(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンからのトルクが伝達される入力要素および出力要素を含む複数の回転要素と、それぞれ前記入力要素と前記出力要素との間でトルクを伝達する複数の第1弾性体と、前記複数の回転要素の何れかである第1回転要素と前記第1回転要素とは異なる第2回転要素との相対回転に応じて回転する質量体を有する回転慣性質量ダンパとを含むダンパ装置において、
前記入力要素と前記出力要素との間で伝達されるトルクが所定値以上であるときに前記複数の第1弾性体と並列に作用する複数の第2弾性体を備え、
前記回転慣性質量ダンパは、前記第1回転要素と一体に回転するサンギヤ、複数のピニオンギヤを回転自在に支持すると共に前記第2回転要素と一体に回転するキャリヤ、および前記複数のピニオンギヤに噛合すると共に前記質量体として機能するリングギヤを含む遊星歯車を有し、
前記複数の第2弾性体は、前記回転要素の径方向において前記複数の第1弾性体とは異なる位置で前記複数のピニオンギヤと周方向に並ぶように配置されるダンパ装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0010】
図1は、本開示のダンパ装置10を含む発進装置1を示す概略構成図であり、
図2は、発進装置1を示す断面図である。これらの図面に示す発進装置1は、駆動装置としてのエンジン(内燃機関)EGを含む車両に搭載されるものであり、ダンパ装置10に加えて、エンジンEGのクランクシャフトに連結されて当該エンジンEGからのトルクが伝達される入力部材としてのフロントカバー3や、フロントカバー3に固定されるポンプインペラ(入力側流体伝動要素)4、ポンプインペラ4と同軸に回転可能なタービンランナ(出力側流体伝動要素)5、ダンパ装置10に連結されると共に自動変速機(AT)あるいは無段変速機(CVT)である変速機TMの入力軸ISに固定される出力部材としてのダンパハブ7、ロックアップクラッチ8等を含む。
【0011】
なお、以下の説明において、「軸方向」は、特に明記するものを除いて、基本的に、発進装置1やダンパ装置10の中心軸(軸心)の延在方向を示す。また、「径方向」は、特に明記するものを除いて、基本的に、発進装置1やダンパ装置10、当該ダンパ装置10等の回転要素の径方向、すなわち発進装置1やダンパ装置10の中心軸から当該中心軸と直交する方向(半径方向)に延びる直線の延在方向を示す。更に、「周方向」は、特に明記するものを除いて、基本的に、発進装置1やダンパ装置10、当該ダンパ装置10等の回転要素の周方向、すなわち当該回転要素の回転方向に沿った方向を示す。
【0012】
ポンプインペラ4は、フロントカバー3に密に固定されるポンプシェル40と、ポンプシェル40の内面に配設された複数のポンプブレード41とを有する。タービンランナ5は、タービンシェル50と、タービンシェル50の内面に配設された複数のタービンブレード51とを有する。タービンシェル50の内周部は、複数のリベットを介してダンパハブ7に固定される。ポンプインペラ4とタービンランナ5とは、互いに対向し合い、両者の間には、タービンランナ5からポンプインペラ4への作動油(作動流体)の流れを整流するステータ6が同軸に配置される。ステータ6は、複数のステータブレード60を有し、ステータ6の回転方向は、ワンウェイクラッチ61(
図1参照)により一方向のみに設定される。これらのポンプインペラ4、タービンランナ5およびステータ6は、作動油を循環させるトーラス(環状流路)を形成し、トルク増幅機能をもったトルクコンバータ(流体伝動装置)として機能する。ただし、発進装置1において、ステータ6やワンウェイクラッチ61を省略し、ポンプインペラ4およびタービンランナ5を流体継手として機能させてもよい。
【0013】
ロックアップクラッチ8は、ダンパ装置10を介してフロントカバー3とダンパハブ7とを連結するロックアップを実行すると共に当該ロックアップを解除するものである。本実施形態において、ロックアップクラッチ8は、摩擦材81が貼着されたロックアップピストン80を含む油圧式単板クラッチである。ロックアップクラッチ8のロックアップピストン80は、フロントカバー3の内部でダンパ装置10を基準としてタービンランナ5の反対側に位置するようにダンパハブ7に対して軸方向に移動自在に嵌合され、フロントカバー3のエンジンEG側の内壁面と対向する。ただし、ロックアップクラッチ8は、油圧式多板クラッチであってもよい。
【0014】
ダンパ装置10は、
図1および
図2に示すように、回転要素として、ドライブ部材(入力要素)11と、ドリブンプレート(出力要素)15とを含む。更に、ダンパ装置10は、トルク伝達要素(トルク伝達弾性体)として、ドライブ部材11とドリブンプレート15との間で並列に作用してトルクを伝達する複数(本実施形態では、例えば6個)の第1スプリング(第1弾性体)SP1と、ドライブ部材11とドリブンプレート15との間で並列に作用してトルクを伝達可能な複数(本実施形態では、例えば3個)の第2スプリング(第2弾性体)SP2とを含む。
【0015】
すなわち、ダンパ装置10は、
図1に示すように、ドライブ部材11とドリブンプレート15との間に、複数の第1スプリングSP1を含む第1トルク伝達経路TP1と、複数の第2スプリングSP2を含むと共に第1トルク伝達経路TP1と並列に設けられる第2トルク伝達経路TP2とを有する。本実施形態において、第2トルク伝達経路TP2の複数の第2スプリングSP2は、ドライブ部材11への入力トルク(駆動トルク)あるいは車軸側からドリブンプレート15に付与されるトルク(被駆動トルク)がダンパ装置10の最大捩れ角θmaxに対応したトルクT2(第2の閾値)よりも小さい予め定められたトルク(第1の閾値)T1以上であって、ドライブ部材11のドリブンプレート15に対する捩れ角が所定角度θref以上であるときに、第1トルク伝達経路TP1の第1スプリングSP1と並列に作用する。これにより、ダンパ装置10は、2段階(2ステージ)の減衰特性を有することになる。
【0016】
また、本実施形態では、第1および第2スプリングSP1,SP2として、荷重が加えられてないときに真っ直ぐに延びる軸心を有するように螺旋状に巻かれた金属材からなる直線型コイルスプリングが採用されている。これにより、アークコイルスプリングを用いた場合に比べて、第1および第2スプリングSP1,SP2を軸心に沿ってより適正に伸縮させることができる。この結果、ドライブ部材11(入力要素)とドリブンプレート15(出力要素)との相対変位が増加していく際に第1スプリングSP1等からドリブンプレート15に伝達されるトルクと、ドライブ部材11とドリブンプレート15との相対変位が減少していく際に第1スプリングSP1等からドリブンプレート15に伝達されるトルクとの差すなわちヒステリシスを低減化することが可能となる。ただし、第1および第2スプリングSP1,SP2の少なくとも何れかとして、アークコイルスプリングが採用されてもよい。
【0017】
図2に示すように、ダンパ装置10のドライブ部材11は、ロックアップクラッチ8のロックアップピストン80に連結される環状の第1入力プレート12と、第1入力プレート12と対向するように複数のリベット(連結部材)90(
図3参照)を介して当該第1入力プレート12に連結される環状の第2入力プレート13とを含む。これにより、ドライブ部材11、すなわち第1および第2入力プレート12,13は、ロックアップピストン80と一体に回転し、ロックアップクラッチ8の係合によりフロントカバー3(エンジンEG)とダンパ装置10のドライブ部材11とが連結されることになる。
【0018】
第1入力プレート12は、鋼板等をプレス加工することにより形成された環状のプレス加工品であり、
図2および
図3に示すように、それぞれ円弧状に延びると共に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば6個)の内側スプリング収容窓(第1収容窓)12wiと、各内側スプリング収容窓12wiの内側縁部に沿って延びる複数(本実施形態では、例えば6個)のスプリング支持部12aと、各内側スプリング収容窓12wiの外側縁部に沿って延びる複数(本実施形態では、例えば6個)のスプリング支持部12bと、各内側スプリング収容窓12wiの周方向における両側に設けられる複数(本実施形態では、例えば12個)の内側スプリング当接部12ciとを含む。各内側スプリング収容窓12wiは、
図3からわかるように、第1スプリングSP1の自然長に応じた周長を有する。
【0019】
更に、第1入力プレート12は、それぞれ円弧状に延びると共に対応する内側スプリング収容窓12wiの径方向外側に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば3個)の外側スプリング収容窓(第2収容窓)12woと、各外側スプリング収容窓12woの外側縁部に沿って延びる複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部12dと、各外側スプリング収容窓12woの周方向における両側に設けられる複数(本実施形態では、例えば6個)の外側スプリング当接部12coとを含む。各外側スプリング収容窓12woは、
図3に示すように、第2スプリングSP2の自然長よりも長い周長を有する。
【0020】
また、第1入力プレート12の外周部12oは、平坦かつ環状に形成されており、対応する外側スプリング収容窓12woの径方向外側に位置するように周方向に間隔をおいて(等間隔に)に配設された複数(本実施形態では、例えば3個)のピニオンギヤ支持部12pと、各外側スプリング収容窓12woの径方向外側に位置する部分とを含む。更に、第1入力プレート12の外周部12oは、それぞれ複数の内側スプリング収容窓12wiおよび外側スプリング収容窓12woを含む内周部12iから全周にわたってスプリング支持部12a,12b,12dと同じ側にダンパ装置10の軸方向にオフセットされている。そして、当該外周部12oは、複数のピニオンギヤ支持部12pおよび複数の外側スプリング収容窓12woに沿って延びる短尺筒状かつ無端状の繋ぎ部12rを介して内周部12iに連なる。
【0021】
第2入力プレート13は、鋼板等をプレス加工することにより形成された環状のプレス加工品であり、
図2および
図3に示すように、それぞれ円弧状に延びると共に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば6個)の内側スプリング収容窓(第1収容窓)13wiと、各内側スプリング収容窓13wiの内側縁部に沿って延びる複数(本実施形態では、例えば6個)のスプリング支持部13aと、各内側スプリング収容窓13wiの外側縁部に沿って延びる複数(本実施形態では、例えば6個)のスプリング支持部13bと、各内側スプリング収容窓13wiの周方向における両側に設けられる複数(本実施形態では、例えば12個)の内側スプリング当接部13ciとを含む。各内側スプリング収容窓13wiは、第1入力プレート12の各内側スプリング収容窓12wiと同様に、第1スプリングSP1の自然長に応じた周長を有する。
【0022】
更に、第2入力プレート13は、それぞれ円弧状に延びると共に対応する内側スプリング収容窓13wiの径方向外側に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば3個)の外側スプリング収容窓(第2収容窓)13woと、各外側スプリング収容窓13woの外側縁部に沿って延びる複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部13dと、各外側スプリング収容窓13woの周方向における両側に設けられる複数(本実施形態では、例えば6個)の外側スプリング当接部13coとを含む。各外側スプリング収容窓13woは、第1入力プレート12の各外側スプリング収容窓12woと同様に、第2スプリングSP2の自然長よりも長い周長を有する。
【0023】
また、第2入力プレート13の外周部13oは、平坦かつ環状に形成されており、対応する外側スプリング収容窓13woの径方向外側に位置するように周方向に間隔をおいて(等間隔に)に配設された複数(本実施形態では、例えば3個)のピニオンギヤ支持部13pと、各外側スプリング収容窓13woの径方向外側に位置する部分とを含む。更に、第2入力プレート13の外周部13oは、それぞれ複数の内側スプリング収容窓13wiおよび外側スプリング収容窓13woを含む内周部13iから全周にわたってスプリング支持部13a,13b,13dと同じ側にダンパ装置10の軸方向にオフセットされている。そして、当該外周部13oは、複数のピニオンギヤ支持部13pおよび複数の外側スプリング収容窓13woに沿って延びる短尺筒状かつ無端状の繋ぎ部13rを介して内周部13iに連なる。本実施形態では、第1および第2入力プレート12,13として、同一の形状を有するものが採用され、これにより、部品の種類の数を削減することが可能となる。
【0024】
ドリブンプレート(出力プレート)15は、鋼板等をプレス加工することにより形成された板状かつ環状のプレス加工品であり、第1および第2入力プレート12,13の軸方向における間に配置されると共に、複数のリベットを介してダンパハブ7に固定される。
図2および
図3に示すように、ドリブンプレート15は、周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば6個)の内側スプリング保持窓(第1保持窓)15wiと、各内側スプリング収容窓12wiの周方向における両側に設けられる複数(本実施形態では、例えば12個)の内側スプリング当接部15ciと、対応する内側スプリング保持窓15wiの径方向外側に配置された複数(本実施形態では、例えば3個)の外側スプリング保持窓15wo(第2保持窓)と、各外側スプリング収容窓12woの周方向における両側に設けられる複数(本実施形態では、例えば6個)の外側スプリング当接部15coとを含む。
【0025】
各内側スプリング保持窓15wiは、
図3からわかるように、第1スプリングSP1の自然長に応じた周長を有し、各外側スプリング保持窓15woは、
図3からわかるように、第2スプリングSP2の自然長に応じた周長を有する。また、本実施形態において、ドリブンプレート15は、外周部から周方向に間隔をおいて(等間隔に)径方向における外側に突出するように形成された複数(本実施形態では、例えば3個)の突出部15eを含み、各突出部15eには、上記外側スプリング保持窓15woが1個ずつ形成されている。
【0026】
ドリブンプレート15の各内側スプリング保持窓15wiには、第1スプリングSP1が1個ずつ配置(嵌合)され、複数の第1スプリングSP1は、同一円周上に並ぶ。また、各内側スプリング保持窓15wiの周方向における両側に設けられた内側スプリング当接部15ciは、当該内側スプリング保持窓15wi内の第1スプリングSP1の一端または他端に当接する。更に、ドリブンプレート15の各外側スプリング保持窓15woには、第2スプリングSP2が1個ずつ配置(嵌合)され、複数の第2スプリングSP2は、複数の第1スプリングSP1よりもドリブンプレート15の径方向における外側で同一円周上に並ぶ。また、各外側スプリング保持窓15woの周方向における両側に設けられた外側スプリング当接部15coは、当該外側スプリング保持窓15wo内の第2スプリングSP2の一端または他端に当接する。
【0027】
ドライブ部材11の第1および第2入力プレート12,13は、ドリブンプレート15、複数の第1スプリングSP1および複数の第2スプリングSP2をダンパ装置10の軸方向における両側から挟み込むように複数のリベット90を介して互いに連結される。これにより、各第1スプリングSP1の側部は、第1および第2入力プレート12,13の対応する内側スプリング収容窓12wi,13wi内に収容され、スプリング支持部12a,13aにより径方向内側から支持(ガイド)される。更に、各第1スプリングSP1は、径方向外側に位置する第1および第2入力プレート12,13のスプリング支持部12b,13bによっても支持(ガイド)され得るようになる。また、ダンパ装置10の取付状態において、各内側スプリング収容窓12wiの周方向における両側に設けられた内側スプリング当接部12ciおよび各内側スプリング収容窓13wiの周方向における両側に設けられた内側スプリング当接部13ciは、当該内側スプリング収容窓12wi,13wi内の第1スプリングSP1の一端または他端に当接する。これにより、ドライブ部材11とドリブンプレート15とが複数の第1スプリングSP1を介して連結される。
【0028】
更に、各第2スプリングSP2の側部は、第1および第2入力プレート12,13の対応する外側スプリング収容窓12wo,13wo内に収容され、径方向外側に位置するスプリング支持部12d,13dによって支持(ガイド)され得るようになる。ダンパ装置10の取付状態において、各第2スプリングSP2は、外側スプリング収容窓12wo,13woの周方向における略中央部に位置し、第1および第2入力プレート12,13の外側スプリング当接部12co,13coの何れとも当接しない。そして、第2スプリングSP2の一方の端部は、ドライブ部材11への入力トルク(駆動トルク)あるいは車軸側からドリブンプレート15に付与されるトルク(被駆動トルク)が上記トルクT1に達してドライブ部材11のドリブンプレート15に対する捩れ角が所定角度θref以上になると、第1および第2入力プレート12,13の対応する外側スプリング収容窓12wo,13woの両側に設けられた外側スプリング当接部12co,13coの一方と当接することになる。
【0029】
加えて、ダンパ装置10は、ドライブ部材11とドリブンプレート15との相対回転を規制するストッパSTを含む。ストッパSTは、ドライブ部材11への入力トルクがダンパ装置10の最大捩れ角θmaxに対応した上記トルクT2に達すると、ドライブ部材11とドリブンプレート15との相対回転を規制し、それに伴って、第1および第2スプリングSP1,SP2のすべての撓みが規制される。本実施形態において、ストッパSTは、ドライブ部材11の第1および第2入力プレート12,13を連結する複数のリベット90と、ドリブンプレート15の各突出部15eとにより構成される。すなわち、複数のリベット90の少なくとも何れかと、ドリブンプレート15の対応する突出部15eの周方向における端部とが当接すると、ドライブ部材11とドリブンプレート15との相対回転が規制される。
【0030】
更に、ダンパ装置10は、
図1および
図2に示すように、複数の第1スプリングSP1を含む第1トルク伝達経路TP1と、複数の第2スプリングSP2を含む第2トルク伝達経路TP2との双方に並列に設けられる回転慣性質量ダンパ20を含む。本実施形態において、回転慣性質量ダンパ20は、ダンパ装置10の入力要素であるドライブ部材11と出力要素であるドリブンプレート15との間に配置されるシングルピニオン式の遊星歯車21(
図1参照)を有する。
【0031】
遊星歯車21は、外周に外歯15tを含んで回転慣性質量ダンパ20(遊星歯車21)のサンギヤとして機能するドリブンプレート15と、それぞれ外歯15tに噛合する複数(本実施形態では、例えば3個)のピニオンギヤ23を回転自在に支持してキャリヤとして機能するドライブ部材11の第1および第2入力プレート12,13と、各ピニオンギヤ23に噛合すると共にサンギヤとしてのドリブンプレート15(外歯15t)と同心円上に配置されるリングギヤ25とにより構成される。サンギヤとしてのドリブンプレート15、複数のピニオンギヤ23およびリングギヤ25は、流体室9内で、ダンパ装置10の径方向からみて第1および第2スプリングSP1,SP2と軸方向に少なくとも部分的に重なり合う。これにより、回転慣性質量ダンパ20ひいてはダンパ装置10の軸長を短縮化することが可能となる。
【0032】
図2および
図4に示すように、外歯15tは、ドリブンプレート15の外周面に周方向に間隔をおいて(等間隔に)定められた複数の箇所に形成される。すなわち、本実施形態において、外歯15tは、ドリブンプレート15の外周面の隣り合う突出部15eの周方向における間に形成される。従って、外歯15tは、内側スプリング保持窓15wiすなわちドライブ部材11とドリブンプレート15との間でトルクを伝達する第1スプリングSP1よりも径方向外側に位置する。なお、ドリブンプレート15に突出部15eが形成されない場合、外歯15tは、ドリブンプレート15の外周の全体に形成されてもよい。
【0033】
遊星歯車21のキャリヤを構成する第1入力プレート12の各ピニオンギヤ支持部12pは、第2入力プレート13の対応するピニオンギヤ支持部13pと軸方向に対向し、互いに対をなすピニオンギヤ支持部12p,13pは、それぞれピニオンギヤ23に挿通されたピニオンシャフト24の対応する端部を支持する。これにより、遊星歯車21の複数のピニオンギヤ23は、複数の第1スプリングSP1よりもドリブンプレート15の径方向における外側、かつリングギヤ25よりも当該径方向における内側に配置される複数の第2スプリングSP2と周方向に並ぶように配置される。更に、ピニオンシャフト24の周方向における両側には、第1および第2入力プレート12,13を締結するためのリベット90が配置される。
【0034】
ピニオンギヤ23は、
図4に示すように、外周に外歯23tを有する環状部材であり、当該ピニオンギヤ23の歯幅は、外歯15tの歯幅、すなわちドリブンプレート15の板厚よりも大きく定められている。また、ピニオンギヤ23の内周面とピニオンシャフト24の外周面との間には、複数のニードルベアリング230が配置される。更に、各ピニオンギヤ23の軸方向における両側には、一対の大径ワッシャ231が配置され、大径ワッシャ231とピニオンギヤ支持部12pまたは13pとの間には、当該大径ワッシャ231よりも小径の一対の小径ワッシャ232が配置される。
【0035】
遊星歯車21のリングギヤ25は、
図4に示すように、内周に内歯250tが形成された環状の内歯ギヤ250と、内歯ギヤ250の一方の側面(
図4中、左側の側面)に接するように配置される錘体251と、内歯ギヤ250と錘体251とを互いに固定するための複数のリベット252とを含む。内歯ギヤ250および錘体251は、何れも鋼板等をプレス加工することにより形成される環状のプレス加工品である。内歯ギヤ250の内歯250tは、内歯ギヤ250の内周面の全体にわたって形成される。ただし、内歯250tは、内歯ギヤ250の内周面に周方向に間隔をおいて(等間隔に)定められた複数の箇所に形成されてもよい。更に、内歯ギヤ250の歯幅は、ピニオンギヤ23の歯幅よりも小さく、かつ外歯15tの歯幅、すなわちドリブンプレート15の板厚と略同一である。
【0036】
また、本実施形態において、錘体251は、凹円柱面状の内周面を有する円環状部材であり、内歯ギヤ250の外径と略同一の外径を有すると共に、内歯250tの歯底円の半径よりも僅かに小さい内径を有する。本実施形態において、錘体251の軸長(厚み)は、当該錘体251の軸長と内歯ギヤ250の軸長(厚み)との和がピニオンギヤ23の軸長と略同一になるように定められている。そして、内歯ギヤ250、錘体251および複数のリベット252は、一体化されて回転慣性質量ダンパ20の質量体(慣性質量体)として機能する。このように、遊星歯車21の最外周に配置されるリングギヤ25を回転慣性質量ダンパ20の質量体として用いることで、当該リングギヤ25の慣性モーメントをより大きくして当該回転慣性質量ダンパ20の振動減衰性能をより向上させることができる。なお、錘体251は、上述のような円環状の部材を分割することにより形成されて、それぞれリベット252を介して内歯ギヤ250に固定される複数のセグメントを含むものであってもよい。
【0037】
図4に示すように、リングギヤ25の内歯ギヤ250は、サンギヤとしてドリブンプレート15に対して軸方向にオフセットして配置され、内歯ギヤ250の内歯250tは、各ピニオンギヤ23の軸方向における端部に噛合する。また、リングギヤ25の錘体251の内周面は、
図5に示すように、ピニオンギヤ23の外歯23tの歯先により径方向に支持され、それによりリングギヤ25の全体がキャリヤとしての第1および第2入力プレート12,13やサンギヤとしてのドリブンプレート15の軸心に対して精度よく調心されることになる。更に、リングギヤ25の軸方向への移動は、内歯ギヤ250(内歯250t)の側面に当接可能な大径ワッシャ231および錘体251の側面に当接可能な大径ワッシャ231により規制される。
【0038】
すなわち、大径ワッシャ231の外径は、各ピニオンギヤ23とリングギヤ25の内歯250tとが噛合した際に、当該大径ワッシャ231がピニオンギヤ23の側面と対向すると共にリングギヤ25の内歯250tの側面または錘体251の側面と対向するように定められている。より詳細には、本実施形態の大径ワッシャ231の外周部は、リングギヤ25の内歯250tの歯底および錘体251の内周面よりも径方向外側に突出する。また、本実施形態において、小径ワッシャ232の外径は、ピニオンギヤ23の外歯23tの歯底円よりも小径であり、小径ワッシャ232の外周は、ニードルベアリング230よりも径方向外側に位置する。
【0039】
次に、上述のように構成される発進装置1の動作について説明する。
【0040】
発進装置1において、ロックアップクラッチ8によるロックアップが解除されている際、
図1からわかるように、エンジンEGからフロントカバー3に伝達されたトルク(動力)は、ポンプインペラ4、タービンランナ5、およびダンパハブ7という経路を介して変速機TMの入力軸ISへと伝達される。これに対して、発進装置1のロックアップクラッチ8によりロックアップが実行されると、エンジンEGからフロントカバー3およびロックアップクラッチ8を介してドライブ部材11に伝達されたトルクは、入力トルク等が上記トルクT1未満であってドライブ部材11のドリブンプレート15に対する捩れ角が所定角度θref未満である間、複数の第1スプリングSP1を含む第1トルク伝達経路TP1と、回転慣性質量ダンパ20とを介してドリブンプレート15およびダンパハブ7に伝達される。
【0041】
この際、ドライブ部材11がドリブンプレート15に対して回転すると(捩れると)、複数の第1スプリングSP1が撓むと共に、ドライブ部材11とドリブンプレート15との相対回転に応じて質量体としてのリングギヤ25が軸心周りに回転(揺動)する。このようにドライブ部材11がドリブンプレート15に対して回転(揺動)する際には、遊星歯車21の入力要素であるキャリヤとしてのドライブ部材11すなわち第1および第2入力プレート12,13の回転速度がサンギヤとしてのドリブンプレート15の回転速度よりも高くなる。従って、この際、リングギヤ25は、遊星歯車21の作用により増速され、ドライブ部材11よりも高い回転速度で回転する。これにより、回転慣性質量ダンパ20の質量体であるリングギヤ25から、ピニオンギヤ23を介して慣性トルクをダンパ装置10の出力要素であるドリブンプレート15に付与し、当該ドリブンプレート15の振動を減衰させることが可能となる。
【0042】
より詳細には、複数の第1スプリングSP1と回転慣性質量ダンパ20とが並列に作用する際、複数の第1スプリングSP1(第1トルク伝達経路TP1)からドリブンプレート15に伝達されるトルク(平均トルク)は、第1スプリングSP1の変位(撓み量すなわち捩れ角)に依存(比例)したものとなる。これに対して、回転慣性質量ダンパ20からドリブンプレート15に伝達されるトルク(慣性トルク)は、ドライブ部材11とドリブンプレート15との角加速度の差、すなわちドライブ部材11とドリブンプレート15との間の第1スプリングSP1の変位の2回微分値に依存(比例)したものとなる。これにより、ダンパ装置10のドライブ部材11に伝達される入力トルクが周期的に振動していると仮定すれば、ドライブ部材11から複数の第1スプリングSP1を介してドリブンプレート15に伝達される振動の位相と、ドライブ部材11から回転慣性質量ダンパ20を介してドリブンプレート15に伝達される振動の位相とが180°ずれることになる。この結果、ダンパ装置10では、複数の第1スプリングSP1からドリブンプレート15に伝達される振動と、回転慣性質量ダンパ20からドリブンプレート15に伝達される振動との一方により、他方の少なくとも一部を打ち消して、ドリブンプレート15の振動を良好に減衰させることが可能となる。なお、回転慣性質量ダンパ20は、ドライブ部材11とドリブンプレート15との間で主に慣性トルクを伝達し、平均トルクを伝達することはない。
【0043】
また、入力トルク等が上記トルクT1以上になってドライブ部材11のドリブンプレート15に対する捩れ角が所定角度θref以上になると、各第2スプリングSP2の一方の端部が、第1および第2入力プレート12,13の対応する外側スプリング収容窓12wo,13woの両側に設けられた外側スプリング当接部12co,13coの一方と当接する。これにより、ドライブ部材11に伝達されたトルクは、入力トルク等が上記トルクT2に達してストッパSTによりドライブ部材11とドリブンプレート15との相対回転が規制されるまで、上記第1トルク伝達経路TP1と、複数の第2スプリングSP2を含む第2トルク伝達経路TP2と、回転慣性質量ダンパ20とを介してドリブンプレート15およびダンパハブ7に伝達される。すなわち、ダンパ装置10において、複数の第2スプリングSP2は、ドリブンプレート15の対応する外側スプリング当接部15coと、第1および第2入力プレート12,13の外側スプリング当接部12co,13coとの双方に当接するまでトルクを伝達することなく(撓まず)、ドライブ部材11とドリブンプレート15との相対捩れ角が増加するのに伴って第1スプリングSP1と並列に作用する。これにより、ドライブ部材11とドリブンプレート15との相対捩れ角の増加に応じてダンパ装置10の剛性を高め、並列に作用する第1および第2スプリングSP1,SP2によって大きなトルクを伝達したり、衝撃トルク等を受け止めたりすることが可能となる。
【0044】
更に、ダンパ装置10では、複数の第2スプリングSP2が、複数の第1スプリングSP1よりもドリブンプレート15の径方向における外側かつリングギヤ25よりも当該径方向における内側で複数のピニオンギヤ23と周方向に並ぶように配置される。これにより、複数の第2スプリングSP2の配置の自由度を大きくしてダンパ装置10の大型化を抑制することが可能となる。加えて、ダンパ装置10において、複数の第1スプリングSP1は、回転慣性質量ダンパ20の複数のピニオンギヤ23および複数の第2スプリングSP2の径方向内側に配置されることになる。これにより、ドリブンプレート15等が回転する際に、第1スプリングSP1に作用する遠心力を小さくして当該第1スプリングSP1のヒステリシスを低減化し、回転慣性質量ダンパ20による振動減衰効果を良好に維持することができる。この結果、回転慣性質量ダンパ20を含むダンパ装置10の大型化を抑制しつつ、振動減衰性能を良好に確保することが可能となる。
【0045】
また、ダンパ装置10では、第1および第2スプリングSP2の各々がドリブンプレート15の内側スプリング保持窓15wiまたは外側スプリング保持窓15woにより保持される。更に、各第1スプリングSP1の側部が第1および第2入力プレート12,13の対応する内側スプリング収容窓12wi,13wi内に収容され、各第2スプリングSP2の側部が、当該第2スプリングSP2よりも長い周長を有する第1および第2入力プレート12,13の対応する外側スプリング収容窓12wo内に収容される。これにより、ドリブンプレート15等の回転に伴って第1および第2スプリングSP2に遠心力が作用した際に、複数の第1スプリングSP1が第1および第2入力プレート12,13の対応するスプリング支持部12b,13bに摺接するのを抑制して当該第1スプリングSP1のヒステリシスを低減化すると共に、複数の第2スプリングSP2が第1および第2入力プレート12,13の対応するスプリング支持部12d,13dに摺接することによる摩擦抵抗の発生を抑制することができる。加えて、第1および第2入力プレート12,13の無端状の繋ぎ部12r,13rがリブとして機能することから、それぞれ複数の内側スプリング収容窓12wi,13wiおよび外側スプリング収容窓12wo,13woが形成されると共にエンジンEGからのトルクが伝達される第1および第2入力プレート12,13の強度を良好に確保することが可能となる。
【0046】
更に、ダンパ装置10では、第1および第2入力プレート12,13を連結するリベット(連結部材)90とドリブンプレート15の突出部15eとによりドライブ部材11とドリブンプレート15との相対回転を規制するストッパSTが構成される。これにより、当該ストッパSTの設置に伴うダンパ装置10の大型化を抑制することが可能となる。
【0047】
また、上記実施形態において、サンギヤとしてのドリブンプレート15、リングギヤ25の内歯ギヤ250および錘体251は、プレス加工により形成されたプレス加工品である。これにより、ドリブンプレート15およびリングギヤ25の製造コストをより低下させて、回転慣性質量ダンパ20を含むダンパ装置10のコストアップをより良好に抑制することが可能となる。加えて、リングギヤ25の内歯ギヤ250および外歯15tの歯幅の双方をピニオンギヤ23の歯幅よりも小さくした場合には、
図6からわかるように、プレス加工品であるドリブンプレート15および内歯ギヤ250を、いわゆる親子取りにより作成することもできるので、母材を有効に利用して歩留まりを向上させることも可能となる。
【0048】
図7は、本開示の他のダンパ装置10Bを含む発進装置1Bを示す概略構成図であり、
図8は、ダンパ装置10Bを示す正面図である。なお、発進装置1Bやダンパ装置10Bの構成要素のうち、上述の発進装置1等と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0049】
図7および
図8に示すダンパ装置10Bは、回転要素として、ドライブ部材(入力要素)11Bと、中間プレート(中間要素)14と、ドリブンプレート(出力要素)15Bとを含む。更に、ダンパ装置10Bは、トルク伝達要素(トルク伝達弾性体)として、ドライブ部材11Bと中間プレート14との間でトルクを伝達する複数(本実施形態では、例えば3個)の入力側スプリング(入力側弾性体)SP11と、中間プレート14とドリブンプレート15Bとの間でトルクを伝達する複数(本実施形態では、例えば3個)の出力側スプリング(出力側弾性体)SP12と、ドライブ部材11Bと中間プレート14との間でトルクを伝達可能な複数(本実施形態では、例えば3個)の第2スプリング(第2弾性体)SP2とを含む。
【0050】
ダンパ装置10Bのドライブ部材11Bは、回転慣性質量ダンパ20Bの遊星歯車21Bのキャリヤとして機能する第1および第2入力プレート12B,13Bを含む。第1および第2入力プレート12B,13Bは、ダンパ装置10のドライブ部材11と基本的に同一の構造を有するプレス加工品である。ただし、第1および第2入力プレート12B,13Bの内側スプリング収容窓12wi等およびスプリング支持部12a,12b等は、
図8に示すように、入力側スプリングSP11の自然長と出力側スプリングSP12の自然長との和よりも長い周長を有するように形成されている。ドリブンプレート15Bは、
図8に示すように、外周部から周方向に間隔をおいて(等間隔に)径方向外側に突出するように形成された複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング当接部15cを有する環状のプレス加工品である。更に、隣り合うスプリング当接部15cの周方向における間には、円弧状に延びる切欠状の内側スプリング保持窓15wiが形成されている。
【0051】
また、中間プレート14は、鋼板等をプレス加工することにより形成された環状のプレス加工品であり、外周に外歯14tを含んで回転慣性質量ダンパ20Bの(遊星歯車21B)のサンギヤとして機能する。すなわち、ダンパ装置10Bの回転慣性質量ダンパ20Bは、外周に外歯14tを含んでサンギヤとして機能する中間プレート14と、それぞれ外歯14tに噛合する複数(本実施形態では、例えば3個)のピニオンギヤ23を回転自在に支持してキャリヤとして機能するドライブ部材11Bの第1および第2入力プレート12B,13Bと、各ピニオンギヤ23に噛合すると共にサンギヤとしての中間プレート14(外歯14t)と同心円上に配置されて質量体として機能するリングギヤ25とにより構成される。
【0052】
中間プレート14は、
図8に示すように、外周の外歯14tに加えて、内周部から周方向に間隔をおいて(等間隔に)径方向内側に突出するように形成された複数(本実施形態では、例えば3個)の内側スプリング当接部14ciと、外周部から周方向に間隔をおいて(等間隔に)径方向外側に突出するように形成された複数(本実施形態では、例えば3個)の突出部14eと、各突出部14eに1個ずつ形成された切欠部である複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング保持窓14wと、各スプリング保持窓14wの周方向における両側に設けられた複数(本実施形態では、例えば6個)の外側スプリング当接部14coとを含む。各スプリング保持窓14wは、
図8に示すように、第2スプリングSP2の自然長に応じた周長を有する。また、外歯14tは、隣り合う突出部14eの周方向における間に形成される。
【0053】
ドリブンプレート15Bの各内側スプリング保持窓15wiには、互いに対をなして直列に作用する入力側スプリングSP11および出力側スプリングSP12が1個ずつ配置される。また、ドリブンプレート15Bは、中間プレート14により包囲され、各内側スプリング保持窓15wi内の入力側スプリングSP11と出力側スプリングSP12との間には、両者の端部に当接するように中間プレート14の内側スプリング当接部14ciが配置される。これにより、ダンパ装置10Bの取付状態において、各入力側スプリングSP11の一端は、ドリブンプレート15Bの対応するスプリング当接部15cに当接し、各入力側スプリングSP11の他端は、中間プレート14の対応する内側スプリング当接部14ciに当接する。更に、ダンパ装置10Bの取付状態において、各出力側スプリングSP12の一端は、中間プレート14の対応する内側スプリング当接部14ciに当接し、各出力側スプリングSP12の他端は、ドリブンプレート15Bの対応するスプリング当接部15cに当接する。また、中間プレート14の各スプリング保持窓14wには、第2スプリングSP2が1個ずつ配置(嵌合)され、各スプリング保持窓14wの周方向における両側に設けられた外側スプリング当接部14coは、当該スプリング保持窓14w内の第2スプリングSP2の一端または他端に当接する。
【0054】
ドライブ部材11Bの第1および第2入力プレート12B,13Bは、中間プレート14、ドリブンプレート15B、それぞれ複数の入力側スプリングSP11、出力側スプリングSP12および第2スプリングSP2をダンパ装置10Bの軸方向における両側から挟み込むように複数のリベット90を介して互いに連結される。これにより、対をなす入力側スプリングSP11および出力側スプリングSP12の側部は、第1および第2入力プレート12B,13Bの対応する内側スプリング収容窓12wi等内に収容され、スプリング支持部12a等により径方向内側から支持(ガイド)される。更に、対をなす入力側スプリングSP11および出力側スプリングSP12は、径方向外側に位置する第1および第2入力プレート12B,13Bのスプリング支持部12b等によっても支持(ガイド)され得るようになる。また、ダンパ装置10Bの取付状態において、各内側スプリング収容窓12wiの周方向における両側に設けられた内側スプリング当接部12ciおよび第2入力プレート13Bの各内側スプリング収容窓の周方向における両側に設けられた内側スプリング当接部は、当該内側スプリング収容窓12wi等内の入力側スプリングSP11の上記一端または出力側スプリングSP12の上記他端に当接する。これにより、ドライブ部材11Bとドリブンプレート15Bとが複数の入力側スプリングSP11、中間プレート14および複数の出力側スプリングSP12を介して連結される。
【0055】
更に、各第2スプリングSP2の側部は、第1および第2入力プレート12B,13Bの対応する外側スプリング収容窓12wo等内に収容され、径方向外側に位置するスプリング支持部12d等によって支持(ガイド)され得るようになる。ダンパ装置10Bの取付状態において、各第2スプリングSP2は、外側スプリング収容窓12wo等の周方向における略中央部に位置し、第1および第2入力プレート12B,13Bの外側スプリング当接部12co等の何れとも当接しない。そして、第2スプリングSP2の一方の端部は、ドライブ部材11Bへの入力トルク(駆動トルク)あるいは車軸側からドリブンプレート15Bに付与されるトルク(被駆動トルク)が予め定められたトルクT1(第1の閾値)に達してドライブ部材11Bのドリブンプレート15Bに対する捩れ角が所定角度θref以上になると、第1および第2入力プレート12B,13Bの対応する外側スプリング収容窓12wo等の両側に設けられた外側スプリング当接部12co等の一方と当接することになる。
【0056】
加えて、ダンパ装置10Bは、
図7に示すように、中間プレート14とドリブンプレート15Bとの相対回転を規制する第1ストッパST1と、ドライブ部材11Bと中間プレート14との相対回転を規制する第2ストッパST2を含む。第1ストッパST1は、ドライブ部材11Bへの入力トルクあるいは車軸側からドリブンプレート15Bに付与されるトルクが上記トルクT1に達してドライブ部材11Bのドリブンプレート15Bに対する捩れ角が所定角度θref以上になると、中間プレート14とドリブンプレート15Bとの相対回転を規制する。ダンパ装置10Bにおいて、第1ストッパST1は、中間プレート14の内周部に周方向に間隔をおいて(等間隔に)形成された複数のストッパ部14stと、ドリブンプレート15Bの各スプリング当接部15cの外周部から周方向に延出されたスプリング支持部15stとにより構成される。すなわち、中間プレート14の各ストッパ部14stが対応するスプリング当接部15cのスプリング支持部15stに当接すると、中間プレート14とドリブンプレート15Bとの相対回転が規制される。
【0057】
また、第2ストッパST2は、ドライブ部材11Bへの入力トルクあるいは車軸側からドリブンプレート15Bに付与されるトルクがダンパ装置10Bの最大捩れ角θmaxに対応したトルクT2(第2の閾値)に達すると、ドライブ部材11Bと中間プレート14との相対回転を規制する。ダンパ装置10Bにおいて、第2ストッパST2は、ドライブ部材11Bの第1および第2入力プレート12B,13Bを連結する複数のリベット90と、中間プレート14の各突出部14eとにより構成される。すなわち、複数のリベット90の少なくとも何れかと、中間プレート14の突出部14eの周方向における端部とが当接すると、ドライブ部材11Bと中間プレート14との相対回転が規制され、それにより入力側スプリングSP11、出力側スプリングSP12および第2スプリングSP2のすべての撓みが規制される。
【0058】
上述のように構成される発進装置1Bにおいて、ロックアップクラッチ8によるロックアップが解除されている際、
図7からわかるように、エンジンEGからフロントカバー3に伝達されたトルク(動力)は、ポンプインペラ4、タービンランナ5、およびダンパハブ7という経路を介して変速機TMの入力軸ISへと伝達される。これに対して、発進装置1Bのロックアップクラッチ8によりロックアップが実行されると、エンジンEGからフロントカバー3およびロックアップクラッチ8を介してドライブ部材11Bに伝達されたトルクは、入力トルク等が上記トルクT1未満であってドライブ部材11Bのドリブンプレート15Bに対する捩れ角が所定角度θref未満である間、複数の入力側スプリングSP11、中間プレート14および複数の出力側スプリングSP12を含むトルク伝達経路と、複数の入力側スプリングSP11と並列に配置される回転慣性質量ダンパ20Bとを介してドリブンプレート15Bおよびダンパハブ7に伝達される。
【0059】
この際、ドライブ部材11Bが中間プレート14やドリブンプレート15Bに対して回転すると(捩れると)、入力側スプリングSP11および出力側スプリングSP12の少なくとも何れか一方が撓むと共に、ドライブ部材11Bと中間プレート14との相対回転に応じて質量体としてのリングギヤ25が軸心周りに回転(揺動)する。このようにドライブ部材11Bが中間プレート14に対して回転(揺動)する際には、遊星歯車21Bの入力要素であるキャリヤとしてのドライブ部材11Bすなわち第1および第2入力プレート12B,13Bの回転速度がサンギヤとしての中間プレート14の回転速度よりも高くなる。従って、この際、リングギヤ25は、遊星歯車21Bの作用により増速され、中間プレート14よりも高い回転速度で回転する。これにより、回転慣性質量ダンパ20Bの質量体であるリングギヤ25から、ピニオンギヤ23を介して慣性トルクを中間プレート14に付与し、それによりドリブンプレート15Bの振動を減衰させることができる。
【0060】
すなわち、ダンパ装置10Bでは、出力側スプリングSP12からドリブンプレート15Bに伝達される振動と、回転慣性質量ダンパ20Bから中間プレート14および出力側スプリングSP12を介してドリブンプレート15Bに伝達される振動との一方により、他方の少なくとも一部を打ち消して、ドリブンプレート15Bの振動を良好に減衰させることが可能となる。加えて、ダンパ装置10Bでは、回転慣性質量ダンパ20Bとドリブンプレート15Bに連結される変速機TMとの間に出力側スプリングSP12が介在することから、変速機TMの軸部材(入力軸ISや出力軸、中間軸等)の慣性モーメントから定まる固有振動数に対する回転慣性質量ダンパ20B全体の慣性モーメントの影響を低減化することもできる。なお、回転慣性質量ダンパ20Bも、ドライブ部材11Bと中間プレート14との間で主に慣性トルクを伝達し、平均トルクを伝達することはない。
【0061】
また、入力トルク等が上記トルクT1以上になってドライブ部材11Bのドリブンプレート15Bに対する捩れ角が所定角度θref以上になると、第1ストッパST1により中間プレート14とドリブンプレート15Bとの相対回転および各出力側スプリングSP12の撓みが規制される。更に、入力トルク等が上記トルクT1以上になると、各第2スプリングSP2の一方の端部が、第1および第2入力プレート12B,13Bの対応する外側スプリング収容窓12wo等の両側に設けられた外側スプリング当接部12co等の一方と当接する。
【0062】
これにより、ドライブ部材11Bに伝達されたトルクは、入力トルク等が上記トルクT2に達して第2ストッパST2によりドライブ部材11Bとドリブンプレート15Bとの相対回転が規制されるまで、複数の入力側スプリングSP11と、当該複数の入力側スプリングSP11と並列に作用する複数の第2スプリングSP2と、回転慣性質量ダンパ20Bとを介して中間プレート14に伝達され、更に撓みが規制された出力側スプリングSP12および第1ストッパST1を介してドリブンプレート15Bおよびダンパハブ7に伝達される。すなわち、ダンパ装置10Bでは、ドライブ部材11Bとドリブンプレート15Bとの相対捩れ角が増加するのに伴って複数の第2スプリングSP2が複数の入力側スプリングSP11と並列に作用する。これにより、ドライブ部材11Bとドリブンプレート15Bとの相対捩れ角の増加に応じてダンパ装置10Bの剛性を高め、並列に作用する入力側スプリングSP11および第2スプリングSP2によって大きなトルクを伝達したり、衝撃トルク等を受け止めたりすることが可能となる。
【0063】
更に、ダンパ装置10Bでは、複数の第2スプリングSP2が、
図8に示すように、それぞれ複数の入力側スプリングSP11および出力側スプリングSP12よりもドリブンプレート15Bの径方向における外側かつリングギヤ25よりも当該径方向における内側で複数のピニオンギヤ23と周方向に並ぶように配置される。すなわち、それぞれ複数の入力側スプリングSP11および出力側スプリングSP12は、回転慣性質量ダンパ20Bの複数のピニオンギヤ23および複数の第2スプリングSP2の径方向内側に配置される。これにより、入力側スプリングSP11および出力側スプリングSP12に作用する遠心力を小さくして両者のヒステリシスを低減化し、回転慣性質量ダンパ20Bによる振動減衰効果を良好に維持することができる。この結果、ドライブ部材11Bへのより大きなトルクの入力を許容しつつ、回転慣性質量ダンパ20Bを含むダンパ装置10Bの振動減衰性能を良好に確保することが可能となる。
【0064】
また、ダンパ装置10Bでは、各第2スプリングSP2が中間プレート14のスプリング保持窓14wにより保持される。更に、各第2スプリングSP2の側部が、当該第2スプリングSP2よりも長い周長を有する第1および第2入力プレート12B,13Bの対応する外側スプリング収容窓12wo内に収容される。これにより、ドリブンプレート15B等の回転に伴って各第2スプリングSP2に遠心力が作用した際に、各第2スプリングSP2が第1および第2入力プレート12B,13Bの対応するスプリング支持部12d等に摺接することによる摩擦抵抗の発生を抑制することができる。加えて、第1および第2入力プレート12B,13Bの無端状の繋ぎ部12r,13rがリブとして機能することから、それぞれ複数の内側スプリング収容窓12wi等および外側スプリング収容窓12wo等が形成されると共にエンジンEGからのトルクが伝達される第1および第2入力プレート12B,13Bの強度を良好に確保することが可能となる。
【0065】
更に、ダンパ装置10Bでは、第1および第2入力プレート12B,13Bを連結するリベット(連結部材)90と中間プレート14の突出部14eとによりドライブ部材11Bと中間プレート14との相対回転を規制する第2ストッパST2が構成される。これにより、当該第2ストッパST2の設置に伴うダンパ装置10Bの大型化を抑制することが可能となる。
【0066】
また、ダンパ装置10Bにおいて、サンギヤとしての中間プレート14、リングギヤ25の内歯ギヤ250および錘体251は、プレス加工により形成されたプレス加工品である。これにより、中間プレート14およびリングギヤ25の製造コストをより低下させて、回転慣性質量ダンパ20Bを含むダンパ装置10Bのコストアップをより良好に抑制することが可能となる。加えて、ダンパ装置10Bでは、中間プレート14、ドリブンプレート15Bおよび内歯ギヤ250を、いわゆる親子取りにより作成することもできるので、母材を有効に利用して歩留まりを向上させることも可能となる。
【0067】
なお、上述のダンパ装置10,10Bにおいて、複数の第2スプリングSP2がリングギヤ25よりもドリブン部材15の径方向における内側で複数のピニオンギヤ23と周方向に並ぶように配置されてもよく、複数の第1スプリングSP1が複数の第2スプリングSP2および複数のピニオンギヤ23の当該径方向における外側に配置されてもよい。この場合、複数の第1スプリングSP1は、複数の第2スプリングSP2および複数のピニオンギヤ23と径方向から見て軸方向に少なくとも部分的に重なるように配置されてもよい。
【0068】
以上説明したように、本開示のダンパ装置は、エンジン(EG)からのトルクが伝達される入力要素(11,11B)および出力要素(15,15B)を含む複数の回転要素と、それぞれ前記入力要素(11,11B)と前記出力要素(15,15B)との間でトルクを伝達する複数の第1弾性体(SP1,SP11)と、前記複数の回転要素の何れかである第1回転要素(15,14)と前記第1回転要素とは異なる第2回転要素(11,11B,12,12B,13,13B)との相対回転に応じて回転する質量体(25)を有する回転慣性質量ダンパ(20,20B)とを含むダンパ装置(10,10B)において、前記入力要素(11,11B)と前記出力要素(15,15B)との間で伝達されるトルクが所定値(T1)以上であるときに前記複数の第1弾性体(SP1,SP11)と並列に作用する複数の第2弾性体(SP2)を含み、前記回転慣性質量ダンパ(20,20B)が、前記第1回転要素と一体に回転するサンギヤ(15,15t,14,14t)、複数のピニオンギヤ(23)を回転自在に支持すると共に前記第2回転要素と一体に回転するキャリヤ(11,11B,12,12B,13,13B)、および前記複数のピニオンギヤ(23)に噛合すると共に前記質量体として機能するリングギヤ(25)を含む遊星歯車(21,21B)を有し、前記第2弾性体(SP2)が、前記回転要素の径方向において前記第1弾性体(SP1,SP11)とは異なる位置で前記複数のピニオンギヤ(23)と周方向に並ぶように配置されるものである。
【0069】
本開示のダンパ装置では、入力要素と出力要素との間で伝達されるトルクが所定値以上であるときに、複数の第2弾性体が複数の第1弾性体と並列に作用する。これにより、入力要素と出力要素との間で伝達されるトルクの増加に応じてダンパ装置の剛性を高め、並列に作用する第1および第2弾性体によって大きなトルクを伝達したり、衝撃トルク等を受け止めたりすることができる。また、本開示のダンパ装置では、複数の第2弾性体が、回転要素の径方向において複数の第1弾性体とは異なる位置で複数のピニオンギヤと周方向に並ぶように配置される。これにより、第1弾性体の周長(剛性)を適正に確保しつつ、ダンパ装置の軸長や外径の増加を抑制することが可能となる。この結果、回転慣性質量ダンパを含むダンパ装置の大型化を抑制しつつ、振動減衰性能を良好に確保することができる。
【0070】
また、前記第2弾性体(SP2)は、前記第1弾性体(SP1,SP11)よりも前記径方向における外側かつ前記リングギヤ(25)よりも前記径方向における内側で前記複数のピニオンギヤ(23)と周方向に並ぶように配置されてもよい。これにより、第2弾性体の配置の自由度を大きくして装置の大型化を抑制することが可能となる。更に、複数の第1弾性体を回転慣性質量ダンパの複数のピニオンギヤや複数の第2弾性体の径方向内側に配置することで、第1弾性体に作用する遠心力を小さくして当該第1弾性体のヒステリシスを低減化し、回転慣性質量ダンパによる振動減衰効果を良好に維持することができる。
【0071】
更に、前記第1回転要素は、1枚の出力プレート(15)を含む前記出力要素であってもよく、前記第2回転要素は、前記ダンパ装置(10)の軸方向に沿って互いに対向すると共に前記出力プレート(15)を挟み込むように連結部材(90)を介して互いに連結される2枚の入力プレート(12,13)を含む前記入力要素(11)であってもよく、前記出力プレート(15)は、外周に形成された前記サンギヤ(15t)と、周方向に間隔をおいて配設されると共に、それぞれ前記第1弾性体(SP1)を保持する複数の第1保持窓(15wi)と、対応する前記第1保持窓(15wi)の前記径方向における外側に配置されると共に、それぞれ前記第2弾性体(SP2)を保持する複数の第2保持窓(15wo)とを含んでもよく、前記入力プレート(12,13)は、周方向に間隔をおいて配設されると共に、それぞれ対応する前記第1弾性体(SP1)を収容する複数の第1収容窓(12wi,13wi)と、それぞれ前記ピニオンギヤ(23)に挿通されたピニオンシャフト(24)の一端を支持する複数のピニオンギヤ支持部(12p,13p)と、それぞれ対応する前記第1収容窓(12wi,13wi)の前記径方向における外側に位置するように隣り合う前記ピニオンギヤ支持部(12p,13p)の周方向における間に形成され、それぞれ前記第2弾性体(SP2)よりも長い周長を有すると共に対応する該第2弾性体(SP2)を収容する複数の第2収容窓(12wo,13wo)とを含んでもよく、前記入力プレート(12,13)の外周部(12o,13o)は、前記複数のピニオンギヤ支持部(12p,13p)および前記複数の第2収容窓(12wo,13wo)の前記径方向における外側に位置する部分を含むように環状に形成されると共に、前記出力プレート(15)から離間するように前記第1および第2収容窓(12wi,13wi,12wo,13wo)を含む内周部(12i,13i)から前記軸方向にオフセットされてもよく、前記複数のピニオンギヤ支持部(12p,13p)および前記複数の第2収容窓(12wo,13wo)に沿って延びる無端状の繋ぎ部(12r,13r)を介して前記内周部(12i,13i)に連なってもよい。このように、第1および第2弾性体を出力プレートに保持させることで、第1および第2弾性体に遠心力が作用した際に、複数の第1弾性体が各入力プレートに摺接するのを抑制して当該第1弾性体のヒステリシスを低減化すると共に、複数の第2弾性体が各入力プレートに摺接することによる摩擦抵抗の発生を抑制することができる。加えて、各入力プレートの無端状の繋ぎ部がリブとして機能することから、それぞれ複数の第1および第2収容窓が形成されると共にエンジンからのトルクが伝達される入力プレートの強度を良好に確保することが可能となる。
【0072】
また、前記出力プレート(15)は、外周部から周方向に間隔をおいて前記径方向における外側に突出するように形成された複数の突出部(15e)を含んでもよく、前記サンギヤ(15)の外歯(15t)は、前記出力プレート(15)の隣り合う前記突出部(15e)の周方向における間に形成されてもよく、前記出力プレート(15)の前記突出部(15e)の各々には、前記第2保持窓(15wo)が形成されてもよく、前記2枚の入力プレート(12,13)の互いに対向する前記ピニオンギヤ支持部(12p,13p)同士が前記連結部材(90)により連結されてもよく、前記連結部材(90)と前記突出部(15e)の周方向における端部とが当接すると、前記入力要素(11)と前記出力要素(15)との相対回転が規制されてもよい。このように、2枚の入力プレートを連結する連結部材と出力プレートの突出部とにより入力要素と出力要素との相対回転を規制するストッパを構成することで、当該ストッパの設置に伴うダンパ装置の大型化を抑制することが可能となる。
【0073】
更に、前記回転要素は、中間要素(14)を含んでもよく、前記第1弾性体は、それぞれ前記入力要素(11B)と前記中間要素(14)との間でトルクを伝達する複数の入力側弾性体(SP11)と、それぞれ前記中間要素(14)と前記出力要素(15B)との間でトルクを伝達する複数の出力側弾性体(SP12)とを含んでもよく、前記第1回転要素は、前記中間要素(14)であってもよく、前記第2回転要素は、前記入力要素(11B)であってもよい。かかるダンパ装置では、回転慣性質量ダンパと出力要素に連結される要素との間に出力側弾性体が介在することから、出力要素に連結される要素の慣性モーメントから定まる固有振動数に対する回転慣性質量ダンパ全体の慣性モーメントの影響を低減化することが可能となる。
【0074】
また、前記中間要素は、外周に形成された前記サンギヤ(14t)と、周方向に間隔をおいて配設されると共に、それぞれ前記第2弾性体(SP2)を保持する複数の保持窓(14w)とを含む環状の中間プレート(14)であってもよく、前記出力要素は、前記中間プレート(14)により包囲される出力プレート(15B)を含んでもよく、前記入力要素(11B)は、前記ダンパ装置の軸方向に沿って互いに対向すると共に、前記中間プレート(14)および前記出力プレート(15B)を挟み込むように連結部材(90)を介して互いに連結される2枚の入力プレート(12B,13B)を含んでもよく、前記入力プレート(12B,13B)は、周方向に間隔をおいて配設されると共に、それぞれ対応する前記入力側弾性体(SP11)および前記出力側弾性体(SP12)を収容する複数の第1収容窓(12wi,13wi)と、それぞれ前記ピニオンギヤ(23)に挿通されたピニオンシャフト(24)の一端を支持する複数のピニオンギヤ支持部(12p,13p)と、それぞれ対応する前記第1収容窓(12wi,13wi)の前記径方向における外側に位置するように隣り合う前記ピニオンギヤ支持部(12p,13p)の周方向における間に形成され、それぞれ前記第2弾性体(SP2)よりも長い周長を有すると共に対応する該第2弾性体(SP2)を収容する複数の第2収容窓(12wo,13wo)とを含んでもよく、前記入力プレート(12B,13B)の外周部は、前記複数のピニオンギヤ支持部(12p、13p)および前記複数の第2収容窓(12wo,13wo)の前記径方向における外側に位置する部分を含むように環状に形成されると共に、前記出力プレート(15B)から離間するように前記第1および第2収容窓(12wi,13wi,12wo,13wo)を含む内周部(12i,13i)から前記軸方向にオフセットされてもよく、前記複数のピニオンギヤ支持部(12p、13p)および前記複数の第2収容窓(12wo,13wo)に沿って延びる無端状の繋ぎ部(12r,13r)を介して前記内周部(12i,13i)に連なってもよい。このように、第2弾性体を中間プレートに保持させることで、第2弾性体に遠心力が作用した際に、複数の第2弾性体が各入力プレートに摺接することによる摩擦抵抗の発生を抑制することができる。加えて、入力プレートの無端状の繋ぎ部がリブとして機能することから、それぞれ複数の第1および第2収容窓が形成されると共にエンジンからのトルクが伝達される入力プレートの強度を良好に確保することが可能となる。
【0075】
更に、前記中間プレート(14)は、外周部から周方向に間隔をおいて前記径方向における外側に突出するように形成された複数の突出部(14e)と、内周部から周方向に間隔をおいて前記径方向における内側に突出すると共に隣り合う前記入力側弾性体(SP11)および前記出力側弾性体(SP12)との間で両者の端部に当接する複数の弾性体当接部(14ci)とを含んでもよく、前記サンギヤ(14)の外歯(14t)は、前記中間プレート(14)の隣り合う前記突出部(14ci)の周方向における間に形成されてもよく、前記中間プレート(14)の前記突出部(14e)の各々には、前記保持窓(14w)が形成されてもよく、前記2枚の入力プレート(12B,13B)の互いに対向する前記ピニオンギヤ支持部(12p,13p)同士が前記連結部材(90)により連結されてもよく、前記連結部材(90)と前記突出部(14e)の周方向における端部とが当接すると、前記入力要素(11B)と前記中間要素(14)との相対回転が規制されてもよい。このように、2枚の入力プレートを連結する連結部材と中間プレートの突出部とで入力要素と中間要素との相対回転を規制するストッパを構成することで、当該ストッパの設置に伴うダンパ装置の大型化を抑制することが可能となる。
【0076】
また、前記出力要素(15,15B)は、変速機(TM)の入力軸(IS)に作用的(直接または間接的)に連結されてもよい。
【0077】
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記発明を実施するための形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。