特許第6846465号(P6846465)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6846465
(24)【登録日】2021年3月3日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】消防用ホース
(51)【国際特許分類】
   A62C 33/00 20060101AFI20210315BHJP
   F16L 11/12 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   A62C33/00 C
   F16L11/12 J
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-113451(P2019-113451)
(22)【出願日】2019年6月19日
(65)【公開番号】特開2020-203019(P2020-203019A)
(43)【公開日】2020年12月24日
【審査請求日】2019年6月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000215822
【氏名又は名称】帝国繊維株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】水谷 誠惇輝
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−054004(JP,A)
【文献】 特開2015−066391(JP,A)
【文献】 特開2004−132443(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0032892(US,A1)
【文献】 特開2017−189239(JP,A)
【文献】 韓国公開実用新案第2018−0002335(KR,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 33/00
F16L 11/00−11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホース本体と、該ホース本体の両端部にそれぞれ取り付けられた一対の雄継手と雌継手からなる連結金具とを備えた消防用ホースにおいて、
前記ホース本体の外周面に複数の方向表示体がホース長手方向に沿って間隔をおいて配置され、前記方向表示体が、ホース長手方向に対して方向性を表示しない形状を有し、かつホース完成時に前記ホース本体に対して固定された状態を有し、前記方向表示体の各々がホース長手方向に隣り合う第一表示部及び第二表示部から構成され、前記第一表示部が第一の色を有し、前記第二表示部が第二の色を有することを特徴とする消防用ホース。
【請求項2】
前記第一の色が寒色であり、前記第二の色が暖色であることを特徴とする請求項1に記載の消防用ホース。
【請求項3】
前記方向表示体の各々において前記第一表示部が前記雌継手の側に配置され、前記第二表示部が前記雄継手の側に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の消防用ホース。
【請求項4】
前記方向表示体が反射性を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の消防用ホース。
【請求項5】
前記方向表示体が再帰反射性を有することを特徴とする請求項4に記載の消防用ホース。
【請求項6】
前記方向表示体のホース長手方向の長さAと前記方向表示体のホース周方向の長さBとが0.2≦A/B≦5.0の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の消防用ホース。
【請求項7】
前記方向表示体のホース周方向の長さBとホース周囲長Cとが0.05≦B/C≦0.50の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の消防用ホース。
【請求項8】
前記方向表示体のホース長手方向の長さAと前記方向表示体の相互間隔Dとが0.02≦A/D≦1.00の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の消防用ホース。
【請求項9】
前記方向表示体が前記雄継手と前記雌継手との間に5〜40個配置されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の消防用ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消防用ホースに関し、更に詳しくは、消防隊員に対する誘導機能を改善した消防用ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
消防用ホースにおいて、ホースの視認性を向上させると共に、消防隊員に対する誘導機能を付加するため、ホース長手方向に沿って反射特性と蓄光特性を有する縦色線を設けることが行われている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このような消防用ホースの場合、ホース長手方向のいずれの方向へ進めばよいのかを瞬時に判断することができず、消防隊員に対する誘導機能を十分に発揮することができないという懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−150522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上述した点に鑑み、消防隊員に対する誘導機能を改善した消防用ホースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的を達成する消防用ホースは、ホース本体と、該ホース本体の両端部にそれぞれ取り付けられた一対の雄継手と雌継手からなる連結金具とを備えた消防用ホースにおいて、前記ホース本体の外周面に複数の方向表示体がホース長手方向に沿って間隔をおいて配置され、前記方向表示体が、ホース長手方向に対して方向性を表示しない形状を有し、かつホース完成時に前記ホース本体に対して固定された状態を有し、前記方向表示体の各々がホース長手方向に隣り合う第一表示部及び第二表示部から構成され、前記第一表示部が第一の色を有し、前記第二表示部が第二の色を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、消防用ホースにおいて、ホース本体の外周面に複数の方向表示体がホース長手方向に沿って間隔をおいて固定され、方向表示体の各々はホース長手方向に隣り合う第一表示部及び第二表示部から構成され、第一表示部は第一の色を有し、第二表示部は第二の色を有しているので、予め、例えば、第一表示部の第一の色が水源側を示し、第二表示部の第二の色が火災源側を示すことを消防隊員に周知しておくことで、方向表示体の色に基づいてホース長手方向に方向性を付与することができる。これにより、火災現場で消防隊員が方向表示体を視認した際、帰還路の方向(水源側の方向)を瞬時かつ確実に判断することができるため、消防隊員に対する誘導機能を改善することが可能である。
【0007】
本発明の消防用ホースにおいて、第一の色は寒色であり、第二の色は暖色であることが好ましい。これにより、方向表示体において色の違いが明瞭になり、色が判別し易くなるので、消防隊員に対する誘導機能を効果的に改善することができる。例えば、寒色を有する第一表示部を水源側に配置し、暖色を有する第二表示部を火災源側に配置した場合、その識別作用が顕著である。
【0008】
方向表示体の各々において第一表示部は雌継手の側に配置され、第二表示部は雄継手の側に配置されているとよい。これにより、消防隊員に対する誘導機能を効果的に改善することができる。通常、消防用ホースでは雄継手側に火災源があり、雌継手側に水源があるので、例えば、青色を有する第一表示部を水源側(雌継手側)に配置し、赤色を有する第二表示部を火災源側(雄継手側)に配置した場合等、色により直感的に水源側及び火災源側を認識できるようにすることで、方向表示体の誘導機能が顕著に発揮される。
【0009】
方向表示体は反射性を有することが好ましく、再帰反射性を有することがより好ましい。反射性又は再帰反射性を有する方向表示体を設けた場合、ホースの視認性を高めることができる。
【0010】
方向表示体のホース長手方向の長さAと方向表示体のホース周方向の長さBとは0.2≦A/B≦5.0の関係を満たすとよい。これにより、方向表示体の視認性を高くすることができる。
【0011】
方向表示体のホース周方向の長さBとホース周囲長Cとは0.05≦B/C≦0.50の関係を満たすとよい。これにより、方向表示体の視認性を高めることができる。
【0012】
方向表示体のホース長手方向の長さAと方向表示体の相互間隔Dとは0.02≦A/D≦1.00の関係を満たすとよい。これにより、方向表示体の視認性を高めることができる。
【0013】
方向表示体は雄継手と雌継手との間に5〜40個配置されているとよい。これにより、方向表示体の視認性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態からなる消防用ホースの一例を示す平面図である。
図2図1の消防用ホースの一部を拡大して示す平面図である。
図3】(a)〜(d)は方向表示体の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の実施形態からなる消防用ホースを示すものである。図1の本実施形態の消防用ホース1においてホース本体2の長手方向の中間部分を省略して示している。
【0016】
ホース本体2は、ホース長手方向に配される経糸と、ホース長手方向中心軸の周りに螺旋状に配される緯糸により、連続する筒状に織成した筒状織物からなる。また、ホース本体2の内面には、ゴムまたは合成樹脂からなる被覆層が形成されている。
【0017】
図1に示すように、消防用ホース1において、ホース本体2の両端部にそれぞれ差込式の連結金具3が取り付けられている。この連結金具3は一対の金属製の雄継手4と雌継手5から構成される。一方の消防用ホースの雄継手4を他方の消防用ホースの雌継手5に差し込むことによって、雄継手4と雌継手5とが嵌合し、一方の消防用ホースと他方の消防用ホースとを連結することができる。このような連結作業を繰り返し行なうことで複数本の消防用ホースを1本の連続したホースとして使用することができる。
【0018】
上記消防用ホースにおいて、ホース本体2の外周面には、複数の方向表示体10がホース長手方向に沿って間隔をおいて配置されている。これら方向表示体10は、それぞれホース長手方向に隣り合う第一表示部11及び第二表示部12から構成されている。第一表示部11は第一の色を有し、第二表示部12は第二の色を有している。これら第一の色及び第二の色は特に限定されるものではないが、例えば、赤色、橙色、黄色、青色、緑色、紫色等から互いに異なる色を使用することができる。また、方向表示体10は、例えば、ホース製織後にホース本体2の外周面に塗料又は顔料を塗布することや、着色されたテープを貼り付けることにより形成してもよく、或いは染色した着色糸を経糸として織り込むことにより形成してもよい。即ち、方向表示体10は、ホース本体2に対して別体として形成する或いは一体的に形成することができる。
【0019】
ホース長手方向に沿って並ぶ方向表示体10は、方向表示体10の視認性を高めるために、ホース周方向に対して複数列設けるとよい。更に、ホース周上に設けた各列をホース周方向に等間隔に配置するとよい。
【0020】
上述した消防用ホース1では、ホース本体2の外周面に複数の方向表示体10がホース長手方向に沿って間隔をおいて配置され、方向表示体10の各々はホース長手方向に隣り合う第一表示部11及び第二表示部12から構成され、第一表示部11は第一の色を有し、第二表示部12は第二の色を有しているので、予め、例えば、第一表示部11の第一の色が水源側を示し、第二表示部12の第二の色が火災源側を示すことを消防隊員に周知しておくことで、方向表示体10の色に基づいてホース長手方向に方向性を付与することができる。これにより、火災現場で消防隊員が方向表示体10を視認した際、帰還路の方向(水源側の方向)を瞬時かつ確実に判断することができるため、消防隊員に対する誘導機能を改善することが可能である。
【0021】
上記消防用ホースにおいて、第一表示部11の第一の色は寒色であり、第二表示部12の第二の色は暖色であることが好ましい。ここで、寒色としては青色、青紫色、青緑色等を例示することができ、暖色としては赤色、橙色、黄色等を例示することができる。更には、第一の色を青色(寒色)とし、第二の色を赤色(暖色)とすることがより好ましい。このように方向表示体10の色を選択することで、方向表示体10において色の違いが明瞭になり、色が判別し易くなるので、消防隊員に対する誘導機能を効果的に改善することができる。特に、寒色を有する第一表示部11を水源側に配置し、暖色を有する第二表示部12を火災源側に配置することで、その識別作用が顕著である。
【0022】
また、方向表示体10の各々において第一表示部11は雌継手5の側に配置され、第二表示部12は雄継手4の側に配置されているとよい。このように第一表示部11及び第二表示部12を配置することで、消防隊員に対する誘導機能を効果的に改善することができる。通常、消防用ホースでは雄継手側に火災源があり、雌継手側に水源があるので、特に、青色(寒色)を有する第一表示部11を水源側(雌継手側)に配置し、赤色(暖色)を有する第二表示部12を火災源側(雄継手側)に配置することで、色により直感的に水源側及び火災源側を認識できるようになり、方向表示体10の誘導機能が顕著に発揮される。
【0023】
更に、方向表示体10は反射性を有することが好ましい。例えば、ホース本体2の外周面に反射材を含むテープを貼り付けることや反射塗料を直接塗布すること、或いは、反射材を練り込んだ経糸や糸表面に反射塗料を塗布した経糸を織り込むこと等により、反射性を有する方向表示体10を形成することができる。特に、方向表示体10は再帰反射性を有することがより好ましい。具体的に、方向表示体10は再帰性反射材から構成してもよく、或いは再帰反射性を有する経糸で構成してもよい。再帰性反射材として、例えばガラスビーズを用いることができる。ホース本体2の外周面に再帰性反射材を含むテープを貼り付けることや再帰性反射材を樹脂または接着剤に混ぜて直接塗布すること、或いは、再帰反射性を有する経糸を織り込むこと等により、再帰反射性を有する方向表示体10を形成することができる。このように方向表示体10が反射性又は再帰反射性を有することで、ホースの視認性を高めることができる。なお、方向表示体10が反射性又は再帰性反射性を有する場合も方向表示体10の着色手段は特に限定されるものではなく、方向表示体10を構成する材料を着色してもよく、或いは染色した着色糸を経糸として織り込むようにしてもよい。
【0024】
図2は消防用ホースの一部を拡大して示すものであり、方向表示体10の各種の寸法を示している。方向表示体10のホース長手方向の長さAと方向表示体10のホース周方向の長さBとは、0.2≦A/B≦5.0の関係を満たすことが好ましく、1.0≦A/B≦4.0の関係を満たすことがより好ましい。また、第一表示部11のホース長手方向の長さa1又は第二表示部12のホース長手方向の長さa2と、方向表示体10のホース周方向の長さBとは、0.1≦a1/B≦2.5、0.1≦a2/B≦2.5の関係を満たすことが好ましい。その際、長さBを10mm〜60mmの範囲に設定すると良い。このように長さBに対する長さA又は長さa1,a2の比を適度に設定することで、方向表示体10の視認性を高くすることができる。なお、図示の例では、第一表示部11と第二表示部12の間に間隔を設けているが、これに限定されるものではなく、間隔を設けなくともよい。
【0025】
方向表示体10のホース周方向の長さBとホース周囲長Cとは、0.05≦B/C≦0.50の関係を満たすことが好ましく、0.10≦B/C≦0.20の関係を満たすことがより好ましい。図示の例では、第一表示部11のホース周方向の長さと第二表示部12のホース周方向の長さとは同等であるが、上述したB/Cの範囲内であれば第一表示部11と第二表示部12のホース周方向の長さを異ならせてもよい。このようにホース周囲長Cに対する長さBの比を適度に設定することで、方向表示体10の視認性を高めることができる。なお、ホース周囲長Cは、ホース本体2の外周面において測定される全周の長さである。
【0026】
方向表示体10のホース長手方向の長さAと方向表示体10の相互間隔Dとは、0.02≦A/D≦1.00の関係を満たすことが好ましく、0.20≦A/D≦0.80の関係を満たすことがより好ましい。このように相互間隔Dに対する長さAの比を適度に設定することで、方向表示体10の視認性を高めることができる。
【0027】
方向表示体10は雄継手4と雌継手5との間に5〜40個配置されているとよい。一般に、消防用ホースは雄継手と雌継手の間の距離が約20mであるが、当該区間に方向表示体10が適度に配置されていることで、方向表示体10の視認性を高めることができる。なお、上記配置数は、ホース長手方向に沿って並ぶ方向表示体10の1列分の総数である。
【0028】
上述した実施形態では、方向表示体10が一対の四角形からなる例を示したが、これに限定されるものではなく、他の多角形や円形等の図形により形成してもよく、第一表示部11と第二表示部12の形状を異ならせてもよい。例えば、図3(a)に示す方向表示体10は同一の大きさの三角形からなり、図3(b)に示す方向表示体10は互いに異なる大きさの三角形からなる。これら方向表示体10は、第一表示部11及び第二表示部12の各々がホース長手方向に対して方向性を表示している。また、図3(c)に示す第一表示部11は第二表示部12よりもホース長手方向の長さが長く、図3(d)に示す方向表示体10は、2つの要素11a,11bからなる第一表示部11と1つの要素12aからなる第二表示部12とを有している。これら方向表示体10は、段階的にホース長手方向の長さを変化させることにより、ホース長手方向に対して方向性を表示している。上述した例では、いずれも方向表示体10の色だけでなく形状に基づいて方向性を表示することができるため、好適である。なお、図3(a)〜(d)において、図の左側が水源側(雌継手側)であり、図の右側が火災源側(雄継手側)である。
【符号の説明】
【0029】
1 消防用ホース
2 ホース本体
3 連結金具
4 雄金具
5 雌金具
10 方向表示体
11 第一表示部
12 第二表示部
図1
図2
図3