特許第6846416号(P6846416)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6846416
(24)【登録日】2021年3月3日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】ホップ加工品
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20210315BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20210315BHJP
【FI】
   A23L33/105
   A23L33/10
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-516319(P2018-516319)
(86)(22)【出願日】2016年5月13日
(86)【国際出願番号】JP2016064333
(87)【国際公開番号】WO2017195359
(87)【国際公開日】20171116
【審査請求日】2019年2月7日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】乾 隆子
(72)【発明者】
【氏名】松井 宏夫
【審査官】 太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第03/068205(WO,A1)
【文献】 特開2014−187969(JP,A)
【文献】 SHARP, Daniel .C., et al.,Effect of harvest maturity on the chemical composition of Cascade and Willamette Hops,Journal of the American Society of Brewing Chemists,2014年12月12日,Vol. 42, No. 4,p. 231-238
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00−35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
AGRICOLA(STN)
FSTA(STN)
TOXCENTER(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CIE Lab表色系によるaの値が-0.5未満を満足する色相を呈するホップ毬花(E・M)を50重量%以上含有してなる、脂肪蓄積抑制用の飲食品に用いるためのホップ加工品。
【請求項2】
CIE Lab表色系によるaの値が-0.5未満を満足する色相を呈するホップ毬花(E・M)を50重量%以上含有してなる、抗酸化用の飲食品に用いるためのホップ加工品。
【請求項3】
ホップ毬花(E・M)のCIE Lch表色系によるhの値が90°以上を満足する、請求項1又は2記載のホップ加工品。
【請求項4】
ホップペレット又はホップエキスである、請求項1〜3いずれか記載のホップ加工品。
【請求項5】
CIE Lab表色系によるaの値が-0.5を満足する色相を呈するホップ毬花(E・M)を、原料として用いるホップ毬花の50重量%以上を使用することを特徴とする、請求項1〜4いずれか記載のホップ加工品の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4いずれか記載のホップ加工品を含有してなる飲食品であって、脂肪蓄積抑制用である、飲食品。
【請求項7】
請求項1〜4いずれか記載のホップ加工品を含有してなる飲食品であって、抗酸化用である、飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホップ加工品に関する。更に詳しくは、飲食品の原料として用いられる加工品、該ホップ加工品の製造方法、及び該ホップ加工品を原料とする飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
ホップには種々の成分が含まれており、例えば、苦味はα酸から、ホップ香はテルペン類から、コクはポリフェノールからというように、各種成分により香味を付与することでビールテイスト飲料の品質を調整することが可能となる。一方、これらの成分には様々な生理活性作用があることも知られており、その作用を期待してホップ又はその抽出物を飲食品へ添加されることも多い。
【0003】
例えば、特許文献1は、ホップ中の成分であるフムロン類、あるいは異性化ホップエキスに含まれるイソフムロン類を配合した食品が、ドーパミン産生を上昇させることにより認知機能を改善、向上させる効果があることを開示している。
【0004】
また、ホップエキスをアルカリ条件下で分解したアルカリ分解産物や、ホップを空気中の酸素に接触させて酸化することにより得られたホップ酸化反応産物が、脂肪蓄積抑制作用及び/又は体重増加抑制作用を有するとともに、異性化されたホップエキスのような強烈な苦味がないことから、当該産物を食品に配合することで、脂肪蓄積抑制や体重増加抑制などの生理活性を期待しつつ、苦味のマスキング手段を講じずにそのまま摂取できると報告されている(特許文献2、3参照)。
【0005】
特許文献4は、ホップより単離された2−アシルフロログルシノール−4,6−ジ−C−β−D−グルコピラノシドが強い抗酸化活性を有することから、当該化合物を配合した食品は成人病、悪性関節リウマチなど、健康維持上障害となる諸疾患に有効であることを開示している。
【0006】
特許文献5は、ホップの冷水抽出により得られたフロロアシルフェノン配糖体が、抗酸化作用及びチロシナーゼ活性阻害作用を示すことが期待され、当該配糖体を飲食品に含有させることは有用であると報告している。
【0007】
一方、特許文献6には、抗ウイルス作用、抗エストロゲン作用、抗炎症作用の他に、化学発癌抑制作用などを有することが知られているキサントフモールを高含有量で含むホップ抽出物の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015−224194号公報
【特許文献2】WO2010/143719号公報
【特許文献3】WO2012/081675号公報
【特許文献4】特開2008−174458号公報
【特許文献5】特開2008−69072号公報
【特許文献6】特開2015−134771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ホップについては不明な機能も多い。
【0010】
本発明の課題は、優れた脂肪蓄積抑制作用及び/又は抗酸化作用を有するホップ加工品、該ホップ加工品の製造方法、及び該ホップ加工品を原料とする飲食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
通常ホップペレットは、一つの産地において、異なる農場でホップ生産者が様々な収穫時期に収穫したホップが多数集められブレンドされた上で製造される。ところで、ホップは収穫時期によって色相が変化することから、本発明者らは、色相によるホップの特性に着目して鋭意検討した結果、早期に収穫された、特定の色相を呈するホップ毬花を一定量以上使用してペレットを調製したところ、該ペレットが優れた脂肪蓄積抑制作用及び抗酸化作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明は、下記〔1〕〜〔4〕に関する。
〔1〕 CIE Lab表色系によるaの値が-0.5未満を満足する色相を呈するホップ毬花(E・M)を50重量%以上含有してなる、脂肪蓄積抑制用の飲食品に用いるためのホップ加工品。
〔2〕 CIE Lab表色系によるaの値が-0.5未満を満足する色相を呈するホップ毬花(E・M)を50重量%以上含有してなる、抗酸化用の飲食品に用いるためのホップ加工品。
〔3〕 CIE Lab表色系によるaの値が-0.5未満を満足する色相を呈するホップ毬花(E・M)を、原料として用いるホップ毬花の50重量%以上を使用することを特徴とする、前記〔1〕又は〔2〕記載のホップ加工品の製造方法。
〔4〕 前記〔1〕又は〔2〕記載のホップ加工品を含有してなる、飲食品。
【発明の効果】
【0013】
本発明のホップ加工品は、優れた脂肪蓄積抑制作用及び/又は抗酸化作用を有することから、飲食品の原料として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、ホップの収穫時期ごとのCIE Lab及びCIE Lch表色系による各座標軸の数値を示す図である。
図2図2は、ホップの収穫時期ごとのポリフェノール成分含有量を示す図である。
図3図3は、ホップの収穫時期ごとの脂肪蓄積抑制作用を示す図である。
図4図4は、ホップの収穫時期ごとの抗酸化作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のホップ加工品は、CIE Lab表色系によるaの値が-0.5未満を満足する色相を呈するホップ毬花(「ホップ毬花(E・M)」と表記する)を原料として50重量%以上用いたものであることを特徴とする。以降、本明細書において、ホップ毬花のことを単に「ホップ」と記載することもある。なお、本明細書において「〜」を用いて範囲を示す際には、その両端の数字が含まれることとする。
【0016】
一般に、ホップはホップ中のα酸量が最高含有量となる日を収穫開始日として収穫が開始され、通常25日間程度で収穫が終わる。また、ホップは経時的に外観が黄変するため、通常の収穫日程期間内であっても収穫時期を前倒して、例えば収穫開始日より15日以内に収穫することが多い。一方、このように前倒しして収穫されたホップは、見た目では色調が殆ど同じであることから、これらを区別なく混合して得られたホップ加工品は見分けが付き難いものである。しかしながら、収穫時期を前倒しして得られたものであっても、本発明者らは、特定の色調を呈するホップを選択的に特定量用いて調製したホップ加工品が、優れた脂肪蓄積抑制作用及び/又は抗酸化作用を有することを見出した。ところで、従来、ホップ中では、機能性活性を有する化合物としてはプレニルフラボノイド類であるキサントフモール等のポリフェノール化合物が一般的に知られているが、意外にも、収穫開始日から一定の早い段階で、好ましくは収穫開始日より15日以内に収穫したホップの中から、CIE Lab表色系によるaの値が特定の数値となる色相を指標として選択したホップ毬花(E・M)には、そのようなポリフェノール化合物の含有量が多く含まれ、かかる効果が強いことは本発明者らが初めて見出した驚くべきことである。なお、本明細書において、ホップ毬花の色相とは、ホップ毬花を乾燥し粉砕したものの色相であり、例えば、後述の実施例に記載の方法によって評価することができる。
【0017】
本発明で用いることのできるホップとしては、その産地、品種に特に限定はなく、公知のアロマホップ、ビターホップ等が用いられる。具体的には、アロマホップとしてHallertauer Mittelfrueh、Hallertauer Tradition、Hersbrucker、Perle、Tettnanger、Cascade、Saaz、Sladekなどが、ビターホップとしてNorthern Brewer、Herkules、Magnum、Nugget、Taurus、Galaxy、Targetなどが例示される。また、その部位としては、ルプリン部分だけでなく、苞や葉を含んでいてもよく特に限定はない。
【0018】
本発明で選択されるホップ毬花(E・M)は、CIE Lab表色系によるaの値が-0.5未満、好ましくは-1以下であり、緑寄りの色相を呈する。
【0019】
本発明で用いるホップ毬花(E・M)は、CIE Lab表色系によるaの値が前記数値となるが、CIE Lab表色系によるbの値が好ましくは35未満、より好ましくは33以下の正の数を示すものが好ましく、それほど黄色味が強いものは好まれない。
【0020】
また、ホップ毬花のCIE Lab表色系によるLの値は通常正の数であり、収穫時期が変動すると数値は変動するものの一定の傾向は見られない。いずれにせよ、明度は高い。本発明で用いるホップ毬花(E・M)のLの値は、好ましくは50以上、より好ましくは55以上、更に好ましくは60以上である。
【0021】
また、ホップ毬花をCIE Lab表色系とは異なるCIE Lch表色系で表した場合、CIE Lch表色系によるcの値は通常正の数であり、収穫時期が変動すると数値は変動するものの一定の傾向は見られない。いずれにせよ、彩度は高い。本発明で用いるホップ毬花(E・M)のcの値は、好ましくは30以上である。
【0022】
ホップ毬花のCIE Lch表色系によるhの値は、通常正の数であり、収穫時期が早いほど高い値を示す。本発明で用いるホップ毬花(E・M)のhの値は、好ましくは90°以上、より好ましくは94°以上、更に好ましくは95°以上である。
【0023】
本発明のホップ加工品は、前記で規定したような色相を有するホップ毬花(E・M)を原料として用いるのであれば、その他の原料は特に限定されない。前記で規定した色相を外れるホップ毬花を用いていてもよい。原料全体における前記色相のホップ毬花(E・M)の使用量は、脂肪蓄積抑制作用及び/又は抗酸化作用をより強力に発揮させる観点から、50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。上限は特に限定されず、100重量%であってもよい。
【0024】
本明細書において「ホップ加工品」としては、その形状に特に限定はなく、例えば、ホップペレット、粉末ホップ、ホップエキスなどを挙げることができる。なかでも、ホップペレット、ホップエキスが好ましい。
【0025】
本発明のホップ加工品は、前記で規定したような色相を有するホップ毬花(E・M)を原料として特定量用いるのであれば、その調製方法は限定されない。よって、本発明の一態様として、CIE Lab表色系によるaの値が-0.5未満を満足する色相を呈するホップ毬花(E・M)を、原料として用いるホップ毬花の50重量%以上を使用することを特徴とする、本発明のホップ加工品の製造方法を挙げることができる。
【0026】
具体的には、例えば、ホップペレットとする場合は、前記で規定したような色相を有するホップ毬花(E・M)を50重量%以上含有する原料を準備し、公知の打錠機を用いてペレタイジングすればよい。なお、得られたホップペレットは、CIE Lab表色系によるaの値が好ましくは-0.5未満、より好ましくは-1以下であり、好ましくは-4以上、より好ましくは-3.5以上である。CIE Lab表色系によるbの値が好ましくは35未満、より好ましくは33以下であり、好ましくは25以上、より好ましくは30以上である。また、CIE Lch表色系によるhの値が好ましくは90°以上、より好ましくは94°以上、更に好ましくは95°以上であり、好ましくは100°以下、より好ましくは98°以下である。また、前記の値は、ホップ毬花(E・M)の使用量に応じて変動するものであるが、前記範囲内となることが好ましい。
【0027】
また、ホップエキスとする場合は、前記で規定したような色相を有するホップ毬花(E・M)を50重量%以上含有する原料を準備し、公知の方法に従って抽出することができる。抽出溶媒、温度、時間等は適宜設定することができる。なお、得られる抽出物に対しては、ろ過、遠心分離、濃縮、限外ろ過、凍結乾燥、粉末化、及び分画からなる群より選ばれる1種又は2種以上の処理を公知の方法に従って行ってもよい。
【0028】
かくして、本発明のホップ加工品を得ることができる。本発明のホップ加工品は、脂肪蓄積抑制作用及び抗酸化作用を奏するために脂肪蓄積抑制作用飲食品、あるいは、抗酸化作用飲食品に好適に使用することができる。
【0029】
本明細書において「脂肪蓄積抑制作用」とは、本発明のホップ加工品を体内に摂取することにより、脂肪前駆細胞がインスリンなどの脂肪誘導因子によって脂肪細胞に分化する過程を阻害することで、脂肪の蓄積を抑制する作用を意味する。具体的には、後述の実施例に記載の方法に従って、評価することができる。
【0030】
本明細書において「抗酸化作用」とは、本発明のホップ加工品を体内に摂取することにより、体内の活性酸素種を消去することで、酸化を抑制する作用を意味する。具体的には、後述の実施例に記載の方法に従って、評価することができる。
【0031】
本発明はまた、本発明のホップ加工品を含有する飲食品を提供する。
【0032】
本発明の飲食品は、本発明のホップ加工品をいずれの形態のものであっても含有すればよく、例えば、脂肪蓄積抑制用、抗酸化用といった生理活性作用の発現や向上のための飲食品が挙げられる。具体的には、特定保健用食品、栄養機能食品、老人用食品、特別用途食品、機能性食品、健康補助食品(サプリメント)として、例えば、脂肪蓄積を抑制することにより発揮される機能や酸化を抑制することにより発揮される機能の表示として、「メタボリック症候群予防」、「アンチエージング」、「肥満予防」等の表示を付して提供することが可能になる。当該表示は、飲食品自体に付されてもよいし、飲食品の容器又は包装に付されていてもよい。
【0033】
かかる飲食品としては、例えば炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、清涼飲料水(果汁入りも含む)、果肉飲料、果粒入り果実食品、野菜系飲料、豆乳・豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、ゼリー飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料等の嗜好飲料類、栄養食品、サプリメント、丸剤、ハードカプセル剤、ソフトカプセル剤、錠剤〔素錠、糖衣錠、口腔内速崩壊錠、咀嚼可能錠(チュアブル錠)、発泡錠、トローチ剤、フィルムコーティング錠等を含む〕、ビールテイスト飲料、嗜好飲料等の嗜好飲料類、機能性食品(特定保健用食品、栄養機能食品)、動物飼料、ペットフード等を例示できる。なお、これらは、本発明のホップ加工品を飲食品の原料として使用するのであれば、その使用量、添加時期、添加方法は特に限定されない。また、その他に添加配合される成分も限定なく用いることができ、その使用量や添加方法も公知技術に従って適宜選択することができる。公知の飲食品の調製後に添加させたものであっても本願発明に含まれる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0035】
試験例1(ホップ毬花の色相)
2011年、2012年、2013年、及び2014年産のホップ原料(品種:Saaz、産地:チェコ)について、収穫時期の順に、収穫開始日に収穫されたものを「E群」、収穫開始日から10日後に収穫されたものを「M群」、収穫開始日から25日後に収穫されたものを「L群」、収穫開始日から50日後に収穫されたものを「SL群」として群分けし、以下の条件に従って色相を測定した。なお、前記群分けに収穫年度の下二桁を併記して収穫年度と収穫時期を表記する。例えば、2013年産の「E群」は、「13E」のように示す。また、サンプルの前処理として、それぞれの群の乾燥毬花をコーヒーミルで粉砕し、その粉砕物をそのまま測定に供した。測定結果を表1及び図1に示す。
<色相測定条件>
表色系:CIE Lab表色系
測定機器:分光測色系 CM−2002(ミノルタ社製)
視野角:10°視野
光源:D65
解析ソフト:SpectraMagic NX(ミノルタ社製)
【0036】
【表1】
【0037】
表1及び図1より、「11E群」、「11M群」、「12E群」、「12M群」、「13E群」、「13M群」、「14E群」及び「14M群」は、CIE Lab表色系によるaの値が-0.5未満であり、各年度の他の群とは大きく相違するものであった。また、CIE Lch表色系によるhの値が91.12°から96.69°であり、年度内での対比から、それぞれ「L群」及び「SL群」とは大きく相違するものであった。よって、「11E群」、「11M群」、「12E群」、「12M群」、「13E群」、「13M群」、「14E群」及び「14M群」は、いずれも他の群に比べて数値上の差異が見られ、他の時期に収穫されたものと外観上相違することが分かる。
【0038】
試験例2(ホップ毬花のポリフェノール成分)
試験例1と同様にして群分けしたホップ毬花について、試験例1と同様に前処理を行ってから以下の条件に従って、各ポリフェノール成分の含有量と抗酸化活性、脂肪蓄積阻害率を測定した。なお、前記群分けしたホップの表記は試験例1と同様とし、抗酸化活性及び脂肪蓄積阻害率の測定においては、ポジティプコントロールとして、市販の試薬を購入して同様に測定した。測定結果を表2及び図2〜4に示す。
<各ポリフェノール成分の含有量測定条件>
50gホップ毬花をジクロロメタン1Lで洗浄した後、ひだ折りろ紙を用いてジクロロメタンを除いた。その後、ホップをドラフト下で一晩乾燥させた。乾燥したホップをコーヒーミルで粉砕した。70v/v%アセトン 10mLに粉砕ホップ0.7gを添加して2時間撹拌した後、ろ紙を用いて濾過した。ろ紙上のホップ残渣を70v/v%アセトン 10mLで2回洗い流し、ろ液と一緒に受けた。エバポレーターを用いてアセトンを除去した。Oasis HLB PlusにMeOH 10mL、HO 20mLを通液してコンディショニングした後、抽出液を通液させた。HO 10mL×2で洗浄後、MeOH(0.5v/v% FA)7mLで抽出した。得られた抽出液を用いてLC−MSにて定量して、ホップ重量当たりのポリフェノール成分含有量を算出した〔カラム:Waters ACQUITY UPLC(登録商標)BEH C18(1.7μm、2.1×100mm)、流速:300μL/min、カラム温度:40℃、移動相:A)HO(0.1v/v% FA),B)MeCN(0.1v/v% FA)、グラジエント:0分(B液2v/v%)→30分(B液98v/v%)→32分(B液98v/v%)〕。なお、検量線は、プロシアニジン標準溶液を調製し、ホップサンプルと同様にOasis HLB Plusにて処理して得られた抽出液を用いて作製した。
<抗酸化活性>
DMSOに溶解した各試料を25、50、100μg/mLになるように50v/v% EtOHに溶解して試料溶液を調製し、96穴プレートの各ウェルに100μLずつ分注した。そこに、EtOHに0.1mMになるよう溶解したDPPH溶液を100μLずつ加えボルテックスにより撹拌した(終濃度12.5、25、50μg/mL)。次いで、プレートをアルミホイルで遮光し30分間室温(25℃)に放置し、その後517nmにおける吸光度値を測定した(n=3)。得られた吸光度値を用いて、以下の式(1)よりDPPHラジカル消去率(%)を算出した。なお、ブランクにはDMSOを0.2%含む50v/v% EtOH溶液を使用する以外は、試料溶液と同様にして吸光度値を測定した。
【0039】
【数1】
【0040】
<脂肪蓄積阻害率>
〔試薬〕
・ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM):10% FBS(ウシ胎児血清)と1% penicillin/streptomycinを添加した。
・TrypLETM Select(1X)
・IBMX:DMSOで0.5mMとなるように調製した。
・DEX:DMSOで1μMとなるように調製した。
・insulin solution human
・WST−8:使用時にDMEM培地で2% WST−8となるように希釈した。
・Oil Red O:isoPrOHで5mg/mLとなるように調製し、使用時に、純水で60% Oil Red Oとなるように希釈した。
〔方法〕
1日目:あらかじめ、3T3−L1細胞を10cm ディッシュで培養し、7〜8割コンフルエントの状態にした。TrypLETM Selectを用いて3T3−L1細胞を剥離し、DMEM培地で1.0×10cells/mLに希釈した後、96穴プレートに100μLずつ入れ、37℃、5%COで培養した。
3日目:分化誘導培地(0.1% IBMX,0.01% DEX)を用いて各試料を調製した。コンフルエントになった細胞の培地を除去し、試料入り分化誘導培地100μLに交換した後、37℃、5%COで2日間培養した。
5日目:分化培地(0.2% insulin)を用いて各試料を調製した。分化誘導培地を除去し、分化培地100μLに交換した後、37℃、5%COで3日間培養した。
8日目:分化培地50μLを除去し、新たな分化培地100μLを添加し、37℃、5%COで3日間培養した。
11日目:培養培地に2% WST−8を50μLずつ添加し、37℃、5%COで3日間培養した。新しい96穴プレートに培地100μLを移し、吸光度(450nm)をマイクロプレートリーダーで測定した。それらを、コントロールに対する相対値として、細胞生存率(%)を算出した。残りの培地を除去した後、ホルマリンを100μLずつ添加し4℃で一晩静置した。
12日目:ホルマリンを除去した後、60% isoPrOHを100μL添加し、細胞を洗浄した後除去した。60% Oil Red O試薬50μLを添加し室温で10分静置した。60% Oil Red O試薬を除去した後、超純水で各ウェルを洗浄した。96穴プレートが乾燥した後、100% isoPrOHを50μL添加し室温で10分静置した後、吸光度(520nm)を測定した。それらを、コントロールに対する相対値として、脂肪蓄積率(%)を算出した。
【0041】
【表2】
【0042】
表2及び図2より、ポリフェノール成分はいずれも、「11E群」、「11M群」、「12E群」、「12M群」、「13E群」、「13M群」、「14E群」及び「14M群」では、年度内での対比から、それぞれ「L群」及び「SL群」と比べて、同程度あるいは高含有量であった。
【0043】
一方、表2及び図3、4より、「11E群」、「11M群」、「12E群」、「12M群」、「13E群」、「13M群」、「14E群」及び「14M群」では、年度内での対比から、それぞれ「L群」及び「SL群」と比べて、抗酸化効果及び脂肪蓄積抑制効果に優れることが分かった。なお、市販試薬の「ビタミンC(12.5μM)」の抗酸化活性は70%、「ケルセチン(50μM)」の脂肪蓄積抑率は50%であった。
【0044】
以下、本発明のホップ加工品を配合した飲食品の具体的処方を例示する。これらの飲食品は公知の方法に従って調製することができる。
【0045】
麦芽等の麦、他の穀物、でんぷん、及び糖類からなる群より選ばれる少なくとも1種に加え、必要に応じ、苦味料、色素などの原料を、仕込釜又は仕込槽に投入し、必要に応じてアミラーゼなどの酵素を添加し、糊化、糖化を行なわせた後、穀皮等を濾過により取り除いて麦汁を得、次いで得られた麦汁に、本発明のホップ加工品であるホップペレットを加えて煮沸し、清澄タンクにて凝固タンパク質などの固形分を取り除いて、清澄麦汁を得る。これらの糖化工程、煮沸・清澄化工程、固形分除去工程などにおける条件は、公知の条件を用いればよい。
【0046】
次いで、アルコール飲料の場合には、前記で得られた清澄麦汁に酵母を添加して発酵を行なわせ、必要に応じ濾過機などで酵母を取り除いて製造する。発酵条件は、知られている条件を用いればよい。また、発酵開始後に前記で選別した本発明におけるホップ毬花(E・M)やそれらを含むホップペレットを添加してもよい。あるいは、発酵工程を経る代わりに、スピリッツなどアルコール分を有する原料を添加してもよい。更に、貯酒、必要により炭酸ガスを添加して、濾過・容器詰め、必要により殺菌の工程を経て、アルコールビールテイスト飲料を得ることができる。
【0047】
一方、ノンアルコール飲料の場合、上記固形分除去工程に次いで、前記で得られた清澄麦汁をそのまま貯蔵、炭酸ガスを添加して、濾過・容器詰め、必要により殺菌の工程を経て、製造する。あるいは、前記アルコール飲料の発酵工程の後、ビール膜処理や希釈などの公知の方法によりアルコール濃度を低減させることによって、ノンアルコールビールテイスト飲料を得ることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のホップ加工品は、優れた脂肪蓄積抑制用又は抗酸化用を有するものであり、例えば、「メタボリック症候群予防」、「アンチエージング」、「肥満予防」等の効果が期待できる。
図1
図2
図3
図4