【実施例】
【0037】
8頭の若いブタを検討した。麻酔の導入は、筋肉中にアセプロマジン(1.1mg/kg)、グリコピロレート(0.01mg/kg)およびケタミン(33mg/kg)を用い、その後、心電図の記録およびパルス酸素測定を行いながら、3%イソフルラン吸入を行った。フェンタニル(5mLの通常生理食塩溶液中に50mcg)を20ゲージのマルチオリフィスカテーテルによって腰椎髄液中に投与した。気管挿管および耳静脈カニューレ挿入後に、70%のO
2/30%のN
2のイソフルランによる維持を行い、そして血行動態によって保証される場合には、50mcgの脊椎へのフェンタニルの追加を行った。胸骨正中切開後、中心動脈圧カテーテルを配置し、ACT>350秒(ヘモクロン レスポンス、インターナショナル テクニジン コーポレーション(International Technidyne Corporation)、ニュージャージー州エジソン)を達成して維持するために、ヘパリンを静脈投与した(administered IV)。20フレンチの大動脈CPBカニューレおよび28〜30フレンチの両大静脈(bicaval)CPBカニューレ(メドトロニック インコーポレーテッド(Medtronic Incorporated)、ミネソタ州ミネアポリス)を配置した。
【0038】
動物を対照または単一人工肺のろ過CPB回路(
図3A)を用いた低圧酸素化にアプリオリに割り当てた。M3検出器(スペクトラム メディカル(Spectrum Medical)、英国チェルテナム)は、流量および動脈/静脈のO
2飽和度(SaO
2/SvO
2)を連続的に監視した。PaO
2は、スイープガス酸素/空気混合物(対照条件、N=3頭の動物)を変更することにより、または100%O
2スイープガス(低圧酸素化、N=5頭の動物)に変更可能な大気圧より低い圧力を印加することにより、調節した(目標=200mmHg)。PaCO
2(目標=45mmHg)は、各条件においてスイープガス流量を変更することにより調節した。低圧条件において、イソフルランの予測分圧は、気化器のダイアル設定を所望の濃度およびスイープガス圧力の少なくとも一方と等しくなるように増大することにより維持した(例えば、1%のイソフルランが周囲圧力で用いられた場合、等しい催眠効果を得るためには、前記設定は、0.66絶対気圧(ata)では1.5%に、0.5ataでは2%に増大される必要があるであろう)。CPB流量は、SvO
2>60%を維持するように調節され、フェニレフリンの間欠投与(intermittent phenylephrine)により、動脈圧(MAP)>50mmHgを維持した。貯留槽の容積は250〜500mlであった。動物の低い開始ヘマトクリットを保つために、縦隔流出血は、1/4インチのローラポンプ回路を介して貯留槽の吸引回路(cardiotomy section)に戻した。真空支援静脈ドレナージを用いた(−10mmHg)。受動的冷却は34°Cになった。
【0039】
CPBの実施全体にわたって空気を(貯留槽入口の静脈ラインのルアーコネクターを介して)連続的に混入した(200mL/分、
図3A)。単一サイトドップラーは、8つの実験すべてにおいてGMEを半定量的に監視した。テルモのFDAによって承認された塞栓検知および分類(Emboli Detection and Classification:EDAC(商標))は、人工肺の前、フィルタの直後(immediately postfilter)、および人工肺の後(N=3頭の動物)またはフィルタの6フィート後(N=3)の位置における、同時に3サイトでの超音波後方散乱によるGMEの定量化(simultaneous 3−site ultrasound backscatter GME quantification)のための8つの実験中6つにおいて利用可能であった。GMEデータは、CPBの条件(例えば流量、貯留槽体積、スイープガス組成または圧力)の変化によって分離された10〜120分の継続時間の試験において取得された。低圧酸素化の簡易試験を、対照条件で別様に管理された3頭の動物のうちの2頭において実施した。よって、低圧データは、ドップラーについてN=7/8頭の動物、およびEDACについてN=5/6頭の動物に由来し、一方、すべての対照データはN=3頭の動物(結果に記載した試験の数(n))に由来する。CPBパラメータは、おそらくCPB回路の下流の動物よりも、微小塞栓のより大きな決定因子であり、GMEデータ試験は統計分析のための独立観測であると見なされた。
【0040】
血液試料をCPBの前に採取し、次にその試料をCPBの2時間後および4時間後に、RBC形態学および血漿ヘモグロビンについて分析した。末端器官は、摘出する前にCPB回路を介して中性緩衝ホルマリン(10%、3リットル、5分間)で固定した。
【0041】
パラフィンに埋設した、前頭葉、視床、後部せん体(caudal lobe)、中脳、小脳、髄質、および腎皮質からの4μmのヘマトキシリン・エオシン切片を獣医病理学者が細胞構築完全性について微視的に評価した。次に、拡張した毛細血管(>10μm直径)の盲目定量化を側脳室および上衣下層に隣接した白質(脳室周囲白質、動物当たり 〜10 10倍視野(〜10 10X fields per animal))において実施した。組織効果の予想される異種混合の性質および事後の微小血管解析の調査の性質により、発明者らは微小血管損傷に関して各視野を独立したデータポイントとして扱った。
【0042】
データは平均±標準誤差(SEM)として示される。連続変数を両側スチューデントのt検定(two−tailed Student’s t−tests)(P<0.05で有意)を用いて比較した。線形適合はプリズム(グラフパッド ソフトウェア(GraphPad Software)、カリフォルニア州ラ・ホーヤ)を用いて実施した。量依存性はスピアマンの順位相関係数(Spearman’s Rank Correlation Coefficient)を用いて評価した。GMEデータ試験および組織標本は、統計分析のための独立した観測として扱われた。
【0043】
インビトロのガス交換:血中溶存ガスの低減
【0044】
【表1】
低圧酸素化(
図1A)をCPB(
図1B)において模擬患者と共に用いて、窒素不在下における酸素化および血液からのCO
2除去に対する大気圧より低いスイープガス圧力の効果を評価した。予想通りに、純酸素スイープガスの圧力を低下させることにより、PaO
2が滑らかな直線状で低下した(表1、
図1C、R2=0.99)。対照的に、PaCO
2は、スイープガス圧力が低下するのに伴って概して安定しており、印加した最低圧力ではCO
2除去の効率はおそらく増大した(表1、
図1D)。実際、CO
2除去は、実験では、スイープガス流量を調節することにより、酸素化とは独立して容易に管理された。低圧酸素化は、質量分光法を用いて、血液中溶存窒素を85.4±0.7%低減することが確認された(n=3回試験、p<0.001、脱窒素は過小評価された可能性あり、補足情報を参照されたい)。人工肺またはガス交換における有害作用はいかなる実験においても観察されなかった。模擬した真空障害の間に、正圧リリーフ弁は成功裡に空気塞栓を防止した(データ図示せず)。全体として、これらのデータは、低圧酸素化が、溶存ガスの分圧の合計を大気圧より低いレベルに低下させる、CPB中のガス交換を管理するための信頼できる効率的な方法であることを示している。
【0045】
インビトロにおけるGME:用量依存的除去
次に、低圧酸素化がCPB回路におけるGMEの除去を改善するかについて試験した。まず、人工肺の上流にGMEボーラスを注入した(
図2A)。人工肺が周囲圧力で100%酸素スイープガスを用いた場合には、強い下流ドップラー信号が観察された(
図2B)。スイープガス圧力を0.9ataにわずかに低下させると、ドップラー信号は対照から94.8±1.0%低下し(曲線下面積、範囲90.9〜98.3%、n=9回試験、p<0.001)、一方、0.8ataでは、前記信号は辛うじて識別可能であった(対照から99.6±0.07%低下、範囲99.3〜99.8%、n=10回試験、p<0.001)。次に、空気混入は大きな進行中の塞栓の送入を模擬した。スイープガス圧力を低下させることにより、再び、動脈フィルタの前で測定したドップラー信号の大幅な用量依存的低下が生じた(
図2C、スイープガス圧力が0.9ataであった場合には26±3%低下、0.8ataでは66±2%、0.7ataでは83±2%、0.6ataでは91±0.2%、0.5ataでは95±2%、0.4ataでは98±1%低下、スピアマンの順位相関係数ρ=1.0、n=3回連続試験)。ドップラーを動脈フィルタの下流に移動した場合には、実質的な塞栓信号は、動脈ろ過(前置ろ過器ベースライン信号、
図2Dの81±3%)を使用したにもかかわらず、基準気圧条件下で存続した。下流信号は、スイープガス圧力の低減によって、さらに効率的に低下した(0.9ataではフィルタ後のベースラインの53±4%、0.8ataでは83±2%、0.7ataでは94±1%、0.6ataでは99±0.3%、0.5ataでは99.5±0.1%、および0.4ataでは99.7±0.1%低下、ρ=1.0、n=3回連続試験)。全体として、これらのデータは、低圧酸素化の使用により、CPB回路の循環血からGMEを除去する能力が用量依存的に高められることを示している。
【0046】
ブタCPB:大動物の安全性の維持
【0047】
【表2】
動物、人工肺またはCPBの回路において注意される悪影響を有さず、安定し、容易に調整可能なガス交換パラメータによって、低圧酸素化を用いた40kgのブタにおけるCPBを特徴づけた。動物の特性およびCPB管理データは表2に記載する。とりわけ、窒素による希釈を用いる(F
iO
2=68.3±1.7%で制御)か、または真空(低圧条件において圧力=0.66±0.03ata)を用いて、スイープガス中の酸素分圧を低下させることにより、同様のPaO
2値が生じ、これは低圧酸素化が人工肺のガス交換効率を保つことを示唆している。対照動物におけるCO
2分圧のわずかな増大は、真空不在下でのわずかに低いスイープガス流量によるものであった。全体として、低圧酸素化は、CPB中に大動物を管理するための信頼できる実用的方法であった。
【0048】
ブタGME:CPBの回路における漸進的な排除
連続した空気混入の間に、単一部位の半定量的ドップラーおよび多部位の定量的EDACは、CPB回路(
図3A)内のGMEを検知した。データは、総数N=8頭のブタにおいて、CPBパラメータの変化によって分けられたれた個々の試験(n)において収集された。低圧酸素化は、大動脈カニューレ付近におけるドップラー信号を、対照(n=7、N=3)と比較して、99.1±0.3%(範囲95.8〜100%、n=16回試験、N=7頭のブタ)低下させた。低圧(N=5頭のブタ)条件および対照(N=3)条件からのEDACデータを
図3Bに示す。人工肺の近位側では、EDACのGME計数および体積は、低圧(n=10回試験およびp>0.29)と対照(n=7)とでは同様であった。人工肺より下流では、低圧条件のGME数は、対照と比較して、大幅に低減され、人工肺後の位置では68.4±14.1%(範囲13.1〜91.3%、n=5、p<0.05)、動脈フィルタ後の位置では92.6±4.2%(範囲57.8〜99.8%、n=10、p<0.01)、患者に進入する位置では99.96±0.02%(範囲99.87〜99.99%、n=5、p<0.001)低減された。GME体積もまた、人工肺後の位置では80.5±5.6%(62.2〜95.6%、n=5、p<0.05)、フィルタ後の位置では94.9±2.9%(範囲74.3〜99.8%、n=10、p<0.01)、患者に進入する位置では99.97±0.01%(範囲99.94〜100%、n=5、p<0.001)減少した。対照試験は、これらの各位置において、n=3、7、および4であった。これらのデータは、低圧酸素化がインビボにおけるCPB回路からのGMEの除去を強力に高めることを示している。さらに、前記データは、GMEの除去が高められた部位が、血液が患者に向かって流れるにつれ、人工肺から動脈フィルタ、そして血液自体へと漸進的に広がっていることを示している。重要なことには、患者に最も接近して取得されたデータは、上流における塞栓の送入量が大きいにもかかわらず、動脈ろ過および低圧酸素化の併用によりCPB回路からのGMEの送達のほぼ完全な排除を示している。
【0049】
ブタ組織解析:低減された微小血管損傷を有した正常組織学
図5A〜
図5Dは、低圧酸素化によって管理された動物からの末梢血、脳および腎臓の顕微鏡による評価を示す(スケールバー=100μm)。具体的には、これらの図は正常な細胞構造を示した。
【0050】
当業者は、窒素を含有しないスイープガスを任意の圧力で用いた人工肺はN
2除去のために最大の勾配を生じ、それによりたとえ血液中の残留O
2およびCO
2の分圧の合計が周囲圧力未満となったとしても、前記人工肺を通って流れる血液を脱窒素すると期待するであろう。しかしながら、気泡を血液相中へ再吸収させるための提唱されている機構は、溶存ガスの分圧の合計を低減させることに極めて依存するので、N
2分圧が低圧酸素化中に実際に低減されることを実験的に確認することが最適であった。N
2分圧は標準的な血液ガス分析によって測定されないので、質量分析法を用いた。分析は、O
2気泡を流れている血流に注入し、次いでその血液とガス交換させ、次に気泡トラップで再収集して、試料採取することができる単一人工肺CPB回路を用いた。適切には、血液中の溶存N
2は、それらの通過中にO
2気泡中に蓄積し、次いで質量分析によって検出されるであろう。酸素(20〜30mL)は血液中で撹拌され、人工肺の下流で前記回路にゆっくりと注入され、そこで血液とのガスの交換を高めるために、動脈フィルタの細孔を介して流れさせられ、次に気泡トラップにおいて収集され、100μLのガスロックシリンジ(スペルコアナリティカル(Supelco Analytical))を用いて、周囲圧力で試料採取された。質量分析法(アジレント(Agilent)5975C GC−MS)を用いて、100%O
2および室内気の対照試料を分析し、次いで試験サンプルガスを20〜100μLの量で導入した。ガス混合物を注入し、1mL/分で制御したヘリウムガス流によってHP−5MSカラムに通過させた。質量分析計イオン源、カラムおよび四極子は50°Cで維持した。質量分析計は電子衝撃モードで用いられ、イオン取得のための質量範囲は14〜200原子質量単位(原子質量単位)であった。O
2およびN
2の分子イオンを、それらの質量電荷比(m/z)32およびm/z28の各分子イオンによって監視した。m/z28(N
2)およびm/z32(O
2)amuに対するピークイオン存在量(peak ion abundances)を測定し、O
2/N
2画分をO
2および空気キャリブレーション試料間の補間によって計算した。
【0051】
血液を単一人工肺回路内において周囲圧力にて50%O
2/50%N
2のスイープガス混合物を用いて酸素化し、溶存N
2を含有する血液を生成した。この血液にO
2気泡を通過させ、次いで収集し、分析すると、それらのO
2気泡は41.7+/−2.3質量%のN
2を蓄積していた(n=7回試験)。同一の血液を0.5絶対気圧(ata)において100%O
2のスイープガスで酸素化して、N
2不在下において同様の中程度の酸素化を生じた。この血液を通過したO
2気泡は有意に少ないN
2を蓄積していた(6.1+/−0.3%、n=3回試験、p<0.001)。注入、試料採取および測定のプロセスの間に室内気によるO
2サンプルの汚染の機会がいくつかあったので、脱窒素の大きさは、これらのデータによって少なく見積もられている可能性がある。前記データは、低圧酸素化中のN
2分圧の明らかな低下を示しており、血液中の溶存ガスの分圧の合計の低減によるGMEの再吸収の提唱機構と一致している。
【0052】
図5Aは、CPBの開始前(ベースライン)、次に低圧酸素化によるCPBの2時間後および4時間後に採取された試料から形成された末梢血塗布標本を示している。1000倍の倍率において、塗布標本は、円鋸歯状の外観(crenated appearance)を有する棘状赤血球(red blood cell echinocytes)を表しており、これはブタに典型的であるが、細胞の損傷または溶血の証拠ではない。
図5Bは、明らかな異常を有さない大脳皮質に由来する、ヘマトキシリン・エオシン染色してパラフィン埋設した厚さ4μmの切片を示す。
図5Cは、明らかな異常を有さない海馬領域CA1を示す。
図5Dは、明らかな異常を有さない腎皮質を示す。
【0053】
ヒト肺によく似た中空糸微孔性膜型人工肺は、スイープガス流量が適切な場合、スイープガスと血液との間におけるO
2およびCO
2の交換において非常に効率的である。ヒト肺は、より低い血液溶解度を有するガスまたは蒸気(例えば麻酔薬蒸気)の分圧を、より大きな血液溶解度のそれと比較してより急速に平衡させる。同様に、人工肺によるN
2の付加または除去は、N
2の血液中における溶解度が低いために、O
2またはCO
2の交換よりも、より効率的になると思われる。当業において知られているように、スイープガスがN
2を含有していない場合、人工肺を退出する血液中のN
2の分圧はゼロに接近し、表1におけるO
2およびCO
2ならびに表2の低圧の列におけるO
2およびCO
2の測定された分圧の単純な合計は、実験における溶存ガスの分圧の合計の合理的見積りを提供するはずである。表2の対照の列については、スイープガス中のN
2の分圧も溶存ガスの分圧の合計を見積もるために追加される必要があるであろう。
【0054】
身体からのN
2の流失は、脂肪中にゆっくり集められたN
2の蓄積により、多少延長されるので、実験中のブタは静脈血中のN
2の供給源として作用することが予想される。血液中に溶解したN
2の測定は困難であり、臨床的状況では実現困難であるため、当業者は、ブタからのN
2の排除の推定値を提供するであろう。CPB開始前の麻酔された患者は、しばしば60〜100%範囲の吸気O
2に晒され、したがってCPBの前に部分的に脱窒素される。公開されたヒト脱窒素の時間的経過に基づいて、当業者は、ブタは、発明者らの低圧実験において、麻酔導入からCPBの開始までの176+/−8分間の間に、70%O
2/30%N
2の人工呼吸器ガスに対して60%平衡したと推定するであろう。予め空気呼吸に平衡させられた37kgのブタからの公開された4時間のN
2排除の時間的経過を修正するためにこの推定を用いると、42.3kgのブタからのN
2の排除は、N
2を含まないスイープガスを用いたCPBの最初の7分間では4.8mL/分であり、1時間では1.9mL/分、4時間では0.5mL/分であると推定される。血液100mL当たり1.27mLのN
2の体温におけるヒト血液中の公開されたN
2溶解度および4リットル/分の平均CPB流量を用いると、排除された窒素は、PCBの最初の7分間では68mmHg、1時間では23mmHg、4時間では8mmHgという動物からの溶存N
2の静脈分圧を占める。
【0055】
円柱状の中空糸微孔性人工肺膜は、スイープガス隔室から血液相中へ圧力を伝えることは期待されないので、血液細胞が低圧の圧力を経験することは期待されない。実際、大気圧より低いスイープガス圧力は、人工肺出口において動脈ライン血圧に影響を与えなかった(対照との差は0.5ataでは−0.8〜+0.6mmHgにわたり(n=14回試験、p>0.9)、0.1ataでは−0.6〜+0.5mmHgにわたった(n=14回試験、p>0.4))。さらに、血漿ヘモグロビンまたは溶血の形態学的証拠は、ブタにおける低圧酸素化の前およびその最中に得られた血液試料では観察されなかった(
図5A)。
【0056】
経験を積んだ獣医病理学者により、6つの脳領域および腎皮質(
図5B〜
図5D)に由来する固定死後組織において、細胞構築学的異常または動物間における明らかな差異は概して発見されなかった。しかしながら、いくつかの白質領域の異常な拡張毛細血管の存在が示された。小さな毛細血管および小動脈の拡張は、微小塞栓症に対する既知の反応である。脳室周囲白質における盲目事後解析は、低圧酸素化中のGMEの低減が、対照と比較した場合に、拡張した毛細血管の数および面積の35.8±5.5%および48.7±5.7%の低下をそれぞれ伴ったことを明らかにした(
図4、p<0.001)。検討したすべての毛細血管の直径において同様の発見が観測された(
図4D)。総体として、これらのデータは、GMEの排除は、低圧酸素化を用いて維持された動物において微小血管の損傷の低減を伴うことを示唆している。
【0057】
本願に引用された刊行物、特許出願、および特許を含むすべての参考文献は、これによりあたかも各参考文献が参照により援用されるように個々にかつ具体的に示され、その全容が本願に述べられるのと同程度に、参照によって援用される。
【0058】
本発明を記載する文脈において(とりわけ以下の特許請求の範囲の文脈において)、用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」および同様の指示対象の使用は、本願において別段の指示がない限り、または文脈に明らかに矛盾しない限り、単数および複数の双方を含むものと解釈されるべきである。「備える(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」という用語は、別段の指示がない限り、非制限用語(すなわち、「含むが、これらに限定されるものではない」ことを意味する)として解釈されるべきである。本願における値の範囲の詳説は、別段の指示がない限り、単にその範囲内にあるそれぞれの独立した値を個々に指す簡単な方法として機能するように意図し、それぞれの独立した値は、あたかもその値が個々に本願に列挙されるかのように、本明細書に組み込まれる。本願に記載したすべての方法は、本願において別段の指示がない限り、または文脈に明らかに矛盾しない限り、任意の適当な順序で実施することができる。本願に提供される全ての例または例示的用語(例えば、「のような」)の使用は、単に、本発明をより明らかにするように意図し、他に権利請求されない限り、本発明の範囲に対して限定をもたらさない。明細書中の言葉は、任意の権利請求していない要素を、本発明の実施にとって必須のものとして示すものと解釈されるべきでない。
【0059】
本発明の例示的な実施形態は、本発明を実施するために発明者らが知っている最良のモードを含んで、本願に記載されている。それらの実施形態の変形例は、前述の説明を読むことで、当業者には明らかになる。発明者らは、当業者が必要に応じてそのような変形例を用いることを予期し、また発明者らは、本発明が本願に具体的に記載した以外に実施されることを意図する。従って、この発明は、適用法によって許されるように、本願に添付された特許請求の範囲に挙げられた主題の別例および均等物をすべて含む。さらに、すべての可能な変形例中における上述の要素のいかなる組み合わせも、本願において別段の指示がない限り、または文脈に明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。