特許第6846541号(P6846541)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6846541移動式クレーンのブーム旋回角度検出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6846541
(24)【登録日】2021年3月3日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】移動式クレーンのブーム旋回角度検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/22 20060101AFI20210315BHJP
   B66C 23/94 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   G01B21/22
   B66C23/94 D
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-558816(P2019-558816)
(86)(22)【出願日】2017年12月14日
(86)【国際出願番号】JP2017044994
(87)【国際公開番号】WO2019116522
(87)【国際公開日】20190620
【審査請求日】2020年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148380
【氏名又は名称】株式会社前田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】徳留 慎哉
(72)【発明者】
【氏名】和田 光章
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 孝久
【審査官】 梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−176650(JP,A)
【文献】 特開2002−235499(JP,A)
【文献】 特開昭56−75384(JP,A)
【文献】 特開平6−74751(JP,A)
【文献】 特開平9−142789(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102793992(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/00 − 21/32
B66C 13/00 − 15/06
B66C 19/00 − 23/94
E02D 29/045 − 29/077
E02F 9/00 − 9/18
E02F 9/24 − 9/28
E21D 11/00 − 11/40
E21D 13/00 − 19/06
E21D 23/00 − 23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンブームの旋回格納位置からの旋回角度を検出する移動式クレーンのブーム旋回角度検出装置において、
前記クレーンブームの側に取り付けたリングギヤに旋回力を伝達する下部走行体の側の旋回減速機の出力要素であるピニオンギヤの軸端に、一体回転するように同軸に取り付けた旋回角度検出用ギヤと、
前記旋回角度検出用ギヤの回転量を検出する旋回角度検出用近接センサと、
前記クレーンブームの前記旋回格納位置を検出する旋回格納位置センサと、
前記旋回角度検出用近接センサによって検出される前記回転量に基づき前記クレーンブームの旋回量を演算する旋回量演算部、この旋回量に基づき前記旋回角度を演算する旋回角度演算部、および、前記旋回格納位置センサによって前記旋回格納位置が検出されると前記旋回角度を0度にリセットする旋回角度0点調整部を備えたコントローラと、
を有しており、
前記旋回角度検出用近接センサおよび前記旋回格納位置センサは、前記リングギヤの外周側において、前記旋回角度検出用ギヤを挟み、前記リングギヤの外周面に沿った方向に隣接配置されており、
前記旋回角度検出用ギヤ、前記旋回角度検出用近接センサおよび前記旋回格納位置センサは、前記下部走行体に取り付けた防塵カバーによって覆われている移動式クレーンのブーム旋回角度検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローラクレーン等の移動式クレーンに関し、特に、クレーンブームの旋回角度を検出するブーム旋回角度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クローラクレーン等の移動式クレーンには安全装置が備わっている。安全装置は、クレーン作業状態が安全作業領域を超えた場合に強制的にクレーンを自動停止して、転倒等を未然に防止する。クレーンの安定性は、クレーンブームの旋回角度により異なり、能力を十分に発揮させるためには、クレーンブームの旋回角度を検出する必要がある。
【0003】
クレーンにおけるブーム旋回角度検出装置は、例えば特許文献1〜3に記載されている。これらの特許文献に記載のブーム旋回角度検出装置では、クレーンブームが搭載されているブーム旋回台と下部走行体との間に配置されている旋回ベアリングに設けたリングギヤの回転量を検出するために、リングギヤにセンサギヤをかみ合わせている。あるいは、リングギヤに近接センサを対向配置している。これらのセンサによって検出されるリングギヤの回転量に基づき、上部旋回体の旋回角度を演算している。また、特許文献1においては、基準突起と、これを検出するための基準位置センサを配置して、基準位置からの旋回角度を得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−74751号公報
【特許文献2】特開平9−142789号公報
【特許文献3】特開2007−176650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のブーム旋回角度検出装置には次のような解決すべき課題がある。まず、ブーム旋回台に旋回力を伝達する伝達部品であるリングギヤあるいは、これに直接かみ合わせたセンサギヤには、旋回力伝達機構に加わる振動、撓み等が直接に作用し、このような振動、撓み等に起因して、検出精度が低下するおそれがある。また、リングギヤ等にかみ合いながら回転するセンサギヤに摩耗が生じ、これに起因して検出精度が低下するおそれがある。
【0006】
また、リングギヤにかみ合うセンサギヤを配置する場合には、センサギヤを支持するための軸受機構等を配置する必要があり、部品点数が増加し、検出機構が複雑になり、設置場所を確保できないおそれもある。
【0007】
さらに、リングギヤ、あるいは、これにかみ合うピニオンギヤ等の回転量を、近接センサによって検出する場合には、リングギヤに塗布されているグリース、リングギヤに生じる振動・摩耗等に起因して、検出精度が低下するおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、このような点に鑑みて、少ない部品点数で構成でき、設置スペースを多く必要とすることなく、精度良くブーム旋回角度を検出可能な移動式クレーンのブーム旋回角度検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、クレーンブームの旋回格納位置からの旋回角度を検出する移動式クレーンのブーム旋回角度検出装置において、
前記クレーンブームの側に取り付けたリングギヤに旋回力を伝達する下部走行体の側の旋回減速機の出力要素であるピニオンギヤの軸端に、一体回転するように同軸に取り付けた旋回角度検出用ギヤと、
旋回角度検出用ギヤの回転量を検出する旋回角度検出用近接センサと、
クレーンブームの旋回格納位置を検出する旋回格納位置センサと、
旋回角度検出用近接センサによって検出される回転量に基づきクレーンブームの旋回量を演算する旋回量演算部、この旋回量に基づき旋回角度を演算する旋回角度演算部、および、旋回格納位置センサによって旋回格納位置が検出されると旋回角度を0度にリセットする旋回角度0点調整部を備えたコントローラと
を有していることを特徴とする。
【0010】
本発明では、クレーンブームの側のリングギヤにかみ合う下部走行体の側のピニオンギヤの一端に旋回角度検出用ギヤが取り付けられ、ピニオンギヤと一体となって回転する旋回用検出ギヤの回転量が旋回角度検出用近接センサによって検出される。旋回角度検出用ギヤは、旋回力伝達機構を構成する部品であるリングギヤ、ピニオンギヤにはかみ合っていない。よって、旋回角度検出用ギヤに、リングギヤ、ピニオンギヤの側からグリース、摩耗粉等の異物が付着しない。また、旋回力伝達系に生じる振動、撓み等が直接に作用することもない。さらには、旋回角度検出用ギヤの検出用の外歯の部分に、かみ合いによって摩耗が生じることもない。
【0011】
したがって、旋回角度検出用近接センサの検出位置を通過する旋回角度検出用ギヤに設けた多数の細かな外歯の間にグリース、異物が付着して、センサ位置を通過する外歯の個数の検出精度が低下する等の弊害を回避できる。また、旋回角度検出用ギヤと、旋回角度検出用近接センサとの間隔を一定に保持できるので、旋回角度検出用ギヤの回転量を精度良く検出できる。さらに、旋回角度検出用ギヤは、旋回力伝達機構の構成部品ではないので、そこに設ける検出用の外歯の数を自由に設定でき、旋回体の旋回角度を所望の分解能で検出することが容易である。これに加えて、角度検出用ギヤは、旋回力伝達機構の構成部品であるピニオンギヤの一端に取り付けてある。旋回角度検出用ギヤを軸受機構等によって独立した位置に設置する場合に比べて、設置スペースを多く必要とせず、また、部品点数も少なくて済む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明を適用可能な小型の移動式クレーンの正面図である。
図2図1の移動式クレーンの作業中の状態の一例の説明図である。
図3図1の移動式クレーンに組み込まれているブーム旋回角度検出装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した移動式クレーンのブーム旋回角度検出装置の一例を説明する。なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の一例を示すものであり、本発明は、実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0014】
(移動式クレーンの例)
図1は本発明を適用可能な小型の移動式クレーンの一例を示す正面図であり、図2はそのクレーン作業中の状態の一例を示す説明図である。移動式クレーン1はクローラからなる下部走行体2を備えている。下部走行体2には、旋回ベアリング3を介して、上部旋回体4が旋回可能な状態で搭載されている。上部旋回体4は、旋回ベアリング3によって下部走行体2に対して旋回可能に支持されたブーム旋回台5と、ブーム旋回台5に搭載されたナックルブーム式のクレーンブーム6とを備えている。
【0015】
クレーンブーム6は、ストレートブーム等、ナックルブーム式以外のものであってもよいことは勿論である。下部走行体2の四隅には4基のアウトリガー7が取り付けられている。下部走行体2の一方の端部には、当該下部走行体2の走行操作レバー8が配置され、下部走行体2の他方の端部には制御盤9およびクレーン操作レバー10が搭載されている。また、移動式クレーン1は、ラジコン操作レバー(図示せず)を用いて遠隔操作することが可能となっている。
【0016】
クレーンブーム6は第1ブーム11および第2ブーム12を備えている。旋回ベアリング3に支持されたブーム旋回台5の旋回中心回りに、第1ブーム11が左右方向に旋回する。ブーム旋回台5と第1ブーム11の間には一対の起伏シリンダ13が架け渡されており、起伏シリンダ13の伸縮によって第1ブーム11の起伏動作が行われる。第1ブーム11の先端部と第2ブーム12の後端部の間は、ナックルブームジョイント機構14によって連結されている。ナックルブームジョイント機構14のシリンダ15を伸縮すると、第1ブーム11に対して第2ブーム12を起伏させることができる。第2ブーム12は多段ブームであり、その軸線方向に伸縮動作を行うことが可能である。
【0017】
図1に示す格納状態からアウトリガー7を、外向きとなるように旋回して張り出して、下部走行体2を接地面から浮き上がらせる。図2に示すように、移動式クレーン1が安定した状態に固定される。この状態で、クレーンブーム6を初期位置である旋回格納位置から左右に旋回させ、クレーンブーム6の起伏、伸長を行って、クレーン作業が行われる。
【0018】
(ブーム旋回角度検出装置)
図3は、上記構成の移動式クレーン1に組み込まれているクレーンブーム6の旋回力伝達機構の構成部品およびブーム旋回角度検出装置の一例を示す説明図である。
【0019】
クレーンブーム6の側に旋回力を伝達する旋回力伝達機構は、下部走行体2に搭載された不図示の油圧モータ、および、油圧モータの回転力を減速して、クレーンブーム6を支持しているブーム旋回台5の側に伝達する不図示の旋回減速機を備えている。図3には、下部走行体2の上端部2aに垂直に配置されている旋回減速機の出力要素であるピニオンギヤ21を示してある。また、旋回力伝達機構は、旋回ベアリング3におけるブーム旋回台5を支持している旋回側部品の円形外周面に一体形成したリングギヤ22を備えている(図3においては外歯形状を一部分のみ示し、それ以外は省略してある。)。リングギヤ22にはピニオンギヤ21がかみ合っており、これらを介して旋回力が伝達される。
【0020】
クレーンブーム6の旋回角度を検出するためのブーム旋回角度検出装置30は、旋回角度検出用ギヤ31と、旋回角度検出用近接センサ32と、旋回格納位置センサであるリミットスイッチ33と、制御盤9(図1参照)に搭載されているコントローラ34を備えている。図3においてはコントローラ34および信号伝達経路(有線あるいは無線)を一点鎖線で示してある。また、下部走行体2の上端部2aに取り付けた防塵カバー35によって、旋回角度検出用ギヤ31、旋回角度検出用近接センサ32およびリミットスイッチ33は覆われている。図3においては、防塵カバー35を二点鎖線で示してある。
【0021】
旋回角度検出用ギヤ31は、旋回力伝達機構のピニオンギヤ21の一方の軸端である上側の軸端に、一体回転するように同軸に固定されている。旋回角度検出用ギヤ31の外周面には一定の間隔で検出用外歯31aが形成されている。
【0022】
旋回角度検出用近接センサ32は、旋回角度検出用ギヤ31に対して、リングギヤ22の外周に沿った方向の隣接位置に配置されている。下部走行体2の上端部に固定したL形の取付け用ブラケット36の上端部に、旋回角度検出用近接センサ32が旋回角度検出用ギヤ31の回転中心に向けて水平に取り付けられている。その先端面32aは、旋回角度検出用ギヤ31の検出用外歯31aに対して微小な間隔を開けて対峙している。旋回角度検出用近接センサ32は、例えば、光学センサであり、その検出位置を横切る検出用外歯31aを検出する。
【0023】
旋回格納位置センサであるリミットスイッチ33は、リングギヤ22の円周方向に沿って、旋回角度検出用ギヤ31に対して、旋回角度検出用近接センサ32とは反対側に隣接配置されている。リミットスイッチ33はクレーンブーム6の旋回格納位置を検出する。旋回格納位置は、クレーンブーム6(ブーム旋回台5)の旋回角度が0度の位置であり、走行状態などにおいて、クレーンブーム6は、旋回格納位置に戻されて格納される。
【0024】
ブーム旋回台5におけるリングギヤ22の上側には、検出用リング37が同軸に取り付けられている。検出用リング37の円形外周面37aに対して、その中心に向かう方向から所定の弾性力を伴って、リミットスイッチ33の作動ロッド33aの先端ローラが押し付けられている。検出用リング37の円形外周面37aには、ブーム旋回台5が旋回格納位置に旋回した状態で、作動ロッド33aの先端ローラが半径方向の内方に嵌り込むV溝37bが形成されている。V溝37bに嵌り込むことで、リミットスイッチ33の作動ロッド33aが作動して、旋回格納位置を表す検出信号が出力される。リミットスイッチ33の検出部として、V溝37bの代わりに突起等を配置してもよいことは勿論である。
【0025】
防塵カバー35は、ブーム旋回台5における検出用リング37の円形外周面37aの上端縁に沿って配置された水平な天板部分35aと、天板部分35aにおける検出用リング37の側に内周縁部を除く、両側および外周側の縁部から直角に下方に延びる側板部分35bとを備えている。下部走行体2の上端部2aの上面に取り付けた防塵カバー35によって、旋回角度検出用ギヤ31、旋回角度検出用近接センサ32、リミットスイッチ33が、ブーム旋回台5の側を向く内周側部分を除き覆い隠されている。
【0026】
次に、コントローラ34は、旋回量演算部41、旋回角度演算部42、および旋回角度0点調整部43として機能する。旋回量演算部41は、旋回角度検出用近接センサ32によって検出される旋回角度検出用ギヤ31の回転量、すなわち、検出された検出用外歯31aの数に基づき、クレーンブーム6の旋回量を演算する。旋回角度演算部42は、演算された旋回量に基づき、クレーンブーム6の旋回角度を演算する。旋回角度は、クレーンブーム6の旋回を開始する時点の旋回格納位置からの旋回角度である。
【0027】
クレーンブーム6を繰り返し旋回させて作業を行う毎に、クレーンブーム6の旋回角度が算出される。演算される旋回角度に誤差が含まれていると、クレーンブーム6の繰り返しの旋回により、誤差が蓄積され、安全上において無視し得ない大きさの検出誤差が生じるおそれがある。本例では、クレーンブーム6が旋回格納位置に戻ると、旋回格納位置センサであるリミットスイッチ33から、旋回角度が0度の旋回格納位置を表す検出信号が出力される。
【0028】
コントローラ34の旋回角度0点調整部43は、この検出信号を受け取ると、それまでに演算によって算出されている旋回角度を0度にリセットする旋回角度の0点調整を行う。このように旋回角度をリセットすることで、誤差を除去して精度よくクレーンブーム6の旋回角度の検出動作を行うことができる。
図1
図2
図3