(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
搬送システムで使用されるAGV台車を、電磁誘導の相互誘導作用に基づき、給電する非接触給電装置であって、定置された給電ベース側の1次コイルに、該AGV台車側の2次コイルがギャップを存し対応位置して、電力が供給され、
該AGV台車に引掛手段が設けられると共に、該給電ベースの可動部に受手段が設けられており、定軌道を走行する該AGV台車の引掛手段が、該給電ベースの受手段と係合することにより、
該2次コイルが、該1次コイルに対し走行方向において対応位置すべく、位置合わせ可能となっており、もって該AGV台車が走行停止されて給電が行われ、
該給電ベースは、該可動部と、該可動部を移動可能に保持する不動部と、を有しており、
該可動部は、該1次コイル,該受手段,ガイド子を備え、該不動部は、該ガイド子を案内する湾曲したレール溝を備えており、
該可動部の受手段が該AGV台車の引掛手段と係合して、該可動部が、該AGV台車の走行に従動して移動し、もって該可動部のガイド子が、該不動部のレール溝の湾曲ピークに案内されることにより、
該2次コイルが、該1次コイルに対しギャップ方向においても対応位置すべく、位置合わせ可能となっていること、を特徴とするAGV用の非接触給電装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような従来技術については、次の問題が課題として指摘されていた。
《第1の問題点》
第1に、非接触給電装置による給電に際しては、床や地上に定置された給電ベース側の1次コイルに対し、走行するAGV台車側に搭載された2次コイルが、対応位置して停止することが、給電効率上必要である。
給電ベース側の1次コイルとAGV台車側の2次コイルとが、給電に際し、ギャップ方向(左右方向)および走行方向(進行方向,前後方向)において、位置ずれなく対応位置していることが、必要である。
給電効率上のずれ許容範囲は狭く、ギャップ方向での両コイル間のずれ寸法(つまりギャップ距離)0mm〜15mm、走行方向の両コイル間のずれ寸法で±10mmとされている。
【0006】
しかしながらAGV台車への給電の場合、この許容範囲に収まらず、給電に支障が生じることが多々あった。すなわち、1次コイルと2次コイル間の位置ずれ、許容範囲外への位置ずれにより、給電不良や給電困難が多々発生し、問題となっていた。
そこで従来、許容範囲を広げる改善要望が高まっていた。ギャップ方向や走行方向について、より余裕のある範囲設定が切望されていた。
又、1次コイルに2次コイルが、ギャップ方向の許容範囲が狭いので過接近することが多々あり、擦れ,当たり,ぶつかり等の不具合発生,損傷事故発生も、問題として指摘されていた。
【0007】
《第2の問題点》
第2に、このような位置ずれ対策として、一般的にはセンサーを用いて、電動シリンダー等を制御する位置合わせ機構の採用が、考えられる。
しかしながら複雑なシステムとなり、イニシャルコスト面,メンテナンスコスト面,維持管理工数面,故障発生面等々に、問題が生じ易くなる。もって、その採用は見送られていた。
他方、1次コイルに対し2次コイルが許容範囲外に大きく位置ずれすると、漏洩電磁波が増加し、規制値を超えてしまう。その対策としては、コイル寸法を大きくすることも考えられたが、コイル寸法が過大となり、AGV台車への搭載が困難化してしまう。もって、その採用も見送られていた。
【0008】
《本発明について》
本発明のAGV用の非接触給電装置は、このような実情に鑑み、上記従来技術の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、1次コイルと2次コイルを、給電に際し位置ずれなく対応位置させることができ、第2に、しかもこれが、メカ機構により簡単容易に実現される、AGV用の非接触給電装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
《各請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、特許請求の範囲に記載したように、次のとおりである。
請求項1については、次のとおり。
請求項1のAGV用の非接触給電装置は、搬送システムで使用されるAGV台車を、電磁誘導の相互誘導作用に基づき給電する。すなわち、定置された給電ベース側の1次コイルに、該AGV台車側の2次コイルがギャップを存し対応位置して、電力が供給される。
そして該AGV台車に、引掛手段が設けられると共に、該給電ベースの可動部に受手段が設けられている。
もって、定軌道を走行する該AGV台車の引掛手段が、該給電ベースの受手段と係合することにより、該2次コイルが、該1次コイルに対し走行方向において対応位置すべく、位置合わせ可能となっている。そして該AGV台車が走行停止されて、給電が行われる。
【0010】
そして該給電ベースは、該可動部と、該可動部を移動可能に保持する不動部と、を有している。
該可動部は、該1次コイル,該受手段,ガイド子を、備えている。該不動部は、該ガイド子を案内する湾曲したレール溝を、備えている。
そして、該可動部の受手段が該AGV台車の引掛手段と係合して、該可動部が、該AGV台車の走行に従動して移動し、もって該可動部のガイド子が、該不動部のレール溝の湾曲ピークに案内されることにより、該2次コイルが、該1次コイルに対しギャップ方向においても対応位置すべく、位置合わせ可能となっていること、を特徴とする。
【0011】
請求項2については、次のとおり。
請求項2のAGV用の非接触給電装置では、請求項1において、該引掛手段は、フックよりなる。該受手段は、ローラーよりなる。該ガイド子は、ローラーよりなる。
該可動部と該不動部は、共にフレーム構造よりなると共に、該可動部が、該不動部に対し移動可能に組み付け保持されていること、を特徴とする。
請求項3については、次のとおり。
請求項3のAGV用の非接触給電装置では、請求項2において、該受手段は、保持材の先端部に取付けられている。該保持材は、基端部が該可動部に軸着されると共に、該可動部にマグネットにて固定されている。そして、該マグネットの吸引力が、過大な外力以下に設定されていること、を特徴とする
請求項4については、次のとおり。
請求項4のAGV用の非接触給電装置では、請求項2において、該ガイド子と該レール溝とは、2組設けられている。又、該可動部には、反走行方向に付勢するスプリングが、該不動部との間に設けられているが、該可動部は、該スプリングの付勢力に抗し、該AGV台車の走行に従動して移動可能となっていること、を特徴とする。
【0012】
《作用等について》
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)この非接触給電装置は、搬送システムのAGV台車を給電する。
(2)ところで給電に際し、給電ポジションにおいて、1次コイルと2次コイルが対応位置せず、ギャップ方向や走行方向に位置ずれし易い。
(3)そこで本発明では、AGV台車側に設けた引掛手段が、給電ベースの可動部側に設けた受手段と係合することにより、1次コイルと2次コイルが、まず走行方向において対応位置すべく位置合わせされる。
(4)又、このような係合により、給電ベースでは、可動部がAGV台車に従動する。もって、可動部に設けたガイド子が、不動部のレール溝の湾曲ピークに案内される。
これにより、1次コイルと2次コイルが、ギャップ方向においても対応位置すべく位置合わせされる。
(5)このように本発明では、給電ポジションにおいて、1次コイルと2次コイルが、位置ずれせず対応位置する。
そこで、通常のホームポジションにおけるギャップ方向や走行方向でのずれ許容範囲を、増加し,広げて,余裕を持たせることが可能となる。
(6)そしてこれらは、給電ベース側に可動部,不動部,受手段,ガイド子,レール溝等を設けると共に、AGV台車側に引掛手段を設けたことにより、実現される。簡単なメカ機構により、容易に実現される。
(7)なお給電ベースの受手段は、マグネットにて固定されており、過大な外力が加わると固定が解除されて係合が外れることにより、事故防止が図られている。
(8)そこで、本発明に係るAGV用の非接触給電装置は、次の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0013】
《第1の効果》
第1に、1次コイルと2次コイルを、給電に際し位置ずれなく対応位置させることが、可能となる。
本発明に係るAGV用の非接触給電装置では、給電に際し、まず給電ベースの可動部の受手段とAGV台車の引掛手段とが、係合することにより、1次コイルと2次コイルが、走行方向において対応位置せしめられる。
これと共に、給電ベースの可動部がAGV台車に従動し、そのガイド子が、不動部の湾曲レール溝に案内されることにより、1次コイルと2次コイルが、ギャップ方向においても対応位置せしめられる。
もって、通常のホームポジションにおける走行方向やギャップ方向のコイル間の許容範囲を、増加し,広げて,余裕を持たせることができる。
そして、給電ポジションにおける給電に際し、1次コイルと2次コイルが位置ずれなく対応位置するので、前述したこの種従来技術で指摘されていた給電不良や給電困難の発生が解消され、効電効率が向上する。
又、1次コイルと2次コイル間のギャップ方向の許容範囲が広がるので、ホームポジションにおける過接近,擦れ,当たり,ぶつかり等の不具合発生も解消され、損傷事故が回避される。
【0014】
《第2の効果》
第2に、しかもこれが、メカ機構により簡単容易に実現される。
本発明に係るAGV用の非接触給電装置では、上述した第1の効果が、簡単な構成により容易に実現される。
すなわち給電ベース側に、1次コイル,受手段,ガイド子を備えた可動部と、レール溝を備えた不動部とを設け、AGV台車側に、2次コイル,引掛手段を設けてなる、メカ機構構成のみにより、位置ずれが回避される。
このように複雑化を伴うことなく、シンプルで簡単な構成よりなるので、イニシャルコスト面,メンテナンスコスト面,維持管理工数面,故障発生防止面、等々に優れている。
又、コイル寸法を大きくすることもなく、コンパクトに実現される。コンパクトなので、底床型,平ボディ型,低背型等のAGV台車にも、容易に適用可能である。
このように、この種従来技術に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について、図面を参照して詳細に説明する。
《AGV台車Aについて》
まず、AGV台車Aについて、
図5を参照して説明する。AGV台車Aは、自動運転される搬送車輌として、生産現場,倉庫,物流,病院,その他各種分野の搬送システムBにおいて、広く導入されている。
そしてAGV台車Aは、床面Cに設定された経路に沿って、定軌道を誘導されて自動走行,停止され、もって製品,物品,荷物等の物品Dを、積み込み,搬送,積み降ろしすべく使用される。
このような搬送システムBとしては、無人搬送システムが代表的である。AGV台車Aには作業員が搭乗しない無人走行が代表的であるが、作業員が搭乗するケースも可能である。
AGV台車Aについては、以上のとおり。
【0017】
《非接触給電装置1について》
次に、非接触給電装置(WPT)1について、まず、
図4の(3)図等を参照して一般的に説明する。
非接触給電装置1は、電磁誘導の相互誘導作用に基づき、送電側回路2の1次コイル3から、バッテリー等の負荷4に接続された受電側回路5の2次コイル6に、エアギャップEを存して対応位置しつつ、非接触で電力を供給する。
本発明では、搬送システムBで使用される搬送用のAGV台車Aを、電磁誘導の相互誘導作用に基づき給電する。すなわち、床面C等に定置された給電ベース7側の送電側回路2の1次コイル3に、AGV台車A側に搭載された受電側回路5の2次コイル6が、ギャップEを存し対応位置して、電力が給電される。
【0018】
このような非接触給電装置1について、更に詳述する。給電に際し、送電側回路2の1次コイル3と受電側回路5の2次コイル6とは、僅かなギャップEを存して、対応位置する。
そして、2次コイル6が1次コイル3に対し、対応位置して停止される停止給電方式が代表的である。停止給電方式の場合、2次コイル6と1次コイル3とは、対をなす対称構造よりなる。これに対し、2次コイル6が低速走行しつつ給電を行う、移動給電方式も可能である。
給電ベース7の送電側回路2の1次コイル3は、電源8に接続されており、電源8は、例えば数kHz〜数10kHz〜数100kHz程度の高周波交流を、1次コイル3に向けて通電する。AGV台車Aの受電側回路5の2次コイル6からの出力は、負荷4の代表的にはバッテリーに供給され、充電されたバッテリーにて走行用モータが駆動される。
【0019】
電磁誘導の相互誘導作用については、次のとおり。給電に際しては、1次コイル3での磁束形成により、2次コイル6に誘起電力を生成させ、もって1次コイル3から2次コイル6に電力を供給することは、公知公用である。
すなわち1次コイル3に、電源8から給電交流,励磁電流を印加,通電することにより、自己誘導起電力が発生して磁界が1次コイル3の周囲に生じ、磁束がコイル面に対して直角方向に形成される。そして形成された磁束が、2次コイル6を貫くことにより、誘起電力が生成され磁界が誘起される。
このように誘起生成された磁界を利用して、数kW以上〜数10kW〜数100kW程度の電力供給が可能となる。1次コイル3側の磁束の磁気回路と、2次コイル6側の磁束の磁気回路は、相互間にも磁束の磁気回路つまり磁路が形成されて、電磁結合される。非接触給電装置1では、このような電磁誘導の相互誘導作用に基づき、非接触給電が行われる。
【0020】
なお、この非接触給電装置1では、このような電磁誘導方式により給電が行われるが、磁界共鳴方式も併用されており、更なる給電効率の向上が図られている。
すなわち送電側回路2について、コンデンサ9と1次コイル3とで共振回路が形成され、又、受電側回路5についても、コンデンサ10と2次コイル6とで、共振回路が形成されている。
そして、両共振回路の共振周波数が等しく設定されると共に、送電側回路2の電源8の電源周波数も、この共振周波数が等しく揃えられている。もって、1次コイル3と2次コイル6間に生じる磁界共振(磁界共鳴)現象をも利用して給電する、磁界共鳴方式が併用されている。
非接触給電装置1の一般的説明は、以上のとおり。
【0021】
《本発明の概要》
以下、本発明について、
図1,
図2,
図3,
図4の(1)図,
図4の(2)図等を参照して説明する。まず、本発明の概要については、次のとおり。
本発明のAGV用の非接触給電装置1では、まず、搬送システムBで使用されるAGV台車Aに、引掛手段11が設けられると共に、給電ベース7の可動部12に、受手段13が設けられている。
もって、定軌道を走行するAGV台車Aの引掛手段11が、給電ベース7の受手段13と係合することにより、2次コイル6が、1次コイル3に対し走行方向Fにおいて対応位置すべく、位置合わせ可能となっている。そして、AGV台車Aが走行停止されて、給電が行われる。
給電ベース7は、可動部12と、可動部12を移動可能に保持する不動部14と、を有している。可動部12は、1次コイル3,受手段13,ガイド子15を備え、不動部14は、ガイド子15を案内する湾曲したレール溝16を、備えている。
もって、可動部12の受手段13が、AGV台車Aの引掛手段11と係合し、可動部12がAGV台車Aの走行に従動して移動して、可動部12のガイド子15が、不動部14のレール溝16の湾曲ピーク17に案内される。
これにより2次コイル6が、1次コイル3に対しギャップ方向Eにおいても対応位置すべく、位置合わせ可能となっている。
本発明の概要については、以上のとおり。以下、このような本発明について、更に詳述する。
【0022】
《AGV台車A側について》
まず、AGV台車A側の非接触給電装置1の構成について、
図1〜
図3を参照して説明する。
搬送システムBで使用されるAGV台車Aには、非接触給電装置1関連として、2次コイル6,コンデンサ10,負荷(バッテリー)4等の受電側回路5、および引掛手段11が、搭載されている。
引掛手段11は、図示例では、フックよりなり、2次コイル6に対し走行方向F前側位置に、2次コイル6と並んで配設されている。
AGV台車A側の構成については、以上のとおり。
【0023】
《給電ベース7側について》
以下、搬送システムBの床面Cに定置された給電ベース7側の非接触給電装置1の構成について、
図1〜
図4の(2)図を参照して説明する。
給電ベース7は、可動部12と不動部14とから構成されている。まず、給電ベース7の不動部14は、フレーム構造よりなる。その上水平フレーム14
1が、可動部12を移動可能に組み付け保持し、下水平フレーム14
2が、床面C上に固定されている(
図1,
図2,
図3の各(2)図を参照)。
そして、不動部14の上水平フレーム14
1には、レール溝16が、図示例では走行方向Fに2組設けられている(
図1,
図2,
図3の各(1)図を参照)。
このレール溝16は、走行方向Fと直交するギャップ方向Eに向け、平面において略凸状に湾曲形成されており、その湾曲ピーク17エリアは、そのまま湾曲状をなすか、又は略直線状をなしている。そしてレール溝16は、可動部12に設けられたガイド子15を案内可能となっている。
【0024】
給電ベース7の可動部12も、フレーム構造よりなる。そして上水平フレーム12
1,中水平フレーム12
2,下水平フレーム12
3等にて、不動部14に移動可能に組み付け保持されている(
図1,
図2,
図3の各(1)図,
図4の(2)図等を参照)。
図示例では、可動部12の上水平フレーム12
1が、2組のボールローラーよりなるガイド子15にて、不動部14の上水平フレーム14
1の2組のレール溝16に、それぞれ案内,ガイドされている。
可動部12の中水平フレーム12
2が、ガイド子15の移動を安定化,サポートする補助ローラー18にて、不動部14の上水平フレーム14
1下に、案内,摺接ガイドされている。
可動部12の下水平フレーム12
3が、移動ローラー19にて、不動部14の下水平フレーム14
2上に、案内,ガイド保持されている。
そして、給電ベース7の可動部12は、上述したガイド子15,補助ローラー18,移動ローラー19等と共に、送電側回路2の1次コイル3と、受手段13とを備えてなる。なお、その他の送電側回路2は、可動部12又は不動部14又はその他の給電ベース7側に、配されている。
給電ベース7側は、概略このようになっている。
【0025】
《受手段13について》
上述した受手段13について、更に詳述する。給電ベース7の可動部12に設けられた受手段(位置合わせ手段,ポジショニング手段)13は、1次コイル3に対し走行方向F前側位置に、1次コイル3と並んで配設されている(
図1〜
図4の各(1)図を参照)。
図示例の受手段13は、ボールローラーよりなる。そして受手段13は、保持材20の先端部に取付けられており、保持材20は、基端部が可動部12に軸21にて軸着されると共に、常時は可動部12にマグネット22にて固定されている。マグネット22の吸引力は、過大な外力以下に設定されている。
【0026】
すなわち保持材20は、マグネット22への対向部分又は全体が磁性金属よりなり、マグネット22にて常時は吸着固定されている。もって常時は、保持材20の先端部に取付けられた受手段13も、定位置に固定されている。
これに対し、もしもAGV台車Aの例えば2次コイル6が、可動部12の例えば1次コイル3に擦れ,当たり,ぶつかる等の事故が発生し、過大な外力が受手段13に作用した場合は、マグネット22の吸着固定が外れる設定よりなる。
つまりマグネット22の吸引力は、予想される過大な外力以下に設定されている。もって過大な外力を作用した場合、受手段13や保持材20は、マグネット22による吸着固定が解除されてフリー状態となる。もって、1次コイル3,その他の可動部12と共に、損傷事故が防止される構造となっている。
【0027】
なお第1に、マグネット22を図示例によらず電磁石に変える構成も考えられる。すなわち、AGV台車Aの速度を検出するセンサーを設けると共に、その検出に基づき、給電ベース7へと走行するAGV台車Aについて、給電の要否を制御部にて判別する。
もって給電不要の場合、つまり車載された負荷4のバッテリーが十分に蓄電されている場合は、電磁石を通電せず、受手段13や保持材20の吸着固定を解除して、フリー状態とする。これにより、無駄な給電をしないようにすることができ、引掛手段11,受手段13,保持材20等の機械的寿命をのばすことも可能となる。勿論、給電要の場合は、電磁石を通電して、所期のとおり給電が実施される。
なお第2に、図示例は片方向給電方式よりなるが、両方向給電方式も考えられる。すなわち図示例では、受手段13が、給電ベース7の可動部12の前側位置に設けられていたが、例えば後側位置にも設けることにより、AGV台車Aの走行方向Fが図示例と逆方向の場合にも適用可能となる。
受手段13については、以上のとおり。
【0028】
《位置合わせについて》
さて、この非接触給電装置1では、まず、定軌道を走行するAGV台車Aの引掛手段11が、定置された給電ベース7の可動部12の受手段13と、係合することにより、2次コイル6が、1次コイル3に対し走行方向Fにおいて対応位置すべく、位置合わせする設定となっている。
すなわち、a.
図1のホームポジションにおいて、引掛手段11が受手段13と係合すると、→2次コイル6が1次コイル3と、走行方向Fにおいて位置ずれなく対応位置する設定よりなる。
→そしてb.AGV台車Aの走行が停止される
図2の給電ポジション、→更にはc.
図3の引掛手段11と受手段13との係合が解除されるリリースポジションに至るまで、このような対応位置が継続される。1次コイル3と2次コイル6は、走行方向Fにおいて、位置ずれのない最適位置にて対応位置する。
【0029】
これと共に、この非接触給電装置1では、ギャップ方向Eについて次のようになる。
給電ベース7の可動部12は、a.
図1のホームポジションで、引掛手段11と受手段13が係合した後、→b.
図2の給電ポジションで、給電のため一旦停止するが、→c.
図3のリリースポジションに至るまで、AGV台車Aの走行に従動する。
そしてその間、このような従動に伴い、可動部12のガイド子15が、不動部14のレール溝16にて案内される。
すなわちその間、可動部12のガイド子15は、まずa.
図1のホームポジションでは、レール溝16の一端位置にある。その際、1次コイル3と2次コイル6間のギャップ方向Eの距離は、例えば18mmである。
→そしてb.ガイド子15が、レール溝16の湾曲ピーク17(図面上では最も右側に寄った位置)に達すると、そこが
図2の給電ポジションとなる。
すなわち給電ポジションにおいて、1次コイル3がギャップ方向Eにおいて最も2次コイル6側に寄り、1次コイル3と2次コイル6とがギャップ方向Eにおいても位置ずれなく、最も近接した最適位置にて対応位置する設定よりなる。1次コイル3と2次コイル6間のギャップ方向Eの距離は、例えば8mmである。
給電ポジションでの給電のための停止後、→ガイド子15が、再び従動移動によりレール溝16の他端位置に至ると、そこがc.
図3のリリースポジションとなる。もって、引掛手段11と受手段13との係合が解除され、1次コイル3と2次コイル6とが離反する設定よりなる。
位置合わせについては、以上のとおり。
【0030】
《介装スプリング23について》
ところで、
図1,
図2,
図3の各(1)図中に示したように、可動部12には、反走行方向に付勢するスプリング23が、不動部14との間に設けられている。そして可動部12は、スプリング23の付勢力に抗し、AGV台車Aの走行に従動して、移動可能となっている。
すなわち前述したように、給電ベース7の可動部12は、引掛手段11と受手段13が係合している限り、AGV台車Aに従動する(
図1のホームポジション,
図2の給電ポジション,
図3のリリースポジション等を参照)。そして、このような従動は、スプリング23の付勢力に抗し可能となっている。
これに対し、引掛手段11と受手段13との係合が解除されると(
図3のリリースポジションを参照)。可動部12は、AGV台車Aへの従動から解放されると共に、スプリング23の付勢力により、元の位置(
図1のホームポジション)に復帰する。
ガイド子15も、レール溝16の他端位置(後端位置)から、一端位置(前端位置)に復帰する。図中24は、スプリング23のリールである。
介装スプリング23については、以上のとおり。
【0031】
《作用等》
本発明のAGV用の非接触給電装置1は、以上説明したように構成されている。そこで以下のようになる。
(1)この非接触給電装置1は、搬送システムBのAGV台車Aを、給電する。そして給電は、定置された給電ベース7側の1次コイル3に、AGV台車A側の2次コイル6が、対応位置する給電ポジションにおいて、走行方向Fに走行していたAGV台車Aが、停止して実施される(
図2を参照)。
【0032】
(2)ところで、このような給電ポジションにおける給電に際し、1次コイル3と2次コイル6とが正確に対応位置せず、ギャップ方向(左右方向)Eや走行方向(前後方向)Fに、位置ずれし易く、給電不良や給電困難の原因となる。
【0033】
(3)そこで本発明の非接触給電装置1では、まず、AGV台車A側に、フック等の引掛手段11が設けられると共に、給電ベース7側の可動部12に、ローラー等の受手段13が設けられている。
もってホームポジションにおいて、引掛手段11が受手段13と係合することにより(
図1を参照)、給電ポジションにおいて、1次コイル3と2次コイル6が、まず走行方向Fで正確に対応位置すべく、位置合わせされる(
図2を参照)。
【0034】
(4)そして、受手段13が引掛手段11と係合することにより、給電ベース7の可動部12が、AGV台車Aの走行に従動して移動する。
もって給電ベース7では、可動部12のガイド子15が、不動部14のレール溝16の湾曲ピーク17に案内される。これにより、給電ポジションにおいて、1次コイル3と2次コイル6が、上述した走行方向Fのみならずギャップ方向Eでも、正確に対応位置すべく、位置合わせされる(
図2を参照)。
【0035】
(5)本発明の非接触給電装置1では、このようにして、給電ポジションにおける給電に際し、1次コイル3と2次コイル6が、ギャップ方向Eや走行方向Fに位置ずれなく、対応位置するようになる(
図2を参照)。
そこで、通常のホームポジション(スタートポジション、つまりAGV台車Aが走行して給電ベース7の位置にあらわれた当初のポジショニング)における、ギャップ方向Eや走行方向Fでのずれ許容範囲を増加し,広げて、余裕を持たせることができるようになる(
図1を参照)。
このように、ホームポジションで余裕を拡大しても、事後の給電ポジションにおいては、1次コイル3と2次コイル6間の正確な対応位置が実現される(
図2を参照)。すなわち本発明では、ホームポジションとは別に、給電ポジションを設定したことにより、これが実現される(従来技術では、ホームポジションをそのまま給電ポジションとして、給電していた)。
ホームポジションにおいて、例えば、ギャップ方向Eでの両コイル間のずれ(つまりギャップ距離)の許容範囲が、従来は0mm〜15mmであったものを、0mm〜25mmに拡大可能となる。又、走行方向Fの両コイル軸間のずれ許容範囲も、従来は±10mmであったものを、更に±10mm拡大可能となる。
【0036】
(6)そして、このような1次コイル3と2次コイル6間の位置ずれ防止は、簡単なメカ機構の採用により、容易に実現される。
すなわちこの非接触給電装置1は、給電ベース7側について、1次コイル3,受手段13,ガイド子15を備えた可動部12と、レール溝16を備えた不動部14と、を設けると共に、AGV台車A側について、2次コイル6,引掛手段11を設けてなる、簡単な構成よりなる。
【0037】
(7)なお、給電ベース7の受手段13は、保持材20を介しマグネット22にて可動部12に固定されている。そして、マグネット22の所定吸引力以上の過大な外力が加わると、固定が解除されるので、損傷事故も抑制される。
作用等については、以上のとおり。