(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6846548
(24)【登録日】2021年3月3日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】超小型内視鏡検査
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20210315BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
A61B1/00 732
A61B1/00 500
G02B23/24 B
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-11461(P2020-11461)
(22)【出願日】2020年1月28日
(65)【公開番号】特開2020-116387(P2020-116387A)
(43)【公開日】2020年8月6日
【審査請求日】2020年3月30日
(31)【優先権主張番号】62/797,882
(32)【優先日】2019年1月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596130705
【氏名又は名称】キヤノン ユーエスエイ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CANON U.S.A.,INC
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】井久田 光弘
(72)【発明者】
【氏名】呉 紫瑜
【審査官】
井上 香緒梨
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2017/139657(WO,A1)
【文献】
特許第6042073(JP,B2)
【文献】
特開2018−033567(JP,A)
【文献】
国際公開第2018/013958(WO,A1)
【文献】
特開2018−094395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00−1/32
G02B 23/24−23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イメージング対象から受け取った光を分光計に伝送するように構成されたマルチモード光ファイバの束を備え、前記マルチモード光ファイバのうちの少なくとも1つの基本モードを通して伝送される光の遠視野像は、前記分光計の光軸に非平行である、スペクトル符号化内視鏡検査光学デバイス。
【請求項2】
前記マルチモード光ファイバの束の基本モードを通して伝送される光の遠視野像は、前記分光計の光軸に非平行である、
請求項1に記載のスペクトル符号化内視鏡検査光学デバイス。
【請求項3】
前記マルチモード光ファイバの束は、出力端において、前記分光計の前記光軸に対して傾斜している、
請求項2に記載のスペクトル符号化内視鏡検査光学デバイス。
【請求項4】
前記マルチモード光ファイバの束は、出力端において、前記分光計の前記光軸に対して傾斜しており、前記出力端は、前記分光計の光入力部に配置されている、
請求項2に記載のスペクトル符号化内視鏡検査光学デバイス。
【請求項5】
前記マルチモード光ファイバのうちの少なくとも1つは、前記マルチモード光ファイバのうちの前記少なくとも1つの光軸に対して曲げられた入力端及び出力端のうちの少なくとも1つを有する、
請求項2に記載のスペクトル符号化内視鏡検査光学デバイス。
【請求項6】
前記マルチモード光ファイバは、入力端及び出力端の少なくとも一方で斜め研磨されている、
請求項2に記載のスペクトル符号化内視鏡検査光学デバイス。
【請求項7】
前記マルチモード光ファイバは、前記分光計の光入力に配置されるとともに前記分光計の光軸に垂直である出力端において、斜め研磨されている、
請求項2に記載のスペクトル符号化内視鏡検査光学デバイス。
【請求項8】
前記マルチモード光ファイバの束と前記分光計の間に配置された光伝送媒体であり、光ファイバの追加の束及び導波路のうちの少なくとも1つを含む、光伝送媒体、
を更に備える、請求項2に記載のスペクトル符号化内視鏡検査光学デバイス。
【請求項9】
前記対象に照明光を供給する照明光学デバイスを更に備え、前記マルチモード光ファイバは、前記照明光学デバイスに束ねられ、かつ、前記対象から反射された前記照明光を受け取り、受け取った前記照明光を前記分光計に伝送するように配置される、
請求項1に記載のスペクトル符号化内視鏡検査光学デバイス。
【請求項10】
前記対象に照明光を供給する照明光学系を更に備え、前記マルチモード光ファイバは、前記照明光学系に束ねられ、かつ、前記対象から反射された前記照明光を受け取り、受け取った前記照明光を前記分光計に伝送するように配置される、
請求項1に記載のスペクトル符号化内視鏡検査光学デバイス。
【請求項11】
前記マルチモード光ファイバは、前記照明光学系の光軸を囲むように前記照明光学系の周りに束ねられ、スペクトル符号化内視鏡検査光プローブとして機能する、
請求項10に記載のスペクトル符号化内視鏡検査光学デバイス。
【請求項12】
前記照明光学系は、カラーイメージングをサポートするための回折次数で、前記照明光を前記対象に供給する、
請求項10に記載のスペクトル符号化内視鏡検査光学デバイス。
【請求項13】
前記照明光学系は、少なくとも4次の回折次数で、前記照明光を前記対象に供給する、
請求項10に記載のスペクトル符号化内視鏡検査光学デバイス。
【請求項14】
前記照明光は、4次、5次及び6次の回折次数を含む複数の回折次数をもつ、
請求項10に記載のスペクトル符号化内視鏡検査光学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、内視鏡検査に関し、より詳細には、光結合効率が高められた超小型内視鏡プローブ及び超超小型内視鏡プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
対象に向かって配置された回折格子を有するプローブ照明光学系を用いて、スペクトル符号化された照明を生成するスペクトル符号化内視鏡検査(SEE)プローブが知られている。プローブは、複数の検出光ファイバを通して、対象から反射された光を検出する。検出光ファイバは、照明光学系を囲んでいる。照明の視野をカバーし、大量の反射光を取得するために、高い開口数(NA)のマルチモード光ファイバ(約0.5以上)が、検出光ファイバとして使用される。検出光ファイバは分光計に接続され、検出光スペクトルは測定及び分析される。
【0003】
複数の検出光ファイバを有するスペクトル符号化内視鏡検査(SEE)プローブも知られている。例えば、米国特許公開第2018/0017778 A1号の
図14は、複数の検出光ファイバを有するSEEプローブの実施形態を開示している。更に、米国特許公開第2018/0017778 A1号の
図9及び
図10は、内視鏡検出の視野を拡大するために、検出光ファイバ先端が斜め研磨(angle polish)されるSEEプローブの実施形態を開示している。
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様によれば、スペクトル符号化内視鏡検査光学デバイスは、イメージング対象から受け取った光を分光計に伝送するマルチモード光ファイバの束を含む。マルチモード光ファイバのうちの少なくとも1つの基本モードを通して伝送される光の遠視野像は、分光計の入力センサにおける遠視野像の不均一性を低減するために、分光計の光軸に非平行である。
【0005】
本開示の別の態様によれば、そのような不均一性を更に低減するために、マルチモード光ファイバの束の基本モードを通して伝送される光の遠視野像は、分光計の光軸に非平行である。
【0006】
本開示の更なる特徴は、添付の図面を参照する以下の例示の実施形態の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1A及び
図1Bは、本開示の様々な実施形態によって対処される問題を説明するための比較例の概略図である。
【
図2】
図2は、本開示の第1の例示の実施形態による、光ファイバ傾斜特徴を有するSEE検出光学系の概略画像である。
【
図3】
図3は、本開示の第1の例示の実施形態の部分分解図である。
【
図4】
図4A及び
図4Bは、本開示の第1の例示の実施形態の追加の部分分解図である。
【
図5】
図5は、本開示の第2の例示の実施形態による、光ファイバ斜め研磨特徴を有するSEE検出光学系の部分分解図である。
【
図6】
図6A及び
図6Bは、本開示の第2の例示の実施形態による、光ファイバ斜め研磨特徴を有するSEE検出光学系の部分分解図である。
【
図7】
図7は、本開示の第3の例示の実施形態による、光ファイバ傾斜特徴及び光ファイバ斜め研磨特徴を有するSEE検出光学系の部分分解図である。
【
図8】
図8は、本開示の第3の例示の実施形態による、光ファイバ傾斜特徴及び光ファイバ斜め研磨特徴を有するSEE検出光学系の部分分解図である。
【
図9】
図9は、本開示の第4の例示の実施形態による、検出光ファイバの束と分光計との間に追加の光ファイバの束又は導波路が配置されたSEE検出光学系の部分分解図である。
【
図10】
図10は、本開示の第5の例示の実施形態による、光ファイバの束の端部及び/又は導波路の端部の少なくとも1つの接合部に斜め研磨特徴を有するSEE検出光学系の部分分解図である。
【
図11】
図11は、本開示の第6の例示の実施形態による、例えばゴースト像を抑制するのに有益な高回折モードを有するSEE検出光学系の図である。
【
図12】
図12は、本開示の第6の例示の実施形態による、例えばゴースト像を抑制するのに有益な高回折モードを有するSEE検出光学系の図である。
【
図13】
図13は、本開示の第6の例示の実施形態による、例えばゴースト像を抑制するのに有益な高回折モードを有するSEE検出光学系の図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の様々な例示の実施形態、特徴及び態様を、図面を参照して説明する。本開示の一態様によれば、SEEプローブの検出光学系にマルチモード光ファイバを用いることができる。本開示の別の態様によれば、対象から反射された光は、マルチモード光ファイバに結合され、分光計に送られる。本開示の更に別の態様によれば、光ファイバの遠位端と分光計開口との間の光学系では、光学系の一部の光軸が次の部分の光軸に対して傾斜しているので、大きな視野角からの光のスループットは増大し、小さな視野角からの光のスループットは減少する。本開示のこれら及び他の態様をより完全に理解しやすくするために、SEEプローブの束ねられたマルチモード光ファイバの様々な態様を詳述する比較例を、
図1A及び
図1Bを参照して次に論じる。
【0009】
ここで
図1A及び
図1Bを参照すると、本開示の様々な実施形態によって対処される問題を説明するための比較例の概略図が示されている。マルチモード光ファイバは、複数のモードにわたって光を送ることができる。通常、低角入射光102は低次モードで光ファイバに結合し、高角入射光104は高次モードで結合する。一部のモード混合は、光ファイバ内部で発生する。しかしながら、低次モードで光ファイバに入る光は、光ファイバの他端でもほとんど低次モードのままであり、高次モードで光ファイバに入る光は、典型的には、光ファイバの他端でも高次モードのままである。
【0010】
光ファイバ200の各々の他端が、そのそれぞれの光ファイバ軸に平行なそれぞれの法線をもつとき、センサ端(センサは図示せず)における遠視野像(FFP)122は、
図1Aに示されるように、低入射角の光では中心ピーク形状であり、一方、センサ端におけるFFP124は、モードの次数が高くなるほど大きくなり、
図1Bに示されるように、リング形状等の非単一ピーク形状であることがある(例えば、光強度ピークが中心にない)。
【0011】
中心での強度が低い、FFPの大きい光は、分光計開口で大量のケラレが発生する可能性がある(
図1の入口分光計の入射瞳250として表される)。分光計入射瞳250の外側の光(開口240、レンズ222,226及び回折格子224等の分光計光学部品によって決定される)は、分光計のセンサでは適切に検出することができず、SEEイメージングの視野角が大きい場合、低い信号強度が原因で、画質が低くなってしまう(大きなノイズ)。
【0012】
イメージングサンプルから検出光ファイバへの結合効率は、光ファイバ端部の入射角に依存する。光ファイバの光軸が光ファイバ端部に対して垂直である場合、結合効率は通常、0度の入射角(法線に対して)で最大になり、高い入射角(法線に対して)では低くなる。したがって、前述した分光計での結合の不均一性とケラレにより、大きな視野角領域の画質が低下してしまう。
【0013】
ここで
図2を参照すると、本開示の第1の例示の実施形態による、光ファイバ傾斜特徴を有するSEE検出光学系の概略画像が示されている。検出光ファイバ200は、分光計202に接続されている。分光計202は、コリメーションレンズ222、回折格子224、結像レンズ226及びセンサ228を含む。センサ228は、例えばCCDラインセンサであってよい。一例として、この実施形態では、コリメーションレンズ222の焦点距離は120mmであり、回折格子224の溝密度は1260ライン/mmであり、結像レンズ226の焦点距離は55mmである。したがって、回折格子224への入射角は19.3度であり、センサ228のアクティブエリアの長さは、12μm/画素×2048画素=24.576mmである。上記は構成例にすぎず、他の密度や寸法も可能である。
【0014】
光ファイバ200の遠位端206において、検出光ファイバは、SEE照明光学系204のための空間を囲んでよい。例えば、光ファイバ200は、リング形状として束ねられてよい。検出光ファイバ200の遠位端206は、SEE光プローブの入力として機能する。
【0015】
分光計202の入口にある近位端208では、検出光ファイバ202は、矩形形状として束ねられてよい。矩形形状の幅及び高さは、分光計の解像度及び倍率に合わせて最適化されてよい。検出光ファイバ200は、例えば、開口数(NA)が0.2以上のマルチモード光ファイバであってよい。好ましくは、大きな入射角での光の入射を検出するために、光ファイバのNAは0.5以上である。検出光ファイバ200は、ステップインデックス型又はグレーデッドインデックス型の光ファイバであってよい。コア径は、10μmよりも大きくてよく、例えば30μm、50μm、70μm、90μm又は120μmであってよい。好ましくは、検出光ファイバ200の数は2つ以上である。例として、検出光ファイバ200の数は、10、20、30、45、60、120又は240等であってよい。
【0016】
例えば、コア径が68μm、クラッド径が70μm、NAが0.66のマルチモード光ファイバ200を45本用いると、SEE照明光学系204のための円形空間を含む管材(tubing)(外径980μm、内径750μm)を囲むことができる。光ファイバ200は、近位端208において矩形形状(15行×3列)として束ねられてよい。この例では、分光計202の横倍率は0.45×であり、センサ228の画素高さは500μmである。したがって、矩形の光ファイバ束の画像高さは、約70×15×0.45=472.5μmになり、これは、センサ高さ500μm(センサ228の画素高さ500μm)よりも小さい。
【0017】
分光計202は、少なくとも1つの光学開口絞り240を有する。開口絞り240は、物理的開口、又は分光計202の任意の光学部品の有効開口(clear aperture)によって提供されてよい。開口絞りは、矩形や楕円形等の任意の形状であってよい。分光計202は、分光計光学系の前面を通して(検出光ファイバ側から)見られる開口絞りの像である入射瞳をもつ。入射瞳に基づいて、分光計には許容角度範囲がある。これは、光ファイバ200からの光が許容角度範囲の外にあるとき、その光は分光計202に受け取られることができないことを意味する。例えば、角度範囲は、−11.5度〜+11.5度(開口数0.2)であってよい。
【0018】
図2に示すように、後述する図面を分かりやすくするために、分光計202の光軸は直線として示されているので、分光計202の構造及び動作の理解が容易になり、特に、分光計を通る光の軌跡とセンサ228での光密度とがどのように影響を受けるかを理解することが容易になるが、第1の例示の実施形態の分光計202の光軸は回折格子224で方向を変え、これは、後述する更なる例示の実施形態にも当てはまる。
【0019】
ここで
図3、
図4A及び
図4Bも参照すると、第1の例示の実施形態によるSEE検出光学系の部分分解図が示されている。
図3、
図4A及び
図4Bに示されるように、検出光ファイバ200の束は、分光計202の入口で傾斜している。検出光ファイバ200の束の基本モードを通して送られる光のFFPピーク方向は、分光計入口において、分光計202の光軸に平行ではない。傾斜軸は、傾斜が光の波長とセンサ228の画素指標(pixel index)との関係に影響を及ぼさないように、回折格子224の溝方向と同じ面(plane)内にあってよい。
【0020】
この構成では、
図4に示されるように、光ファイバ200からの光の遠視野像(FFP)は、分光計202の入射瞳250に対してシフト(傾斜)する。FFP傾斜角度θ
fは、以下の式Ex.1によって計算することができる。
θ
f=θ
t (Ex.1)
式中、θ
tは、
図3に示されるように、分光計202の光軸zに対する光ファイバ傾斜角度である。例として、光ファイバ傾斜角度は、5度、10度又は15度等であってよい。センサ228は、光ファイバ200の像がセンサ面で焦点が合うように、光ファイバ束の傾斜及び分光計倍率に基づいて傾斜させることができる。
【0021】
光ファイバを傾斜させることにより、小さな視野角検出では、光ファイバ200からセンサ228への光学スループットが低下するが(
図4A)、大きな視野角検出では、光学スループットが大幅に増大する(
図4B)。サンプルから遠位端の光ファイバ200への結合は、小さな視野角検出よりも大きな視野角検出の方が低いので、光ファイバを傾斜させることは、例えば、SEE光プローブの視野全体で信号レベルを正規化するのに有益である。また、
図3に示されるように、光ファイバ200の像がセンサ面で焦点が合うように、光ファイバ200の傾斜に基づいて(例えば、光ファイバ200の傾斜の反対方向に)センサ228を傾斜させることも、有益である。
【0022】
入射瞳250を決定する開口240がコリメーションレンズ222の後にあるとき、光ファイバ束200及びコリメーションレンズ222を残りの分光計部品の光軸からシフトさせると、
図13に示されるような効果(後述する)を得ることができる。この場合、θ
tは、入射瞳の中心に向かう方向に対する光ファイバ傾斜角度であり、θ
fは、入射瞳の中心に向かう方向に対するFFP傾斜角度である。FFP傾斜角度θ
fは、以下の式Ex.2を用いて計算することができる。
θ
f=sin
-1(y/f) (Ex.2)
式中、fはコリメーションレンズの焦点距離であり、yはレンズシフトである。光ファイバ傾斜角度θ
tは、式Ex.1を用いて、つまりθ
f=θ
tによって計算することができる。例えば、コリメーションレンズ222の焦点距離が120mmであり、レンズシフトが21mmであるとき、FFP傾斜角度θ
fは10.08度であり、光ファイバ傾斜角度θ
tは10.08度である。
【0023】
更なる例示の実施形態の以下の説明では、上述した第1の例示の実施形態からの様々な差異が開示される。第1の例示の実施形態との違いをより明確に示すために、場合によっては、第1の例示の実施形態の構成要素は、第1の例示の実施形態に関して上述されたものと同じ場合には、図示されず、又は議論されない。
【0024】
ここで
図5、
図6A及び
図6Bも参照すると、本開示の第2の例示の実施形態による、光ファイバ斜め研磨特徴を有するSEE検出光学系の部分分解図が示されている。第2の例示の実施形態では、
図5に示されるように、傾斜特徴の代わりに、光ファイバ200の束は、分光計202の入口で斜め研磨されている。検出光ファイバ束200の基本モードを通して送られる光のFFPピーク方向は、分光計入口において、分光計202の光軸に平行ではない。FFP傾斜角度θ
fは、以下の式Ex.3を用いて計算することができる。
θ
f=sin
-1(nsinθ
p)−θ
p (Ex.3)
式中、nは光ファイバコア屈折率であり、角度θ
pは光ファイバ研磨角度である。例えば、光ファイバ屈折率が1.5であり、光ファイバ束200が20度研磨されているとき、FFPは10.86度傾斜することになる。センサ228は、光ファイバ200の像がセンサ面で焦点が合うように、光ファイバ束200の研磨角度に基づいて傾斜させることができる。第2の例示の実施形態の利点は、光ファイバ軸をz方向に平行にすることができるので、x方向及びy方向の位置を変えることなく、光ファイバ束のz方向の位置合せ(alignment)を容易に行えることである。
【0025】
ここで
図7及び
図8も参照すると、本開示の第3の例示の実施形態による、光ファイバ傾斜特徴及び光ファイバ斜め研磨特徴を有するSEE検出光学系の部分分解図が示されている。第3の例示の実施形態では、分光計入口において、光ファイバ束の傾斜と斜め研磨が組み合される。検出光ファイバ束200の基本モードを通して送られる光のFFPピーク方向は、分光計入口において、分光計202の光軸に平行ではない。FFP傾斜角度θ
fは、以下の式Ex.4を用いて計算することができる。
θ
f=θ
t+sin
-1(nsinθ
p)−θ
p (Ex.4)
【0026】
θ
t=θ
pのとき、分光計202の入口における光ファイバの束の端部は、
図7に示されるように、分光計の光軸(z)に垂直になることができる。有利なことに、この構成によれば、センサ228の表面は分光計の軸に垂直になることができ、これにより、分光計の光学的位置合せが容易になる。この構成では、光ファイバ傾斜/研磨方向は、
図8に示されるように、縦方向(回折格子224の非回折方向)だけでなく、横方向(回折方向)であってもよい。例えば、光ファイバ屈折率が1.5であり、光ファイバ束200が7度研磨され、かつ同じ方向に7度傾斜している場合、FFPは10.53度傾斜することになる。
【0027】
ここで
図9も参照すると、本開示の第4の例示の実施形態による、検出光ファイバ200の束と分光計202との間に光伝送媒体が配置されたSEE検出光学系の部分分解図が示され、光伝送媒体は、光ファイバの追加の束及び導波路のうちの少なくとも1つを含む。例えば、
図9に示されるように、導波路902は、検出光ファイバ200の束に取り付けられてよく、別の光ファイバの束904は、一端が導波路902に取り付けられ、他端が分光計202に取り付けられてよい。一例として、導波路902は、シングルコアのマルチモード光ファイバであってよい。別の例として、導波路902は、マルチモード光ファイバの束であってよい。光ファイバ200の束は、例えば、導波路902との接合部912において円形形状を有してよい。光ファイバの束904は、例えば、導波路902との接合部914において円形形状を有してよい。光ファイバの束904は、例えば、形状の幅及び高さを制御するために、分光計入口916において矩形形状を有してよい。接合部912及び914は、例えばコネクタ化され(connectorized)、取外し可能であってよい。光ファイバの束904は、第1、第2及び第3の実施形態(上述)と同様に、光ファイバ200の検出束の基本モードを通して送られる光のFFPピーク方向が、分光計入口において分光計202の光軸に平行ではないように、分光計入口916において傾斜及び/又は斜め研磨されてよい。
【0028】
ここで
図10も参照すると、本開示の第5の例示の実施形態による、接合部912又は914において光ファイバ束/導波路200、902又は904のうちの少なくとも1つの斜め研磨特徴を有するSEE検出光学系の部分分解図が示されている。例えば、
図10に示されるように、光ファイバの束、光ファイバ/導波路200、902又は904のうちの少なくとも1つは、接合部912又は914において曲げられて(angled)よい。この曲げは、分光計入口916における端部の曲げの代わりに提供されてよい。この場合、検出光ファイバ束200の基本モードを通して送られる光は、分光計202に接続された光ファイバ束904の高次モードに結合されることになる。すなわち、検出光ファイバ束200の基本モードを通して送られる光のFFPピーク方向は、分光計入口において、分光計202の光軸に平行ではない。一方、検出光ファイバ束200の高次モードを通して送られる一部の光は、光ファイバ束904の低次モード(基本モードを含む)に結合されることになる。或いは、光ファイバの束、光ファイバ/導波路200、902又は904のうちの少なくとも1つを曲げることは、分光計916の入口において光ファイバの端部を曲げることに加えて、提供されてよい。
【0029】
例えば、上記の実施形態における光ファイバの束、光ファイバ/導波路200、902又は904は、ステップインデックスファイバ、屈折率分布型(gradient index)ファイバ、フォトニック結晶ファイバ、又はこれらのファイバの組合せであってよい。例えば、ファイバ束の端部は、研磨及び/又は融合されてよい。
【0030】
ここで
図11、
図12及び
図13も参照すると、本開示の第6の例示の実施形態による、例えばゴースト像を抑制するのに有益な高回折モードを有するSEE検出光学系の図が示されている。
図11は、SEEプローブ140の例の概略画像を示す。広帯域光は、シングルモード光ファイバ150に結合される。シングルモード光ファイバ150は、GRINレンズ152及びスペーサ154に取り付けられている。スペーサ154は、鏡表面158及び回折格子表面156を有する。シングルモード光ファイバ150からの光は、GRINレンズ152により集束され、ミラー158によって反射され、回折格子156によって回折される。光ファイバ150、GRINレンズ152及びスペーサ154は、駆動ケーブル160の内側にあり、これらはシース管材162の内側で回転する。シース管材162には、窓164が取り付けられている。回折格子からの照明光は、窓164を通って、イメージング対象に合焦される。検出光ファイバ束200は、シース管材162を囲む。
【0031】
カラーイメージングを実現するために、3つの波長範囲(λ
R1…λ
RN、λ
G1…λ
GN、λ
B1…λ
BN)の光は、それぞれ−4次、−5次、−6次等の高次で回折され、イメージング対象に合焦する。3つの波長(λ
R1、λ
G1、λ
B1)の光は、回折格子156によってそれぞれ−4次、−5次、−6次で回折され、イメージング対象に向かって進む。検出光ファイバ200は、イメージング対象によって反射されたこれらの波長(λ
R1、λ
G1、λ
B1)の光を検出する。プローブ回折効率は、これらの波長と回折次数に応じて、視野角に合わせて最適化される。
【0032】
このような、スペクトル符号化された照明に複数の回折次数が用いられる状況では、適切な次数で回折されない照明光が存在する。例えば、
図12に示されるように、波長λ
Cの光がm次で回折され、イメージング対象の位置Xに合焦するとき、同じ波長の光が異なる次数(低次)m’で回折され、異なる位置X’に合焦することがある。X’では、検出光ファイバの結合効率がより大きい可能性があり、また、Xの視野角θ
XがX’の視野角θ
X'よりも大きい波長の場合、X’のプローブ回折効率は低くない可能性がある。したがって、位置Xからの信号は、画像再構成プロセスにおいて位置X’からの偽信号と混合されること(ゴーストノイズの生成)によって、劣化するおそれがある。しかしながら、本実施形態によれば、前述の実施形態と組み合せて、検出光ファイバ束200の基本モードを通して送られる光のFFPピーク方向が分光計入口において分光計202の光軸に平行ではないようにすることにより、そのような劣化が抑制される。更に、θ
Xがθ
X'よりも小さい波長では、X’の回折効率は低いものの、そのような劣化は小さく、重要ではない。
【0033】
他の実施形態
本開示の実施形態は、また、記憶媒体(より完全には「非一時的コンピュータ可読記憶媒体」とも呼ばれ得る)に記録されたコンピュータ実行可能命令(例えば1つ以上のプログラム)を読み出して実行して、上記の実施形態の1つ以上の機能を実行し、かつ/又は、上記の実施形態の1つ以上の機能を実行するための1つ以上の回路(例えば特定用途向け集積回路(ASIC))を含むシステム又は装置のコンピュータ化構成によって実現することができ、また、例えば記憶媒体からコンピュータ実行可能命令を読み出して実行して、上記の実施形態の1つ以上の機能を実行し、かつ/又は上記の実施形態の1つ以上の機能を実行するための1つ以上の回路を制御することにより、システム又は装置のコンピュータ化構成によって実行される方法によって、実現することもできる。コンピュータ化構成は、1つ以上のプロセッサ、1つ以上のメモリ、回路、又はその組合せ(例えば中央処理装置(CPU)、超小型演算処理装置(MPU)等)を備えてよく、また、コンピュータ実行可能命令を読み出して実行するために、別個のコンピュータ又は別個のプロセッサのネットワークを含んでよい。コンピュータ実行可能命令は、例えばネットワーク又は記憶媒体から、コンピュータ化構成に提供されてよい。記憶媒体は、例えば、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、分散コンピュータシステムのストレージ、光ディスク(例えばコンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)、Blu−ray(商標)ディスク(BD)等)、フラッシュメモリデバイス、メモリカード及び同様のものを含んでよい。
【0034】
本開示は例示の実施形態を参照して説明されたが、本開示は開示された例示の実施形態に限定されないことを理解されたい。添付の特許請求の範囲は、そのような全ての修正並びに均等の構造及び機能を包含するように、最も広い解釈が与えられるべきである。
【0035】
本願は、2019年1月28日に出願された米国仮出願第62/797,882号から優先権の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。