(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6846476
(24)【登録日】2021年3月3日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】色付きの熱補償されるらせん状体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G04B 17/06 20060101AFI20210315BHJP
G04B 45/00 20060101ALI20210315BHJP
G04B 17/22 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
G04B17/06 Z
G04B45/00 Z
G04B17/22 Z
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-144209(P2019-144209)
(22)【出願日】2019年8月6日
(65)【公開番号】特開2020-24203(P2020-24203A)
(43)【公開日】2020年2月13日
【審査請求日】2019年8月6日
(31)【優先権主張番号】18188067.5
(32)【優先日】2018年8月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス−ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・キュザン
(72)【発明者】
【氏名】アレックス・ガンデルマン
(72)【発明者】
【氏名】アンゲル・コスタディノフ
【審査官】
榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−525743(JP,A)
【文献】
特表2018−511032(JP,A)
【文献】
特表2006−507454(JP,A)
【文献】
スイス国特許出願公開第708888(CH,A3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 − 99/00
F16F 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱補償され色付けされる携行可能な時計用コイルばね(1)を製造する方法であって、
(a)ケイ素コア(2)を有するコイルばね(1)を用意するステップと、
(b)前記コイルばね(1)の前記コア(2)のすべての面(2a、2b、2c、2d)上に、熱補償を達成するために必要な厚みに対して特定の割合の厚みを有する第1の酸化ケイ素層(3)を形成するステップと、
(c)干渉効果の結果として色付けされるように設計されている前記コア(2)の1つの面(2a)から前記第1の酸化ケイ素層(3)を除去するステップと、
(d)干渉効果の結果として色付けされるように設計されている前記コア(2)の面(2a)上及び熱補償を行うように設計されている前記コア(2)の他の面(2b、2c、2d)上に第2の酸化ケイ素層(3)を形成するステップと
を備え、
前記第2の酸化ケイ素層(3)は、熱補償を達成するために所定の厚みを有し、
干渉効果の結果として色付けされるように設計されている前記コア(2)の前記面(2a)が色付けされる
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第2の酸化ケイ素層(3)の厚みは、所望の色を得るように調整される
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1及び第2の酸化ケイ素層(3)は、前記ステップ(b)及び(d)において熱酸化によって形成される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(c)は、異方性の刻み込みによって行われる
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(d)の後に、熱補償を行うように設計されている前記コア(2)の前記少なくとも他の面(2a、2b、2c、2d)のすべて又は一部にわたって導電層(4)を堆積させるステップ(e)を有する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第1及び第2の酸化ケイ素層(3)は、前記コア(2)の前記面(2a、2b、2c、2d)のすべての上に形成され、
前記第1の酸化ケイ素層(3)は、前記ステップ(c)において、携行可能な時計の外部から見えるように設計されている面(2a、2c)上にて除去される
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ケイ素コア(2)を有し熱補償され色付けされる携行可能な時計のためのコイルばね(1)であって、
前記コア(2)は、携行可能な時計内における組み付けの後に見えるように設計された面(2a)にあり1μm以下の厚みを有し干渉効果の結果として前記面(2a)に色を与える酸化ケイ素の干渉層(3)と、及び他の面(2b、2c、2d)上にあり前記干渉層よりも大きい厚みを有する酸化ケイ素の熱補償層(3)とを有する
ことを特徴とするコイルばね(1)。
【請求項8】
前記コア(2)は、その上面(2a)及び/又は下面(2c)に前記干渉層を有し、
その2つの側面(2b、2d)に熱補償層とを有する
ことを特徴とする請求項7に記載のコイルばね(1)。
【請求項9】
前記コア(2)は、その2つの側面(2b、2d)、及びその上面(2a)又は下面(2c)に前記熱補償層を有する
ことを特徴とする請求項8に記載のコイルばね(1)。
【請求項10】
前記熱補償層のすべて又は一部を被覆する導電層(4)を有する
ことを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載のコイルばね(1)。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれかに記載のコイルばね(1)を有する
ことを特徴とする携行可能な時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式の腕時計や懐中時計のような携行可能な時計の調整要素を提供するように設計されているコイルばねに関する。
【背景技術】
【0002】
機械式携行可能な時計の価値は、その部品の外観に関連することが多い。これに関連して、スケルトン腕時計が顧客によって高く評価されている。その顧客は、スケルトン腕時計を構成する複雑な要素や主な機能の動作を見ることができる。運動の源であるコイルばねの表示は特に評価される。したがって、この部品の美的外観には特に配慮する必要がある。
【0003】
色付けは、部品の美的外観を改善する1つの方法である。一般的には、PVD、ALD、直流電気的なプロセス、陽極酸化のような、層を堆積させる様々な方法によって、携行可能な時計用部品に色付けをすることができる。しかし、コイルばねを用いる特定のケースにおいては、このような審美的な層を堆積させると、この部品の必要な性質を害することがある。なぜなら、この部品は、磁場の影響を受けずに異なる温度における動作の差が最小限であることを確実にするように振り子と一緒にふるまうことが必要であるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況で、本発明の主題は、基部の特性(スチフネスの調整、反磁性、ばね仕掛けバランスアセンブリーの熱変動の補償など)を確実にしつつ、自身の可視面に色付けをすることを可能にするようなコイルばねを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このために、当該製造方法は、コイルばねのコアの少なくとも1つの面上にて薄膜を形成することを伴い、干渉効果の結果として前記面に色付けをする。当該薄膜は、酸化ケイ素のより厚い層によって被覆される他の面とともに当該コイルばねの熱補償に貢献する酸化ケイ素(SiO
2)の薄膜である。当該薄膜の厚みを調整することによって、多くの色を選択することができる。
【0006】
より詳細には、当該方法は、
− 前記コアの面のすべての上にて、熱補償される前記コイルばねを形成するために必要な厚みに対して特定の割合の厚みを後で有する第1の酸化ケイ素層を形成する第1のステップと、
− 色付けされるように設計されたコアの面から前に形成された第1の酸化物層を除去することを伴う第2のステップと、
− 第1のステップの面と同じ面上に、1μm以下である必要な厚みに対して残りの割合の厚みを有する第2の酸化ケイ素層を形成して、その一又は複数の面に干渉効果の結果として色を与えることを伴う第3のステップと
によって酸化ケイ素層の厚みを増加させることを伴う。
【0007】
好ましくは、前記熱補償層は、コアの側面及び携行可能な時計内で見えるように設計されている面とは反対側の面上に形成される。
【0008】
この方法には、色付けされた層を形成してもコイルばねの製造方法及びコイルばねの機能にほとんど影響を及ぼさないという利点がある。より正確には、コイルばねの側面上の熱補償層の形成は、温度についての良好なふるまいが考慮に入れると、当該方法に影響されず、又は当該方法に最小限しか影響されない。
【0009】
添付の図面を参照する好ましい実施形態についての以下の説明において、本発明の他の特徴や利点が与えられている。なお、これは例として与えられるものであって、これには何ら限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1aは、本発明に係るコイルばねの斜視図である。
図1bは、
図1aのコイルばねのループの横断方向の断面図である。
【
図2】本発明に係る方法のいくつかのステップを概略的に示しているコイルばねのループの横断方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、可視面に色付けすることを可能にする携行可能な時計部品を製造する方法に関する。
【0012】
本発明について、
図1a及び1bに示しているようなコイルばね1の単純化された例を用いて説明する。なお、これに限定されない。また、当然、本発明に係る他の部品を作ることも可能である。
【0013】
本発明は、熱補償されるコイルばねであって、熱補償のために酸化ケイ素層3によって被覆された単結晶又は多結晶のケイ素コア2を有するものに関し、これによって、全体のコイルバランス(
図1b)のふるまいに応じてコイルばねの熱弾性係数の変化を調整することが可能になる。本発明によると、携行可能な時計ケース内に組み付けられた後に見えるように設計されているコアの少なくとも1つの面には、干渉効果の結果として色付けされる酸化ケイ素層があり、この層は干渉層と呼ばれる。図示した例において、面2aは、携行可能な時計ケースの透明板を通して見えるように設計されているコイルばねの上面である。1つの変種において、この面は、携行可能な時計の基部を通して見えるように設計された下面2cであることができる。別の変種において、上面2a及び下面2cは、干渉層を有することができる。この干渉層は、所望の色に調整される1μm以下である厚みを有する薄膜の形態であり、この厚み範囲によって、強い色であって、したがって、より容易に見ることができる色(例、より鮮明)を得ることが可能になる。例えば、表1は、薄膜の厚みに応じて干渉によって得ることができる色のいくつかの例を示している。
【0015】
薄膜によって被覆されていない一又は複数の面は、同様に酸化ケイ素によって作られた熱補償層で被覆されている。好ましくは、当該コイルばねは、コア2の側面2b、2d上に少なくとも1つの熱補償層を有する。好ましくは、コアは、当該区画にある4つの面のうちの3つの面、すなわち、図示した例において側面2b、2dと下面2c上に、熱補償層を有する。熱補償層は、厚みが干渉層と異なり、その厚みは、干渉層の厚みよりも大きく、より正確には1μmよりも大きい。しかし、干渉層がコイルばねの熱補償に部分的に関与することが規定される。
【0016】
さらに、当該コイルばねは、熱補償層を有する面のすべて又は一部にわたって導電層4を有することができる。図示した例において、連続的な導電層4は、下面2cを被覆し、側面2b、2dを部分的に被覆する。当該導電層を、例えば、好ましくは厚みが50nm未満である、金、白金、クロム、タンタル、チタン、ロジウム又はパラジウムのような金属材料によって形成することができる。前記導電層は、静電防止機能を有し、部分的なシールを確実にする。
【0017】
図2に、熱補償され色付けされるコイルばねを作るために用いられる方法をコイルばねのループの断面図を用いて部分的に示している。この図に、酸化ケイ素が成長しているときに行われるいくつかの異なるステップを示している。ケイ素コアを備えたコイルばねをケイ素チップ(ウェハー法)から予め得ることができる。例えば、既知の方法で、湿潤プロセスによる化学攻撃、プラズマによる乾式機械加工プロセス、又はコイルの所望の輪郭に対応する適切なマスクを用いることによる反応性イオンエッチング(RIE)を行うことができる。
【0018】
本発明は、熱補償層を形成するように設計されている伝統的な酸化プロセスを以下の一連のシーケンスに置き換えることを伴う。以下において、側面2b、2dと下面2cに補償層を有し上面2aに干渉層を有するコア2に関して当該方法を説明する。
【0019】
図2aを参照すると、第1のステップは、ケイ素コア2上に酸化ケイ素層3を成長させることを伴う。この酸化ケイ素層3は、熱補償を得るために必要な厚みに対して特定の割合の厚みを有する。このステップは、例えば、熱酸化によって行うことができる。
図2bに示している第2のステップにおいて、上面2a上にて成長された酸化層が完全に除去される。この酸化層の除去は、刻み込み(engraving)によって行うことができる。この刻み込みは、関心事の面のみに影響を与えるために、異方性、すなわち、指向性である。すなわち、側面2b、2d及び下面2c上の層3は、刻み込みの影響を受けない。当該方法は、乾式刻み込みを用いることができる。
【0020】
図2cに示している第3のステップは、所望の干渉層の厚み及び所望の熱補償層の厚みを得るように、面2a、2b、2c及び2dのすべての上に酸化ケイ素層を成長させることを伴う。また、このステップを熱酸化によって行うこともできる。
【0021】
随意的に、第4のステップ(
図2d)において、下面2c上、そして、側面2b及び2dのすべて又は一部上に、導電層4が堆積される。この堆積は、PVD、イオン注入又は電解堆積のような様々な既知のプロセスによって行うことができる。
【0022】
このようにして、最終的には、このように、コイルばねは、側面2b、2c及び2d上の層が熱補償のために調整され上面2a上の層が所望の色を得るように調整されるコア2の面のすべての上にSiO
2の連続層を有する。熱補償を可能にする層の厚みは、色付けされる層の厚みよりも大きい。
【0023】
当然、このような方法は熱補償されたコイルばねに限定されず、ケイ素によって作られた歯車、アンカー又は他の部品に適用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 コイルばね
2 コア
3 酸化ケイ素層
4 導電層