特許第6846304号(P6846304)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日機装株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6846304-生体成分測定装置 図000002
  • 特許6846304-生体成分測定装置 図000003
  • 特許6846304-生体成分測定装置 図000004
  • 特許6846304-生体成分測定装置 図000005
  • 特許6846304-生体成分測定装置 図000006
  • 特許6846304-生体成分測定装置 図000007
  • 特許6846304-生体成分測定装置 図000008
  • 特許6846304-生体成分測定装置 図000009
  • 特許6846304-生体成分測定装置 図000010
  • 特許6846304-生体成分測定装置 図000011
  • 特許6846304-生体成分測定装置 図000012
  • 特許6846304-生体成分測定装置 図000013
  • 特許6846304-生体成分測定装置 図000014
  • 特許6846304-生体成分測定装置 図000015
  • 特許6846304-生体成分測定装置 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6846304
(24)【登録日】2021年3月3日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】生体成分測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20210315BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20210315BHJP
   G01N 33/66 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   A61M1/00
   G01N1/00 101G
   G01N33/66 A
   G01N33/66 D
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-132812(P2017-132812)
(22)【出願日】2017年7月6日
(65)【公開番号】特開2019-13442(P2019-13442A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2020年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】宮路 浩司
(72)【発明者】
【氏名】杉岡 明
(72)【発明者】
【氏名】垂水 正敏
(72)【発明者】
【氏名】村上 正樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 亮
【審査官】 小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−130306(JP,A)
【文献】 特開2012−150130(JP,A)
【文献】 特開2017−025866(JP,A)
【文献】 特開2017−099615(JP,A)
【文献】 実開昭55−125989(JP,U)
【文献】 国際公開第2016/171023(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00
G01N 1/00
G01N 33/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に患者の血液を採取可能な穿刺針が接続されるとともに、当該穿刺針にて採取した血液を流通可能な血液流路と、
前記血液流路に希釈液を供給可能な希釈液供給流路と、
前記血液流路が接続され、前記希釈液にて希釈された血液を導入可能とされるとともに、その導入した血液に含まれる所定成分の濃度を測定可能な生体成分測定手段と、
前記生体成分測定手段からの排液を排出可能な排液流路と、
前記血液流路、希釈液供給流路及び排液流路の血液、希釈液及び排液をそれぞれ送液するための送液ポンプと、
前記血液流路に接続され、当該血液流路に校正液を供給可能な校正液供給流路と、
を具備し、前記校正液供給流路にて供給された校正液を前記生体成分測定手段に導入することにより当該生体成分測定手段を校正可能とされた生体成分測定装置において、
前記校正液供給流路は、前記血液流路における当該生体成分測定手段より上流側であって前記送液ポンプより下流側の所定部位に接続されるとともに、前記血液流路及び希釈液供給流路を流れる液体の流量をそれぞれ検出し得る流量検出手段を備えたことを特徴とする生体成分測定装置。
【請求項2】
前記流量検出手段は、前記希釈液供給流路及び排液流路にそれぞれ配設されるとともに、当該希釈液供給流路及び排液流路を流れる液体の流量に基づいて前記血液流路を流れる液体の流量を検出し得ることを特徴とする請求項1記載の生体成分測定装置。
【請求項3】
前記流量検出手段は、流路に形成され、内部に液溜まり及び空気層を形成可能とされたチャンバ部と、前記チャンバ部に形成され、流路を流れる液体を滴下させ得る滴下手段と、前記滴下手段による時間あたりの滴下数を測定し得る測定手段とを有し、当該測定手段で測定された時間あたりの滴下数により液体の流量を検出可能とされたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の生体成分測定装置。
【請求項4】
前記流量検出手段における前記滴下手段を一定温度に保持し得る保温手段を具備したことを特徴とする請求項3記載の生体成分測定装置。
【請求項5】
前記流量検出手段により検出された液体の流量に基づいて、患者の血液の採取不良又は流路の閉塞を検知し得る検知手段を具備したことを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載の生体成分測定装置。
【請求項6】
前記送液ポンプは、複数の流路を取り付け可能とされ、単一の駆動源を駆動させることにより当該複数の流路における液体を同時に送液可能なマルチポンプから成ることを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載の生体成分測定装置。
【請求項7】
前記血液流路又は希釈液供給流路は、前記マルチポンプとは駆動源が別個の独立した送液ポンプに取り付けられて独立して送液可能とされたことを特徴とする請求項6記載の生体成分測定装置。
【請求項8】
前記排液流路は、前記マルチポンプとは駆動源が別個の独立した送液ポンプに取り付けられて独立して送液可能とされたことを特徴とする請求項6記載の生体成分測定装置。
【請求項9】
前記マルチポンプは、駆動により回転する回転部材と、回転部材に取り付けられて当該回転部材の回転動作により流路をしごいて送液可能なローラとを有するロータが流路毎に複数形成されるとともに、それぞれの流路の設定流量に応じて前記ローラの径若しくは数又は前記回転部材の径が異なることを特徴とする請求項6〜8の何れか1つに記載の生体成分測定装置。
【請求項10】
前記生体成分測定手段は、酵素による反応によって患者の血液に含まれるグルコースの濃度を測定可能なグルコースセンサから成ることを特徴とする請求項1〜9の何れか1つに記載の生体成分測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の血液を希釈して生体成分測定手段に導入させ、血液に含まれる所定成分の濃度を測定し得る生体成分測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体成分測定装置は、患者の体内から血液を採取しつつ所定の希釈液でその血液を希釈し、グルコースセンサ等の生体成分測定手段にて血糖値(グルコース濃度)をリアルタイムで測定可能なものである(例えば、特許文献1参照)。かかる生体成分測定装置は、採取した患者の血液を流通可能な血液流路と、希釈液を血液流路に供給可能な希釈液供給流路と、グルコースセンサ(生体成分測定手段)と、グルコースセンサからの排液を排出可能な排液流路とを具備するとともに、送液ポンプによって血液流路、希釈液供給流路及び排液流路の液体を送液可能とされている。
【0003】
また、血液流路には、校正液を供給するための校正液供給流路が接続されており、かかる校正液供給手段にて供給された校正液をグルコースセンサに導入することによりグルコースセンサの校正が行われていた。ところで、グルコースセンサは、酵素による反応によって患者の血液に含まれるグルコースの濃度を測定し得るよう構成されているため、酵素の働きに応じて測定される血糖値に誤差が生じてしまうことから、校正を所定時間毎に複数回行う必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−130306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては、グルコースセンサ(生体成分測定手段)の校正を行う際、それまで導入していた血液に代えて校正液をグルコースセンサに導入する必要があり、校正液に血液が混入して校正が行えない時間(安定待ち時間)が必要とされるとともに、校正後に再び測定を行う際、それまで導入していた校正液に代えて血液を導入する必要があり、血液に校正液が混入して測定が行えない時間(測定有効待ち時間)が必要とされていた。これにより、校正時間が比較的長時間に及んでしまい、その間、グルコースセンサによる血液の測定を行うことができないという不具合があった。
【0006】
特に、従来の生体成分測定装置においては、血液流路の先端側(穿刺針が接続される部位側)から校正液を供給していたため、グルコースセンサに導入する血液を校正液に置換するまでの時間(安定待ち時間)、及びグルコースセンサに導入する校正液を血液に置換するまでの時間(測定有効待ち時間)が比較的長時間に及んでしまい、校正に長時間必要となって、その長時間に亘って血液の測定を行うことができなくなってしまう虞があった。
【0007】
一方、校正液供給流路をグルコースセンサの近傍に接続すれば、安定待ち時間及び測定有効待ち時間を短縮することができるのであるが、その場合、血液流路等の流路の経時的変化(例えば送液ポンプによる送液動作による流路の変形等)を考慮した校正を行うことが困難となってしまい、精度のよい校正を行うことができないという問題がある。すなわち、従来の如く、血液流路の先端側から校正液を供給し、その校正液を希釈液と共に血液流路にて流通させた後にグルコースセンサに導入させれば、血液流路等の流路の経時的変化による誤差を吸収しつつグルコースセンサの校正を行うことができるのに対し、校正液をグルコースセンサの近傍から供給した場合、校正時に血液流路の経時的変化による誤差を吸収することができないのである。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、生体成分測定手段の校正時間を短縮するとともに、血液流路等の流路の経時的変化による誤差を吸収することができる生体成分測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、先端に患者の血液を採取可能な穿刺針が接続されるとともに、当該穿刺針にて採取した血液を流通可能な血液流路と、前記血液流路に希釈液を供給可能な希釈液供給流路と、前記血液流路が接続され、前記希釈液にて希釈された血液を導入可能とされるとともに、その導入した血液に含まれる所定成分の濃度を測定可能な生体成分測定手段と、前記生体成分測定手段からの排液を排出可能な排液流路と、前記血液流路、希釈液供給流路及び排液流路の血液、希釈液及び排液をそれぞれ送液するための送液ポンプと、前記血液流路に接続され、当該血液流路に校正液を供給可能な校正液供給流路とを具備し、前記校正液供給流路にて供給された校正液を前記生体成分測定手段に導入することにより当該生体成分測定手段を校正可能とされた生体成分測定装置において、前記校正液供給流路は、前記血液流路における当該生体成分測定手段より上流側であって前記送液ポンプより下流側の所定部位に接続されるとともに、前記血液流路及び希釈液供給流路を流れる液体の流量をそれぞれ検出し得る流量検出手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1記載の生体成分測定装置において、前記流量検出手段は、前記希釈液供給流路及び排液流路にそれぞれ配設されるとともに、当該希釈液供給流路及び排液流路を流れる液体の流量に基づいて前記血液流路を流れる液体の流量を検出し得ることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2記載の生体成分測定装置において、前記流量検出手段は、流路に形成され、内部に液溜まり及び空気層を形成可能とされたチャンバ部と、前記チャンバ部に形成され、流路を流れる液体を滴下させ得る滴下手段と、前記滴下手段による時間あたりの滴下数を測定し得る測定手段とを有し、当該測定手段で測定された時間あたりの滴下数により液体の流量を検出可能とされたことを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3記載の生体成分測定装置において、前記流量検出手段における前記滴下手段を一定温度に保持し得る保温手段を具備したことを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1〜4の何れか1つに記載の生体成分測定装置において、前記流量検出手段により検出された液体の流量に基づいて、患者の血液の採取不良又は流路の閉塞を検知し得る検知手段を具備したことを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1〜4の何れか1つに記載の生体成分測定装置において、前記送液ポンプは、複数の流路を取り付け可能とされ、単一の駆動源を駆動させることにより当該複数の流路における液体を同時に送液可能なマルチポンプから成ることを特徴とする。
【0015】
請求項7の発明は、請求項6記載の生体成分測定装置において、前記血液流路又は希釈液供給流路は、前記マルチポンプとは駆動源が別個の独立した送液ポンプに取り付けられて独立して送液可能とされたことを特徴とする。
【0016】
請求項8の発明は、請求項6記載の生体成分測定装置において、前記排液流路は、前記マルチポンプとは駆動源が別個の独立した送液ポンプに取り付けられて独立して送液可能とされたことを特徴とする。
【0017】
請求項9の発明は、請求項6〜8の何れか1つに記載の生体成分測定装置において、前記マルチポンプは、駆動により回転する回転部材と、回転部材に取り付けられて当該回転部材の回転動作により流路をしごいて送液可能なローラとを有するロータが流路毎に複数形成されるとともに、それぞれの流路の設定流量に応じて前記ローラの径若しくは数又は前記回転部材の径が異なることを特徴とする。
【0018】
請求項10の発明は、請求項1〜9の何れか1つに記載の生体成分測定装置において、前記生体成分測定手段は、酵素による反応によって患者の血液に含まれるグルコースの濃度を測定可能なグルコースセンサから成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、校正液供給流路は、血液流路における生体成分測定手段より上流側であって送液ポンプより下流側の所定部位に接続されるとともに、血液流路及び希釈液供給流路を流れる液体の流量をそれぞれ検出し得る流量検出手段を備えたので、生体成分測定手段の校正時間を短縮するとともに、血液流路等の流路の経時的変化による誤差を吸収することができる。
【0020】
請求項2の発明によれば、流量検出手段は、希釈液供給流路及び排液流路にそれぞれ配設されるとともに、当該希釈液供給流路及び排液流路を流れる液体の流量に基づいて血液流路を流れる液体の流量を検出し得るので、血液流路に流量検出手段を配設しなくても当該血液流路を流れる液体の流量を検出させることができる。
【0021】
請求項3の発明によれば、流量検出手段は、流路に形成され、内部に液溜まり及び空気層を形成可能とされたチャンバ部と、チャンバ部に形成され、流路を流れる液体を滴下させ得る滴下手段と、滴下手段による時間あたりの滴下数を測定し得る測定手段とを有し、当該測定手段で測定された時間あたりの滴下数により液体の流量を検出可能とされたので、安価な手段によって微量だけ流れる液体の流量を精度よく検出することができる。
【0022】
請求項4の発明によれば、流量検出手段における滴下手段を一定温度に保持し得る保温手段を具備したので、滴下する液体の量(一滴の量)を一定に保持させることができ、流量検出手段による流量の検出精度を向上させることができる。
【0023】
請求項5の発明によれば、流量検出手段により検出された液体の流量に基づいて、患者の血液の採取不良又は流路の閉塞を検知し得る検知手段を具備したので、患者の血液の採取不良又は流路の閉塞による生体成分測定手段の誤測定を防止することができ、装置の信頼性を向上させることができる。
【0024】
請求項6の発明によれば、送液ポンプは、複数の流路を取り付け可能とされ、単一の駆動源を駆動させることにより当該複数の流路における液体を同時に送液可能なマルチポンプから成るので、各流路による送液タイミングを容易に合致させることができるとともに、各流路にて送液される液体の流量の相対的誤差を抑制することができる。
【0025】
請求項7の発明によれば、血液流路又は希釈液供給流路は、マルチポンプとは駆動源が別個の独立した送液ポンプに取り付けられて独立して送液可能とされたので、独立した送液ポンプの駆動速度を制御することにより、生体成分測定手段に導入される血液の希釈倍率を一定に保持して安定化させることができる。
【0026】
請求項8の発明によれば、排液流路は、マルチポンプとは駆動源が別個の独立した送液ポンプに取り付けられて独立して送液可能とされたので、独立した送液ポンプの駆動速度を制御することにより、生体成分測定手段内の液体の流路に対して任意に加圧して気泡溶解能を向上させることができる。
【0027】
請求項9の発明によれば、マルチポンプは、駆動により回転する回転部材と、回転部材に取り付けられて当該回転部材の回転動作により流路をしごいて送液可能なローラとを有するロータが流路毎に複数形成されるとともに、それぞれの流路の設定流量に応じてローラの径若しくは数又は回転部材の径が異なるので、マルチポンプに取り付けられる流路の径寸法(外径及び内径)を同一としつつ各流路の設定流量にてそれぞれ送液させることができる。
【0028】
請求項10の発明によれば、生体成分測定手段は、酵素による反応によって患者の血液に含まれるグルコースの濃度を測定可能なグルコースセンサから成るので、グルコースセンサの校正時間を短縮するとともに、血液流路等の流路の経時的変化による誤差を吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態に係る生体成分測定装置の外観を示す正面図
図2】同生体成分測定装置の背面側の外観を示す斜視図
図3】同生体成分測定装置の全体構成を示す模式図
図4】同生体成分測定装置における流量検出手段を示す模式図
図5】同生体成分測定装置における保持手段を示す斜視図
図6】同保持手段を示す平面図
図7図6におけるVII−VII線断面図
図8図6におけるVIII−VIII線断面図
図9】同生体成分測定装置における送液ポンプを示す平面図及び裏面図
図10】同送液ポンプを示す断面図
図11】本発明において他の形態の送液ポンプが配設された状態を示す模式図
図12】同他の形態の送液ポンプが配設された場合の動作を示すフローチャート
図13】本発明における更に他の形態の送液ポンプが配設された状態を示す模式図
図14】本発明における送液ポンプ(ロータの数を異ならせたもの)を示す模式図
図15】本発明における送液ポンプ(回転部材の径を異ならせたもの)を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に適用される生体成分測定装置Kは、図1、2に示すように、設定状況等を表示可能なモニタJや収容バッグ(2、3、6、7)を吊るし得る複数のフックF等を具備した医療装置から成り、所定位置に保持手段Kaが形成されている。また、本実施形態に係る生体成分測定装置Kは、図3に示すように、血液流路L1と、第1希釈液供給流路L2と、第2希釈液供給流路L3と、排液流路L4と、校正液供給流路L5と、バイパス流路L6と、グルコースセンサ5(生体成分測定手段)と、マルチポンプ4(送液ポンプ)とを有して構成されている。
【0031】
血液流路L1は、先端に患者の血液を採取可能な穿刺針1(留置針)が接続されるとともに、当該穿刺針1にて採取した血液を流通可能な可撓性チューブから成る。また、本実施形態に係る血液流路L1は、その基端側が切り替えバルブWを介してグルコースセンサ5の導入部位5aに接続されている。穿刺針1は、血液流路L1の先端及び第1希釈液供給流路L2の先端にそれぞれ接続され、患者に穿刺可能とされたもので、収容バッグ2内の希釈液(ヘパリン加生理食塩液)を内部に導きつつ患者の血液を採取し得るようになっている。
【0032】
第1希釈液供給流路L2は、穿刺針1を介して血液流路L1に希釈液を供給可能なもので、先端に穿刺針1が接続されるとともに、基端が収容バッグ2に接続された可撓性チューブから成る。収容バッグ2には、生理食塩液にヘパリン(抗凝固剤)を含有させたヘパリン加生理食塩液(希釈液)が収容されており、かかるヘパリン加生理食塩液を穿刺針1を介して血液流路L1に供給することにより、患者の血液が凝固してしまうのを防止し得るようになっている。
【0033】
第2希釈液供給流路L3は、血液流路L1に希釈液を供給可能なもので、先端が血液流路L1に接続されるとともに、基端が収容バッグ3に接続された可撓性チューブから成る。収容バッグ3には、患者の血液におけるpHを安定化しつつ血液中の有害物質の影響を緩和するための希釈液が収容されており、かかる希釈液にて血液を希釈することにより、グルコースセンサ5による測定精度を向上させ得るようになっている。
【0034】
グルコースセンサ5は、導入部位5aにて血液流路L1が接続され、希釈液(本実施形態においては、収容バッグ2内のヘパリン加生理食塩液、及び収容バッグ3内の希釈液)にて希釈された血液を導入可能とされるとともに、その導入した血液に含まれる所定成分の濃度(本実施形態においては、グルコース濃度)を測定可能なものである。本実施形態に係るグルコースセンサ5は、酵素による反応によって患者の血液に含まれるグルコースの濃度を測定可能とされている。
【0035】
より具体的には、生体成分測定手段としてのグルコースセンサ5は、収容バッグ2内のヘパリン加生理食塩液及び収容バッグ3内の希釈液にて希釈された患者の血液を導入部位5aから導入し、その血液を酵素の膜上に連続的に導いてグルコースを分解し、分解時に生じた電流値から血糖値(グルコース濃度)を検出可能とされている。そして血糖値が検出された後の血液は、排液部位5bから排出され、排液流路L4を介して収容バッグ6内に導かれることとなる。
【0036】
排液流路L4は、グルコースセンサ5(生体成分測定手段)からの排液を排出可能なもので、基端がグルコースセンサ5の排液部位5bに接続されるとともに、先端が収容バッグ6に接続された可撓性チューブから成る。すなわち、穿刺針1にて採取された患者の血液は、収容バッグ2内のヘパリン加生理食塩液及び収容バッグ3内の希釈液が供給されて所定の希釈倍率に希釈された後、グルコースセンサ5に導入されてグルコース濃度が測定され、測定後の排液が排液流路L4を流通して収容バッグ6に排出されるのである。
【0037】
バイパス流路L6は、一端が切り替えバルブWに接続されるとともに、他端が収容バッグ6に接続された可撓性チューブから成り、当該切り替えバルブWの切り替え動作によって、血液流路L1にて流通した血液を、グルコースセンサ5をバイパスして収容バッグ6に収容させ得るものである。そして、校正時には、切り替えバルブWを操作することにより、校正液供給流路L5から校正液が供給されるようになっている。
【0038】
校正液供給流路L5は、血液流路L1に校正液を供給可能なもので、一端が切り替えバルブWを介して血液流路L1に接続されるとともに、他端が校正液を収容した収容バッグ7に接続された可撓性チューブから成る。しかして、切り替えバルブ5による切り替え動作を行うことにより、校正液供給流路L5にて供給された校正液をグルコースセンサ5に導入することができ、当該グルコースセンサ5を校正可能とされている。
【0039】
校正液は、グルコースセンサ5にて測定するグルコース濃度が所定値になるよう調製された液体から成る。グルコースセンサ5の校正は、例えば、グルコース濃度の測定前や測定中において、校正液供給流路L5を介して当該校正液をグルコースセンサ5に導入し、その校正液を酵素の膜上に連続的に導いて分解させ、分解時に生じた電流値を検出することにより行われる。これにより、検出された電流値と、調製により所定値となっている校正液のグルコース濃度との比較によりグルコースセンサ5の校正が行われることとなる。
【0040】
マルチポンプ4(送液ポンプ)は、血液流路L1、希釈液供給流路(本実施形態においては、第1希釈液供給流路L2及び第2希釈液供給流路L3)及び排液流路L4の血液、希釈液及び排液をそれぞれ送液するためのポンプから成る。特に、本実施形態に係るマルチポンプ4は、複数の流路(血液流路L1、希釈液供給流路(第1希釈液供給流路L2及び第2希釈液供給流路L3)及び排液流路L4)を取り付け可能とされ、単一の駆動源(モータM)を駆動させることにより当該複数の流路における液体を同時に送液可能なしごきポンプから成る。
【0041】
より具体的には、マルチポンプ4は、図9、10に示すように、取付部13が取り付けられたステータBと、複数のロータ(4a〜4d)と、駆動源としてのモータMと、各ロータ(4a〜4d)にそれぞれ取り付けられた回転部材a及びローラbとを有して構成されている。ステータBは、その取付部13に対して、被しごき部Cが取り付けられるもので、ロータ(4a〜4d)が回転自在に取り付けられるとともに、モータMが固定されている。
【0042】
被しごき部Cは、各ロータ(4a〜4d)にそれぞれ取り付けられて流体を流動させ得る可撓性チューブから成り、例えば、ロータ4aに取り付けられた被しごき部Cには、第1希釈液供給流路L2が接続され、ロータ4bに取り付けられた被しごき部Cには、血液流路L1が接続され、ロータ4cに取り付けられた被しごき部Cには、第2希釈液供給流路L3が接続され、ロータ4dに取り付けられた被しごき部Cには、排液流路L4が接続されるようになっている。
【0043】
取付部13は、各ロータ(4a〜4d)と対峙する面に凹状の弧状面13a(図10参照)が形成されており、その弧状面13aと各ロータ(4a〜4d)のローラbとの間で被しごき部Cをしごくことが可能とされている。すなわち、取付部13の弧状面13aは、各ロータ(4a〜4d)におけるローラbのしごき力を受ける被しごき面を形成しているのである。なお、図中符号11は、各ロータ(4a〜4d)の駆動軸Iに対する抜け止めリングを示しているとともに、符号12は、マルチポンプ4を生体成分測定装置Kに取り付けるための取付け金具を示している。
【0044】
さらに、各ロータ(4a〜4d)は、モータM(駆動源)にて回転可能な共通の駆動軸Iと連結可能な一対の回転部材aを有し、当該一対の回転部材aにてローラbの両端が連結されて成るものである。すなわち、各ロータ(4a〜4d)は、モータMの駆動により回転する一対の回転部材aと、回転部材aに取り付けられて当該回転部材aの回転動作により流路をしごいて送液可能なローラbとを有するロータ(4a〜4d)が流路毎に複数形成されている。
【0045】
駆動源としてのモータMは、通電によって回転する出力軸を具備するとともに、当該出力軸は、ベルトVを介して駆動軸Iと連結されている。これにより、モータMに電力を供給して通電させると、ベルトVを介して駆動軸Iを回転させ、各ロータ(4a〜4d)を同時に回転駆動可能とされている。なお、モータMに代えて他の汎用的な駆動源としてもよく、ベルトVに代えて他の汎用的な動力伝達手段としてもよい。
【0046】
ローラbは、各ロータ(4a〜4d)にそれぞれ形成された略同一外径の円筒状部材から成り、取付部13に取り付けられた複数の被しごき部Cをそれぞれ径方向に圧縮しつつ回転部材aの回転動作に伴い長手方向にしごくことにより、当該被しごき部C内で流体を流動させるためのものである。本実施形態に係るローラbは、図10に示すように、ロータ(4a〜4d)が具備する一対の回転部材aの縁部において周方向に亘って等間隔に複数形成されている。
【0047】
流量検出手段(S1〜S3)は、血液流路L1及び希釈液供給流路(第1希釈液供給流路L2及び第2希釈液供給流路L3)を流れる液体の流量をそれぞれ検出し得るもので、本実施形態においては、第1希釈液供給流路L2、第2希釈液供給流路L3及び排液流路L4にそれぞれ配設され、これら当該第1希釈液供給流路L2、第2希釈液供給流路L3及び排液流路L4を流れる液体の流量に基づいて血液流路L1を流れる液体の流量を検出し得るようになっている。
【0048】
すなわち、血液流路L1には、流量検出手段(S1〜S3)が取り付けられていないものの、第1希釈液供給流路L2、第2希釈液供給流路L3及び排液流路L4にそれぞれ流量検出手段(S1〜S3)が取り付けられていることから、排液流路L4にて検出された排液の流量から第1希釈液供給流路L2及び第2希釈液供給流路L3にて検出された希釈液の合算した流量を減算することにより、血液流路L1を流れる液体の流量を検出することができるのである。したがって、血液流路L1に流量検出手段を配設することなく、血液流路L1を流れる液体の流量を検出することができる。
【0049】
さらに、本実施形態に係る流量検出手段(S1〜S3)は、図4に示すように、チャンバ部Saと、流路中の液体を滴下させ得る滴下手段Sbと、該滴下手段Sbによる時間あたりの滴下数を測定し得る測定手段(Sc、Sd)とを有し、当該測定手段(Sc、Sd)で測定された時間あたりの滴下数により液体の流量を検出可能とされている。すなわち、チャンバ部Sa及び滴下手段Sbにより所謂点滴筒が形成され、当該チャンバ部Saの外側に測定手段(Sc、Sd)が配設されているのである。
【0050】
より具体的には、チャンバ部Saは、その上部及び下部に液体の流路(第1希釈液供給流路L2、第2希釈液供給流路L3及び排液流路L4)に形成され、内部に液溜まり及び空気層が形成可能とされている。滴下手段Sbは、チャンバ部Saの内部空間における上部に取り付けられた滴下針から成り、チャンバ部Saに接続された流路を流れる液体をその自重により所定容量毎(滴毎)にて滴下させ得るようになっている。
【0051】
測定手段(Sc、Sd)は、チャンバ部Saを挟んで対向する位置に配設された発光素子Sc及び受光素子Sdを有する光センサから成り、発光素子Scは、所定波長の光を受光素子Sdに向けて発し得る素子から成るとともに、受光素子Sdは、その発光素子Sdからの光を受光し得る素子から成る。しかして、滴下手段Sbから液体が滴下して発光素子Sc及び受光素子Sdの間を通過すると、発光素子Scから発せられた光が遮られて受光素子Sdで受光しなくなるので、その受光しなくなるタイミングを経時的に検知することにより時間あたりの滴下数を測定することができ、液体の流量を検出できるのである。
【0052】
本実施形態に係る流量検出手段(S1〜S3)の各チャンバ部Saは、図1に示すように、生体成分測定装置Kの本体に取り付けられた保持手段Kaに保持されるよう構成されている。かかる保持手段Kaは、図5〜8に示すように、各チャンバ部Saを挿通して保持可能な保持孔Kbが形成されるとともに、それぞれの保持孔Kbに対応する位置には、上述した発光素子Sc及び受光素子Sdを有した測定手段(Sc、Sd)と、各流量測定手段(S1〜S3)のそれぞれの滴下手段Sbを一定温度に保持し得る保温手段(H、A)とが配設されている。
【0053】
保温手段(H、A)は、伝熱手段T(例えば、アルミ材等の熱伝導率が高い部材)を加温し得るヒータHと、伝熱手段Tの温度を一定に維持し得るサーミスタ等から成る温度維持手段Aとを有して構成され、伝熱手段Tは、保持孔Kbに保持された流量検出手段(S1〜S3)におけるそれぞれの滴下手段Sbの周囲を覆って配設されている。ヒータH及び伝熱手段Tは、保持手段Kaに取り付けられたブラケットEにて保持されている。
【0054】
本実施形態に係る温度維持手段Aは、ヒータHで加温された伝熱手段Tの温度を一定に維持し得るサーミスタから成るもので、伝熱手段Tの温度が所定値を超えるとヒータHに対する通電を遮断するとともに、伝熱手段Tの温度が所定値を下回るとヒータHに対して通電させ得るよう構成されている。しかして、ヒータHにより伝熱手段Tが加温されると、その輻射熱で滴下手段Sbが加温されるとともに、温度維持手段Aによって伝熱手段Tが一定温度に維持されることにより、滴下手段Sbが一定温度に保持されることとなる。
【0055】
なお、温度維持手段Aは、ヒータHで加温された伝熱手段Tの温度を一定に維持し得るものであれば他の形態のものでもよく、例えば伝熱手段Tの温度を検出する温度計と、該温度計で検出された温度に基づいてヒータHの作動を制御し得るマイコンとを有し、マイコンによる制御によって、伝熱手段Tを一定温度に維持し、滴下手段Sbを一定温度に保持するようにしてもよい。
【0056】
すなわち、流量検出手段(S1〜S3)の滴下手段Sbから滴下する液体は、その容量(一滴の量)が滴下手段Sbの温度に依存(主に液体の粘性の変化に伴う滴下量の変化)することから、外気の温度変化によって誤差要因となってしまうのに対し、本実施形態のように、保温手段(H、A)にて滴下手段Sbを一定温度に保持することにより、外気の温度変化による誤差要因を抑制することができ、流量の検出を精度よく行わせることができるのである。
【0057】
ここで、本実施形態に係る生体成分測定装置Kは、グルコースセンサ5によるグルコース濃度の測定のための各主制御を行う制御手段8と、希釈倍率等を演算するための演算手段9と、患者の血液の採取不良又は流路の閉塞を検知し得る検知手段10とを有している。制御手段8は、マルチポンプ4の駆動源(モータM)の駆動、或いは切り替えバルブWの作動を制御するためのマイコン等から成るもので、例えば切り替えバルブWの作動を制御して、グルコースセンサ5によるグルコース濃度の測定状態と、グルコースセンサ5の校正状態とを切り替えさせ得るよう構成されている。
【0058】
演算手段9は、流量検出手段(S1〜S3)により検出された液体の流量に基づいて、グルコースセンサ5に導入する血液の希釈倍率を演算し得るものである。すなわち、希釈倍率は、第1希釈液供給流路L2におけるヘパリン加生理食塩液の流量(mL/h)をa、第2希釈液供給流路L3における希釈液の流量(mL/h)をb、血液流路L1における血液(穿刺針1にて採取された血液)の流量(mL/h)をcとすると、希釈倍率は以下の演算式にて求められる。
希釈倍率=(a+b+c)/c …(式1)
【0059】
しかしながら、本実施形態に係る血液流路L1には、上述のように、流量検出手段(S1〜S3)が配設されていないので、血液流路L1における血液の流量(mL/h)は、以下の演算式に示すように、排液流路L4を流れる排液の流量(mL/h)(これをdとする)から求めることとなる。
血液の流量(a)=d−(a+b) …(式2)
【0060】
したがって、本実施形態に係る演算手段9により求められる希釈倍率は、上記式(1)(2)から、以下の演算式にて求められることとなる。
希釈倍率=d/(d−a−b) …(式3)
このように、式(3)のような演算式により血液の希釈倍率を求めることができるので、求められた希釈倍率をグルコースセンサ5によるグルコース濃度の測定過程で経時的に監視すれば、希釈倍率の変化による誤差を検出してその誤差をグルコース濃度の測定時(グルコースセンサ5の校正時も同様)に補正することができる。
【0061】
検知手段10は、流量検出手段(S1〜S3)により検出された液体の流量に基づいて、患者の血液の採取不良又は流路(特に、血液流路L1)の閉塞を検知し得るものである。すなわち、グルコースセンサ5によるグルコース濃度の測定時、演算手段9によって上記(式2)にて求められた血液の流量(a)が0(mL/h)の場合、患者の血液の採取不良又は流路(血液流路L1)の閉塞であると判断することができるのである。これにより、グルコースセンサ5により測定されたグルコース濃度が異常値である場合、患者の血液の採取不良又は流路(血液流路L1)の閉塞に起因するものであるか否か判断することができる。
【0062】
ここで、本実施形態に係る生体成分測定装置Kは、校正液供給流路L5にて供給された校正液をグルコースセンサ5(生体成分測定手段)に導入することにより当該グルコースセンサ5を校正可能とされており、校正液を供給するための校正液供給流路L5は、図3に示すように、血液流路L1におけるグルコースセンサ5より上流側であってマルチポンプ4(送液ポンプ)より下流側の所定部位(本実施形態においては切り替えバルブW)に接続されている。
【0063】
しかして、本実施形態に係る校正液供給流路L5は、血液流路L1におけるグルコースセンサ5の上流側近傍に接続されているので、校正時、切り替えバルブWを作動させて流路を切り替えると、収容バッグ7内の校正液が短時間でグルコースセンサ5に導入されるようになっている。これにより、グルコース濃度の測定前或いは測定中において、素早くグルコースセンサ5を校正することができる。特にグルコース濃度の測定中にグルコースセンサ5を校正する際、グルコースセンサ5に導入される血液に代えて素早く校正液を供給することができる。
【0064】
なお、グルコース濃度の測定中においてグルコースセンサ5を校正する際、マルチポンプ5による送液は継続して行われるよう制御されており、穿刺針1にて採取された血液は、切り替えバルブWを介してバイパス流路L6を流れ、収容バッグ6に収容されるようになっている。これにより、グルコースセンサ5の校正中においても穿刺針1による血液の採取を継続して行わせることができ、血液の採取及び送液が停止することによる不具合(例えば、流路内の凝血等)を防止することができる。
【0065】
上記実施形態によれば、校正液供給流路L5は、血液流路L1におけるグルコースセンサ5(生体成分測定手段)より上流側であってマルチポンプ4(送液ポンプ)より下流側の所定部位(すなわち、グルコースセンサ5の近傍位置)に接続されるとともに、血液流路L1及び希釈液供給流路(第1希釈液供給流路L2及び第2希釈液供給流路L3)を流れる液体の流量をそれぞれ検出し得る流量検出手段(S1〜S3)を備えたので、グルコースセンサ5(生体成分測定手段)の校正時間を短縮するとともに、血液流路L1等の流路の経時的変化による誤差を吸収することができる。
【0066】
特に、血液流路L1及び希釈液供給流路(第1希釈液供給流路L2及び第2希釈液供給流路L3)を流れる液体の流量をそれぞれ検出し得る流量検出手段(S1〜S3)を備えたので、グルコース濃度の測定中に血液流路L1等の流路の経時的変化による誤差を補正することができ、グルコースセンサ5の校正時間の短縮に加えて、校正の頻度(必要な校正回数)を低下させることができる。
【0067】
また、本実施形態に係る流量検出手段(S1〜S3)は、第1希釈液供給流路L2、第2希釈液供給流路L3及び排液流路L4にそれぞれ配設されるとともに、当該第1希釈液供給流路L2、第2希釈液供給流路L3及び排液流路L4を流れる液体の流量に基づいて血液流路L1を流れる液体の流量を検出し得るので、血液流路L1に流量検出手段(S1〜S3)を配設しなくても当該血液流路L1を流れる液体の流量を検出させることができる。
【0068】
すなわち、本実施形態に係る流量検出手段(S1〜S3)を血液流路L1に配設した場合、チャンバ部Saの容量が必要となることから、血液を流動させる際に一時的な貯留槽として機能してしまい、応答性が悪化してしまう虞がある。これに対し、本実施形態の如く血液流路L1に流量検出手段(S1〜S3)を配設しないで、他の流路に配設された流量検出手段(S1〜S3)にて検出された流量に基づいて当該血液流路L1の液体の流量を算出することにより、応答性を維持することができる。
【0069】
さらに、本実施形態に係る流量検出手段(S1〜S3)は、流路(本実施形態においては、第1希釈液供給流路L2、第2希釈液供給流路L3及び排液流路L4)に形成され、内部に液溜まり及び空気層を形成可能とされたチャンバ部Saと、チャンバ部Saに形成され、流路を流れる液体を滴下させ得る滴下手段Sbと、滴下手段Sbによる時間あたりの滴下数を測定し得る測定手段(Sc、Sd)とを有し、当該測定手段(Sc、Sd)で測定された時間あたりの滴下数により液体の流量を検出可能とされたので、安価な手段によって微量だけ流れる液体の流量を精度よく検出することができる。特に、流量検出手段(S1〜S3)における滴下手段Sbを一定温度に保持し得る保温手段(H、A)を具備したので、滴下する液体の量(一滴の量)を一定に保持させることができ、流量検出手段(S1〜S3)による流量の検出精度を向上させることができる。
【0070】
またさらに、流量検出手段(S1〜S3)により検出された液体の流量に基づいて、患者の血液の採取不良又は流路の閉塞を検知し得る検知手段10を具備したので、患者の血液の採取不良又は流路の閉塞によるグルコースセンサ5(生体成分測定手段)の誤測定を防止することができ、装置の信頼性を向上させることができる。
【0071】
また、本実施形態に係る送液ポンプは、複数の流路(血液流路L1、第1希釈液供給流路L2、第2希釈液供給流路L3及び排液流路L4)を取り付け可能とされ、単一の駆動源(モータM)を駆動させることにより当該複数の流路における液体を同時に送液可能なマルチポンプ4から成るので、各流路による送液タイミングを容易に合致させることができるとともに、各流路にて送液される液体の流量の相対的誤差を抑制することができる。
【0072】
送液ポンプは、上記実施形態の如く、血液流路L1、第1希釈液供給流路L2、第2希釈液供給流路L3及び排液流路L4を取り付けて全て同時に送液可能なものに代え、例えば血液流路L1、或いは希釈液供給流路(第1希釈液供給流路L2又は第2希釈液供給流路L3)が、マルチポンプ4とは駆動源が別個の独立した送液ポンプに取り付けられて独立して送液可能とされたものとしてもよい。この場合、図12に示すように、モータM(駆動源)にて駆動可能なロータ4b〜4dを有するマルチポンプ4と、モータN(駆動源)にて駆動可能なロータ4aを有する別個の独立した送液ポンプ4’とを具備し、別個の送液ポンプ4’におけるロータ4aに血液流路L1、第1希釈液供給流路L2及び第2希釈液供給流路L3の何れかが取り付けられるとともに、他の流路がマルチポンプ4におけるロータ4b〜4dに取り付けられることとなる。
【0073】
上記のように、マルチポンプ4及び他の送液ポンプ4’を具備した場合の制御方法について、図12に示すフローチャートに基づいて以下に説明する。
先ずマルチポンプ4及び別個の送液ポンプ4’を駆動し(S1)、各流路にて液体を流通させるとともに、演算手段9にて希釈倍率を算出する(S2)。そして、算出された希釈倍率が設定通りである場合、S5に進んでグルコースセンサ5によるグルコース濃度を測定するとともに、当該希釈倍率が設定通りでない場合、S4に進む。
【0074】
S4においては、別個の送液ポンプ4’をマルチポンプ4とは独立して制御し、送液流量を変化させる。このように送液流量を変化させた後、再びS2に戻って希釈倍率を算出し、S3にて設定通りか否か判定される。このように、希釈倍率が設定通りとなるまで別個の送液ポンプ4’の制御が行われ、希釈倍率が設定通りとなったことを条件として、グルコースセンサ5によるグルコース濃度の測定が行われることとなる。
【0075】
このように、血液流路L1又は希釈液供給流路(第1希釈液供給流路L2若しくは第2希釈液供給流路L3)は、マルチポンプ4とは駆動源が別個の独立した送液ポンプ4’に取り付けられて独立して送液可能とすれば、独立した送液ポンプ4’の駆動速度を制御することにより、グルコースセンサ5(生体成分測定手段)に導入される血液の希釈倍率を一定に保持して安定化させることができる。
【0076】
さらに、送液ポンプは、上記実施形態のものに代え、例えば、排液流路L4は、マルチポンプ4とは駆動源が別個の独立した送液ポンプに取り付けられて独立して送液可能とされたものとしてもよい。この場合、図13に示すように、モータM(駆動源)にて駆動可能なロータ4a〜4cを有するマルチポンプ4と、モータN(駆動源)にて駆動可能なロータ4dを有する別個の独立した送液ポンプ4’とを具備し、別個の送液ポンプ4’におけるロータ4dに排液流路L4が取り付けられるとともに、他の流路がマルチポンプ4におけるロータ4a〜4cに取り付けられることとなる。
【0077】
このように、排液流路L4は、マルチポンプ4とは駆動源が別個の独立した送液ポンプ4’に取り付けられて独立して送液可能とされるようにすれば、独立した送液ポンプ4’の駆動速度を制御することにより、グルコースセンサ5(生体成分測定手段)内の液体の流路に対して任意に加圧して気泡溶解能を向上させることができる。すなわち、マルチポンプ4の駆動速度を変化させず送液ポンプ4’の駆動速度のみを変化させれば、グルコースセンサ5内の流路の圧力を制御できるので、当該流路を加圧して気泡溶解能を向上させれば、速やかにグルコースセンサ5による検出値(電流値)を安定させることができるのである。
【0078】
またさらに、送液ポンプは、上記実施形態のものに代え、例えば、それぞれの流路(血液流路L1、第1希釈液供給流路L2、第2希釈液供給流路L3及び排液流路L4)の設定流量に応じてローラdの数又は回転部材aの径が異なるマルチポンプを用いるようにしてもよい。この場合、図14に示すように、駆動により回転する回転部材aと、回転部材aに取り付けられて当該回転部材aの回転動作により流路をしごいて送液可能なローラbとを有するロータ(4a〜4d)が流路毎に複数形成されたマルチポンプとされ、ローラbが、それぞれの流路の設定流量に応じて互いに異なる径(d1〜d4)とされたものとすることができる。
【0079】
また、図15に示すように、駆動により回転する回転部材aと、回転部材aに取り付けられて当該回転部材aの回転動作により流路をしごいて送液可能なローラbとを有するロータ(4a〜4d)が流路毎に複数形成されたマルチポンプとされ、ローラbが、それぞれの流路の設定流量に応じて互いに異なる数とされ、或いは回転部材aがそれぞれの設定流路に応じて違いに異なる径とされたものとすることができる。
【0080】
このように、マルチポンプ4は、駆動により回転する回転部材aと、回転部材aに取り付けられて当該回転部材aの回転動作により流路をしごいて送液可能なローラbとを有するロータ(4a〜4d)が流路毎に複数形成されるとともに、それぞれの流路の設定流量に応じてローラbの径若しくは数又は回転部材の径を異ならせるようにすれば、マルチポンプ4に取り付けられる流路の径寸法(外径及び内径)を同一としつつ各流路の設定流量にてそれぞれ送液させることができる。
【0081】
さらに、上記実施形態によれば、生体成分測定手段は、酵素による反応によって患者の血液に含まれるグルコースの濃度を測定可能なグルコースセンサ5から成るので、グルコースセンサ5の校正時間を短縮するとともに、血液流路L1等の流路の経時的変化による誤差を吸収することができる。
【0082】
加えて、上記実施形態に係る流量検出手段(S1〜S3)によれば、滴下手段Sbを一定温度に保持し得る保温手段(H、A)を具備したので、時間あたりの滴下数を測定することにより微量の液体の流量を検出することができるとともに、滴下する液体の容量を一定にして流量測定における誤差要因を抑制することができる。また、チャンバ部Saを保持する保持手段Kaを有するとともに、測定手段(Sc、Sd)及び保温手段(ヒータH及び温度維持手段A)は、当該保持手段Kaに配設されたので、保持手段Kaがチャンバ部Kaを保持する機能と、測定手段(Sc、Sd)及び保温手段(H、A)を配設する機能とを併せ持つことができ、流量検出手段(S1〜S3)をユニットとして種々装置に適用することができる。
【0083】
さらに、本実施形態に係る保温手段は、滴下手段Sbの周囲を覆って配設された伝熱手段Tと、伝熱手段Tを加温し得るヒータHと、ヒータHで加温された伝熱手段Tの温度を一定に維持し得る温度維持手段Aとを有して構成されたので、滴下する液体を確実に一定量とすることができる。またさらに、本実施形態に適用される液体流路は、酵素による反応によって患者の血液に含まれるグルコースの濃度を測定可能なグルコースセンサ5に対して導入される血液若しくは希釈液、又は当該グルコースセンサから排出される排液を流通可能とされ、測定手段(Sc、Sd)で測定された時間あたりの滴下数により血液、希釈液又は排液の流量をそれぞれ検出可能とされたので、グルコースセンサ5によるグルコース濃度の検出精度を向上させることができる。
【0084】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば校正液供給流路L5は、血液流路L1におけるグルコースセンサ5(生体成分測定手段)より上流側であってマルチポンプ4(送液ポンプ)より下流側の所定部位に接続されるものであれば、マルチポンプ4の上流側近傍の他の部位(切り替えバルブWに限らない)に接続するようにしてもよい。
【0085】
また、血液流路L1、希釈液供給流路(第1希釈液供給流路L2、第2希釈液供給流路L3)及び排液流路L4の血液、希釈液及び排液をそれぞれ送液するための送液ポンプは、マルチポンプ4に限定されず、それぞれ別個のポンプ或いはしごき型以外のポンプを用いるようにしてもよい。さらに、本実施形態においては、流量検出手段(S1〜S3)が滴下手段Sbを有した所謂点滴筒から成るものとされているが、液体の流量を検出し得る他の形態の手段(例えば、血液量モニタを使用するもの、或いは収容バッグの重量を測定する重量計(ロードセル等)など)としてもよい。
【0086】
また、本実施形態においては、測定手段(発光素子Sc及び受光素子Sd)にて滴下手段Sbによる時間あたりの滴下数を測定し得るものとされているが、他の形態のセンサ(例えば、超音波の発振手段及び受信手段、画像モニタ等)により滴下手段Sbによる時間あたりの滴下数を測定し得るようにしてもよい。なお、測定手段は、チャンバ部の外部に配設されて滴下手段Sbにて滴下する液体に直接接触しないセンサが好ましいが、チャンバ部の内部に配設されて滴下手段Sbにて滴下する液体に接触するセンサであってもよい。またさらに、血液流路L1に流量検出手段を取り付けることにより、当該血液流路L1を流れる液体の流量を直接検出するようにしてもよい。
【0087】
加えて、本実施形態においては、流量検出手段(S1〜S3)における滴下手段Sbを一定温度に保持し得る保温手段(H、A)を具備しているが、かかる保温手段(H、A)を具備しないものとしてもよく、或いは他の形態の保温手段(例えば、ヒータHに代えて滴下手段Sbを冷却させるもの、温度維持手段Aがサーミスタ以外のもの等)としてもよい。
【0088】
さらに、本実施形態に係る生体成分測定装置Kは、グルコースセンサ5により血液中のグルコース濃度を検出し得るものとされているが、血液に含まれる他の所定成分の濃度を測定し得る他の形態の生体成分測定手段を具備したものとしてもよい。他の形態の生体成分測定手段を具備した場合、希釈液供給手段は、本実施形態の如く第1希釈液供給流路L2及び第2希釈液供給流路L3を具備するものに限らず、所定の希釈液を供給し得る1本の希釈液供給流路のみ具備するものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0089】
校正液供給流路は、血液流路における生体成分測定手段より上流側であって送液ポンプより下流側の所定部位に接続されるとともに、血液流路及び希釈液供給流路を流れる液体の流量をそれぞれ検出し得る流量検出手段を備えた生体成分測定装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 穿刺針
2 収容バッグ(ヘパリン加生理食塩液)
3 収容バッグ(希釈液)
4 マルチポンプ(送液ポンプ)
4a〜4d ロータ
a 回転部材
b ローラ
5 グルコースセンサ(生体成分測定手段)
5a 導入部位
5b 排液部位
6 収容バッグ(排液)
7 収容バッグ(校正液)
8 制御手段
9 演算手段
10 検知手段
11 抜け止めリング
12 取付け金具
13 取付部
L1 血液流路
L2 第1希釈液供給流路
L3 第2希釈液供給流路
L4 排液流路
L5 校正液供給流路
L6 バイパス流路
S1〜S3 流量検出手段
Sa チャンバ部
Sb 滴下手段
Sc、Sd 測定手段
W 切り替えバルブ
Ka 保持手段
T 伝熱手段
C 被しごき部
B ステータ
H ヒータ(保温手段)
A 温度維持手段(保温手段)
a 回転部材
b ローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15