(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記第2記憶処理において、前記第1記憶手段に記憶させた前記スキャン結果をデータファイルとして記憶させる請求項1または請求項2に記載の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<工作機械の構成>
図1を用いて、工作機械1の電気的構成について説明する。工作機械1は、コントローラ10、パネルコンピュータ20、センサ・スイッチ群30、モータ群40などを備える。工作機械1はワークに対して旋盤加工を行う。工作機械1は、不図示の、ワークを把持するチャックが取り付けられた主軸、ワークを加工するバイトが取り付けられるタレット、ワークを搬送するローダなどを有する。コントローラ10は、センサ・スイッチ群30からの入力信号に基づき、主軸、タレット、ローダなどを駆動するモータ群40を制御する。コントローラ10と、パネルコンピュータ20、センサ・スイッチ群30、およびモータ群40の各々とは、不図示のポートを介して電気的に接続されている。
【0010】
コントローラ10は、PLC(Programmable Logic Controller)であり、プロセッサ11およびフラッシュメモリ14などを有する。フラッシュメモリ14はラダー回路141などを記憶している。また、フラッシュメモリ14の一部はリングバッファ142として使用される。プロセッサ11は、センサ・スイッチ群30からの入力信号に基づき、ラダー回路141をスキャンし、モータ群40をシーケンス制御する。ここで、ラダー回路141とは、シーケンス制御用のプログラムである。リングバッファ142はプロセッサ11がラダー回路141をスキャンしたスキャン結果をバッファする。
【0011】
パネルコンピュータ20は工作機械1の正面に設置されている。パネルコンピュータ20は、プロセッサ21、フラッシュメモリ22、タッチパネル23、操作部24、およびUSBインターフェース25などを有する。フラッシュメモリ22には、後述するデータ取得処理のプログラム、表示画面をタッチパネル23に表示するプログラムなどのプログラムが記憶されている。プロセッサ21は、フラッシュメモリ22に記憶されているプログラムを実行することによって、タッチパネル23、操作部24、およびUSBインターフェース25などを制御する。タッチパネル23は、プロセッサ21の命令に応じて、各種の設定画面および工作機械1の動作状態等を表示する。また、タッチパネル23は、受け付けた操作に応じた信号をプロセッサ21へ出力する。操作部24は、複数の操作ボタンなどを有する。操作部24は、受け付けた操作に応じた信号をプロセッサ21へ出力する。USBインターフェース25は不図示のUSBコネクタを有する。USBインターフェース25はUSBコネクタに接続されたUSB対応の記憶媒体に対して、USB規格に沿ったデータの読み出しおよび書き込みを行う。USB対応の記憶媒体とは、例えば、USBメモリなどである。
【0012】
尚、プロセッサ11は、プロセッサ21からスキャン開始およびスキャン終了の指示を受信すると、夫々、スキャンを開始および終了する。また、プロセッサ11が、プロセッサ11からの指示によらず、スキャンを終了した場合、スキャンを終了したことを示す信号をプロセッサ21へ送信する。
【0013】
<トラブル原因調査の概要>
ところで、ラダー回路141は、一般にシーケンス制御の専門の知識を有する設計者により作成される。シーケンス制御はラダー回路141に従って逐次制御するため、例えば意図しないタイミングで、センサ・スイッチ群30から入力信号がコントローラ10に入力されてしまった場合などに、設計者が意図しない動作を工作機械1がしてしまう場合がある。このような場合に、意図しない動作のきっかけとなるコイルを特定することに対して、意図しない動作のきっかけとなるコイルがオンする原因を特定することは容易ではない。これは、コイルがオンする原因を特定するには、ラダー回路141のオン・オフ状態をトレースして調査する必要があるためである。また、コイルがオンする原因を特定するには、シーケンス制御の専門の知識を要するため、一般に設計者により行われる。トラブルが発生した場合、まず、工作機械1のオペレータは、ラダー回路141のオン・オフ状態をトレースするためのスキャン結果を工作機械1に取得させる。
【0014】
オペレータは、意図しない動作のきっかけとなるコイルをトレーストリガ信号に設定する。プロセッサ11は、トレーストリガ信号がオンしたことをトリガとして、トレーストリガ信号がオンとなったスキャン(以後、注目スキャンと称する)、注目スキャンに先行する5スキャン、注目スキャンに後行する4スキャンの計10スキャン分のスキャン結果を特定する。次に、オペレータは10スキャン分のスキャン結果を例えばUSBメモリに記憶させ、設計者に送信する。設計者は10スキャン分のスキャン結果に基づき、意図しない動作のきっかけとなるコイルがオンする原因を調査する。次に、工作機械1が実行するデータ取得処理について説明する。
【0015】
<データ取得処理>
例えば、電源がオンされると、工作機械1はタッチパネル23にメイン画面を表示する。メイン画面には、「設定」ボタン、「モニターモード」ボタンなどが表示される。オペレータにより「設定」ボタンに、例えばタップされるなどの操作がされると、工作機械1は、タッチパネル23の表示を設定画面に切替える。設定画面は、シーケンス制御のための各種パラメータの設定を受付ける画面である。オペレータは、設定画面にて、ラダー回路141のコイルの1つである、意図しない動作のきっかけとなるコイルをシーケンストリガ信号に設定する。詳しくは、プロセッサ21はタッチパネル23に、「番号」「コメント」「データ」などの項目を1組とするテーブルを有する設定画面を表示させる。「番号」はパラメータの各々に付与される番号を表示する項目であり、「コメント」はパラメータの種別の説明を表示する項目であり、「データ」はパラメータの値を表示する項目である。オペレータは「コメント」の値が、(シーケンス用トレーストリガ信号)である行の「データ」の値として、意図しない動作のきっかけとなるコイルのアドレスを入力する。プロセッサ21は、設定画面に値が入力されると、トレーストリガ信号が入力されたアドレスであることを示す信号をプロセッサ11へ送信する。信号を受信すると、プロセッサ11は、トレーストリガ信号として、入力されたアドレスをフラッシュメモリ14に記憶する。
【0016】
次に、オペレータはパネルコンピュータ20にて工作機械1の動作開始を指示する。例えば、操作部24が有する開始ボタンが押下されると、工作機械1はモニターモードにて動作を開始する。プロセッサ11およびプロセッサ21は
図2に示すデータ取得処理を開始する。尚、パネルコンピュータ20はモニターモード、トレースデータ取得済モード(以下、取得済モードと略記する。)、および信号確認モードを有する。モニターモードは、プロセッサ11がラダー回路141を繰り返しスキャンして取得したスキャン結果に応じて、プロセッサ21がタッチパネル23に表示するラダー図を逐次更新するモードである。取得済モードは、プロセッサ11が10スキャン分のスキャン結果の取得を完了した場合に、モニターモードから移行されるモードである。信号確認モードは、スキャン結果に基づくラダー図をタッチパネル23に表示するモードである。
【0017】
まず、プロセッサ21は、
図3に例示するモニターモード表示画面60をタッチパネル23に表示する(S1)。ここで、モニターモード表示画面60について説明する。モニターモード表示画面60はラダー図表示領域61および操作ボタン表示領域62を有する。ラダー図表示領域61には、ラダー回路141がラダー図にて表示される。ラダー図表示領域61は記号領域61aおよびコメント領域61bを有する。記号領域61aには、コイルの接点およびコイルなどの記号および母線、接続線などが表示される。コメント領域61bは、記号領域61aの右側に配置され、各コイルを説明するコメントおよびラダー図を上下にスクロールさせるための矢印ボタンなどが表示される。操作ボタン表示領域62には、例えば「トレース信号入力」ボタン63などの操作ボタンが表示される。
【0018】
記号領域61aに表示されるラダー図は、接点およびコイルが接続線で接続されて表記される。ここで、ラダー回路141は65535点の接点およびコイルを有する。タイマおよびカウンタなどを除く、接点およびコイルの各々は、16進法で000.0〜FFF.Fの何れかのアドレスが付与されている。また、タイマは「TIM」を接頭辞とするアドレスが付与されている。アドレスは、接点およびコイルの各々の上に表記される。記号領域61aに表示されるラダー図は、オンしている接点およびコイルは黄色で、オフしている接点およびコイルは黒色で表示される。同様に、接続線のうち、導通し、オンの信号を伝達するオン状態となっている区域は黄色で、オン状態となっていない区域は黒色で表示される。尚、
図3では、黒色を細線、黄色を太線で図示している。また、母線から引き出されている接続線の各々には、接続線のアドレスが付与されている。接続線のアドレスは、母線の左側に表記される。尚、記号領域61aの背景色は灰色である。
【0019】
「トレース信号入力」ボタン63が操作されると、プロセッサ21は、表示画面をモニターモード表示画面60から
図5に例示する確認モード表示画面80に切替える。確認モード表示画面80は、モニターモード表示画面60と同様に、ラダー図表示領域81および操作ボタン表示領域82を有し、ラダー図表示領域81は記号領域81aおよびコメント領域81bを有する。尚、記号領域81aの背景色は白色である。操作ボタン表示領域82には、「戻る」ボタン83、「次へ」ボタン84、「信号確認終了」ボタン85、および「トレース信号入力」ボタン86などの操作ボタンが表示される。また、「戻る」ボタン83の左に配置される時刻表示領域82bには、トレーストリガ信号に設定されたコイルがオンした日時が表示される。時刻表示領域82bの左に配置されるスキャン番号表示領域82aには、表示中のスキャン番号が表示される。スキャン番号は、注目スキャンを0とした場合の、注目スキャンに対する番号であり、−5〜4の何れかの整数で表示される。例えば、注目スキャンの1スキャン前のスキャンのスキャン番号は−1であり、注目スキャンの1スキャン後のスキャンのスキャン番号は1である。尚、確認モード表示画面80の詳細については後述する。
【0020】
図2に戻り、データ取得処理の説明を続ける。次に、プロセッサ21からの指示により、プロセッサ11はラダー回路141を1回スキャンし、スキャン1回分のスキャン結果をリングバッファ142に記憶させるともに、スキャン結果をパネルコンピュータ20へ送信する。詳しくは、プロセッサ11は、ラダー回路141が有する接点およびコイルの各々のオン・オフ状態を示すスキャン結果をスキャンした日時とともにリングバッファ142に記憶する。尚、リングバッファ142は、10スキャン分のスキャン結果をバッファすることができる。また、プロセッサ11がラダー回路141を1回スキャンするのに要する時間は、例えば10ms程度である。プロセッサ21は、送信されたスキャン結果に基づいて、ラダー図表示領域61の表示を更新する(S3)。プロセッサ21はスキャン結果の接点およびコイルの各々のオン・オフ状態に基づいて、ラダー図表示領域61に表示されるラダー図を更新する。これにより、ラダー図の接点およびコイルなどの黄色・黒色の表示色が変更される。
【0021】
次に、プロセッサ11はトレーストリガ信号がオンしたか否かを判断する(S5)。プロセッサ11は、トレーストリガ信号として記憶したアドレスのコイルがオフからオンに状態遷移した場合、トレーストリガ信号がオンしたと判断する。プロセッサ11はトレーストリガ信号がオンしていないと判断すると(S5:NO)、ステップS3へ戻り、トレーストリガ信号がオンするまで、ステップS3,S5を繰り返す。プロセッサ11はトレーストリガ信号がオンしたと判断すると(S5:YES)、トレーストリガ信号に設定されたコイルがオンした日時をフラッシュメモリ14に記憶し、後行の4スキャン分のスキャン結果を取得するため、スキャンを4回実行し、10スキャン分のスキャン結果を取得する(S7)。このように、トレーストリガ信号を設定することにより、プロセッサ11は意図しない動作のきっかけとなるコイルがオンしたスキャンを確実に特定することができる。次に、プロセッサ11からの信号により、10スキャン分のスキャン結果の取得が完了したと判断すると、プロセッサ21は取得済モードへ移行し、表示画面を
図4に示す取得済モード表示画面70に切替える(S9)。また、プロセッサ21は例えば「信号の記録が完了しました。」などのメッセージをタッチパネル23にポップアップ表示させる。尚、プロセッサ11は、プロセッサ21からスキャン終了の指示を受信するまでラダー回路141のスキャンを継続するが、「トレース信号破棄」ボタン73もしくは「トレース信号出力」ボタン74が操作されたことを示す信号をプロセッサ21から受信するまで、リングバッファ142にスキャン結果を記憶させない。
【0022】
ここで、取得済モード表示画面70について説明する。取得済モード表示画面70は、モニターモード表示画面60と同様に、ラダー図表示領域71および操作ボタン表示領域72を有し、ラダー図表示領域71は記号領域71aおよびコメント領域71bを有する。尚、記号領域71aの背景色は青色である。操作ボタン表示領域72には、「トレース信号破棄」ボタン73、「トレース信号出力」ボタン74、「トレース信号入力」ボタンなどの操作ボタンが表示される。ステップS9(
図2)において、モニターモード表示画面60の記号領域61aは背景色が灰色なのに対して、取得済モード表示画面70の記号領域71aの背景色は青色である。背景色の変化およびポップアップ表示により、オペレータは、工作機械1においてトラブルが再現され、調査に必要な10スキャン分のスキャン結果が取得されたことを認識することができる。
【0023】
次に、プロセッサ21は「トレース信号破棄」ボタン73が操作されたか否かを判断する(S11)。ここで、「トレース信号破棄」ボタン73は、オペレータが今回のスキャン結果は採用せず、スキャン結果の取得をやり直させたい場合に操作するためのボタンである。「トレース信号破棄」ボタン73が操作されたと判断すると(S13:NO)、プロセッサ21は、ステップS1に戻り、表示画面を取得済モード表示画面70からモニターモード表示画面60に切替える。また、「トレース信号破棄」ボタン73が操作されたことを示す信号をプロセッサ11へ送信する。プロセッサ11は、ラダー回路141をスキャンしている場合、「トレース信号破棄」ボタン73が操作されたことを示す信号を受信すると、リングバッファ142にスキャン結果を記憶させることを再開する。
【0024】
一方、「トレース信号破棄」ボタン73が操作されていないと判断すると(S11:NO)、プロセッサ21は「トレース信号出力」ボタン74が操作されたか否かを判断する(S13)。「トレース信号出力」ボタン74は、オペレータが今回のスキャン結果を採用し、スキャン結果をUSBメモリに記憶させたい場合に操作するためのボタンである。「トレース信号出力」ボタン74が操作されたと判断すると(S13:YES)、プロセッサ21はプロセッサ11に「トレース信号出力」ボタン74が操作されたことを示す信号を送信し、10スキャン分のスキャン結果の送信を指示する。プロセッサ21の指示に応じて、プロセッサ11は、リングバッファ142から読み出した10スキャン分のスキャン結果と、フラッシュメモリ14から読み出したトレーストリガ信号に設定されたコイルがオンした日時とをパネルコンピュータ20へ送信する。また、プロセッサ11は、ラダー回路141をスキャンしている場合、リングバッファ142にスキャン結果を記憶させることを再開する。プロセッサ21は、送信された10スキャン分のスキャン結果と、トレーストリガ信号に設定されたコイルがオンした日時とを1つにまとめたデータファイルを作成し、フラッシュメモリ22に記憶する。また、プロセッサ21は、USBインターフェース25に、USBコネクタに装着されているUSBメモリにスキャン結果を含むデータファイルを記憶させ(S15)、処理を終了する。尚、プロセッサ21はデータ取得処理を終了すると、モニターモードに移行し、モニターモード表示画面60を表示させる。一方、「トレース信号出力」ボタン75が操作されていないと判断すると(S13:NO)、ステップS9へ戻り、プロセッサ21は「トレース信号破棄」ボタン73もしくは「トレース信号出力」ボタン74が操作されるまでステップS11,S13を繰り返す。プロセッサ21は10スキャン分のスキャン結果をデータファイルとして記憶できる。これにより、プロセッサ21は10スキャン分のスキャン結果を1まとまりのデータとして、タッチパネル23での表示およびUSBメモリへの記憶などの処理を容易に実行することができる。また、プロセッサ21はデータファイルをUSBメモリに記憶させることができるため、データファイルに含まれるスキャン結果を別の工作機械1にて見ることもできる。これにより、トラブルが発生している工作機械1の設置場所に出向くことなく、設計者はデータファイルに含まれるスキャン結果を見ることができる。
【0025】
<表示処理>
オペレータは、データファイルを例えば電子メールなどにより設計者へ送信する。設計者は、トラブルが発生した工作機械1とは別の工作機械1にて、データファイルに含まれるスキャン結果を表示させて閲覧する。詳しくは、設計者は工作機械1の電源をオンし、タッチパネル23にメイン画面を表示させる。次に、設計者はメイン画面の「モニターモード」ボタンを操作し、タッチパネル23にモニターモード表示画面60を表示させる。次に、設計者はUSBインターフェース25が有するUSBコネクタに、データファイルが記憶されているUSBメモリを装着する。次に、設計者はモニターモード表示画面60の「トレース信号入力」ボタン63を操作する。「トレース信号入力」ボタン63が操作されると、プロセッサ21は装着されているUSBメモリに記憶されているデータファイルの一覧および「実行」ボタンを表示させる。設計者は、所望のデータファイルを選択し、「実行」ボタンを選択する。「実行」ボタンが選択されると、プロセッサ21は選択されたデータファイルに基づいて、確認モード表示画面80を表示する表示処理を実行する。
【0026】
ここで、確認モード表示画面80(
図5)について説明を追加する。「戻る」ボタン83が操作されると、プロセッサ21は、データファイルに基づいて、ラダー図表示領域81に表示するスキャン結果を現在表示しているスキャン結果の1スキャン前のスキャン結果に切替える。「次へ」ボタン84が操作されると、プロセッサ21は、データファイルに基づいて、ラダー図表示領域81に表示するスキャン結果を現在表示しているスキャン結果の1スキャン後のスキャン結果に切替える。「信号確認終了」ボタン85が操作されると、プロセッサ21は表示画面を確認モード表示画面80からモニターモード表示画面60(
図5参照)に切替える。尚、「トレース信号入力」ボタン86を操作して、表示させたいデータファイルを選択し直すことにより、設計者は表示させるデータファイルを変更することができる。
【0027】
<トラブル原因調査の詳細>
次に、確認モードを用いたトラブル原因調査の方法について
図6を用いて説明する。ここでは、アドレスがEE0.1のコイル(以後、EE0.1コイルと称する。)93が意図しない動作のきっかけとなるコイルであるものとする。この場合、オペレータは、トレーストリガ信号にEE0.1コイルを設定し、工作機械1にデータ取得処理を実行させる。設計者は、データ取得処理により取得された10スキャン分のスキャン結果を含むデータファイルを工作機械1に表示させて閲覧する。
【0028】
図6の表示90は、トレーストリガ信号がオンとなった注目スキャンの記号領域81aの表示である。表示91は注目スキャンの1スキャン前の記号領域81aの表示であり、表示92は注目スキャンの2スキャン前の記号領域81aの表示である。
図6において、オンしている接点およびコイルは太線で図示されており、オフしている接点およびコイルは細線で図示されている。
【0029】
表示90は注目スキャンの表示であるため、EE0.1コイル93はオンしている。EE0.1コイル93に接続している接続線を左へ辿ることにより、EE0.1コイル93がオンしたのはアドレスがTIM160の接点(以後、TIM160接点と称する。)94がオンしたためであると設計者は判断する。尚、EE0.1コイル93がある行の上の行にアドレスがTIM160のコイル(以後、TIM160コイルと称する。)95がある。TIM160コイル95に接続している接続線の左にある複数の接点はオンしており、TIM160コイル95をオンさせる条件となっているため、TIM160コイル95はオンしているのは妥当であると設計者は判断する。ただし、母線とTIM160コイル95との間に並列に接続されている複数の接点がオンしているため、設計者はTIM160コイルをオンさせた接点が、どれであるかを特定することができない。そこで、設計者は「戻る」ボタン83を操作して、表示91を表示させる。
【0030】
表示91では、TIM160コイル95はオフしているが、TIM160コイル95に接続している接続線の左にある複数の接点のオン・オフ状態は、表示90と同じく、TIM160コイル95をオンさせる条件となっている。TIM160コイル95をオンさせる条件となっているにもかかわらず、TIM160コイル95はオフしているため、この行の接点のオン・オフ状態は、TIM160コイルがある行を演算処理した段階ではTIM160コイル95をオフさせる条件であったものの、スキャン完了するまでにTIM160コイル95をオンさせる条件に変化したものと設計者は判断する。TIM160コイル95のある行より後に、TIM160コイル95のある行の接点のオン・オフ状態を変化させる行があるはずであると設計者は判断できるが、表示91だけではオン・オフ状態が変化した接点がどれであるかはわからない。そこで、設計者は再度「戻る」ボタン83を押して表示92を表示させる。
【0031】
表示92では、TIM160コイル95のある行の接点である、アドレスが31A.4の接点(以後、31A.4接点と称する。)96がオフに変化している。尚、31A.4接点96がある行の2つ下の行にアドレスが31A.4のコイル(以後、31A.4コイルと称する。)97がある。31A.4コイル97に接続している接続線を左へ辿ることにより、31A.4コイル97のオン・オフを決定するのはアドレスが009.0の接点(以後、009.0接点と称する。)98であり、009.0接点98のオンした場合に31A.4コイル97がオンすると設計者は認識する。ここで009.0接点98はセンサ・スイッチ群30に含まれるセンサであるものとする。表示91に示す、注目スキャンの1つ前のスキャンを実行するために入力信号を取得した際に、009.0接点98のセンサがオンしていたために、TIM160コイル95のある行が演算処理された後に、31A.4コイル97のある行が演算処理されて31A.4接点がオンに変化し、注目スキャンにおいて、TIM160コイル95がオンとなったと設計者は判断することができる。設計者は、注目スキャンの1つ前のスキャンのラダー回路141のオン・オフ状態において、009.0接点98のセンサがオンすることは意図していないため、009.0接点98のセンサがトラブル発生の原因であると特定することができる。上記したように、スキャン結果を、適宜、1スキャン前および1スキャン後のスキャン結果に切替えて、ラダー図にて閲覧することができるため、設計者はコイルがオンした原因を効率的に調査することができる。
【0032】
ここで、確認モード表示画面80について説明を補足する。プロセッサ21は、確認モード表示画面80の記号領域81aに表示されるラダー図を、「戻る」ボタン83および「次へ」ボタン84が操作されたことに応じて、夫々、1スキャン前および1スキャン後のスキャン結果に基づく表示に切替える。この際、切り替わる前のスキャン結果でオンしていた接点およびコイルが、切り替わった後のスキャン結果でオフに変化した場合、プロセッサ21はオフとなった接点およびコイルを青色で表示させる。また、切り替わる前のスキャン結果でオフしていた接点およびコイルが、切り替わった後のスキャン結果でオンに変化した場合、プロセッサ21はオンとなった接点およびコイルを赤色で表示させる。一方、切り替わる前のスキャン結果でオフしていた接点およびコイルが、切り替わった後のスキャン結果でもオフのままオン・オフ状態が変化していない場合には、プロセッサ21はオフである接点およびコイルを黒色で表示させる。また、切り替わる前のスキャン結果でオンしていた接点およびコイルが、切り替わった後のスキャン結果でもオンのままオン・オフ状態が変化していない場合には、オフである接点およびコイルを黄色で表示させる。尚、
図6では、黒色を細線、黄色を太線、青色で表示される接点・コイルを破線の矩形で囲んで図示している。ここで、破線の矩形は、青色に表示される接点・コイルを明示するためのものであり、表示画面で表示されるものではない。
【0033】
例えば、
図6のTIM160コイル95に注目すると、表示90ではオンしており、表示91ではオフに変化しているので、表示91では青色で表示される。また、表示91ではオフであるTIM160コイル95は、表示92でもオフのままオン・オフ状態が変化していないので、表示92では黒色で表示される。このような表示により、設計者は、スキャンの切替わりでオン・オフ状態が変化した接点およびコイルを効率的に発見することができる。例えば、表示90から表示91へ切替えた場合、TIM160コイル95は青色で表示されるため、TIM160コイル95はオフに変化したことを設計者は容易に発見することができる。尚、例えば、表示91を表示させたオン・オフ状態で「次へ」ボタン84が操作されて、表示画面を切替える場合、TIM160コイル95はオフからオンに変化しているので、プロセッサ21はTIM160コイル95を赤色で表示させる。
【0034】
ここで、工作機械1は工作機械の一例であり、コントローラ10およびパネルコンピュータ20は制御装置の一例である。プロセッサ11およびプロセッサ21は制御部の一例であり、リングバッファ142は第1記憶手段の一例であり、フラッシュメモリ22は第2記憶手段の一例である。トレーストリガ信号は対象素子の一例であり、設定画面にて入力されたアドレスがトレーストリガ信号であることを示す信号をプロセッサ21がプロセッサ11へ送信し、入力されたアドレスをトレーストリガ信号としてフラッシュメモリ14にプロセッサ11が記憶する処理は設定処理の一例である。繰り返し実行されるステップS3は、スキャン処理の一例である。ステップS3において、プロセッサ11がスキャン結果をリングバッファ142に記憶する処理は、第1記憶処理の一例である。ステップS5は判断処理の一例である。ステップS13において、プロセッサ11が10スキャン分のスキャン結果をリングバッファ142から読み出し、パネルコンピュータ20へ送信し、プロセッサ21が送信された10スキャン分のスキャン結果を1つにまとめたデータファイルを作成し、フラッシュメモリ22に記憶する処理は、第2記憶処理および第3記憶処理の一例である。
【0035】
また、タッチパネル23はディスプレイおよび操作手段の一例である。プロセッサ21が確認モード表示画面80のラダー図表示領域61にスキャン結果に基づくラダー図をタッチパネル23に表示させる処理は表示処理の一例である。プロセッサ21がタッチパネル23の表示を、確認モード表示画面80の記号領域81aに表示されるラダー図を、「戻る」ボタン83および「次へ」ボタン84が操作されたことに応じて、夫々、1スキャン前および1スキャン後のスキャン結果に基づく表示に切替えさせる処理は、表示切替処理の一例である。
【0036】
以上、上記した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
設定画面にて入力されたアドレスがトレーストリガ信号であることを示す信号をプロセッサ21がプロセッサ11へ送信し、入力されたアドレスをトレーストリガ信号としてフラッシュメモリ14にプロセッサ11が記憶する。プロセッサ11はラダー回路141をスキャンし、スキャン結果をリングバッファ142に記憶する(S3)。プロセッサ11もしくはプロセッサ21はトレーストリガ信号がオンしたと判断し(S5:YES)、「トレース信号出力」ボタンが操作されたと判断すると(S13:YES)、リングバッファ142から読み出した10スキャン分のスキャン結果と、トレーストリガ信号に設定されたコイルがオンした日時とを1つにまとめたデータファイルを作成し、フラッシュメモリ22に記憶する(S13)。これにより、プロセッサ11がラダー回路141を繰り返しスキャンして、リングバッファ142に記憶させた複数のスキャン結果のうち、トレーストリガ信号がオフからオンに状態遷移した注目スキャンと、注目スキャンより前のスキャンのスキャン結果と、注目スキャンより後のスキャンのスキャン結果をプロセッサ21はフラッシュメモリ22に記憶することができる。例えば、プロセッサ21に記憶されたスキャン結果を閲覧することにより、設計者は、トレーストリガ信号に設定したコイルが意図しないタイミングでオンになった原因を、注目スキャンより先行するスキャン結果および注目スキャンより後行するスキャン結果の接点およびコイルのオン・オフ状態をトレースして調査することができる。
【0037】
また、ステップS13において、プロセッサ21は送信された10スキャン分のスキャン結果を1つにまとめたデータファイルを作成し、フラッシュメモリ22に記憶する。これにより、プロセッサ21は10スキャン分のスキャン結果を1まとまりのデータとして、タッチパネル23での表示およびUSBメモリへの記憶などの処理を容易に実行することができる。
【0038】
また、プロセッサ21は確認モード表示画面80のラダー図表示領域61にスキャン結果に基づくラダー図をタッチパネル23に表示させる。また、プロセッサ21はタッチパネル23の表示を、確認モード表示画面80の記号領域81aに表示されるラダー図を、「戻る」ボタン83および「次へ」ボタン84が操作されたことに応じて、夫々、1スキャン前および1スキャン後のスキャン結果に基づく表示に切替えさせる。これにより、例えば設計者は、スキャン結果をラダー図にて閲覧することができ、スキャン結果を前もしくは後のスキャンに切替えて閲覧することができ、設計者はコイルがオンした原因を効率的に調査することができる。
【0039】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上記では、工作機械として、旋盤加工を行う工作機械1を例示したが、これに限定されない。例えば、穴あけ、研磨などを行う工作機械に適用することもでき、例えば、複数の加工を行う工作機械、あるいは工作加工に加え、検査を行う工作機械にも適用することができる。
【0040】
上記では、トレーストリガ信号にラダー回路141のコイルを設定すると説明したが、これに限定されない。ラダー回路141の接点をトレーストリガ信号に設定しても良い。また、上記では、トラブルの原因はコイルがオンすることによるとして説明したが、コイルが意図せずオフしてトラブルが発生する場合もある。そこで、設定画面にて、トレーストリガ信号の値を受付ける際に、トレーストリガ信号がオフからオンしたことをトリガとするか、オンからオフしたことをトリガとするかを選択させる構成としても良い。この場合、ステップS5では、オフからオンしたことをトリガとすると設定された場合には、プロセッサ11はトレーストリガ信号がオンしたか否かを判断し、オンからオフしたことをトリガとすると設定された場合には、プロセッサ11はトレーストリガ信号がオフしたか否かを判断する構成とすると良い。
【0041】
また、上記では、プロセッサ21は1回のスキャン毎にラダー図表示領域61に表示されるラダー図を更新すると説明したが、更新するタイミングはこれに限定されない。
【0042】
また、上記では、10スキャン分のスキャン結果をコントローラ10のリングバッファ142に記憶すると説明したが、これに限定されない。例えば、パネルコンピュータ20が1スキャン毎に送信される1スキャン分のスキャン結果を都度、フラッシュメモリ22に記憶し、10スキャン分のスキャン結果をフラッシュメモリ22に蓄積する構成としても良い。また、トレーストリガ信号がオンとなったか否か(S5)をプロセッサ21が判断する構成としても良い。この場合、「トレース信号入力」ボタン63が操作されると、プロセッサ21は、フラッシュメモリ22に蓄積した10スキャン分のスキャン結果をUSBメモリに記憶する構成とすると良い。この構成の場合、フラッシュメモリ22は第1記憶手段の一例であり、USBメモリは第2記憶手段の一例である。
【0043】
また、上記では、工作機械1に対して行う操作を、操作に応じて、オペレータもしくは設計者が行うと説明したが、操作する者を限定するものではない。また、上記では、設計者がスキャン結果を閲覧する際、トラブルが発生した工作機械1とは別の工作機械1を使用すると説明したが、これに限定されない。上記したように、信号確認モードにおいて、プロセッサ21はフラッシュメモリ22に記憶したスキャン結果に基づく表示を行う。つまり、プロセッサ11がラダー回路141をスキャンしているか否かにかかわらず、プロセッサ21は信号確認モードでの動作を行うことができる。従って、コントローラ10、スイッチ群30、およびモータ群40の構成を有さない装置でもスキャン結果を閲覧するができる。例えば、PC(Personal Computer)などに、スキャン結果をディプレイに表示するプログラムをインストールすることにより、スキャン結果を閲覧することができる。また、トラブルが発生した工作機械1にて、スキャン結果を閲覧することもできる。この場合、フラッシュメモリ22に記憶されているスキャン結果を閲覧できる構成とすると良い。
【0044】
また、上記では、モニターモード表示画面60の「トレース信号入力」ボタン63が操作されると、プロセッサ21は装着されているUSBメモリに記憶されているデータファイルの一覧を表示すると説明したが、これに限定されない。「トレース信号入力」ボタン63が操作されると、USBメモリの他の、例えばフラッシュメモリ22などの他の記憶手段を選択させる表示画面を表示する構成とし、表示画面において選択された記憶手段に記憶させているスキャン結果の一覧を表示する構成としても良い。
【0045】
また、プロセッサ11は、10スキャン分のスキャン結果を記憶させると説明したがこれに限定されない。注目スキャンに先行する所定回数は5回に限定されず、注目スキャンに後行する所定回数は4回に限定されない。また、タッチパネル23に表示されるラダー図は、黄色および黒色などで表示されると説明したが、色を限定するものではない。また、ディスプレイはタッチパネルに限定されず、例えば液晶ディスプレイなどでも良い。また、操作手段は、タッチパネルに限定されず、例えば、押しボタンなどのボタンなどでも良い。