(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車載カメラのレンズが車両のボディパネルの外側に向けて露出した状態となるように車両に取り付けられた前記車載カメラのレンズ上の異物を除去する異物除去装置であって、
高圧空気を生成する単気筒型往復動ポンプと、
前記高圧空気を前記レンズに向けて噴射するノズルと、を備え、
前記単気筒型往復動ポンプの内部空間の容積を10cm3以下とし、且つ前記内部空間内の空気の1回あたりの排気に要する時間が0.03秒以下である、異物除去装置。
前記レンズを上下方向において6等分したときに、前記ノズルの噴射口の中心を通る線が前記レンズの上から2番目の領域と交差する、請求項1から5のいずれか一項に記載の異物除去装置。
車載カメラのレンズが車両のボディパネルの外側に向けて露出した状態となるように前記車両に取り付けられた前記車載カメラのレンズ上の異物を除去する異物除去装置であって、
高圧空気を生成する生成部と、
前記高圧空気を前記車載カメラに向けて噴射するノズルと、
前記生成部と前記ノズルとの間を連結する配管と、を備え、
前記生成部は、ピストンを用いたポンプから構成され、
前記ノズルから前記配管内に流入した水が前記ポンプまで侵入することのないように、前記配管の内部空間の容積が前記ポンプの内部空間の容積よりも大きく構成されている、異物除去装置。
車載カメラのレンズが車両のボディパネルの外側に向けて露出した状態となるように前記車両に取り付けられた前記車載カメラのレンズ上の異物を除去する異物除去装置であって、
高圧空気を生成する生成部と、
前記高圧空気を前記車載カメラに向けて噴射するノズルと、
前記生成部と前記ノズルとの間を連結する配管と、を備え、
前記ノズルから前記配管内に流入した水が前記生成部まで侵入することのないように、前記生成部は、前記ノズルよりも前記車両の上下方向において上方に配置されている、異物除去装置。
車載カメラのレンズが車両のボディパネルの外側に向けて露出した状態となるように前記車両に取り付けられた前記車載カメラのレンズ上の異物を除去する異物除去装置であって、
高圧空気を生成する生成部と、
前記高圧空気を前記車載カメラに向けて噴射するノズルと、
前記生成部と前記ノズルとの間を連結する配管と、を備え、
前記ノズルから前記配管内に流入した水が前記生成部まで侵入することのないように、前記配管は、その中間部が前記生成部に接続される一端部および前記ノズルに接続される他端部よりも前記車両の上下方向において下方に位置している、異物除去装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高圧空気をカメラのレンズに吹き付けて異物を除去する場合には、レンズに吹き付けられる空気の流速を高めるために、ノズルの開口面積を小さくしたり、チェックバルブを空気の流通路内に配置して蓄圧したりすることにより、一時的に風速を高める手段が考え得る。しかし、ノズルの開口面積を小さくすると、レンズに対して空気を吹き付け可能な範囲が狭くなるため、ポンプの大型化が必要となる。また、チェックバルブを搭載すると、蓄圧に耐えうるポンプ構造が必要となる等、構成が複雑化する。
【0007】
また、特許文献1のような構成においては、圧縮空気発生ユニットにより圧縮空気を発生させる際にノズルから水等が逆流して圧縮空気発生ユニットに侵入することで、圧縮空気発生ユニットが損傷したり故障したりして、所望の圧力を備えた圧縮空気を生成できない可能性がある。
【0008】
本発明は、異物を除去する性能を維持しつつ、小型化および構成の容易化が可能であって、水等の逆流も防止できる異物除去装置および当該異物除去装置を備える車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る異物除去装置は、
車載カメラのレンズが車両のボディパネルの外側に向けて露出した状態となるように車両に取り付けられた前記車載カメラのレンズ上の異物を除去する異物除去装置であって、
高圧空気を生成する単気筒型往復動ポンプと、
前記高圧空気を前記レンズに向けて噴射するノズルと、を備え、
前記ポンプの内部空間の容積を10cm
3以下とし、且つ前記内部空間内の空気の1回あたりの排気に要する時間が0.03秒以下である。
【0010】
上記構成によれば、10cm
3以下の小容積のポンプ内の空気を瞬間的に排気するように構成されており、ポンプ容積の拡大を招くことなく、レンズ表面の水滴を適切に移動させることができ、異物除去の性能の維持とポンプ小型化を両立することができる。
【0011】
前記排気に要する時間のうち0.02秒間は前記ポンプの流量が50cm
3/s以上であっても良い。
【0012】
上記構成によれば、流量が高い領域で一定時間ポンプを使用しているため、水滴をより確実に除去させることができる。
【0013】
前記ポンプの1回あたりの排気における最大流量が100cm
3/s以上であっても良い。
【0014】
上記構成によれば、最大流量を一定値以上にすることで、水滴をより確実に除去させることができる。
【0015】
前記ポンプからの排気は、少なくとも1秒に1回以上行われても良い。
【0016】
上記構成によれば、ポンプからの排気を短いサイクルで複数回行うことにより、レンズ表面の水滴を除去した後に新たに付着する水滴についても、運転者に違和感を与えることなく速やかに除去することができる。
【0017】
前記ノズルの噴射口の中心を通る線と、前記レンズの頂点の接線とのなす角度が、0°以上60°以下であっても良い。
【0018】
前記レンズを上下方向において6等分したときに、前記ノズルの噴射口の中心を通る線が前記レンズの上から2番目の領域と交差しても良い。
【0019】
前記ポンプは、前記高圧空気を送り出すピストンと、当該ピストンを前記高圧空気の送出方向に付勢するバネとを備えていても良い。
【0020】
前記ポンプは、前記ピストンを前記送出方向に従って摺動可能とするラックアンドピニオンギヤ機構を備えていても良い。
【0021】
前記ピストンが上死点から下死点へ移動する時間が、前記ピストンが下死点から上死点に移動する時間の10倍以上であっても良い。
【0022】
これらの構成によれば、容積が少なくパワーの小さいポンプであってもレンズ上の水滴をより確実に除去することができる。
【0023】
また、本発明の別の例に係る異物除去装置は、
カメラのレンズ上の異物を除去する異物除去装置であって、
高圧空気を生成する単気筒型往復動ポンプと、
前記高圧空気を前記レンズに向けて噴射するノズルと、を備え、
前記ポンプの内部空間の容積を10cm
3以下とし、且つ前記内部空間内の空気の1回あたりの排気に要する時間が0.03秒以下である。
【0024】
上記構成によれば、10cm
3以下の小容積のポンプ内の空気を瞬間的に排気するように構成されており、ポンプ容積の拡大を招くことなく、レンズ表面の水滴を適切に移動させることができ、異物除去の性能の維持とポンプ小型化を両立することができる。
【0025】
また、本発明に係る異物除去装置は、
車載センサーと当該車載センサーの測定対象との間に介在する隔壁に付着する異物を除去するための異物除去装置であって、
高圧空気を生成する単気筒型往復動ポンプと、
前記高圧空気を前記隔壁に向けて噴射するノズルと、を備え、
前記ポンプの内部空間の容積を10cm
3以下とし、且つ前記内部空間内の空気の1回あたりの排気に要する時間が0.03秒以下である。
【0026】
本発明に係る異物除去装置は、
車載カメラのレンズが車両のボディパネルの外側に向けて露出した状態となるように前記車両に取り付けられた前記車載カメラのレンズ上の異物を除去する異物除去装置であって、
高圧空気を生成する生成部と、
前記高圧空気を前記車載カメラに向けて噴射するノズルと、
前記生成部と前記ノズルとの間を連結する配管と、を備え、
前記配管は、水逆流防止機能を有している。
【0027】
上記構成によれば、配管が水逆流防止機能を有しているため、生成部により高圧空気を生成する際にノズル先端から水等が流入した場合であっても、生成部まで水が浸入することを防止することができる。そのため、生成部が損傷・故障等することなく異物を除去する性能を維持することができる。
【0028】
前記配管の内部空間の容積が前記生成部の内部空間の容積よりも大きくても良い。
【0029】
前記生成部は、ピストンを用いたポンプから構成され、当該ポンプの内部空間の容積よりも前記配管の内部空間の容積が大きくても良い。
【0030】
これらの構成によれば、配管の内部空間の容積が例えばポンプである生成部の内部空間の容積よりも大きいため、水等の逆流を確実に防止することができる。
【0031】
前記生成部は、前記ノズルよりも前記車両の上下方向において上方に配置されていても良い。
【0032】
上記構成によれば、水等の逆流をより確実に防止することができる。
【0033】
前記配管は、その中間部が前記生成部に接続される一端部および前記ノズルに接続される他端部よりも前記車両の上下方向において下方に位置していても良い。
【0034】
上記構成によれば、生成部への水等の侵入をより確実に防止することができる。
【0035】
また、本発明の別の例に係る異物除去装置は、
カメラのレンズ上の異物を除去する異物除去装置であって、
高圧空気を生成する生成部と、
前記高圧空気を前記レンズに向けて噴射するノズルと、
前記生成部と前記ノズルとの間を連結する配管と、を備え、
前記配管は、水逆流防止機能を有している。
【0036】
上記構成によれば、配管が水逆流防止機能を有しているため、生成部により高圧空気を生成する際にノズル先端から水等が流入した場合であっても、生成部まで水が浸入することを防止することができる。そのため、生成部が損傷・故障等することなく異物を除去する性能を維持することができる。
【0037】
また、本発明に係る異物除去装置は、
車載センサーと当該車載センサーの測定対象との間に介在する隔壁に付着する異物を除去するための異物除去装置であって、
高圧空気を生成する生成部と、
前記高圧空気を前記隔壁に向けて噴射するノズルと、
前記生成部と前記ノズルとの間を連結する配管と、を備え、
前記配管は、水逆流防止機能を有している。
【0038】
また、本発明の車両は、上述の異物除去装置を備えている。
【0039】
例えば、車載カメラのレンズが雨や泥等で汚れてしまった場合であっても、高圧空気を吹き付けてレンズ上の異物を除去することができ、車載カメラから得られる情報の精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、異物を除去する性能を維持しつつ、小型化および構成の容易化が可能であって、水等の逆流も防止できる異物除去装置および当該異物除去装置を備える車両を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本実施形態の一例について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明の異物除去装置は、例えば車載カメラのレンズに付着する水滴や泥や塵埃等の異物を除去する装置として適用される。
【0043】
図1(a),(b)に示すように、異物除去装置1は、例えば車両Vのバックドア200Aに取り付けられる。異物除去装置1は、駆動部55を備えており、駆動部55の電源端子が車両の電源ラインに接続されている。例えば、車両Vのギアがリバースに入ったことをトリガーとして、図示せぬ車両制御部(ECU)により後述する車載カメラ100による撮影が開始され、例えば撮影開始時の数秒間に異物除去装置1が車両制御部(ECU)により動作するように制御される。
【0044】
車載カメラ100は、車両Vの例えば後方を確認するためのカメラであり、
図1(c)に示すように、車載カメラ100のレンズ101が車両Vのバックドア200Aの外側に向けて露出した状態となるようにバックドア200Aに取り付けられている。車載カメラ100は、撮像部(図示省略)を有し、レンズ101は撮像部を覆っている。レンズ101としては、光の収束や拡散をしない単なる透光性カバーも本例のレンズに含まれる。
【0045】
なお、異物除去装置1Aは、
図2(a),(b)に示すように、例えば車両Vのリアバンパー200Bに取り付けられても良い。なお、車載カメラ100が取り付けられる位置は,車両の後端側に限定されず、車両の前方側や側方側等のボディパネルであっても良い。また、車載カメラ100は、ボディパネルに取り付けられたランプ、ドアノブ、ミラー、バンパー等の車両表装部品を介して車体に取り付けられても良く、車載カメラ100がこれらの部品の一部として(一体物として)搭載されていても良い。
【0046】
図3に示すように、異物除去装置1は、ノズルユニット2と、ジョイント部材3と、ホース4と、高圧空気生成ユニット5とを備えている。
【0047】
ノズルユニット2は、車載カメラ100に対して着脱可能に構成されており、取付部21と、ノズル22とを有している。ノズルユニット2は、例えば樹脂を材料として形成されている。
【0048】
取付部21は、車載カメラ100の上面を覆うようにして車載カメラ100のハウジング102に取り付けられる。ノズル22は、高圧空気を車載カメラ100のレンズ101に向けて噴射する。ノズル22は、取付部21と一体的に形成されており、取付部21がハウジング102に取り付けられた際に、ノズル22の噴射口がレンズ101を向くように設けられている。ここで、「一体的に形成され」とは、ノズル22と取付部21とを作業者が組立作業時に一体の部品として取り扱うこと可能に構成されることを意味する。具体的には、例えば、ノズル22と取付部21とを、同一材料で同一金型で成形しても良いし、ノズル22と取付部21とを別々の材料でそれぞれ成形して、互いに嵌め合わせて一体的に形成して、ノズルユニット2を構成しても良い。
【0049】
ジョイント部材3は、ノズルユニット2のノズル22とホース4とを接合する部材であり、一方側の端部がノズル22と連結され、反対側の端部がホース4と連結されている。ジョイント部材3は、例えば樹脂を材料として形成されている。
【0050】
ホース4は、ジョイント部材3とともに、ノズル22と高圧空気生成ユニット5とを接続する配管部材である。ホース4は、一方側の端部がジョイント部材3に連結され、反対側の端部が高圧空気生成ユニット5の排出口50に連結されている。ホース4は、例えば樹脂やゴム等の材料で形成されている。
【0051】
高圧空気生成ユニット5は、ノズル22に送出する高圧空気を生成するためのユニットであり、例えば単気筒型往復動ポンプである。高圧空気生成ユニット5は、車両の内部において車体の一部に取り付けられる。
【0052】
図4に示すように、高圧空気生成ユニット5は、ケース体51と、ケース体51の内部に配置された移動機構とを有している。高圧空気生成ユニット5において、ピストン52の移動方向は、空気を送り出す方向である後方が送出方向とされ、送出方向と反対方向である前方が溜力方向とされている。
【0053】
高圧空気生成ユニット5は、高圧空気を送り出すピストン52と、ピストン52を高圧空気の送出方向に付勢する付勢バネ58と、ピストン52を高圧空気の送出方向に従って摺動可能とするラックアンドピニオンギヤ機構を備えている。高圧空気が送り出される前の初期状態では、ピストン52が付勢バネ58の付勢力により送出方向側に位置され、ラック53はラック部53aがピニオン54のギヤ部54aに噛合可能な状態で位置される。
【0054】
モータ(駆動部)55の駆動が開始され、モータ55の駆動力がウォーム56を介してウォームホイール57に伝達されると、ピニオン54のギヤ部54aがラック53のラック部53aに噛合される。このため、ラック53は、ピニオン54の回転に伴って付勢バネ58の付勢力に反して溜力方向へ移動されていく。ラック53が溜力方向へ移動されていくと、所定の位置でギヤ部54aとラック部53aの噛合が解除される。ギヤ部54aとラック部53aの噛合が解除された位置(
図4に示す位置)がピストン52の下死点とされる。ピストン52が下死点に位置された状態では、ピストン支持部59の内部空間60における前側略半分の部分(第2の空間)60bに流入された空気(外気)が段差61aに沿い隙間61bを通って内部空間60における後側略半分の部分(第1の空間)60aへ向けて流動される。
【0055】
ピストン52が下死点まで移動されると、ギヤ部54aとラック部53aの噛合が解除され、ピストン52が付勢バネ58の付勢力によって溜力方向への移動速度より高速で送出方向へ移動される。なお、ピストン52の端部52Aが第1の空間60aの仮想線Lまで移動された位置がピストン52の上死点とされる。これにより、第2の空間60bから第1の空間60aに流動された空気が第1の空間60aから連結突部62の排出口50を通ってホース4を介しノズルユニット2のノズル22へ向けて送出される。このとき、排出口50の径がピストン支持部59の径よりも小さく形成されているため、第1の空間60aから排出口50を通って排出される空気は圧縮されて高圧空気となって送出される。
【0056】
本実施形態において、高圧空気生成ユニット5のピストン支持部59の内部空間60の容積Voは10cm
3以下である。容積Voは、ピストン52が下死点に位置した状態(
図4参照)における第1の空間60aの容積である。
【0057】
図5(a)〜(c)は、高圧空気生成ユニット5で生成されてノズル22の先端から車載カメラ100のレンズ101へ向けて排気される高圧空気の時間流量曲線のイメージ図である。
図5(a)に示すように、高圧空気生成ユニット5で生成された高圧空気はノズル22へ流入し、ノズル22の先端からレンズ101へ向けて排気される。このときの最大流量をQ1(cm
3/s)とし、1回あたりの排気に要する時間をt1(s)とする。発明者による鋭意検討の結果、ピストン支持部59の第1の空間60aの容積Voが10cm
3以下である小型の高圧空気生成ユニット5(単気筒型往復動ポンプ)を用いて車載カメラ100のレンズ101上に付着した水滴を除去するためには、第1の空間60a内の空気の1回あたりの排気時間t1(s)を0.03秒以下とすればよいことが見出された。1回あたりの排気時間t1(s)が0.03秒よりも長いと、高圧空気の流速や最大流量Q1を十分に確保することができないため、レンズ101上に付着した水滴を適切に吹き飛ばすことができない。また、1回あたりの排気における最大流量Q1は、好ましくは100cm
3/s以上、より好ましくは150cm
3/s以上とする。最大流量Q1を100cm
3/s以上としておくことで、レンズ101上の水滴等を確実に除去することができる。なお、
図5(a)において、1回あたりの排気時間t1内に最大流量Q1で排気される空気の量が、ピストン支持部59の第1の空間60aの容積Voに相当する。
【0058】
また、
図5(b)に示すように、1回あたりの排気時間t1(s)のうち所定の時間t2(s)の間は、所定の流量Q2(cm
3/s)を維持するように高圧空気が廃棄されることが好ましい。具体的には、1回あたりの排気時間t1のうち、少なくとも0.02秒間(時間t2)は、高圧空気の流量Q2が50cm
3/s以上となるように高圧空気を排気することが好ましい。水滴の除去のためには、高圧空気生成ユニット5の流量がある程度高い領域で一定時間排気を行うことが望ましいためである。
【0059】
高圧空気生成ユニット5は、高圧空気の排気を繰り返し行うように制御される。高圧空気生成ユニット5からの高圧空気の排気は、少なくとも1秒に1回以上行われることが好ましい。高圧空気の排気間隔t3(s)は、例えば、
図5(c)に示すように、各排気時間t1の最大流量に到達した時点の間の時間として設定される。高圧空気生成ユニット5から短いサイクルで複数回排気を行うことで、レンズ101表面の水滴を除去した後に新たに付着する水滴についても速やかに除去することができる。
【0060】
図5(c)において、高圧空気生成ユニット5内のピストン52が上死点(端部52Aが第一の空間60aの仮想線Lに位置した状態)から下死点(
図4に示す状態)に移動する時間を溜力時間t4(s)とし、ピストン52が下死点から上死点に移動する時間を排気時間(送出時間)t1とする。このとき、
図5(c)に示すように、溜力時間t4は送出時間t1の10倍以上であることが好ましい。このように、ピストン52の上死点から下死点への移動をゆっくりと行う一方、下死点から上死点への移動を瞬間的に行うことで、すなわち送出時間t1よりも十分に長い溜力時間t4を確保しつつ送出時間t1内に瞬間的に空気を排気することで、付勢バネ58の付勢力が小さい高圧空気生成ユニット5でも、レンズ101に付着した水滴を確実に移動させることができる。
【0061】
上述の通り、ノズルユニット2は、車載カメラ100に対して着脱可能に構成されているが、
図6(a)に示すように、ノズル22の噴射口24の中心を通る線Cと、レンズ101の頂点の接線とのなす角度をθとすると、角度θが0°以上60°以下となるように、レンズ101に対するノズル22の位置決めが行われている。角度θは、5°以上30°以下であることが好ましい。このように、レンズ101に対して、ノズル22の噴射口24を所定の傾きを保って配置することで、レンズ101の表面全体に高圧空気を吹き付けやすくなり、水滴の除去の性能を向上させることができる。なお、車載カメラに搭載されるレンズが、本実施形態のように曲面状のレンズ101ではなく、平面レンズ(例えば、平凹レンズ)である場合には、平面レンズの表面に沿った線が上記の接線とみなされ、レンズ平面とノズル22の噴射口24の中心線Cとのなす角度θが0°以上60°以下となるように、平面レンズに対するノズル22の位置決めを行えばよい。
【0062】
また、
図6(b)に示すように、レンズ101を上下方向において6等分し、上から第1領域101A,第2領域101B,第3領域101C,第4領域101D,第5領域101Eおよび第6領域101Fとしたときに、ノズル22の噴射口24の中心線Cがレンズ101の上から二番目の第2領域101Bに交差することが好ましい。このように、ノズル22の噴射口24をレンズ101の上側の一定領域(第2領域101B)に向けて位置決めすることで、レンズ101の表面全体に高圧空気を吹き付けやすくなり、水滴除去の性能を向上させることができる。
【0063】
次に、異物除去装置1の動作について、
図3および
図4を再度参照して説明する。
高圧空気生成ユニット5においてモータ55の駆動が開始されると、先ず、高圧空気を生成するための空気(外気)が吸い込まれる。空気は、ノズル22の噴射口24から高圧空気生成ユニット5へ吸い込まれる。吸い込まれた空気は、付勢バネ58の付勢力によるピストン運動により、高圧空気生成ユニット5の排出口50からホース4へ高圧空気となって送出される。高圧空気は、ホース4からジョイント部材3を通ってノズルユニット2のノズル22へ送出される。
【0064】
高圧空気は、ノズル22に流入され、ノズル22の噴射口24から噴射されて、車載カメラ100のレンズ101に向けて所定の角度で吹き付けられる。これにより、レンズ101に付着されている異物が吹き飛ばされてレンズ101の汚れが解消される。
【0065】
(実施例1)
図7は、高圧空気生成ユニットから排気される高圧空気の実施例1に係る流量−時間グラフであり、
図8は、実施例1に係る流量−圧力−時間グラフである。実施例1において、高圧空気生成ユニットは容積Voが10cm
3以下のものを用い、ノズルは先端開口部の径がφ1.2mmのものを用いている。
図7および
図8に示すように、実施例1では、1回あたりの排気時間は約10ms(0.01s)、最大流量は約275cm
3/s、排気間隔は、550msである。また、排気時の最大圧力は約80kPaである。
【0066】
実施例1の流量−時間グラフに示す流量、排気時間および排気間隔にてノズルから排気を行うことで、レンズ上に付着した水を適切に除去できることが確認できた。
【0067】
(実施例2)
図9は、高圧空気生成ユニットから排気される高圧空気の実施例2に係る流量−時間グラフである。実施例2においても、実施例1と同様に、高圧空気生成ユニットは容積Voが10cm
3以下のものを用い、ノズルは先端開口部の径がφ1.2mmのものを用いている。
図9に示すように、実施例2では、1回あたりの排気時間は実施例1と同様に約10ms(0.01s)とするが、最大流量は約200cm
3/s、排気間隔は、280msである。
【0068】
実施例2の流量−時間グラフに示す流量、排気時間および排気間隔にてノズルから排気を行うことで、レンズ上に付着した水を適切に除去できることが確認できた。実施例2では、実施例1よりも排気間隔を短くする、すなわち、より頻回に排気を行うことで、1回あたりの最大流量を実施例1より低く抑えても異物除去の性能を維持できることが確認できた。
【0069】
なお、1回あたりの排気時間t1における必要流量Qは、以下のように求められる。
例えば、所定の外径(例えば、15mm)のレンズを備えた車載カメラにおいて、レンズ表面に付着した水滴の総量を3cm
3とすると、3cm
3の水をレンズ上で15mm移動させるための運動エネルギーFは以下の数式(1)で求められる。
【0070】
【数1】
ここで、μ(摩擦係数)は、0.3とする。
【0071】
一方、ノズルからレンズに向けて噴射される空気(風)のエネルギーWは、以下の数式(2)で求められる。
【0072】
【数2】
ここで、A(ノズル吹き出し部の開口面積)は、7.5mm
2とする。
【0073】
上記数式(1)で求めた運動エネルギーFおよび数式(2)で求めた空気(風)のエネルギーWから、3cm
3の水をレンズ上で15mm移動させるための風速Vを以下の数式(3)により求める。なお、このときの単位時間tは0.01sとする。
【0075】
上記数式(3)で求められた風速Vに基づき、高圧空気生成ユニットに要求される流量Qは、以下の数式(4)で求められる。
【0077】
このように、レンズの表面積、レンズに付着する水滴の総量、ノズル開口面積、単位時間等を適宜設定することにより、レンズ表面に付着した水滴等を適切に除去するための高圧空気生成ユニット5に必要な流量Qを求めることができる。本実施形態においては、高圧空気生成ユニット5の必要流量Qに基づき、発明者の鋭意検討により、高圧空気生成ユニット5の小型化と異物除去性能を両立を図るべく、排気時間t1や排気間隔t3、最低限必要な流量Q2等の好適な範囲を見出したものである。
【0078】
(参考例)
図10は、高圧空気生成ユニットから排気される高圧空気の参考例に係る流量−圧力−時間グラフである。参考例においては、実施例1と同様に、ノズルは先端開口部の径がφ1.2mmのものを用いている。
参考例では、1回あたりの排気時間は約200ms(0.2s)であり、最大流量は約125cm
3/sであり、排気時の圧力は約50kPaである。参考例に示すように、従来はレンズ上に付着した水を除去するために1回あたりの排気時間を長くして、比較的小さい流量で排気を行っていた。この場合、高圧空気生成ユニット(例えば、単気筒型往復動ポンプ)の容積を大きくする必要があり、省スペース化に対応できなかった。
【0079】
これに対して、本実施形態の異物除去装置1によれば、内部空間(第1の空間)60aの容積Voが10cm
3以下である高圧空気生成ユニット5を用い、内部空間60a内の空気の1回あたりの排気に要する時間t1が0.03秒以下となるように高圧空気の噴射を行っている。このように、本実施形態においては、10cm
3以下の小容積の高圧空気生成ユニット5内の空気を瞬間的に排気するように構成されており、高圧空気生成ユニット5の容積Voの拡大を招くことなく、レンズ101表面の水滴を適切に移動させることができ、異物除去の性能の維持と装置の小型化を両立することができる。
【0080】
また、本実施形態によれば、高圧空気生成ユニットの排気は、排気時間t1のうち0.02秒間は空気流量Q2が50cm
3/s以上を維持するように設定されている。このように、一定時間は流量が高い領域を維持するように高圧空気生成ユニット5を駆動させているため、水滴をより確実に除去させることができる。
【0081】
また、本実施形態によれば、高圧空気生成ユニット5からの排気は、少なくとも1秒に1回以上という短いサイクルで複数回行われているため、例えばレンズ101表面の水滴を除去した後に新たに付着する水滴についても、運転者に違和感を与えることなく速やかに除去することができる。
【0082】
また、本実施形態の異物除去装置は、ノズル22の噴射口24の中心を通る線Cと、レンズ101の頂点の接線とのなす角度θが、0°以上60°以下であり、レンズ101を上下方向において6等分したときに、ノズル22の噴射口24の中心線Cがレンズ101の上から2番目の第2領域101Bに交差するように構成されている。さらに、高圧空気生成ユニット5内のピストン52が下死点にある状態の時間(溜力時間)t4が、ピストン52が上死点にある状態の時間(排気時間)t1の10倍以上となるように構成されている。これらの構成により、容積が少なくパワーの小さい高圧空気生成ユニット5を用いた場合でもレンズ101上の水滴をより確実に除去することができる。
【0083】
図11は、異物除去装置1の側面側から見た一部断面図である。
図11に示されるように、異物除去装置1は、高圧空気生成ユニット5がノズルユニット2よりも車体の上下方向において上側に位置するように、高圧空気生成ユニット5、およびノズルユニット2が取り付けられる車載カメラ100が配置されている。そして、ホース4の内部空間43の容積Vhがピストン支持部59の第1の空間60aの容積Voよりも大きくなるように、ピストン支持部59の形状やホース4の径および長さが設定されている。なお、容積Voは、ピストン52が下死点に位置した状態(
図3,4参照)における第1の空間60aの容積である。このように、高圧空気生成ユニット5とノズルユニット2(ジョイント部材3)との間を連結するホース4は、水逆流防止機能を有している。
【0084】
ところで、高圧空気生成ユニット5において駆動モータの駆動が開始されて高圧空気を生成するための空気(外気)がノズル22の先端から吸い込まれる際に、ノズル22の先端から水や泥等が流入して高圧空気生成ユニット5の内部にこれらの異物が浸入してしまうおそれがある。そのため、従来は、エアポンプである高圧空気生成ユニットからノズルまでを連結するホース(排気管路)とは別に、高圧空気生成ユニットに吸気管路を設け、排気管路と吸気管路のそれぞれにワンウェイバルブ(チェックバルブ)を設けて、高圧空気生成ユニット5への水等の侵入を防いでいた。
【0085】
これに対して、本実施形態においては、ホース4の内部空間43の容積Vhがピストン支持部59の第1の空間60aの容積Voよりも大きくなるように構成されている。このため、高圧空気生成ユニット5により高圧空気を生成する際にノズル22の先端から水等の異物が流入した場合であっても、高圧空気生成ユニット5のピストン支持部59内にまで異物が浸入することを防止することができる。そのため、高圧空気生成ユニット5が損傷・故障等することなく、所望の高圧空気を生成してノズル22からレンズ101に向けて噴射することができる。また、高圧空気生成ユニット5がノズルユニット2よりも車体の上部に位置されているため、水等の逆流をより確実に防止することができ、車載カメラ100のレンズ101に付着した異物を除去する性能を維持することができる。さらに、異物除去装置1は、高圧空気生成ユニット5に吸気のための吸気管路を設けてチェックバルブ等の新たな部品を例えばホース4や吸気管路に搭載することなく、水逆流防止機構を備えることができ、構成が非常に簡便である。
【0086】
次に、異物除去装置1の変形例について
図2および
図12を参照して説明する。
上述の通り、
図2(a),(b)に示すように、異物除去装置1Aは、例えば車両Vのリアバンパー200Bに取付けられても良い。このとき、車両の構造上、ノズルユニット2が取り付けられる車載カメラ100よりも高圧空気生成ユニット5を車体の下部に位置するように配置しなければならない場合がある。
【0087】
図12に示すように、異物除去装置1Aのホース4Aは、ジョイント部材3に接続される後端部41および高圧空気生成ユニット5に接続される前端部42よりも車両の上下方向において下方に位置する中間部44を備えている。また、ホース4Aは、ジョイント部材3に接続される後端部41から一旦上方に配置されて、その後、略U字状に撓ませて前端部42において高圧空気生成ユニット5に連結されている。すなわち、ホース4Aは、山部45と谷部46とから構成されている。
【0088】
このように、高圧空気生成ユニット5がノズル22よりも低い位置に配置される場合には、ホース4Aは、ノズル22よりも高い位置において、ピストン支持部59の第1の空間60aの容積Voよりも大きな内部空間43の容積を確保している。すなわち、異物除去装置1Aにおいては、ホース4Aの後端部41からホース4Aが下向きに変曲された変曲点L1までの内部空間43の容積Vh1をピストン支持部59の第1の空間60aの容積Voよりも大きくなるように設定されている。このため、高圧空気生成ユニット5による高圧空気を生成する際にホース4A内の空気がピストン支持部59内に吸気されても、ノズル22の先端から逆流した水がホース4Aの山部45を超えて高圧空気生成ユニット5側に流れることを防止することができる。これにより、異物除去装置1Aの性能を維持することができる。
【0089】
また、異物除去装置1Aは、ホース4Aの中間部44においてホース4Aが上向きに変曲された変曲点L2から高圧空気生成ユニット5と接続される前端部42までの内部空間43の容積Vh2が、ピストン支持部59の第1の空間60aの容積Voよりも大きくなるように構成されていることが好ましい。この構成によれば、たとえノズル22からホース4Aの谷部46内に水が浸入した場合であっても、高圧空気生成ユニット5の内部にまで水が逆流してしまうことがなく、異物除去装置1Aの性能を維持することができる。
【0090】
以上において本発明の実施形態の例を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものでなく、必要に応じて他の構成を採用することが可能である。
【0091】
上記の実施形態においては、ノズルユニット2のノズル22とホース4とを接合する部材としてジョイント部材3が設けられているが、ノズル22に対するホース4の姿勢を変更する必要がない場合であれば、ジョイント部材3を設けずにノズル22にホース4を直接取り付ける構成としてもよい。
【0092】
また、上述の例ではカメラ(可視光に限られない)への適用について記載したが、本発明を適用するセンサーは、これに限られない。LIDAE(レーザーレーダ)、ミリ波レーダ、超音波センサーなど、車両に取り付け可能なセンサーに対して本発明は適用可能である。
【0093】
また、異物除去装置が異物を除去する対象部位は、カメラのレンズに限られない。例えば、センサー素子の光学レンズ、光学レンズの前面を覆うカバー、センサーの通信窓として機能する部位を有する灯具、ミラー、バンパー、グリル、ドアノブ等の車両表装部品のカバー、車両室内にセンサーが搭載された場合の車両窓等、を包括する概念として規定される「隔壁」上に付着した異物を除去する異物除去装置に対して、本発明を適用することは可能である。なお、この隔壁は、透明部材(透光性)に限らず、超音波センサーやミリ波レーダ等においては透明でなくても良い。
【0094】
なお、上記の実施形態においては、異物除去装置の車載カメラへの適用について記載したが、本発明を適用する対象は、屋外で使用されるカメラであれば種類を問わない。例えば、航空機、鉄道、船舶、ロボット、屋外設置物、建築物等の外部に向けて露出した状態になるように取り付けられたカメラを含むことができる。
【0095】
本出願は、2015年6月30日出願の日本特許出願・出願番号2015−131789と、2015年6月30日出願の日本特許出願・出願番号2015−131790とに基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。