(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6846495
(24)【登録日】2021年3月3日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】ヘッドランプ制御装置および方法
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/14 20060101AFI20210315BHJP
【FI】
B60Q1/14 A
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-200604(P2019-200604)
(22)【出願日】2019年11月5日
(65)【公開番号】特開2020-75714(P2020-75714A)
(43)【公開日】2020年5月21日
【審査請求日】2019年11月5日
(31)【優先権主張番号】10-2018-0134386
(32)【優先日】2018年11月5日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】507098483
【氏名又は名称】ヒュンダイ・モービス・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソン ジュン ヨン
【審査官】
竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−159709(JP,A)
【文献】
国際公開第2017/110277(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドランプを制御するヘッドランプ制御装置であって、
自車両の前方映像を取得する映像取得部と、
前記映像取得部によって取得された前方映像に基づいて把握される前方車両の位置に対する暗影帯主領域と、前記暗影帯主領域の左右側に対して設定された暗影帯マージン領域とに応じて前記ヘッドランプの光照射を制御し、前記前方車両までの距離に基づいて決定される目標照射角に応じて前記ヘッドランプの光照射を制御することにより、前記暗影帯マージン領域の幅を目標幅に維持する制御部とを含み、
前記制御部は、昼間状況で周辺物体を検出するために適用される第1アルゴリズムによって取得された前記前方車両までの第1距離、および夜間状況で周辺物体を検出するために適用される第2アルゴリズムによって取得された前記前方車両までの第2距離のうちいずれか1つから選択される決定距離により、前記目標照射角を決定して前記ヘッドランプの光照射を制御し、
前記制御部は、前記第1および第2距離を考慮して予め設定された距離判断条件に基づいて、前記前方車両が前記自車両から近距離に位置したと判断された場合、前記第1距離を前記決定距離として選択して前記目標照射角を決定することを特徴とするヘッドランプ制御装置。
【請求項2】
ヘッドランプを制御するヘッドランプ制御装置であって、
自車両の前方映像を取得する映像取得部と、
前記映像取得部によって取得された前方映像に基づいて把握される前方車両の位置に対する暗影帯主領域と、前記暗影帯主領域の左右側に対して設定された暗影帯マージン領域とに応じて前記ヘッドランプの光照射を制御し、前記前方車両までの距離に基づいて決定される目標照射角に応じて前記ヘッドランプの光照射を制御することにより、前記暗影帯マージン領域の幅を目標幅に維持する制御部とを含み、
前記制御部は、昼間状況で周辺物体を検出するために適用される第1アルゴリズムによって取得された前記前方車両までの第1距離、および夜間状況で周辺物体を検出するために適用される第2アルゴリズムによって取得された前記前方車両までの第2距離のうちいずれか1つから選択される決定距離により、前記目標照射角を決定して前記ヘッドランプの光照射を制御し、
前記制御部は、前記第1および第2距離を考慮して予め設定された距離判断条件に基づいて、前記前方車両が前記自車両から遠距離に位置したと判断された場合、前記第2距離を前記決定距離として選択して前記目標照射角を決定することを特徴とするヘッドランプ制御装置。
【請求項3】
前記目標照射角は、前記映像取得部を基準とする、左側暗影帯マージン領域の左側幅角度および右側暗影帯マージン領域の右側幅角度を含み、
前記制御部は、前記決定距離に基づいて前記左側幅角度および前記右側幅角度を調節することにより、前記暗影帯マージン領域の幅を前記目標幅に維持することを特徴とする請求項1又は2に記載のヘッドランプ制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記映像取得部から前記自車両の縦方向に延びる基準軸から前記暗影帯主領域の左側境界までの離隔角度である左側角度、前記決定距離、および前記目標距離を用いて前記左側幅角度を算出し、前記基準軸から前記暗影帯主領域の右側境界までの離隔角度である右側角度、前記決定距離、および前記目標距離を用いて前記右側幅角度を算出することを特徴とする請求項3に記載のヘッドランプ制御装置。
【請求項5】
ヘッドランプを制御するヘッドランプ制御方法であって、
映像取得部によって、自車両の前方映像を取得するステップと、
制御部によって、前記の取得された前方映像に基づいて把握される前方車両の位置に対する暗影帯主領域と、前記暗影帯主領域の左右側に対して設定された暗影帯マージン領域とに応じて前記ヘッドランプの光照射を制御し、前記前方車両までの距離に基づいて決定される目標照射角に応じて前記ヘッドランプの光照射を制御することにより、前記暗影帯マージン領域の幅を目標幅に維持するステップと、
を含み、
前記維持するステップにおいて、前記制御部は、
昼間状況で周辺物体を検出するために適用される第1アルゴリズムによって取得された前記前方車両までの第1距離、および夜間状況で周辺物体を検出するために適用される第2アルゴリズムによって取得された前記前方車両までの第2距離のうちいずれか1つから選択される決定距離により、前記目標照射角を決定して前記ヘッドランプの光照射を制御し、
前記維持するステップにおいて、前記制御部は、
前記第1および第2距離を考慮して予め設定された距離判断条件に基づいて、前記前方車両が前記自車両から近距離に位置したと判断された場合、前記第1距離を前記決定距離として選択して前記目標照射角を決定することを特徴とするヘッドランプ制御方法。
【請求項6】
ヘッドランプを制御するヘッドランプ制御方法であって、
映像取得部によって、自車両の前方映像を取得するステップと、
制御部によって、前記の取得された前方映像に基づいて把握される前方車両の位置に対する暗影帯主領域と、前記暗影帯主領域の左右側に対して設定された暗影帯マージン領域とに応じて前記ヘッドランプの光照射を制御し、前記前方車両までの距離に基づいて決定される目標照射角に応じて前記ヘッドランプの光照射を制御することにより、前記暗影帯マージン領域の幅を目標幅に維持するステップと、
を含み、
前記維持するステップにおいて、前記制御部は、
昼間状況で周辺物体を検出するために適用される第1アルゴリズムによって取得された前記前方車両までの第1距離、および夜間状況で周辺物体を検出するために適用される第2アルゴリズムによって取得された前記前方車両までの第2距離のうちいずれか1つから選択される決定距離により、前記目標照射角を決定して前記ヘッドランプの光照射を制御し、
前記維持するステップにおいて、前記制御部は、
前記第1および第2距離を考慮して予め設定された距離判断条件に基づいて、前記前方車両が前記自車両から遠距離に位置したと判断された場合、前記第2距離を前記決定距離として選択して前記目標照射角を決定することを特徴とするヘッドランプ制御方法。
【請求項7】
前記目標照射角は、前記映像取得部を基準とする、左側暗影帯マージン領域の左側幅角度および右側暗影帯マージン領域の右側幅角度を含み、
前記維持するステップにおいて、前記制御部は、
前記決定距離に基づいて前記左側幅角度および前記右側幅角度を調節することにより、前記暗影帯マージン領域の幅を前記目標幅に維持することを特徴とする請求項5又は6に記載のヘッドランプ制御方法。
【請求項8】
前記維持するステップにおいて、前記制御部は、
前記映像取得部から前記自車両の縦方向に延びる基準軸から前記暗影帯主領域の左側境界までの離隔角度である左側角度、前記決定距離、および前記目標幅を用いて前記左側幅角度を算出し、前記基準軸から前記暗影帯主領域の右側境界までの離隔角度である右側角度、前記決定距離、および前記目標幅を用いて前記右側幅角度を算出することを特徴とする請求項7に記載のヘッドランプ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドランプ制御装置および方法に関し、より詳細には、ヘッドランプの暗影帯を制御するヘッドランプ制御装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ヘッドランプは、手動的に照明する方式から、道路および周辺環境に能動的に対応して照明する方式に進化してきており、暗い道路では照度を増加させ、明るい道路では照度を減少させる方式のヘッドランプも適用されている。これとともに、自車両と同じ方向に走行中の先行車両、または自車両と反対方向に走行して自車両に接近する対向車両のような前方車両の運転者に眩しさを最小化できるようにヘッドランプが制御される技術が適用されている。
【0003】
最近、活発な研究が進められている知能型ヘッドランプシステムのうち、アダプティブドライビングビーム(Adaptive Driving Beam:ADB)ヘッドランプシステムは、カメラ連動ヘッドランプシステムであって、車両前方に装着されたカメラで認識する前方車両がない場合(すなわち、カメラによって前方車両からの光源が認識されない場合)、ハイビーム(High−Beam)で動作し、カメラで前方車両を認識すれば(すなわち、カメラによって他車両からの光源が認識された場合)、前方車両の最外角角度を計算して、前方車両の領域には眩しさを防止するためのロービーム(Low−Beam)を照射し、前方車両の領域を除いた領域にはハイビーム(High−Beam)を照射する方式で動作する。このようなアダプティブドライビングビームヘッドランプシステムは、スイベル(Swivel)アクチュエータの駆動によるスイベルタイプと、LED点消灯によるマトリクスタイプとに区分され、アダプティブドライビングビームヘッドランプを介して自車両の運転者の前方視認性が向上し、前方車両の運転者には眩しさを防止することができる。
【0004】
前方車両の運転者のグレア(Glare)を防止するためには、前方車両に対して正確なGFA(Glare Free Area)または暗影帯の設定が必ず先決されなければならない。しかし、現在の暗影帯の設定が前方車両からの光源をカメラで認識するカメラ映像処理アルゴリズムに完全に依存しており、これによって、自車両と前方車両との間の位置変化が急激になる環境では、カメラの映像処理速度の限界によって暗影帯の設定が位置変化に追従できず、結果的に前方車両の運転者にグレアが誘発される。このために、前方車両の位置に対して暗影帯領域の左右側に暗影帯マージンを付加することで、前方車両の運転者に誘発されるグレアが最小化されるようにしている。
【0005】
一方、自律走行システムに適用される画像処理は、実際に検出された物体に基づくのに対し、夜間走行の便宜性を目的とする知能型ランプシステム(ADBおよびHBA(High Beam Assistance)を含む)は、PWM(Pulse Width Modulation)に基づいて動作する前方車両のヘッドランプ光源対またはリアランプ光源対を認識して前方車両を検出するため、その検出される位置精度が極めて低く、前方車両が自車両から近距離に位置するほど位置精度の誤差は加重されて、最大±3゜水準の誤差が発生する。
【0006】
さらに、従来の暗影帯マージンの設定は、固定角度を用いることによって、
図1(a)に示されるように、前方車両が近距離に位置するほど暗影帯マージンが減少して、前方車両の運転者のグレアが頻繁に誘発され、逆に、
図1(b)に示されるように、前方車両が遠距離に位置するほど暗影帯マージンが不必要に増大して、自車両の運転者の視認性が低下する問題点が存在する。
【0007】
すなわち、現在の知能型ランプシステムは、前方車両が自車両から近距離に位置するほど位置精度の誤差が加重され、これに加えて、暗影帯マージンまで減少することによって前方車両の運転者のグレアがさらに頻繁に発生する問題があり、これとともに、前方車両が遠距離に位置する場合に増加する暗影帯マージンによって自車両の運転者の視認性が低下する逆マージン現象が発生する問題点が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】大韓民国登録特許公報第10−1491343号(2015.02.06.公告)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであって、本発明の一側面による目的は、知能型ランプシステムにおいて、前方車両の検出位置精度を改善すると同時に、角度ベースの暗影帯マージン制御方式によって前方車両の運転者にグレアが誘発され、自車両の運転者の視認性が低下していた問題を解決するためのヘッドランプ制御装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面によるヘッドランプを制御するヘッドランプ制御装置は、自車両の前方映像を取得する映像取得部と、前記映像取得部によって取得された前方映像に基づいて把握される前方車両の位置に対する暗影帯主領域と、前記暗影帯主領域の左右側に対して設定された暗影帯マージン領域とに応じて前記ヘッドランプの光照射を制御し、前記前方車両までの距離に基づいて決定される目標照射角に応じて前記ヘッドランプの光照射を制御することにより、前記暗影帯マージン領域の幅を目標幅に維持する制御部とを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明において、前記制御部は、昼間状況で周辺物体を検出するために適用される第1アルゴリズムによって取得された前記前方車両までの第1距離、および夜間状況で周辺物体物体を検出するために適用される第2アルゴリズムによって取得された前記前方車両までの第2距離のうちいずれか1つから選択される決定距離により、前記目標照射角を決定して前記ヘッドランプの光照射を制御することを特徴とする。
【0012】
本発明において、前記制御部は、前記第1および第2距離を考慮して予め設定された距離判断条件に基づいて、前記前方車両が前記自車両から近距離に位置したと判断された場合、前記第1距離を前記決定距離として選択して前記目標照射角を決定することを特徴とする。
【0013】
本発明において、前記制御部は、前記第1および第2距離を考慮して予め設定された距離判断条件に基づいて、前記前方車両が前記自車両から遠距離に位置したと判断された場合、前記第2距離を前記決定距離として選択して前記目標照射角を決定することを特徴とする。
【0014】
本発明において、前記目標照射角は、前記映像取得部を基準とする、左側暗影帯マージン領域の左側幅角度および右側暗影帯マージン領域の右側幅角度を含み、前記制御部は、前記決定距離に基づいて前記左側幅角度および前記右側幅角度を調節することにより、前記暗影帯マージン領域の幅を前記目標幅に維持することを特徴とする。
【0015】
本発明において、前記制御部は、前記映像取得部から前記自車両の縦方向に延びる基準軸から前記暗影帯主領域の左側境界までの離隔角度である左側角度、前記決定距離、および前記目標距離を用いて前記左側幅角度を算出し、前記基準軸から前記暗影帯主領域の右側境界までの離隔角度である右側角度、前記決定距離、および前記目標距離を用いて前記右側幅角度を算出することを特徴とする。
【0016】
本発明の一側面によるヘッドランプを制御するヘッドランプ制御方法は、映像取得部が、自車両の前方映像を取得するステップと、制御部が、前記映像取得部によって取得された前方映像に基づいて把握される前方車両の位置に対する暗影帯主領域と、前記暗影帯主領域の左右側に対して設定された暗影帯マージン領域とに応じて前記ヘッドランプの光照射を制御し、前記前方車両までの距離に基づいて決定される目標照射角に応じて前記ヘッドランプの光照射を制御することにより、前記暗影帯マージン領域の幅を目標幅に維持するステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一側面によれば、本発明は、所定の条件に基づいて、昼間状況または夜間状況での距離データを選択的に取る方式により、前方車両の検出位置精度を改善することができ、前方車両との距離に応じてヘッドランプの光照射角を制御して、暗影帯マージンの幅を一定に維持することにより、近距離状況で誘発される前方車両の運転者のグレアおよび遠距離状況で誘発される自車両の運転者の視認性低下の問題を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】従来の角度ベースの暗影帯マージン制御方式を示す例示図である。
【
図1B】従来の角度ベースの暗影帯マージン制御方式を示す例示図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るヘッドランプ制御装置を説明するためのブロック構成図である。
【
図3A】本発明の一実施形態に係るヘッドランプ制御装置における、暗影帯マージン領域の幅が目標幅に維持されることを示す例示図である。
【
図3B】本発明の一実施形態に係るヘッドランプ制御装置における、暗影帯マージン領域の幅が目標幅に維持されることを示す例示図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るヘッドランプ制御装置における、目標照射角を決定する過程を示す例示図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るヘッドランプ制御装置における、目標照射角を決定する過程を示す例示図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るヘッドランプ制御装置における、目標照射角を決定する過程を示す例示図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るヘッドランプ制御方法を説明するためのフロー図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るヘッドランプ制御方法を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付した図面を参照して、本発明に係るヘッドランプ制御装置および方法の一実施形態を説明する。この過程において、図面に示された線の厚さや構成要素の大きさなどは、説明の明瞭性と便宜上誇張されて示されることがある。また、後述する用語は、本発明における機能を考慮して定義された用語であって、これは、使用者、運用者の意図または慣例によって異なる。そのため、このような用語に対する定義は、本明細書全般にわたる内容に基づいて行われなければならない。
【0020】
以下に説明する本実施形態のヘッドランプHEADLAMPは、アダプティブドライビングビームヘッドランプシステムに適用されるヘッドランプである例示として説明する。
【0021】
図2は、本発明の一実施形態に係るヘッドランプ制御装置を説明するためのブロック構成図であり、
図3は、本発明の一実施形態に係るヘッドランプ制御装置における、暗影帯マージン領域の幅が目標幅に維持されることを示す例示図であり、
図4〜
図6は、本発明の一実施形態に係るヘッドランプ制御装置における、目標照射角を決定する過程を示す例示図である。
【0022】
図2を参照すれば、本発明の一実施形態に係るヘッドランプ制御装置は、映像取得部100と、制御部200と、駆動部300とを含むことができる。
【0023】
映像取得部100は、自車両の前方映像を取得することができる。映像取得部100は、前方車両からの光源を認識する方式(夜間状況)、または周辺環境の明暗比を認識する方式(昼間状況)で前方映像を取得して前方車両を検出するカメラセンサで実現できる。
【0024】
制御部200は、映像取得部100によって取得された前方映像に基づいて把握される前方車両の位置に対する暗影帯主領域と、暗影帯主領域の左右側に対して予め設定された暗影帯マージン領域とに応じてヘッドランプHEADLAMPの光照射を制御することができる。ここで、前方車両は、自車両の走行方向に走行中の先行車両、または自車両の走行方向と反対方向に走行して自車両に接近する対向車両を意味することができる。制御部200は、映像取得部100によって取得された前方映像のうち前方車両の光源を認識し、前方車両の最外角角度を計算して前方車両の位置に対する暗影帯主領域を決定することができ、前方車両の運転者のグレアを防止するために、暗影帯主領域の左右側に対して暗影帯マージン領域(左側暗影帯マージン領域および右側暗影帯マージン領域)を決定することができる。制御部200は、暗影帯主領域と、暗影帯マージン領域とに応じて駆動部300を介してヘッドランプHEADLAMPの光照射を制御することができ、駆動部300は、ヘッドランプシステムによってスイベル(Swivel)アクチュエータまたはLEDドライバなどで実現できる。
【0025】
この時、前述のように、暗影帯マージン領域に対して固定角度を適用する場合、前方車両が近距離に位置するほど暗影帯マージンが減少して、前方車両の運転者のグレアが頻繁に誘発され、逆に、前方車両が遠距離に位置するほど暗影帯マージンが不必要に増大して、自車両の運転者の視認性が低下する問題点が存在する。
【0026】
そこで、本実施形態において、前方車両までの距離に基づいて決定される目標照射角に応じてヘッドランプHEADLAMPの光照射を制御することにより、暗影帯マージン領域の幅を目標幅に維持する構成を採用する。暗影帯マージン領域の幅は、暗影帯マージン領域の実際の幅を意味し、単位としてはm(メートル)が採用されてよい。すなわち、暗影帯マージン領域の幅を目標幅に固定させることにより、従来の逆マージン現象を除去する構成を採用する。
図3(a)および(b)は、前方車両が自車両からそれぞれ近距離および遠距離に位置した場合、暗影帯マージン領域が同一に設定される、本実施形態の結果を示している。
【0027】
以下、前述した本実施形態の構成を制御部200の動作を中心に具体的に説明する。
【0028】
制御部200は、昼間状況で周辺物体を検出するために適用される第1アルゴリズムによって取得された前方車両までの第1距離、および夜間状況で周辺物体を検出するために適用される第2アルゴリズムによって取得された前方車両までの第2距離のうちいずれか1つから選択される決定距離により、目標照射角を決定してヘッドランプHEADLAMPの光照射を制御することができる。
【0029】
第1距離は、映像取得部100によって取得された前方映像に対して明暗比を認識して周辺物体を検出する方式の、通常昼間状況で適用される第1アルゴリズムによって算出された前方車両までの距離を意味する。そして、第2距離は、映像取得部100によって取得された前方映像に対して前方車両からの光源対(すなわち、前方車両のヘッドランプ光源対またはリアランプ光源対)を認識して、その角度を計算することにより距離を算出する、通常夜間状況で適用される第2アルゴリズムによって算出された前方車両までの距離を意味する。したがって、第1アルゴリズムによって算出された第1距離が、第2アルゴリズムによって算出された第2距離に比べて、通常その正確性が高い。
【0030】
アダプティブドライビングビームヘッドランプシステムの場合、夜間状況で第2アルゴリズムによって算出された第2距離を前方車両までの距離として決定してヘッドランプHEADLAMPの光照射を制御する。前方車両のヘッドランプまたはリアランプの光源対は、PWM基盤で動作することによって、第2アルゴリズムによる第2距離には誤差が存在し、前方車両が自車両から近距離に位置するほど第2距離の誤差は加重される。
【0031】
したがって、本実施形態は、夜間状況でも前方車両が自車両から近距離に位置して、明暗比認識基盤の第1アルゴリズムによって前方車両を検出できる場合には、第1アルゴリズムによって算出された第1距離を活用することにより、前方車両までの距離精度を向上させる構成を採用する。すなわち、精度の高い第1距離を活用できる範囲(すなわち、近距離)では、第2距離の代わりに第1距離を活用して前方車両までの距離精度を向上させることができる。
【0032】
具体的には、制御部200は、第1および第2距離を考慮して予め設定された距離判断条件に基づいて、前方車両が自車両から近距離に位置したと判断された場合、第1距離を決定距離として選択して目標照射角を決定することができる。決定距離は、後述する目標照射角(すなわち、左側幅角度および右側幅角度)を算出するために採用される前方車両までの距離として定義される。
【0033】
距離判断条件は、第1および第2距離を考慮する範囲で多様な実施形態で実現可能であり、例えば、制御部200は、第1距離および第2距離とも予め設定された第1基準距離(例:70m)以内の場合、前方車両が自車両から近距離に位置したと判断することができる。ここで、第1基準距離は、夜間状況で第1アルゴリズムによっても一定精度以上に前方車両を検出可能な最大距離を意味することができる。したがって、第1距離は、カメラセンサ(すなわち、映像取得部100)の仕様に応じて多様に設計可能である。
【0034】
これによって、夜間状況で第1距離の精度が保障される範囲で第2距離の代わりに第1距離を前方車両までの距離、すなわち決定距離として選択することにより、前方車両までの距離精度が改善される。
【0035】
一方、前述した距離判断条件に基づいて、前方車両が自車両から遠距離に位置したと判断された場合、制御部200は、第2距離を決定距離として選択して目標照射角を決定することができる。例えば、第1距離または第2距離が第1基準距離を超える場合、制御部200は、前方車両が自車両から遠距離に位置したと判断し、それによって、第1距離はその精度が保障されないと判断して、第2距離を決定距離として選択することができる。
【0036】
決定距離が選択された後、制御部200は、決定距離に基づいて目標照射角を決定してヘッドランプHEADLAMPの光照射を制御することができる。ここで、目標照射角は、映像取得部100を基準とする、左側暗影帯マージン領域の左側幅角度および右側暗影帯マージン領域の右側幅角度を意味する。
【0037】
左側幅角度を具体的に定義すれば、映像取得部100の設置位置(通常、車両の前方中央側に設けられる)から左側暗影帯マージン領域の左側上限境界を結ぶ直線と、映像取得部100の設置位置から暗影帯主領域の左側境界(すなわち、暗影帯主領域と左側暗影帯マージン領域との境界)を結ぶ直線とがなす角度として定義される(
図4〜
図6のθ
marginLH)。
【0038】
同様に、右側幅角度を具体的に定義すれば、映像取得部100の設置位置から右側暗影帯マージン領域の右側上限境界を結ぶ直線と、映像取得部100の設置位置から暗影帯主領域の右側境界(すなわち、暗影帯主領域と右側暗影帯マージン領域との境界)を結ぶ直線とがなす角度として定義される(
図4〜
図6のθ
marginRH)。
【0039】
これによって、制御部200は、決定距離に基づいて左側幅角度および右側幅角度を調節することにより、暗影帯マージン領域の幅を目標幅に維持することができる。すなわち、制御部200は、左側幅角度および右側幅角度を調節することにより、前方車両までの距離と関係なく暗影帯マージン領域の幅が目標幅に維持されるようにすることができる。
【0040】
目標照射角を決定する過程を
図4を参照して説明すれば、制御部200は、映像取得部100から自車両の縦方向に延びる基準軸から暗影帯主領域の左側境界までの離隔角度である左側角度(θ
objLH)、決定距離(D
determined)、および目標幅(D
margin)を用いて左側幅角度(θ
marginLH)を算出することができる。これを数式で表現すれば、下記数1の通りである。
【0042】
同様に、制御部200は、映像取得部100から自車両の縦方向に延びる基準軸から暗影帯主領域の右側境界までの離隔角度である右側角度(θ
objRH)、決定距離(D
determined)、および目標幅(D
margin)を用いて右側幅角度(θ
marginRH)を算出することができる。これを数式で表現すれば、下記数2の通りである。
【0044】
数1および2による左側幅角度および右側幅角度の計算方式は、
図5および6にも同一に適用される。
【0045】
左側幅角度および右側幅角度が算出されると、制御部200は、左側幅角度および右側幅角度に応じてヘッドランプHEADLAMPの光照射を制御することにより、暗影帯マージン領域の幅を目標幅に維持することができる。
【0046】
下記表1および表2は、目標幅が2mの場合であって、左側角度がそれぞれ−1゜および−3゜の場合(すなわち、前方車両が自車両基準で横方向にそれぞれ異なる位置にある場合を想定)、決定距離に応じた左側幅角度および右側幅角度を算出した例示であって、決定距離が増加するに伴って、左側幅角度および右側幅角度が反比例的に減少することを確認可能で、すべての決定距離における暗影帯マージン領域の幅が目標幅の2mに維持されることを確認することができる。
【0049】
下記表3および表4は、目標幅が3mの場合であって、左側角度がそれぞれ−1゜および−3゜の場合(すなわち、前方車両が自車両基準で横方向にそれぞれ異なる位置にある場合を想定)、決定距離に応じた左側幅角度および右側幅角度を算出した例示であって、決定距離が増加するに伴って、左側幅角度および右側幅角度が反比例的に減少することを確認可能で、すべての決定距離における暗影帯マージン領域の幅が目標幅の3mに維持されることを確認することができる。
【0052】
前述した過程により、暗影帯マージン領域の幅が目標幅に一定に維持され、これによって、前方車両が近距離に位置するほど暗影帯マージンが減少して、前方車両の運転者のグレアが誘発され、前方車両が遠距離に位置するほど暗影帯マージンが不必要に増大して、自車両の運転者の視認性が低下する問題が解消できる。
【0053】
図7および
図8は、本発明の一実施形態に係るヘッドランプ制御方法を説明するためのフロー図である。
【0054】
図7を参照して、本発明の一実施形態に係るヘッドランプ制御方法を説明すれば、まず、映像取得部100は、自車両の前方映像を取得する(S100)。
【0055】
次に、制御部200は、映像取得部100によって取得された前方映像に基づいて把握される前方車両の位置に対する暗影帯主領域と、暗影帯主領域の左右側に対して予め設定された暗影帯マージン領域とに応じてヘッドランプHEADLAMPの光照射を制御する。この時、制御部200は、前方車両までの距離に基づいて決定される目標照射角に応じてヘッドランプHEADLAMPの光照射を制御することにより、暗影帯マージン領域の幅を目標幅に維持する(S200)。
【0056】
S200ステップにおいて、制御部200は、昼間状況で周辺物体を検出するために適用される第1アルゴリズムによって取得された前方車両までの第1距離、および夜間状況で周辺物体を検出するために適用される第2アルゴリズムによって取得された前方車両までの第2距離のうちいずれか1つから選択される決定距離により、目標照射角を決定してヘッドランプHEADLAMPの光照射を制御する。
【0057】
具体的には、S200ステップにおいて、制御部200は、第1および第2距離を考慮して予め設定された距離判断条件に基づいて、前方車両が自車両から近距離に位置したと判断された場合には、第1距離を決定距離として選択し、距離判断条件に基づいて、前方車両が自車両から遠距離に位置したと判断された場合には、第2距離を決定距離として選択した後、選択された決定距離に基づいて目標照射角を決定する。
【0058】
ここで、目標照射角は、映像取得部100を基準とする、左側暗影帯マージン領域の左側幅角度および右側暗影帯マージン領域の右側幅角度を含むことができ、これによって、S200ステップにおいて、制御部200は、決定距離に基づいて左側幅角度および右側幅角度を調節することにより、暗影帯マージン領域の幅を目標幅に維持する。
【0059】
この場合、制御部200は、映像取得部100から自車両の縦方向に延びる基準軸から暗影帯主領域の左側境界までの離隔角度である左側角度、決定距離、および目標距離を用いて左側幅角度を算出する。また、制御部200は、前記基準軸から暗影帯主領域の右側境界までの離隔角度である右側角度、決定距離、および目標距離を用いて右側幅角度を算出する。
【0060】
図8は、S200ステップの具体的な実施形態を示している。
図8を参照して、S200ステップの実施形態を説明すれば、制御部200は、S100ステップで取得された前方映像に基づいて、第1アルゴリズムによる第1距離、および第2アルゴリズムによる第2距離を取得する(S210)。
【0061】
次に、制御部200は、第1および第2距離を考慮して予め設定された距離判断条件を判断する(S220)。判断結果、自車両から近距離に位置したと判断された場合、制御部200は、第1距離を決定距離として選択し(S230)、自車両から遠距離に位置したと判断された場合、制御部200は、第2距離を決定距離として選択する(S240)。
【0062】
次に、制御部200は、選択された決定距離に基づいて目標照射角、すなわち左側幅角度および右側幅角度を決定する(S250)。
【0063】
次に、制御部200は、決定された目標照射角に応じてヘッドランプHEADLAMPの光照射を制御する(S260)。これによって、前方車両との距離と関係なく暗影帯マージン領域の幅が目標幅に一定に維持できる。
【0064】
このように、本実施形態は、所定の条件に基づいて、昼間状況または夜間状況での距離データを選択的に取る方式により、前方車両の検出位置精度を改善することができ、前方車両との距離に応じてヘッドランプの光照射角を制御して、暗影帯マージンの幅を一定に維持することにより、近距離状況で誘発される前方車両の運転者のグレアおよび遠距離状況で誘発される自車両の運転者の視認性低下の問題を除去することができる。
【0065】
以上、本発明は、図面に示された実施形態を参照して説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当該技術の属する分野における通常の知識を有する者であれば、これから多様な変形および均等な他の実施形態が可能である点を理解するであろう。したがって、本発明の技術的保護範囲は以下の特許請求の範囲によって定められなければならない。
【符号の説明】
【0066】
100:映像取得部
200:制御部
300:駆動部
HEADLAMP:ヘッドランプ