、同様の甲14への固定様式である。第2実施形態に係る保持鈎は甲14に4個取り付けられているが、個数は2個以上であればよく、取付位置についても、柄部11の左右において対称か非対称かを問わない。
【0062】
掃除布21の第2実施形態に係る基体部への巻き付け形態は、第1実施形態に係る巻き付け形態とほぼ同様である。勿論、巻き付け形態に係る第1及び第2形態変形例も採用することができる。掃除布21の第2貫通孔23bと第3貫通孔23cとの間の部分は、第2実施形態においては柄部11と甲14との接合部位にかからないので、柄部11の根元における撓みの問題が生じない点が第1実施形態に係る巻き付け形態と異なる。
【0063】
図10に示すように、ヘッド部(12a,14)を周回した掃除布21の垂れ下がり部21sは、甲14の上部右側側面において、掃除布21の固定端側を貫通して露出した複数の保持鈎のそれぞれの先端部に接する。複数の保持鈎のそれぞれに厚みがあるため、図10に示す直立状態においては、垂れ下がり部21sは図10のように主面部21fからやや浮くように垂れ下がるか、軽く接する程度となる。掃除布21の固定端側は甲14の上部近傍に保持されるが、重畳端側は主面部21fに重畳する。掃除布21は、図10に示す直立状態では主に垂れ下がり部21sの自重により図10の状態を維持する。掃除布21は、図10の直立状態から左側に傾けた使用状態では、垂れ下がり部21sが主面部21fに接し、接触保持面を形成する。したがって、掃除布21は、図10の直立状態から左側に傾けた使用状態では、垂れ下がり部21sの自重に加え、接触保持面の重畳部分における摩擦力と吸引力によって保持されることになる。
【0064】
第2実施形態に係る掃除具は、第1実施形態に係る掃除具と同様に、図7のように傾けて、傾けた側や逆側に移動させて使用することができる。第2実施形態に係る掃除具は、掃除布21の安定した保持の観点からは、図7に示す第1実施形態に係る掃除具のように、接触保持面を形成するため垂れ下がり部21sを上側にするように傾けることが好ましい。重畳部分に起毛面等による吸引力のない構造において、第2実施形態に係る掃除具を垂れ下がり部21sが下側になるように傾けた場合は、垂れ下がり部21sが接触保持面を形成できず重畳部分における摩擦力を発生させられないため好ましくない。又、第2実施形態に係る掃除具を垂れ下がり部21sを下側にするように傾けた場合は、垂れ下がり部21sが床面に接触してしまうことにもつながるため好ましくない。垂れ下がり部21sが接触し得る床面は、第2実施形態に係る掃除具による掃除が済んでいない部位であることがあり、掃除布21を不要に汚染してしまう可能性がある。
【0065】
第2実施形態に係る掃除具は、第1実施形態に係る掃除具と同様、主面部21fの一部を床面に当てた状態で傾けた側に移動させて用いることができる。主面部21fの床面との接触面である有効接地面の面積は、掃引部12aの山型部分と主面部21fとの間の空間の確保度合や、掃引部12aの床面への押当て度合で調節することができる。掃引部12aの山型の一方の斜面を、主面部21fを介して床面に当てた状態については、掃引部12aが可撓性であるならば、第1実施形態に係る掃除具と同様、掃引部12aが撓む程度までより強く床面に押し当てると、有効接地面がより広い状態で使用することができる。掃引部12aを強く床面に押し当てた場合は、床面に付着した汚れの排除力が強くなる。
【0066】
一方、第1実施形態に係る掃除具と同様、掃引部12aの山型の一方の斜面が主面部21fに接しないように浮かせて、傾けた側に移動させて使用することもできる。この場合、主面部21fの自重が床面にかかることになり、特段圧力をかけないために床面に付着した汚れの排除力は弱まるが、例えば、畳面等、強く擦ることが不向きな繊細な床面の掃き掃除に好適である。
【0067】
第2実施形態に係る掃除具は、第1実施形態に係る掃除具と同様、掃引部12aの山型の斜面相当部分以外の側面を、主面部21fを介して床面に当てて用いることも可能である。又、掃引部12aの下端の尖端部を、主面部21fを介して床面に当てて用いることも可能である。更に、主面部21fを介して掃引部12aの下端の尖端部を一様に床面に当てるのではなく、線状の尖端部の一端の点が主面部21fを介して床面に当たるように用いることも可能である。即ち第2実施形態に係る掃除具は、床面への力の加え方を面状、線状又は点状のうちから選択でき、自由度の高い掃き掃除が可能である。例えば畳への第2実施形態に係る掃除具の適用については、主面である畳表の目に沿って、面状又は線状に床面へ力を加えて埃等を掃き、畳表と畳縁の境目は、線状又は点状に床面へ力を加えて埃等を掻き出す等、多様な掃き掃除の仕方で用いることができる。
【0068】
第2実施形態に係る掃除具を傾けた側に移動させると、第1実施形態に係る掃除具と同様、床面との間で生じる摩擦力により、第2実施形態に係る掃除具の有効接地面は相対的に移動とは逆向きの力を受ける。これに連動して、主面部21f及び垂れ下がり部21sは有効接地面に引っ張られるように力を受ける。しかし、傾けることにより形成された接触保持面の重畳部分における摩擦力と吸引力により、垂れ下がり部21s及び主面部21fはずれることなく、第2実施形態に係る掃除具の使用を継続することができる。又、第2実施形態に係る掃除具は、傾けた側と逆向きに移動させて使用することも可能である。掃引部12aの山型部分の斜面のうち上側となった斜面と主面部21fとの間に隙間が無くなるまで移動させると、それ以降の移動の際には、床面との間で生じる摩擦力により、有効接地面は相対的に移動とは逆向きの力を受ける。しかし、複数の保持鈎の保持力により、主面部21fはずれることなく、第2実施形態に係る掃除具の使用を継続することができる。即ち、使用のために傾けた第2実施形態に係る掃除具は、傾けた側とその逆側の両方に自在に掃き掃除ができ、より強力に埃等の除去を実現できる。
【0069】
第2実施形態に係る掃除具は、第1実施形態に係る掃除具と同様、掃除布21が乾いた状態であっても濡れた状態であっても問題なく用いることができる。特に畳掃除においては、畳表の原料であるイグサへの適度な水分補給のために、水分を含ませ固く絞った掃除布21を時々用いることが望ましい。又、畳掃除においては、表面にツヤを出すために「米ぬか拭き」が推奨されているが、掃除布21に含ませる水分の成分についても自由に選択することができる。
【0070】
第2実施形態に係る掃除具によれば、第1実施形態に係る掃除具と同様、埃等の付着部材であるカバーを両側から挟むピンチ状の保持具が不要のため、掃除具自体の厚みをより小さくすることができ、机や家具の下等の狭い領域へも容易に侵入させて効率の良い掃除をすることができる。又、ピンチ状の保持具が不要のため、第2実施形態に係る掃除具をほぼ寝かせた状態で使用することも可能である。
【0071】
第2実施形態に係る掃除具によれば、第1実施形態に係る掃除具と同様、埃等の付着部材である掃除布21の取り付けが誰でも短時間で容易に行うことができる。掃除布21の固定端にある複数の貫通孔に、複数の保持鈎の各先端部を貫通させて保持し、掃引部12aの尖端部を通るようにほぼ1周巻き付け、重畳端側の垂れ下がり部21sを垂らすだけであり、数秒で取り付けを行うことができる。脱離の場合も同様であり、垂れ下がり部21sの一方を持って巻き付けを解除し、複数の保持鈎の各先端部から外す等でよく、数秒で行うことができる。第2実施形態に係る掃除具においては、掃除布21の脱着が容易であるにもかかわらず、掃除布21の自重及び接触保持面の重畳部分における摩擦力と吸引力により、直立状態であっても傾けた使用状態であっても、容易に脱離することはない。
【0072】
第2実施形態に係る掃除具によれば、第1実施形態に係る掃除具と同様、掃除布21の素材に限定はないため、掃除布21の替えについては、家庭に元からある素材で容易に準備することができるため、大変経済的である。専用のカバーをわざわざ準備しなければならないという煩わしさから解放され、掃除に取り掛かるフットワークを軽くすることができる。又、家庭で使わなくなって余った布を再利用できるため、ゴミの減少にも役立ち、自然環境にも優しい。
【0073】
第2実施形態に係る掃除具によれば、第1実施形態に係る掃除具と同様、掃除領域への力の加え方を面状、線状又は点状のうちから選択できるため、自由度の高い掃き掃除が可能である。第2実施形態に係る掃除具については、広い掃除領域を早く効率よく掃除したい場合は、面状又は線状に力を加えて用い、狭い掃除領域を繊細に丁寧に掃除したい場合は、線状又は点状に力を加えて用いる等、多様な用い方で用いることができる。
【0074】
第2実施形態に係る掃除具によれば、第1実施形態に係る掃除具と同様、掃除布21の取り付け状態を、第1実施形態で説明した取り付け状態に係る第1及び第2形態変形例にも容易に遷移でき、接触保持面及び有効接地面の面積を自在に調節することができることから、掃除領域の状態に見合った掃除方法を選択することができる。垂れ下がり部21sの垂れ下がり部分の長さを調節することで、主面部21fのより清潔な部分を選択することができ、主面部21fのより多くの面を掃除に使うことも可能となる。
【0075】
第2実施形態に係る掃除具によれば、複数の保持鈎については、掃除布21が巻き付けられると、N字の先端部は掃除布21に覆われるため、取り扱い時のケガや家具等の破損を防ぎながら使用することができる。第2実施形態に係る掃除具によれば、掃き掃除や拭き掃除以外でも、例えば床面のワックスがけ等の用途に好適に用いることができる。
【0076】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は第1実施形態、第1及び第2形態変形例、ならびに第2実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。例えば、既に述べた第1実施形態、第1及び第2形態変形例、ならびに第2実施形態の説明においては、自在箒に類似な構造を概略として基礎について例示したが、本発明の掃除具の掃除布を取り付ける基礎となる部材は市販されている自在箒の構造に限定されるものではない。
【0077】
本明細書の冒頭で述べたように、自在箒の場合は、棒状の柄が柄の下方の先端を支点として、ヘッド部の長辺方向に沿った面内で180°回転可能なように、柄の下方の先端が、ヘッド部の長辺方向の中央の上部で結合されている。本発明の掃除具においては、甲14に対して棒状の柄部11が必ずしも自在箒と同様に回転自在に取り付けられている必要はない。しかし、逆に、自在箒と同様に、本発明の掃除具の柄部11が甲14に対して回転自在に取り付けられていてもよい。
【0078】
図1等では柄部11の長い「長箒」に類似な構造に着目して例示的に説明したが、図1等に例示した柄部11の長さよりも短い、手箒、ハンド箒、小箒に類似な構造を基礎として、本発明の保持鈎を含むヘッド部を構成してもよい。更に、小型にして机上専用の小さな掃除具を構成してもよい。本発明の掃除具を小さな構造にして、洋服ブラシとして用いてもよい。
【0079】
図1等に示す第1実施形態及び図10に示す第2実施形態においては、下端が山型形状である掃引部12aを例示しているが、図13に示すように、通常のデッキブラシに近い構造の、下端がフラットである掃引部12bでもよい。掃引部12aの代わりに掃引部12bを用いても、掃除に使用する際、接触保持面の重畳部分における摩擦力と吸引力は同様に生じ、掃除布12は同様に保持される。
【0080】
図9に示す掃除布21には複数の貫通孔があらかじめ設けられているが、必ずしも必要ではなく、掃除布21を基体部に巻き付ける際に、複数の保持鈎1a〜1dの先端部で刺突して孔を開けてもよい。又、図9に示す掃除布21は略矩形であるが、略矩形という形状は発明の本質部分ではないため、基体部の甲14及び掃引部12aを覆うことができれば矩形である必要はない。更に、垂れ下がり部21sについても、図9等においては2つの対称図形で示しているが、対称形でなくてもよいし、例えば一方の垂れ下がり部を有さずとも接触保持面の重畳部分における摩擦力と吸引力が保持に十分であれば、一方のみでもよい。
【0081】
図1等に示す第1保持鈎1aをはじめとした複数の保持鈎1a〜1dについては、先端部が矩形で示されているが、その他の形状であってもよい。例えば、保持鈎のその他の実施形態群1のひとつとして、図11(a)に示すように、上部に向かって丸みを帯びたL字型の保持鈎であってもよい。この場合は角部分が少ないため、掃除布の交換時等にケガをしにくく、又、家具等を不用意に傷つけることが少ないという利点がある。又、図11(b)に示すように、保持鈎は、上部に向かって湾曲した先端部を有する湾曲型でもよい。湾曲型の場合は、湾曲した方向と逆向きに力が加わった場合に、掃除布がより脱離しにくくなる利点がある。更に、図11(c)に示すように、保持鈎は上部に折れ曲がり部分を有するコの字型でもよい。この場合、図11(b)の湾曲型の場合と同様、上部の直角に曲がった方向と逆向きに力が加わった場合に、掃除布がより脱離しにくくなる利点がある。これらのように、複数の保持鈎1a〜1dについては様々な形状が考えられる。これらのその他の実施形態群1の先端部の各形状は、第1実施形態のみならず第2実施形態にも応用可能であることは勿論のことである。
【0082】
更に、図1等に示す第1保持鈎1aをはじめとした複数の保持鈎1a〜1dについては、更にその他の形状であってもよい。例えば、保持鈎のその他の実施形態群2のひとつとして、図14(a)に示すように、突起部分(先端部)の最先端に、上方に湾曲した折り返し構造を有するような保持鈎であってもよい。図14(a)に示す保持鈎は、図11(a)に示す保持鈎と比較して、突起部分の最先端の構造が異なるのみである。図14(a)に示す保持鈎が先端部の最先端に折り返し構造を有することで、掃除布の固定端がより脱離しにくくなる。更に、図14(a)に示す保持鈎の折り返し構造が上方に湾曲し、最先端において角がとれたラウンド形状であることで、掃除布の布地が保持鈎に引っかからずに、スムーズに固定端を固定することができる。又、図14(b)に示すように、保持鈎は、図11(b)に示す保持鈎の先端部の最先端を上方に湾曲して折り返し構造を形成したような保持鈎であってもよい。図14(b)に示す保持鈎が図14(a)に示す保持鈎と異なる点は、土台となる中間部分との接合部である先端部の根元から最先端までが窄まっているか否かという点である。図14(b)に示す保持鈎においても、図14(a)に示す保持鈎と同様に、先端部の最先端に折り返し構造を有することで、掃除布の固定端がより脱離しにくくなる。更に、図14(b)に示す保持鈎の折り返し構造が上方に湾曲し、最先端において角がとれたラウンド形状であることで、掃除布の布地が保持鈎に引っかからずに、スムーズに固定端を固定することができる。更に、図14(c)に示すように、保持鈎は、図11(c)に示す保持鈎の先端部の最先端を上方に湾曲して折り返し構造を形成したような保持鈎であってもよい。図14(c)に示す保持鈎が図14(b)に示す保持鈎と異なる点は、先端部の根元から湾曲し始めまでの距離である。図14(c)に示す保持鈎の方が、図14(b)に示す保持鈎と比較して、先端部の根元から湾曲し始めまでの距離が長い。図14(c)に示す保持鈎においても、図14(a)及び(b)に示す保持鈎と同様に、先端部の最先端に折り返し構造を有することで、掃除布の固定端がより脱離しにくくなる。更に、図14(c)に示す保持鈎の折り返し構造が上方に湾曲し、最先端において角がとれたラウンド形状であることで、掃除布の布地が保持鈎に引っかからずに、スムーズに固定端を固定することができる。これらのように、複数の保持鈎1a〜1dについては様々な形状の代替が考えられる。これらのその他の実施形態群2の先端部の各形状は、第1実施形態のみならず第2実施形態にも応用可能であることは勿論のことである。
【0083】
保持鈎の更にその他の実施形態として、図12(a)及び(b)に示すように、使用時は立ち上げて先端部を出現させ、使用しない時は甲14aの上面に先端部を収納できる保持鈎を採用することもできる。図12(a)に示すように、その他の実施形態に係る複数の保持鈎2a、2b、2c、2dは、使用しない時は、甲14aの上面の水平レベルと同一になるように収納することができる。図12(b)に示すように、使用するときは、引っかけ部26に指等を引っかけて第4保持鈎2dを矢印方向に立ち上げることができる。図12(a)に示す第1保持鈎2a、第2保持鈎2b及び第3保持鈎2cについても、第4保持鈎2dと同様である。このように収納型の保持鈎にすることで、使用しないの時の見た目がすっきりし、先端部によるケガや家具の破損等も生じにくい。更に、掃除布を取り付けた後に複数の保持鈎2a、2b、2c、2dを収納する方向に倒すことで、掃除布の固定端がより強固に固定される効果もある。この更にその他の実施形態については、第1実施形態のみならず第2実施形態にも応用可能であることは勿論のことである。
【0084】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0085】
1a、1b、1c、1d、2a、2b、2c、2d、3a…保持鈎
11…柄部
12a、12b…掃引部
14、14a…甲
21…掃除布
21f…主面部
21s…垂れ下がり部
21s…左垂れ下がり部
21s…右垂れ下がり部
23a、23b、23c、23d…貫通孔
25…切れ込み
26…引っかけ部

【要約】      (修正有)
【課題】室内の狭い隙間まで、簡単かつ有効に掃除可能な掃除具及びこの掃除具の骨格構造となる基体部を提供する。
【解決手段】掃除具は、棒状の柄部11と、柄部の根元に上部の中央を接続した甲14と、甲の下部に設けられた掃引部12aと、甲の上部付近に設けられた突起形状の保持鈎1aと、略矩形の一辺の中央から内側に向けた切れ込みの両側を垂れ下がり部21sとし、垂れ下がり部以外を主面部21fとする面状構造であって、一辺の対辺付近が保持鈎に保持され、主面部が甲及び掃引部を覆い、垂れ下がり部が柄部を挟むように甲の上方から甲の側面方向に垂れ下がる掃除布21とを備える。垂れ下がり部と主面部の接触面の重畳部分における摩擦力と吸引力で、垂れ下がり部が主面部に固定される。
【選択図】図4
図1
図2
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図4
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図14