(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ゲルアミン緩衝剤が、ビス(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−トリス(ヒドロキシメチル)−メタン、1,3−ビス(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)プロパン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、及びトリエタノールアミンから選択される、請求項1又は2に記載のゲル。
トリエタノールアミンを含む緩衝液中の架橋ポリアクリルアミドを含む、ポリアクリルアミドゲルであって、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを有さないかまたは0.3mM以下で有し、かつ、ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ-トリス(ヒドロキシメチル)メタンを有さないかまたは0.3mM以下で有する、ゲルを除く、請求項1〜4のいずれか1項に記載のゲル。
前記ゲルアミン緩衝剤が、ビス(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−トリス(ヒドロキシメチル)−メタン、1,3−ビス(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)プロパン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンから選択され、前記ゲルアミン緩衝剤の濃度が、40mM〜150mMの範囲である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のゲル。
室温で保存される場合、少なくとも6ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも10ヶ月、または4℃で保存される場合、少なくとも12ヶ月、もしくは最大24ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも16ヶ月、少なくとも14ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも10ヶ月、もしくは少なくとも8ヶ月、の保存寿命を有するように配合される、請求項1〜19のいずれか1項に記載のゲル。
前記ゲルアミン緩衝剤のpKaが、5〜10、もしくは5.5〜10、もしくは6〜9、もしくは7〜8.5、もしくは7.9〜8.2、もしくは8〜8.1、もしくは7.9〜9.8の範囲であるか、または前記ゲルアミン緩衝剤のpKaが、8.1である、請求項1〜20のいずれか1項に記載のゲル。
前記形成工程後かつ前記装填工程前に最大24ヶ月、最大18ヶ月、最大16ヶ月、最大14ヶ月、最大12ヶ月、最大10ヶ月、最大8ヶ月、または最大6ヶ月の期間の間、冷蔵下で前記ゲルを保存することをさらに含む、請求項22又は23に記載の方法。
【背景技術】
【0003】
ゲル電気泳動は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、ポリペプチド、及びタンパク質などの生体分子の分離のための一般的な手順である。ゲル電気泳動では、課された電場により巨大分子が濾過ゲルを介して移動する速度に従って、それらがバンドに分離される。
【0004】
この技術で使用される装置は、ガラス管に封入されたゲルまたはガラスもしくはプラスチックプレートの間にスラブとして挟まれたゲルを含み得、それはゲルカセットと称されることもある。ゲルは、塩の導電性緩衝溶液で飽和された細孔を画定する開放分子ネットワーク構造を有する。ゲルを通るこれらの細孔は、移動する巨大分子の通過を許容するのに十分な大きさである。
【0005】
ゲルカセットまたは他の装置は、ゲルと電源のカソードまたはアノードとの間の電気的接触を提供する緩衝溶液と接触しているチャンバ内に配置される。巨大分子及び追跡色素を含有するサンプルをゲルの上部に置く。電位をゲルに印加して、サンプル巨大分子及び追跡色素をゲルの底部へ移動させる。電気泳動は、追跡色素がゲルの末端に達する直前に停止される。次いで、分離された巨大分子のバンドの位置が決定される。追跡色素及び既知のサイズの巨大分子と比較して特定のバンドが移動した距離を比較することによって、他の巨大分子のサイズが決定され得る。
【0006】
ゲルを通る巨大分子の移動速度は、4つの主な要因に依存する:支持マトリックス(すなわち、ゲルの多孔性)、巨大分子のサイズ及び形状、巨大分子の電荷密度、ならびに印加された電界強度。電気泳動系は概して、ゲルからゲルへ、及びサンプルからサンプルへの間で再現性を持たせるために、これらの因子を制御しようとする。しかしながら、これらの因子の各々がゲル系の化学種における多くの変数に敏感であるため、ゲル間の均一性を維持することは困難である。
【0007】
電気泳動において一般的に使用される2種類の支持マトリックスは、ポリアクリルアミド及びアガロースである。支持マトリックスは多孔質媒体として作用し、モレキュラーシーブのように挙動する。アガロースは比較的大きな細孔サイズを有し、概して核酸及びタンパク質複合体の分離に使用される。ポリアクリルアミドは比較的小さな細孔サイズを有し、ほとんどのタンパク質及びより小さな核酸を分離するために一般的に使用される。
【0008】
ポリアクリルアミドゲルは、アクリルアミドモノマーの重合によって生成される。これらのモノマーは、鎖末端の遊離官能基と反応するN,N,−メチレンビスアクリルアミド(「ビスアクリルアミド」)のような二官能性化合物の添加によって長鎖に架橋される。アクリルアミド及びビスアクリルアミド(%T=X%で表され、ここで、Xはゲル中の全アクリルアミド濃度である)の合計濃度は、ゲルの細孔サイズに影響を及ぼす。例えば、所定の架橋剤濃度(%C)では、増加したアクリルアミド濃度(%T)は、細孔サイズの減少をもたらし、その結果低分子量分子の分解がもたらされ、逆もまた同様である。ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)は、ゲルが光学的に透明であり、電気的に中性であり、ある範囲の細孔サイズで作製され得るので、望ましい電気泳動特性を提供する。
【0009】
電気泳動は、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)のようなアニオン性界面活性剤を用いた変性条件下で行なわれ得る。ポリアクリルアミドゲル電気泳動がドデシル硫酸ナトリウム、すなわちSDS−PAGEとして使用される場合、巨大分子の電荷密度はSDSを系に加えることによって制御される。SDS分子は、巨大分子と会合し、それらに均一な電荷密度を付与し、本来の分子電荷の影響を実質的に拒絶する。得られたSDS−巨大分子複合体は、負に帯電しており、そのサイズに基づいてゲル中で分解される。
【0010】
歴史的に、SDS−PAGEゲルは、通常、塩基性pHで注入され、泳動されていた。タンパク質の分離に使用される最も一般的なPAGE緩衝系は、Ornstein及びDavisによって開発されたものであり(Ornstein,L.(1964)Ann.NY Acad.Sci.,121:321及びDavis,B.J.(1964)Ann.NY Acad.Sci.,121:404)、LaemmliによってSDSと共に使用するために改変された(Laemmli,1970,Nature,227,680−686)。Laemmli緩衝系は、分離ゲル中でHClを用いてpH8.8に滴定された0.375Mのトリス(ヒドロキシメチル)アミノ−メタン(「トリス」)からなる。スタッキングゲルは、pH6.8に滴定された0.125Mのトリスからなる。アノード及びカソード泳動緩衝剤は、0.024Mのトリス、0.192Mのグリシン、0.1%のSDS(すなわち、「トリス−グリシン緩衝剤」として)を含有する。
【0011】
様々な緩衝系が開発されているが、トリス−グリシンは、比較的安価であり、広く使用されているため産業界の実務者に親しみやすく、定性的な差異を有する巨大分子バンド及びレーン形状を提供する。さらに、銀染色などの下流のアプリケーションは、トリス−グリシン緩衝系と適合性がある。銀染色に関して、トリス−グリシンゲルは、トリシンまたはビシンで緩衝されたゲルよりも低いバックグラウンド染色を提供することが報告されている(Rabilloud,T.,et al.,Cell Mol.Biol.,40:57−75(1994))。
【0012】
上記のような塩基性pH値を有する伝統的な(例えば、トリス−グリシン)緩衝剤でのポリアクリルアミドゲルの使用の欠点は、ゲルが経時的にポリアクリレートアニオン及びアンモニウムカチオンに加水分解する傾向があることである。ポリアクリレートアニオンの負電荷は、ゲル中の巨大分子の移動距離が減少した巨大分子(例えば、サンプルの負に帯電したタンパク質)の適切な移動を妨げる。この移動の干渉は、望ましくない「スマイリング効果」を引き起こし得、ゲルエッジ付近の低分子量タンパク質バンドが上方に湾曲する傾向があり、分離の正確な決定が困難になる。加水分解はまた、巨大分子バンドの分解能を低下させ得る。冷蔵されていない高pH緩衝剤を含むゲルは、加水分解により数日で分解し得る。しかしながら、4℃程度の温度に保たれたこの種の冷蔵ゲルでさえ、製造の2〜3ヶ月以内に劣化し始め得る。
【0013】
したがって、中性のpHを有する電気泳動ゲル緩衝配合物が必要とされ、それにより、延長された保存寿命を有するポリアクリルアミドゲルを提供する。さらに、分離された分子の分解能のシャープネスが許容可能なレベルに維持され、比較的大きな緩衝能を呈するように、電気泳動の間に巨大分子の有効な分離を提供し得るそのような配合物の必要性が存在する。経済的なトリス−グリシン泳動緩衝剤及びサンプル緩衝剤、ならびに業界がある程度の親しみを有するような泳動及びサンプル緩衝剤と適合する電気泳動ゲル緩衝剤の必要性もまた存在する。さらに、トリス−グリシンゲルに共通する下流のアプリケーションとの適合性を有するそのような中性pH緩衝配合物の必要性が存在する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本開示の少なくともいくつかの特徴及び利点は、添付の図面を参照して考慮すべき例示的な実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0020】
【
図1A】8.7のpHを有する対照ポリアクリルアミドゲル配合物を有し、かつゲルを用いて電気泳動分離を行った後に採取した400mMのトリス及び0mMのグリシンを含む、市販の非勾配ポリアクリルアミドゲル、すなわちNovex(商標)トリス−グリシンポリアクリルアミドゲル(%T=10%)(Thermo Fisher Scientific,Inc製)の注釈付きグレースケール写真を示す。
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図1B】6.3のpHを有するポリアクリルアミドゲル配合物を有し、かつゲルを用いて電気泳動分離を行った後に採取した125mMのトリス及び125mMのトリシンを含み、非勾配ポリアクリルアミドゲル(%T=10%)の例示的な実施形態の注釈付きグレースケール写真を示す。
【
図1C】、7.5のpHを有するポリアクリルアミドゲル配合物を有し、かつゲルを用いて電気泳動分離を行った後に採取した125mMのトリス及び125mMのトリシンを含み、非勾配ポリアクリルアミドゲル(%T=10%)の例示的な実施形態の注釈付きグレースケール写真を示す。
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図1D】7.1のpHを有し、かつゲルを用いて電気泳動分離を行った後に採取した125mMのトリス、125mMのグリシン、及び50mMのアスパラギンを含むポリアクリルアミドゲル配合物を有し、非勾配ポリアクリルアミドゲル(%T=10%)の例示的な実施形態の注釈付きグレースケール写真を示す。
【
図1E】7.3のpHを有し、かつゲルを用いて電気泳動分離を行った後に採取した125mMのトリス、125mMのグリシン、及び50mMのタウリンを含むポリアクリルアミドゲル配合物を含み、非勾配ポリアクリルアミドゲル(%T=10%)の例示的な実施形態の注釈付きグレースケール写真を示す。
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図1F】7.1のpHを有し、かつゲルを用いて電気泳動分離を行った後に採取した125mMのトリス、125mMのグリシン、及び75mMのトレオニンを含むポリアクリルアミドゲル配合物を有し、非勾配ポリアクリルアミドゲル(%T=10%)の例示的な実施形態の注釈付きグレースケール写真を示す。
【
図1G】7.1のpHを有し、かつゲルを用いて電気泳動分離を行った後に採取した125mMのトリス、125mMのグリシン、及び25mMのセリンを含むポリアクリルアミドゲル配合物を有し、非勾配ポリアクリルアミドゲル(%T=10%)の例示的な実施形態の注釈付きグレースケール写真を示す。
【
図1H】7.1のpHを有し、かつゲルを用いて電気泳動分離を行った後に採取した125mMのトリス、125mMのグリシン、及び50mMのセリンを含むポリアクリルアミドゲル配合物を有し、非勾配ポリアクリルアミドゲル(%T=10%)の例示的な実施形態の注釈付きグレースケール写真を示す。
【
図2A】7.1のpHを有し、かつゲルを用いて電気泳動分離を行った後に採取した75mMのトリス、125mMのグリシン、及び10mMのトレオニンを含むポリアクリルアミドゲル配合物を有し、非勾配ポリアクリルアミドゲル(T=10%)の例示的な実施形態の注釈付きグレースケール写真を示す。
【
図2B】約6.5のpHを有し、かつゲルを用いて電気泳動分離を行った後に採取した未知の濃度のトリス、グリシン、及びタウリンのポリアクリルアミドゲル配合物を含むと考えられる市販の非勾配ポリアクリルアミドゲル、すなわちMini−PROTEAN(登録商標)TGX(商標)ゲル(%T=10%)(Bio−Rad Laboratories、Inc.製)の注釈付きグレースケール写真を示す。
【
図2C】約6.3のpHを有し、かつゲルを用いて電気泳動分離を行った後に採取した未知の濃度のトリス、グリシン、及びグリセロールのポリアクリルアミドゲル配合物を含むと考えられる市販の非勾配ポリアクリルアミドゲル、すなわちPrecise(商標)トリス−グリシンゲル(%T=10%)(Thermo Fisher Scientific,Inc.製)の注釈付きグレースケール写真を示す。
【
図3A】7.1のpHを有し、かつゲルを用いて電気泳動分離を行った後に採取した75mMのトリス、125mMのグリシン、及び10mMのトレオニンを含む、ポリアクリルアミドゲル配合物を有する、勾配ポリアクリルアミドゲル(%T=4〜20%)の例示的な実施形態の注釈付きグレースケール写真を示す。
【
図3B】6.5のpHを有し、かつゲルを用いて電気泳動分離を行った後に採取した未知の濃度のトリス、グリシン、及びタウリンのポリアクリルアミドゲル配合物を含むと考えられる市販の勾配ポリアクリルアミドゲル、すなわちMini−PROTEAN(登録商標)TGX(商標)ゲル(%T=4〜20%)(Bio−Rad Laboratories、Inc.製)の注釈付きグレースケール写真を示す。
【
図3C】約6.3のpHを有し、かつゲルを用いて電気泳動分離を行った後に採取した未知の濃度のトリス、グリシン、及びグリセロールのポリアクリルアミドゲル配合物を含むと考えられる市販の非勾配ポリアクリルアミドゲル、すなわちPrecise(商標)トリス−グリシンゲル(%T=4〜20%)ゲル(Thermo Fisher Scientific,Inc.製)の注釈付きグレースケール写真を示す。
【
図4A】7.1のpHを有し、かつゲルを用いて電気泳動分離を行った後に採取した117mMのトリス、195mMのグリシン、及び15.6mMのトレオニンを含むポリアクリルアミドゲル配合物を含む、非勾配ポリアクリルアミドゲル(T=8〜16%)の例示的な実施形態の注釈付きグレースケール写真を示す。
【
図4B】約6.5のpHを有し、かつゲルを用いて電気泳動分離を行った後に採取した未知の濃度のトリス、グリシン、及びタウリンのポリアクリルアミドゲル配合物を含むと考えられる市販の勾配ポリアクリルアミドゲル、すなわちMini−PROTEAN(登録商標)TGX(商標)ゲル(T=8〜16%)(Bio−Rad Laboratories、Inc.製)の注釈付きグレースケール写真を示す。
【
図5】ゲルを使用して電気泳動を行った後に採取した6つの非勾配ポリアクリルアミドゲルのPageRuler(商標)Plus Pre−Stained Ladder装填、E.Coli装填、BSA装填、及びIgG装填レーンの横並びの注釈グレースケール写真を示し、ここで、1つのゲルは、pHが8.7であり、400mMのトリス及び0mMのグリシンを含む対照ポリアクリルアミドゲル配合物を有する、市販の非勾配ポリアクリルアミドゲル、すなわちNovex(商標)トリス−グリシンポリアクリルアミドゲル(T=10%)(Thermo Fisher Scientific,Inc.製)であり、ならびに5つのゲルは、7.1のpH及びトレオニンの可変濃度を有する非勾配ポリアクリルアミドゲル(T=10%)の例示的な実施形態である。
【
図6A】7.1のpHを有し、かつゲルを用いて電気泳動分離を行った後に採取した78.5mMのトリス、131mMのグリシン、及び10.5mMのトレオニンを含む、ポリアクリルアミドゲル配合物を有する、非勾配ポリアクリルアミドゲル(%T=6%)の例示的な実施形態の注釈付きグレースケール写真を示す。
【
図6B】非勾配ポリアクリルアミドゲル(%T=6%)の例示的な実施形態の注釈付きグレースケール写真を示し、7.1のpHを有し、かつゲルを用いて電気泳動分離を行った後に採取した150mMのトリス、250mMのグリシン、及び20mMのトレオニンを含む、ポリアクリルアミドゲル配合物を有する。
【
図6C】非勾配ポリアクリルアミドゲル(T=4〜20%)の例示的な実施形態の注釈付きグレースケール写真を示し、7.1のpHを有し、かつゲルを用いて電気泳動分離を行った後に採取した135mMのトリス、217mMのグリシン、及び17.3mMのトレオニンを含む、ポリアクリルアミドゲル配合物を有する。
【
図7】ゲルを使用して電気泳動を行った後に採取した6つの非勾配ポリアクリルアミドゲルのPageRuler(商標)Plus Pre−Stained Ladder装填、E.Coli装填、BSA装填、及びIgG装填レーンの横並びの注釈グレースケール写真を示し、ここで、1つのゲルは、pHが8.7であり、400mMのトリス及び0mMのグリシンを含む対照ポリアクリルアミドゲル配合物を有する、市販の非勾配ポリアクリルアミドゲル、すなわちNovex(商標)トリス−グリシンポリアクリルアミドゲル(T=10%)(Thermo Fisher Scientific,Inc.製)であり、ならびに5つのゲルは、7.1のpH及びグリシンの可変濃度を有する非勾配ポリアクリルアミドゲル(T=10%)の例示的な実施形態である。
【
図8】ゲルを使用して電気泳動を行った後に採取した6つの非勾配ポリアクリルアミドゲルのPageRuler(商標)Plus Pre−Stained Ladder装填、E.Coli装填、BSA装填、及びIgG装填レーンの横並びの注釈グレースケール写真を示し、ここで、1つのゲルは、pHが8.7であり、400mMのトリス及び0mMのグリシンを含む対照ポリアクリルアミドゲル配合物を有する、市販の非勾配ポリアクリルアミドゲル、すなわちNovex(商標)トリス−グリシンポリアクリルアミドゲル(T=10%)であり、ならびに5つのゲルは、7.1のpH及びトレオニンの可変濃度を有する非勾配ポリアクリルアミドゲル(T=10%)の例示的な実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の詳細な説明は、例示的な具体的実施形態を参照するが、多くの代替形態、改変形態、及び変形形態が当業者には明らかであろう。したがって、特許請求の範囲に記載された主題は、広く見られることが意図されている。
【0022】
本明細書全体を通して使用される用語は、一般に、本発明の文脈内で、かつ各用語が使用される具体的な文脈において、当該技術分野における通常の意味を有する。特定の用語は、本開示の配合物、系、及び方法、ならびにそれらを作製及び使用する方法を記述する際に実務者に追加の指針を提供するために、以下または本明細書の他の箇所で論じられる。同じことが複数の方法で言えることは理解されよう。したがって、代替の言語及び同義語は、本明細書で論じられる用語のいずれか1つ以上に使用されてもよく、また、用語が本明細書でより詳細に精緻化または議論されているか否かにかかわらず特別な意味を持たない。特定の用語の同義語が提供されている。1つ以上の同義語のリサイタルは、他の同義語の使用を排除するものではない。本明細書で論じられる任意の用語の例を含む、本明細書中のどこかの実施例の使用は、例示的なものに過ぎず、決して本明細書に示される実施形態のいずれかまたは例示されるいずれかの用語の範囲及び意味を限定するものではない。
【0023】
本明細書中で使用される場合、用語「不連続緩衝剤」、「不連続系」及び「不連続緩衝剤系」は概して、ポリアクリルアミドゲル電気泳動系で使用される2つの水性緩衝系のうちの1つを指す。不連続緩衝系は、連続緩衝系と機能的及び化学的に区別される。典型的には、連続系は、単一の分離ゲルのみを有し、タンク及びゲルにおいて同じ緩衝剤を使用する。不連続系では、スタッキングゲルと呼ばれる非制限的な大きな細孔ゲルが、しばしば分離ゲルの上に積層される(「分解ゲル」と称されることもある)。各ゲルは、同一または異なる緩衝剤で作製することができ、タンク緩衝剤はゲル緩衝剤とは異なる。不連続性は、より速い移動先導イオン(例えば、塩化物)及びより遅い移動後続イオン(複数可)(グリシン、トレオニン、及び/またはセリン)のイオン移動度の差によって生じる。不連続系で得られる分解能は、分析対象分子の鋭い開始領域を生成するための不連続系の濃縮効果により、分析対象物の希釈溶液を含むサンプルの連続系で得られる分解能よりもはるかに大きい。連続バッファ系と不連続バッファ系との間の相違点は、本発明が関係する当業者には周知である。
【0024】
用語「バンドシャープネス」は、様々なゲル配合物に現れる移動したバンドのシャープネスを比較するために使用される相対的な用語である。この用語は、2つ以上の様々なゲル配合物の間の相対的バンドシャープネスを比較する場合に特に使用される。バンドシャープネスを決定するために、様々な方法が使用され得る。例えば、得られる解像度の程度、バンドシャープネス、またはバンドシャープネスが改善される程度に応じて、目視検査によって決定され得る。バンドシャープネスのより定量的な評価を得るために、ゲルイメージング及び分析ソフトウェアが用いられ得る。例示的に、限定されないが、当該技術分野で使用されるゲルイメージング及び分析ソフトウェアは典型的に、例えば、TOTALLAB(商標)ソフトウェア(Nonlinear Dynamics Ltd,Durham,NC)、GEL−PROTM Analyzer(Media Cybernetics、Bethesda、MD)またはLABIMAGE(登録商標)1D L300 Gel Analysis software(Lablmage,Leipzig,Germany)である。バンドシャープネスは、ゲル中の分解された各バンドの面積を測定し、その面積を各ウェルの幅(一般に一定である)で割ることによって決定され得る。バンドシャープネスを決定する別の方法は、ゲルイメージ及び分析ソフトウェアによって検出される個々のピークの幅を直接測定することであり得る。よりシャープなバンドは、タンパク質質量がより小さな領域に分布するため、対象のタンパク質を検出する可能性を高める。
【0025】
例示的な実施形態では、本開示は、ゲル及び緩衝系を含む電気泳動系を企図し、ここで、分離はほぼ中性のpHで生じる。本明細書中で使用される場合、ほぼ中性のpHは概して、約6.5〜約7.5の範囲のpH、例えば約6.9〜約7.5の範囲のpH、または例えば約7.0〜約7.2の範囲のpHであり得る。いかなる特定の理論またはメカニズムにも縛られることなく、ほぼ中性のpH電気泳動システムの使用により、電気泳動(例えば、タンパク質、核酸、炭水化物など)に供されるサンプル中の生体分子が完全にまたは実質的に還元され、加水分解されないままであることが保証されると考えられる。有利には、ほぼ中性のpHで、タンパク質の第一級アミノ基は、未重合のアクリルアミドとの反応性が低く、それにより、より高い分解能及び改善されたバンドシャープネスが可能になる。さらに、チオール基は、SDS−PAGEが従来行われているよりアルカリ性の条件下よりも、酸化の影響を受けにくい。
【0026】
均一なアクリルアミド濃度を有するゲルは、概してパーセンテージとして表され、非勾配ゲルと称される。非勾配ゲルにおいて、均一なアクリルアミド濃度は、ゲル全体にわたって均一なモレキュラーシーブを提供する。あるいは、ゲルの長さにわたって不均一なアクリルアミド濃度を有するゲルが、勾配ゲルと称される。一般に、勾配ゲルでは、アクリルアミド濃度は、ゲルの下向きの長さに沿って徐々にまたは段階的に増加する。したがって、勾配ゲルでは、段階的なアクリルアミド濃度は、ゲル全体にわたってますます高密度のモレキュラーシーブを提供し、それにより同じサイズの非勾配ゲルが提供できるよりも広い範囲の巨大分子のゲル内での分離を提供する。
【0027】
ゲルは、スタッキング部分を含んでも含まなくてもよい。スタッキング部分を有さないゲルは、電気泳動ゲル装置全体例えば、ゲルカセットにおいて単一のアクリルアミド溶液から形成されたゲルであり、それに対して、スタッキング部分を有するゲルは、少なくとも2つのアクリルアミド溶液から形成される:(1)巨大分子が溜まる小濃度の低濃度スタッキングゲル、及び(2)タンパク質分離が起こるゲルのより大きな部分。従来のトリス−グリシン電気泳動ゲルシステムでは、巨大分子は、(ゲル緩衝剤中の)高度に可動性の先導塩化物イオンと(泳動緩衝剤中の)より遅いトレーリンググリシンイオンとの間のスタッキングゲル中にスタックされる。スタッキングゲルを使用する理由は、ゲル中のバンドの分解能を向上させるためである。スタックされた巨大分子バンドは、分離ゲルに到達するとふるい分けされる。分離ゲルは、上述したように、非勾配ゲルまたは勾配ゲルであり得る。
【0028】
本開示の基礎を形成するゲル配合物は、いくつかの実施形態では、不連続緩衝系の一部として使用される場合に望ましい性能特性を提供し得る。不連続緩衝系は、ゲル中に存在する緩衝剤からアノードチャンバー、カソードチャンバー、またはアノード及びカソードチャンバーの両方で異なる水性緩衝剤を使用するものである。水性泳動緩衝剤の濃度は、電気泳動ゲルの緩衝剤濃度と異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、本開示によるゲル配合物は、スタッキングゲル及び分解ゲルを含み得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、ゲル配合物は、スタッキングゲル及び分解ゲル(すなわち、分離ゲル)を含み得る。スタッキングゲル対分解ゲル比(S:Rとも示される)の非限定的な例は、約0.5:9.5、約1:9、約1.5:8.5、約2:8、約2.5:7.5、約3:7、約3.5:6.5、約4:6、約4.5:5.5、または約1:1であり得る。一般的に、スタッキング対分解ゲルの比は、例えば分離及びサンプル要件のような様々な要因に依存して可変し得る。不連続ゲル電気泳動系の文脈で使用される場合、用語スタッキング及び分解ゲルの用語の意味は、当業者に周知である。典型的には、スタッキングゲル中に存在するポリアクリルアミド及び/または架橋剤(例えば、ビスアクリルアミド)のパーセンテージは、分解ゲル中に存在するポリアクリルアミド及び/または架橋剤のパーセンテージ未満であり得る。いくつかの実施形態では、スタッキングゲル中に存在するポリアクリルアミドのパーセンテージは、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満であろう。いくつかの実施形態では、スタッキングゲル中に存在するポリアクリルアミドのパーセンテージは、約2.5%以下であり得る。
【0030】
電気泳動系及び配合物の一実施形態では、約1%〜約6%の適切な架橋剤(%C)例えば、ビスアクリルアミドを用いて、約2.5%〜約25%のアクリルアミド(%T)の範囲の分解ポリアクリルアミドゲルは、重合される。一実施形態では、ゲル緩衝剤の存在下で約2%〜約5%の架橋剤(%C)を用いて、ゲルは、重合される。一実施形態では、ポリアクリルアミドゲルは、25%のアクリルアミド、24%のアクリルアミド、23%のアクリルアミド、22%のアクリルアミド、21%のアクリルアミド、20%のアクリルアミド、19%のアクリルアミド、18%のアクリルアミド、17%のアクリルアミド、16%のアクリルアミド、15%のアクリルアミド、14%のアクリルアミド、13%のアクリルアミド、12%のアクリルアミド、11%のアクリルアミド、10%のアクリルアミド、9%のアクリルアミド、8%のアクリルアミド、7%のアクリルアミド、6%のアクリルアミド、5%のアクリルアミド、4%のアクリルアミド、3%のアクリルアミド、または2.5%のアクリルアミドを含み得る。
【0031】
特定の非限定的な実施形態では、SDSは、電気泳動ゲル配合物に実質的に存在しなくてもよい。代わりに、SDSは、泳動緩衝剤及び/または装填緩衝剤に提供され得る。
【0032】
種々の例示的な実施形態によるポリアクリルアミドゲルは、第一級有機アミンまたは一もしくは二置換アミン緩衝剤を含み得る。ゲルアミン緩衝剤のpKa範囲はまた、ほぼ中性、典型的には約5〜約10の範囲、約5.5〜約10の範囲、約6〜約9の範囲、約7〜約8.5の範囲、約7.9〜約8.2の範囲、または約8.0〜約8.1の範囲であり得る。本明細書に記載の電気泳動系及び方法と共に使用するのに適した例示的、非限定的なゲルアミン緩衝剤は、ビス(2−ヒドロキシエチル)−イミノ−トリス(ヒドロキシメチル)−メタン(以下「ビス−トリス」)、1,3−ビス(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)プロパン(以下「ビス−トリスプロパン」)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(以下「トリス」)、トリエタニオールアミン、または約5.5〜約10.0の範囲のpKa値を有するその任意の誘導体もしくは塩を含み得る。しかし、少なくとも1つの第一級アミンまたは置換アミンを有し、さらに約7.9〜約9.8の範囲のpKaを有する任意のゲルアミン緩衝剤を、本明細書に記載の実施形態の実施中に、その精神及び範囲から逸脱することなく使用し得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、ゲル中に存在するゲルアミン緩衝剤の濃度は、約150mM未満、例えば約40mM〜約150mM、または約70mM〜約140mMの範囲であり得る。一般に、非勾配ゲルに対しては、より低い濃度レベルのゲルアミン緩衝剤、例えば約80mM以下が適用可能であり得る。非勾配ゲルに対しては、より高い濃度レベルのゲルアミン緩衝剤、例えば約80mM以上が適用可能であり得る。いくつかの実施形態では、ゲルは150mM未満の濃度のゲルアミン緩衝剤を有し、ゲルアミン緩衝剤はトリスである。一般に、より低いトリス濃度、例えば150mM未満を有するゲル配合物は、電気泳動分離の泳動時間を短縮し、電気泳動中に生成される熱を減少し得る。
【0034】
様々な例示的な実施形態では、他の水性構成成分を合わせる際かつ重合反応の開始前に、ゲルアミン緩衝剤は、分解ゲル、スタッキングゲル、または水溶液としての分解ゲル及びスタッキングゲルの両方に直接添加され得る。あるいは、ゲルアミン緩衝剤は、例えば、所望の濃度のゲルアミン緩衝剤を含有する水溶液中に重合ゲルを浸漬し、ゲルアミン緩衝剤を重合ゲルマトリックスに浸透させることによって、ゲルマトリックスに組み込まれ得る。
【0035】
電気泳動系の基礎を形成するポリアクリルアミドゲルは、上記のようなゲルアミン緩衝剤と組み合わせた一次ゲル両性電解質を含み得る。本開示の例示的な実施形態によるゲル配合物と共に使用するのに適した一次ゲル両性電解質は、限定されないが、アミン基を有する任意の生物学的緩衝剤を含み、水溶液中に両性イオンを形成することができる。いくつかの実施形態では、対象となるゲル配合物と共に使用に適した一次ゲル両性電解質は、ゲルアミンのpKa値よりも最大約2.0pH単位大きいpK値を有するであろう。非限定的な例として、以下の例示的なゲル両性電解質が、一次ゲル両性電解質として本明細書に記載の実施形態と共に使用されるために企図される:2−アミノ酢酸(以下「グリシン」)、N−(トリ(ヒドロキシメチル)メチル)グリシン(以下「トリシン」)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン;ジエチレングリシン(以下「ビシン」)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)(以下「PIPES」)、3−(N−モルホリノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(以下「MOPSO」)、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(以下「ACES」)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(以下「BES」)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(以下「TES」)、−(2−ヒドロキシエチル)−l−ピペラジンエタンスルホン酸(以下「HEPES」)、2−アミノ−メチル−1,3−プロパンジオール3−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]プロパンスルホン酸(以下「HEPPS」)、及びN−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸(以下「TAPS」)である。当然のことながら、当業者には、少なくとも1つのアミンまたは置換アミンを有し、ゲル中での使用のために選択されたゲルアミンよりも約1〜約2pH単位の範囲にあるpKaをさらに有する任意のゲル両性電解質は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載されている実施形態の実施において使用され得る。一次両性電解質は、ゲル配合物中に、約25mM〜約250mM、または約100mM〜約250mMの範囲の濃度で存在し得る。
【0036】
種々の例示的な実施形態では、電気泳動系に使用するためのポリアクリルアミドゲル配合物は、上記のゲルアミン及び一次ゲル両性電解質と組み合わせた共役ゲル両性電解質を含み得る。非限定的な例として、以下の例示的な共役ゲル両性電解質が、本明細書に記載の実施形態と共に使用されるために企図される:(2S,3R)−2−アミノ−3−ヒドロキシブタン酸(以下「トレオニン」)、(2S)−2−アミノ−3−ヒドロキシプロパン酸(以下「セリン」)、2−アミノエタンスルホン酸(以下「タウリン」)、及び(2S)−2,4−ジアミノ−4−オキソブタン酸(以下「アスパラギン」)。共役両性電解質は、約0.1mM〜約200mMの範囲内、約0.1mM〜約50mMの範囲内、または約10mM〜約50mMの範囲内の濃度で、ゲル配合物中に存在し得る。いくつかの例示的な実施形態では、ゲルアミン緩衝剤は、塩基及び緩衝剤として作用し、一次両性電解質は、トレーリングイオンとして作用し、共役両性電解質は、追加のトレーリングイオンとして作用する。一次両性電解質は、以下の追加のトレーリングイオンと共に、HClによって提供されるCl
−後にトレーリングする先導トレーリングイオンである。本開示の範囲内で、緩衝剤配合物中で使用される特定の共役両性電解質を同定することに関して、トレオニン及びセリンは、質的に優れたタンパク質バンド分離及び分解を予想外に提供した。
【0037】
いくつかの実施形態では、例えば、他の水性構成成分を合わせる際かつ重合反応の開始前に、ゲル両性電解質(複数可)は、分解ゲル、スタッキングゲル、または水溶液としての分解ゲル及びスタッキングゲルの両方に直接添加され得る。あるいは、ゲル両性電解質(複数可)は、所望の濃度のゲル両性電解質(複数可)を含有する水溶液中に重合ゲルを浸漬し、ゲル両性電解質(複数可)を重合ゲルマトリックスに浸透させることによって、ゲルマトリックスに組み込まれ得る。
【0038】
1つの非限定的な例示的な実施形態では、ゲルアミン緩衝剤は、トリスであり、一次両性電解質/トレーリングイオンは、グリシンであり、共役両性電解質/二次トレーリングイオンは、トレオニンであり得る。別の非限定的な例示的な実施形態では、ゲルアミン緩衝剤は、トリスであり、一次両性電解質/トレーリングイオンは、グリシンであり、共役両性電解質/二次トレーリングイオンは、セリンであり得る。これらの配合物中のトリスの濃度は、約150mM未満、例えば約70mM〜約140mMの範囲、グリシンは、約100mM〜約250mMの範囲、トレオニンまたはセリンは、約10mM〜約50mMの範囲であり得る。これらの配合物のpHは、約6.5〜約7.5の範囲であり得、約6.9〜約7.5の範囲、または約7.0〜約7.2の範囲であり得、あるいはこれらの配合物のpHは約7.1であり得る。
【0039】
以下の実施例は、本開示の例示的な実施形態による様々な有効な配合物を示すために含まれる。しかしながら、当業者であれば、本開示に照らして、開示された特定の実施形態において1つ以上の変更を行うことができ、また本明細書に記載の実施形態の精神及び範囲から逸脱することなく、同様のまたは同様の結果を得ることができることを理解する。
【0040】
実施例1
この実施例は、それぞれ本開示の範囲内の異なるトリス系ゲル緩衝剤で調製されたポリアクリルアミドゲルの性能を示す。
図1Aのゲルは、400mM及び0mMのグリシンのゲル緩衝剤配合物を含み、かつ8.7のpHを有する、対照ゲル100、すなわち市販のNovex(商標)トリス−グリシンポリアクリルアミドゲル(%T=10%)(Thermo Fisher Scientific,Incによる)である。それぞれ
図1B〜1Hに示す一連のポリアクリルアミドゲル配合物101〜107を、その内ビスアクリルアミドがモノマー混合物の2.6%(%C=2.6%)を構成する、分解ゲル部分用の10%アクリルアミド/ビスアクリルアミド水溶液(%T=10%)を用いてスラブゲル電気泳動カセットに入れた。生成されたゲルは、厚さ1mm、長さ約8cm、幅約8cmであった。各ゲルカセットは、10個の平行なレーン1〜10を有するように形成された。対照ゲル100及び調製された各ゲル配合物101〜107はまた、3.3%T、2.6%Cスタッキングゲル部分を有する。ゲル100〜107は、様々なゲル緩衝剤配合物を有していたが、個々のゲルの分解ゲル部分及びスタッキングゲル部分内で使用されたゲル緩衝剤は同じであった。
【0041】
各ゲル緩衝剤を、以下の説明に示されるpHに6NのHClで調整した。6.8のpHを有する63mMのトリスHCl、10%のグリセロール、2%のSDS、及び0.0025%のブロモフェノールブルーのサンプル緩衝剤を各ゲル配合物100〜107と共に使用した。8.3のpHを有する25mMのトリス、192mMのグリシン、及び0.1%のSDSからなる泳動緩衝剤を各ゲル配合物100〜107と共に使用した。
【0042】
各ゲルについて、全ての10個のレーン1〜10にサンプルタンパク質混合物を装填した。それぞれの各レーンに装填されたサンプルタンパク質混合物は、対照ゲル100及び調製された各ゲル配合物101〜107について同じであった。各レーン1〜10に装填されたサンプルタンパク質混合物を表1に示す。
【0044】
電気泳動分離を、225Vの定電圧で49分〜58分の範囲の泳動時間で行い、特定の泳動時間を
図1A〜1Hのそれぞれに反映させた。結果は、以下の通りであった。
【0045】
図1Aに示されるように、対照ゲル配合物100は、本開示の範囲内で形成されたゲルの性能が比較される許容可能なタンパク質バンド分離及び分解能の例を提供した。注目すべきは、対照ゲル配合物100は、8.7という比較的高いpHを有し、したがって、本開示に従って、ほぼ中性であると考えられる範囲外である。
【0046】
図1Bに示すように、ゲル配合物101は、6.3のpHを有し、ゲルアミン緩衝剤として125mMのトリス及び125mMのトリシンを一次両性電解質として含むゲル緩衝剤を含んだ。
図1Cに示すように、ゲル102は、7.5のpHを有し、ゲルアミン緩衝剤として125mMのトリス及び125mMのトリシンを一次両性電解質として含むゲル緩衝剤を含んだ。ゲル101及び102の両方は、
図1Aの同じ領域と比較して、
図1B及び1Cの同定された領域で見られるように、望ましくないタンパク質分離圧縮を示した。
【0047】
図1Dに示すように、ゲル配合物103は、7.1のpHを有し、ゲルアミン緩衝剤として125mMのトリス、一次両性電解質として125mMグリシン、及び共役両性電解質として50mMのアスパラギンのゲル緩衝剤を含んだ。ゲル103は、
図1Aの同じ領域と比較して、
図1Dの同定された領域、特にレーン4、5、及び6において見られるように、望ましくないタンパク質分離圧縮を示した。
【0048】
ゲル配合物104は、
図1Eに示すように、7.3のpHを有し、ゲルアミン緩衝剤として125mMのトリス、一次両性電解質として125mMのグリシン、及び共役両性電解質として50mMのタウリンのゲル緩衝剤を含んだ。ゲル104は、
図1Aの同一の領域と比較して、
図1Eの同定された領域、特にレーン4及び7において見られるように、望ましくないタンパク質分離圧縮を示した。
【0049】
図1Fに示すように、ゲル配合物105は、7.1のpHを有し、ゲルアミン緩衝剤として125mMのトリス、一次両性電解質として125mMグリシン、及び共役両性電解質として75mMのトレオニンのゲル緩衝剤を含んだ。ゲル105は、
図1Aと比較して
図1Eに見られるように、望ましくないタンパク質分離圧縮を示さなかった。したがって、得られた結果に基づいて、追加のトレーリングイオンとしてトレオニンを含むトリス−グリシン緩衝剤を使用したこのゲル配合物はまた、ほぼ中性のpHを有する一方、PAGEの質的に優れたゲル緩衝剤を予想外に生じた。
【0050】
図1Gに示すように、ゲル配合物106は、7.1のpHを有し、ゲルアミン緩衝剤として125mMのトリス、一次両性電解質として125mMグリシン、及び共役両性電解質として25mMのセリンのゲル緩衝剤を含んだ。ゲル配合物107は、
図1Hに示すように、7.1のpHを有し、125mMのトリス、125mMのグリシン、及び50mMのセリンのゲル緩衝剤を含んだ。ゲル配合物106及び107の両方は、
図1Aと比較して、
図1G及び1Hに見られるように、望ましくないタンパク質分離圧縮を示さなかった。したがって、得られた結果に基づいて、追加のトレーリングイオンとしてトレオニンに代わりセリンを有するトリス−グリシン緩衝剤はまた、ほぼ中性のpHを有する一方、PAGEの質的に優れたゲル緩衝剤を予想外に生じた。
【0051】
実施例2
この実施例は、本開示の範囲内の非勾配ポリアクリルアミドゲルの性能と2つの市販の非勾配ポリアクリルアミドゲルの性能との比較を示す。それぞれ
図2Aに示すポリアクリルアミドゲル配合物200を、その内ビスアクリルアミドがモノマー混合物の2.6%(%C=2.6%)を構成する、分解ゲル部分用の10%アクリルアミド/ビスアクリルアミド水溶液(%T=10%)を用いてスラブゲル電気泳動カセットに入れた。生成されたゲルは、厚さ1mm、長さ約8cm、幅約8cmであった。調製されたゲル配合物200は、3.3%T、2.6%Cスタッキングゲル部分をさらに有していた。ゲル配合物200は、7.1のpHを有し、ゲルアミン緩衝剤として75mMのトリス、一次両性電解質として125mMグリシン、及び共役両性電解質として10mMのトレオニンのゲル緩衝剤を含んだ。ゲル緩衝剤を6NのHClでpH7.1に調整した。6.8のpHを有する63mMのトリス−HCl、10%のグリセロール、2%のSDS、及び0.0025%のブロモフェノールブルーのサンプル緩衝剤を各ゲル配合物200と共に使用した。8.3のpHを有する25mMのトリス、192mMのグリシン、及び0.1%のSDSの泳動緩衝剤を各ゲル配合物200と共に使用した。
【0052】
図2Bに示すゲル配合物201は、6.5のpHを有する、未知濃度のトリス、グリシン、及びタウリンのゲル緩衝剤を含むと考えられる、市販のゲル、すなわちMini−PROTEAN(登録商標)TGX(商標)(T=10%)ゲル(Bio−Rad Laboratories、Inc.製)である。65.8mMのトリス−HCl、26.3%(w/v)グリセロール、2.1%SDS、及び0.01%ブロモフェノールブルーの製造業者によって提供され、6.8のpHを有するサンプル緩衝剤をゲル配合物201と共に使用した。8.3のpHを有する25mMのトリス、192mMのグリシン、及び0.1%のSDSの製造業者によって提供される泳動緩衝剤を各ゲル配合物201と共に使用した。
【0053】
図2Cに示すゲル配合物202は、未知濃度のトリス、グリシン、及びグリセロールならびに約6.3のpHの緩衝剤を含むと考えられる、別の市販のゲル、すなわちPrecise(商標)トリス−グリシン(T=10%)ゲル(Thermo Fisher Scientific,Inc.製)である。7.6のpHを有する、0.2Mのトリエタノールアミン−CI、1%のLDS、10%のグリセロール、1%のFicoll(商標)400、0.006%のフェノールレッド、0.006%のCoomassie G250、及び0.5mMのEDTA二ナトリウムの製造業者によって提供されたサンプル緩衝剤をゲル配合物202と共に使用した。8.5のpHを有する25mMのトリス、192mMのグリシン、及び0.1%のSDSの製造業者によって提供される泳動緩衝剤を各ゲル配合物202と共に使用した。
【0054】
ゲル配合物200〜202を含有する各ゲルカセットは、10本の平行なレーン1〜10を有した。各ゲルカセットについて、10個のレーン1〜10の全てに、サンプルタンパク質混合物を装填し、各レーンは、上記の表1において同定されたサンプルを有した。ゲル200〜202は、様々なゲル緩衝剤配合物を有していたが、個々のゲルの分解ゲル部分及びスタッキングゲル部分内で使用されたゲル緩衝剤は同じであった。電気泳動分離は、
図2A〜2Cに示すように、185Vまたは225Vのいずれかの一定電圧で、29分〜78分の範囲の泳動時間で行った。結果は、以下の通りであった。
【0055】
3つのゲル配合物200〜202のうち、ゲル200は、最もよく観察されるタンパク質分離及びバンドシャープネスを提供した。同様に、ゲル配合物201のより高い装填バンドはより弓なりになり、これは望ましくない。例えば、
図2Bに示すように、ゲル201のレーン3は、ゲルの左端に向かって望ましくないほど曲がったりまたは湾曲したりする。同様に、ゲル202のレーン7及び8は、ゲルの右端に向かって望ましくないほど曲がったりまたは湾曲したりする。
図2Aに示すように、ゲル200のレーン3、7及び8は、比較的直線状であり、望ましくないほど曲がったりまたは湾曲したりを呈しない。ゲル配合物202に関しては、
図2Cに示すように、望ましくない「スマイリング効果」がレーン1、2、9、及び10に呈され、ここでは、ゲル202の左端及び右端付近の低分子量タンパク質バンドが上方に湾曲または傾斜する。
図2Aに示すように、ゲル200のレーン1、2、9、及び10は、比較的直線状であり、望ましくないほど湾曲したりまたは傾斜したりを呈しない。さらに、ゲル200〜202のレーン3、4、7、及び8と比較した場合、特に明らかなように、ゲル200は、ゲル201及び202よりもよりシャープなバンドを生成した。
【0056】
実施例3
この実施例は、本開示の範囲内の勾配ポリアクリルアミドゲルの性能と2つの市販の勾配ポリアクリルアミドゲルの性能との比較を示す。それぞれ
図3Aに示すポリアクリルアミドゲル300を、その内ビスアクリルアミドがモノマー混合物の2.6%(C=2.6%)を構成する、分解ゲル部分用の4〜20%アクリルアミド/ビスアクリルアミド水溶液(%T=4〜20%)を用いてスラブゲル電気泳動カセットに入れた。調製されたゲル配合物300は、3%T、2.6%Cスタッキングゲル部分をさらに有していた。生成されたゲル300は、厚さ1mm、長さ約8cm、幅約8cmであった。ゲル300は、7.1のpHを有し、ゲルアミン緩衝剤として75mMのトリス、一次両性電解質として125mMグリシン、及び共役両性電解質として10mMのトレオニンのゲル緩衝剤を含んだ。勾配ゲルにおいて、ゲル内のゲル緩衝剤濃度は、アクリルアミドの異なる濃度によって変化し得、したがって、本明細書で提供されるゲル緩衝剤の値は平均値であることに留意されたい。ゲル緩衝剤を6NのHClでpH7.1に調整した。6.8のpHを有する63mMのトリス−HCl、10%のグリセロール、2%のSDS、及び0.0025%のブロモフェノールブルーのサンプル緩衝剤を各ゲル配合物300と共に使用した。8.3のpHを有する25mMのトリス、192mMのグリシン、及び0.1%のSDSの泳動緩衝剤を各ゲル配合物300と共に使用した。
【0057】
図3Bに示すゲル301は、6.5のpHを有する、未知濃度のトリス、グリシン、及びタウリンのゲル緩衝剤を含むと考えられる、市販の勾配ポリアクリルアミドゲル、すなわちMini−PROTEAN(登録商標)TGX(商標)(T=4〜20%)ゲル(Bio−Rad Laboratories、Inc.製)である。65.8mMのトリス−HCl、26.3%(w/v)グリセロール、2.1%SDS、及び0.01%ブロモフェノールブルーの製造業者によって提供され、6.8のpHを有するサンプル緩衝剤をゲル配合物201と共に使用した。8.3のpHを有する25mMのトリス、192mMのグリシン、及び0.1%のSDSの製造業者によって提供される泳動緩衝剤を各ゲル配合物201と共に使用した。
【0058】
図3Cに示すゲル302は、未知濃度のトリス、グリシン、及びグリセロールならびに約6.3のpHの緩衝剤を含むと考えられる、別の市販の勾配ポリアクリルアミドゲル、すなわちPreciseトリス−グリシン(T=10%)ゲル(NuSep Holdings Ltd.製)である。7.6のpHを有する、0.2Mのトリエタノールアミン−CI、1%のLDS、10%のグリセロール、1%のFicoll(商標)400、0.006%のフェノールレッド、0.006%のCoomassie G250、及び0.5mMのEDTA二ナトリウムの製造業者によって提供されたサンプル緩衝剤をゲル配合物302と共に使用した。8.5のpHを有する25mMのトリス、192mMのグリシン、及び0.1%のSDSの製造業者によって提供される泳動緩衝剤をゲル配合物302(標識したゲル302について確認)と共に使用した。
【0059】
異なるゲル配合物300〜302を含有する各ゲルカセットは、10本の平行なレーン1〜10を有した。各ゲルについて、10個のレーン1〜10の全てに、サンプルタンパク質混合物を装填し、各レーンは、上記の表1において同定されたサンプルを有する。ゲル300〜302は、様々なゲル緩衝剤配合物を有していたが、個々のゲルの分解ゲル部分及びスタッキングゲル部分内で使用されたゲル緩衝剤は同じであった。電気泳動分離は、
図3A〜3Cに反映されるように、185または225Vのいずれかの一定電圧で、28分〜68分の範囲の泳動時間で行った。結果は、以下の通りであった。
【0060】
3つのゲル300〜302のうち、ゲル300は、最もよく観察されるタンパク質分離及びバンドシャープネスを提供した。ゲル300〜302のレーン3、4、7、及び8と比較した場合、特に明らかなように、ゲル300は、ゲル301及び302よりもよりシャープなバンドを生成した。さらに、ゲル301のレーン1及びレーン10ならびにゲル302のレーン3及び4に特に示されているように、ゲル301及び302の両方は、望ましくないスマイリング効果を呈するレーンを有するが、ゲル300の全てのレーン1〜10は、比較的平坦であった。
【0061】
実施例4
この実施例は、本開示の範囲内の勾配ポリアクリルアミドゲルの性能と1つの市販の勾配ポリアクリルアミドゲルの性能との比較を示す。それぞれ
図4Aに示すポリアクリルアミドゲル400を、その内ビスアクリルアミドがモノマー混合物の2.6%(C=2.6%)を構成する、分解ゲル部分用の8〜16%アクリルアミド/ビスアクリルアミド水溶液(%T=8〜16%)を用いてスラブゲル電気泳動カセットに入れた。調製されたゲル配合物400は、3.5%T、2.6%Cスタッキングゲル部分をさらに有していた。ゲル400は、7.1のpHを有し、117mMのトリス、195mMのグリシン、及び15.6mMのトレオニンのゲル緩衝剤を含んだ。勾配ゲルにおいて、ゲル内のゲル緩衝剤濃度は、アクリルアミドの濃度によって変化し、したがって、提供されるゲル緩衝剤の値は平均値であることに留意されたい。ゲル緩衝剤を6NのHClでpH7.1に調整した。6.8のpHを有する63mMのトリス−HCl、10%のグリセロール、2%のSDS、及び0.0025%のブロモフェノールブルーのサンプル緩衝剤を各ゲル配合物400と共に使用した。8.3のpHを有する25mMのトリス、192mMのグリシン、及び0.1%のSDSの泳動緩衝剤を各ゲル配合物400と共に使用した。
【0062】
図4Bに示すゲル401は、約6.5のpHを有する、未知濃度のトリス、グリシン、及びタウリンのゲル緩衝剤を含むと考えられる、市販の勾配ポリアクリルアミドゲル、すなわちMini−PROTEAN(登録商標)TGX(商標)(T=8〜16%)ゲル(Bio−Rad Laboratories、Inc.製)である。65.8mMのトリス−HCl、26.3%(w/v)グリセロール、2.1%のSDS、及び0.01%のブロモフェノールブルーの製造業者によって提供され、6.8のpHを有するサンプル緩衝剤をゲル配合物201と共に使用した。8.3のpHを有する25mMのトリス、192mMのグリシン、及び0.1%のSDSの製造業者によって提供される泳動緩衝剤を各ゲル配合物201と共に使用した。
【0063】
ゲル配合物400〜401を装填した各ゲルカセットは、10本の平行なレーン1〜10を有した。各ゲルについて、ゲル400のレーン8に(10μgではなく)20μgのE.Coliのサンプルを装填した以外は、全ての10個のレーン1〜10には、サンプルタンパク質混合物が装填されており、各レーンは、上記の表1において同定されたサンプルを有する。ゲル400〜401は、様々なゲル緩衝剤配合物を有していたが、個々のゲルの分解ゲル部分及びスタッキングゲル部分内で使用されたゲル緩衝剤は同じであった。電気泳動分離は、
図4A及び4Bに反映されるように、27分〜45分の範囲の泳動時間で225Vの一定電圧で行われた。結果は、以下の通りであった。
【0064】
ゲル400は、ゲル401よりも優れたタンパク質分離及びバンドシャープネスを呈した。ゲル400〜401のレーン2、3、4、及び7と比較した場合、特に明らかなように、ゲル400は、ゲル401よりもよりシャープなバンドを生成した。さらに、ゲル401のレーン1及びレーン10に特に示されているように、ゲル401は、望ましくないスマイリング効果を呈するレーンを有するが、ゲル400の全てのレーン1〜10は、比較的平坦であった。
【0065】
実施例5
図5に示すように、この実施例は、本開示の範囲内で5つのポリアクリルアミドゲルの性能を示し、ここでは、様々な濃度のトリスを有するゲル緩衝剤を含み、本開示のゲル緩衝剤について所望のトリス濃度範囲を同定した。各ゲルの性能はまた、400mM及び0mMのグリシンのゲル緩衝剤配合物を含み、かつ8.7のpHを有する、対照ゲル、すなわち市販のNovex(商標)トリス−グリシンポリアクリルアミドゲル(%T=10%)(Thermo Fisher Scientific,Incによる)と比較された。
【0066】
5つの調製されたポリアクリルアミドゲルを、その内ビスアクリルアミドがモノマー混合物の2.6%(%C=2.6%)を構成する、分解ゲル部分用の10%アクリルアミド/ビスアクリルアミド水溶液(%T=10%)を用いてスラブゲル電気泳動カセットに入れた。5つの調製されたゲルは、厚さ1mm、長さ約8cm、幅約8cmであった。調製されたゲルは、3.3%のT、2.6%のCスタッキングゲル部分をさらに有していた。調製された5つのゲルはそれぞれ、一次両性電解質として125mMのグリシン及び共役両性電解質として75mMのトレオニンを含む7.1のpHを有するゲル緩衝剤配合物を有した。また、調製された5つのゲルのそれぞれは、ゲルアミン緩衝剤として40mM〜150mMの範囲の異なるトリス濃度を有するゲル緩衝剤を有した。ゲル緩衝剤を6NのHClでpH7.1に調整した。
【0067】
各ゲルカセットは、サンプルタンパク質混合物を個々に装填した複数の平行レーンを有するように形成された。対照ゲル及び調整されたゲルのそれぞれは、様々なゲル緩衝剤配合物を有していたが、個々のゲルの分解ゲル部分及びスタッキングゲル部分内で使用されたゲル緩衝剤は同じであった。調製されたゲル及び対照ゲルのそれぞれのレーンの4つに、5μLのPageRuler(商標)Plus Pre−Stained Protein Ladder、10μgのE.Coli、6μgのBSA、及び6μgのヒト免疫グロブリンG(IgG)をそれぞれ装填した。
【0068】
6.8のpHを有する63mMのトリス−HCl、10%のグリセロール、2%のSDS、及び0.0025%のブロモフェノールブルーのサンプル緩衝剤を
図5に示す各ゲル配合物と共に使用した。8.3のpHを有する25mMのトリス、192mMのグリシン、及び0.1%のSDSの泳動緩衝剤を
図5に示す各ゲル配合物と共に使用した。電気泳動分離を、
図5に反映される特定の泳動時間と共に、225Vの定電圧で34分〜59分の範囲の泳動時間で行った。
図5及び表2に示すように、結果は以下の通りであった。
【0070】
比較を容易にするために、
図5は、6つのゲルの各々のPageRuler(商標)Plus Pre−Stained Protein Ladder装填、E.Coli装填、BSA装填、及びIgG装填レーンの画像を並べて示す。全ての4つのサンプルで見られ得るように、タンパク質バンドはトリス−グリシン−トレオニン(TGT)ゲルにおいて上方にシフトし、ゲル緩衝剤中のトリスの濃度が減少するにつれてより平らに広がるようになる。また、トリス濃度が低いほど、電気泳動中の泳動時間が短くなり、電流が低くなり、かつ温度が低くなった。BSAを装填したレーンの比較において最も明白に見られ得るように、70mM〜80mMの範囲のトリス濃度を有する緩衝剤を有する調製されたゲルは、対照ゲルよりも低い泳動時間、電流、及び温度でシャープなタンパク質バンドを生成した。さらに、70mM〜80mMのトリスを有する緩衝剤を有する調製されたゲルは、40mMのトリス緩衝剤ゲルのものほど遠くまでゲルシフトしていないタンパク質バンドを生成した。さらに、70mM〜80mMのトリスを有する緩衝剤を有する調製されたゲルは、125mMのトリス及び150mMのトリス緩衝剤ゲルよりもよりはるかにシャープなタンパク質バンドを生成した。
【0071】
したがって、これらの結果は、約70mM〜約80mMの範囲のトリス濃度は、非勾配ポリアクリルアミドゲル中のゲル緩衝剤について望ましい分離特性を生じ、ここで、ゲル緩衝剤はまた、一次両性電解質としてグリシン及び共役両性電解質としてトレオニンを含む
【0072】
実施例6
この実施例は、
図6A〜6Cに示すように、本開示の範囲内で3つのポリアクリルアミドゲルの性能を示す。それぞれ
図6A及び6Bに示す非勾配ポリアクリルアミドゲル配合物600〜601を、その内ビスアクリルアミドがモノマー混合物の2.6%(%C=2.6%)を構成する、分解ゲル部分用の6%アクリルアミド/ビスアクリルアミド水溶液(%T=10%)を用いてスラブゲル電気泳動カセットに入れた。調製されたゲル配合物600及び601は、4%のT、2.6%のCスタッキングゲル部分をさらに有していた。それぞれ
図6Cに示す勾配ポリアクリルアミドゲル602を、その内ビスアクリルアミドがモノマー混合物の2.6%(%C=2.6%)を構成する、分解ゲル部分用の4〜20%アクリルアミド/ビスアクリルアミド水溶液(%T=4〜20%)を用いてスラブゲル電気泳動カセットに入れた。調製されたゲル配合物602は、3%T、2.6%Cスタッキングゲル部分をさらに有していた。生成されたゲルは、厚さ1mm、長さ約8cm、幅約8cmであった。ゲル配合物600〜602を含有する各ゲルカセットは、10本の平行なレーン1〜10を有するように形成された。
【0073】
ゲル緩衝剤を6NのHClでpH7.1に調整した。6.8のpHを有する63mMのトリス−HCl、10%のグリセロール、2%のSDS、及び0.0025%のブロモフェノールブルーのサンプル緩衝剤を各ゲル配合物600〜602と共に使用した。8.3のpHを有する25mMのトリス、192mMのグリシン、及び0.1%のSDSの泳動緩衝剤を各ゲル配合物600〜602と共に使用した。ゲル600〜602のそれぞれは、様々なゲル緩衝剤配合物を有していたが、個々のゲルの分解ゲル部分及びスタッキングゲル部分内で使用されたゲル緩衝剤は同じであった。各ゲル600〜602について、10個のレーン1〜10の全てに、サンプルタンパク質混合物を装填し、各レーンは、上記の表1において同定されたサンプルを有した。
【0074】
図6Aに示すように、ゲル600は、7.1のpHを有し、78.5mMのトリス、131mMのグリシン、及び10.5mMのトレオニンのゲル緩衝剤を含んだ。ゲル601は、
図6Bに示すように、7.1のpHを有し、150mMのトリス、250mMのグリシン、及び20mMのトレオニンのゲル緩衝剤を含んだ。各ゲル600及び601のレーン10の吹き上がった部分を比較すると、ゲル601の少なくとも1つのタンパク質バンドがスカーティング(skirting)していたが、ゲル600の同じバンドはスカーティングしていなかった。スカーティングは、ゲルとカセットとの間の界面領域を泳動するバンドの先導縁の観察された現象であり、主要バンドのわずかに先を泳動するタンパク質の低密度部分を生成する。スカーティングは効果的に、より広い領域にわたってタンパク質を広げ、バンド内のその密度及びバンドのシャープネスを低下させ、潜在的にタンパク質の検出能力を低下させる。したがって、ゲル600及び601の比較は、約70mM〜約80mMの範囲のトリス濃度が、本開示の範囲内の非勾配ポリアクリルアミドゲルの望ましい電気泳動分離特性を生じさせることを示し、ここで、%T=6%であり、ゲル緩衝剤はまた、一次両性電解質としてグリシン及び共役両性電解質としてトレオニンを含んだ。
【0075】
ゲル602は、
図6Cに示すように、7.1のpHを有し、135mMのトリス、217mMのグリシン、及び17.3mMのトレオニンのゲル緩衝剤を含んだ。
図6Cは、勾配ゲル602が許容できるタンパク質バンドのシャープネス及び分解能を提供したことを示す。したがって、ゲル602は、本開示の範囲内の勾配ポリアクリルアミドゲルに対して約125mM〜約150mMのより高いトリス濃度が許容可能であることを示し、ここで、ゲル緩衝剤はまた、両性電解質/トレーリングイオンとしてグリシン及び二次両性電解質/トレーリングイオンとしてトレオニンを含んだ。
【0076】
実施例7
図7に示すように、この実施例は、本開示の範囲内で5つのポリアクリルアミドゲルの性能を示し、ここでは、様々な濃度のグリシンを有するゲル緩衝剤を含み、本開示のゲル緩衝剤について適切なグリシン濃度範囲を同定した。各ゲルの性能はまた、400mM及び0mMのグリシンのゲル緩衝剤配合物を含み、かつ8.7のpHを有する、対照ゲル、すなわち市販のNovex(商標)トリス−グリシンポリアクリルアミドゲル(%T=10%)(Thermo Fisher Scientific,Incによる)と比較された。
【0077】
5つの調製されたポリアクリルアミドゲルを、その内ビスアクリルアミドがモノマー混合物の2.6%(C=2.6%)を構成する、分解ゲル部分用の10%アクリルアミド/ビスアクリルアミド水溶液(%T=10%)を用いてスラブゲル電気泳動カセットに入れた。調製された5つのゲルはそれぞれ、7.1のpHを有するゲル緩衝剤配合物を有していた。5つの調製されたゲルは、厚さ1mm、長さ約8cm、幅約8cmであった。第1の調製されたゲルは、75mMのトリス及び200mMのグリシンのゲル緩衝剤配合物を有していた。第2の調製されたゲルは、75mMのトリス及び125mMのグリシンのゲル緩衝剤配合物を有していた。第3の調製されたゲルは、75mMのトリス及び50mMのグリシンのゲル緩衝剤配合物を有していた。第4の調製されたゲルは、75mMのトリス、25mMのトレオニン、及び200mMのグリシンのゲル緩衝剤配合物を有していた。第5の調製されたゲルは、75mMのトリス、25mMのトレオニン、及び125mMのグリシンのゲル緩衝剤配合物を有していた。したがって、調製された5つのゲルのそれぞれは、50mM〜200mMの範囲の可変のグリシン濃度を有するゲル緩衝剤を有していた。対照ゲル及び調整されたゲルのそれぞれは、様々なゲル緩衝剤配合物を有していたが、個々のゲルの分解ゲル部分及びスタッキングゲル部分内で使用されたゲル緩衝剤は同じであった。
【0078】
各ゲルは、サンプルタンパク質混合物を個々に装填した複数の平行レーンを有するように形成された。調製されたゲル及び対照ゲルのそれぞれのレーンの4つに、5μLのPageRuler(商標)Plus Pre−Stained Protein Ladder、10μgのE.Coli、6μgのBSA、及び6μgのIgGをそれぞれ装填した。6.8のpHを有する63mMのトリス−HCl、10%のグリセロール、2%のSDS、及び0.0025%のブロモフェノールブルーのサンプル緩衝剤を
図7に示す各ゲル配合物と共に使用した。8.3のpHを有する25mMのトリス、192mMのグリシン、及び0.1%のSDSの泳動緩衝剤を
図7に示す各ゲル配合物と共に使用した。電気泳動分離を、
図7に反映される特定の泳動時間と共に、225Vの定電圧で34分〜59分の範囲の泳動時間で行った。
図7及び表3に示すように、結果は以下の通りであった。
【0080】
比較を容易にするために、
図7は、6つのゲルの各々のPageRuler(商標)Plus Pre−Stained Protein Ladder装填、E.Coli装填、BSA装填、及びIgG装填レーンの画像を並べて示す。全ての4つのサンプルで見られ得るように、タンパク質バンドはトリス−グリシン−トレオニン(TGT)ゲルにおいて上方にシフトし、ゲル緩衝剤中のグリシンの濃度が増加するにつれてより平らに広がるようになる。より高いグリシン濃度はまた、より短い泳動時間を提供した。BSAを装填したレーンの比較において最も明白に見られ得るように、より高いグリシン濃度を有する緩衝剤を有する調製されたゲルは、対照ゲルよりも低い泳動時間、電流、及び温度でシャープなタンパク質バンドを生成した。したがって、これらの結果は、約100mM〜約250mMの範囲のグリシン濃度は、ポリアクリルアミドゲル中のゲル緩衝剤について望ましい分離特性を生じ、ここで、ゲル緩衝剤はまた、ゲルアミン緩衝剤としてトリス及び共役両性電解質としてトレオニンを含む。
【0081】
実施例8
図8に示すように、この実施例は、本開示の範囲内で5つのポリアクリルアミドゲルの性能を示し、ここでは、様々な濃度のトレオニンを有するゲル緩衝剤を含み、本開示のゲル緩衝剤について適切なトレオニン濃度範囲を同定した。各ゲルの性能はまた、400mM及び0mMのグリシンのゲル緩衝剤配合物を含み、かつ8.7のpHを有する、対照ゲル、すなわち市販のNovex(商標)トリス−グリシンポリアクリルアミドゲル(T=10%)(Thermo Fisher Scientific,Incによる)と比較された。5つの調製されたポリアクリルアミドゲルを、その内ビスアクリルアミドがモノマー混合物の2.6%(%C=2.6%)を構成する、分解ゲル部分用の10%アクリルアミド/ビスアクリルアミド水溶液(%T=10%)を用いてスラブゲル電気泳動カセットに入れた。5つの調製されたゲルは、厚さ1mm、長さ約8cm、幅約8cmであった。調整された5つのゲルはそれぞれ、75mMのトリス及び125mMのグリシンを含む7.1pHのゲル緩衝剤配合物を有した。また、調製された5つのゲルのそれぞれは、0mM〜200mMの範囲の異なるトレオニン濃度を有するゲル緩衝剤を有した。対照ゲル及び調整されたゲルのそれぞれは、様々なゲル緩衝剤配合物を有していたが、個々のゲルの分解ゲル部分及びスタッキングゲル部分内で使用されたゲル緩衝剤は同じであった。
【0082】
各ゲルは、サンプルタンパク質混合物を個々に装填した複数の平行レーンを有するように形成された。調製されたゲル及び対照ゲルのそれぞれのレーンの4つに、5μLのPageRuler(商標)Plus Pre−Stained Protein Ladder、10μgのE.Coli、6μgのBSA、及び6μgのIgGをそれぞれ装填した。6.8のpHを有する63mMのトリス−HCl、10%のグリセロール、2%のSDS、及び0.0025%のブロモフェノールブルーのサンプル緩衝剤を
図8に示す各ゲル配合物と共に使用した。8.3のpHを有する25mMのトリス、192mMのグリシン、及び0.1%のSDSの泳動緩衝剤を
図8に示す各ゲル配合物と共に使用した。電気泳動分離を、
図7に反映される特定の泳動時間と共に、225Vの定電圧で40分〜54分の範囲の泳動時間で行った。
図8及び表4に示すように、結果は以下の通りであった。
【0084】
比較を容易にするために、
図8は、6つのゲルの各々のPageRuler(商標)Plus Pre−Stained Protein Ladder装填、E.Coli装填、BSA装填、及びIgG装填レーンの画像を並べて示す。全ての4つのサンプルで見られ得るように、ゲル緩衝剤中のトレオニンの濃度が増加するにつれて、タンパク質バンドはトリス−グリシン−トレオニン(TGT)ゲルにおいて上方にシフトする。トレオニン濃度の増加はまた、泳動時間が短くなり、電流が低下した。さらに、トレオニンの増加は、全てのタンパク質バンドではなく、一部のシャープネスの増加と相関した。BSA及びE.Coilを装填したレーンの比較において最も明白に見られ得るように、10mMのトレオニン濃度を有する緩衝剤を有する調製されたゲルは、対照ゲル及び緩衝剤中にトレオニンを有しない調製されたゲルよりも低い泳動時間、電流、及び温度でシャープなタンパク質バンドを生成した。さらに、10mM〜50mMのトレオニンを有する緩衝剤を有する調製されたゲルは、ゲル緩衝剤中に200mMのトレオニンを有するものと同じほど遠くまでゲルシフトしていないタンパク質バンドを生成した。さらに、
図8に重ねられた矢印によって示されるように、10mMのトレオニンを有する緩衝剤を有する調製されたゲルは、緩衝剤中にトレオニンを有しない調製されたゲルよりもよりシャープなタンパク質バンドを生成した。したがって、これらの結果は、約10mM〜約50mMの範囲のトレオニン濃度が、非勾配ポリアクリルアミドゲル中のゲル緩衝剤について改善された結果を達成し、ここで、ゲル緩衝剤はまた、アミンゲル緩衝剤としてトリス及び両性電解質/トレーリングイオンとしてグリシンを含む。
【0085】
実施例9
この実施例は、本開示の範囲内で4つのポリアクリルアミドゲルの延長された保存寿命性能を説明する。一連の4つの調製されたポリアクリルアミドゲル配合物を、その内ビスアクリルアミドがモノマー混合物の2.6%(%C=2.6%)を構成する、分解ゲル部分用の可変ポリアクリルアミド濃度を有するアクリルアミド/ビスアクリルアミド水溶液を用いてスラブゲル電気泳動カセットに入れた。ゲルは、8%ポリアクリルアミド濃度(%T=8%)を有する非勾配ポリアクリルアミドゲル、10%ポリアクリルアミド濃度(%T=10%)を有する非勾配ポリアクリルアミドゲル、4〜12%ポリアクリルアミド濃度(%T=4〜12%)を有する勾配ポリアクリルアミドゲル、及び4〜20%ポリアクリルアミド濃度(%T=4〜20%)を有する勾配ポリアクリルアミドゲルを含んだ。4つのゲルのそれぞれは、ゲルアミン緩衝剤として75mMのトリス、一次両性電解質として125mMグリシン、及び共役両性電解質として10mMのトレオニンのゲル配合物を有した。生成されたゲルは、厚さ1mm、長さ約8cm、幅約8cmであった。各ゲルカセットは、10個の平行なレーンを有するように形成された。
【0086】
各ゲル緩衝剤を、以下の説明に示されるpHに6NのHClで調整した。6.8のpHを有する63mMのトリスHCl、10%のグリセロール、2%のSDS、及び0.0025%のブロモフェノールブルーのサンプル緩衝剤を各ゲル配合物100〜107と共に使用した。8.3のpHを有する25mMのトリス、192mMのグリシン、及び0.1%のSDSからなる泳動緩衝剤を4つのゲル配合物のそれぞれと共に使用した。
【0087】
各ゲルについて、全ての10個のレーンにサンプルタンパク質混合物を装填した。各それぞれのレーンに装填されたサンプルタンパク質混合物は、調製された各ゲル配合物について同じであった。高タンパク質装填がゲル同定の目的で各ゲルの異なるレーンに装填されたことを除いて、サンプルタンパク質混合物は、表5に同定されるようにレーン1〜10に装填された。
【0089】
4つの調製されたゲル配合物のそれぞれ10個が調製された。ゲルが作製された日に、4つの調製されたゲル配合物のそれぞれの1つに、上記の同定されたサンプルと共に電気泳動分離を行った。さらに、ゲル作製後最大70日の間、毎週、4つの調製されたゲル配合物のそれぞれの1つに、上記同定されたサンプルと共に電気泳動分離を行い、ここで、ゲルは、ゲルが作製されたときとゲル上で電気泳動分離が行われたときとの間の期間、周囲の室温条件で保存された。保存されたゲルの分離性能を、それらが作製された日に試験されたゲルの性能と比較することによって、保存されたゲルが十分なタンパク質分離を提供できなかった場合を評価するために定性的及び定量的分析を使用した。全ての電気泳動分離は、225Vの定電圧で行った。結果を表6に示す。
【0091】
3つのゲル配合物で見られるように、室温で70日間保存した後、室温で保存したトリス−グリシン−トレオニン(TGT)ゲルでは、十分な電気泳動分離が行われていないことは観察されなかった。この実験では、以下に基づいて破損が発生したと評価された。(1)電気泳動の設定時間後のバンド移動の有意な変化(すなわち、移動)、(2)ゲルの幅にわたる等バンド移動の損失(すなわち、真直度)、(3)バンドシャープネスの損失(すなわち、分割)、及び/または(4)低分子量バンドの著しい傾きまたは傾斜(すなわち、曲率)。4〜20%のポリアクリルアミドを有する調製されたゲルは、56日で破損を示した。同様のポリアクリルアミドゲル配合物の室温保存と4℃保存との間の既知の相関を、4つの調製されたゲル配合物の室温結果に適用すると、そのようなゲル配合物が冷蔵条件下で保存された場合に機能しなくなる予測値に到達する。これらの推定に基づき、4つの調製されたゲル配合物のいずれも、それらが作製された後約4℃で保存された場合、少なくとも約12ヶ月間は破損しないと予想される。
【0092】
上記の実施例は、ゲルアミン緩衝剤としてトリス、一次両性電解質としてグリシン、及び共役両性電解質としてトレオニンまたはセリンを含むゲル配合物を有するポリアクリルアミドゲルが、タンパク質などの巨大分子の望ましい電気泳動分離を提供し得ることを示す。実施例は、約150mM未満、または70mM〜140mMの範囲、または約70mM〜約80mMの範囲のトリス濃度が望まれ得、約25mM〜約250の範囲、または約100mM〜約250mMの範囲のグリシン濃度が望まれ得、約0.1mM〜約50mMの範囲のトレオニンもしくはセリン濃度、約10mM〜約50mMの範囲、または約10mM〜約20mMの範囲のトレオニンもしくはセリン濃度が望まれ得、約6.5〜約7.5の範囲のほぼ中性のpH、約6.9〜約7.5の範囲のほぼ中性のpH、約7.0〜約7.2の範囲のほぼ中性のpH、または約7.1のpHが望まれ得ることを示す。さらに、実施例は、ゲルが製造されてから約12ヶ月後に、ゲルが約4℃の冷蔵条件下で保存される上記のゲル配合物を有するゲルに電気泳動を行うことができることを示す。
【0093】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的のために、特に断りのない限り、明細書及び特許請求の範囲で使用されるパーセンテージまたは比率、及び他の数値を表す全ての数字は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対に示されない限り、明細書及び特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、本発明によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。最低限、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、報告された有効数字の数に照らし、かつ通常の端数切り捨て技術を適用することによって少なくとも解釈されるべきである。
【0094】
本教示の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に示される数値は可能な限り正確に報告される。しかし、いずれの数値も、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含有する。さらに、本明細書に開示される全ての範囲は、その中に包含される任意の及び全ての下位範囲を包含するものと理解されるべきである。
【0095】
この明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、明示的かつ明白に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。本明細書で使用される場合、用語「含む」及びその文法上の改変体は、リスト内のアイテムの列挙が、リストされたアイテムに置換または追加され得る他の同様のアイテムを除外しないような、非限定を意図する。
【0096】
当業者には、その教示の範囲から逸脱することなく、本開示の組成物及び方法に対して様々な改変及び変形が可能であることが明らかであろう。本開示の他の実施形態は、明細書の考察及び本明細書に開示された教示の実施から当業者に明らかになるであろう。明細書及び本明細書に記載された実施形態は単なる例示としてみなされることが意図される。
(付記)
(付記1)
ゲル緩衝剤を含むゲル電気泳動用ポリアクリルアミドゲルであって、前記ゲル緩衝剤が、
ゲルアミン緩衝剤と、
一次ゲル両性電解質と、
トレオニン及びセリンから選択される共役ゲル両性電解質と、を含む、ポリアクリルアミドゲル。
(付記2)
前記ゲルアミン緩衝剤が、ビス(2−ヒドロキシエチル)−アミノ−トリス(ヒドロキシメチル)−メタン、1,3−ビス(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)プロパン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、及びトリエタニオールアミンから選択される、付記1に記載のポリアクリルアミドゲル。
(付記3)
前記ゲルアミン緩衝剤が、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンである、付記1に記載のポリアクリルアミドゲル。
(付記4)
前記一次ゲル両性電解質が、グリシン及びトリシンから選択される、付記1に記載のポリアクリルアミドゲル。
(付記5)
前記一次ゲル両性電解質が、グリシンである、付記1に記載のポリアクリルアミドゲル。
(付記6)
前記共役ゲル両性電解質が、トレオニンである、付記1に記載のポリアクリルアミドゲル。
(付記7)
前記共役ゲル両性電解質が、セリンである、付記1に記載のポリアクリルアミドゲル。
(付記8)
前記ゲルアミン緩衝剤の濃度が、約150mM未満である、付記1に記載のポリアクリルアミドゲル。
(付記9)
前記ゲルアミン緩衝剤の濃度が、約40mM〜約150mMの範囲である、付記1に記載のポリアクリルアミドゲル。
(付記10)
前記ゲルアミン緩衝剤の濃度が、約70mM〜約140mMの範囲である、付記1に記載のポリアクリルアミドゲル。
(付記11)
前記ゲルアミン緩衝剤の濃度が、約70mM〜約80mMの範囲である、付記1に記載のポリアクリルアミドゲル。
(付記12)
前記一次ゲル両性電解質の濃度が、約25mM〜約250mMの範囲である、付記1に記載のポリアクリルアミドゲル。
(付記13)
前記一次ゲル両性電解質の濃度が、約100mM〜約250mMの範囲である、付記1に記載のポリアクリルアミドゲル。
(付記14)
前記共役ゲル両性電解質の濃度が、約10mM〜約20mMの範囲である、付記1に記載のポリアクリルアミドゲル。
(付記15)
前記共役ゲル両性電解質の濃度が、約0.1mM〜約50mMの範囲または約10mM〜約50mMの範囲である、付記1に記載のポリアクリルアミドゲル。
(付記16)
前記ゲル緩衝剤のpHが、約6.5〜約7.5、もしくは約6.75〜約7.25の範囲である、または約7.0である、付記1に記載のポリアクリルアミドゲル。
(付記17)
前記ゲル緩衝剤のpHが、約6.5〜約7.5、もしくは約6.9〜約7.5、もしくは約7.0〜約7.2の範囲である、または約7.1である、付記1に記載のポリアクリルアミドゲル。
(付記18)
少なくとも約6ヶ月、少なくとも約8ヶ月、少なくとも約10ヶ月、または約4℃で保存される場合、少なくとも約12ヶ月、もしくは最大約24ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも約16ヶ月、少なくとも約14ヶ月、少なくとも約12ヶ月、少なくとも約10ヶ月、少なくとも約8ヶ月、もしくは最大約6ヶ月、の保存寿命を有するように配合される、付記1に記載のポリアクリルアミドゲル。
(付記19)
前記ゲルアミン緩衝剤のpKaが、約5〜約10、もしくは約5.5〜約10、もしくは約6〜約9、もしくは約7〜約8.5、もしくは約7.9〜約8.2、もしくは約8〜約8.1、もしくは約7.9〜約9.8の範囲であるか、または前記ゲルアミン緩衝剤のpKaが、約8.1である、付記1に記載のポリアクリルアミドゲル。
(付記20)
電気泳動によりサンプル中の分子を分離する方法であって、前記方法が、
ポリアクリルアミドゲルを形成することと、
前記ポリアクリルアミドゲルに前記サンプルを装填することと、
質量及び/または電荷に応じて変化する移動速度で前記ゲルを通って前記分子を移動させるために、前記ゲルにわたって電圧差を課すことと、を含み、
前記ポリアクリルアミドゲルが、
ゲルアミン緩衝剤と、
一次ゲル両性電解質と、
トレオニン及びセリンから選択される共役ゲル両性電解質と、を含む、方法。
(付記21)
前記ゲルアミン緩衝剤が、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンであり、前記一次ゲル両性電解質が、グリシンであり、前記共役ゲル両性電解質が、トレオニン及びセリンから選択される、付記19に記載の方法。
(付記22)
前記ポリアクリルアミドゲル中の前記ゲルアミン緩衝剤の濃度が、約150mM未満である、付記19に記載の方法。
(付記23)
前記分子が、タンパク質である、付記19に記載の方法。
(付記24)
前記形成工程後かつ前記装填工程前に最大約24ヶ月、最大約18ヶ月、最大約16ヶ月、最大約14ヶ月、最大約12ヶ月、最大約10ヶ月、最大約8ヶ月、または最大約6ヶ月の期間の間、冷蔵下で前記ポリアクリルアミドゲルを保存することをさらに含む、付記19に記載の方法。
(付記25)
ゲルアミン緩衝剤と、
一次ゲル両性電解質と、
トレオニン及びセリンから選択される共役ゲル両性電解質と、を含む、ポリアクリルアミドゲル緩衝剤であって、前記ゲルアミン緩衝剤のpHが、約6.5〜約7.5の範囲である、ポリアクリルアミドゲル緩衝剤。