特許第6846181号(P6846181)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6846181
(24)【登録日】2021年3月3日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】塗布具付き容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 33/00 20060101AFI20210315BHJP
   A45D 34/04 20060101ALI20210315BHJP
   A45D 33/34 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   A45D33/00 650E
   A45D34/04 560
   A45D33/34 C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-232309(P2016-232309)
(22)【出願日】2016年11月30日
(65)【公開番号】特開2018-86223(P2018-86223A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2019年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】早川 茂
【審査官】 遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−205961(JP,A)
【文献】 実公昭50−016443(JP,Y1)
【文献】 実開昭60−021213(JP,U)
【文献】 特開2015−196519(JP,A)
【文献】 特開2001−269221(JP,A)
【文献】 特開2005−074046(JP,A)
【文献】 特開平10−201530(JP,A)
【文献】 特開2004−242730(JP,A)
【文献】 特開2006−333923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 33/00
A45D 33/34
A45D 34/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する容器本体と、
前記容器本体の口部を覆い、内容物の吐出孔が形成された被覆体と、
前記吐出孔を開閉する蓋体と、
前記被覆体と前記蓋体との間に配設され、前記被覆体を向く下面が塗布面とされた塗布具と、
を備え、
前記塗布具には、前記吐出孔に向けて開口する計量空間が形成されており、
前記塗布具が、弾性変形可能に形成されていると共に、前記蓋体により弾性変形されて前記吐出孔を開放可能に閉塞していることを特徴とする塗布具付き容器。
【請求項2】
内側に前記容器本体及び前記被覆体を収容する外殻体を備え、
前記容器本体が、圧縮変形可能に形成されており、
前記被覆体が、前記外殻体内に容器軸方向に移動可能に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の塗布具付き容器。
【請求項3】
前記被覆体には、前記計量空間内に突出する吐出筒部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の塗布具付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布具付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の塗布具付き容器として、内容物を収容する容器本体と、容器本体の口部を覆い、内容物の吐出孔が形成された被覆体と、吐出孔を開閉する蓋体と、被覆体と蓋体との間に配設された塗布具と、を備える構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような塗布具付き容器では、容器本体と被覆体とを相対的に容器軸回りに回転させて被覆体を下降させることにより、内容物が吐出孔を通して被覆体上に押し出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−103108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の塗布具付き容器では、内容物を取り出すために容器本体と被覆体とを容器軸回りに相対的に回転させる必要があるため、内容物の吐出操作が複雑である。
そこで、本発明は、定量の内容物の吐出操作が容易である塗布具付き容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために以下のような手段を採用した。すなわち、本発明の塗布具付き容器は、内容物を収容する容器本体と、前記容器本体の口部を覆い、内容物の吐出孔が形成された被覆体と、前記吐出孔を開閉する蓋体と、前記被覆体と前記蓋体との間に配設され、前記被覆体を向く下面が塗布面とされた塗布具と、を備え、前記塗布具には、前記吐出孔に向けて開口する計量空間が形成されており、前記塗布具が、弾性変形可能に形成されていると共に、前記蓋体により弾性変形されて前記吐出孔を開放可能に閉塞していることを特徴とする。
【0006】
この発明では、塗布具付き容器を傾けるまたは上下反転させると、吐出孔を通して内容物が形容空間の容積分だけ計量空間内に吐出されて計量される。このように、塗布具付き容器を傾けるなどするだけで定量の内容物を吐出させることができるので、吐出操作が容易になる。なお、内容物を計量空間内に吐出させた後に塗布具付き容器を正立姿勢に戻して計量空間内の内容物を被覆体上に移動させ、被覆体上の内容物を塗布具を用いて適量ずつ被塗布面に塗布してもよい。さらに、蓋体を装着した状態では塗布具が吐出孔を閉塞しているため、例えば搬送中などにおいて、吐出孔から内容物が漏洩することを防止できる。また、蓋体を取り外すことによって塗布具が復元変形するので、内容物を計量するための計量空間を容易に確保できる。
【0008】
また、本発明の塗布具付き容器では、内側に前記容器本体及び前記被覆体を収容する外殻体を備え、前記容器本体が、圧縮変形可能に形成されており、前記被覆体が、前記外殻体内に容器軸方向に移動可能に配設されてもよい。
この発明では、被覆体を外殻体内へ押し込むことにより、容器本体が圧縮変形して容器本体の内圧が上昇し、内容物が容器本体内の空気と共に吐出孔を通して計量空間内に吐出される。これにより、容器本体内の内容物が少量となった場合であっても、内容物を効率よく計量空間内に吐出させて内容物を計量できる。
【0009】
また、本発明の塗布具付き容器では、前記被覆体には、前記計量空間内に突出する吐出筒部が設けられてもよい。
この発明では、内容物を計量空間内に吐出させた後に塗布具付き容器を正立姿勢に戻す場合に、計量空間内の内容物を被覆体上に移動させた際に被覆体上の内容物が容器本体内に戻りにくくなるので、内容物をより精度良く計量できる。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る塗布具付き容器によれば、塗布具付き容器を傾けるなどするだけで計量空間内に内容物を吐出させることができるので、内容物の吐出操作が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態における塗布具付き容器を示す軸方向断面図である。
図2図1の塗布具付き容器の使用方法を説明する軸方向断面図である。
図3】同じく、図1の塗布具付き容器の使用方法を説明する軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明による塗布具付き容器の一実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能とするために縮尺を適宜変更している。
本実施形態にかかる塗布具付き容器1は、図1に示すように、内容物を収容する有底円筒状の容器本体11と、容器本体11の口部11Aを覆い、内容物の吐出孔12Aが形成された有底円筒状の被覆体12と、吐出孔12Aを開閉する有頂円筒状の蓋体13と、被覆体12と蓋体13との間に配設された塗布具14と、内側に容器本体11及び被覆体12を一体に収容する有底円筒状の外殻体15と、を備える。
【0013】
これら容器本体11、被覆体12、蓋体13及び外殻体15は、それぞれの中心軸線を共通軸上に位置させた状態で配設されている。以下、この共通軸を容器軸Oと称し、図1において容器軸Oに沿う蓋体13側を上側、その反対側を下側とし、容器軸Oから見た平面視で容器軸Oに直交する方向を径方向、容器軸O回りに周回する方向を周方向と称する。
【0014】
容器本体11は、例えば熱可塑性エラストマのような被覆体12、蓋体13及び外殻体15よりも軟らかい材料によって、圧縮変形可能に形成されている。なお、容器本体11は、圧縮変形可能なように、例えば蛇腹状の構造など、他の適宜異なる構造を有していてもよい。
容器本体11は、平面視で円形状の底壁部21と、底壁部21の外周縁から上方に向けて延設された円筒状の周壁部22と、を有する。周壁部22の内径及び外径は、上方に向かうにしたがって漸次拡径している。また、周壁部22の上端部を構成する口部11Aは、厚肉とされており、上方に開口する溝部11Bが全周にわたって形成されている。
なお、容器本体11内に収容されている内容物は、例えばパウダー状の化粧料の内容物となっている。ここで、内容物は、粉体に限らず、粒状体など他の形態の内容物であってもよく、また、化粧用の内容物に限定されない。
【0015】
被覆体12は、平面視で円形状の下壁部31と、下壁部31の外周縁から下方に向けて延設された円筒状の側壁部32と、を有し、外殻体15内で外殻体15に対して上下動可能に配設されている。
下壁部31の中央部には、容器本体11の内側に連通する円筒状の吐出筒部33が立設されており、吐出筒部33の上端開口部は、吐出孔12Aとなっている。吐出筒部33の内径及び外径は、上方に向かうにしたがって漸次縮径している。
また、下壁部31の外周縁部には、口部11Aの溝部11B内に嵌合される円環状の環状突部34が下方に向けて突設されている。
側壁部32は、下壁部31に対して上下双方に突出しており、この側壁部32の下端部は、口部11Aの下端縁に対して口部11Aの下方から係止している。
【0016】
蓋体13は、平面視で円形状の上壁部41と、上壁部41の外周縁から下方に向けて延設された円筒状の筒壁部42と、を有する。
上壁部41は、塗布具14の中央部を上方から下方に向けて押し込み、塗布具14を弾性変形させている。
筒壁部42の内周面には、雌ネジ部が形成されている。
【0017】
塗布具14は、円盤状をなす化粧用のパフなどであり、例えばウレタンやNBR(ニトリルゴム)のような被覆体12及び蓋体13よりも軟らかい材料で形成されている。塗布具14の下面の中央部には、図2に示すように復元変形した状態で上方に向けて陥没する半球状の計量凹部(計量空間)14Aが形成されている。塗布具14のうち計量凹部14Aを画成する内面は、図1に示すように、塗布具14が蓋体13の上壁部41によって下方に押し込まれているので、弾性変形して吐出筒部33の上端部に当接し、吐出孔12Aを閉塞している。なお、塗布具14のうち計量凹部14Aを画成する内面は、図2に示すように復元変形した状態で、吐出筒部33を径方向外側及び上方から一体に囲むように形成されている。
【0018】
外殻体15は、図1に示すように、平面視で円形状の下板部51と、下板部51の外周縁から上方に向けて延設された円筒状の周板部52と、を有する。
周板部52の上側部分の外周面には、周壁部22の雌ネジ部と螺合する雄ネジ部が形成されている。また、周板部52内には、側壁部32が上下摺動可能に嵌合されている。
【0019】
次に、以上のような構成の塗布具付き容器1の使用方法を説明する。
まず、蓋体13を外殻体15に対して回転させて外殻体15から取り外す。蓋体13を取り外すと、図2に示すように、蓋体13によって上下方向で圧縮されていた塗布具14が復元変形し、吐出孔12Aが開放される。これにより、吐出孔12Aを囲む計量凹部14Aが画成される。
【0020】
そして、この状態で塗布具付き容器1を上下反転させて倒立姿勢とする。上下反転させると、図3に示すように、容器本体11内に収容されている内容物は、吐出孔12Aから計量凹部14A内に吐出される。これにより、計量凹部14A内に内容物が計量される。その後、塗布具付き容器1を再び上下反転させて正立姿勢とする。正立姿勢とすると、計量凹部14A内の内容物の一部は、吐出孔12Aを通って容器本体11内に戻るが、計量凹部14A内の内容物のうちの他の部分は、容器本体11内に戻らず、被覆体12の下壁部31上に移る。
【0021】
ここで、吐出筒部33の内径及び外径が上方に向かうにしたがって漸次縮径するように窄んでいるため、塗布具付き容器1を倒立姿勢にしたときに内容物が吐出筒部33の内周面に沿って吐出孔12Aに向けて案内されると共に、塗布具付き容器1を再度上下反転させて正立姿勢としたときに、下壁部31上に移った内容物が容器本体11に戻りにくくなる。
そして、下壁部31上に計量された内容物を塗布具14を用いて適量ずつ被塗布面に塗布する。
【0022】
なお、容器本体11内に収容されている内容物が少なくなっている場合には、塗布具付き容器1を上下反転させた状態で、塗布具14を被覆体12に対して押し込む。被覆体12を押し込むと、被覆体12が外殻体15内で下方に摺動しながら、容器本体11が圧縮変形する。これにより、容器本体11の内圧が上昇し、容器本体11内の内容物が計量凹部14A内に吐出される。容器本体11の押し込みを解除すると、容器本体11は復元変形する。
以上のようにして、塗布具付き容器1を使用する。
【0023】
以上、本実施形態に係る塗布具付き容器1によれば、塗布具付き容器1を倒立姿勢とするだけで計量凹部14A内に内容物を吐出させることができるので、内容物の吐出操作が容易になる。
蓋体13を装着した状態では塗布具14が吐出孔12Aを閉塞しているため、塗布具付き容器1の搬送時などに、吐出孔12Aから内容物が漏洩することを防止できる。
容器本体11内の内容物が少量となったときであっても、被覆体12を外殻体15内に押し込んで容器本体11を圧縮変形させることにより、容器本体11内の内容物を空気と共に計量凹部14A内に吐出させる。これにより、効率よく内容物を計量できる。
さらに、吐出筒部33を設けることにより、計量凹部14A内から被覆体12の下壁部31上に移した内容物が容器本体11内に戻ることを抑制するので、内容物をより精度良く計量できる。
【0024】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、吐出孔は、被覆体に少なくとも1つ形成されていればよく、複数形成されてもよい。
計量凹部は、塗布具に少なくとも1つ形成されていればよく、複数形成されてもよい。また、1つの計量凹部に対して少なくとも1つの吐出孔が対応していればよく、1つの計量凹部に対して複数の吐出孔から吐出させてもよい。
塗布具のうち計量凹部を画成する内面の形状は、半球状に限らず、錘状や柱状など、他の形状であってもよい。
塗布具は、弾性変形可能に形成されていなくてもよい。
吐出筒部は、内径及び外径が上下方向の全長にわたって一定であってもよく、上下方向に対して傾いて延在してもよく、他の形状であってもよい。また、吐出筒部を設けなくてもよい。
容器本体は、圧縮変形可能に形成されていなくてもよい。また、容器本体は、圧縮変形させた後に復元変形してもよく、復元変形しなくてもよい。
蓋体は、塗布具を圧縮変形させていなくてもよい。また、蓋体は、外殻体に対して螺着以外の他の装着方法によって装着されてもよい。
外殻体は、設けられていなくてもよく、外殻体が設けられている場合であっても、容器本体が圧縮変形可能に形成されておらず、被覆体が上下動可能でなくてもよい。
塗布具付き容器は、平面視で円形状をなしているが、楕円形状や角形状など、他の形状であってもよい。
塗布具付き容器は、倒立姿勢とすることによって内容物を計量凹部内に吐出させているが、塗布具付き容器を傾けることによって内容物を計量凹部内に吐出させてもよい。
塗布具付き容器は、計量凹部内に吐出させた内容物を被覆体上に移し、被覆体上の内容物を適量ずつ塗布しているが、計量凹部内に吐出させた内容物を被覆体上に移すことなく塗布具から内容物を被塗布面に直接塗布してもよい。ここで、内容物が液体である場合には、内容物を塗布具に染み込ませるなどして塗布具から被塗布面に塗布してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
この発明によれば、定量の内容物の吐出操作が容易である塗布具付き容器に関して、産業上の利用可能性が認められる。
【符号の説明】
【0026】
1 塗布具付き容器、11 容器本体、11A 口部、12 被覆体、12A 吐出孔、13 蓋体、14 塗布具、15 外殻体、14A 計量凹部(計量空間)、33 吐出筒部
図1
図2
図3