(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなファン装置は、上面側の空気吸込口から機器筐体の内部の空気を吸い込むと同時に、下面側の空気吸込口から機器筐体の底面に形成された吸気口からの外気を吸い込むことができる構成である。ところで、近年、ノート型PCのような電子機器は、薄型化が急速に進んでいる。このため、ファン装置は、上面側の空気吸込口と、その上のキーボード装置との間に空気が流通する隙間を確保することが難しく、上面側の空気吸込口が充分に機能しにくい場合がある。
【0005】
そこで、このような問題を考慮し、例えばキーボード装置に上下方向の貫通孔を形成し、この貫通孔からファン装置の上面側の空気吸込口に外気を吸込む構成も考えられる。ところが、この構成では、例えばユーザがキーボード装置の上から飲料等の液体をこぼした際、この液体が上記貫通孔を介して機器筐体内に浸入し、マザーボード等に影響を及ぼす懸念がある。
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、冷却性能と防水性能とを両立することができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係る電子機器は、電子機器であって、内部に電子基板を有する機器筐体と、前記機器筐体の上面側に設けられたキーボード装置と、下面に第1空気取込口が形成され、上面に第2空気取込口が形成され、側面に空気排出口が形成されたファン筐体と、該ファン筐体の内部で回転するブレード部と、を有し、前記機器筐体の内部で該機器筐体の底板と前記キーボード装置の下面との間に配置されたファン装置と、を備え、前記底板は、前記第1空気取込口と重なる位置に第1吸気口を有し、前記キーボード装置は、前記第2空気取込口と重なる位置に、該キーボード装置の上下方向に空気を通過させる第2吸気口を有し、さらに、前記第1空気取込口の少なくとも一部を囲むように設けられ、前記ファン筐体の下面と前記底板の内面との間に介在し、前記第1空気取込口と前記電子基板との間を仕切る第1止水材を備える。
【0008】
このような構成によれば、機器筐体の下面の第1吸気口及び上面の第2吸気口から内部のファン装置に外気を効率よく取り入れることができる。しかも、電子機器は、上面の第2吸気口から誤って飲料等の液体が流入した場合であっても、この液体はファン筐体を通過して下面の第1吸気口へと排水される。この際、液体が溜まり易いファン筐体の下部は、第1止水材によって機器筐体内の他の空間、特に電子基板と仕切られている。このため、流入した液体によって電子基板が破損することを抑制できる。その結果、電子機器は、冷却性能と防水性能を両立することができる。
【0009】
前記第2空気取込口の少なくとも一部を囲むように設けられ、前記ファン筐体の上面と前記キーボード装置の下面との間に介在し、前記第2空気取込口と前記電子基板との間を仕切る第2止水材を備える構成としてもよい。
【0010】
前記ファン装置の前記空気排出口に設けられた冷却フィンと、少なくとも前記冷却フィンの下面と前記底板の内面との間に介在する第3止水材と、を備える構成としてもよい。
【0011】
前記キーボード装置は、複数のキートップと、各キートップ間を仕切る網目状のフレームと、を有し、前記第2吸気口は、前記フレームの左右方向に沿って延在する横枠部と重なる位置で左右方向に延びた長孔を含む構成としてもよい。
【0012】
前記キーボード装置は、前記フレームに対して下面側から上面側に向かって締結された複数のねじで固定されており、前記第2吸気口の少なくとも一部は、隣接する前記ねじと前記ねじとの間に設けられた構成としてもよい。
【0013】
前記ファン装置の下面を形成する下板は、前記第1空気取込口の周縁部が下方へと折れ曲がった折曲部を有する構成としてもよい。
【0014】
前記底板の内面には、前記第1吸気口を囲むように延在し、上方に突出したリブが設けられ、前記リブは、前記第1空気取込口に対して前記折曲部の外側で該折曲部を囲むように隣接して設けられ、互いの先端面同士が上下方向にオーバーラップした構成としてもよい。
【0015】
前記第1止水材は、前記第1空気取込口に対して前記リブの外側に配置された構成としてもよい。
【0016】
前記第1止水材は、前記折曲部の先端面と前記底板の内面との間に挟まれた構成としてもよい。
【0017】
前記底板の内面には、前記第1吸気口を囲むように延在し、上方に突出したリブが設けられ、前記第1止水材は、前記ファン筐体の下面を形成する下板と前記リブとの間に挟まれた構成としてもよい。
【0018】
前記第1止水材は、前記ファン筐体の下面を形成する下板と前記リブとの間に挟まれた構成されてもよい。
【0019】
本発明の第2態様に係る電子機器は、電子機器であって、内部に電子基板を有する機器筐体と、前記機器筐体の上面側に設けられたキーボード装置と、下面に第1空気取込口が形成され、上面に第2空気取込口が形成され、側面に空気排出口が形成されたファン筐体と、該ファン筐体の内部で回転するブレード部と、を有し、前記機器筐体の内部で該機器筐体の底板と前記キーボード装置の下面との間に配置されたファン装置と、を備え、前記底板は、前記第1空気取込口と重なる位置に第1吸気口を有し、前記キーボード装置は、前記第2空気取込口と重なる位置に、該キーボード装置の上下方向に空気を通過させる第2吸気口を有し、前記ファン装置の下面を形成する下板と、前記底板の内面との間に介在する止水壁を有する。
【0020】
このような構成によれば、機器筐体の下面の第1吸気口及び上面の第2吸気口から内部のファン装置に外気を効率よく取り入れることができる。しかも、電子機器は、上面の第2吸気口から誤って飲料等の液体が流入した場合であっても、この液体はファン筐体を通過して下面の第1吸気口へと排水される。この際、液体が溜まり易いファン筐体の下部では、ファン装置の下板と機器筐体の底板との間の隙間が止水壁によって遮蔽されている。このため、流入した液体によって電子基板が破損することを抑制できる。その結果、電子機器は、冷却性能と防水性能を両立することができる。
【0021】
前記止水壁は、前記下板における前記第1空気取込口の周縁部が下方へと折れ曲がった折曲部で構成されてもよい。
【0022】
前記止水壁は、前記底板の内面に設けられ、前記第1吸気口を囲むように延在し、上方に突出したリブで構成されてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の上記態様によれば、冷却性能と防水性能とを両立することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る電子機器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
図1は、一実施形態に係る電子機器10の平面図である。電子機器10は、キーボード装置12が搭載された機器筐体14と、ディスプレイ16が搭載されたディスプレイ筐体18と、を備える。電子機器10は、機器筐体14とディスプレイ筐体18とをヒンジ20で相対的に回動可能に連結したクラムシェル型のノート型PCである。
図1は、ディスプレイ筐体18を機器筐体14から開いて使用形態とした状態を示す。電子機器10は、クラムシェル型以外の電子機器でもよい。
【0027】
以下、機器筐体14及びこれに搭載されたキーボード装置12について、ディスプレイ16を見ながらキーボード装置12を使用するユーザから見た方向を基準とし、手前側を前、奥側を後、厚み方向を上下、幅方向を左右と呼んで説明する。
【0028】
機器筐体14の内部には、電子基板21及びファン装置22が収容されている。電子基板21は、当該電子機器10のマザーボードであり、CPU(中央演算処理装置)21aの他、各種半導体チップが実装されている。ファン装置22は、CPU21a等を冷却するための送風ファンである。機器筐体14の内部には、さらに、図示しないハードディスク装置やバッテリ装置等が収容されている。
【0029】
キーボード装置12は、機器筐体14の上面14aに設けられている。キーボード装置12は、複数のキースイッチ24を有する。キーボード装置12は、各キースイッチ24の操作面となるキートップ24aの周囲をフレーム(アイソレーションフレーム)26で仕切ったアイソレーション型のキーボード装置である。
【0030】
フレーム26は、樹脂や金属等で形成されている。フレーム26は、網目状の枠体である。本実施形態のフレーム26は、機器筐体14の上面14aを形成するカバー部材27と一体成形されている。フレーム26は、カバー部材27と別体に構成されてもよい。フレーム26は、各キートップ24aが上下動可能に挿入された複数の孔部26aを有する。フレーム26は、左右方向に延びた横枠部26bと、前後方向に延びた縦枠部26cとで囲まれた部分が孔部26aとなる。
【0031】
ディスプレイ筐体18は、前面にディスプレイ16を有する。ディスプレイ16は、例えば液晶ディスプレイである。ディスプレイ筐体18は、下端部が機器筐体14の後端部とヒンジ20を介して連結されている。
【0032】
図2は、ファン装置22の斜視図である。
図2に示すように、ファン装置22は、ファン筐体28と、回転部29と、ブレード部(インペラ部)30と、を備える。ファン装置22は、回転部29が図示しないモータによって回転することで、その外周側に設けられたブレード部30が旋回する遠心ファンである。
【0033】
ファン筐体28は、回転部29及びブレード部30を収納する。ファン筐体28は、下面を構成する下板32と、上面を構成する上板33と、側面を構成する側壁板34とを有する。各板32〜34は、金属板或いは樹脂板である。側壁板34は、上板33と下板32との間に形成される空間の側部を覆う湾曲板である。
【0034】
下板32は、矩形板の一側を円形状に形成した略弾丸形状の薄板である。下板32の中央には、第1空気取込口32aが形成されている(
図4参照)。第1空気取込口32aは、回転部29と同軸に形成された円形の孔部であり、回転部29及びブレード部30の一部を露出させている。
【0035】
上板33は、下板32と同一の外形形状を有する。上板33の中央には、第2空気取込口33aが形成されている。第2空気取込口33aは、第1空気取込口32aと同様な形状及び配置となっている。第2空気取込口33aは、第1空気取込口32aと異なる形状又は配置でもよい。空気取込口32a,33aは、ブレード部30の回転によってファン筐体28の外部の空気を内部へと取込むための開口である。
【0036】
ファン筐体28は、円形ではなく直線状に形成された一側面に側壁板34が配設されず、この側面が空気排出口35となる。空気排出口35には、冷却フィン36が設けられている。冷却フィン36は、ヒートパイプ36aを介してCPU21aと熱的に接続されている。これによりファン装置22は、ヒートパイプ36aによって運ばれたCPU21aの熱を空気排出口35からの送風によって外部に排出する。
図1及び
図4に示すように、空気排出口35及び冷却フィン36は、機器筐体14の一側面に形成された排気口14bに面している。
【0037】
図3は、機器筐体14の内部構造を模式的に示す要部拡大分解斜視図である。
図3では、キースイッチ24、フレーム26、ベースプレート40、メンブレンシート41等の図示を省略している。
図4は、機器筐体14の内部構造を模式的に示す要部拡大側面断面図である。
図5は、キーボード装置12の底面図である。
図6は、フレーム26の一部を拡大した斜視図である。
【0038】
図3及び
図4に示すように、機器筐体14は、底面を形成する底板38の内面38aと、キーボード装置12の下面12aとの間にファン装置22を収容した構成である。電子基板21は、機器筐体14の内部でファン装置22を避けるように設けられている(
図1も参照)。底板38には、第1吸気口38bが形成されている。第1吸気口38bは、機器筐体14内に底面から空気Aを導入する開口であり、例えば複数本のスリット状の孔部を並列した構成である。第1吸気口38bは、平面視でファン筐体28の第1空気取込口32aと重なる位置に近接して設けられ、第1空気取込口32aと対向している。
【0039】
図4に示すように、キーボード装置12は、複数のキースイッチ24と、ベースプレート40と、メンブレンシート41と、導光板42とを備える。
【0040】
各キースイッチ24は、キートップ24aと、ガイド機構24bと、ラバードーム24cとを有する。ガイド機構24bは、キートップ24aをベースプレート40の上面40a側で上下動可能に支持するものである。ガイド機構24bは、キートップ24aの下面とベースプレート40の上面30aとの間を連結するシザー機構である。ラバードーム24cは、シリコーンゴム等の可撓性を有する弾性材料で形成されたドーム形状部材である。ラバードーム24cは、メンブレンシート41とキートップ24aとの間に配設されている。ラバードーム24cは、キートップ24aが押下された場合にメンブレンシート41を押圧すると共に、キートップ24aの押下操作が解除された際にキートップ24aを元の位置に復帰させる弾性部材である。
【0041】
ベースプレート40は、各キースイッチ24やフレーム26の取付板である。ベースプレート40は、薄いステンレス板やアルミニウム板等、金属製の板状部材に切り起こし成形や打ち抜き成形を施したものである。
【0042】
メンブレンシート41は、ベースプレート40の上面40aに積層されている。メンブレンシート41は、例えば押圧された場合に接点が閉じる三層構造のスイッチシートである。メンブレンシート41は、例えば固定接点及び可動接点が重なる位置が押圧された場合に、固定接点と可動接点とが密着することで接点を閉じる。メンブレンシート41は各所に貫通孔を有し、この貫通孔を通してガイド機構24bやフレーム26がベースプレート40の上面40aに支持される。
【0043】
導光板42は、ベースプレート40の下面40bに積層されている。導光板42は、例えばPET、ポリカーボネート、アクリル等の透光性を有する樹脂製のプレートやシートである。導光板42には、光源モジュール44が取り付けられている(
図5参照)。光源モジュール44は、例えば導光板42の左右中央部に取り付けられ、複数の光源44aが前後方向に並んでいる。光源モジュール44は、例えばフレキシブル基板で形成された配線44bを介して電子基板21と接続される。光源44aは、例えばLED素子である。導光板42は、光源44aから発せられた光を左右方向に導き、光反射面で反射して各キートップ24aを裏面から照射する。導光板42は省略されてもよく、この場合は導光板42に代えて防水シートを用いるとよい。
【0044】
図5に示すように、キーボード装置12は、下面12aから上面に向かって締結された複数のねじ45によってフレーム26に固定される。
図5中の参照符号41bは、メンブレンシート41を電子基板21に接続するためのフレキシブル基板等で形成された配線である。
【0045】
図4に示すように、キーボード装置12には、上下方向に貫通した第2吸気口46が形成されている。第2吸気口46は、キーボード装置12の上下方向に空気Aを通過させる開口である。第2吸気口46は、平面視でファン筐体28の第2空気取込口33aと重なる位置に近接して設けられ、第2空気取込口33aと対向している。より具体的には、第2吸気口46は、ファン筐体28の第2空気取込口33aの直上で開口し、第2空気取込口33aの開口面積に対して、例えば30%以上の開口率に設定されることが望ましい。第2吸気口46は、上から下に向かって順に、隣接するキートップ24a,24a間の隙間と、メンブレンシート41に形成された孔部41aと、ベースプレート40に形成された孔部40cと、導光板42に形成された孔部42aとが連通することで構成されている。導光板42に代えて防水シートを用いた場合は、防水シートに孔部42aを形成すればよい。
【0046】
図5に示すように、導光板42は、前後方向に並んだ各光源44aから照射された光を左右方向に導光することで、各キートップ24aを発光させる(
図5中に1点鎖線で示す光Lを参照)。つまり光Lは、平面視でフレーム26の各縦枠部26cを横切るように導光され、各キートップ24aを下から発光させる。そこで、本実施形態の場合、導光板42は、フレーム26の横枠部26bの下に重なる位置にのみ、左右方向に延在した長孔である孔部42aが形成されている(
図5参照)。これにより孔部42aが光Lの導光を遮断し、孔部42aよりも光Lの導光方向で下流側のキートップ24aが発光しない状態を回避できる。
【0047】
また、上記の通り、導光板42は、複数のねじ45が貫通しているため、ねじ45もフレーム26の横枠部26bの下に重なる位置にのみ配置し、一部のキートップ24aが発光しない状態を回避している。つまり、横枠部26bの下には、ねじ45も配置される。このため、本実施形態では、孔部42aはねじ45も避けた位置、例えば左右方向に隣接するねじ45,45間に孔部42aを形成している(
図5参照)。これにより電子機器10では、キーボード装置12を固定するねじ45及び孔部42aのいずれもが導光板42での導光を阻害せず、且つ孔部42aの開口面積を最大限に確保できている。
【0048】
このような電子機器10では、ファン装置22は、
図4に示すように、機器筐体14の下側の空気Aを底板38の第1吸気口38bから第1空気取込口32aを介して吸気する。同時に、ファン装置22は、機器筐体14の上側の空気Aをキーボード装置12の第2吸気口46から第2空気取込口33aを介して吸気する。そして、ファン装置22は、各空気取込口32a,33aから吸い込んだ空気Aを空気排出口35及び排気口14bを介して機器筐体14の外部に排出する際、冷却フィン36を空冷する。従って、当該電子機器10は、ファン装置22が機器筐体14の上下面から十分に空気Aを取り込むことができ、高い冷却効率が得られる。特に、当該電子機器10は、キーボード装置12に第2吸気口46を設け、機器筐体14の上から空気を内部に取り込むことができる。このため、当該電子機器10は、機器筐体14を可及的に薄型化し、ファン筐体28の上板33とキーボード装置12の下面12aとの間にほとんど隙間がなく、ここから第2空気取込口33aに機器筐体14内の空気を良好に取り込むことができない構成であっても高い冷却効率を得ることができる。
【0049】
ここで、本実施形態のフレーム26は、
図4及び
図6に示すように、メンブレンシート41の上面に当接する下部に切欠部26dが形成されている。切欠部26dは、第2吸気口46に対応する位置に設けられている。これにより当該電子機器10は、第2吸気口46での空気Aの流通をフレーム26が邪魔することが抑制され、一層高い冷却効率が得られる。
図6では、フレーム26は、横枠部26bに切欠部26dを形成し、縦枠部28cには切欠部26dを形成していない構成を例示している。しかしながら、切欠部26dは、導光板42での光Lの導光とは直接的な関係がないため、縦枠部28cにも設けてもよい。
【0050】
このように電子機器10は、キーボード装置12に上下方向に貫通した第2吸気口46を有する。このため、例えばユーザが誤ってキーボード装置12上に飲料等の液体をこぼした場合、第2吸気口46が液体流路となって機器筐体14の内部が浸水する懸念がある。機器筐体14内が浸水すると、電子基板21等の電子部品が破損や短絡する懸念がある。
【0051】
そこで、当該電子機器10は、機器筐体14内の電子基板21やその他の電子部品への浸水を防止する防水構造50を備える。
図3及び
図4に示すように、本実施形態の防水構造50は、第1止水材52と、第2止水材53と、第3止水材54と、を備える。
【0052】
第1止水材52は、例えば略U字形状を成した棒状のシール材である(
図3参照)。第1止水材52は、所定の止水効果は発揮すれば材質は問わないが、柔軟な材質であることが好ましい。本実施形態では、第1止水材52として、例えばEPDM等の発泡体の一面に粘着テープを貼り付けた気密防水パッキンと呼ばれるスポンジ状のシール材を用いている。
【0053】
第1止水材52は、ファン筐体28の下板32の表面と底板38の内面38aとの間に介在し、両面に密着する。これにより第1止水材52は、機器筐体14の内部において第1吸気口38b及び第1空気取込口32aと、電子基板21等との間を仕切る壁となる。第1止水材52は、内面38a又は下板32に貼り付けられることで、底板38の取外しを邪魔しない。第1止水材52は、柔軟な材質であるため、底板38を過度に押圧し、底板38が撓みや反りを生じることもない。
図3に示す構成例では、第1止水材52は、排気口14b側のカバー部材27(
図4参照)の部分にU字の開口側を配置し、このカバー部材27も利用した止水構造を構築している。第1止水材52は、第2止水材53と同様なリング形状に構成されてもよい。
【0054】
第2止水材53は、第1止水材52と同一又は類似の材質で構成されたリング形状のシール材である。第2止水材53は、ファン筐体28の上板33の表面とキーボード装置12の下面12aとの間に介在し、両面に密着する。第2止水材53は、機器筐体14の内部において第2吸気口46及び第2空気取込口33aと、電子基板21等との間を仕切る壁となる。第2止水材53は、例えば下面12a及び上板33の両方に貼り付けられる。第2止水材53は、第1止水材52と同様なU字形状とし、第1止水材52と同様な止水構造を構築してもよい。
【0055】
第3止水材54は、第1止水材52及び第2止水材53と同一又は類似の材質で構成された矩形リング状のシール材である。第3止水材54は、冷却フィン36の四周表面の排気口14b側の縁部に貼り付けられている。冷却フィン36の下面に設けた第3止水材54は、底板38の内面38aと密着している(
図4参照)。冷却フィン36の上面及び前後側面に設けた第3止水材54は、カバー部材27の内面に密着している(
図4参照)。
【0056】
従って、このような防水構造50によれば、
図4に示すように、キーボード装置12の上からの液体Fが第2吸気口46へと浸入した際、この液体Fが機器筐体14の内部でファン装置22の外側の空間に浸入し、電子基板21等が浸水することを抑制できる。すなわち、第2吸気口46から浸入した液体Fは、第2止水材53の止水作用下に第2空気取込口33aからファン筐体28内へと吸い込まれる。この液体Fの一部は、第1止水材52の止水作用下に第1空気取込口32a及び第1吸気口38bを介して機器筐体14の外部に排水される。つまり電子機器10は、第2吸気口46、第2空気取込口33a、ブレード部30、第1空気取込口32a、第1吸気口38bが液体Fの排水経路としても機能する。また、液体Fの残部は、ブレード部30による送風によって空気排出口35及び冷却フィン36へと流通し、第3止水材54の止水作用下に排気口14bから機器筐体14の外部に排水される。
【0057】
すなわち第1止水材52は、第1空気取込口32aからファン筐体28外に流出した液体Fが、下板32と底板38との間の隙間を通って、機器筐体14内でファン筐体28以外の空間に浸入することを抑制する。また、第2止水材53は、第2吸気口46から流出した液体Fが、ファン筐体28の上板33とキーボード装置12の下面12aとの間の隙間を通って、機器筐体14内でファン筐体28以外の空間に浸入することを抑制する。さらに、第3止水材54は、冷却フィン36まで飛ばされた液体Fが、冷却フィン36と排気口14bが形成されたカバー部材27の内面との間の隙間を通って、機器筐体14内でファン筐体28以外の空間に浸入することを抑制する。
【0058】
従って、当該電子機器10は、吸気口38b,46を用いたファン装置22による高い冷却性能と、第1止水材52等による防水性能とを両立することができる。なお、防水構造50の外側で保護される電子部品は、マザーボードである電子基板21の他、例えばソリッドステートドライブ(SSD)、各種入出力ポートや接続端子等を例示できる。本実施形態の電子機器10は、
図3及び
図4に示す構成で実際にキーボード装置12の上から数100ccの液体Fをかけてみたが、十分な防水効果が得られ、電子基板21等が故障することがなかった。なお、止水材52〜54は、防水だけでなく、防塵効果も期待できるため、吸気口38b,46から侵入した塵や埃が電子基板21等に影響することも抑制できる。
【0059】
しかも当該電子機器10は、上から下に向かって、第2吸気口46、第2空気取込口33a、第1空気取込口32a、第1吸気口38bが一直線上に配置されている。このため、第2吸気口46から流入した液体Fは、周囲が止水材52,53等で止水された状態で底面の第1吸気口38bから円滑に排水される。
【0060】
図4から明らかなように、第2吸気口46から浸入した液体Fは、重力により、その大部分がファン装置22の下部へと移動し、第1空気取込口32aや底板38の内面38aの周辺に溜まる。そこで、防水構造50は、少なくとも第1止水材52を有していれば、ある程度の量の液体Fに対する防水効果は得られるため、第2止水材53や第3止水材54は省略してもよい。また、空気排出口35に送られる液体Fは少量と想定されるため、防水構造50は、第3止水材54のみを省略してもよい。
【0061】
なお、電子機器10では、ファン装置22には液体Fが流入する。しかしながら、一般的なファン装置は、ある程度の防水性を持っており、大きな問題となることは少ない。また、防水仕様のファン装置を用いることで浸入した液体Fによってファン装置22が故障することをより確実に抑制できる。ファン装置22の防水性能をさらに高めるため、例えばファン装置22に搭載された基板をUVコーティングや撥水コーティング等で防水しておくことも有効である。
【0062】
図7は、第1変形例に係る防水構造50Aを備えた機器筐体14の一部を拡大した斜視断面図である。
図7に示す防水構造50Aは、
図4に示す防水構造50と比べて、第1止水材52の周辺部の構成が異なる。この防水構造50Aは、互いに噛合するように並設された折曲部32b及びリブ38cを有する。
【0063】
折曲部32bは、ファン筐体28の下板32の第1空気取込口32aの周縁部が下方へと折れ曲がったR形状部であり、第1空気取込口32aの周方向に延在している。下板32が金属製の場合、折曲部32bは、第1空気取込口32aの周縁部を下方へ折り曲げて形成するとよい。下板32が樹脂製の場合、折曲部32bは、下板32の成形時に同時に形成するとよい。
【0064】
リブ38cは、底板38の内面38aから上方に突出した突起であり、第1吸気口38bを囲むようにリング状に延在している。リブ38cは、底板38と一体成形されてもよいし、別体で固定されてもよい。リブ38cは、第1空気取込口32aに対して折曲部32bの外側で折曲部32bを囲むように隣接して設けられている。折曲部32b及びリブ38cは、互いの先端面同士が、上下方向にオーバーラップしている。第1止水材52は、折曲部32bの先端面と底板38の内面38aとの間に挟持されている。
【0065】
従って、防水構造50Aでは、折曲部32bとリブ38cが上下から噛合いするように配置されることで、第1空気取込口32a及び第1吸気口38bを囲む止水壁を形成している。このため、防水構造50Aは、
図4に示す防水構造50に比べて、特に液体Fが溜まり易いファン装置22の下部での止水性能が向上する。なお、防水構造50Aは、例えば折曲部32bとリブ38cとを互いに当接又は極めて近接して配置することで、第1止水材52を省略することもできる。また、防水構造50Aは、止水材52、53等の有無に関わらず、止水壁として折曲部32bのみ又はリブ38cのみを用いてもよい。この構成によっても、液体Fが溜まり易いファン装置22の下部において、下板32と底板38との間の隙間が折曲部32b又はリブ38cで遮蔽され、防水性能が得られる。
【0066】
図8は、第2変形例に係る防水構造50Bを備えた機器筐体14の一部を拡大した斜視断面図である。
図8に示す防水構造50Bは、
図7に示す防水構造50Aと比べて、第1止水材52の配置が異なる。この防水構造50Bの第1止水材52は、第1空気取込口32aに対してリブ38cよりも外側に配置され、内面38aと下板32との間に介在している。これにより防水構造50Bでは、折曲部32b及びリブ38cによる止水壁の外側に、さらに第1止水材52による止水壁が配置され、高い防水効果が得られる。
【0067】
図9は、第3変形例に係る防水構造50Cを備えた機器筐体14の一部を拡大した断面斜視図である。
図9に示す防水構造50Cは、
図7に示す防水構造50Aと比べて、折曲部32b及びリブ38cを省略し、リブ38cよりも高さの低いリブ38dを径方向に一対並列させ、各リブ38dと下板32との間に第1止水材52を挟持した点が異なる。リブ38dは、1本でもよい。防水構造50Cにおいても折曲部32bを設けてもよい。これにより防水構造50Cでは、簡素な構成ながらも、リブ38dが第1止水材52に食い込むことで、高い防水効果が得られる。
【0068】
図10は、第4変形例に係る防水構造50Dを備えた機器筐体14の一部を拡大した断面斜視図である。
図10に示す防水構造50Dは、
図8に示す防水構造50Bと
図9に示す防水構造50Cを合わせたような構成である。すなわち、防水構造50Dは、折曲部32b及びリブ38cを有し、さらに一対のリブ38cと下板32との間に第1止水材52を挟持した構成である。これにより防水構造50Dでは、折曲部32b及びリブ38cによる止水壁と、その外側での第1止水材52に対するリブ38dの食い込みにより、一層高い防水効果が得られる。
【0069】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0070】
上記では、フレーム26がカバー部材27と一体成形され、このフレーム26に対して下からキーボード装置12を固定する構成を例示した。しかしながら、電子機器10は、例えばカバー部材27の上面14aに浅い凹状部を設け、この凹状部にキーボード装置12を上から固定した構成であってもよい。この構成の場合、第2吸気口46は、カバー部材27の凹状部の底面にも孔部42a等と同様な孔部を形成した構成とするとよい。
【解決手段】電子機器は、内部に電子基板を有する機器筐体と、機器筐体の上面側に設けられたキーボード装置と、下面に第1空気取込口が形成され、上面に第2空気取込口が形成され、側面に空気排出口が形成されたファン筐体と、ファン筐体の内部で回転するブレード部と、を有し、機器筐体の内部で底板とキーボード装置の下面との間に配置されたファン装置と、を備える。底板は、第1空気取込口と重なる位置に第1吸気口を有する。キーボード装置は、第2空気取込口と重なる位置に、キーボード装置の上下方向に空気を通過させる第2吸気口を有する。電子機器は、さらに、第1空気取込口の少なくとも一部を囲むように設けられ、ファン筐体の下面と底板の内面との間に介在し、第1空気取込口と電子基板との間を仕切る第1止水材を備える。