【文献】
SHARP, Daniel .C., et al.,Effect of harvest maturity on the chemical composition of Cascade and Willamette Hops,Journal of the American Society of Brewing Chemists,2014年12月12日,Vol. 42, No. 4,p. 231-238
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ビールテイスト飲料においては、麦芽、ホップなどの原料がその品質に大きな影響を及ぼす。例えば、ホップはビールテイスト飲料に苦味を付与するだけでなく、その爽やかなホップ香やコクも付与する。苦味はホップ中のα酸など、ホップ香はテルペン類など、コクはポリフェノールなど、それぞれ種々の成分から付与されている。しかしながら、ホップは農作物であるため、栽培要因や収穫後の保管条件等により品質差が生じることが把握されている。
【0003】
例えば、非特許文献1では、ザーツ(Saaz)ホップについて、各栽培年の天候と苦味成分であるα酸との関係を解析している。データより、苦味成分であるα酸の値が、温度や湿度、照射日数等の天候要因によって大きく変動していることが確認されている。
【0004】
また、非特許文献2は、ホップの熟度や収穫時期が、ホップの品質にどのような影響を及ぼすかについて調査したものであり、カスケード(Cascade)とウィラメット(Willamette)についてその結果が開示されている。具体的には、標準収穫日より10〜14日間早い時期(Early)、標準収穫日(Typical)、標準収穫日より5〜10日間遅い時期(Late)の計3ポイントにおいて収穫したホップについて、その構成成分を測定したところ、α酸、β酸、コフムロンは収穫時期による違いはあまりなく、年々の栽培条件等が大きく影響すると記載されている。一方、芳香オイル成分は、収穫時期がEarlyのものはTypicalとLateに比べて少ないものであった。
【0005】
さらに、非特許文献3は、ホップの精油成分の最高値は苦味質が最高に達した後に現れる点を指摘したものであり、ハラタウアー(Hallertaua)中早とファグル(Fuggle)とザーツ(Saaz)についてその結果が開示されている。具体的には、ハラタウアーとファグルは、8月18日、8月31日、9月9日に収穫したものは芳香オイル成分であるリナロール(Linalool)が経時的に増加しているが、ザーツでは8月18日、8月31日、9月9日に収穫したものはリナロールが徐々に減少しており、品種によってリナロール含有量とホップ収穫日の早遅との関係は一様ではないものであった。
【0006】
一方、特許文献1には、収穫後乾燥することなく凍結した生ホップ若しくはその粉砕物を、ホップ原料として用いることで、新鮮生ホップの香気成分であるリナロール等を多量に含有し、かつ、ホップの酸化により生成するHDE(Humulene Diepoxide)等がごく少量に抑えられた、フローラル様、青草様の新鮮な香りをもつ芳香性の高い発酵麦芽飲料となることが開示されている。
【0007】
特許文献2には、収穫後乾燥させたホップ毬花を、10〜20℃の中低温下で、3ヶ月以上熟成を行うことにより、ホップ毬花中の香気成分の生成のための酸化反応を有意に促進し、ホップに含まれる香味成分を増加させ、しかも、汗臭や他の望ましくない酸化臭成分及び樹脂様臭などを有意に抑制させることができ、ホップ香気成分を豊富化した発酵アルコール飲料を製造することができると開示されている。また、特許文献3には、かかる熟成ホップを調製するに際しては、ホップ中の、特定の苦味成分及び/又は香気成分の割合を指標として調整することにより、苦味と旨味が調和した穏やかな苦味を付与する後熟ホップを製造することができると開示されている(特許文献3参照)。
【0008】
また更に、特許文献4には、植物にアシルシクロヘキサンジオン化合物の群に由来する成長調節性化合物を散布処理等することで、植物中のフラボノイド及びフェノール系成分の含有量を増加させることができると開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、非特許文献1では、香り成分やコク成分についての報告はなく、ビールテイスト飲料の品質へ影響を及ぼすホップ原料品質のばらつきとその原因(栽培要因)が詳細には明らかになっていない。また、非特許文献2には収穫時期を遅らせて収穫したホップは芳香成分が豊富になると記載されているもののコク成分については如何なる記載もなく、当該ホップは一般には市場に出回らないものであり、またホップ品質の劣化によって、それを用いて得られたビールテイスト飲料の香味品質に満足できないおそれもある。またさらに、非特許文献3から、ホップの品種によって収穫日と芳香成分の含有量の傾向が異なることが明らかであり、収穫日とホップ品質の関係は一様ではないことが分かる。
【0012】
また、生育中や収穫後に何らかの処理を施す場合には、その処理のための装置や設備を別途用意する必要があり、作業が煩雑であったり経済的ではないという課題があった。
【0013】
本発明の課題は、ホップの品質を調整する一つの要因として、ホップ「外観」に着目し、これが、ビールテイスト飲料の品質へ及ぼす影響を明らかにし、所望のビール品質を安定的に造り込むことができるホップペレット、該ホップペレットの製造方法、及び該ホップペレットを原料とするビールテイスト飲料又はホップ含有組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
通常ホップペレットは、一つの産地において、異なる農場でホップ生産者が様々な収穫時期に収穫したホップが多数集められブレンドされた上で製造される。ところで、ホップは収穫時期によって色相が変化することから、本発明者らは、色相によるホップの品質変化に着目して鋭意検討した結果、早期に収穫された、特定の色相を呈するホップ毬花を一定量以上使用してペレットを調製したところ、該ペレットを用いて得られるビールテイスト飲料がコクやうまみ、甘味に寄与するとされるプロアントシアニジンを多く含む点で優れたものとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
本発明は、下記〔1〕〜〔4〕に関する。
〔1〕 CIE Lab表色系によるa
*の値が-0.5未満を満足する色相を呈するホップ毬花(E・M)を50重量%以上含有するホップペレット。
〔2〕 CIE Lab表色系によるa
*の値が-0.5未満を満足する色相を呈するホップ毬花(E・M)を、原料として用いるホップ毬花の50重量%以上を使用することを特徴とする、前記〔1〕記載のホップペレットの製造方法。
〔3〕 前記〔1〕記載のホップペレットを使用することを特徴とする、ビールテイスト飲料の製造方法。
〔4〕 前記〔1〕記載のホップペレットを使用することを特徴とする、ホップ含有組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明のホップペレットを用いて得られたビールテイスト飲料は、コクやうまみ、甘味に寄与するとされるプロアントシアニジンを多く含む点で優れたものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のホップペレットは、CIE Lab表色系によるa
*の値が-0.5未満を満足する色相を呈するホップ毬花(「ホップ毬花(E・M)」と表記する)を、原料として50重量%以上用いたものであることを特徴とする。以降、本明細書において、ホップ毬花のことを単に「ホップ」と記載することもある。なお、本明細書において「〜」を用いて範囲を示す際には、その両端の数字が含まれることとする。
【0019】
一般に、ホップはホップ中のα酸量が最高含有量となる日を収穫開始日として収穫が開始され、通常25日間程度で収穫が終わる。また、ホップは経時的に外観が黄変するため、通常の収穫日程期間内であっても収穫時期を前倒して、例えば収穫開始日より15日以内に収穫することが多い。一方、このように前倒しして収穫されたホップは、見た目では色調が殆ど同じであることから、これらを区別なく混合して得られたホップペレットは見分けが付き難いものである。しかしながら、収穫時期を前倒しして得られたものであっても、本発明者らは、特定の色調を呈するホップを特定量用いてホップペレットとすることにより、得られたホップペレットを原料として用いたビールテイスト飲料が優れた呈味を奏することを見出した。即ち、本発明は、特定の色調を呈するホップとして、収穫開始日から一定の早い段階で、好ましくは収穫開始日より15日以内に収穫したホップの中から、CIE Lab表色系によるa
*の値が特定の数値となる色相を指標として、ホップ毬花(E・M)を選択して用いることに基づくものである。なお、本明細書において、ホップ毬花の色相とは、ホップ毬花を乾燥し粉砕したものの色相であり、例えば、後述の実施例に記載の方法によって評価することができる。
【0020】
本発明で用いることのできるホップとしては、その産地、品種に特に限定はなく、公知のアロマホップ、ビターホップ等が用いられる。具体的には、アロマホップとしてHallertauer Mittelfrueh、Hallertauer Tradition、Hersbrucker、Perle、Tettnanger、Cascade、Saaz、Sladekなどが、ビターホップとしてNorthern Brewer、Herkules、Magnum、Nugget、Taurus、Galaxy、Targetなどが例示される。また、その部位としては、苞や葉を含んでいてもよく、少なくとも毬花のルプリン部分が含まれていれば特に限定はない。
【0021】
市販のホップペレットは、CIE Lab表色系によるa
*の値が正の数であったり、負の数であったりと一概には設定されないものである。しかし、本発明で選択されるホップ毬花(E・M)は、CIE Lab表色系によるa
*の値が-0.5未満、好ましくは-1以下であり、緑寄りの色相を呈する。
【0022】
本発明で用いるホップ毬花(E・M)は、CIE Lab表色系によるa
*の値が前記数値となるものであればよいが、CIE Lab表色系によるb
*の値は、好ましくは35未満、より好ましくは33以下の正の数を示すものが好ましく、それほど黄色味が強いものは好まれない。なお、市販のホップペレットは、b
*の値が通常32〜40程度であるが、多くは35以上を呈する。
【0023】
また、ホップ毬花のCIE Lab表色系によるL
*の値は通常正の数であり、収穫時期が変動すると数値は変動するものの一定の傾向は見られない。いずれにせよ、明度は高い。本発明で用いるホップ毬花(E・M)のL
*の値は、好ましくは50以上、より好ましくは55以上、更に好ましくは60以上である。なお、市販品のホップペレットは、L
*の値が通常45〜55程度であり、50付近のものが多く存在する。
【0024】
また、ホップ毬花をCIE Lab表色系とは異なるCIE Lch表色系で表した場合、CIE Lch表色系によるc
*の値は通常正の数であり、収穫時期が変動すると数値は変動するものの一定の傾向は見られない。いずれにせよ、彩度は高い。本発明で用いるホップ毬花(E・M)のc
*の値は、好ましくは30以上である。なお、市販品のホップペレットは、c
*の値が正の数であり、通常32〜40程度である。
【0025】
ホップ毬花のCIE Lch表色系によるhの値は、通常正の数であり、収穫時期が早いほど高い値を示す。本発明で用いるホップ毬花(E・M)のhの値は、好ましくは90°以上、より好ましくは94°以上、更に好ましくは95°以上である。なお、CIE Lch表色系によるhの値とは色相角度であり、市販品のホップペレットのhの値は通常85°〜94°程度である。
【0026】
本発明のホップペレットは、前記で規定したような色相を有するホップ毬花(E・M)を原料として用いるのであれば、その他の原料は特に限定されない。原料全体における前記色相のホップ毬花(E・M)の使用量は、ビールテイスト飲料にコクやうまみ、甘味に寄与するとされるプロアントシアニジンを多く含ませる観点から、50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上であり、本発明のホップペレットを安定的に多量に調達する観点から、好ましくは100重量%以下、より好ましくは90重量%以下、更に好ましくは80重量%以下である。なお、通常ホップペレットは、一つの産地において、異なる農場でホップ生産者が様々な収穫時期に収穫したホップが多数集められブレンドされた上で製造される。前記色相のホップ毬花(E・M)は、鮮やかな緑寄りのホップ外観となり、収穫が早すぎると苦味成分のα酸や香り成分が少ない傾向にあるためホップ生産者が敬遠するものである。このため、前記色相のホップ毬花(E・M)を選択的に集めて調製しない限り、原料全体における前記色相のホップ毬花(E・M)の使用量が50重量%以上となることはない。
【0027】
また、本発明のホップペレットは、前記で規定したような色相を有するホップ毬花(E・M)を原料として特定量用いるのであれば、その調製方法は限定されない。例えば、前記で規定したような色相を有するホップ毬花(E・M)を特定量含有する原料を、打錠機を用いてペレタイジングすればよい。
【0028】
一般には、ホップは収穫された後、腐敗することを防止するために、乾燥して水分を飛ばす。収穫時に約80%程度ある水分を15%以下、好ましくは11%以下に低減させた状態で貯蔵する。乾燥は65℃以下、好ましくは60℃以下で行う。本発明においては、豊富に含むプロアントシアニジンを酸化させない観点から、水分を好ましくは15%以下、より好ましくは11%以下に低減したホップ毬花(E・M)を用いることが望ましい。一方で、乾燥したホップが裂ける等の破損を来たさないようにする観点から、水分は好ましくは9%以上、より好ましくは10%以上であるホップ毬花(E・M)を用いることが望ましい。
【0029】
かくして得られた本発明のホップペレットは、CIE Lab表色系によるa
*の値が好ましくは-0.5未満、より好ましくは-1以下であり、好ましくは-4以上、より好ましくは-3.5以上である。CIE Lab表色系によるb
*の値が好ましくは35未満、より好ましくは33以下であり、好ましくは25以上、より好ましくは30以上である。また、CIE Lch表色系によるhの値が好ましくは90°以上、より好ましくは94°以上、更に好ましくは95°以上であり、好ましくは100°以下、より好ましくは98°以下である。また、前記の値は、ホップ毬花(E・M)の使用量に応じて変動するものであるが、前記範囲内となることが好ましい。
【0030】
本発明はまた、CIE Lab表色系によるa
*の値が-0.5未満を満足する色相を呈するホップ毬花(E・M)を、原料として用いるホップ毬花中50重量%以上を使用することを特徴とする、ホップペレットの製造方法を提供する。ここで、原料として用いるホップ毬花とは、原料として用いるホップ毬花の総使用量を意味する。
【0031】
本発明のホップペレットの製造方法においては、前記した色相のホップ毬花(E・M)を原料として特定量用いるのであれば、原料の種類、量、使用割合、及び、ペレタイジングの方法等については、本発明のホップペレットの項を参照して用いることができる。
【0032】
また、本発明は、本発明のホップペレットを使用することを特徴とする、ビールテイスト飲料の製造方法を提供する。
【0033】
本明細書における「ビールテイスト飲料」とは、ビール様の風味をもつ炭酸飲料をいう。つまり、本明細書のビールテイスト飲料は、特に断わりがない場合、酵母による発酵工程の有無に拘わらず、ビール風味の炭酸飲料を全て包含する。具体的には、ビール、発泡酒、その他雑酒、リキュール類、ノンアルコール飲料などが挙げられる。
【0034】
本発明のビールテイスト飲料の製造方法においては、本発明のホップペレットを使用する工程を含む以外は、当業者に知られる通常の方法に従って行なうことができる。例えば、麦芽等の麦、他の穀物、でんぷん、及び糖類からなる群より選ばれる少なくとも1種に加え、必要に応じ、苦味料、色素などの原料を、仕込釜又は仕込槽に投入し、必要に応じてアミラーゼなどの酵素を添加し、糊化、糖化を行なわせた後、穀皮等を濾過により取り除いて麦汁を得、次いで得られた麦汁に、本発明のホップペレットを加えて煮沸し、清澄タンクにて凝固タンパク質などの固形分を取り除いて、清澄麦汁を得る。これらの糖化工程、煮沸・清澄化工程、固形分除去工程などにおける条件は、公知の条件を用いればよい。
【0035】
次いで、アルコール飲料の場合には、前記で得られた清澄麦汁に酵母を添加して発酵を行なわせ、必要に応じ濾過機などで酵母を取り除いて製造することができる(発酵工程ともいう)。発酵条件は、知られている条件を用いればよい。また、発酵開始後に前記で選別した本発明におけるホップ毬花(E・M)やそれらを含むホップペレットを添加してもよい。あるいは、発酵工程を経る代わりに、スピリッツなどアルコール分を有する原料を添加してもよい。更に、貯酒、必要により炭酸ガスを添加して、濾過・容器詰め、必要により殺菌の工程を経て、アルコールビールテイスト飲料を得ることができる。
【0036】
一方、ノンアルコール飲料の場合、例えば、前記発酵工程を経ることなく、上記固形分除去工程に次いで、前記で得られた清澄麦汁をそのまま貯蔵、炭酸ガスを添加して、濾過・容器詰め、必要により殺菌の工程を経て、製造することができる。あるいは、前記アルコール飲料の発酵工程の後、ビール膜処理や希釈などの公知の方法によりアルコール濃度を低減させることによって、ノンアルコールビールテイスト飲料を得ることもできる。
【0037】
かくして、本発明のホップペレットを用いることで、コクやうまみ、甘味に寄与するとされるプロアントシアニジンを多く含む点で優れるビールテイスト飲料を効率良く造り込むことが可能になるという優れた効果が奏される。本明細書において、プロアントシアニジンとしては、特に限定はないが、例えば、プロシアニジンB1、プロシアニジンB2、プロシアニジンC1が例示される。
【0038】
また、本発明は、本発明のホップペレットを使用することを特徴とする、ホップ含有組成物の製造方法を提供する。
【0039】
本明細書における「ホップ含有組成物」とは、本発明のホップペレットから抽出された組成物をいい、さらにその組成物の二次加工品を含む。一例として、エタノールを溶剤としたホップエキスや、炭酸ガスを溶剤としたホップエキス(乾燥した亜臨界状態または超臨界状態の二酸化炭素を溶剤に用いて得られたホップエキス(特許第3155003号、特許第3513877)も含む。)や、イソ化ホップ、還元ホップ、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップなどのホップ加工品が挙げられる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0041】
試験例1(ホップ毬花の色相)
2011年、2012年、2013年、及び2014年産のホップ原料(品種:Saaz、産地:チェコ)について、収穫時期の順に、収穫開始日に収穫されたものを「E群」、収穫開始日から10日後に収穫されたものを「M群」、収穫開始日から25日後に収穫されたものを「L群」、収穫開始日から50日後に収穫されたものを「SL群」として群分けし、以下の条件に従って色相を測定した。なお、前記群分けに収穫年度の下二桁を併記して収穫年度と収穫時期を表記する。例えば、2013年産の「E群」は、「13E」のように示す。また、サンプルの前処理として、それぞれの群の乾燥毬花をコーヒーミルで粉砕し、その粉砕物をそのまま測定に供した。測定結果を表1及び
図1に示す。また、市販のザーツ種ホップペレットとして、2013年に収穫された様々な圃場のホップを混合後、ペレット加工されたものについても同様に評価した。
<色相測定条件>
表色系:CIE Lab表色系
測定機器:分光測色系 CM−2002(ミノルタ社製)
視野角:10°視野
光源:D65
解析ソフト:SpectraMagic NX(ミノルタ社製)
【0042】
【表1】
【0043】
表1及び
図1より、「11E群」、「11M群」、「12E群」、「12M群」、「13E群」、「13M群」、「14E群」及び「14M群」は、CIE Lab表色系によるa
*の値が-0.5未満であり、各年度の他の群とは大きく相違するものであった。また、CIE Lch表色系によるhの値が91.12°から96.69°であり、年度内での対比から、それぞれ「L群」及び「SL群」とは大きく相違するものであった。よって、「11E群」、「11M群」、「12E群」、「12M群」、「13E群」、「13M群」、「14E群」及び「14M群」は、いずれも他の群に比べて数値上の差異が見られ、他の時期に収穫されたものと外観上相違することが分かる。また、2012年度内で対比すると、「12E群」、「12M群」のように選択されたホップ毬花は、様々なホップを混合して加工された市販ペレットと色相が異なり、なかでも、CIE Lab表色系によるa
*の値やCIE Lch表色系によるhの値が大きく相違することが明らかである。
【0044】
試験例2(ホップ毬花のコク成分)
試験例1と同様にして群分けしたホップ毬花について、試験例1と同様に前処理を行ってから以下の条件に従って、コク成分(プロシアニジンB1、プロシアニジンB2、プロシアニジンC1)の含有量及びポリフェノール総量を測定した。なお、前記群分けしたホップの表記は試験例1と同様とする。また、市販のザーツ種ホップペレットとして、試験例1と同じものについても同様に評価した。測定結果を表2及び
図2に示す。
<コク成分の定量及びポリフェノール総量の測定条件>
50gホップ毬花をジクロロメタン1Lで洗浄した後、ひだ折りろ紙を用いてジクロロメタンを除いた。その後、ホップをドラフト下で一晩乾燥させた。乾燥したホップをコーヒーミルで粉砕した。70v/v%アセトン 10mLに粉砕ホップ0.7gを添加して2時間撹拌した後、ろ紙を用いて濾過した。ろ紙上のホップ残渣を70v/v%アセトン 10mLで2回洗い流し、ろ液と一緒に受けた。エバポレーターを用いてアセトンを除去した。Oasis HLB PlusにMeOH 10mL、H
2O 20mLを通液してコンディショニングした後、抽出液を通液させた。H
2O 10mL×2で洗浄後、MeOH(0.5v/v% FA)7mLで抽出した。抽出液を凍結乾燥により粉末化し重量を計量し、ホップ重量当たりのポリフェノール総量を算出した。
また、上記で得られた粉末全量を一定容量のMeOH(0.5v/v% FA)に溶解し、LC−MSにて定量して、ホップ重量当たりのコク成分含有量を算出した〔カラム:Waters ACQUITY UPLC(登録商標)BEH C18(1.7μm、2.1×100mm)、流速:300μL/min、カラム温度:40℃、移動相:A)H
2O(0.1v/v% FA),B)MeCN(0.1v/v% FA)、グラジエント:0分(B液2v/v%)→30分(B液98v/v%)→32分(B液98v/v%)〕。なお、検量線は、プロシアニジン標準溶液を調製し、ホップサンプルと同様にOasis HLB Plusにて処理して得られた抽出液を用いて作製した。
【0045】
【表2】
【0046】
表2より、コク成分(プロシアニジンB1、プロシアニジンB2、プロシアニジンC1)及びポリフェノール総量はいずれも、「11E群」、「11M群」、「12E群」、「12M群」、「13E群」、「13M群」、「14E群」及び「14M群」では、年度内での対比から、それぞれ「L群」及び「SL群」と比べて、同程度あるいは高含有量であった。
【0047】
試験例3(ビールの官能評価)
<ビールの製造>
通常の方法で得られたろ過麦汁100Lに、試験例1で用いた「12E群」、「12M群」又は「12L群」のホップ毬花の粉砕物からなるホップペレットをそれぞれ調製後、添加した。1分間攪拌後、ワールプールレストをとり、急冷し、冷麦汁を調製した。酵母を添加し発酵させ、ろ過後、炭酸ガス圧を調整し、ビールを製造した。
【0048】
<官能評価>
得られたビールの香味を、評点法による官能試験によって評価した。良く訓練された官能評価者5名が、「甘味」、「うまみ」、「コク」、「嗜好度」の有無について、製造したビールについて官能比較評価を行った。それぞれの特徴について、その強度を0から3点で、0.1点刻みでスコア比較評価した。パネリストによって、官能スコア幅が異なることから、一人のパネリストの全サンプルのスコアの平均が50、標準偏差が10となるように標準化し、サンプル間の比較を行った。結果を
図3に示す。
【0049】
図3から明らかなように、「12E群」及び「12M群」は、「12L群」に比べて「甘味」、「うまみ」、「コク」、「嗜好度」のいずれもが多いものであった。即ち、本発明の実施に係る「12E群」及び「12M群」は、コク成分に寄与するとされるプロアントシアニジンを豊富に有するものであった。このように、収穫時期によって異なる特性を備えることから、ホップを使い分け、及び併用によって、ビール造りの幅を広げることが可能となる。