(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記方向性ガスカーテン生成要素は、前記ベルトに付着されていない、液体、カチオン性材料、又はアニオン性材料を除去するのに十分な圧力を有する方向性ガスカーテンを生成する、請求項1に記載の装置。
前記装置は、前記ベルトが少なくとも0.25m/sの速度で移動している間に、カチオン性材料又はアニオン性材料の単層を前記ベルトに付着させることができる、請求項1又は2に記載の装置。
所定数の単層のうちの少なくとも1つが堆積されるまで、所定の時間が経過するまで、所定の厚さが達成されるまで、又は、所定の、光学的、化学的若しくは物理的特性が達成されるまで、前記ベルトは移動を停止しない、請求項5に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示を通じて、「a」、「an」及び「the」などの単数形は、しばしば便宜上使用されるが、単数形が単独のみであることが明示的に指定され、又は文脈によって明確に示されている場合を除いて、単数形は複数形を含むことを意味するものと理解されたい。
【0007】
装置は、ベルトを移動させるための第1及び第2のローラを含むことができる。第1及び第2のローラは、任意の好適な材料で作製することができる。好適な材料としては、金属、セラミック、プラスチック、及び、ゴムで覆われた別の材料を含むゴムが挙げられる。ローラは、任意の好適なサイズとすることができる。ローラの幅は、使用されるベルトの幅によって決まる。ローラはベルトと同じ幅か又はわずかに広い幅とする場合がほとんどである。ローラの直径は、デバイスの利用可能なスペースなどの要因によって決まる。特定の直径は要求されないが、いくつかの好適なローラは、例えば5cm〜50cmの直径を有することができ、本発明者によって使用されるいくつかの例示的なローラの直径は25.4cmである。
【0008】
特定の経路に沿ってベルトを導くために、1つ以上の追加のローラを使用することができる。この目的のために、1つ以上のステアリングユニットなどの他の要素もまた使用してもよい。ベルトの適切なテンションを維持するために、1つ以上のテンションコントローラを使用することができる。
【0009】
ベルトは、その上にさまざまな層が堆積される基材とすることができる。ベルトは、LBL堆積のための基材として使用することができる任意の物質とすることができる。例示的な基材として、ポリマー、布地、紙、又はマイクロスフェアを含有する転写接着フィルムなどの転写接着フィルムが挙げられる。使用することができるポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル(特にE.I.DuPont de Nemours and Co.(Wilmington,DE,USA)の商品名MELINEXで入手可能なもの)、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、スルホン化ポリエステル、アクリル(アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステルなどのポリマー又はコポリマーなど)、及びポリウレタンが挙げられる。布地としては、医療用布地、織物などを挙げることができる。紙としては、セルロース又はセルロースベースのフィルムの任意の種類を挙げることができる。転写接着フィルムを使用することができる。好適な転写接着フィルムは、当該技術分野において公知であり、例えば、米国特許第7645355号に記載された方法に従って作製することができる。
【0010】
ベルトは、第1の主表面と第2の主表面とを有することが多い。主表面は、(他の表面よりも)より広い幅及び表面積を有する2つの表面である。第1の主表面は、通常、第2の主表面の反対側にある。ベルトは、ベルトの高さに相当する2つの他の表面を有することもでき、これらの表面は、第1及び第2の副表面と呼び得る。
【0011】
ベルトは無端ベルトとすることができる。かかる場合、このベルトは始点も終点もないループ状である。あるいは、ベルトは、別個の始点及び別個の終点を有してもよい。
【0012】
ベルトの第1又は第2の主表面は、第1の自己制限的単層形成材料との結合、吸着、又はコーティングに好適にすることができる。表面がこの目的に好適でない場合は、好適にするために、任意の適切な方法によって、それを処理することができる。一般的に、かかる表面の改質は、表面をより親水性にするためのプラズマ処理又はコロナ処理によるものである。さまざまなプラズマ処理方法が知られており、任意の好適な方法を使用することができる。プラズマ処理の1つの好適な方法は、米国特許第7707963号に記載されている。1つの好適な処理フィルムは、SKC,Inc(Covington,GA,USA)の商品名SKYROLで市販されている。
【0013】
第1及び第2の自己制限的単層形成材料などのさまざまな材料を基本的に均一な方法でベルト上に被覆する、即ちベルトの幅にわたって基本的に均一な厚さにすることを容易にするために、ベルト経路の少なくとも一部について、ベルトの第1及び第2の主表面が地面に対して平行又はほぼ平行になるように、ベルトを装置内に配置することが有益となり得る。具体的には、ベルトを地面に対して5度以内の平行度とするように配置することが一般的である。特に、堆積ステーションに面するベルトの部分は、ほとんどの場合、地面に対して5度以内の平行度、あるいはより詳細には地面に平行である。
【0014】
第1の堆積要素を含む堆積ステーションは、ベルトの第1の主表面に面するように配置することが一般的である。したがって、第1の堆積要素は、第1の自己制限的単層形成材料の少なくとも1つの単層をベルトに(しばしばベルトの第1の主表面に)付着させるように設計される。好適な第1の堆積要素としては、ロッドコータ、ナイフコータ、エアーナイフコータ、ブレードコータ、ロールコータ、スロットコータ、スライドコータ、カーテンコータ、グラビアコータ、及び噴霧器(sprayer)が挙げられる。1つ以上の噴霧器を使用することが最も一般的である。
【0015】
堆積ステーションはまた、第2の堆積要素を含んでもよい。第2の堆積要素は、通常、第1の堆積要素の下流にある。一般的には、第2の堆積要素も、第1の主表面、即ち、第1の堆積要素が面する主表面と面するように配置される。これは、第2の堆積要素が、ベルト上で第1の自己制限的単層形成材料の上に第2の自己制限的単層形成材料を堆積させることを可能にするためである。
【0016】
堆積ステーションはまた、リンス要素を含むことができる。リンス要素は、第2の堆積要素が使用される場合には、通常、第1の堆積要素の下流と、第2の堆積要素の上流との間に、配置される。リンス要素は、リンス液(rinse liquid)をベルトに適用するように作用する任意の要素又は要素の組み合わせであり得る。通常は、噴霧器が使用される。
【0017】
リンス要素では、ベルトをリンスするためにリンス液を用いることが一般的である。好適なリンス液として、緩衝水などの水、及び、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジエチルエーテルなどのエーテル、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、クロロホルム、テレピン、ヘキサンなどを含む有機溶媒が挙げられる。
【0018】
第1の自己制限的単層形成材料がベルトの第1の主表面に適用されて付着するように第1の堆積要素が配置されている限り、堆積ステーションの全体がベルトの第1の主表面又はその近傍に配置される必要はない。したがって、第1の堆積要素が、第1の自己制限的単層形成材料をベルトに付着させるための噴霧器を含む場合、この噴霧器は、ベルトの第1の主表面上に噴霧するように配置することができる一方、第1の自己制限的単層形成材料を貯蔵又は輸送するための1つ以上のホース、バルブ、及び容器、並びに他の構成要素を例えば含みうる堆積ステーションの他の構成要素は、そのうちの任意のいずれか又は全てが1つ以上の他の場所に配置され得る。
【0019】
第1の堆積ステーションは、場合によっては、第1及び第2の自己制限的単層形成材料の堆積を容易にする他の要素を含むことができる。存在し得る他の要素の例としては、第1及び第2の自己制限的単層形成材料のうちの1つ以上を収容するための1つ以上の容器、かかる容器を第1及び第2の堆積要素に接続するための1つ以上のホース、水供給源などのリンス液供給源が挙げられ、1つ以上のホースは、リンス要素、さまざまなホース用流量計、さまざまな追加要素のためのガスケット又はコネクタなどを接続する。
【0020】
第2の堆積ステーションもまた使用することができる。第1の堆積ステーションと同じ又は異なるように構成することができる第2の堆積ステーションは、一般的には少なくとも1つの堆積要素を有するが、リンス要素も含むことがほとんどである。第2の堆積は2つの堆積要素を有する場合が多い。最も一般的な構成では、第2の堆積ステーションは、2つの堆積要素及び1つのリンス要素を有する。2つのリンス要素が使用される場合もある。
【0021】
追加の堆積ステーションを使用することもでき、各連続堆積ステーションは連続する堆積ステーションの下流にある。かかる追加の堆積ステーションは、本明細書に記載された第1又は第2の堆積ステーションと類似しており、それらの堆積ステーションと同じように、又は異なるように構成することができる。堆積される層の数に応じて、任意の数の堆積ステーションを使用することができる。いくつかの構成では、装置の堆積ステーションの数は合計で、例えば、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個、少なくとも100個、少なくとも150個、又は少なくとも200個である。
【0022】
第1の自己制限的単層形成材料は、第1の液体の成分であることが多い。この場合、第1の液体は、通常、1つ以上の液体成分並びに第1の自己制限的単層形成材料を含んでいる。第1の自己制限的単層形成材料は、1つ以上の液体成分に溶解又は分散することができる。1つ以上の液体成分は、第1の自己制限的単層形成材料を溶解又は分散させるための任意の好適な液体であり得る。したがって、1つ以上の液体成分の正体(identity)は、第1の自己制限的単層形成材料の性質によって決まる。好適な液体成分としては、緩衝水などの水、及び、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジエチルエーテルなどのエーテル、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、クロロホルム、テレピン、ヘキサンなどを含む有機溶媒のうちの1つ以上を挙げることができる。
【0023】
第2の自己制限的単層形成材料が一般的に使用され、第2の堆積要素によってベルトに付着され得る。第2の自己制限的単層形成材料は、第2の液体の成分とすることができる。第2の液体は、第2の自己制限的単層形成材料、並びに第1の液体に関して上述した液体成分のうちの1つ以上を含むことができる。
【0024】
第1及び第2の自己制限的単層形成材料などの自己制限的単層形成材料は、連続的に適用される場合、ベルト上に二重層を形成するのに好適な任意の材料とすることができる。一般的には、第1及び第2の自己制限的単層形成材料は相補的であり、第1の自己制限的単層形成材料はそれ自体に結合せずに、第2の自己制限的単層形成材料、場合によっては、ベルトに結合するように、第1及び第2の自己制限的単層形成材料を選択する。第1及び第2の自己制限的単層形成材料に好適な相補的材料は当業者に公知であり、例えば、Polymer Science:A Comprehensive Reference,Volume7 section7.09(Seyrek and Decher)に開示されている。例示的な材料としては、静電相互作用によって相互作用するもの、水素結合によって相互作用するもの、塩基対(base−pair)相互作用によって相互作用するもの、電荷移動(charge transfer)相互作用によって相互作用するもの、立体錯体化(stereo complexation)によって相互作用するもの、及びホスト−ゲスト相互作用によって相互作用するものが挙げられる。
【0025】
静電相互作用によって相互作用してLbL層を形成することができる例示的な材料としては、カチオン性材料及びアニオン性材料、例えばポリカチオン及びポリアニオン、カチオン性粒子(ナノ粒子であり得る)及びアニオン性粒子(ナノ粒子であり得る)、ポリカチオン及びアニオン性粒子(ナノ粒子であり得る)、カチオン性粒子(ナノ粒子であり得る)及びポリアニオンなどが挙げられる。例示的なポリカチオンとしては、ポリ(アリルアミン塩酸塩)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、及びポリエチレンイミンが挙げられる。例示的なポリアニオンとしては、ポリ(ナトリウム4−スチレンスルホナート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ビニルスルホナート)が挙げられる。場合によっては、ヘパリン、ヒアルロン酸、キトサン、フミン酸などの天然高分子電解質も、ポリカチオン又はポリアニオンとして使用することができる。荷電した表面を有する粒子としては、シリカ(表面がどのように改質されるかに応じて正又は負に帯電した表面を有することができる)、チタニア及びアルミナなどの金属酸化物(シリカのように、表面がどのように改質されるかに応じて正又は負に帯電した表面を有することができる)、金属、ラテックス、及び帯電したタンパク質粒子を挙げることができる。
【0026】
水素結合によって相互作用してLbL層を形成することができる例示的な材料としては、ポリアニリン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリ(ビニルアルコール)及びポリ(エチレン酸化物)を挙げることができる。また、金ナノ粒子及びCdSe量子ドットなどの粒子は、LbL堆積に使用するための水素結合表面基で改質することができる。一般的には、酸素又は窒素原子に結合した水素原子を有する1つの水素結合供与体材料と、自由電子対を有する酸素原子、フッ素原子又は窒素原子を有する1つの水素結合受容体材料が相補的材料として選択される。
【0027】
塩基対相互作用は、例えば、天然又は合成のDNA又はRNAにおける同じ種類の塩基対合に基づいて、LbL層を形成することができる。
【0028】
電荷移動相互作用は、一方の層が電子供与基を有し、他方が電子受容基を有するLbL二重層を形成することができる。使用可能な電子受容体の例として、ポリ(無水マレイン酸)、ポリ(ヘキサニルビオロゲン)、カーボンナノチューブ、及びジニトロベンジルシルセスキオキサンを挙げることができる。使用可能な電子供与体の例として、ポリ(カルバゾールスチレン)などのカルバゾリル含有ポリマー、有機アミン、ポリ(ジチアフルバレン)などの電子不足π共役ポリマー、及びポリエチレンイミンが挙げられる。
【0029】
立体錯体化は、アイソタクチック及びシンジオタクチックポリ(メタクリル酸メチル)並びに鏡像異性のL−及びD−ポリラクチドなどの明確な相補的立体化学を有する材料間にLbL層を形成するために使用することができる。
【0030】
好適なホスト材料層が好適なゲスト層上に堆積された場合、又はその逆の場合に、ホストゲスト相互作用を用いてLbL層を形成することができる。ビオチン及びストレプトアビジンは、LbL二重層を形成するために使用できる1つのホスト−ゲスト対である。酵素又は抗体もまた、それらの基質と対になってLbL二重層を形成することができる。例としては、グルコースオキシダーゼ及びグルコースオキシダーゼ抗体、マレイミド及び血清アルブミンが挙げられる。
【0031】
方向性ガスカーテン生成要素は、第1の堆積ステーションの下流に配置され、第2の堆積ステーションが使用される場合には、第2の堆積ステーションの上流に配置され得る。第1の方向性ガスカーテン生成要素は、通常は、ベルトの、第1の堆積ステーションと同じ表面に面し、使用時に、ベルトの外側表面上に吹きつけるガスカーテンを提供する。ガスカーテンは、通常、ベルトの過剰な第1の自己形成単層材料の計量(即ち、物理的に除去するか又は脱落させる)と、堆積ステーションの下流に残っている余分な液体の乾燥(即ち蒸発を促進するか又は生じさせる)を同時に行うために、高圧で吹きつけられる。方向性ガスカーテン生成要素は、通常、ベルトに対して垂直又はほぼ垂直になるように配置される。第2、第3、第4、又は更なる堆積ステーションを使用することもできる。かかる更なる堆積ステーションは、通常、上述した堆積ステーションと同じ構成を有する。使用される場合、任意の第2、第3、第4又は更なる堆積ステーションは、ベルトの第1又は第2の主表面のいずれかに追加の自己制限的単層形成材料を付着させるように配置することができる。
【0032】
エアーナイフとして知られることもある方向性ガスカーテン生成要素は、当該分野で公知であり、例えば、SUPER AIR KNIFE(EXAIR Corp.,OH,USA)の商品名で市販されている。かかるデバイスは、高速で移動する強制空気の狭小な流れを生成する。強制空気の流れは、通常、ベルトの全幅がガスカーテンにとらえられ、強制空気に曝されるように、ベルトの幅以上の幅を有する。
【0033】
本明細書に記載された装置又は方法のいずれにおいても、方向性ガスカーテン生成要素は、ベルトに対して所望の角度でガスカーテンを向けるように配置することができる。この角度は、一般的には80°以上、より詳細には85°以上である。90°の角度が最も一般的である。角度が90°未満である場合、方向性ガスカーテン生成要素は、空気が上流側へ、即ち先行する堆積要素へ向けて吹き出すように配置されることが最も多い。
【0034】
本明細書に記載された装置又は方法のいずれにおいても、方向性ガスカーテン生成要素は、ベルトに対して適切な距離に配置することができる。方向性ガスカーテン生成要素上のガス出口とベルトとの間の距離は、「間隙」として知られることもある。この間隙が大きすぎると、ウェブが十分乾燥しない可能性がある。この間隙は、通常0.8mm以下、例えば0.75mm以下、0.7mm以下、0.65mm以下、0.6mm以下、0.55mm以下、又は0.5mm以下である。
【0035】
方向性ガスカーテン生成要素を通るガス(通常は空気)の流量は、ベルトの乾燥に影響を及ぼし得る別のパラメータである。ガスの流量は、一般的には、ガスカーテンの長さ当たりの流量(「長さ当たりの流量」)として測定され、この値はm
2/sの単位である。長さ当たりの流量が小さすぎると、ベルト上の液体の計量及び乾燥にガスカーテンが効果的とはならない可能性がある。長さ当たりの一般的な流量(m
2/s単位)は、0.02以上、0.02以上、0.024以上、0.025以上、0.026以上、0.028以上、又は0.03以上である。
【0036】
(第1及び第2の自己制限的単層形成材料の数を超える)追加の自己制限的単層形成材料を第1の主表面に付着させるために第2、第3、第4、又は更なる堆積ステーションが使用される場合、さまざまな堆積要素は通常、相補的な自己制限的単層形成材料の交互の層がベルト上に堆積されるように配置される。例えば、4つの堆積ステーションを使用する場合、第1の堆積ステーションでは、カチオン性ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドを堆積させ、第2の堆積ステーションでは、アニオン性ポリ(アクリル酸)を堆積させ、第3の堆積ステーションでは、カチオン表面を有する改質シリカ粒子を堆積させ、更に、第4の堆積ステーションでは、アニオン性(即ち、部分的に脱プロトン化された)ヒアルロン酸を堆積させてもよい。
【0037】
第2、第3、第4又は更にそれ以上の堆積ステーションが使用される場合、各々は、通常、関連付けられた堆積ステーションの下流にあって任意の後続の堆積ステーションの上流に配置された関連付けられた方向性ガスカーテン生成要素を有する。これらの第2、第3、第4又は更なる方向性ガスカーテン生成要素は、一般的には、上述の方向性ガスカーテン生成要素と同じ特徴を有する。
【0038】
本装置はまた、第1のバッキング要素を含むことができ、この要素は、ベルトの少なくとも一部が第1のバッキング要素と堆積ステーションとの間に介在するように配置される。この第1のバッキング要素は、ベルトから脱落し得る過剰な材料がベルト又は装置の他の部分を汚染するのを防止するのに有用であり得る。第1のバッキング要素は、任意の好適な材料で作製することができるが、通常はプラスチック、金属又はセラミックである。これは、非粘着性コーティングなどの好適なコーティングで被覆することができる。一般的な非粘着性コーティングとしては、ポリ(テトラフルオロエチレン)がある。
【0039】
本装置は、第2のバッキング要素を更に含むことができ、この要素は、ベルトの少なくとも一部分が第2のバッキング要素と方向性ガスカーテン生成要素との間に介在するように配置される。第2のバッキング要素は、存在する場合、第1のバッキング要素と同じ目的を果たすことができ、同じ材料で作製することができる。
【0040】
第2、第3、第4、又は更なる堆積ステーション又は方向性ガスカーテン生成要素が使用される場合、対応する追加の更なるバッキング要素を使用してもよい。各バッキング要素は、ベルトの一部が堆積ステーション又は方向性ガスカーテン生成要素とその対応するバッキング要素との間を通過するように、特定の堆積ステーション又はガスカーテン生成要素に対応することができる。2つ以上のバッキング要素を一体化することができ、即ち、それらは単一の要素の異なる部分とすることができる。かかる一体化は必須ではない。
【0041】
バッキング要素は必須ではない。更に、対応するバッキング要素を有し得る堆積ステーション又は方向性ガスカーテン生成要素がある場合もない場合も考えられる。これは、堆積ステーションとローラとの間にベルトの一部分が配置されるように堆積ステーションが配置される場合であり得る。しかし、ベルトがこのように配置されていない場合でも、バッキング要素は必須でないことがある。
【0042】
使用時には、本明細書に記載された装置は、ベルトが好適な速度で移動している間に、第1の自己制限的単層形成材料の単層又は第2の自己制限的単層形成材料の単層をベルトに付着させることができる。単層をベルト上に堆積させる限り、任意の速度を使用することができる。好適な速度は、例えば、少なくとも0.25m/s、少なくとも0.50m/s、少なくとも0.75m/s、少なくとも1m/s、少なくとも1.25m/s、又は少なくとも1.5m/sとしてもよい。
【0043】
上述などの装置は、基材上に交互積層のコーティングを作製する方法において使用することができる。この方法は、第1のローラと第2のローラの周囲でベルトの形態をした基材にテンションをかけることを含むことができる。次いで、第1の自己制限的単層形成材料を含む第1の液体をベルト上に適用しながら、最初の回転の間、ベルトを第1のローラ及び第2のローラの周囲で移動させてもよい。方向性ガスカーテン生成要素を連動させて、ベルトから液体を計量し、かつベルトを乾燥させることを同時に行うができる。結果として、第1の自己制限的単層形成材料の少なくとも単層がベルト上に堆積される。
【0044】
第2、第3、又は更なる堆積ステーションを使用する場合、それらを連動させて、第2、第3、又は更なる自己制限的単層形成材料の第2、第3、又は更なる単層を形成することができる。
【0045】
3つ以上の種類の材料を2つ以上の堆積ステーションを使用せずにベルトに付着させるために、動作中に、任意の自己制限的単層形成材料を変更することが可能である。例えば、本明細書に記載された装置は、第1の堆積ステーションがポリクオタニウムカチオンを堆積させ、第2の堆積ステーションがポリスチレンスルホネートアニオンを堆積させるように構成することができる。ポリクオタニウムカチオンの層とポリスチレンスルホネートの層を付着させた後、ポリクオタニウムをポリトリメチルアンモニウムエチルメタクリレートなどの別のカチオン性材料に取り替えることができ、ポリカチオンをアニオン性シリカナノ粒子などの別のアニオン性材料に取り替えることができる。続いて、ポリトリメチルアンモニウムエチルメタクリレートの層及びアニオン性シリカナノ粒子の層をベルトに付着させることができる。結果として生じるベルトは、ポリクオタニウムの層、ポリスチレンスルホネートの層、ポリトリメチルアンモニウムエチルメタクリレートの層、及びアニオン性シリカナノ粒子の層を有することになる。この手順は、空間又は他の制約によって2つ以上の堆積ステーションの使用ができない場合に特に有用である。
【0046】
ベルトは、第1のローラ及び第2のローラの周囲を移動して、第1の自己制限的単層形成材料の少なくとも1つの層と、第2の堆積ステーションを配置する場合には、第2の自己制限的単層形成材料の少なくとも1つの層を、ベルト上に交互に堆積させることができる。ベルトが無端ベルトである場合、ベルトは第1のローラ及び第2のローラの周囲を任意の好適な回数だけ回転することができ、各回転によって単層又は二重層が表面に付着される。この種類の連続プロセスでは、終了点に達するまでベルトの移動を停止する必要はない。基材の最終用途に応じて、所望の終了点は、所定の数の単層が堆積した時点、所定の堆積時間が経過した時点、所定の厚さを達成した時点、又はコーティングの所定の、光学的、化学的若しくは物理的特性を達成した時点とすることができる。
【0047】
ベルトが明確な始点と終点を有する場合、装置は、ベルトが無端であるときに使用されるプロセスと比較して、幾分異なるプロセスで操作することができる。端部を有するベルトに有用なプロセスの実施例では、1つの堆積ステーションを有する装置を通過することによって、ベルト上に少なくとも1つの単一層又は二重層を提供することができる。2つ以上の堆積ステーションが装置内で使用される場合、ベルトが1回装置を通過すると、追加の層を付着させることができる。一般的には、本装置は、堆積される層毎に1つの堆積ステーションを有する。しかし、必要であれば、ベルトを装置から取り外して、ベルトの始点から追加のコーティングを開始するためにベルトを再装填してもよい。
【0048】
本明細書に記載された装置の特定の実施形態の概略を示す図を参照すると、
図1は、第1のローラ100と第2のローラ110の周囲でテンションをかけられて方向Dに移動するベルト1を有する装置10を示している。追加のローラ120も存在する。堆積ステーション130は、第1の堆積要素131、第1の堆積要素131の下流に配置されたリンス要素1312、及びリンス要素132の下流に配置された第2の堆積要素133を含んでいる。方向性ガスカーテン生成要素140は、堆積ステーション130の下流に配置される。
【0049】
図2は、第1のローラ210及び第2のローラ220の周囲でテンションをかけられたベルト200を有する装置20を示す。追加のローラ211,212,213,214,215,216,217,218,219,221、及び222もまた、ベルト200を案内して移動させるために存在する。使用時には、ベルトはローラ210から方向Eに巻き戻され、テンションコントローラ230を通過するが、このテンションコントローラ230はベルトの適切なテンションを維持するものである。続いて、ベルトは、堆積ステーション240を通過し、ここで、この図の噴霧器である第1の堆積要素241は、ベルト上に第1の自己制限的単層形成材料(図示せず)を含む第1の液体(図示せず)を噴霧する。リンス要素242はベルトから過剰の第1の液体をリンスし、この図の噴霧器である第2の堆積要素243は、ベルト上に第2の自己制限的単層形成材料(図示せず)を含む第2の液体(図示せず)を噴霧する。方向性ガスカーテン生成要素250は、堆積ステーション240の下流に配置され、ベルトから残留する液体の計量と、ベルトの乾燥を同時に行う。
【0050】
例示的な実施形態の列挙
以下の実施形態は、本開示の特定の特徴を説明するために列挙されており、
限定することを意図するものではない。
【0051】
実施形態1. 装置であって、
ベルトを移動させるための第1のローラと、
ベルトを移動させるための第2のローラと、
第1のローラ及び第2のローラの周囲でテンションをかけられたベルトと、
ベルトに面するように配置された堆積ステーションであって、
第1の自己制限的単層形成材料の単層をベルトに付着させるための第1の堆積要素と、
リンス要素と、
第2の自己制限的単層形成材料の単層をベルトに付着させるための第2の堆積要素と、を含む、堆積ステーションと、
堆積ステーションの下流に配置されて、ベルト上に上流方向に吹きつけるガスカーテンを提供する、方向性ガスカーテン生成要素と、を備える装置。
【0052】
実施形態1a. 少なくとも第2の堆積ステーションを更に備える、実施形態1に記載の装置。
【0053】
実施形態2. 当該装置は第1のバッキング要素を更に備え、第1のバッキング要素は、ベルトの少なくとも一部分がバッキング要素と方向性ガスカーテン提供要素との間に介在するように配置される、実施形態1又は1aに記載の装置。
【0054】
実施形態3. 当該装置は第2のバッキング要素を更に備え、第2のバッキング要素は、第1のバッキング要素と同じであっても異なっていてもよく、ベルトの少なくとも一部は第2のバッキング要素と堆積ステーションとの間に介在するように配置されている、実施形態1、1a又は2に記載の装置。
【0055】
実施形態4. 第1の堆積要素及び第2の堆積要素のうちの少なくとも1つは噴霧器である、実施形態1〜3のいずれかに記載の装置。
【0056】
実施形態5. 第1の堆積要素と第2の堆積要素の双方が噴霧器である、実施形態1〜4のいずれかに記載の装置。
【0057】
実施形態6. 第1の堆積要素及び第2の堆積要素のうちの少なくとも1つは、ナイフコータ又はエアーナイフコータである、実施形態1〜4のいずれかに記載の装置。
【0058】
実施形態7. 方向性ガスカーテン生成要素は、ベルトに付着されていない液体、カチオン性材料、又はアニオン性材料を除去するのに十分な圧力を有する方向性ガスカーテンを生成する、実施形態1〜6のいずれかに記載の装置。
【0059】
実施形態8. 当該装置は、ベルトが少なくとも0.25m/sの速度で移動している間に、カチオン性材料又はアニオン性材料の単層をベルトに付着させることができる、実施形態1〜7のいずれかに記載の装置。
【0060】
実施形態9. 当該装置は、ベルトが少なくとも0.5m/sの速度で移動している間に、カチオン性材料又はアニオン性材料の単層をベルトに付着させることができる、実施形態1〜8のいずれかに記載の装置。
【0061】
実施形態10. 当該装置は、ベルトが少なくとも0.75m/sの速度で移動している間に、カチオン性材料又はアニオン性材料の単層をベルトに付着させることができる、実施形態1〜9のいずれかに記載の装置。
【0062】
実施形態11. ベルトは無端ベルトである、実施形態1〜10のいずれかに記載の装置。
【0063】
実施形態12. ベルトは少なくとも1つの端部を有する、実施形態1〜11のいずれかに記載の装置。
【0064】
実施形態13. 第1の自己制限的単層形成材料は、カチオン性材料又はアニオン性材料のうちの1つだけであり、
第2の自己制限的単層形成材料は、カチオン性材料又はアニオン性材料のうちの1つだけであり、
第1の自己制限的単層形成材料及び第2の自己制限的単層形成材料のうちの一方だけがカチオン性材料であり、他方がアニオン性材料であることを条件とする、
実施形態1〜12のいずれかに記載の装置。
【0065】
実施形態14. 基材上に交互積層のコーティングを作製する方法であって、
(a)ベルトが堆積ステーションに面するように、第1のローラ及び第2のローラの周囲でベルトの形態をした基材にテンションをかけることであって、
堆積ステーションは、
第1の自己制限的単層形成材料の少なくとも単層をベルトに付着させるための第1の堆積要素を含む、ことと、
(b)第1の堆積要素を連動させてベルト上に第1の自己制限的単層形成材料を含む第1の液体を適用しながら、ベルトを最初の回転の間、第1のローラ及び第2のローラの周囲で移動させることと、
(c)堆積ステーションの下流に配置された方向性ガスカーテン生成要素を連動させて、ベルトからの液体の計量とベルトの乾燥を同時に行うガスカーテンを提供することと、を含む方法。
【0066】
実施形態15. 堆積ステーションは、
第1の堆積要素の下流に配置されたリンス要素と、
当該リンス要素の下流に配置されて第2の自己制限的単層形成材料の単層をベルトに付着させるための第2の堆積要素と、を更に含み、
当該方法は、
(d)リンス要素を連動させることと、
(e)第2の堆積要素を連動させてベルト上に第2の自己制限的単層形成材料の少なくとも単層を付着させることと、を更に含む、実施形態14に記載の方法。
【0067】
実施形態16. 当該装置は実施形態1〜13のいずれかに記載の装置である、実施形態15に記載の方法。
【0068】
実施形態17. ベルトは無端ベルトである、実施形態15又は16に記載の方法。
【0069】
実施形態18. 所定数の単層のうちの少なくとも1つが堆積されるまで、所定の時間が経過するまで、所定の厚さが達成されるまで、所定の、光学的、化学的又は物理的特性が達成されるまで、ベルトは移動を停止しない、実施形態16又は17に記載の方法。
【0070】
実施形態19. ベルトは第1の端部及び第2の端部を有し、ステップ(b)は、ベルトを第2のローラの周囲で巻きながら、第1のローラからベルトを巻き戻すことを更に含む、実施形態15〜18のいずれかに記載の方法。
【0071】
実施形態20.
(f)堆積ステーションを解除することと、
(g)堆積ステーションが解除されている間にベルトを第2のローラから第1のローラに巻き戻すことと、を更に含む、実施形態18に記載の方法。
【0072】
実施形態21. ステップ(a)〜(g)の各々のステップが少なくとも更にもう1回順番に繰り返される、実施形態20に記載の方法。
【0073】
実施形態22. 当該方法は、第2のローラからベルトを取り外し、第1のローラ上のベルトを取り替えることを更に含む、実施形態20又は21に記載の方法。
【0074】
実施形態23. 第1の自己制限的単層形成材料は、カチオン性材料又はアニオン性材料のうちの1つだけであり、第2の自己制限的単層形成材料は、カチオン性材料又はアニオン性材料のうちの1つだけであり、第1の自己制限的単層形成材料及び第2の自己制限的単層形成材料のうちの一方だけがカチオン性材料であり、他方がアニオン性材料であることを条件とする、実施形態14〜22のいずれかに記載の方法。
【0075】
実施形態24. 実施形態1〜13のいずれかに記載の装置を用いて実施される、実施形態14〜23のいずれかに記載の方法。
【0076】
実施形態25. 少なくとも第1の方向性ガスカーテン生成要素は、ベルトに対して80°〜90°の角度でベルトに向いている、実施形態1〜24のいずれかに記載の装置又は方法。
【0077】
実施形態26. 少なくとも第1の方向性ガスカーテン生成要素がベルトに対して85°〜90°の角度でベルトに向いている、実施形態1〜25のいずれかに記載の装置又は方法。
【0078】
実施形態27. 少なくとも第1の方向性ガスカーテン生成要素が、ベルトに対して90°の角度でベルトに向いている、実施形態1〜26のいずれかに記載の装置又は方法。
【0079】
実施形態28. 各方向性ガスカーテン生成要素は、実施形態24〜27のいずれかに特定された角度でベルトに向いている、実施形態1〜13のいずれかに記載の装置又は方法。
【0080】
実施形態29. 第1の方向性ガスカーテン生成要素とベルト表面との間の間隙は、0.8mm以下、0.75mm以下、0.7mm以下、0.65mm以下、0.6mm以下、0.55mm以下、又は0.5mm以下である、実施形態1〜28のいずれかに記載の装置又は方法。
【0081】
実施形態30. 各方向性ガスカーテン生成要素とベルト表面との間の間隙は、0.8mm以下、0.75mm以下、0.7mm以下、0.65mm以下、0.6mm以下、0.55mm以下、又は0.5mm以下である、実施形態1〜29のいずれかに記載の装置又は方法。
【0082】
実施形態31. 各方向性ガスカーテン生成要素によって生成される長さ当たりの空気流量は、上述の要素が連動されたときに、m
2/sの単位で、0.02以上、0.02以上、0.024以上、0.025以上、0.026以上、0.028以上、又は0.03以上である、実施形態1〜30のいずれかに記載の方法。
【0083】
実施形態32. 当該方法の持続時間の少なくとも一部の間、ベルトは、少なくとも0.25m/s、少なくとも0.5m/s、又は少なくとも0.75m/sの速度で移動する、実施形態1〜30のいずれかに記載の方法。
【0084】
実施形態33. 当該装置は、少なくとも2個、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個、少なくとも100個、少なくとも150個、又は少なくとも200個の堆積ステーションを備える、実施形態1〜32のいずれかに記載の装置又は方法。
【0085】
実施例のセクション
材料
ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(PDAC)は水中の20mM(繰り返し単位質量に基づく)溶液として使用し、分子量(MW)100〜200Kを有し、Sigma Aldrich(St.Louis,MO,USA)から水中20重量%溶液として入手した。
【0086】
SiO
2ナノ粒子は水中の9.6g/Lコロイド分散液として使用し、Ludox AS−40という商品名でSigma Aldrichから水中40重量%懸濁液として入手した。
【0087】
テトラメチルアンモニウムクロライド(TMACl)は、Sachem Inc.(Austin,TX)から水中の50重量%溶液として入手した。
【0088】
テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAOH)は、Alfa Aesar(Ward Hill,MA)から水中の2.38重量%溶液として入手した。
【0089】
101.6ミクロンの厚さの下塗りポリエチレンテレフタレート(PET)は、SKC,Inc.からSKYROL SH40の商品名で入手した。
【0090】
スプレーノズルは、Spraying Systems Co.(Wheaton,IL USA)から、TPU−4001E SSの商品名で入手した。
【0091】
分枝状ポリエチレンイミン(PEI)は、水中の0.1重量%溶液として使用し、25,000g/molの分子量を有し、Sigma Aldrich(St.Louis,MO,USA)から入手した。
【0092】
ポリ(アクリル酸)(PAA)は水中の0.2重量%溶液として使用し、100,000g/molの分子量を有し、水中の35重量%溶液としてSigma Aldrich(St.Louis,MO,USA)から入手した。
【0093】
実験条件
図1に記載された装置を使用して、本明細書に記載されたデータを生成した。操作条件は表1に記載されている。PDACを繰り返し単位に関して20mMの濃度で使用し、TMAOHの添加によりpHを10.0に調整した。SiO
2は、TMACl(最終TMACl濃度は48mM)と混合した9.6g/Lの濃度で使用し、TMAOHの添加によりpHを11.5に調整した。
【0094】
厚さの測定は、Filmetics(San Diego,CA)F10−AR反射率計を使用して行った。測定のサンプルは、サンプルが同じ数のカチオン及びアニオンの層を有することを確実にするために、アニオン堆積ステーションの下流及びカチオン堆積ステーションの上流のベルトの一部分から採取した。
【表1】
【0095】
実施例1
PDAC溶液をベルトの全回転の間スプレーした。これに続いて、全回転の間のDI水を大量に用いてリンスすること、次に少量でリンスすること、続いて相補的なSiO
2溶液によりリンスすること、及びDI水を用いて更に2回リンスすることを続けた。このプロセスを行うと、基材上に単一の二重層が一度コーティングされる。このプロセスを合計7つの二重層について繰り返した。
【0096】
結果として生じるコーティングは、0.7%のヘイズ及び95.8%の可視光透過率(BYK−Gardner(Geretsired,Germany)のHaze Gard Plusで測定)を有していた。コーティングは、Filmetrics F10−AR反射率計を用いて測定し135.6nmの厚さとなった。Filmetrics F10−AR反射率計を用いて、380nmと800nmとの間の波長における%反射率を測定したところ、
図3のような結果となった。
【0097】
実施例2〜25
2つのローラの間でSKYROLベルトにテンションがかけられた。第1のローラの上流のベルト上に、液体を噴霧するための噴霧器を設置した。方向性ガスカーテン生成要素を第1のローラに垂直に配置した。各実験の開始時に、ベルトを表示された速度で移動させ、水噴霧器を水の特定の流量で作動させた。エアーナイフとローラとの間の距離、方向性ガスカーテン生成要素によって生成されるガスの地面に対する角度、及び方向性ガスカーテン生成要素を通る空気の流量を、各実験の順番に変化させて、方向性エアカーテン生成要素の下流に乾燥したベルトをうまく生成する条件を決定した。乾燥は、移動するウェブにラテックス片を接触することによって決定した。湿ったウェブはラテックスにマークを残すが、乾燥したウェブはマークを残さない。「乾燥までの距離」は、ベルトが乾燥していた点までのエアーナイフから下流の距離である。第2のローラは、方向性ガスカーテン生成要素から43.2cm下流にあった。したがって、乾燥までの距離がないということは、ウェブが第2のローラに達したときにウェブがまだ湿っていることを意味する。乾燥までの距離が0であることは、ウェブが方向性ガスカーテン生成要素の下流の、測定を取り得る最も早い点にあったことを示している。
【0098】
これらの実験結果を表2の一覧表に示す。表2において、「長さ当たりの流量」は、方向性ガスカーテン生成要素を通る空気の全流量を、この要素によって生成されるガスカーテンの長さで除したものである。「角度」は、地面に対するガスカーテンの角度であり、ガスカーテンは全ての場合においてベルトに対して垂直である。「水の流量」は、第1のローラの上流のベルトに噴霧された水の流量である。「ベルトとの間隙」は、方向性ガスカーテン生成要素の開口とベルトの湿った表面との間の距離である。「乾燥までの距離」は上で定義されている。
【表2】