特許第6846538号(P6846538)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6846538工作機械で工作物を加工する方法、ならびにそのための工作機械
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  • 特許6846538-工作機械で工作物を加工する方法、ならびにそのための工作機械 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6846538
(24)【登録日】2021年3月3日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】工作機械で工作物を加工する方法、ならびにそのための工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23B 15/00 20060101AFI20210315BHJP
   G05B 19/18 20060101ALI20210315BHJP
   B23B 11/00 20060101ALI20210315BHJP
   B23Q 3/155 20060101ALI20210315BHJP
   B23B 3/16 20060101ALI20210315BHJP
   B23Q 7/02 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   B23B15/00 A
   G05B19/18 C
   B23B11/00
   B23Q3/155 A
   B23B3/16 A
   B23Q7/02 B
【請求項の数】19
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2019-553626(P2019-553626)
(86)(22)【出願日】2017年9月11日
(65)【公表番号】特表2020-514093(P2020-514093A)
(43)【公表日】2020年5月21日
(86)【国際出願番号】EP2017072782
(87)【国際公開番号】WO2018114066
(87)【国際公開日】20180628
【審査請求日】2019年6月19日
(31)【優先権主張番号】102016125002.3
(32)【優先日】2016年12月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519222139
【氏名又は名称】エーツェットウー−メタルバレン・ゲーエムベーハー・ウント・コー・カーゲー
【氏名又は名称原語表記】EZU−METALLWAREN GMBH & CO.KG
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツンケラー・アンドレアス
【審査官】 村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−245609(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102014106572(DE,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/172799(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 15/00
B23B 3/00
B23B 11/00
B23Q 3/155
B23Q 7/00
G05B 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータで作動するスピンドル(5)およびこれに取り付けられた受容部を有する工作機械(1)で工作物(31)を加工する方法において、さらに前記工作機械(1)は、
複数のアダプタ(21)が中に受容された搬送マガジン(2)と、
複数の工作物(31)が中に受容された工作物備蓄部(3)と、
工具(61)および/または工作物(31)を受容するための加工テーブル(6)とを有しており、
前記方法は、
事前設定された軌道に沿って前記搬送マガジン(2)の中でアダプタ(21)が案内されることと、
前記工作物備蓄部(3)に貯蔵されている工作物(31)がそれぞれ1つのアダプタ(21)に供給されること、および、工作物(31)がアダプタ(21)によって保持されるようにそれぞれ1つの工作物(31)がそれぞれ1つのアダプタ(21)と接合されることと、
アダプタ(21)がこれにより保持される工作物(31)とともに前記搬送マガジン(2)の中で事前設定された軌道に沿って再搬送されることと、
アダプタ(21)がこれによって保持される工作物(31)とともに前記スピンドル(5)で保持されるように、アダプタ(21)がこれによって保持される工作物(31)とともに前記搬送マガジン(2)から前記スピンドル(5)へ引き渡されることと、
前記スピンドル(5)にある工作物(31)が前記加工テーブル(6)の上で工具保持部材(63)に保持される工具(61)に対する前記スピンドル(5)の移動と回転によって加工されることと、
加工後に前記加工テーブル(6)の上で保持される工具(61)によって工作物(31)がアダプタ(21)から解放されること、および、工作物(31)が前記加工テーブル(6)の上の工作物保持部材(62)に据え置かれること、または、工作物(31)が次の加工のために後置されたステーション(9)へ引き渡されることと、
空のアダプタ(21)が前記スピンドル(5)から前記搬送マガジン(2)へ戻るように引き渡されることと、
空のアダプタ(21)が事前設定された軌道に沿って前記搬送マガジン(2)の中で再搬送されることとを有する方法。
【請求項2】
前記工作物保持部材(62)と前記工具保持部材(63)が前記加工テーブル(6)の上で回転可能に構成され、さらに前記方法は、
前記工作物保持部材(62)で保持される工作物(31)または前記工具保持部材(63)で保持される工具(61)が前記スピンドル(5)の回転と同時に、またはその代替として、工作物(31)を加工するために回転することを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スピンドル(5)は、アダプタ(21)およびこれに保持される工作物(31)に代えて、工具(61)を直接的に、または工具アダプタ(64)を介して受容することができるように構成され、前記工作機械(1)は工具(61)が直接的に、または工具アダプタ(64)の中で受容される第2のマガジン(7)を有しており、
アダプタ(21)から工作物(31)が解放されて前記加工テーブル(6)の上で前記工作物保持部材(62)に工作物(31)が据え置かれるステップの後に、工作物(31)が前記工作物保持部材(62)によって前記加工テーブル(6)の上で保持され、
前記スピンドル(5)が前記搬送マガジン(2)へと戻るように移動して、空になったアダプタ(21)を前記スピンドル(5)から前記搬送マガジン(2)へと引き渡してから、工具(61)を前記第2のマガジン(7)から、または前記加工テーブル(6)の上の前記工具保持部材(63)から直接的に、または工具アダプタ(64)を用いたうえで前記スピンドル(5)に受容し、
さらに、
前記スピンドル(5)がこれに保持された工具(61)とともに前記加工テーブル(6)へと向かう方向へ、前記加工テーブル(6)の上の前記工作物保持部材(62)に保持されている工作物(31)の工具(61)による再加工のために移動することと、
前記スピンドル(5)により直接または工具アダプタ(64)を介して保持される工具(61)が工作物(31)の再加工の後に前記スピンドル(5)から前記第2のマガジン(7)へ、または前記加工テーブル(6)の上の前記工具保持部材(63)へ戻るように据え置かれることと、
前記加工テーブル(6)の上で保持される工作物(31)が前記工作物保持部材(62)からの工作物(31)の解除後に後置されたステーション(9)へとアウトプットされることとを有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記スピンドル(5)は、アダプタ(21)およびこれに保持される工作物(31)に代えて工具(61)も直接的に、または工具アダプタ(64)を介して受容できるように構成され、前記工作機械(1)は工具(61)が直接または工具アダプタ(64)に受容される第2のマガジン(7)を有しており、前記加工テーブル(6)の上にアダプタ(21)を受容するためのアダプタマガジン(66)が構成され、
アダプタ(21)から工作物(31)が解放されて前記加工テーブル(6)の上の前記工作物保持部材(62)に工作物(31)が据え置かれるステップの後に工作物(31)が前記加工テーブル(6)の上で前記工作物保持部材(62)によって保持され、
前記スピンドル(5)がアダプタ(21)を前記加工テーブル(6)の上の前記アダプタマガジン(66)の中へ据え置き、
さらに、
工具(61)を前記加工テーブル(6)の上の前記工具保持部材(63)から、または前記第2のマガジン(7)から、直接的に、または工具アダプタ(64)を介して前記スピンドル(5)に受容することと、
前記スピンドル(5)がこれに保持された工具(61)とともに前記加工テーブル(6)の上の前記工作物保持部材(62)に保持されている工作物(31)へと向かう方向へ、工作物(31)の再加工のために移動することと、
工具(61)が工作物(31)の加工後に前記スピンドル(5)から前記第2のマガジン(7)へ、または前記加工テーブル(6)の上の前記工具保持部材(63)へ戻るように据え置かれることとを有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記工作物保持部材(62)に保持された工作物(31)が加工されて工具(61)が据え置かれた後に前記スピンドル(5)がアダプタ(21)を前記アダプタマガジン(66)から受容し、これを用いて、前記工作物保持部材(62)に保持されている工作物(31)をあらためて前記スピンドル(5)で受容して、前記スピンドル(5)のあらためての移動と回転によって、および/または前記加工テーブル(6)の上で工具保持部材(63)に保持されている工具(61)の回転によって工作物(31)をさらに加工し、または工作物(31)を後置されたステーション(9)へとアウトプットする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記加工テーブル(6)が工作物(31)の加工中にその姿勢に関して前記スピンドル(5)の回転軸に対して相対的に調節される、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記加工テーブル(6)の上に複数の異なる種類の工具(61)が工作物(31)の加工のために準備され、前記方法はさらに、
前記スピンドル(5)がアダプタ(21)によって保持された工作物(31)とともに第1の工具(61)による工作物(31)の初回の加工後に前記加工テーブル(6)の上で前記工具保持部材(63)によって保持されている第2の工具(61)へと向かう方向に移動することと、
アダプタ(21)によって前記スピンドル(5)に保持されている工作物(31)が前記加工テーブル(6)の上で保持されている前記第2の工具(61)によって再加工されることと、
前記加工テーブル(6)の上で保持されている別の工具(61)へと前記スピンドル(5)が工作物(31)の再加工のために、または前記加工テーブル(6)の上の前記工作物保持部材(62)もしくは後置されたステーション(9)へ工作物(31)を据え置くために移動することとを有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記加工テーブル(6)は、それぞれ異なる種類の工具(61)を工作物(31)の加工のために保持することができる複数の領域を有し、前記加工テーブル(6)は、1つの領域で前記加工テーブル(6)の上に保持されている工具(61)を交換することができると同時に他の領域で工具保持部材(63)に保持されている工具(61)が、または前記工作物保持部材(62)に保持されている工作物(31)が、工作物(31)の加工に関与し得るように変更可能であり、前記方法はさらに、
アダプタ(21)によって前記スピンドル(5)に保持される工作物(31)が前記スピンドル(5)の移動および回転によって、ならびに/または前記工具保持部材(63)で前記加工テーブル(6)の第1の領域に保持されている工具(61)の回転によって加工されることと、
前記スピンドル(5)が前記加工テーブル(6)の1つの操作領域から工作物(31)の初回の加工後に移動することと、
前記第1の領域が加工位置から出るように移動するとともに第2の領域が加工位置へ入るように移動するように前記加工テーブル(6)が調節され、それにより前記第2の領域で保持されている工具(61)が工作物(31)の加工のために準備されることと、
前記加工テーブル(6)の調節プロセスが完了した後に前記スピンドル(5)が前記加工テーブル(6)に向かって移動することと、
アダプタ(21)によって前記スピンドル(5)に保持されている工作物(31)が前記スピンドル(5)の移動および回転によって、ならびに/または前記工具保持部材(63)で前記加工テーブル(6)の第2の領域に保持されている工具(61)の回転によって再加工されることとを有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記工作機械(1)はさらに測定装置と制御装置を有し、
前記スピンドル(5)が工作物(31)の加工中に前記測定装置の検出領域へと移動し、
前記スピンドル(5)でアダプタ(21)によって保持されている工作物(31)がそのジオメトリーに関して計測され、
検出された測定データが前記制御装置へと伝送される、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の方法であって、
前記工作物(31)の加工は、切削加工である、方法。
【請求項11】
工作物(31)の加工をするための工作機械(1)において、
モータで作動するスピンドル(5)およびこれに取り付けられた受容部と、
複数のアダプタ(21)を中に受容可能であり、事前設定された軌道に沿ってアダプタ(21)を案内可能である搬送マガジン(2)と、
複数の工作物(31)を中に受容可能である工作物備蓄部(3)と、
工具(61)が直接または工具アダプタ(64)を介して受容される第2のマガジン(7)と、
前記工作物備蓄部(3)からのそれぞれ1つ工作物(31)が前記搬送マガジン(2)に受容されているそれぞれ1つのアダプタ(21)と接合され、それにより工作物(31)がアダプタ(21)により保持され、アダプタ(21)をそこに保持された工作物(31)とともにさらに前記搬送マガジン(2)の中で案内可能である接合ステーション(4)と、
工具(61)を受容するための工具保持部材(63)および工作物(31)を受容するための工作物保持部材(62)を備えた加工テーブル(6)とを有しており、
前記スピンドル(5)は工作物(31)の加工のために回転的および並進的に可動であるとともに、工作物(31)を加工可能であるように前記加工テーブル(6)に対して移動可能であり、
前記スピンドル(5)は、工作物(31)を加工するために、前記加工テーブル(6)の受容部または前記搬送マガジン(2)で保持されている工作物(31)をアダプタ(21)によって受容することができるように構成され、または、前記加工テーブル(6)および前記第2のマガジン(7)で保持されている工具(61)を直接または工具アダプタ(64)によって受容することができるように構成されている工作機械。
【請求項12】
アダプタ(21)および/または工具アダプタ(64)を前記スピンドル(5)から受容するためのアダプタマガジン(66)をさらに有し、前記アダプタマガジン(66)は前記加工テーブル(6)の上に構成される、請求項11に記載の工作機械(1)。
【請求項13】
前記第2のマガジン(7)と前記搬送マガジン(2)は、アダプタ(21)と工具(61)が直接または工具アダプタ(64)で受容される複合型のマガジンとして構成される、請求項11または12に記載の工作機械(1)。
【請求項14】
工具アダプタ(64)とアダプタ(21)は、工作物(31)の加工のために工具(61)と工作物(31)の両方を保持可能である複合型のアダプタとして構成される、請求項11から13のいずれか1項に記載の工作機械(1)。
【請求項15】
前記工作物保持部材(62)と前記工具保持部材(63)は前記加工テーブル(6)の上の回転部材として構成され、それにより、前記回転部材で保持される工作物(31)および工具(61)を工作物(31)の加工のために前記スピンドル(5)の回転と同時に、またはその代替として回転可能である、請求項11から14のいずれか1項に記載の工作機械(1)。
【請求項16】
前記加工テーブル(6)を工作物(31)の加工中にその姿勢に関して前記スピンドル(5)の回転軸に対して相対的に調節可能である、請求項11から15のいずれか1項に記載の工作機械(1)。
【請求項17】
前記加工テーブル(6)は、それぞれ異なる種類の工具(61)を工作物(31)の加工のために保持可能である複数の領域を有し、前記加工テーブル(6)は、1つの領域で前記加工テーブル(6)の上に保持されている工具(61)を交換可能であると同時に他の領域で工具保持部材(63)に保持されている工具(61)が、または前記工作物保持部材(62)に保持されている工作物(31)が、工作物(31)の加工に関与し得るように変更可能である、請求項11から16のいずれか1項に記載の工作機械(1)。
【請求項18】
前記工作機械(1)は測定装置と制御装置を有し、前記スピンドル(5)を前記測定装置の検出領域へと移動可能であり、それにより前記スピンドル(5)でアダプタ(21)によって保持されている工作物(31)をそのジオメトリーに関して計測することができ、
検出されたデータを前記制御装置によって受信可能である、請求項11から17のいずれか1項に記載の工作機械(1)。
【請求項19】
請求項11から18のいずれか1項に記載の工作機械(1)であって、
前記工作物(31)の加工は、切削加工である、工作機械(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械で工作物を加工する方法、ならびにこのような種類の方法を実施することができる工作機械に関する。
【0002】
旋削部品などを大量生産するために現在用いられている工作機械は、通常、駆動部、制御部、特定の運動軌道上で工具を案内する案内部、ならびに測定システムなどのモジュール形式のアセンブリで成り立っており、工作物と工具の間の定義された相対運動を用いた所定の形状の工作物の−多くの場合に自動化された−製造に利用されている。
【0003】
このとき工作物の製作には工作物の品質、製造価格、およびこれと結びついた加工プロセスの時間的な最適化の観点から、たえず増大する要求事項が課せられる。これに加えて、できる限り多くの加工プロセスを実行できるようにするために、加工センターの高いフレキシビリティが期待される。
【0004】
このとき加工プロセスを規定する時間構成要素は、基本的に2つのグループに下位区分される。主時間と副時間である。このとき主時間は直接的な進捗が実現される時間を表し、すなわち、工具が加工のために係合していて、工作物をたとえば切削加工することができる。これとは対照的に副時間は、作業課題の遂行に間接的にのみ役立つ副次的活動のために必要となる予備的時間を特徴づける。
【0005】
主として副時間は作業空間への工作物の搬入や搬出、工具の交換、ならびにそのために設けられる保持部への工具のクランプと係止などの副次的活動によって規定される。
【0006】
上に説明した主時間と副時間から、工作物を製造するための加工プロセスの全体時間がもたらされる。このとき既存の工作機械では、副次的活動は価値創出プロセスには間接的にしか関与しないにもかかわらず、副次的活動のためにしばしば工作物の本来の加工と同じほど大きな時間割合が費やされる。したがって副時間の削減は、加工プロセスの全体時間を最小化し、その際に主時間を短縮して最終的に品質を損なうことがないようにするために、大きな潜在的可能性を提供する。
【0007】
従来知られている工作機械では、工作物の搬入や搬出などの副次的活動はしばしばグリッパユニットやロボットユニットによって担われる。これらのユニットは加工センターの作業空間の範囲外に配置されており、したがって、実行されるべき各々の工作物交換のために作業空間の中へ進入しなければならない。このような走行経路から長い搬入時間と搬出時間が生じ、このことはひいては長い副時間につながる。
【0008】
このように、加工プロセスの副時間およびこれに伴って全体時間を削減する1つの選択肢は、必要な走行経路の縮小にある。
【背景技術】
【0009】
従来技術はこの点についてたとえば特許文献1において、工作物がスピンドルによって搬送ユニットから引き取られる工作機械を開示している。厳密に言うと、そこでは副時間の短縮のために2つのいわゆるピックアップスピンドルが工具リボルバーの横に設けられており、一方のピックアップスピンドルは工作物を受容して準備するのに対して、他方のピックアップスピンドルで保持される工作物が加工される。工作物交換のための時間が、ここでは第2のピックアップスピンドルを冗長的に設けることで短縮される。しかし、ピックアップスピンドルが工具リボルバーの横に配置されることによって、工作物と工具の間の角度が固定的に設定され、そのため、加工にあたってのフレキシビリティが失われる。しかも、工具リボルバーが各ピックアップスピンドルの間に配置されるので、すでに工具リボルバーに用意されている工具しか、さしあたり加工に利用することができない。
【0010】
しかしそこでは、工具の複数回の交換を必要とする、複数の異なる加工プロセスを直接的に連続して実行しようとするとき、各ピックアップスピンドルの間の工具リボルバーへ困難にしかアクセス可能でなく、リボルバーの工具を交換するために、たとえばピックアップスピンドルと工具リボルバーからなるアセンブリ全体を取り外さなくてはならないという問題が生じる。しかもそこでは工作物は、工作物を保持するピックアップスピンドルによって阻まれていない側でしか加工することができない。そのため、工作物の他方の側を加工しようとするときには、これを必然的に加工プロセスからまず取り出してから、その後にあらためて加工プロセスに入れなければならない。これらすべてのことが、副時間の明らかな増大につながる。
【0011】
特許文献2には、工作物スピンドルに装填をするためのローディングユニットが開示されている。このローディングユニットは水平方向の直線上で移動可能であり、垂直方向の軸を中心として回転可能である両側の工作物グリッパを有している。工作物グリッパを回転させることで、加工された工作物をスピンドルから取り出して、工作物グリッパにより保持されている新たな工作物を、工作物グリッパの180°回転によってスピンドルに引き渡すことができる。これに加えて、工作機械にそれぞれ2つのスピンドルとそれぞれ2つの工具リボルバーが設けられている。
【0012】
移動経路の短縮を実現するために、工作物が工作物グリッパによってスピンドルから直接的に第2のスピンドルへ引き渡される。ここでもスピンドルと工具リボルバーが冗長的に設けられることで、加工時間の時間的な短縮が実現される。両方のユニットがそれぞれ二重に設けられるので、ここでも別の工具を準備するためのスペース不足が生じる。したがって、工作機械のフレキシビリティが大幅に制約される。
【0013】
従来技術から明らかになるとおり、プロセス時間の最適化にあたっては、工作物の供給時間や工具の交換時間にしばしば重点が置かれる。たとえば旋削加工やフライス加工など、実行されるべき加工の種類によっては、従来、そこで妥協を図らざるを得ず、工具交換時間の短縮をとるか、工作物の供給時間の短縮をとるか決めなければならない。しかし従来は工作機械のフレキシビリティの低下、およびこれに伴って工作機械で実行可能な異なる加工プロセスの減少が、副時間の短縮に常に付随している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】ドイツ特許第202010051866B4号明細書
【特許文献2】ドイツ特許第102011081717B4号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって従来技術を前提としたうえで、本発明の課題は、工作物加工の副時間が短縮され、それと同時に加工方法に関わる高いフレキシビリティを実現することができるテクノロジーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この課題は、請求項1の構成要件を有する、工作機械で工作物を好ましくは切削加工する方法によって解決される。
【0017】
モータで作動するスピンドルおよびこれに取り付けられた受容部を有する工作機械で工作物を好ましくは切削加工する本発明の方法は、さらに工作機械が、複数のアダプタが中に受容された搬送マガジンと、複数の工作物が中に受容された工作物備蓄部と、工具および/または工作物を受容するための加工テーブルとを有しており、事前設定された軌道に沿って搬送マガジンの中でアダプタが案内されることと、工具備蓄部に貯蔵されている工作物がそれぞれ1つのアダプタに供給されることと、工作物がアダプタによって保持されるようにそれぞれ1つの工作物がそれぞれ1つのアダプタと接合されることと、アダプタがこれにより保持される工作物とともに搬送マガジンの中で事前設定された軌道に沿って再搬送されることと、アダプタがこれによって保持される工作物とともにスピンドルで保持されるように、アダプタがこれによって保持される工作物とともに搬送マガジンからスピンドルへ引き渡されることと、スピンドルにある工作物が好ましくは加工テーブルの上で工具保持部材に保持される工具に対するスピンドルの移動と回転によって加工されることと、加工後に加工テーブルの上で保持される工具によって工作物がアダプタから解放されることと、工作物が加工テーブルの上の工作物保持部材に据え置かれること、または、工作物が次の加工のために後置されたステーションへ引き渡されることと、空のアダプタがスピンドルから搬送マガジンへ戻るように引き渡されることと、空のアダプタが事前設定された軌道に沿って搬送マガジンの中で再搬送されることとを有する。
【0018】
本発明による方法では、工作物は時間的にその加工の前にそのつどアダプタで受容される。このときそれぞれ1つのアダプタが1つの工作物を受容し、それにより引き続いて工作物とアダプタが固定的に結合される。工作物は、それがアダプタに受容された後、アダプタに対して相対的なその姿勢に関して規定されている。工作物とアダプタの間の結合は、アダプタに対する工作物の並進と回転の両方の自由度を制約する。
【0019】
工作物がアダプタに保持されれば、工作物の取扱いがただちに簡易化される。工作物の取扱いは、結合後にはアダプタを通じて行うことができる。工作物そのものをクランプしなくてよくなる。このように、工作物の取扱いがアダプタを通じて間接的に行われる。このような工作物の間接的な取扱いによって、工作物を容易に、かつ特に迅速にその姿勢に関して変更し、移動させることができる。このように、取扱いプロセスの簡易化が副時間の削減につながる。
【0020】
アダプタへの工作物の供給は、時間的に工作機械での工作物の加工の前に行われる。それに伴い、工作物とアダプタの接合は、工作物加工の副時間からも主時間からも分断される。したがって、この工作物取扱いのクリティカルなプロセスを、以後の各ステップに対して時間的にほぼ依存することなく行うことができる。工作物は繊細なジオメトリーや表面を有することがあるので、工作物の取扱いプロセスは特別な注意を払って行わなければならない。それに伴い、主時間中または副時間中の工作物の取扱いのような時間的にクリティカルなプロセスが、工作物の保全的な取扱いと相反する。
【0021】
このように、主時間および副時間から工作物の取扱いが時間的に分断されることで、たとえば工作物のすでに加工済みの領域の表面品質など、工作物の当初の性質を維持することができる。工作物の品質が、副時間の削減にもかかわらず確保されたままに保たれる。
【0022】
搬送マガジンの中での搬送が事前設定された軌道に沿って行われるので、アダプタへ工作物が引き渡された後、工作物に関する正確な位置情報と姿勢情報が常時存在する。工作物がその姿勢に関して未決定のまま支承されて受容されるべきであるケースで該当するように、高いコストをかけて引渡プロセスを制御しなくてよくなり、事前設定された正確な座標によって制御式に行うことができる。
【0023】
工作物はアダプタを介して、従来式の工作機械では工具を保持する、工作機械のモータで駆動されるスピンドルで受容される。加工テーブルの上で定置に保持される工具に対してスピンドルが移動することで、スピンドルで回転駆動される工作物を切削加工することができる。このとき工作物を初回の加工の後に引き続いて工作機械から、そのために設けられた受容装置へとアウトプットすることができる。あるいは別案として、工作物を次の加工のために工作機械の加工テーブルの上に据え置くこともできる。
【0024】
加工テーブルはそのために種々の保持装置とクランプ装置を有しており、それにより、加工テーブルの上で工具に加えて工作物も加工中に保持することができる。スピンドルから加工テーブルの上へ工作物が引き渡されることで、工作物の他の表面が、厳密にはアダプタによってそれ以前には覆われていた工具の表面が、加工のために露出する。それに伴い、工作物が初回の加工後にスピンドルから加工テーブルの上に据え置かれることによって、工作物を加工プロセスから取り出して新たにアライメントしてからあらためて加工プロセスに取り入れることなしに、以後の加工を実行することが直接的に可能である。このように加工プロセスのフレキシビリティが顕著に向上し、ブランクから最終的に製造される工作物までに必要な加工時間が時間的に有意に低減される。
【0025】
結果的に、搬送マガジンによる作業空間への工作物の供給、ならびにアダプタとの結合による工作物そのものの取扱いの分断は、工作機械のフレキシビリティを低下させることなく、副時間の短縮につながる。
【0026】
本発明による方法の1つの実施形態では、工作物保持部材と工具保持部材が加工テーブルの上で回転可能に構成されていてよく、さらに本方法は、工作物保持部材で保持される工作物または工具保持部材で保持される工具がスピンドルの回転と同時に、またはその代替として、工作物を加工するために回転することを有することができる。
【0027】
本発明による方法では、スピンドルに保持される工作物に加えて、加工テーブルの上で保持される工具も回転させることができる。このように、工作物をスピンドルで回転不能に保持し、そのようにして工具テーブルの上の回転する工具に対して移動させて、工作物をたとえば旋削加工またはフライス加工することが可能になるという利点がある。しかしながら、加工テーブルの上で工具を回転駆動するだけでなく、スピンドルに保持された工作物も並行してスピンドルによって回転させることが可能であるという利点もある。それによって可能な加工プロセスの数が大幅に増える。特に、工作物と工具を同時に互いに同じ向きの方向に回転させることができ、それによって工作物と工具の間の相対速度が低減される。あるいは反対向きの回転運動も可能であり、それによって工作物と工具の間の相対速度を増大させることができる。
【0028】
それに伴って加工の速度そのものを、すなわち主時間を短縮することができる。単位時間あたりにいっそう多くの材料を削ることができるからである。さらに工具または工作物の回転を、それぞれ他方の部材の回転の後にも行うことができる。それにより、ひいては個々の加工ステップの間の速度を、すなわち副時間を短縮することができる。再クランプ、位置決め、およびアライメントが不要になるからである。工作物をチャックでたとえば旋削加工、およびフライス加工することができる。
【0029】
本方法の別の実施形態では、スピンドルは、アダプタおよびこれに保持される工作物に代えて、工具を直接的に、または工具アダプタを介して受容することができるように構成されていてよく、工作機械は工具が直接的に、または工具アダプタの中で受容される第2のマガジンを有しており、アダプタから工作物が解放されて加工テーブルの上で工作物保持部材に工作物が据え置かれるステップの後に、工作物が工作物保持部材によって加工テーブルの上で保持され、スピンドルが搬送マガジンへと戻るように移動して、空になったアダプタをスピンドルから搬送マガジンへと引き渡してから、工具を第2のマガジンから、または加工テーブルの上の工具保持部材から、直接的に、または工具アダプタを用いたうえでスピンドルに受容する。
【0030】
このとき工作物を加工する方法は、さらに、スピンドルがこれに保持された工具とともに加工テーブルへと向かう方向へ、加工テーブルの上の工作物保持部材に保持されている工作物の工具による再加工のために移動することと、スピンドルにより直接または工具アダプタを介して保持される工具が工作物の再加工の後にスピンドルから第2のマガジンへ、または加工テーブルの上の工具保持部材へ戻るように据え置かれることと、加工テーブルの上で保持される工作物が工作物保持部材からの工作物の解除後に後置されたステーションへとアウトプットされることとを有する。
【0031】
工作物がアダプタを介して工作機械のスピンドルで保持されるので、スピンドルの受容部の構成が工作物ジオメトリーに依存しない。したがって、複雑なスピンドルを設ける必要がない。むしろスピンドルは簡単な仕方で、アダプタのほかに工具または工具アダプタも受容できるように構成されていてよく、このことはアダプタの相応の適合化によって、すでに従来から工作機械に含まれているスピンドルによって本発明の方法を実施することができる程度まで簡易化できるという利点がある。
【0032】
このような構成によって設備変更プロセスが不要となり、それによって副時間を短く保つことができ、それと同時にフレキシビリティを高く保つことができる。加工テーブルの上だけでなく第2のマガジンでも工具が追加的に準備されることで、工作物を加工するために利用できる工具の数を増やすことができる。このとき工具は搬送マガジンとは別個に設けられる第2のマガジンで、またはこれに加えてアダプタと工作物が準備される同じマガジンすなわち搬送マガジンでも、用意しておくことができる。
【0033】
工作物をスピンドルで工具によって加工テーブルの上で加工できるだけでなく、工作物そのものを加工テーブルの上に据え置くことができ、そこでスピンドルに受容された工具によって加工されることによって、加工プロセスのフレキシビリティが大幅に高くなる。一方では、それぞれ異なる工作物の側を異なる工作物クランプによって、加工テーブルとスピンドルで加工のためにアクセス可能にすることができる。さらに、そのつど回転する部材に依存して工作物と工具を移動させることで、工作物での加工をさまざまに異なる回転軸の間で迅速に変更することができる。
【0034】
スピンドルに受容することができる工具と工作物をそれぞれ加工テーブルの上に据え置くことができ、もしくはこれにより受容することができ、または搬送マガジンと第2のマガジンに据え置くことができ、もしくは受容することができるので、スピンドルの移動経路をさまざまに異なる基準に従って設定することができる。たとえば、スピンドルが工作物を加工テーブルの上に据え置いて、わずかな移動経路の後に工具を加工テーブルから受容して、いま据え置いたばかりの工作物をさらに加工することによって、移動経路を非常に短く抑えることができる。
【0035】
スピンドルができる限りまっすぐな区間を方向変化なしに進むべきときには、移動経路を最速の移動経路に準じて選択することもできる。工具を加工テーブルの上にも第2のマガジンにも据え置くことができるので、スピンドルの移動経路をさまざまに異なる基準に従って設計し、それに応じて最適化することができる。このとき第2のマガジンは搬送マガジンの一部として構成されていてよく、それは、搬送マガジン内のスペースの空き状況に応じて工作物または工具に割り当てられることによる。
【0036】
本方法の別の実施形態では、スピンドルは、アダプタおよびこれに保持される工作物に代えて工具を直接的に、または工具アダプタを介して受容できるように構成されていてよく、工作機械は工具が直接または工具アダプタに受容される第2のマガジンを有しており、加工テーブルの上にアダプタを受容するためのアダプタマガジンが構成される。
【0037】
アダプタから工作物が解放されて加工テーブルの上の工作物保持部材に工作物が据え置かれるステップの後、工作物は加工テーブルの上で工作物保持部材によって保持され、アダプタは加工テーブルの上のスピンドルによってアダプタマガジンの中へ据え置かれる。このとき工作物を加工する方法は、さらに、加工テーブルの上の工具保持部材から、または第2のマガジンから、工具が直接または工具アダプタを用いてスピンドルに受容されることと、スピンドルがこれに受容された工具とともに加工テーブルの上で工作物保持部材に保持されている工作物へと向かう方向に移動して工作物をさらに加工することと、工具が工作物の加工後にスピンドルから第2のマガジンへ、または加工テーブルの上の工具保持部材へ戻るように据え置かれることとを有することができる。
【0038】
上に説明した態様に準じて、この実施形態でも工作機械で可能な加工プロセスのフレキシビリティをいっそう向上させることができる。工作物を初回の加工後に加工テーブルの上に据え置くことができる。そのために工作物がアダプタからアウトプットされて、加工テーブルの上の工具保持部材に受容される。
【0039】
スピンドルに残されたアダプタを、引き続き、スピンドルの短い移動によって加工テーブルの上のアダプタマガジンに据え置くことができる。工具の性質と種類に応じて、アダプタとともに、またはアダプタなしで受容が可能であってよい。それにより、スピンドルに受容可能な工具の数を明らかに増やすことが可能である。スピンドル受容部と適合する工具だけでなく、アダプタによって初めてスピンドルに取付可能になる工具も、スピンドルによって受容することができるからである。
【0040】
本方法の別の実施形態では、工作物保持部材に保持された工作物が加工され、工具が据え置かれた後に、スピンドルがアダプタをアダプタマガジンから受容し、これを用いて、工具保持部材に保持されている工作物をあらためてスピンドルで受容して、スピンドルのあらためての移動と回転によって、および/または加工テーブルの上で工具保持部材に保持されている工具の回転によって工作物をさらに加工し、または工作物を後置されたステーションへとアウトプットする。
【0041】
上で説明したとおり、実行可能なさまざまな加工プロセスの幅広いバリエーション可能性により、工作機械の高いフレキシビリティが実現される。ここで説明した発展例により、さらに、さまざまに異なる加工ステップの順序が決められないまま保留される。アダプタマガジンが加工テーブルの上に構成されているので、スピンドルを搬送マガジンへ戻るように移動させることなく、アダプタを加工テーブルから直接的に取り出すことができ、短い移動の後に、いま受容したアダプタに工作物を工作物保持部材から取り出すことができる。それにより、移動経路が大幅に短縮されるばかりでなく、それに加えて、どのような加工順序でも可能になるので、加工方法が最高度のフレキシビリティを実現する。
【0042】
本方法の1つの発展例では、加工テーブルは工作物の加工中にスピンドルの回転軸に対して相対的な姿勢に関して調節することができる。
【0043】
この発展例では、加工のためにスピンドルに受容される工作物または工具と、加工テーブルの上で受容される工作物または工具との間の自由度が高くなる。加工テーブルの姿勢を変更することで、工作物と工具の間で形成される角度を可変的に調節可能である。加工テーブルの角度位置が工作物の加工中に変更されれば、それによってたとえば円形のプロフィルなど、さらに別の形状を製作することができる。あるいは加工テーブルの角度位置を、工作物と工具との係合の後または前に変更することもでき、その結果、工作物の加工され得る面が拡大される。
【0044】
本方法の別の実施形態では、加工テーブルの上に複数の異なる種類の工具を工作物の加工のために準備しておくことができ、本方法は、さらに、スピンドルがアダプタによって保持された工作物とともに第1の工具による工作物の初回の加工後に加工テーブルの上で工具保持部材によって保持されている第2の工具へと向かう方向に移動することと、アダプタによってスピンドルに保持されている工作物が加工テーブルの上で保持されている第2の工具によって再加工されることと、加工テーブルの上で保持されている別の工具へとスピンドルが工作物の再加工のために、または加工テーブルの上の工作物保持部材もしくは後置されたステーションに工作物を据え置くために移動することとを有することができる。
【0045】
この発展例では、工作物や工具の再クランプを必要とすることなく、工作物にそれぞれ異なる加工ステップを実行することが可能である。加工テーブルの上に、それぞれ個別に回転可能である複数の異なる種類の工具がクランプ固定されている。第1の工具から第2の工具へのスピンドルの単純な移動によって、工作物にそれぞれ異なる加工を施すことができる。たとえば幾何学的に規定された切れ刃を有する第1の工具によって材料を削り、幾何学的に規定されない切れ刃を有する第2の工具によって表面をラッピング加工することができる。
【0046】
本方法の別の実施形態では、加工テーブルは、それぞれ異なる種類の工具を工作物の加工のために保持することができる複数の領域を有することができ、この加工テーブルは、1つの領域で加工テーブルの上に保持されている工具を交換することができると同時に他の領域で工具保持部材に保持されている工具が、または工作物保持部材に保持されている工作物が、工作物の加工に関与し得るように変更可能である。
【0047】
工作物を加工する方法は、さらに、アダプタによってスピンドルに保持される工作物がスピンドルの移動および回転によって、ならびに/または工具保持部材で加工テーブルの第1の領域に保持されている工具の回転によって加工されることと、スピンドルが加工テーブルの1つの操作領域から工作物の初回の加工後に移動することと、第1の領域が加工位置から出るように移動するとともに第2の領域が加工位置へ入るように移動するように加工テーブルが調節され、それにより第2の領域で保持されている工具が工作物の加工のために準備されることと、加工テーブルの調節プロセスが完了した後にスピンドルが加工テーブルに向かって移動することと、アダプタによってスピンドルに保持されている工作物がスピンドルの移動および回転によって、ならびに/または工具保持部材で加工テーブルの第2の領域に保持されている工具の回転によって、再加工されることとを有することができる。
【0048】
本方法のこの発展例では、加工テーブルは、それぞれ工具を準備しておくことができる異なる領域を有する。このとき加工テーブルは、加工テーブルの異なる領域を加工位置へと移すことができるように調節可能である。ここでは加工位置は、加工テーブルの上で受容されている工具および/または工作物が工作物加工に関与し得る領域を定義する。
【0049】
ちょうどいま加工位置にあるのではない領域で受容されている工具は、その間に他の工具または同種類の工具と交換することができる。それにより、工作機械の可能な加工プロセスのフレキシビリティをいっそう高めることができる。加工テーブルを調節することで、別の工具を加工のために利用可能にすることができるからである。さらに、加工位置から外へ移動した領域で保持されている工具を、工作機械の外部から供給される別の工具と取り替えることができる。
【0050】
このとき工具の交換プロセスを主時間と並行して行うことができ、それによって工具の交換のための製造プロセスの中断を回避し、そのようにして副時間を明らかに短縮することができる。それに伴い、フレキシビリティと引き換えに加工時間が増えるのではなく、高いフレキシビリティのままで短く抑えることができる。
【0051】
本方法の1つの発展例では、工作機械は測定装置と制御装置をさらに有することができ、スピンドルを工作物の加工中に測定装置の検出領域へと移動させることができ、スピンドルでアダプタによって保持されている工作物をそのジオメトリーに関して計測することができ、検出された測定データを制御装置へ伝送することができる。
【0052】
この発展例では、スピンドルで保持されている工作物を、工作機械からアウトプットすることなく、スピンドルで直接的にそのジオメトリーに関して測定することができる。そのためにスピンドルが相応に測定装置の検出領域へと移動する。このことは、たとえば主時間と並行する加工プロセスの追従制御を可能にする。さらに、不具合のある工作物を測定によって認識して選別し、後続する加工プロセスのために測定データを利用することができる。このようなプロセスによって不良率を低減し、製作される工作物の品質を改善することができる。全体として、ロットサイズあたりの必要な加工時間が低い不良率によって短縮される。
【0053】
本発明のさらに別の態様は、請求項10に基づき、工作物の好ましくは切削加工をするための工作機械であり、その好ましい実施形態は従属請求項の対象である。本発明に基づく工作機械により、上に説明した好ましい効果を実現することが可能である。
【0054】
本発明の一例としての実施形態の構成要件と利点、および技術的、経済的な意義について、添付の図面を参照しながら以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】工作機械の模式的なコンフィグレーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
次に、本発明の一実施形態について添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【0057】
図1は、本発明の一実施形態に基づく工作機械1の模式的なコンフィグレーションを示している。工作機械1は、モータで作動するスピンドル5を有している。このスピンドル5には、本発明に基づき、工作物31でも加工のための工具61でも受容することができる。加工をするために、スピンドル5はそれぞれ受容されている工作物31または工具61を、連続的に変更可能な回転数で駆動することができる。
【0058】
加工の種類に応じて、スピンドル5は工作物31または工具61を定置に、すなわち回転しないように保持することもでき、それは、たとえばスピンドル5に保持されている工作物31が、回転する工具61によって加工される場合である。スピンドル5は、工作機械1に構成されたさまざまなキャリッジによってX方向、Y方向、およびZ方向へ移動させることができる。
【0059】
スピンドル5に加えて、工作機械1は加工テーブル6を有している。その上に、たとえばクランプチャックとして構成されていてよい、クランプチャック駆動部によって自動式に操作可能なクランプ部材が配置される。このときクランプ部材は工作物受容のための工作物保持部材62として、または工具受容のための工具保持部材63としてそれぞれ構成される。
【0060】
このとき、工作物受容または工具受容をするためのこれらのクランプ部材62,63は、少なくとも部分的に、工作機械1に別個に取り付けられた駆動部によってそれぞれの長軸を中心として回転可能である。さらに工作物保持部材62および/または工具保持部材63は、回転可能でなく、厳密には加工テーブル6に対して相対的に回転可能でなく、加工テーブルに取り付けられることが意図されていてよい。
【0061】
さらに工作物保持部材62と工具保持部材63は、加工テーブル6全体の移動によって並進運動させることができる。そのために加工テーブル6はキャリッジを有していて、その上で加工テーブル6が、工作機械が立っている底平面に対して平行な平面でX方向とY方向へ移動可能である。あるいはこれに加えて加工テーブル6はZ方向へも、すなわち床平面に対して垂直方向へも移動可能であってよい。工作物加工の可能性をいっそう高めるために、さらに加工テーブル6はX方向および/またはY方向を中心として回転可能に構成される。たとえば加工テーブル6は旋回テーブルとして支承され、テーブル平面がたとえばボールジョイントによって、その下に構成されるテーブルフレームと結合される。
【0062】
さらに工作機械1は、チェーンマガジン、ディスクマガジン、またはリングマガジンとして構成されていてよい搬送マガジン2を有している。このとき搬送マガジン2は、コーディング可能な、好ましくは任意に占拠可能な特定数のスペースを有している。搬送マガジンで用意される部品へ自動的に接近して受容できるようにするためにスピンドル5がピックアップスピンドルとして構成される場合、搬送マガジン2は、搬送マガジン2のスペースの少なくとも一部がスピンドル5の移動領域内に位置するように構成される。
【0063】
このとき工作機械1のスピンドル5は、工作機械1に設けられる制御部からコマンドを受け取る主駆動部を通じて駆動される。制御部は、たとえばスピンドル5の移動経路や回転などのさまざまな運動のほか、たとえば加工テーブル6や工作物保持部材および工具保持部材62,63の移動など、工作機械1のその他の可動部材の運動も計算し、制御し、コントロールする。
【0064】
制御部はここでは数値制御部として施工されているが、メモリプログラミング可能な制御部によって施工されていてもよい。さらに工作機械1はベッド、キャリッジ、ガイド、操作部材、ならびに潤滑油や切削油、冷却剤などの工場消耗品の供給と処分をするためのモジュールを有することができる。
【0065】
工作機械1の高いフレキシビリティを実現するために、上で説明したとおり、工作物31ならびに工具61をスピンドル5で受容することができる。工作物31の受容はアダプタ21によって行われる。このアダプタ21は、スピンドル5とそのつどの工作物31との間の結合部材として機能し、スピンドル5に取り付けることができるようにするためにクランプ機構を有している。
【0066】
工具61の種類に応じて、たとえば工具アダプタ64などの結合機構によって、スピンドル5での工具61の受容を行うこともできる。あるいは工具61の受容は−このような種類のアダプタなしに−、スピンドル5で直接的に行うこともできる。たとえばスピンドル5は、中空テーパシャンク(HSK)などのクランプセット51の形態の規格化された工具受容部を備えていることができ、これに工具61を直接的に受容することができる。HSKクランプセットのほか、PSCクランプセット(ポリゴンテーパ)などの他のシステムも可能である。スピンドル5のクランプセットでの工具61もしくは工作物31またはアダプタ21のクランプは、自動式に行われるのが好ましい。
【0067】
工作物31または工具61を受容できるようにするために、搬送マガジン2にある受容されるべき部材がスピンドル5の係合領域へと運ばれる。搬送マガジン2の各々のスペースを個別的に、たとえば(中で保持される工作物を有する、もしくは有さない)アダプタ21、工具アダプタ64、または工具61によって占拠することができるので、搬送マガジン2のスペースは、各部材が加工のためにスピンドル5によって受容されるべき順序で占拠されるのが好ましい。
【0068】
それにより、スピンドル5と搬送マガジン2の移動経路を縮小することができ、たとえば加工のために必要な工具61が搬送マガジン2から受容位置まで移動する、考えられる待機時間すなわち副時間を回避することができる。換言すると、搬送マガジン2での占拠を、そのつど実行されるべき加工方法に合わせて適合化することができる。それにより、スピンドル5および搬送マガジン2の移動経路を最小化することができる。あるいは、搬送マガジン2が両方の方向へ移動可能なように構成されていてもよい。工作物31が、スピンドル5により到達可能な位置の直後に位置する位置にあるときに、搬送マガジン2の搬送運動を逆転させることができる。
【0069】
搬送マガジン2は、本発明に基づき接合ステーション4を介して、工作物備蓄部3に蓄積されている工作物31で装填される。工具61、工具アダプタ64、またはアダプタ21も、接合ステーション4を介して、または代替的に別個に設けられる装置を介して、搬送マガジン2へ挿入することができる。
【0070】
工作物備蓄部3は工作物パレットまたはマガジンとして構成されていてよく、工作物31はたとえばグリッパによって工作物備蓄部から取り出して、引き続き、すでに搬送マガジン2に存在しているそれぞれ1つのアダプタ21に挿入することができる。別案として、備蓄サイロから工作物を受容してアライメントし、タペットなどを介してアダプタ21へと押し込む螺旋コンベヤが設けられていてよい。別案として、そのつどアダプタ21をグリッパによって搬送マガジン2から取り出して、それぞれ1つの工作物31を装填し、引き続いて再び搬送マガジン2へ挿入することができる。
【0071】
加工サイクルの前に、上で説明したとおり、事前設定された数のアダプタ21が搬送マガジン2へ、たとえばグリッパやロボットアームによって、それぞれ1つのアダプタ21が搬送マガジン2の1つのスペースに割り当てられるように挿入される。このときアダプタ21は、すでに搬送マガジン2への挿入の前に工作物31ですでに装填しておくことができ、別案の実施形態では、搬送マガジン2の各々のアダプタ21が工作物31を含んでいなくてよく、たとえば少数のアダプタ21は工作物31なしに搬送マガジン2で保持され、その後の加工ステップで加工テーブル6の上に据え置かれる工作物31を受容して、以後の加工のために保持する。
【0072】
あるいは加工の種類によっては、搬送マガジン2のすべてのスペースがアダプタ21およびその中で保持される工作物31で占拠されていてよく、それは、たとえば予定されている加工プロセスに基づき、スピンドル5で案内される工具61によって工作物31を加工することが意図されていない場合である。
【0073】
搬送マガジン2に受容されているアダプタ21へ工作物31を引き渡すために、アダプタ21およびその中で保持される工作物31を運行している搬送マガジン2へ挿入できる程度まで、搬送マガジン2がその運動を停止し、またはこれを減速させる。別の構成では、工作物31が、搬送マガジン2の運動中にその中に受容されているアダプタ21へ挿入されてもよく、そのために、たとえばグリッパやスライダなどの相応の供給部材を制御して、これらがアダプタ21へ受容されるべき工作物31をこれに正確なサイクルで供給して、交差する運動に基づくアダプタへの工作物31の引っ掛かり等を回避する別個の制御装置が設けられていてよい。
【0074】
アダプタ21は搬送マガジン2で事前設定された軌道に沿って移動する。搬送マガジン2に構成されている接合ステーション4で、工作物31が引き続きその姿勢に関して並進的および回転式にアダプタ21に対して規定されるように、工作物31がアダプタ21へ挿入される。引き続いて、工作物31と結合されたアダプタ21が搬送マガジン2の事前設定された軌道に沿ってさらに案内される。
【0075】
このとき搬送マガジン2の各々のスペースは、搬送マガジン2においてどの位置に相応の部材があるかを確認可能であるようにコーディング可能である。換言すると、搬送マガジン2のどのスペースがいまちょうど接合ステーション4または受容位置にあるか、および、工作物31または工具61が搬送マガジンスペースへ挿入されているか否かを厳密に規定することができる。スペースコーディングは、たとえば一時的に、たとえば工具61またはアダプタ21のバーコードやチップ等によって行うことができ、工具61および/またはアダプタ21が搬送マガジン2のスペースから取り出されたときに消去することができる。
【0076】
搬送マガジン2の各々のスペースが特定の領域に達すると、ピックアップスピンドルのケースでは受容位置に達すると、当該スペースに保持されている工作物31をアダプタ21によってスピンドル5へ引き渡すことができ、またはこれから受容することができる。
【0077】
スピンドル5が上で説明したようにピックアップスピンドルとして構成されていれば、スピンドル5の移動によって工作物31を搬送マガジン2から取り出すことができる。図1に示すスピンドル5は垂直方向のメインスピンドルとして構成されているが、水平方向のメインスピンドルを用いることも同様にできる。スピンドル5がピックアップスピンドルとして構成されていないとき、搬送マガジン2からスピンドル5への引渡しをダブルアーム式のグリッパなどのグリッパによって行うこともできる。
【0078】
ピックアップスピンドルのケースでは、スピンドル5は工作物31を受容した後に再び加工テーブル6に向かう方向へと移動する。加工テーブル6の上には、複数の工具61が上で説明した工具保持部材63に配置されている。ここに図示した実施形態では、工具保持部材63は円形に配置されている。しかしながら工具保持部材63がこれ以外のどのような形状で、たとえばU字型やL字型で、加工テーブル6の上に受容されていてもよい。
【0079】
上で説明したとおり、工具61は工具保持部材63で回動可能または回転可能に受容されるとともに、加工テーブル6の移動によって並進的にスライド可能である。あるいは工具61は、駆動式のクランプチャックによって回転可能にのみ、または加工テーブル6の移動によって並進的にのみ可動に構成されていてもよい。さらに、いくつかの工具保持部材63だけがモータで駆動されるクランプチャックとして構成されていてよく、それに対して、それ以外は定置の工具保持部材63として構成されていてよい。このとき、加工テーブル6に構成されている部材、厳密には工具保持部材63および/または工作物保持部材62の駆動は、別個に設けられたモータなどの少なくとも1つの駆動部によって行われる。
【0080】
加工テーブル6の上に準備されている工具61は、切削加工をするためのさまざまに異なる工具61であってよい。たとえばドリルやフライス加工ヘッドなど、幾何学的に規定された切れ刃を有する工具61が設けられていてよい。あるいは研削工具やホーニング加工工具など、幾何学的に規定されない切れ刃を有する工具61を工作物加工のために準備しておくこともできる。
【0081】
さらに、たとえばグルーガンやスプレーガンなどによる溶接、接合、接着、または塗装などその他の製造方法のための工具61を加工テーブル6の上に準備しておくこともできる。このような追加の工具61は、工作物31にたとえば切削加工の後にスプレーガンを用いて直接的に保護塗膜等を付与するために、スピンドル5によって受容することができる。
【0082】
このとき、このような追加の工具61は、この種の加工の場合には回転しないスピンドル5によって携行される。その代わりに、加工テーブル6の上の工作物保持部材62に保持されている工作物31を低速で回転させることができ、それにより、工具61から工作物31のすべての側に到達することができる。このような加工の後、工作物61が再び加工テーブル6の上に据え置かれる。
【0083】
これに加えて、切削加工をするのでないこのような工具61について、専用の工具保持部材63が加工テーブル6の上に構成され、加工された工作物31がスピンドル5によって当該工具61の作業領域へと移動し、そこで最終加工することができることも考えられる。
【0084】
スピンドル5が工作物31とともに加工テーブル6の方向へ移動した後、加工テーブル6の上でクランプされている工具61が、スピンドル5に保持されている工作物31を加工することができる。このときスピンドル5の回転数は、加工に応じて可変的に適合化可能である。しかしながら本発明では、スピンドル5の回転に代えて、加工テーブル6の上で保持されている工具61を工作物31の加工のために回転させることもできる。
【0085】
たとえば、加工テーブル6の上に保持されているフライス加工工具によって工作物31の表面を加工するためにスピンドル5を回転、移動させることができる。たとえば工作物31にねじ山が刻設される後続する加工のときに、加工テーブル6の上のタップドリルを回転させることができ、その間にスピンドル5は、加工テーブル6に対して垂直の直線上で並進的にのみ移動する。このような本発明の方法により、複数の異なる加工ステップを、工作物31と工具61の1回クランプ固定で実行することができる。
【0086】
加工テーブル6は上で説明したように継手式に支承されているので、スピンドル5の回転軸とテーブル平面との間の角度を変更することができる。このように、工具61が工作物31をさまざまに異なる作用角度で加工することができる。たとえば、このようにして工作物31の円錐形の領域を容易に加工または成形することができ、それは、加工テーブル6が低速で傾動し、その間に、工具61がスピンドル5で回転する工作物31を加工することによる。
【0087】
加工の後、後置されたステーション9へのスピンドル5の移動によって工作物31をアウトプットすることができる。このとき後置されたステーション9は、工作物31がスピンドル5から中に突き出されて、そこに収集することができる回収容器であってよい。別案として、スピンドル5は工作物31を工作物パレットの事前設定されたスペースへ据え置き、またはコンベヤベルトの上に据え置くことができる。
【0088】
こうしたさらなる加工の後に工作物31を突き出すことができ、または次の加工のために工作機械1にとどめることができる。工作物31のすべての側を加工できるようにするために、工作物31を再クランプすることができる。そのために、スピンドル5が工作物31とともに加工テーブル6の方向へ移動する。工作物31とアダプタ21の間の結合が解除されることで、工作物31を加工テーブル6の上の工作物保持部材62に据え置き、これによって保持することができる。そのためには、工作物31とアダプタ21の間の結合が解除されるだけでよく、それに対してアダプタ21は依然としてスピンドル5にとどまる。
【0089】
上で説明したとおり、工作物保持部材62は自動式のクランプ機構を備えたクランプチャックとして構成されている。工具保持部材63と同様に、工作物保持部材62も駆動式のクランプチャックとして、その中で保持される工作物31を加工のために回転させることができる。同じく工作物保持部材62を、およびそれに伴って工作物31を、加工テーブル6の移動によってX方向、Y方向、およびZ方向へ並進運動させることができる。工作物保持部材62は、以前にアダプタ21によってスピンドル5で受容されていた工作物31の側が、加工のために露出するように構成されていてよい。
【0090】
加工テーブル6の上に工作物31が据え置かれた後、スピンドル5は、加工テーブル6の上で準備されている工具61に向かって移動する。この工具61を、上で説明したように、工具アダプタ64によってスピンドル5で受容することができる。アダプタ21と工具アダプタ64は複合型のアダプタとして構成されていてよく、それにより、1つのアダプタで工具61でも工作物31でも受容することができる。このような複合型のアダプタのケースでは、アダプタ21をスピンドル5によって据え置かなくてよく、工具61の以後の受容のためにスピンドル5にとどめておくことができる。
【0091】
別案として、工作物保持部材62の中へ工作物31を据え置いた後に、スピンドル5がアダプタ21をアダプタマガジン66に据え置くことができる。アダプタマガジン66は、ここでも同じく加工テーブル6の上に構成されている。別案として、アダプタマガジン66が別個に構成された装置として設けられていてよい。アダプタマガジン66には、コーディング可能な一連のアダプタスペースが設けられている。あるいはアダプタマガジン66は、ただ1つのアダプタ21を受容するためのただ1つの保持部材で構成されていてもよい。アダプタ21もスピンドル5からアウトプットされた後、スピンドル5が直接的に、たとえば上に説明した標準クランプセットによって、工具61を加工テーブル6から受容することができる。
【0092】
本発明によると、工具61を追加的に第2のマガジン7で用意しておくことができる。それにより、備蓄される工具61の個数およびこれに伴って工作機械1のフレキシビリティを高めることができる。すなわち、特にスピンドル5が第2のマガジン7へ移動して、そこで工具61を受容し、次いで、これを用いて加工テーブル6の上に以前に据え置かれた工作物31を加工することができる。工具61がスピンドル受容部とコンパチブルに構成されていないとき、工具61をこの第2のマガジン7で工具アダプタ64の中に準備しておくことができる。
【0093】
第2のマガジン7も搬送マガジン2と同様にチェーンマガジン、ディスクマガジン、またはリングマガジンとして構成されていてよい。第2のマガジン7では、複数の異なる種類の工具61が準備される。別案として、工具61をアダプタ64なしに準備しておいて、スピンドル5のクランプセットで直接的に受容することができる。工具61の一部を第2のマガジン7でアダプタ64とともに準備し、工具61の一部をアダプタ64なしで準備しておくこともできる。別案として、工具61が第2のマガジン7でのみスピンドル5での受容のために構成され、すなわち、搬送マガジン2の工作物31から分離されて構成されていてよい。
【0094】
スピンドル5の移動経路を短縮するために、第2のマガジン7と搬送マガジン2が上で説明したように複合型のマガジンとして構成されていてもよく、この場合、各々のスペースを工具61もしくは工作物31によって、またはアダプタ21もしくは工具アダプタ64によって占拠可能である。別案として、複合型のマガジンの固定的に割り当てられたスペースが、工具61または工作物31にのみ利用されることもできる。
【0095】
このような本発明による複合型のマガジンにより、スピンドル5の移動経路をいっそう最適化することができる。たとえばスピンドル5は、加工テーブル6の上に工作物31を据え置いた後、複合型のマガジンへ戻るように移動し、そこでアダプタ21を据え置いて、これから工具61をアダプタ64とともに、またはアダプタ64なしに受容する。このときアダプタ21の据置きと工具61の受容は同じマガジンで行われる。
【0096】
スピンドル5が、第2のマガジン7、搬送マガジン2、または加工テーブル6のいずれかから工具61を受容した後、スピンドル5は再び加工テーブル6の上に保持されている工作物31へ向かう方向に移動する。引き続いて工作物31が、スピンドル5に受容されている工具61の移動と回転によって加工される。このときにも工作物保持部材62は、スピンドル5での工具61の回転に加えて、工作物31を回転させ、または加工テーブル6の運動によって移動させることができる。
【0097】
このときスピンドル5は複数の異なる工具61を順次受容して、加工テーブル6の上にクランプされている工作物61を加工することができる。切削加工のほか、ここでもその他の製造方法を同様にして実施することができる。たとえばスピンドル5は、加工テーブル6の上で工具61として準備されたスプレーガンを受容する。このスプレーガンとともにスピンドル5が工作物31に向かって移動して、工作物61を塗装する。スプレーガンの代替または追加として、たとえば溶接ガンやグルーガンなど、これ以外の代替的な工具61を加工テーブル6の上で準備しておくことができる。
【0098】
さらなる加工の後、スピンドル5は工具61を再び第2のマガジン7または加工テーブル6に据え置き、引き続き、搬送マガジン2またはアダプタマガジン66からアダプタ21を事前に受容しておいた後に工作物31を再び受容する。引き続き、加工テーブル6の上の工具61に対するスピンドル5の移動によって工作物31が再び加工され、または、後置されたステーション9へのスピンドル5の移動によってアウトプットされる。
【0099】
加工テーブル6は、異なる種類または同じ種類の工具61がそれぞれ準備される複数の領域を有している。たとえば1つの領域は、工作物31で実行されるべき加工ステップの順序に応じて一連の工具61を含むことができる。たとえば、まず工作物31へのフライス加工工具の接近によって工作物31の形状が成形される。引き続き、加工テーブル6の上で保持されているねじ切り工具の接近によって、さまざまに異なるねじ山をもつ穴を刻設することができる。最後に、同じく加工テーブル6の上に準備されている研削ヘッドによって工作物31を加工することができる。これらの加工ステップは、好ましくは加工ステップの順序に応じて加工テーブル6の上に相並んで準備された、それぞれの工具61へと向かうスピンドル5の移動によって実現される。
【0100】
それぞれ異なる領域の間で切換をするために、加工テーブル6は上で説明したように旋回テーブルとして構成されている。このときそれぞれ異なる領域が互いに直角に配置されていてよい。このとき加工テーブル6の1つの領域はスピンドル5の下の加工位置にあり、またはスピンドル5の到達可能な移動領域にある。現在加工位置にある領域の工具61が工作物加工のために準備され、スピンドル5によって接近することができる。
【0101】
加工位置から出るように現在旋回している別の領域では、工具交換プロセスが行われる。そのために外部に設けられた装置が、加工位置から出るように移動している加工テーブル6の領域から工具61を取り出して、この工具61を新しい、または別の種類の工具61と取り替える。
【0102】
それにより、工作機械で実行可能である考え得る加工ステップの数が大幅に拡張される。旋回テーブルに代えて、加工テーブル6の全体が直線移動し、そのようにしてそれぞれ異なる領域が加工位置に達するリニアテーブルとして、またはターンテーブルとして加工テーブル6が構成されていてもよく、この場合、Z軸を中心とする加工テーブル6の回転によってそれぞれ異なる領域を加工位置へと移行可能である。
【0103】
交換プロセスのときスピンドル5は、加工テーブル6の一部と衝突しないように、調節プロセス中に加工テーブル6の操作領域から出るように移動する。このプロセスは、加工位置にある領域が加工位置から出るように移動するために動く時点から、加工テーブル6の別の領域が加工位置へ移動する時点までを実質的に特徴づける。引き続き、スピンドル5およびこれに受容されている工作物31が再び操作領域に移動し、それにより、交換されたばかりの工具61によって工作物31を再加工することができる。
【0104】
加工位置から出るように移動した領域での工具61の交換プロセスは工作物加工中に、すなわち主時間と並行して実行することができる。別案として、工具61の交換プロセスに代えて、加工テーブル6の上に受容されている工具61の順序だけを変更するか、または現在加工領域から外へ移動しているテーブル領域を全面的に取り替えることもできる。そのために加工テーブル6は、それぞれ工具61を上に保持することができ、加工テーブル6から容易に取り外すことができる複数の取外し可能な領域を有している。
【0105】
各々の加工ステップの後に、後置されたステーション9へのスピンドル5の移動によって工作物31をアウトプットすることができる。別案として、工作物31を加工テーブル6の上の工作物保持部材62から取り出して後置されたステーション9へと移すグリッパが設けられていてもよい。グリッパが工作物31をスピンドル5から直接取り出すこともできる。この構成では、加工が完了した工作物31がグリッパによって作業空間から搬出されている間に、スピンドル5はすでに再び搬送マガジン2に向かって移動して、加工されるべき次の工作物31を受容することができる。
【0106】
さらに工作機械1は測定装置を含んでいる。ここでは、工作機械1の作業空間に配置されたレーザ測定システムが利用される。レーザ測定システムは、三角測量原理または光切断法を用いて、スピンドル5にある工作物31のジオメトリーを三次元データとして検出することができる。そのためにスピンドル5が工作物31とともに測定システムの検出領域の内部で移動、回転する。これに加えて表面粗さ測定値を検出するために、共焦点センサまたは干渉計を点検のために利用することができる。測定装置によって検出された値が、工作機械1の制御部へ処理のために伝送される。
【0107】
このような測定データを踏まえて、最新の加工品質に関する推定が行われる。たとえば目標値と比較をすることで、加工された工作物31が以前に規定された許容範囲内にまだあるか否かを判断することができる。たとえば工作物31の表面品質が許容範囲内になくなっていることが判明したとき、スピンドル5はこの工作物31を別個に配置されたはじき出し装置へはじき出す。それに伴い、品質管理を工作機械1で直接的に実行することができる。
【0108】
別案として、検出されるデータをリアルタイムで処理することができ、それにより、これに続く加工プロセスの追従制御が可能である。たとえば工作物31の加工中に追従制御をして、特定の品質要求が満たされたか否か、いつ満たされたかをチェックすることができる。測定データを処理することで、処理プロセスに関する推定を行うこともできる。
【0109】
工作物31の特定の表面品質が達成されていないとき、工具61を新しい工具61と取り替えなければならないことをそこから判定することができる。たとえば、最新に設定されている回転数が所望の結果につながっていないことが測定データの処理によって判定されたとき、すなわち、たとえば回転数が低すぎることが断定されたとき、その後の加工の回転数を変更することもできる。
【0110】
工作物31が後置されたステーション9へとアウトプットされた後に、スピンドル5が搬送マガジン2へと戻るように移動する。この搬送マガジン2で、スピンドル5がアダプタ21を再び特定の位置に据え置く。空になっているアダプタ21が搬送マガジン2で事前設定された軌道に沿って、接合ステーション4に再び到達するまでさらに搬送される。ここであらためて、加工されるべき工作物31がアダプタ21へ挿入される。空のアダプタ21が搬送マガジン2への据置き後にさらに搬送されている間に、スピンドル5は、加工されるべき新たな工作物31を別のアダプタ21によって受容する。
【0111】
次の各ステップを有する、工作機械で工作物を加工する方法が開示されている。アダプタが工作機械の搬送マガジンで事前設定された軌道に沿って案内され、その間に、工作物備蓄部に蓄積されている工作物が用意されて、それぞれ1つのアダプタに供給される。このときそれぞれ1つの工作物とアダプタは、工作物がアダプタによって保持されるように接合される。
【0112】
アダプタが、これにより保持される工作物とともに搬送マガジンでさらに搬送され、工作物とともに搬送マガジンからモータで作動する工作機械のスピンドルへ引き渡され、そこでアダプタがこれに保持された工作物とともに保持される。その後、スピンドルがこれにアダプタで保持された工作物とともに、加工テーブルの上の工具保持部材に保持された工具に対して移動し、スピンドルの回転によって加工される。加工の後、工作物がアダプタから解放されて加工テーブルの上の工作物保持部材に据え置かれ、または後置されたステーションへと引き渡される。空になったアダプタがスピンドルから搬送マガジンへ戻るように運ばれて、そこでさらに搬送される。
本発明は、たとえば、以下のような態様で実現することもできる。
適用例1:
モータで作動するスピンドル(5)およびこれに取り付けられた受容部を有する工作機械(1)で工作物(31)を好ましくは切削加工する方法において、さらに前記工作機械(1)は、
複数のアダプタ(21)が中に受容された搬送マガジン(2)と、
複数の工作物(31)が中に受容された工作物備蓄部(3)と、
工具(61)および/または工作物(31)を受容するための加工テーブル(6)とを有しており、
前記方法は、
事前設定された軌道に沿って前記搬送マガジン(2)の中でアダプタ(21)が案内されることと、
前記工作物備蓄部(3)に貯蔵されている工作物(31)がそれぞれ1つのアダプタ(21)に供給されること、および、工作物(31)がアダプタ(21)によって保持されるようにそれぞれ1つの工作物(31)がそれぞれ1つのアダプタ(21)と接合されることと、
アダプタ(21)がこれにより保持される工作物(31)とともに前記搬送マガジン(2)の中で事前設定された軌道に沿って再搬送されることと、
アダプタ(21)がこれによって保持される工作物(31)とともに前記スピンドル(5)で保持されるように、アダプタ(21)がこれによって保持される工作物(31)とともに前記搬送マガジン(2)から前記スピンドル(5)へ引き渡されることと、
前記スピンドル(5)にある工作物(31)が好ましくは前記加工テーブル(6)の上で工具保持部材(63)に保持される工具(61)に対する前記スピンドル(5)の移動と回転によって加工されることと、
加工後に前記加工テーブル(6)の上で保持される工具(61)によって工作物(31)がアダプタ(21)から解放されること、および、工作物(31)が前記加工テーブル(6)の上の工作物保持部材(62)に据え置かれること、または、工作物(31)が次の加工のために後置されたステーション(9)へ引き渡されることと、
空のアダプタ(21)が前記スピンドル(5)から前記搬送マガジン(2)へ戻るように引き渡されることと、
空のアダプタ(21)が事前設定された軌道に沿って前記搬送マガジン(2)の中で再搬送されることとを有する方法。
適用例2:
前記工作物保持部材(62)と前記工具保持部材(63)が前記加工テーブル(6)の上で回転可能に構成され、さらに前記方法は、
前記工作物保持部材(62)で保持される工作物(31)または前記工具保持部材(63)で保持される工具(61)が前記スピンドル(5)の回転と同時に、またはその代替として、工作物(31)を加工するために回転することを有する、適用例1の方法。
適用例3:
前記スピンドル(5)は、アダプタ(21)およびこれに保持される工作物(31)に代えて、工具(61)を直接的に、または工具アダプタ(64)を介して受容することができるように構成され、前記工作機械(1)は工具(61)が直接的に、または工具アダプタ(64)の中で受容される第2のマガジン(7)を有しており、
アダプタ(21)から工作物(31)が解放されて前記加工テーブル(6)の上で前記工作物保持部材(62)に工作物(31)が据え置かれるステップの後に、工作物(31)が前記工作物保持部材(62)によって前記加工テーブル(6)の上で保持され、
前記スピンドル(5)が前記搬送マガジン(2)へと戻るように移動して、空になったアダプタ(21)を前記スピンドル(5)から前記搬送マガジン(2)へと引き渡してから、工具(61)を前記第2のマガジン(7)から、または前記加工テーブル(6)の上の前記工具保持部材(63)から直接的に、または工具アダプタ(64)を用いたうえで前記スピンドル(5)に受容し、
さらに、
前記スピンドル(5)がこれに保持された工具(61)とともに前記加工テーブル(6)へと向かう方向へ、前記加工テーブル(6)の上の前記工作物保持部材(62)に保持されている工作物(31)の工具(61)による再加工のために移動することと、
前記スピンドル(5)により直接または工具アダプタ(64)を介して保持される工具(61)が工作物(31)の再加工の後に前記スピンドル(5)から前記第2のマガジン(7)へ、または前記加工テーブル(6)の上の前記工具保持部材(63)へ戻るように据え置かれることと、
前記加工テーブル(6)の上で保持される工作物(31)が前記工作物保持部材(62)からの工作物(31)の解除後に後置されたステーション(9)へとアウトプットされることとを有する、適用例1または2の方法。
適用例4:
前記スピンドル(5)は、アダプタ(21)およびこれに保持される工作物(31)に代えて工具(61)も直接的に、または工具アダプタ(64)を介して受容できるように構成され、前記工作機械(1)は工具(61)が直接または工具アダプタ(64)に受容される第2のマガジン(7)を有しており、前記加工テーブル(6)の上にアダプタ(21)を受容するためのアダプタマガジン(66)が構成され、
アダプタ(21)から工作物(31)が解放されて前記加工テーブル(6)の上の前記工作物保持部材(62)に工作物(31)が据え置かれるステップの後に工作物(31)が前記加工テーブル(6)の上で前記工作物保持部材(62)によって保持され、
前記スピンドル(5)がアダプタ(21)を前記加工テーブル(6)の上の前記アダプタマガジン(66)の中へ据え置き、
さらに、
工具(61)を前記加工テーブル(6)の上の前記工具保持部材(63)から、または前記第2のマガジン(7)から、直接的に、または工具アダプタ(64)を介して前記スピンドル(5)に受容することと、
前記スピンドル(5)がこれに保持された工具(61)とともに前記加工テーブル(6)の上の前記工作物保持部材(62)に保持されている工作物(31)へと向かう方向へ、工作物(31)の再加工のために移動することと、
工具(61)が工作物(31)の加工後に前記スピンドル(5)から前記第2のマガジン(7)へ、または前記加工テーブル(6)の上の前記工具保持部材(63)へ戻るように据え置かれることとを有する、適用例1または2の方法。
適用例5:
前記工作物保持部材(62)に保持された工作物(31)が加工されて工具(61)が据え置かれた後に前記スピンドル(5)がアダプタ(21)を前記アダプタマガジン(66)から受容し、これを用いて、前記工作物保持部材(62)に保持されている工作物(31)をあらためて前記スピンドル(5)で受容して、前記スピンドル(5)のあらためての移動と回転によって、および/または前記加工テーブル(6)の上で工具保持部材(63)に保持されている工具(61)の回転によって工作物(31)をさらに加工し、または工作物(31)を後置されたステーション(9)へとアウトプットする、適用例4の方法。
適用例6:
前記加工テーブル(6)が工作物(31)の加工中にその姿勢に関して前記スピンドル(5)の回転軸に対して相対的に調節される、適用例1から5のいずれか1項の方法。
適用例7:
前記加工テーブル(6)の上に複数の異なる種類の工具(61)が工作物(31)の加工のために準備され、前記方法はさらに、
前記スピンドル(5)がアダプタ(21)によって保持された工作物(31)とともに第1の工具(61)による工作物(31)の初回の加工後に前記加工テーブル(6)の上で前記工具保持部材(63)によって保持されている第2の工具(61)へと向かう方向に移動することと、
アダプタ(21)によって前記スピンドル(5)に保持されている工作物(31)が前記加工テーブル(6)の上で保持されている前記第2の工具(61)によって再加工されることと、
前記加工テーブル(6)の上で保持されている別の工具(61)へと前記スピンドル(5)が工作物(31)の再加工のために、または前記加工テーブル(6)の上の前記工作物保持部材(62)もしくは後置されたステーション(9)へ工作物(31)を据え置くために移動することとを有する、適用例1から6のいずれか1項の方法。
適用例8:
前記加工テーブル(6)は、それぞれ異なる種類の工具(61)を工作物(31)の加工のために保持することができる複数の領域を有し、前記加工テーブル(6)は、1つの領域で前記加工テーブル(6)の上に保持されている工具(61)を交換することができると同時に他の領域で工具保持部材(63)に保持されている工具(61)が、または前記工作物保持部材(62)に保持されている工作物(31)が、工作物(31)の加工に関与し得るように変更可能であり、前記方法はさらに、
アダプタ(21)によって前記スピンドル(5)に保持される工作物(31)が前記スピンドル(5)の移動および回転によって、ならびに/または前記工具保持部材(63)で前記加工テーブル(6)の第1の領域に保持されている工具(61)の回転によって加工されることと、
前記スピンドル(5)が前記加工テーブル(6)の1つの操作領域から工作物(31)の初回の加工後に移動することと、
前記第1の領域が加工位置から出るように移動するとともに第2の領域が加工位置へ入るように移動するように前記加工テーブル(6)が調節され、それにより前記第2の領域で保持されている工具(61)が工作物(31)の加工のために準備されることと、
前記加工テーブル(6)の調節プロセスが完了した後に前記スピンドル(5)が前記加工テーブル(6)に向かって移動することと、
アダプタ(21)によって前記スピンドル(5)に保持されている工作物(31)が前記スピンドル(5)の移動および回転によって、ならびに/または前記工具保持部材(63)で前記加工テーブル(6)の第2の領域に保持されている工具(61)の回転によって再加工されることとを有する、適用例1から7のいずれか1項の方法。
適用例9:
前記工作機械(1)はさらに測定装置と制御装置を有し、
前記スピンドル(5)が工作物(31)の加工中に前記測定装置の検出領域へと移動し、
前記スピンドル(5)でアダプタ(21)によって保持されている工作物(31)がそのジオメトリーに関して計測され、
検出された測定データが前記制御装置へと伝送される、適用例1から8のいずれか1項の方法。
適用例10:
工作物(31)の好ましくは切削加工をするための工作機械(1)において、
モータで作動するスピンドル(5)およびこれに取り付けられた受容部と、
複数のアダプタ(21)を中に受容可能であり、事前設定された軌道に沿ってアダプタ(21)を案内可能である搬送マガジン(2)と、
複数の工作物(31)を中に受容可能である工作物備蓄部(3)と、
工具(61)が直接または工具アダプタ(64)を介して受容される第2のマガジン(7)と、
前記工作物備蓄部(3)からのそれぞれ1つ工作物(31)が前記搬送マガジン(2)に受容されているそれぞれ1つのアダプタ(21)と接合され、それにより工作物(31)がアダプタ(21)により保持され、アダプタ(21)をそこに保持された工作物(31)とともにさらに前記搬送マガジン(2)の中で案内可能である接合ステーション(4)と、
工具(61)を受容するための工具保持部材(63)および工作物(31)を受容するための工作物保持部材(62)を備えた加工テーブル(6)とを有しており、
前記スピンドル(5)は工作物(31)の加工のために回転的および並進的に可動であるとともに、工作物(31)を加工可能であるように前記加工テーブル(6)に対して移動可能であり、
前記スピンドル(5)は、工作物(31)を加工するために、前記加工テーブル(6)の受容部または前記搬送マガジン(2)で保持されている工作物(31)をアダプタ(21)によって受容することができるように構成され、または、前記加工テーブル(6)および前記第2のマガジン(7)で保持されている工具(61)を直接または工具アダプタ(64)によって受容することができるように構成されている工作機械。
適用例11:
アダプタ(21)および/または工具アダプタ(64)を前記スピンドル(5)から受容するためのアダプタマガジン(66)をさらに有し、前記アダプタマガジン(66)は前記加工テーブル(6)の上に構成される、適用例10の工作機械(1)。
適用例12:
前記第2のマガジン(7)と前記搬送マガジン(2)は、アダプタ(21)と工具(61)が直接または工具アダプタ(64)で受容される複合型のマガジンとして構成される、適用例10または11の工作機械(1)。
適用例13:
工具アダプタ(64)とアダプタ(21)は、工作物(31)の加工のために工具(61)と工作物(31)の両方を保持可能である複合型のアダプタとして構成される、適用例10から12のいずれか1項の工作機械(1)。
適用例14:
前記工作物保持部材(62)と前記工具保持部材(63)は前記加工テーブル(6)の上の回転部材として構成され、それにより、前記回転部材で保持される工作物(61)および工具(31)を工作物(31)の加工のために前記スピンドル(5)の回転と同時に、またはその代替として回転可能である、適用例10から13のいずれか1項の工作機械(1)。
適用例15:
前記加工テーブル(6)を工作物(31)の加工中にその姿勢に関して前記スピンドル(5)の回転軸に対して相対的に調節可能である、適用例10から14のいずれか1項の工作機械(1)。
適用例16:
前記加工テーブル(6)は、それぞれ異なる種類の工具(61)を工作物(31)の加工のために保持可能である複数の領域を有し、前記加工テーブル(6)は、1つの領域で前記加工テーブル(6)の上に保持されている工具(61)を交換可能であると同時に他の領域で工具保持部材(63)に保持されている工具(61)が、または前記工作物保持部材(62)に保持されている工作物(31)が、工作物(31)の好ましくは切削加工に関与し得るように変更可能である、適用例10から15のいずれか1項の工作機械(1)。
適用例17:
前記工作機械(1)は測定装置と制御装置を有し、前記スピンドル(5)を前記測定装置の検出領域へと移動可能であり、それにより前記スピンドル(5)でアダプタ(21)によって保持されている工作物(31)をそのジオメトリーに関して計測することができ、
検出されたデータを前記制御装置によって受信可能である、適用例10から16のいずれか1項の工作機械(1)。
図1