特許第6846098号(P6846098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6846098梁枠の取付構造並びにこれに用いられる梁枠受け部材及び梁枠渡し部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6846098
(24)【登録日】2021年3月3日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】梁枠の取付構造並びにこれに用いられる梁枠受け部材及び梁枠渡し部材
(51)【国際特許分類】
   E04G 5/16 20060101AFI20210315BHJP
   E04G 1/04 20060101ALI20210315BHJP
   E04G 7/14 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   E04G5/16 Z
   E04G1/04
   E04G7/14 A
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-33065(P2017-33065)
(22)【出願日】2017年2月24日
(65)【公開番号】特開2018-138717(P2018-138717A)
(43)【公開日】2018年9月6日
【審査請求日】2020年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000167233
【氏名又は名称】光洋機械産業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上田 実
(72)【発明者】
【氏名】西川 勇輔
【審査官】 津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第01233122(EP,A2)
【文献】 実開平04−041036(JP,U)
【文献】 特開2009−287304(JP,A)
【文献】 実開平03−089837(JP,U)
【文献】 実公昭50−034743(JP,Y1)
【文献】 実開昭56−014140(JP,U)
【文献】 特開2001−173222(JP,A)
【文献】 特開2017−040115(JP,A)
【文献】 特開平09−317168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 5/16
E04G 1/04
E04G 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掛止孔を有する掛止部材が所定の間隔を隔てて設けられた複数の支柱同士の間に、前記掛止孔にくさびが緊結されることによって複数種類の足場部材が連結されて設けられており、前記足場部材が部分的に配設されない開口部を有するくさび緊結式足場において、
前記開口部の上方部分に配設される上方の足場部材を支持するために、前記開口部の上部の前踏み側及び後踏み側にそれぞれ取付けられ、水平方向に延びる一対の梁枠と、
前記開口部の上部隅部に位置する前記掛止部材に掛止されるとともに、前記一対の梁枠をそれぞれ支持する二対の梁枠受け部材と、
前記上方の足場部材に含まれる支柱を立設可能な梁枠渡し部材とを備え、
前記梁枠渡し部材は、前記一対の梁枠同士に掛け渡されつつ前記梁枠上の所定位置に配置され
前記各梁枠受け部材は、
前記梁枠を支持するU字状部材と、
前記U字状部材と一体的に設けられ前記掛止部材の前記掛止孔に差し込まれる差込片と、
前記U字状部材と一体的に設けられ前記支柱を締め付けるクランプとからそれぞれなることを特徴とする、梁枠の取付構造。
【請求項2】
前記梁枠渡し部材は、
前記一対の梁枠間に延びる横架材と、
前記横架材の両端に連結され、前記上方の足場部材に含まれる支柱を立設可能な2つの支柱受け部材とからなり、
前記支柱受け部材は、
円筒状の本体と、
前記本体の上部に設けられ、前記上方の足場部材に含まれる支柱を立設するためのほぞと、
前記本体の周面に設けられ、前記横架材を連結可能な掛止部材と、
前記本体の周面の一部に設けられ、前記梁枠に掛止可能なフック部とからなる、請求項1に記載の梁枠の取付構造。
【請求項3】
掛止孔を有する掛止部材が所定の間隔を隔てて設けられた複数の支柱同士の間に、前記掛止孔にくさびが緊結されることによって複数種類の足場部材が連結されて設けられており、前記足場部材が部分的に配設されない開口部を有するくさび緊結式足場において、
前記開口部の上方部分に配設される上方の足場部材を支持するために、前記開口部の上部の前踏み側及び後踏み側にそれぞれ取付けられる一対の梁枠を前記くさび緊結式足場に対して取付ける際の、梁枠の取付構造に用いられる梁枠受け部材であって、
前記開口部の上部隅部に位置する前記掛止部材に掛止されており、
前記一対の梁枠をそれぞれ支持するとともに、
前記梁枠を支持するU字状部材と、
前記U字状部材と一体的に設けられ前記掛止部材の前記掛止孔に差し込まれる差込片と、
前記U字状部材と一体的に設けられ前記支柱を締め付けるクランプとからなることを特徴とする、梁枠受け部材。
【請求項4】
掛止孔を有する掛止部材が所定の間隔を隔てて設けられた複数の支柱同士の間に、前記掛止孔にくさびが緊結されることによって複数種類の足場部材が連結されて設けられており、前記足場部材が部分的に配設されない開口部を有するくさび緊結式足場において、
前記開口部の上方部分に配設される上方の足場部材を支持するために、前記開口部の上部の前踏み側及び後踏み側にそれぞれ取付けられる一対の梁枠を前記くさび緊結式足場に対して取付ける際の、梁枠の取付構造に用いられる梁枠渡し部材であって、
前記上方の足場部材に含まれる支柱を立設可能であり、
前記一対の梁枠同士に掛け渡されつつ前記梁枠上の所定位置に配置されているとともに、
前記一対の梁枠間に延びる横架材と、
前記横架材の両端に連結され、前記上方の足場部材に含まれる支柱を立設可能な2つの支柱受け部材とからなり、
前記支柱受け部材は、
円筒状の本体と、
前記本体の上部に設けられ、前記上方の足場部材に含まれる支柱を立設するためのほぞと、
前記本体の周面に設けられ、前記横架材を連結可能な掛止部材と、
前記本体の周面の一部に設けられ、前記梁枠に掛止可能なフック部とからなることを特徴とする、梁枠渡し部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築工事現場等で組立てられる仮設足場、特にくさび緊結式足場において用いられる梁枠の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、仮設足場は、建築工事現場において例えばビル等の建築物に沿うようにして設けられ、現場作業者が建築物の補修や塗装等の工事を行うために用いられる。近年では、仮設足場に用いられる複数種類の仮設部材を連結するためにくさびが用いられる、いわゆるくさび緊結式足場が採用されている(例えば「特許文献1」参照)。
【0003】
くさび緊結式足場は、図13に示すように、通常、基本スパン(例えば1829mm)ごとに支柱41が立設され、支柱41に各仮設部材が連結されることにより構築される。くさび緊結式足場がマンションや店舗を有するビルに沿って設けられる場合、マンションや店舗等の出入口に応じて所定の空間を有する開口部Sが形成されることがある(図13参照)。この開口部Sを通じて、マンションや店舗等に人が出入りしたり物を運搬したりすることができる。
【0004】
くさび緊結式足場において開口部Sが形成される場合、開口部Sの上方部分にも仮設部材が設けられるため、通常、それらを支持するための梁枠42が取付けられる。梁枠42は、開口部Sの上部であって前踏み側(建築物に近い側)及び後踏み側(建築物に遠い側)の両方に横方向に延びて取付けられる(図13では後踏み側の梁枠42のみを示している。)。
【0005】
梁枠42は、開口部Sの幅とほぼ同じ長さとされ、図14に示すように、2本の水平材43,44が平行に配され、それらが縦材45や斜材46等によって連結されて形成されている。縦材45の上部には、ほぞ47が縦材45に連続するように形成されている。このほぞ47には、開口部Sの上方部分に配置される支柱41が嵌挿されて立設される。
【0006】
梁枠42の端部は、図15に示すように、支柱41に設けられたフランジ48に連結される。より詳細には、フランジ48に梁枠42の連結部材49が挟持され、くさび50が連結部材49を貫通しつつ、フランジ48に形成された掛止孔51に緊結されることにより、梁枠42の端部と支柱41とが連結される。
【0007】
くさび緊結式足場においては、通常、左右方向に隣り合う支柱41の設置間隔W(図13参照)が基本スパンとされ、この基本スパンごとに支柱41が立設される。そのため、開口部Sの幅は、基本スパンが基準となり、すなわち基本スパンの倍数の幅となるように設定される。
【0008】
同様に、開口部Sの上方部分においても支柱41の基本スパンを維持する必要があるため、上記梁枠42には、支柱41の設置間隔と一致する間隔Wで縦材45及びほぞ47が設けられている(図14参照)。
【0009】
ここで、建築工事現場においては、上記開口部Sの幅を任意の幅に設定したい場合がある。例えば建築物が店舗である場合には、開口部Sの幅を店舗の出入口の幅に合わしたり、あるいは開口部Sを車両が通過する場合には、開口部Sの幅を車両の幅よりやや大の幅に合わしたりする場合がある。
【0010】
しかしながら、くさび緊結式足場における開口部Sの幅は、上記したように、梁枠42の長さと略一致しており、かつ支柱41の基本スパンの倍数の幅に設定されているため、開口部Sの幅を任意の幅に設定すると、従来の梁枠42を用いることができなくなる。
【0011】
そのため、現場作業者は、基本スパンの倍数以外の幅を有する梁枠を別途準備しなければならず、開口部Sの幅は建築工事現場ごとに異なることが多いので、その異なる幅の開口部Sに応じた梁枠を建築工事現場ごとに準備する必要があるといった煩わしさがあった。また、梁枠の種類が多くなると、それらの管理が煩雑になるといった問題点もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2014−101659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、くさび緊結式足場の開口部の幅が任意の幅に設定されても容易に対応することのできる梁枠の取付構造を提供することをその課題とする。また、この梁枠の取付構造に用いられる梁枠受け部材及び梁枠渡し部材を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の側面によって提供される梁枠の取付構造は、掛止孔を有する掛止部材が所定の間隔を隔てて設けられた複数の支柱同士の間に、前記掛止孔にくさびが緊結されることによって複数種類の足場部材が連結されて設けられており、前記足場部材が部分的に配設されない開口部を有するくさび緊結式足場において、前記開口部の上方部分に配設される上方の足場部材を支持するために、前記開口部の上部の前踏み側及び後踏み側にそれぞれ取付けられ、水平方向に延びる一対の梁枠と、前記開口部の上部隅部に位置する前記掛止部材に掛止されるとともに、前記一対の梁枠をそれぞれ支持する二対の梁枠受け部材と、前記上方の足場部材に含まれる支柱を立設可能な梁枠渡し部材とを備え、前記梁枠渡し部材は、前記一対の梁枠同士に掛け渡されつつ前記梁枠上の所定位置に配置され、前記各梁枠受け部材は、前記梁枠を支持するU字状部材と、前記U字状部材と一体的に設けられ前記掛止部材の前記掛止孔に差し込まれる差込片と、前記U字状部材と一体的に設けられ前記支柱を締め付けるクランプとからそれぞれなることを特徴としている。
【0016】
本発明の梁枠の取付構造において、前記梁枠渡し部材は、前記一対の梁枠間に延びる横架材と、前記横架材の両端に連結され、前記上方の足場部材に含まれる支柱を立設可能な2つの支柱受け部材とからなり、前記支柱受け部材は、円筒状の本体と、前記本体の上部に設けられ、前記上方の足場部材に含まれる支柱を立設するためのほぞと、前記本体の周面に設けられ、前記横架材を連結可能な掛止部材と、前記本体の周面の一部に設けられ、前記梁枠に掛止可能なフック部とからなるとよい。
【0018】
本発明の第2の側面によって提供される梁枠受け部材は、掛止孔を有する掛止部材が所定の間隔を隔てて設けられた複数の支柱同士の間に、前記掛止孔にくさびが緊結されることによって複数種類の足場部材が連結されて設けられており、前記足場部材が部分的に配設されない開口部を有するくさび緊結式足場において、前記開口部の上方部分に配設される上方の足場部材を支持するために、前記開口部の上部の前踏み側及び後踏み側にそれぞれ取付けられる一対の梁枠を前記くさび緊結式足場に対して取付ける際の、梁枠の取付構造に用いられる梁枠受け部材であって、前記開口部の上部隅部に位置する前記掛止部材に掛止されており、前記一対の梁枠をそれぞれ支持するとともに、前記梁枠を支持するU字状部材と、前記U字状部材と一体的に設けられ前記掛止部材の前記掛止孔に差し込まれる差込片と、前記U字状部材と一体的に設けられ前記支柱を締め付けるクランプとからなることを特徴としている。
【0019】
本発明の第3の側面によって提供される梁枠渡し部材は、掛止孔を有する掛止部材が所定の間隔を隔てて設けられた複数の支柱同士の間に、前記掛止孔にくさびが緊結されることによって複数種類の足場部材が連結されて設けられており、前記足場部材が部分的に配設されない開口部を有するくさび緊結式足場において、前記開口部の上方部分に配設される上方の足場部材を支持するために、前記開口部の上部の前踏み側及び後踏み側にそれぞれ取付けられる一対の梁枠を前記くさび緊結式足場に対して取付ける際の、梁枠の取付構造に用いられる梁枠渡し部材であって、前記上方の足場部材に含まれる支柱を立設可能であり、前記一対の梁枠同士に掛け渡されつつ前記梁枠上の所定位置に配置されているとともに、前記一対の梁枠間に延びる横架材と、前記横架材の両端に連結され、前記上方の足場部材に含まれる支柱を立設可能な2つの支柱受け部材とからなり、前記支柱受け部材は、円筒状の本体と、前記本体の上部に設けられ、前記上方の足場部材に含まれる支柱を立設するためのほぞと、前記本体の周面に設けられ、前記横架材を連結可能な掛止部材と、前記本体の周面の一部に設けられ、前記梁枠に掛止可能なフック部とからなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明の梁枠の取付構造によれば、一対の梁枠は支柱に掛止された二対の梁枠受け部材によってそれぞれ支持され、前踏み側及び後踏み側のそれぞれに支持された一対の梁枠同士の間には梁枠渡し部材が掛け渡され、梁枠渡し部材は梁枠上の所定位置に配置される。そのため、開口部の上方部分において、梁枠渡し部材によって立設される支柱を梁枠上の所定の位置に配置させることができる。開口部の幅は支柱の配置位置で設定することができるので、本発明では、開口部の幅を任意の幅に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る梁枠の取付構造が適用される仮設足場の正面図である。
図2】支柱、腕木材及び足場板の取付状態を示す図である。
図3】梁枠の外形を示す図である。
図4】梁枠の外形を示す部分拡大図である。
図5】梁枠受け部材の外形を示す斜視図である。
図6】梁枠受け部材の外形を示し、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は右側面図である。
図7】梁枠受け部材の背面図である。
図8】梁枠渡し部材の外形を示す図である。
図9】支柱受け部材の外形を示す斜視図である。
図10】支柱受け部材の外形を示し、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は右側面図である。
図11】梁枠の梁枠受け部材に対する取付状態を説明するための図である。
図12】梁枠渡し部材の梁枠に対する取付状態を説明するための図である。
図13】従来の梁枠が取付けられたくさび緊結式足場の正面図である。
図14】従来の梁枠の外形を示す部分拡大図である。
図15】従来の梁枠が支柱に連結されるときの状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る梁枠の取付構造が適用される仮設足場の正面図である。仮設足場は、建築工事現場において例えばビル等の建築物に沿うようにして設けられ、現場作業者が建築物の補修や塗装等の工事を行うために用いられる。
【0024】
図1に示す仮設足場は、複数種類の仮設部材を連結するためにくさびが用いられる、いわゆるくさび緊結式足場である。くさび緊結式足場は、立設された複数の支柱1、隣り合う支柱1間に設けられ作業者が作業を行うあるいは移動するための足場板2、及び隣り合う支柱1間に設けられ作業者の転落を防止するための手摺3等によって概略構成されている。
【0025】
このくさび緊結式足場に用いられる支柱1には、上下方向に所定間隔を隔ててフランジ5が設けられている(図2参照)。フランジ5は、水平方向に広がるように略花びら状に形成され、十字方向に4つの掛止孔6が形成されている。くさび緊結式足場においては、図1に示す奥行方向に隣り合う支柱1同士の間に例えば腕木材4が配設される。
【0026】
腕木材4は、その両端にくさび7が遊嵌される連結部材8が設けられており、フランジ5に形成された掛止孔6にくさび7が緊結されることにより、支柱1のフランジ5に腕木材4が連結される。なお、通常くさび緊結式足場においては、腕木材4に足場板2が支持されて設けられ、フランジ5の他の掛止孔6に図示しない手摺枠3が連結される。
【0027】
図1に戻り、くさび緊結式足場においては、マンションや店舗等の出入口に応じて所定の空間を有する開口部Sが形成されることがある。開口部Sの上部には、その上方部分に配設される仮設部材を支持するための一対の梁枠11が取付けられている。一対の梁枠11は、開口部Sの上部であって前踏み側(建築物に近い側)及び後踏み側(建築物に遠い側)の両方に水平方向に延びるようにして取付けられる。なお、図1では、後踏み側の梁枠11のみを示している。
【0028】
ここで、開口部Sは、その幅が通常、支柱1間の基本スパン(例えば1829mm)の倍数とほぼ一致するように設定されることが多いが、必要に応じ基本スパンの倍数以外の任意の幅に設定されることがある。本実施形態の梁枠11の取付構造は、そのような開口部Sの幅が基本スパンの倍数以外の任意の幅に設定される場合があっても、設定された開口部Sの幅に容易に対応することができるものである。
【0029】
梁枠11は、少なくとも開口部Sの幅より大の長さとされ、図3に示すように、水平方向に延びて形成されたパイプ状の上側水平材12と、それに並行に配されたパイプ状の下側水平材13と、所定の間隔を隔てて上下方向に並設される複数の縦部材14と、隣り合う縦部材14の間にトラス状に設けられた複数の斜材15とによって概略構成されている。
【0030】
梁枠11の両端部には、この梁枠11をくさび緊結式足場に取付けるための取付部16がそれぞれ設けられている。取付部16は、図4に示すように、上側水平材12の端部(一部)と、上側水平材12寄りに水平方向に延びた補助水平材17と、上側水平材12と補助水平材17との端部同士を連結する連結材18とによって構成されている。
【0031】
なお、図4には示していないが、最も端にある縦部材14と、補助水平材17との間には、後述する梁枠受け部材21が邪魔にならなければ、補強材が斜め方向に配されて設けられていてもよい。また、梁枠11の構成は、上方部分に配設される仮設足場を支持することのできる強度を有するものであれば、図3及び図4に示す形状に限るものではない。
【0032】
一対の梁枠11は、くさび緊結式足場に対して二対の梁枠受け部材21によって支持されて取付けられる。各梁枠受け部材21は、それ自体は後述するように支柱1のフランジ5に取付けられて用いられる。
【0033】
図5は梁枠受け部材21の斜視図であり、図6は梁枠受け部材21の外形を示し、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は右側面図である。また、図7は梁枠受け部材21の背面図である。梁枠受け部材21は、左右方向に並設され梁枠11を支持するための一対のU字状部材22を備えている。一対のU字状部材22は、梁枠11を支持するために、曲面部が下方に位置するように形成されている。一対のU字状部材22には、それらの一方側面の上部及び下部に、それら同士を連結するための平板状の上連結部材23及び下連結部材24がそれぞれ設けられている。
【0034】
上連結部材23の背面側には、上下方向に延びた差込片25が設けられている。差込片25は、梁枠受け部材21の取付時に、開口部Sの上部隅部C(図1参照)に位置するフランジ5の掛止孔6に差込まれる。より具体的には、差込片15は、フランジ5において腕木材4が取付けられる掛止孔6と反対側にある掛止孔6(図2参照)に差し込まれる。一方、下連結部材24の背面側には、平板状の取付部材26を介してクランプ27が例えばボルト止めされている。クランプ27は、梁枠受け部材21を支柱1に固定するためのものであり、梁枠受け部材21の取付時に、支柱1を所定の締付けトルクで締め付ける。
【0035】
上記U字状部材22のそれぞれには、対向する面の同一高さ位置において貫通孔28が形成されている。一対のU字状部材22には、それらの貫通孔28を貫通するとともに上記一対のU字状部材22を掛け渡すようにコの字状ボルト29が取付けられている。コの字状ボルト29の端部には、蝶ナット30が螺着されている。蝶ナット30は、一対のU字状部材22に梁枠11の上側水平材12及び補助水平材17を配したときに、それらを締付けて固定するためのものである。
【0036】
前踏み側及び後踏み側のそれぞれに取付けられた一対の梁枠11同士の間(図1の奥行き方向における間)には、1または複数の梁枠渡し部材31が掛け渡される。梁枠渡し部材31は、後述するように梁枠11の上側水平材12の所定位置に配置される。図1では、3つの梁枠渡し部材31が配置されている。
【0037】
梁枠渡し部材31は、図8に示すように、長尺状の腕木材4と、その両端に連結される支柱受け部材32とからなる。腕木材4は、パイプ状の本体4aと、本体4aの両端に設けられた連結部材8及びくさび7からなる。なお、本実施形態における梁枠渡し部材31の腕木材4は、本梁枠渡し部材31用に新たに設計製作されたものではなく、図2に示したように、くさび緊結式足場において汎用的に用いられる腕木材4が使用されている。
【0038】
図9は支柱受け部材32の斜視図であり、図10は支柱受け部材32の外形を示し、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は右側面図である。
【0039】
支柱受け部材32は、円筒状の円筒部33を備え、円筒部33の上部には、その直径よりやや小の直径を有しかつ所定の長さを有するほぞ34が設けられている。ほぞ34は、支柱1が嵌挿されることにより支柱1を立設させるためのものである。円筒部33の周面には、水平方向に広がるように形成され3つの掛止孔35を有するフランジ36が設けられている。また、円筒部33の周面の一部には、平面視略コの字状の連結部37を介して梁枠11に掛止するための側面視U字状のフック部38が設けられている。フック部38は、梁枠11に掛止するために、曲面部が上方に位置するように形成されている。
【0040】
支柱受け部材32のフランジ36において、フック部38とは反対側に形成された掛止孔35に、腕木材4の連結部材8及びくさび7が連結されることにより、支柱受け部材32と腕木材4とが一体化される。また、腕木材4の他方端の連結部材8及びくさび7にも、他の支柱受け部材32が連結されて一体化される。
【0041】
次に、梁枠11のくさび緊結式足場に対する取付手順について説明する。
【0042】
くさび緊結式足場において開口部Sが形成される場合、開口部Sの上方部分に配設される足場部材を支持するために、一旦、開口部Sが形成される領域に、仮設部材(支柱1、手摺材3及び腕木材4等)による仮足場が仮組みされる。
【0043】
次に、仮組みされた仮足場の上方に、梁枠受け部材21が取付けられる。より詳細には、梁枠受け部材21は、開口部Sの上部隅部C(図1参照)の両方に位置するフランジ5にそれぞれ取付けられる。すなわち、梁枠受け部材21の差込片25が当該フランジ5の掛止孔6に差し込まれ、クランプ27によってそのフランジ5を有する支柱1が所定の締付けトルクで締め付けられる。これにより、梁枠受け部材21は、開口部Sの上部隅部Cにおいて支柱1に固定される。なお、梁枠受け部材21は、前踏み側及び後踏み側の上部隅部Cに合計4つ取付けられる。
【0044】
次いで、図11に示すように、支柱1に対して固定された梁枠受け部材21に、梁枠11が支持される。詳細には、一対のU字状部材22の内側に梁枠11の取付部16の上側水平材12及び補助水平材17が配置され、コの字状ボルト29が一対のU字状部材22の貫通孔28に挿入されて蝶ナット30で締め付けられることにより、梁枠11の取付部16は、梁枠受け部材21に固定される。
【0045】
梁枠渡し部材31は、図12に示すように、梁枠11の上側水平材12の所定位置(支柱1が立設される位置)に配置される。すなわち、両支柱受け部材32の各フック部38は、前踏み側及び後踏み側の各梁枠11の上側水平材12に、梁枠渡し部材31が掛け渡されるようにして掛止される。
【0046】
次に、各支柱受け部材32のほぞ34に、支柱1がそれぞれ嵌挿される。そして、図12には示していないが、隣り合う梁枠渡し部材31の手摺材4同士の間には、それらを掛け渡すように足場板2が配置される。また、左右方向に隣り合う支柱1の間には、手摺3が取付けられる。その後、開口部Sの領域に仮組みされた仮足場を解体する。これにより、開口部Sの空間が形成される。
【0047】
このように、梁枠11は、梁枠受け部材21によって容易に開口部Sの上部に取付けることができる。梁枠渡し部材31は、梁枠11の上側水平材12の所定位置に掛け渡すことができるので、開口部Sの上方部分に設置される支柱1を好適な位置に立設させることができる。開口部Sの幅は支柱1の配置位置で設定することができるので、開口部Sの幅を基本スパンの倍数以外の幅に設定することができ、すなわち開口部Sの幅を任意の幅に設定することができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、梁枠11は少なくとも開口部Sの幅より大であればよく、梁枠受け部材21によって支持されるので、建築工事現場ごとに開口部Sの幅が異なる場合であっても、建築工事現場ごとに異なる長さの梁枠を準備する必要はない。また、それらを管理する必要もない。また、梁枠21は、その長さが開口部Sの幅より大であればよいので、従来の梁枠42のように寸法精度を必要としない。そのため、梁枠11を容易に製作することができる。
【0049】
また、梁枠11は、平面視でくさび緊結式足場の各支柱1の軸心を結ぶ線に対して、外れた位置に取付けられる。具体的には、前踏み側の梁枠11は、梁枠受け部材21によって各支柱1の軸心を結ぶ線からより建築物側に配置され、後踏み側の梁枠11は、各支柱1の軸心を結ぶ線からより建築物から遠ざかる位置に配置される。従来の梁枠42は、支柱1の軸心を結ぶ線と同一線上に配置され、かつ梁枠42の長さと開口部Sの幅がほぼ同じであったことにより、梁枠42の取付け時の作業がしづらいことがあった。しかしながら、本実施形態では、梁枠11は、各支柱1の軸心を結ぶ線から外れた位置に取付けられるので、取付け時の作業性を向上させることができる。
【0050】
また、本実施形態の支柱受け部材32は、上述したように汎用性のある腕木材4が用いられているので、製作コストを低減することができる。また、汎用性のある腕木材4を用いることから、例えばくさび緊結式足場の奥行き方向の幅が建築工事現場において急遽変更になっても、腕木材4のみを取り換えればよく、柔軟に対応することができる。
【0051】
なお、本発明の範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。例えば、上記実施形態における梁枠11、梁枠受け部材21、梁枠渡し部材31、支柱受け部材32等の形状、大きさ、数量等は、上記実施形態に限るものではなく、適宜設計変更可能である。例えば、上記実施形態では、支柱1にフランジ5が設けられていたが、フランジ5に代えて例えば上面視コの字状のポケット体が設けられ、各仮設部材はこのポケット体に連結されてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 支柱
2 足場板
3 手摺
4 腕木材
5 フランジ
6 掛止孔
11 梁枠
12 上側水平材
13 下側水平材
14 縦材
16 取付部
21 梁枠受け部材
22 U字状部材
31 梁枠渡し部材
32 支柱受け部材
34 ほぞ
S 開口部
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