(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記特定手段は、前記測位失敗イベントに関連する位置と前記測位失敗イベントに関連する配達先住所とが所定の距離範囲内である場合に、前記取得手段が取得した位置を前記配達先住所の建物の入口位置として記憶する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の建物入口特定システム。
準天頂衛星からの衛星信号を受信可能な端末における衛星信号受信ログに基づいて、前記準天頂衛星から衛星信号喪失イベントに関連する位置および前記衛星信号喪失イベントが発生した時刻を取得する取得手段と、
配達員による配達に関する、配達先住所および配達時刻とが関連付けられた配達実行情
報とを取得する第2取得手段と、
前記取得手段が取得した時刻と前記第2取得手段が取得した前記配達時刻に基づいて、前記衛星信号喪失イベントに関連する配達先住所を決定し、前記取得手段が取得した位置を、前記配達先住所の建物の入口位置として記憶する特定手段と、
を備える建物入口特定システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、建物の入口を容易かつ精度良く特定可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、建物入口特定システムであって、
衛星測位端末の測位ログに基づいて、前記衛星測位端末における測位失敗イベントに関連する位置を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した位置を、建物の入口位置として記憶する特定手段と、
を備える。
【0007】
衛星測位に失敗した位置は建物内に入った位置と考えられるので、衛星測位端末からの測位ログを解析するだけで建物の入口位置を特定・記憶できる。
【0008】
衛星測位端末は、任意の衛星測位システムに基づいて測位するものであってよいが、準天頂衛星を用いた衛星測位システム(たとえば、準天頂衛星システム(みちびき))であることが好ましい。準天頂衛星を用いた測位システムにおいて天頂方向が開けていれば測位可能であり、測位失敗は天頂方向が閉ざされている、すなわち、建物内である確実性が向上するためである。
【0009】
なお本明細書において、準天頂衛星とは、準天頂軌道をとる任意の衛星のことを意味し、測位衛星以外も含む。また、準天頂衛星システムは、日本の宇宙開発戦略推進事務局によって構築された航法衛星システム(通称「みちびき」)を意味する。
【0010】
本態様において、測位失敗イベントに関連する位置とは、例えば、前記測位失敗イベントの直前に成功した衛星測位で得られた位置(衛星測位位置)である。また、測位失敗イベントに関連する位置は、直前に成功した衛星測位位置からジャイロセンサや加速度センサなどを用いて補完した測位失敗イベント発生時の位置や基地局測位によって得られる測位失敗イベント発生時の位置などのような、衛星測位以外の方法によって得られる測位失
敗イベント発生時の位置であってもよい。
【0011】
本態様において、取得手段は測位失敗イベント発生した時刻も取得し、特定手段は取得手段が取得した時刻を建物入口の通過時刻として、取得手段が取得した位置すなわち建物入口位置と関連付けて記憶してもよい。
【0012】
本態様において、配達員による配達に関する、配達先住所および配達時刻とが関連付けられた配達実行情報とを取得する第2取得手段をさらに備えてもよい。さらに、前記特定手段は、前記建物入口の通過時刻と前記配達時刻に基づいて、前記測位失敗イベントに関連する配達先住所を決定し、前記取得手段が取得した位置を、前記配達先住所の建物の入口位置として記憶してもよい。
【0013】
特定手段は、例えば、建物入口の通過時刻の直後の配達であって所定時間以内の配達に関する配達先住所を、測位失敗イベントに関連する配達先住所として決定してもよい。
【0014】
また、特定手段は、測位失敗イベントに関連する位置(すなわち建物入口の位置)と測位失敗イベントに関連する配達先住所が所定の距離範囲以内である場合に、取得手段が取得した位置を配達先住所の建物の入口として記憶してもよい。
【0015】
また、前記配達実行情報は、前記配達員が携帯する作業端末を介して入力されるものである場合、特定手段は、同一の配達員に携帯されている前記衛星測位端末および前記作業端末から得られる測位ログおよび配達実行情報とに基づいて、建物の入口位置を特定してもよい。どの配達員がどの端末を携帯しているかは、端末利用時の認証やユーザID入力などによって把握可能である。
【0016】
このようにすれば、建物の入口位置を、建物と関連付けて特定・記憶することができる。また、測位失敗の原因が建物内への進入以外である場合に、測位失敗イベントの発生位置を建物の入口として記憶しないことができる。また、配達員が配達の際に携帯する端末から得られる情報に基づいて建物の入口位置を特定するので、配達に用いる入口(荷物搬入口)などの分かりづらい入口を特定することができる。
【0017】
また、特定手段は、建物の位置を含む地図情報に基づいて、前記取得手段が取得した位置が、前記地図情報に含まれる建物の位置の所定の範囲(所定の距離以内)である場合に、前記取得手段が取得した位置を当該建物の入口位置として記憶してもよい。このようにすれば、配達実行情報がなくても、建物の入口位置を建物と関連付けて特定・記憶することができる。
【0018】
本発明の第二の態様に係る建物入口特定システムは、
準天頂衛星からの衛星信号を受信可能な端末における衛星信号受信ログに基づいて、前記準天頂衛星から衛星信号喪失イベントに関連する位置を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した位置を、建物の入口位置として記憶する特定手段と、
を備える。
【0019】
本態様において、準天頂衛星は測位衛星であってもよいし、測位衛星以外であってもよい。衛星信号喪失イベントに関連する位置は、信号喪失イベントの発生の直近(発生時を含む)に測位手段によって得られた位置を用いればよい。本態様においても、第一の態様と同様に、建物の入口位置がどの建物の入口位置であるかを特定して記憶してもよい。
【0020】
なお、本発明は、上記手段の少なくとも一部を含む建物入口特定システムとして捉えることもできる。本発明は、コンピュータが実行する建物入口特定方法として捉えることも
できる。また、本発明は、この方法をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム、あるいはこのコンピュータプログラムを非一時的に記憶したコンピュータ可読記憶媒体として捉えることもできる。上記手段および処理の各々は可能な限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、建物の入口を容易に特定できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施形態1>
[システム構成]
図1は、本発明の第1実施形態に係る建物入口特定システムの概略構成図である。
図1に示すように、建物入口特定システムは、情報処理装置100、測位端末200、作業端末300、配達管理サーバ400から構成される。測位端末200と作業端末300は、配達員が配達時に携帯する端末である。
【0024】
[測位端末]
測位端末200は、測位衛星からの信号を受信して測位を行う衛星測位端末である。本実施形態においては、測位端末200はGPS(Global Positioning System)、GLO
NASS(Global Navigation Satellite System)、準天頂衛星システム(Quasi-Zenith Satellite System)を併用するマルチGNSS端末である。測位端末200は、定期的に
測位を行い、かつ、測位結果や衛星信号の受信状況などを含む測位ログを作成する。測位端末200は、定期的に測位ログを情報処理装置100に送信する。
【0025】
測位ログには測位端末200をどの配達員が所持していたかが含まれていてもよい。測位端末200の使用に先立ってユーザ認証を行ったり、ユーザIDを入力したりすることで、測位端末200はどの配達員によって所持・利用されているかを把握できる。
【0026】
なお、測位端末200は、衛星測位以外、たとえば、基地局からの信号を用いた基地局測位や、ジャイロや加速度センサなど自律航法測位を利用して測位を行ってもよい。
【0027】
ここで、準天頂衛星システムについて簡単に説明する。準天頂衛星システムは、準天頂軌道をとる準天頂衛星「みちびき」からの測位信号を利用して測位を行う測位システムである。2018年現在4機の準天頂衛星が稼働しており、日本においては高仰角(天頂付近)に少なくとも1機は衛星が存在し常に衛星信号を受信できる。将来的には、7機体制になる予定である。また、準天頂衛星システムではL1S信号と呼ばれる補強信号を採用しており、この信号を利用することでサブメーター精度での測位が可能である。
【0028】
[作業端末]
作業端末300は、配達員が、配達作業に関する情報を参照・入力するための端末である。配達員は、作業端末300を操作して、配送先住所や配達時間指定などの配達に関する情報を配達管理サーバ400から取得して参照することができる。また、配達員は、作業端末300を操作して、荷物の配達が完了したことや持ち戻り(再配達)が発生したことを入力することができる。このような、配達に関する履歴情報は配達ログとして配達管理サーバ400で管理される。配達ログは、本発明における配達実行情報に相当する。
【0029】
[配達管理サーバ]
配達管理サーバ400は、配達に関する各種の情報を管理するサーバ装置である。配達管理サーバ400は、配達荷物ごとの、配達先住所、配達先氏名、配達時間指定、配達ステータスなどを管理する。配達管理サーバ400は、作業端末300に情報を提供したり、作業端末300から入力される情報に基づいて配達情報を更新したりする。配達管理サーバ400のハードウェア構成は通常のコンピュータと同様である。
【0030】
[情報処理装置]
情報処理装置100は、測位端末200の測位ログと作業端末300の配達ログとに基づいて建物の入口位置を特定して記憶する機能を有する。情報処理装置100のハードウェア構成は通常のコンピュータと同様であり、演算プロセッサ、主記憶装置、補助記憶装置、入力装置、出力装置、通信装置などを含む。情報処理装置100は、演算プロセッサがプログラムを実行することによって、建物の入口位置を特定する処理を実行する。
【0031】
(測位ログ)
測位ログ110は、測位端末200から得られる。本実施形態では、測位端末200はNMEA 0183仕様にしたがったメッセージをログとして蓄積するが、同様の情報が取得可能であればその他の仕様にしたがったログを用いてもよい。
【0032】
図2Aは、測位ログ110に含まれるGGAメッセージ21のフォーマットである。GGAメッセージ21は、メッセージID21a、時刻(UTC)21b、緯度21c、経度21d、位置決定品質21e、使用衛星数21f、水平精度21g、標高21h、ジオイド高21j、チェックサム21kを含む。
【0033】
ここで、位置決定品質21eには、「0:位置特定不可」、「1:標準測位」、「2:干渉測位」、「6:自律航法」のいずれかが格納される。「0:位置特定不可」は位置を取得できないことを示す。「1:標準測位」は標準測位サービス品質での測位であることを示す。「2:干渉測位」はDGPSを用いた高品質な測位であることを示す。「6:自律航法」は衛星信号に基づく測位ができない状況でジャイロや加速度センサなどから位置を推定する自律航法(デッドレコニング)による測位であることを示す。位置決定品質21eが「0:位置特定不可」または「6:自律航法」である場合に、測位端末200は衛星信号(のみ)に基づく測位ができなかったことが分かる。
【0034】
図2Bは、測位ログ110に含まれるRMCメッセージ22のフォーマットである。RMCメッセージ22は、メッセージID22a、時刻(UTC)22b、ステータス22
c、緯度22d、経度22e、移動速度・方位22f、日付22g、地磁気22h、モード22j、チェックサム22kを含む。モード22jは、「A:自律モード」、「D:干渉モード」、「E:推定(デッドレコニング)モード」、「N:無効データ」などが格納される。「A:自律モード」、「D:干渉モード」、「E:推定(デッドレコニング)モード」、「N:無効データ」は、GGAメッセージにおける「1:標準測位」、「2:干渉測位」、「6:自律航法」、「0:位置特定不可」にそれぞれ対応する。
【0035】
(配達ログ)
配達ログ120は、配達管理サーバ400から得られる。
図3は、配達ログ120の例を示す図である。
図3に示すように、配達ログ120は、荷物ID121、配達先住所122、配達先氏名123、配達ステータス124、更新日時125、配達員ID126を含む。配達ステータス124には、「出荷前」「配達中」「配達完了」「持ち戻り」などが格納される。更新日時125は、配達ステータス124を更新した日時である。配達員ID126は、配達ステータス124を更新した配達員のIDである。なお、
図3では、1つの荷物に対して最新の配達ステータス124・更新日時125・配達員ID126のみが格納されるように示してあるが、過去の配達ステータス・更新日時・配達員IDを蓄積してもよい。
【0036】
(建物入口特定処理)
処理部130は、測位ログ110と配達ログ120に基づいて、建物入口位置を特定する。
図4は、処理部130が実行する入口特定処理を示すフローチャートである。
【0037】
ステップS10において、情報処理装置100は、測位端末200から測位ログ110を取得する。なお、測位ログ110が既に取得済みであれば、ステップS10は省略してもよい。
【0038】
ステップS12において、処理部130は、測位ログ110の中から測位失敗イベントを検出する。ここで、測位失敗イベントとは、それまで衛星信号のみに基づく測位に成功していたが、衛星信号のみに基づく測位が失敗に切り替わった事象を意味する。処理部130は、例えば、GGAメッセージの位置決定品質21eが、「1:標準測位」または「2:干渉測位」から、「0:位置特定不可」に切り替わった時点を、測位失敗イベント発生として検出する。なお、測位失敗イベントの検出は、GGAメッセージではなく、RMCメッセージに基づいて行ってもよい。
【0039】
また、測位端末200が自律航法(デッドレコニング)に対応している場合には、GGAメッセージの位置決定品質21eが「1:標準測位」または「2:干渉測位」から「6:自律航法」に切り替わった時点を、測位失敗イベント発生として検出してもよい。同様に、RMCメッセージのモード22jが、「A:自律モード」または「D:干渉モード」、「E:推定モード」に切り替わった時点を、測位失敗イベント発生として検出してもよい。
【0040】
ステップS14において、処理部130は、測位失敗イベントの発生位置(測位失敗イベントに関連する位置)を取得する。具体的には、処理部130は、測位失敗イベント発生の直前に成功した測位位置を、測位失敗イベントの発生位置P
LOSSとして取得する。ただし、測位端末200が、測位に失敗した場合の位置(緯度・経度)として直前に成功した測位位置を出力する場合には、処理部130は、測位失敗イベントが発生したメッセージにおける位置を、測位失敗イベントの発生位置として取得してもよい。また、測位端末200が自律航法に対応している場合にも、測位失敗イベントが発生したメッセージにおける位置を、測位失敗イベントの発生位置として取得してもよい。
【0041】
測位失敗イベントが発生した位置は、測位端末200の天頂方向が塞がれている状態であることを意味する。したがって、測位失敗イベントの発生位置P
LOSSは、屋外から屋内への移動が発生した時点であると言える。なお、都市部においては屋外であっても建物の近くでは衛星信号を受信できず測位に失敗することもあるが、準天頂衛星システムを利用しているので建物の近くであっても測位に成功する可能性が高く、したがって、測位失敗イベントの発生は屋内への移動が原因である可能性が高いと言える。すなわち、測位失敗イベントの発生位置P
LOSSは、建物の入口位置であるといえる。
【0042】
ステップS15において、処理部130は、測位失敗イベントが発生したメッセージにおける時刻を、測位失敗イベント発生時刻T
LOSSとして取得する。
【0043】
ステップS16において、処理部130は、測位失敗イベントの発生位置P
LOSS付近の建物を特定する。すなわち、処理部130は、位置P
LOSSがどの建物の入口であるかを特定する。
【0044】
図5は、ステップS16の建物特定処理の詳細な流れを示すフローチャートである。
【0045】
ステップS161において、処理部130は、配達ログ120を取得する。
【0046】
ステップS162において、処理部130は、測位失敗イベント発生時刻T
LOSSの直後の配達完了レコードを取得する。配達完了時刻は、配達ログ120における更新日時125を参照することで把握できる。なお、配達完了レコードだけでなく、持ち戻りレコードも取得対象に含めてもよい。持ち戻りが発生した際も、配達員は建物内に入っているため、建物内への進入という観点では配達完了レコードと同一視できるからである。
【0047】
ここで、処理部130は、測位失敗イベントが発生した測位端末200の所持者(配達員)と、同一の所持者に関する配達ログのみを対象として、測位失敗イベント発生直後の配達完了レコードを取得するとよい。
【0048】
ステップS163において、処理部130は、測位失敗イベント発生時刻T
LOSSと配達時刻の差がしきい値以内であるか否か判定する。このしきい値は、建物の入口に入ってから配達を完了するまでにかかる時間に基づいて設定するとよい。また、このしきい値は、システム全体で共通の値であってもよいし、配送先建物ごとに定められた値であってもよい。また、このしきい値は配達先建物の規模あるいは種別(例えば、複合商業施設、高層マンション、中低層マンション、学校など)ごとに定められた値であってもよい。
【0049】
測位失敗イベント発生時刻T
LOSSと配達完了時刻の差がしきい値よりも大きければ(S163−NO)、処理部130は測位失敗イベントに対する建物が存在しないという結果を返す(S166)。この場合、配達先の建物に入ったために測位に失敗したわけではなく、配達先ではない建物内に入って測位に失敗したか、または、屋外にいるにもかかわらず測位に失敗したことが想定される。
【0050】
測位失敗イベント発生時刻T
LOSSと配達完了時刻の差がしきい値以内であれば(S163−YES)、処理はステップS164に進む。ステップS164では、処理部130は、測位失敗イベント発生位置P
LOSSと配達先の住所との距離差が所定の距離範囲内であるか否かを判定する。所定の距離範囲のしきい値は、システム全体で共通の値であってもよいし、配送先建物に応じて異なる値であってもよい。例えば、建物の大きさや、入口付近の屋根の存在有無などを考慮してしきい値が設定されてもよい。
【0051】
測位失敗イベント発生位置P
LOSSと配達先住所との距離差がしきい値よりも大きけ
れば(S164−NO)、処理部130は測位失敗イベントに対する建物が存在しないという結果を返す(S166)。この場合、配達先の建物に入ったために測位に失敗したわけではなく、配達先ではない建物内に入って測位に失敗したことが想定される。
【0052】
測位失敗イベント発生位置P
LOSSと配達先住所との距離差がしきい値以内であれば(S164−YES)、処理部130は、当該配達先の建物を、測位失敗イベントに関連する建物Bであると特定する(S165)。
【0053】
図4のフローチャートに戻る。ステップS18で、処理部130は、ステップS16で特定して測位失敗イベントの発生位置P
LOSSを、ステップS16で特定された建物Bの入口であると特定して、建物入口DB140に記憶する。なお、ステップS16で測位失敗イベントに対応する建物Bが得られなかった場合には、処理部130はステップS18では何も行わない。
【0054】
図6は、建物入口DB140の例を示す図である。建物入口DB140は、建物ID141、入口位置142、入口通過時刻143を含む。建物ID141には、ステップS16で特定された建物Bの識別子が格納される。入口位置142には、ステップS14で取得された位置P
LOSSが格納される。入口通過時刻143には、ステップS15で取得された時刻T
LOSSが格納される。
【0055】
なお、ここでは上記の処理によって得られる建物入口位置をそれぞれ建物入口DB140に格納しているが、これらのデータにさらに加工処理を施して建物入口DB140に格納してもよい。例えば、建物付近の領域を小領域(例えば、1辺が数メートル程度の正方形)に分割し、小領域内に所定数個以上のデータが建物入口として検出されている場合に、当該小領域を建物の入口位置として決定してもよい。このしきい値は固定値であってもよいし、建物に対して検出された入口位置のデータ数に応じた数であってもよい。また、建物入口として検出された位置に対してクラスタリング処理を施し、得られたクラスタの中心を建物の入口位置として決定してもよい。クラスタリングアルゴリズムは特に限定されず、DBSCANやk−meansなどの任意の手法を採用可能である。このように入口位置に対して加工処理を施す場合には、入口通過日時のデータを保持する必要はない。また、建物入口DB140は一つの独立したデータベースである必要はなく、地図情報DB内の建物に関連付けて入口位置が格納されてもよい。
【0056】
[本実施形態の有利な効果]
本実施形態によれば、建物の入口位置を特定することができる。建物入口位置の特定に必要なデータは、配達員が携帯する測位端末200から得られる測位ログと、配達員が通常の配達作業において入力する配達ログだけであるので、建物入口特定のために配達員に余計な手間がかからない。また、建物の入口位置の特定に手作業での処理が不要であり、コンピュータによる計算処理で完結するため、大量のデータを処理可能である。また、特定した建物の入口位置を電子的に記録することができる。
【0057】
測位端末200は、準天頂衛星システムを利用して測位するので、測位に失敗するのは天頂付近が閉ざされたとき、すなわち建物の屋内に入った時である可能性が高い。さらに、準天頂衛星システムのL1S補強信号を利用することで、測位精度が向上する。このようにして、測位端末200が測位に失敗した位置を、建物の入口候補として高精度に取得することができる。
【0058】
本実施形態では、さらに、測位失敗時刻と配達ログにおける配達完了時刻とを付き合わせて、測位失敗位置と対応する配達先住所(建物)を決定している。したがって、測位失敗位置がどの建物の入口に相当するか把握可能であるとともに、建物に入った以外の理由
で測位に失敗したことも把握可能である。
【0059】
また、本実施形態では、配達員が測位端末200を所持していることから、配達員が建物に入る際の入口、すなわち荷物搬入口を特定することができる。
【0060】
[変形例]
上記の説明において、測位端末200と作業端末300は異なる端末であるものとして説明したが、作業端末300が測位機能を有していても構わない。
【0061】
また、上記の説明において、測位端末200と作業端末300を配達員が所持するものとして説明したが、配達員以外の作業員が所持してもよい。その場合、作業員は、作業端末300を介して、どの建物(住所)にいつ進入したかという情報を入力する。どの建物にいつ進入したかが分かれば、上記と同様にして建物の入口を特定することができる。
【0062】
<実施形態2>
第1実施形態では、情報処理装置100は、測位ログと配達ログを用いて建物の入口位置を特定したが、本実施形態では、配達ログを用いずに建物の入口位置を特定する。
【0063】
図7は、本実施形態にかかる建物入口特定システムの構成を示す図である。情報処理装置100の処理部130は、測位ログ110と配達ログ120ではなく、測位ログ110と地
図DB150を参照して建物の入口位置を特定する。
【0064】
地
図DB150には、緯度経度情報と住所(番地情報)との対応関係および住所(番地情報)と建物との対応関係が記録されており、地
図DB150を参照して緯度経度情報から建物に変換することが可能である。また、地
図DB150において、建物の位置は、点(1つの緯度経度情報)で表されていてもよいし、領域(例えば、多角形の各頂点の緯度経度情報)で表されていてもよい。
【0065】
図8は、本実施形態における建物入口特定処理の流れを示すフローチャートである。本実施形態における建物入口特定処理は、第1実施形態(
図4)と基本的に同様であるが、測位失敗イベント発生時刻の取得処理(S15)がない点と、測位失敗位置P
LOSSに対応する建物Bを特定する処理(S26)が第1実施形態と異なる点で、相違する。
図9は、本実施形態における建物特定処理S26の詳細を示すフローチャートである。
【0066】
ステップS261において、処理部130は、地図データ150を参照して、測位失敗位置P
LOSSに最も近い建物を特定する。例えば、処理部130は、測位失敗位置P
LOSSの位置(緯度経度)に最も近い番地を求め、当該番地に存在する建物を検索すればよい。あるいは、処理部130は、測位失敗位置P
LOSSの位置(緯度経度)に最も近い位置(緯度経度)に存在する建物を検索してもよい。
【0067】
ステップS262において、処理部130は、測位失敗位置P
LOSSとステップS261で特定した建物とのあいだの距離がしきい値以内であるか否かを判定する。地
図DB150において建物の位置が点で表されている場合には、測位失敗位置P
LOSSと建物位置の2点間の距離を利用すればよい。地
図DB150において建物の位置が領域として定義されていれば、測位失敗位置P
LOSSと建物領域との最短距離を上記判定における距離として利用すればよい。この距離がしきい値以内であれば(S262−YES)、ステップS263に進み、処理部130は、ステップS261で特定した建物を測位失敗位置P
LOSSに関連する建物Bとして特定する。一方、上記の距離がしきい値よりも大きければ(S262−NO)、ステップS264に進み、処理部130は、測位失敗位置P
LOSSに関連する建物が存在しないと判断する。
【0068】
そして、ステップS28において、処理部130は、ステップS24で特定した測位失敗イベントの発生位置P
LOSSを、ステップS26で特定された建物Bの入口であると特定して、建物入口DB140に記憶する。
【0069】
なお、処理部130は、測位失敗イベントの発生時刻も取得して、その時刻を建物入口の通過時刻として、建物の入口位置と関連付けて建物入口DB140に記憶してもよい。また、第1実施形態で述べたように、得られた入口位置に対してさらに加工処理を施しても構わない。
【0070】
本実施形態によって、第1実施形態と同様に建物の入口位置を特定することができる。本実施形態では、収集する必要があるデータは測位端末200の測位ログだけであり、配達と関連しない状況でもデータ収集が可能である。すなわち、データ収集を配達員以外の任意の作業者で行うことができる。
【0071】
<実施形態3>
第1および第2実施形態では、測位失敗位置P
LOSSを建物と関連付けて記憶しているが、本実施形態では、測位失敗位置P
LOSSを建物と関連付けずに記憶する。
【0072】
本実施形態におけるシステム構成は、第2実施形態(
図7)と同様であるが、地
図DB150は省略可能である。
図10は、本実施形態における建物入口特定処理の流れを示すフローチャートである。
【0073】
ステップS30からS34までの処理は、第1実施形態(
図4)におけるステップS10〜S14までの処理と同様であるため説明を省略する。ステップS38において、処理部130は、ステップS34で取得した測位失敗位置P
LOSSを建物の入口位置として、建物入口DBに記憶する。なお、第1実施形態で述べたように、得られた入口位置(測位失敗位置)に対してさらに加工処理を施しても構わない。
【0074】
本実施形態では、建物入口DB140に格納されている入口位置がどの建物の入口であるかは明示されていない。しかしながら、例えば、情報処理装置100あるいはその他の装置が、地図情報と重畳させて建物入口位置をグラフィカル表示する場合には、建物入口DB140における入口位置と建物との対応付けは必要ではない。また、建物入口DB140に格納されている建物入口位置がどの建物の入口であるか必要であれば、事後的に、第1実施形態や第2実施形態と同様の処理を行って、対応する建物を特定しても構わない。
【0075】
<実施形態4>
第1から第3実施形態では、測位失敗イベントが発生した位置を建物の入口とみなしている。本実施形態では、測位失敗イベントではなく、準天頂衛星からの信号を喪失(ロスト)した位置を建物の入口とみなす。
【0076】
本実施形態におけるシステム構成は、第1実施形態(
図1)と同様である。なお、測位ログ110には、測位端末200が信号を受信している衛星に関するメッセージが含まれる。たとえば、GSVメッセージには、信号を受信している衛星に関する、衛星番号、衛星仰角、衛星方位角、キャリアノイズ比などが含まれる。本実施形態において測位ログ110は、衛星信号の受信状況を示すログ(衛星信号受信ログ)と捉えることもできる。
【0077】
図11は、本実施形態における建物入口特定処理の流れを示すフローチャートである。
【0078】
ステップS40において、処理部130は、測位ログ110を取得する。ステップS42において、測位ログ110が取得された位置および時刻付近において、天頂付近に存在する衛星SAT
Zの衛星番号を特定する。どの衛星が天頂付近に存在するかは、公表されている測位衛星の軌道情報に基づいて特定可能である。
【0079】
ステップS44において、処理部130は、衛星SAT
Zの衛星信号喪失イベント発生時の位置P
LOSSを特定する。ここで、衛星信号喪失イベントとは、それまで衛星信号を受信できていたが、衛星信号が受信できなくなった事象を意味する。処理部130は、例えば、GSVメッセージに、衛星SAT
Zの衛星番号がそれまで含まれていたが、含まれなくなった時点を、信号喪失イベントとして検出する。なお、信号喪失イベントの検出は、GSVメッセージではなく、GSAメッセージに基づいて行ってもよい。
【0080】
ステップS45以降の処理は、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0081】
本実施形態によれば、準天頂衛星から衛星信号を受信できなくなった位置を、建物の入口(候補)とみなしている。準天頂衛星からの衛星信号が受信できているあいだ測位端末200は屋外に位置し、受信できなくなった時点で屋内に入ったと考えられる。したがって、本実施形態によっても、第1実施形態同様に建物入口位置を特定できる。
【0082】
なお、本実施形態において、信号喪失を検出する対象の準天頂衛星は必ずしも測位衛星である必要はなく、任意の準天頂衛星であってよい。したがって、測位端末200の代わりに、準天頂衛星からの衛星信号を受信可能であり、かつ、衛星信号受信ログを出力する端末を用いても構わない。ただし、測位衛星であれば、既存のNMEAメッセージに基づいて処理が行えるので、システムの実装が容易であるという利点がある。
【0083】
また、本実施形態は、第1実施形態以外にも第2または第3実施形態との組み合わせで実施しても構わない。