(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、湖上又は海上において、遊泳禁止区域を表示するためにロープに複数のブイを連結して設置することがある。
また、海上では不審船や密漁船の航行を妨げるためにロープ又はネットに複数のブイを連結して設置することがある。
このようなブイの設置にも係わらず、侵入しようする船舶や手漕ぎボート等に対しては、水面ないし水面近傍の水中にロープやネットを張り巡らせることにより、浮遊するブイと連結するロープやネットを船舶のスクリューに絡み付かせて、航行を妨害している。また、手漕ぎボート等の侵入難易度を高めている。
【0003】
特許文献1に開示の船舶航行妨害装置は、ブイと、索と、ブイと索を連結する連結紐からなり、船舶の航行を妨害したいときに装置を水面付近に配置させている。そして、所定時間が経過して妨害を解除したいときには、連結紐が水に溶けるなどしてブイから策が外れて索を所定深さに沈下させて船舶が航行できるようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら従来の船舶の侵入を防止する装置では、以下のような問題があった。
<1>浮遊するブイに連結したロープやネットが波浪などの影響により、設定深さよりも沈下して不審船のスクリューに絡み付かない場合には、容易に侵入されてしまう。
<2>波や海流で装置が流されてしまうと、付近を航行する一般の船舶のスクリューにロープなどが絡み付いてしまうおそれがある。
<3>一般の船舶が誤って近づかないように、ブイを目立たせるなど水面上で装置の存在を認識できるようにする必要がある。
【0006】
また、特許文献1に開示の妨害装置は、妨害できる時間が限定的で、妨害を解除した後は容易に侵入できてしまう。また妨害態勢の間は、上記従来の問題が生じている。
【0007】
上記従来技術の問題点に鑑み、本発明は、遠方から容易に確認できて、船舶の侵入を防止できる水上侵入防止装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための第2の手段として、本発明は、ブイと、前記ブイを所定間隔で保持する間隔保持材を直列配置したフロート本体と、前記間隔保持材に取り付けて、前記フロート本体の長手方向と直交する方向であって前記間隔保持材を中心として互いに反対方向に延出した支柱架台と、前記支柱架台の一端側及び他端側から立設した支柱と、前記一端側の前記支柱に取り付けて、前記フロート本体の長手方向に沿って張設した第1ネットと、前記他端側の前記支柱に取り付けて、前記フロート本体の長手方向に沿って張設した第2ネットと、を有することを特徴とする水上侵入防止装置を提供することにある。
上記第2の手段によれば、係留する複数のブイに沿って水面上に第1及び第2ネットを配置することができ、遠方からでも容易にネットの存在を確認することができ、一般の船舶が誤って近づくことを防止でき、かつ密漁船や不審船及び手漕ぎボート等の侵入を確実に防止できる。
また、張設した第1及び第2ネットの中心にブイを配置しているため、水上でバランス良く装置全体を配置することができ、波浪等により傾いても浮力によって容易に復元できる。
【0012】
上記課題を解決するための第5の手段として、本発明は、ブイと、前記ブイを所定間隔で保持する間隔保持材を直列配置したフロート本体と、前記ブイに取り付けて、前記直列配置したフロート本体の長手方向と直交する方向であって前記フロート本体を中心として互いに反対方向に一対の支柱支持部が延出した支柱架台と、前記支柱架台に接続した錘部と、前記支柱支持部から立設した支柱と、一端側の前記支柱に取り付けて、前記フロート本体の長手方向に沿って張設した第1ネット又は第1ロープと、他端側の前記支柱に取り付けて、前記フロート本体の長手方向に沿って張設した第2ネット又は第2ロープと、を有することを特徴とする水上侵入防止装置を提供することにある。
上記第5の手段によれば、係留する複数のブイに沿って水面上に第1及び第2ネット又はロープを配置することができ、遠方からでも容易にネットの存在を確認することができ、一般の船舶が誤って近づくことを防止でき、かつ密漁船や不審船及び手漕ぎボート等の侵入を確実に防止できる。
また、張設した第1及び第2ネットの中心にブイと錘部を配置しているため、水上でバランス良く装置全体を配置することができ、波浪等により傾いても容易に復元できる。
【発明の効果】
【0014】
上記の本発明によれば、係留する複数のブイに沿って水面上に第1及び第2ネットを配置することにより、遠方からでも容易にネットの存在を確認することができ、一般の船舶が誤って近づくことを防止でき、かつ密漁船や不審船の侵入を確実に防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の水上侵入防止装置の実施形態を添付の図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0017】
[水上侵入防止装置10]
図1は、本発明の水上侵入防止装置の説明図であり、(1)は平面図、(2)は(1)のA−A断面図である。
図2は支柱架台と支柱の説明図である。図示のように本発明の水上侵入防止装置10は、フロート本体20と、支柱架台30と、支柱40と、第1及び第2ネット50,60を主な基本構成としている。
【0018】
フロート本体20は、ブイ22と、間隔保持材24と、ロープ26からなる。
ブイ22は、一例として直径600mmの球体であり、浮力により水上に配置できる。ブイ22は中心を通る貫通孔を備えている。貫通孔にはロープ26を挿通している。ブイ22は材質に所定強度を備えたプラスチック樹脂材などを用いている。
【0019】
間隔保持材24は、ブイ22の間を所定の間隔(一例として数十〜数百ミリ)に保持する部材である。間隔保持材24は円柱形状であり、ブイ22と同様に浮力により水上に配置できる。間隔保持材24は軸心を通る貫通孔を備えている。貫通孔にはロープ26を挿通している。間隔保持材24は材質に所定強度を備えたプラスチック樹脂材を用いている。
【0020】
ロープ26は、ブイ22と間隔保持材24の貫通孔に挿入して、ブイ22と間隔保持材24を交互に直列に連結して固定することができる。ロープ26は材質に所定強度を備えた合成繊維を用いている。
【0021】
支柱架台30は、間隔保持材24を把持する把持部32と、把持部32からフロート本体20の長手方向と直交する方向へ延出する架台部34からなる。支柱架台30は、浮力を備えていれば良く、水よりも比重が小さい材質、例えばプラスチック樹脂材、木材などを用いることができる。また水よりも比重が大きい場合であっても、架台全体又は少なくとも一部を中空構造に形成して、水面に配置したときに浮力が働き水面に浮いた状態を維持する構造であれば良い。
【0022】
把持部32は、間隔保持材24の外周を覆う円筒状の部材であり、間隔保持材24の直径を通る平面に沿って二分割した半割構造としている。そして把持部32は環状両端部から径方向外側に伸びる締着部33を設けている。締着部33は、厚み方向に貫通する締結孔を備えている。締着部33を重ね合わせて締結孔に締結ボルトを挿入して締結して支柱架台30を間隔保持材24に固定することができる。
【0023】
架台部34は、一端が把持部32に接続し、他端がフロート本体20の長手方向と直交する方向へ延出した部材である。そして架台部34の他端側には垂直方向に立設する支柱40を挿入して支持する貫通孔35を設けている。
このような支柱架台30は、間隔保持材24に複数個毎で取り付けている(
図1では3個毎に取り付け)。
【0024】
支柱40は、支柱架台30から垂直方向に立設する棒状の部材である、支柱40は、下端側にツバ部41とピン孔42を設けている。ツバ部41は、支柱架台30の貫通孔に支柱40を挿入して支柱架台30の上面と接触して所定位置に固定する部材である。ピン孔42は、支柱40の長手方向と直交する方向に貫通しており、支柱架台30の上面から貫通孔へ支柱40を挿入して下面から突出した支柱のピン孔42に差込みピン44を挿入することにより、支柱架台30の貫通孔35に装着した支柱40の引き抜きを防止できる。なお差込ピン44は支柱架台30から支柱40を容易に着脱できるものであれば良く、この他くさび、締結ボルトなどを用いることができる。
【0025】
支柱40は上端側に後述する第1及び第2ネット50,60の係止部43を設けている。係止部43は、ネットを着脱容易に係止できるものであれば良く、フックなどを用いることができる。
第1及び第2ネット50,60は、一端側及び他端側の支柱40に、フロート本体20の長手方向に沿って取り付ける網体である。なお第1及び第2ネット50,60は、船舶の侵入を防止できるものであれば、ロープなどを用いることもできる。
【0026】
[作用]
上記構成による本発明の水上侵入防止装置の作用について、以下説明する。
複数のブイ22及び間隔保持材24の貫通孔にロープ26を挿通して、ブイ22及び間隔保持材24を交互に連結したフロート本体20を用意する。そして間隔保持材24の複数個毎に支柱架台30を取り付ける。具体的な支柱架台30の取り付けは半割構造の支柱架台の把持部32の間に間隔保持材24を挟んで締着部33の締結孔に締結ボルトを挿入して固定する。ついで支柱架台30の一端側及び他端側に支柱40を取り付ける。支柱架台30の下面側から突出しているピン孔42に差込ピン44を挿入して固定する。さらに一端側及び他端側の支柱の係止部43にフロート本体20の長手方向に沿って第1及び第2ネット50,60を取り付ける。
【0027】
このような構成の水上侵入防止装置10は、立入禁止区域などの境界付近に係留すると、フロート本体20を中心に挟むように第1及び第2ネットを長手方向に沿って水上に配置することができ、遠方からでも容易にネットの存在を確認することができ、一般の船舶が誤って近づくことを防止でき、かつ密漁船や不審船や手漕ぎボート等の侵入を確実に防止できる。
また水上でバランス良く装置全体を配置することができ、波浪等により傾いても浮力によって容易に復元できる。
また、気象状況により撤去する場合には、ピン結合を解除することにより、容易に装置全体を解体することができる。
【0028】
なお、ブイと間隔保持材を直列配置したフロート本体上に立設された複数の支柱と、支柱間に張設されたネットを有する水上侵入防止装置は、次のような装置構成としても良い。
ブイと間隔保持材を直列配置したフロート本体上に複数の支柱を立設させた構成として、ブイ又は間隔保持材を中空構造に形成し、その重心よりも下方に錘を取り付けて、釣り用浮きのように重心よりも上側が常に水面上に露出するようにする。このようなフロート本体上に立設させた複数の支柱と、支柱間に張設されたネットは、波浪等により装置全体が傾いてもフロート本体の浮力によって水面上に容易に復元して、フロート本体上でバランス良く配置できる。
【0029】
[変形例]
図3は変形例の水上侵入防止装置の説明図であり、(1)は平面図、(2)は(1)のB−B断面図である。
図4は変形例の取付金具と支柱架台の説明図である。図示のように変形例の水上侵入防止装置10Aは、支柱架台30Aの構成が
図1に示す構成と異なる。その他の構成は、
図1に示す構成と同一であり、詳細な説明を省略する。
【0030】
変形例の支柱架台30Aは、取付金具70を介して間隔保持材24に取り付けている。取付金具70は、間隔保持材24を把持する把持部72と、把持部72からフロート本体20の長手方向と直交する方向へ延出する支持部74からなる。取付金具70は、材質に支柱架台30Aよりも強度を備えた鋼材などを用いることができる。
把持部72は、間隔保持材24の外周を覆う円筒状の部材であり、間隔保持材24の直径を通る平面に沿って二分割した半割構造としている。そして把持部72は環状両端部から径方向外側に伸びる締着部73を設けている。締着部73は、厚み方向に貫通する締結孔を備えている。締着部73を重ね合わせて締結孔に締結ボルトを挿入して締結して取付金具70を間隔保持材24に固定することができる。
【0031】
支持部74は、一端が把持部72に接続し、他端がフロート本体20の長手方向と直交する方向へ延出した部材である。そして支持部74の他端側には支柱架台30Aを挿入して固定可能な支持穴75を設けている。支持部74は垂直方向に貫通する締結孔76を設けている。
このような取付金具70は、ブイ22を間に挟んだ一対の間隔保持材24に複数個毎で取り付けている。
【0032】
支柱架台30Aは、端部を取付金具70の支持穴75に挿入可能とし、平面視でほぼコ字型に形成した部材である。支柱架台30Aは、浮力を備えていれば良く、水よりも比重が小さい材質、例えばプラスチック樹脂材、木材などを用いることができる。また水よりも比重が大きい場合であっても、架台全体又は少なくとも一部を中空構造に形成して、水面に配置したときに浮力が働き水面に浮いた状態を維持する構造であれば良い。ほぼコ字型の支柱架台30Aの角部には、垂直方向に立設する支柱40を挿入して支持する貫通孔35を設けている。また支柱架台30Aの端部は、取付金具70の支持穴75に挿入して締結孔76と重なる位置に貫通孔31を設けている。この締結孔76と貫通孔31に挿入可能な締結ボルト80は首下端部側にピン孔82を設けている。そして、締結ボルト80を締結孔76と貫通孔31に挿入し、取付金具70の下面側から突出したピン孔82に挿入可能な差込ピン84により締結ボルト80の引き抜きを防止できる。
【0033】
このような構成の変形例の水上侵入防止装置10Aは、支柱架台30Aを間隔保持材24に固定する箇所の強度を高めることができ、装置全体の経年劣化を低減できる。また、立入禁止区域などの境界付近に係留すると、フロート本体20を中心に挟むように第1及び第2ネットを長手方向に沿って水上に配置することができ、遠方からでも容易にネットの存在を確認することができ、一般の船舶が誤って近づくことを防止でき、かつ密漁船や不審船や手漕ぎボート等の侵入を確実に防止できる。
【0034】
[変形例2]
図5は変形例2の水上侵入防止装置の説明図であり、(1)は平面図、(2)は(1)のC−C断面の拡大図である。
図6は変形例2の水上侵入防止装置の分解図である。図示のように変形例2の水上侵入防止装置10Bは、支柱架台30Bの構成が
図1に示す構成と異なる。その他の構成は、
図1に示す構成と同一であり、詳細な説明を省略する。
変形例2の支柱架台30Bは、フロート本体20のブイ22に取り付けている。また支柱架台30Bは、フロート本体20のブイ22に所定間隔を開けて、一例としてブイ3個又は4個おきに取り付けている。
【0035】
支柱架台30Bの具体的な構成は、球体のブイ22を覆う骨組み状の上部半割体301及び下部半割体302を有している。上部及び下部半割体301,302は、いずれも半球の球面を覆う骨組み状に形成されており、直列配置したフロート本体20の長手方向と直交する方向であって、フロート本体20を中心として互いに反対方向へ延出する接続部303a,303bを設けている。上部及び下部半割体301,302は、ブイ22を間に挟んで締結ボルト304により互いに接続すると、ブイ22の外表面を覆うように固定することができる。
下部半割体302は、接続部303bの下方に支柱支持部306を設けている。支柱支持部306は、接続部303bと同様に、直列配置したフロート本体20の長手方向と直交する方向であって、フロート本体20を中心として互いに反対方向延出するように取り付けたプレートであり、上面に支柱40の支柱挿入管307を取り付けている。支柱挿入管307は側面を貫通するピン308のピン穴が設けてあり、支柱40を挿入した後、ピン308を用いて支柱40を固定することができる。
【0036】
支柱40は、長手方向に所定間隔で複数の係止部43を設けている。係止部43の形状は、1本又は複数のロープあるいはネットを係止できるものであればよく、本実施形態では一例としてロープを挿入可能な環状に形成している。
錘部310は、下部半割体302の下方に設けた接続片312に締結ボルト313を用いて固定した錘である。錘部310は、ブイ22の重心を通る垂直線上であって、ブイ22よりも下方となるように取り付けている。このような錘部310により、波浪等により装置全体が傾いてもフロート本体20の浮力と錘部310のバランスによって水面上に容易に復元して、フロート本体20上でバランス良く装置を配置できる。
【0037】
上記のような変形例2の水上侵入防止装置によれば、係留する複数のブイに沿って水面上に第1及び第2ネット又はロープを配置することができ、遠方からでも容易にネットの存在を確認することができ、一般の船舶が誤って近づくことを防止でき、かつ密漁船や不審船及び手漕ぎボート等の侵入を確実に防止できる。
また、張設した第1及び第2ネットの中心にブイと錘部を配置しているため、水上でバランス良く装置全体を配置することができ、波浪等により傾いても容易に復元できる。
【0038】
図7は接続型の水上侵入防止装置の説明図であり、(1)は側面図、(2)は平面図である。
図8は接続型の水上侵入防止装置を用いた連結の説明図である。
図8に示すように、複数のフロート本体のユニットを連結金具で接続した主フロートがある。連結金具は関係者の侵入箇所に配置してありロープを外すことができる。この主フロートの連結金具の箇所には並列する複数のフロート本体のユニットからなる補助フロートを連結金具を用いて接続している。このとき主フロート及び補助フロートの間には接続型の水上侵入防止装置10Cを取り付けている。
【0039】
図7に示すように、接続型の水上侵入防止装置10Cは接続プレート314を取り付けている。接続プレート314は、一対の支柱支持部306が延出する支柱架台30Bの一端側又は/及び他端側から支柱支持部306に沿って延出したプレートである。本実施形態の接続プレート314は、下部半割体302のいずれか一方の接続部303bから、直列配置したフロート本体20の長手方向と直交する方向であって、フロート本体20を中心として互いに反対方向へ延出するように取り付けている。この接続プレート314は、接続部303bよりも長く形成し、締結手段となる締結ボルト315を挿入可能なボルト穴を設けている。
【0040】
このような接続型の水上侵入防止装置10Cは、締結手段となる締結ボルト315を用いて接続プレート同士314を互いに容易に接続できる。これにより主フロートと補助フロートを交互に隙間なく接続することができる。また波浪等により主フロートと補助フロートどうしが絡み合うことを防止できる。さらにフロート本体のロープと、支柱に取り付けたロープのロープ張が一定となり水上侵入防止装置に作用する外力を均一化できる。