(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の微細中空突起具を、その好ましい第1実施態様である微細中空突起具1に基づき図面を参照して説明する。
図1には、第1実施態様の微細中空突起具1としてのマイクロニードルアレイ1Mの斜視図が示されている。第1実施態様のマイクロニードルアレイ1Mは、先端側に開孔部3hを有し内部に開孔部3hに繋がる内部空間の形成された微細中空突起部3が、基底部材2から突出する形態となっている。マイクロニードルアレイ1Mは、第1実施態様では、
図1に示すように、シート状の基底部材2と複数の微細中空突起部3とを有している。微細中空突起部3の数、微細中空突起部3の配置及び微細中空突起部3の形状には、特に制限はないが、第1実施態様のマイクロニードルアレイ1Mは、好適には、シート状の基底部材2の上面に、9個の円錐台状の微細中空突起部3が配列されている。配列された9個の微細中空突起部3は、後述する基材シート2Aを搬送する方向(基底部材2の縦方向)であるY方向に3行、搬送する方向と直交する方向及び基底部材2の横方向であるX方向に3列に配されている。
【0013】
尚、
図2は、マイクロニードルアレイ1Mの有する配列された微細中空突起部3の内の1個の微細中空突起部3に着目したマイクロニードルアレイ1Mの斜視図である。また、
図3は、
図2に示すIII−III線断面図であり、微細中空突起部3の頂点を通る縦断面図である。ここで、微細中空突起部3の頂点とは、第1実施態様のマイクロニードルアレイ1Mのように、微細中空突起部3の先端側の先端に開孔部3hを有している場合には、開孔部3hの中心を意味している。
【0014】
微細中空突起部3は、その先端側に開孔部3hを有していればよいが、第1実施態様のマイクロニードルアレイ1Mでは、
図2及び
図3に示すように、その先端に開孔部3hを有している。好適に、微細中空突起部3は、第1実施態様では、
図3に示すように、微細中空突起部3の内部に、基底部材2の下面から開孔部3hに亘る内部空間が形成されており、微細中空突起部3の先端に開孔部3hが形成されている。第1実施態様では、微細中空突起部3は、
図3に示すように縦断面を視た際に、内部を形成する内壁31が直線状に形成されており、外形を形成する外壁32が直線状に形成されている。微細中空突起部3の内部の空間は、マイクロニードルアレイ1Mにおいては、微細中空突起部3の外形形状に対応した形状に形成されており、第1実施態様では、円錐台状の微細中空突起部3の外形形状に対応した円錐台状に形成されている。尚、微細中空突起部3の内部の空間は、第1実施態様では、円錐台状であるが、円錐台状の形状以外に、角錐台状等であってもよい。
【0015】
マイクロニードルアレイ1Mは、微細中空突起部3の頂点を通る何れかの縦断面を視た際(
図3参照)に、頂点側の頂点側部位TBにおける肉厚T1が、頂点側部位TBよりも基底部材2側の下方側部位BPにおける肉厚T2よりも薄く、頂点側部位TBにおける内壁31,31同士の間隔M1が下方側部位BPにおける内壁31,31同士の間隔M2よりも小さく、基底部材2から突出する微細中空突起部3の根本部34が曲率を有し、基底部材2における微細中空突起部3の突出する面である表面24とは反対側の反対面である裏面25の微細中空突起部3内への入口部23が曲率を有している。ここで、根本部34とは基底部材2から突出する部分であり、本実施形態のマイクロニードルアレイ1Mでは、根本部34は基底部材2の表面24から突出する部分である。
好適に、第1実施態様のマイクロニードルアレイ1Mは、微細中空突起部3の内部の空間及び外形形状が円錐台状に形成され、且つ、微細中空突起部3の先端に開孔部3hを有しているので、マイクロニードルアレイ1Mでは、微細中空突起部3の頂点(先端の開孔部3hの中心)を通る縦断面をどのようにとっても、頂点側部位TBの肉厚T1が下方側部位BPの肉厚T2よりも薄く、頂点側部位TBにおける内壁31,31同士の間隔M1が下方側部位BPにおける内壁31,31同士の間隔M2よりも小さくなっている。このように、頂点側部位TBの肉厚T1が下方側部位BPの肉厚T2よりも薄く、頂点側部位TBにおける内壁31,31同士の間隔M1が下方側部位BPにおける内壁31,31同士の間隔M2よりも小さくなっているので、マイクロニードルアレイ1Mは、皮膚に穿刺する際に痛みが低減できると共に折れ難い。
また好適に、第1実施態様のマイクロニードルアレイ1Mは、基底部材2の表面24から突出する微細中空突起部3の根本部34が曲率をもったカーブとなっている。具体的に、第1実施態様のマイクロニードルアレイ1Mは、基底部材2の表面24側での微細中空突起部3の根本部34が曲率をもったカーブとなっている。このように、微細中空突起部3の根本部34が曲率を持つことで、更に折れにくい構造となる。
また好適に、第1実施態様のマイクロニードルアレイ1Mは、基底部材2の裏面25側における微細中空突起部3内への入口部23が曲率をもったカーブとなっている。このように、基底部材2の裏面25側における微細中空突起部3内への入口部23が曲率を持っていることから、剤を供給する際、剤が流れやすくなる。
【0016】
尚、微細中空突起部3の内部の空間及び外形形状が角錐台状に形成されている場合には、マイクロニードルアレイ1Mにおける微細中空突起部3の頂点を通る縦断面を視る際、角錐台の角を除く位置であることが好ましい。
【0017】
そして、第1実施態様のマイクロニードルアレイ1Mは、微細中空突起部3の内部の空間及び外形形状が円錐台状に形成され、且つ、微細中空突起部3の先端に開孔部3hを有しているので、第1実施態様のマイクロニードルアレイ1Mでは、頂点側部位TBでの横断面における内壁31で形成された内周形状と、下方側部位BPでの横断面における内壁31で形成された内周形状とが相似形状となっている。また、マイクロニードルアレイ1Mでは、頂点側部位TBでの横断面における外壁32で形成された外周形状と、下方側部位BPでの横断面における外壁32で形成された外周形状とが相似形状となっている。このように形成されているので、マイクロニードルアレイ1Mは、更に折れ難くなっている。また、上述したように、第1実施態様のマイクロニードルアレイ1Mでは、
図2に示すように、微細中空突起部3の内部の空間及び外形形状が円錐台状に形成されているので、頂点側部位TBでの横断面における内壁31で形成された円形状と、下方側部位BPでの横断面における内壁31で形成された円形状とが、同心円上に形成されている。このように形成されているので、マイクロニードルアレイ1Mは、更に折れ難くなっている。
【0018】
また、マイクロニードルアレイ1Mは、微細中空突起部3の頂点を通る何れかの縦断面を視た際(
図3参照)に、頂点を通る垂線ILと微細中空突起部3の外壁32とのなす角θ2が、該垂線ILと微細中空突起部3の内壁31とのなす角θ1よりも大きくなっている。好適に、第1実施態様のマイクロニードルアレイ1Mは、微細中空突起部3の内部の空間及び外形形状が円錐台状に形成され、且つ、微細中空突起部3の先端に開孔部3hを有しているので、マイクロニードルアレイ1Mでは、微細中空突起部3の頂点(先端の開孔部3hの中心)を通る縦断面をどのようにとっても、頂点を通る垂線ILと外壁32とのなす角θ2が、該垂線ILと内壁31とのなす角θ1よりも大きくなっている。このように形成されているので、マイクロニードルアレイ1Mは、皮膚に穿刺する際に痛みが更に低減できるようになっている。また、マイクロニードルアレイ1Mによって剤を供給する際に剤が流れ易い。
【0019】
皮膚に穿刺する際の痛みの低減と剤の供給のし易さの観点から、垂線ILと内壁31とのなす角θ1に対する、垂線ILと外壁32とのなす角θ2の比(θ2/θ1)は、0.03以上であることが好ましく、0.1以上であることが更に好ましく、そして、90以下であることが好ましく、45以下であることが更に好ましく、具体的には、0.03以上90以下であることが好ましく、0.1以上45以下であることが更に好ましい。好適に、なす角θ1は、0.5度以上であることが好ましく、2.5度以上であることが更に好ましく、そして、30度以下であることが好ましく、22.5度以下であることが更に好ましく、具体的には、0.5度以上30度以下であることが好ましく、2.5度以上22.5度以下であることが更に好ましい。また、なす角θ2は、1度以上であることが好ましく、3度以上であることが更に好ましく、そして、45度以下であることが好ましく、30度以下であることが更に好ましく、具体的には、1度以上45度以下であることが好ましく、3度以上30度以下であることが更に好ましい。なす角θ1,θ2は、微細中空突起部3の頂点を通る縦断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)もしくはマイクロスコープを用いて所定倍率拡大して観察する。
【0020】
また、マイクロニードルアレイ1Mは、微細中空突起部3の頂点を通る何れかの縦断面を視た際(
図3参照)に、該頂点を通る垂線ILが、頂点側部位TBにおける内壁31,31同士の間隔M1を2等分する頂点側中心位置M1cと、下方側部位BPにおける内壁31,31同士の間隔M2を2等分する下方側中心位置M2cとを通っている。好適に、第1実施態様のマイクロニードルアレイ1Mは、微細中空突起部3の内部の空間及び外形形状が円錐台状に形成され、且つ、微細中空突起部3の先端に開孔部3hを有しているので、マイクロニードルアレイ1Mでは、微細中空突起部3の頂点(先端の開孔部3hの中心)を通る縦断面をどのようにとっても、該頂点を通る垂線ILが、頂点側中心位置M1cと下方側中心位置M2cとを通っている。このように形成されているので、マイクロニードルアレイ1Mは、更に折れ難くなっている。
【0021】
また、第1実施態様のマイクロニードルアレイ1Mでは、頂点側部位TBにおける肉厚T1は、全周に亘って均等に形成されている。好適に、第1実施態様のマイクロニードルアレイ1Mは、微細中空突起部3の先端に開孔部3hを有しており、微細中空突起部3の内部の空間及び外形形状が円錐台状に形成されているので、マイクロニードルアレイ1Mの先端においては、内壁31で形成された内周及び外壁32で形成された外周がそれぞれ円形状となっている。その為、先端の肉厚T1t、言い換えれば、円形状の内周と円形状の外周との間隔が、全周に亘って均等に形成されている。このように形成されているので、マイクロニードルアレイ1Mは、更に折れ難くなっている。
【0022】
第1実施態様のマイクロニードルアレイ1Mの各微細中空突起部3は、その突出高さH1が、その先端を最も浅いところでは角層まで、深くは真皮まで刺入するため、好ましくは0.01mm以上、更に好ましくは0.02mm以上であり、そして、好ましくは10mm以下であり、更に好ましくは5mm以下であり、具体的には、好ましくは0.01mm以上10mm以下であり、更に好ましくは0.02mm以上5mm以下である。
第1実施態様のマイクロニードルアレイ1Mの各微細中空突起部3は、その先端の肉厚T1tが、皮膚に穿刺する際に痛みが低減できる観点から、好ましくは0.001mm以上、更に好ましくは0.003mm以上であり、そして、好ましくは0.005mm以下であり、更に好ましくは0.1mm以下であり、具体的には、好ましくは0.001mm以上0.1mm以下であり、更に好ましくは0.003mm以上0.05mm以下である。
第1実施態様のマイクロニードルアレイ1Mの各微細中空突起部3は、その突出高さH1を二等分する位置での肉厚T1cが、皮膚に穿刺する際に痛みが低減できると共に折れ難い観点から、好ましくは0.001mm以上、更に好ましくは0.003mm以上であり、そして、好ましくは0.1mm以下であり、更に好ましくは0.05mm以下であり、具体的には、好ましくは0.001mm以上0.1mm以下であり、更に好ましくは0.003mm以上0.05mm以下である。
第1実施態様のマイクロニードルアレイ1Mの各微細中空突起部3は、基底部材2の上面の位置での肉厚T2bが、皮膚に穿刺する際に折れ難い観点から、好ましくは0.004mm以上、更に好ましくは0.008mm以上であり、そして、好ましくは0.4mm以下であり、更に好ましくは0.25mm以下であり、具体的には、好ましくは0.004mm以上0.4mm以下であり、更に好ましくは0.008mm以上0.25mm以下である。
【0023】
マイクロニードルアレイ1Mの各微細中空突起部3の先端径L(先端における外壁32、32どうしの間隔)は、その直径が、好ましくは1μm以上、更に好ましくは5μm以上であり、そして、好ましくは500μm以下であり、更に好ましくは300μm以下であり、具体的には、好ましくは1μm以上500μm以下であり、更に好ましくは5μm以上300μm以下である。微細中空突起具1の先端径Lは、微細中空突起部3の先端における最も広い位置での長さである。当該範囲であると、マイクロニードルアレイ1Mを皮膚に刺し入れた際の痛みが殆どない。前記先端径Lは、以下のようにして測定する。
【0024】
〔マイクロニードルアレイ1Mの微細中空突起部3の先端径の測定〕
微細中空突起部3の先端が開口している場合には、微細中空突起部3の先端部を、走査型電子顕微鏡(SEM)もしくはマイクロスコープを用いて所定倍率拡大した状態(
図3(a)参照)で、例えば、SEM画像により観察する。
次に、微細中空突起部3の先端があると仮定して外壁32を形成する両側辺1a,1bの内の一側辺1aにおける直線部分に沿って仮想直線ILaを延ばし、他側辺1bにおける直線部分に沿って仮想直線ILbを延ばし、その交点を微細中空突起部3の頂点とする。次に、先端側にて、一側辺1aが仮想直線ILaから離れる箇所を第1先端点1a1として求め、他側辺1bが仮想直線ILbから離れる箇所を第2先端点1b1として求める。このようにして求めた第1先端点1a1と第2先端点1b1とを結ぶ直線の長さLを、走査型電子顕微鏡(SEM)又はマイクロスコープを用いて測定し、測定した該直線の長さを、微細中空突起部3の先端径とする。なお、微細中空突起部3の先端が開口していない場合には、一側辺1aが仮想直線ILaから離れる箇所を第1先端点1a1として求め、他側辺1bが仮想直線ILbから離れる箇所を第2先端点1b1として求め、上述した方法にて先端径を測定する。
【0025】
基底部材2は、その厚みT2が、好ましくは0.01mm以上、更に好ましくは0.02mm以上であり、そして、好ましくは1.0mm以下であり、更に好ましくは0.7mm以下であり、具体的には、好ましくは0.01mm以上1.0mm以下であり、更に好ましくは0.02mm以上0.7mm以下である。
【0026】
微細中空突起具1は、
図3に示すように、各微細中空突起部3の先端に位置する開孔部3hと、各微細中空突起部3に対応する基底部材2の下面に位置する基底側開孔部2hとを有している。第1実施態様のマイクロニードルアレイ1Mでは、開孔部3h及び基底側開孔部2hが、同心円状に形成されている。
また、基底部材2の裏面25側の微細中空突起部3への入口部23、及び基底部材2の表面24側の微細中空突起部3の根本部34は曲率をもったカーブとなっている。微細中空突起部3への入口部23が曲率を持っていることから、剤を供給する際、流れやすくなる。微細中空突起部3の根本部34は曲率を持つことで、更に折れにくい構造となる。
基底部材2の表面24側での微細中空突起部3の根本部34が曲率をもったカーブの曲率半径R1に対する、微細中空突起部3の突出高さH1との比(R1/H1)は0.01以上であることが好ましく、0.02以上であることが更に好ましく、そして、0.5以下であることが好ましく、0.3以下であることが更に好ましく、具体的には、0.01以上0.5以下であることが好ましく、0.02以上0.3以下であることが、剤供給時の流れやすさ及び微細中空部の折れにくさをより実現し易くなることから更に好ましい。
また、基底部材2の裏面25側における微細中空突起部3内への入口部23が曲率をもったカーブの曲率半径R2に対する微細中空突起部3の突出高さH1との比(R2/H1)は0.01以上であることが好ましく、0.02以上であることが更に好ましく、そして、0.4以下であることが好ましく、0.25以下であることが更に好ましく、具体的には、0.01以上0.4以下であることが好ましく、0.02以上0.25以下であることが、剤供給時の流れやすさ及び微細中空部の折れにくさをより実現し易くなることから更に好ましい。
また、表面24側での微細中空突起部3の根本部34の曲率半径R1は、裏面25側での微細中空突起部3の入口部23の曲率半径R2より小さいことが、皮膚への刺し込み時に微細中空突起部3が折れにくく、刺さり易いので好ましい。
【0027】
開孔部3hは、その開孔面積S1が、マイクロニードルアレイ1Mによる剤の供給のし易さの観点から、好しくは0.7μm
2以上、更に好ましくは20μm
2以上であり、そして、好ましくは200000μm
2以下であり、更に好ましくは70000μm
2以下であり、具体的には、好ましくは0.7μm
2以上200000μm
2以下であり、更に好ましくは20μm
2以上70000μm
2以下である。
同様な観点から、基底側開孔部2hは、その開孔面積S2が、好しくは0.007mm
2以上、更に好ましくは0.03mm
2以上であり、そして、好ましくは20mm
2以下であり、更に好ましくは7mm
2以下であり、具体的には、好ましくは0.007mm
2以上20mm
2以下であり、更に好ましくは0.03mm
2mm以上7mm
2以下である。
【0028】
シート状の基底部材2の上面に配列された9個の微細中空突起部3は、縦方向(Y方向)の中心間距離が均一で、横方向(X方向)の中心間距離が均一であることが好ましく、縦方向(Y方向)の中心間距離と横方向(X方向)の中心間距離とが同じ距離であることが好ましい。好適には、微細中空突起部3の縦方向(Y方向)の中心間距離が、好ましくは0.01mm以上、更に好ましくは0.05mm以上であり、そして、好ましくは10mm以下であり、更に好ましくは5mm以下であり、具体的には、好ましくは0.01mm以上10mm以下であり、更に好ましくは0.05mm以上5mm以下である。また、微細中空突起部3の横方向(X方向)の中心間距離が、好ましくは0.01mm以上、更に好ましくは0.05mm以上であり、そして、好ましくは10mm以下であり、更に好ましくは5mm以下であり、具体的には、好ましくは0.01mm以上10mm以下であり、更に好ましくは0.05mm以上5mm以下である。
【0029】
次に、本発明の微細中空突起具の製造方法を、前述した微細中空突起具1としてのマイクロニードルアレイ1Mの製造方法を例にとり
図4〜
図6を参照して説明する。
図4には、本実施態様の製造方法の実施に用いる一実施態様の製造装置100の全体構成が示されている。尚、上述したように、マイクロニードルアレイ1Mの各微細中空突起部3は非常に小さなものであるが、説明の便宜上、
図4においてはマイクロニードルアレイ1Mの各微細中空突起部3が非常に大きく描かれている。
【0030】
図4に示す本実施態様の製造装置100は、基材シート2Aに中空の微細中空突起部前駆体3b(
図5参照)を形成する突起部前駆体形成部10A、基材シート2Aに微細中空突起部3を形成する突起部形成部10B、冷却部20、後述する凸型部11を抜き出すリリース部30を備えている。
以下の説明では、基材シート2Aを搬送する方向(基材シート2Aの縦方向)をY方向、搬送する方向と直交する方向及び搬送される基材シート2Aの横方向をX方向、搬送される基材シート2Aの厚み方向をZ方向として説明する。
【0031】
突起部前駆体形成部10A及び突起部形成部10Bは、
図4に示すように、加熱手段(不図示)を有した凸型部11を備えている。凸型部11は、製造するマイクロニードルアレイ1Mの微細中空突起部3の個数、配置、各微細中空突起部3の略外形形状に対応した凸型110を有しており、本実施態様の製造装置100では、9個の円錐台状の微細中空突起部3に対応して、9個の円錐状の凸型110を有している。本明細書において凸型部11とは基材シート2Aに刺さる部分である凸型110を備えた部材のことであり、凸型部11は、本実施態様の製造装置100では、円盤状の土台部分の上に配された構造となっている。ただし、これに限られず凸型110のみからなる凸型部であっても良いし、複数の凸型110を台状支持体の上に配した凸型部11であっても良い。
【0032】
また、本実施態様の製造装置100では、突起部形成部10Bにて凸型部11から基材シート2Aに与える熱量が、突起部前駆体形成部10Aにて凸型部11から基材シート2Aに与える熱量よりも大きくなっている。ここで、基材シート2Aに与える熱量とは、基材シート2Aに与える単位刺入高さ当たりの熱量のことを意味する。具体的に、突起部形成部10Bにて凸型部11から基材シート2Aに与える熱量が、突起部前駆体形成部10Aにて凸型部11から基材シート2Aに与える熱量よりも大きくなる条件としては、(条件a)基材シート2Aへの凸型部11の刺入速度に関し、突起部形成部10Bの該刺入速度の方が突起部前駆体形成部10Aの該刺入速度よりも遅いこと、(条件b)凸型部11の加熱手段(不図示)が超音波振動装置である場合に、突起部形成部10Bの凸型部11の超音波の周波数の方が突起部前駆体形成部10Aの凸型部11の超音波の周波数よりも高いこと、及び(条件c)凸型部11の加熱手段(不図示)が超音波振動装置である場合に、突起部形成部10Bの凸型部11の超音波の振幅の方が突起部前駆体形成部10Aの凸型部11の超音波の振幅よりも大きいこと、(条件d)凸型部11の加熱手段(不図示)が加熱ヒーターである場合に、突起部形成部10Bの凸型部11のヒーター温度の方が突起部前駆体形成部10Aの凸型部11のヒーター温度よりも高いこと、の少なくとも1つの条件を満たしていることを意味する。尚、本実施態様の製造装置100では、凸型部11の加熱手段(不図示)以外に加熱手段を設けていない。なお、本明細書で「凸型部11の加熱手段以外に加熱手段を設けていない」とは、他の加熱手段を一切排除する場合を指すだけではなく、基材シート2Aの軟化温度未満、好ましくはガラス転移温度未満に加熱する手段を備える場合も含む。具体的には、凸型部11の加熱手段で加えられる基材シート2Aの温度が該基材シート2Aの軟化温度以上であれば、他に軟化温度未満の加熱が存在しても良い。また、凸型部11の加熱手段で加えられる基材シート2Aの温度がガラス転移温度以上軟化温度未満であれば、他にガラス転移温度未満の加熱が存在していても良い。但し、各凸型部11A,11Bに設けられた加熱手段以外の、他の加熱手段を一切含まないことが好ましい。本実施態様の製造装置100では、凸型部11の加熱手段(不図示)は、超音波振動装置である。
【0033】
本実施態様では、先ず、熱可塑性樹脂を含んで形成された基材シート2Aの原反ロールから帯状の基材シート2Aを繰り出し、Y方向に搬送する。そして、基材シート2Aが所定位置まで送られたところで、基材シート2Aの搬送を止める。このように、本実施態様では、帯状の基材シート2Aの搬送を間欠的に行うようになっている。
【0034】
基材シート2Aは、製造するマイクロニードルアレイ1Mの有する基底部材2となるシートであり、熱可塑性樹脂を含んで形成されている。基材シート2Aとしては、熱可塑性樹脂を主体とする、即ち50質量%以上含むものであることが好ましく、熱可塑性樹脂を90質量%以上含むものであることが更に好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリ脂肪酸エステル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート類、ポリ塩化ビニル、ナイロン樹脂、アクリル樹脂等又はこれらの組み合わせが挙げられ、生分解性の観点から、ポリ脂肪酸エステルが好ましく用いられる。ポリ脂肪酸エステルとしては、具体的に、ポリ乳酸、ポリグリコール酸又はこれらの組み合わせ等が挙げられる。尚、基材シート2Aは、熱可塑性樹脂以外に、ヒアルロン酸、コラーゲン、でんぷん、セルロース等を含んだ混合物で形成されていても良い。基材シート2Aの厚みは、製造するマイクロニードルアレイ1Mの有する基底部材2の厚みT2と同等である。
【0035】
次いで、本実施態様では、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、Y方向に搬送された帯状の基材シート2Aの一面2Dから凸型部11を当接させて、基材シート2Aにおける当接部分TPを熱により軟化させながら、凸型部11を基材シート2Aに刺してゆき基材シート2Aの他面2Uから突出させると共に基材シート2Aの他面2U側先端に貫通する開孔部3hを有する中空の微細中空突起部前駆体3bを形成する(突起部前駆体形成工程)。好適に、本実施態様の製造装置100では、凸型部11に、9個の尖鋭な先端の円錐状の凸型110が、その先端を上方に向けて配置されており、凸型部11が、少なくとも厚み方向(Z方向)の上下に移動可能となっている。更に好適には、本実施態様の製造装置100では、凸型部11は、電動アクチュエータ(不図示)によって、厚み方向(Z方向)の上下に移動可能となっている。凸型部11の動作(電動アクチュエータ)の制御は、本実施態様の製造装置100に備えられた、制御手段(不図示)により制御されている。なお、凸型部11の加熱手段(不図示)の作動は、基材シート2Aに凸型部11が当接する直前から、後述する冷却工程に至る直前まで行われることが好ましい。
凸型部11の動作、凸型部11の加熱手段(不図示)の作動等の凸型部11の備える加熱手段(不図示)の加熱条件の制御は、本実施態様の製造装置100に備えられた、制御手段(不図示)により制御されている。
【0036】
凸型部11の凸型110は、その外形形状が、マイクロニードルアレイ1Mの有する微細中空突起部3の外形形状よりも尖鋭な形状である。凸型部11の凸型110は、その高さH2(
図4参照)が、製造されるマイクロニードルアレイ1Mの高さH1に比べて高く形成されており、好ましくは0.01mm以上、更に好ましくは0.02mm以上であり、そして、好ましくは30mm以下であり、更に好ましくは20mm以下であり、具体的には、好ましくは0.01mm以上30mm以下であり、更に好ましくは0.02mm以上20mm以下である。
凸型部11の凸型110は、その先端径D1(
図6参照)が、好ましくは0.001mm以上、更に好ましくは0.005mm以上であり、そして、好ましくは1mm以下であり、更に好ましくは0.5mm以下であり、具体的には、好ましくは0.001mm以上1mm以下であり、更に好ましくは0.005mm以上0.5mm以下である。凸型部11の凸型110の先端径D1は、以下のようにして測定する。
凸型部11の凸型110は、その根本径D2(
図6参照)が、好ましくは0.1mm以上、更に好ましくは0.2mm以上であり、そして、好ましくは5mm以下であり、更に好ましくは3mm以下であり、具体的には、好ましくは0.1mm以上5mm以下であり、更に好ましくは0.2mm以上3mm以下である。
凸型部11の凸型110は、十分な強度が得られ易くなる観点から、その先端角度α(
図6参照)が、好ましくは1度以上、更に好ましくは5度以上である。そして、先端角度αは、適度な角度を有する微細中空突起部3を得る観点から、好ましくは60度以下であり、更に好ましくは45度以下であり、具体的には、好ましくは1度以上60度以下であり、更に好ましくは5度以上45度以下である。凸型部11の凸型110の先端角度αは、以下のようにして測定する。
【0037】
〔凸型部11の凸型110の先端径の測定〕
凸型部11の凸型110の先端部を、走査型電子顕微鏡(SEM)もしくはマイクロスコープを用いて所定倍率に拡大した状態で観察する。次に、
図6に示すように、両側辺11a,11bの内の一側辺11aにおける直線部分に沿って仮想直線ILcを延ばし、他側辺11bにおける直線部分に沿って仮想直線ILdを延ばす。そして、先端側にて、一側辺11aが仮想直線ILcから離れる箇所を第1先端点11a1として求め、他側辺11bが仮想直線ILdから離れる箇所を第2先端点11b1として求める。このようにして求めた第1先端点11a1と第2先端点11b1とを結ぶ直線の長さD1を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定し、測定した該直線の長さを、凸型110の先端径とする。
【0038】
〔凸型部11の凸型110の先端角度αの測定〕
凸型部11の凸型110の先端部を、走査型電子顕微鏡(SEM)もしくはマイクロスコープを用いて所定倍率に拡大した状態で観察する。次に、
図6に示すように、両側辺11a,11bの内の一側辺11aにおける直線部分に沿って仮想直線ILcを延ばし、他側辺11bにおける直線部分に沿って仮想直線ILdを延ばす。そして、仮想直線ILcと仮想直線ILdとのなす角を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定し、測定した該なす角を、凸型部11の凸型110の先端角度αとする。
【0039】
凸型部11は、折れ難い高強度の材質で形成されている。凸型部11の材質としては、鋼鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金、銅、銅合金、ベリリウム銅、ベリリウム銅合金等の金属、又はセラミック等が挙げられる。
【0040】
突起部前駆体形成部10Aは、本実施態様の製造装置100では、
図4に示すように、凸型部11を基材シート2Aに刺してゆく際に基材シート2Aを支持する支持部材12を有している。支持部材12は、基材シート2Aの他面2U側に配されており、凸型部11を一面2Dから刺し込んだ際に基材シート2Aが撓みにくくする役目を担っている。したがって、支持部材12は、基材シート2Aの凸型部11が刺し込まれる領域以外の部分に配置されており、本実施態様の製造装置100では、基材シート2Aの搬送方向(Y方向)に沿う両側部に、搬送方向(Y方向)に平行に延在する一対の板状部材から形成されている。各支持部材12は、突起部前駆体形成部10A、突起部形成部10B、冷却部20、及びリリース部30に至るまで配されている。
【0041】
支持部材12を形成する材質としては、凸型部11の材質と同じ材質でもよく、合成樹脂等から形成されていてもよい。
【0042】
本実施態様の突起部前駆体形成工程では、
図4に示すように、原反ロールから繰り出されてY方向に搬送された帯状の基材シート2Aの他面2U側(上面側)に配された一対の支持部材12,12で、基材シート2Aの搬送方向(Y方向)に沿う両側部を支持する。そして、基材シート2Aにおける支持部材12で支持されていない部分、即ち、基材シート2Aにおける一対の支持部材12,12の間の中央領域の一面2D(下面)に、凸型部11の各凸型110の先端部を当接させる。このように、突起部前駆体形成工程では、凸型部11の各凸型110を当接させた基材シート2Aの当接部分TPに対応する他面2U(上面)が、突起部を形成する為の、凸型部11に嵌合する凹部等を設けておらず、浮いた状態となっている。
【0043】
そして、本実施態様では、
図5(a)に示すように、各当接部分TPにおいて、超音波振動装置により凸型部11の超音波振動を発現させ、当接部分TPに摩擦による熱を発生させて当接部分TPを軟化させる。そして、本実施態様の突起部前駆体形成工程では、各当接部分TPを軟化させながら、
図5(b)に示すように、基材シート2Aの一面2D(下面)から他面2U(上面)に向かって凸型部11を上昇させて基材シート2Aに凸型110の先端部を刺してゆき、基材シート2Aの他面2U(上面)から突出させると共に貫通する開孔部3hを有する中空の微細中空突起部前駆体3bを形成する。
【0044】
本実施態様の突起部前駆体形成工程では、凸型部11の超音波振動装置による超音波振動に関し、その振動周波数(以下、周波数という)は、開孔部3hを有する微細中空突起部前駆体3bの形成の観点から、好ましくは10kHz以上、更に好ましくは15kHz以上であり、そして、好ましくは50kHz以下であり、更に好ましくは40kHz以下であり、具体的には、好ましくは10kHz以上50kHz以下であり、更に好ましくは15kHz以上40kHz以下である。
また、凸型部11の超音波振動装置による超音波振動に関し、その振幅は、開孔部3hを有する微細中空突起部前駆体3bの形成の観点から、好ましくは1μm以上、更に好ましくは5μm以上であり、そして、好ましくは60μm以下であり、更に好ましくは50μm以下であり、具体的には、好ましくは1μm以上60μm以下であり、更に好ましくは5μm以上50μm以下である。本実施態様のように超音波振動装置を用いる場合には、突起部前駆体形成工程では、凸型部11の超音波振動の周波数及び振幅を上述した範囲で調整すればよい。
【0045】
本実施態様の突起部前駆体形成工程では、凸型部11を基材シート2Aに刺してゆく刺入速度は、遅過ぎると樹脂を過剰に軟化させ開孔部3hの大きさが大きくなり過ぎ、速過ぎると軟化不足となり開孔部3hが形成されないので、開孔部3hを有する微細中空突起部前駆体3bを効率的に形成する観点から、好ましくは0.1mm/秒以上、更に好ましくは1mm/秒以上であり、そして、好ましくは1000mm/秒以下であり、更に好ましくは800mm/秒以下であり、具体的には、好ましくは0.1mm/秒以上1000mm/秒以下であり、更に好ましくは1mm/秒以上800mm/秒以下である。
【0046】
本実施態様の突起部前駆体形成工程では、基材シート2Aに刺す凸型部11の刺入高さは、開孔部3hを有する微細中空突起部前駆体3bを効率的に形成する観点から、好ましくは0.001mm以上、更に好ましくは0.01mm以上であり、そして、好ましくは2mm以下であり、更に好ましくは1mm以下であり、具体的には、好ましくは0.001mm以上2mm以下であり、更に好ましくは0.01mm以上1mm以下である。ここで、「刺入高さ」とは、基材シート2Aに凸型部11の凸型110を刺し込んだ状態において、凸型部11の凸型110の頂点と、基材シート2Aの他面2Uとの間の距離を意味する。したがって、突起部前駆体形成工程における刺入高さとは、突起部前駆体形成工程で凸型110が最も深く刺し込まれて基材シート2Aの他面2Uから凸型110が出てきた状態における、該他面2Uから垂直方向に測定した凸型110頂点までの距離のことである。
【0047】
次に、本実施態様の製造装置100では、
図4に示すように、突起部前駆体形成部10Aの次に突起部形成部10Bが設置されている。本実施態様では、突起部前駆体形成工程の後、微細中空突起部前駆体3bの内部に凸型部11を刺し込んだ状態で、基材シート2Aにおける当接部分TPを熱により軟化させながら凸型部11を基材シート2Aに更に刺してゆき、基材シート2Aの他面2Uから更に長い距離突出する微細中空突起部3を形成する(微細中空突起部形成工程)。好適に、本実施態様の製造装置100では、電動アクチュエータ(不図示)によって、凸型部11を厚み方向(Z方向)の上方に更に移動させ、各微細中空突起部前駆体3bの内部に凸型部11の凸型110を刺し込んだ状態で、基材シート2Aにおける各当接部分TPを、超音波振動装置により凸型部11の超音波振動を発現させ、当接部分TPに摩擦による熱を発生させて更に軟化させながら凸型部11の凸型110を基材シート2Aに更に刺してゆき、基材シート2Aの他面2Uから更に突出する微細中空突起部3を形成する。尚、本実施態様の微細中空突起部形成工程では、
図4に示すように、帯状の基材シート2Aの他面2U側(上面側)に配された一対の支持部材12,12により、基材シート2Aの搬送方向(Y方向)に沿う両側部が支持されている。
【0048】
本実施態様の微細中空突起部形成工程では、
図5(c)に示すように、超音波振動装置による凸型部11の超音波振動の周波数及び振幅が、それぞれ、突起部前駆体形成工程における超音波振動の周波数及び振幅と同じである。尚、微細中空突起部形成工程で形成された微細中空突起部3の開孔部3hの開孔面積は、突起部前駆体形成工程で形成された微細中空突起部前駆体3bの開孔部3hの開孔面積S1以上の面積であるが、開孔面積S1と同じ面積であることが好ましい。
【0049】
本実施態様の微細中空突起部形成工程では、凸型部11を基材シート2Aに刺してゆく刺入速度が、突起部前駆体形成工程において凸型部11を基材シート2Aに刺してゆく刺入速度よりも遅くなっている。本実施態様の微細中空突起部形成工程では、凸型部11を基材シート2Aに刺してゆく刺入速度は、遅過ぎると樹脂を過剰に軟化させ開孔部3hの大きさが大きく変化し過ぎ、速過ぎると軟化不足となり微細中空突起部3の高さが不足し易いので、開孔部3hを有する微細中空突起部3を効率的に形成する観点から、好ましくは0.1mm/秒以上、更に好ましくは1mm/秒以上であり、そして、好ましくは1000mm/秒以下であり、更に好ましくは800mm/秒以下であり、具体的には、好ましくは0.1mm/秒以上1000mm/秒以下であり、更に好ましくは1mm/秒以上800mm/秒以下である。
【0050】
本実施態様の微細中空突起部形成工程では、突起部前駆体形成工程で開孔部3hを有する微細中空突起部前駆体3bを形成してから、凸型部11の上昇を一定の加速度で減少させて、加熱状態の凸型部11の上昇を停止させる。このように凸型部11の上昇を一定の加速度で減少させるので、頂点側部位TBの肉厚T1が下方側部位BPの肉厚T2よりも薄く、頂点側部位TBにおける内壁31,31同士の間隔M1が下方側部位BPにおける内壁31,31同士の間隔M2よりも小さい、微細中空突起部3を有するマイクロニードルアレイ1Mを製造し易い。また、このとき、基材シート2Aの一面2D側の微細中空突起部3の入口部、及び基材シート2Aの他面2U側の微細中空突起部3の根本部は曲率をもったカーブとなる。
【0051】
本実施態様の微細中空突起部形成工程では、加熱状態の凸型部11の上昇を停止させ、微細中空突起部3の内部に凸型部11の凸型110を刺した状態のまま次工程の冷却工程を施すまでの時間である軟化時間は、長過ぎると、基材シート2Aにおける各当接部分TPが過剰に軟化してしまうが、軟化不足を補う観点から、好ましくは0秒以上、更に好ましくは0.1秒以上であり、そして、好ましくは10秒以下であり、更に好ましくは5秒以下であり、具体的には、好ましくは0秒以上10秒以下であり、更に好ましくは0.1秒以上5秒以下である。
【0052】
本実施態様の微細中空突起部形成工程では、基材シート2Aに刺す凸型部11の刺入高さは、開孔部3hを有する微細中空突起部3を効率的に形成する観点から、好ましくは0.01mm以上、更に好ましくは0.02mm以上であり、そして、好ましくは10mm以下であり、更に好ましくは5mm以下であり、具体的には、好ましくは0.01mm以上10mm以下であり、更に好ましくは0.02mm以上5mm以下である。
【0053】
本実施態様では、突起部前駆体形成工程にて凸型部11の備える加熱手段(不図示)の条件と微細中空突起部形成工程にて凸型部11の備える加熱手段(不図示)の条件とが同じであり、微細中空突起部形成工程にて凸型部11を基材シート2Aに更に刺してゆく速度が、突起部前駆体形成工程にて凸型部11を基材シート2Aに刺してゆく速度よりも遅くなっている。具体的には、本実施態様の製造装置100は、凸型部11の加熱手段(不図示)が超音波振動装置の場合であるが、突起部形成部10Bの有する凸型部11の超音波振動の周波数及び振幅と突起部前駆体形成部10Aの有する凸型部11の超音波振動の周波数及び振幅とが同じであり前記(b)及び前記(c)の条件を満たしていない。しかし、本実施態様では、基材シート2Aへの凸型部11の刺入速度に関し、微細中空突起部形成工程における刺入速度の方が、突起部前駆体形成工程における刺入速度よりも遅くなっており、前記(a)の条件を満たしている。その為、微細中空突起部形成工程にて凸型部11から基材シート2Aに与える熱量が、突起部前駆体形成工程にて凸型部11から基材シート2Aに与える熱量よりも大きくなっている。
【0054】
また、本実施態様の製造装置100では、基材シート2Aへの凸型部11の刺入速度に関し、突起部前駆体形成工程から微細中空突起部形成工程にかけて、刺入速度が連続的に遅くなっている。即ち、該刺入速度を漸減させ、凸型部11の上昇を一定の加速度で減少させている。その為、本実施態様では、突起部前駆体形成工程にて凸型部11から基材シート2Aに与える単位刺入高さ当りの熱量と、微細中空突起部形成工程にて凸型部11から基材シート2Aに与える単位刺入高さ当りの熱量とは、突起部前駆体形成工程の後期から微細中空突起部形成工程の前期にかけて、連続的に変化している。なお、「単位刺入高さ当りの熱量」とは、各々の工程で、基材シート2Aに付与した全熱量を、凸型部11の移動距離で除した値のことである。たとえば、突起部前駆体形成工程では、凸型部11が基材シート2Aに接触してから当該工程が終了するまでに基材シート2Aに与えられた全熱量を、当該工程の全移動距離で除した値である。
【0055】
次に、本実施態様の製造装置100では、
図4に示すように、突起部形成部10Bの次に冷却部20が設置されている。冷却部20は、
図4に示すように、冷風送風装置21を備えている。本実施態様では、微細中空突起部形成工程の後、冷風送風装置21を用いて、微細中空突起部3の内部に凸型部11を刺した状態で微細中空突起部3を冷却する(冷却工程)。本実施態様の製造装置100では、冷風送風装置21には、冷風送風する送風口22(
図5(d)参照)が基材シート2Aの他面2U側(上面側)に配されており、送風口22から冷風を吹き付けて微細中空突起部3を冷却するようになっている。尚、冷風送風装置は、搬送される帯状の基材シート2Aの他面2U側(上面側)及び一面2D側(下面側)の全体を中空状に覆い、冷風送風装置の内部を帯状の基材シート2Aが搬送方向(Y方向)に搬送されるようにし、中空内に、例えば、冷風送風する送風口22を設けるようにしてもよい。冷風送風装置21の冷却温度、冷却時間の制御は、本実施態様の製造装置100に備えられた、制御手段(不図示)により制御されている。
【0056】
本実施態様の冷却工程では、凸型部11の凸型110を微細中空突起部3の内部に刺し込んだ状態で、
図5(d)に示すように、基材シート2Aの他面2U側(上面側)に配された送風口22から冷風を吹き付けて、微細中空突起部3の内部に凸型部11の凸型110を刺した状態のまま冷却する。尚、冷却する際には、凸型部11の超音波装置による超音波振動は、継続状態でも止められた状態でも良いが、微細中空突起部3の形状を過度な変形をさせず一定に保つ観点から、止められていることが好ましい。
【0057】
吹き付ける冷風の温度は、開孔部3hを有する微細中空突起部3の形成の観点から、好ましくは−50℃以上、更に好ましくは−40℃以上であり、そして、好ましくは26℃以下であり、更に好ましくは10℃以下であり、具体的には、好ましくは−50℃以上26℃以下であり、更に好ましくは−40℃以上10℃以下である。
冷風を吹き付けて冷却する冷却時間は、成型性と加工時間の両立性の観点から、好ましくは0.01秒以上、更に好ましくは0.5秒以上であり、そして、好ましくは60秒以下であり、更に好ましくは30秒以下であり、具体的には、好ましくは0.01秒以上60秒以下であり、更に好ましくは0.5秒以上30秒以下である。
【0058】
次に、本実施態様の製造装置100では、
図4に示すように、冷却部20の次にリリース部30が設置されている。本実施態様では、冷却工程の後に、微細中空突起部3の内部から凸型部11を抜いてマイクロニードルアレイ1Mの前駆体1Aを形成する(リリース工程)。具体的に、本実施態様のリリース工程では、
図5(e)に示すように、基材シート2Aの一面2D(下面)から凸型部11を下降させて、各微細中空突起部3の内部に凸型部11の凸型110を刺し込んだ状態から、凸型部11の凸型110を抜いて、開孔部3hを有し且つ内部が中空の微細中空突起部3がアレイ状に配されたマイクロニードルアレイ1Mとなる帯状の微細中空突起具の前駆体1Aを形成する。
【0059】
以上のように形成されたマイクロニードルアレイ1Mの前駆体1Aは、その後、搬送方向(Y方向)下流側に搬送される。その後、カット工程にて、所定の範囲でカットされ、
図1に示すような、シート状の基底部材2と複数の微細中空突起部3とを有する第1実施態様の微細中空突起具1としてのマイクロニードルアレイ1Mが製造できる。以上の工程を繰り返すことによって、基材シート2Aの他面2U側(上面側)に微細中空突起具1を連続的に効率良く製造できる。
【0060】
なお、上述したように製造されたマイクロニードルアレイ1Mは、その後の工程において更に所定の形状に形成されても良いし、凸型部11を刺し込む工程の前に所望の形状に基材シート2Aを予め調整しておいても良い。
【0061】
以上説明したように、製造装置100を用いてマイクロニードルアレイ1Mを製造する本実施態様の製造方法によれば、頂点側部位TBの肉厚T1が下方側部位BPの肉厚T2よりも薄く、頂点側部位TBにおける内壁31,31同士の間隔M1が下方側部位BPにおける内壁31,31同士の間隔M2よりも小さい、微細中空突起部3を有するマイクロニードルアレイ1Mを精度良く製造することができる。
【0062】
次に、本発明の微細中空突起具を、第2実施態様の微細中空突起具1に基づき、
図7を参照して説明する。
図7には、第2実施態様の微細中空突起具1としてのマイクロニードルアレイ1Mの断面図が示されている。なお、本説明においては、上述した第1実施態様と異なる点をメインに説明する。
【0063】
上記第1実施態様においては、マイクロニードルアレイ1Mの微細中空突起部3の外壁32が一本の直線状に形成されているが、第2実施態様のマイクロニードルアレイ1Mは、微細中空突起部3の外壁33に段差が設けられている。
第2実施態様では、マイクロニードルアレイ1Mは、
図7に示すように、微細中空突起部3の頂点を通る何れかの縦断面を視た際に、微細中空突起部3の頂点を通る垂線ILと微細中空突起部3の外壁33とのなす角が、頂部側と基底部材側とで異なっている。具体的には、第2実施態様のマイクロニードルアレイ1Mの微細中空突起部3の外壁33は、頂部側に位置し、一直線状に形成された頂部側外壁331と、基底部材側に位置し、頂部側外壁331と異なる傾斜で一直線状に形成された基底部材側外壁332とを備えた2段構造になっており、垂線ILと基底部材側外壁332とのなす角θ4が、垂線ILと頂部側外壁331とのなす角θ3よりも大きくなっている。つまり、第2実施態様のマイクロニードルアレイ1Mの微細中空突起部3は、内壁31が一直線状に形成されるのに対し、外壁33に段差が設けられている。このように形成することで、頂部側よりも基底部材側の方を肉厚にすることができることに加え、基底部材側を根元に向かって更に肉厚にすることが可能になり、微細中空突起部3を更に折れ難くすることができる。
【0064】
皮膚に微細中空突起部3を穿刺する際の痛みの低減と微細中空突起部3の折れ難さとの観点から、垂線ILと基底部材側外壁332とのなす角θ4に対する、垂線ILと頂部側外壁331とのなす角θ3の比(θ3/θ4)は、0.05以上であることが好ましく、0.1以上であることが更に好ましく、そして、0.6以下であることが好ましく、0.5以下であることが更に好ましく、具体的には、0.05以上0.6以下であることが好ましく、0.1以上0.5以下であることが更に好ましい。
【0065】
また、皮膚に微細中空突起部3を穿刺する際の痛みの低減と微細中空突起部3の折れ難さとの観点から、マイクロニードルアレイ1Mの突出高さH1に対する、基底部材2の上面から段差までの高さH3の比は(H3/H1)は、0.05以上であることが好ましく、0.1以上であることが更に好ましく、そして、0.05以下であることが好ましく、0.6以下であることが更に好ましく、具体的には、0.05以上0.6以下であることが好ましく、0.1以上0.5以下であることが更に好ましい。
【0066】
第2実施態様のマイクロニードルアレイ1Mの微細中空突起部3は、段差位置での肉厚T1dが、皮膚に穿刺する際に痛みが低減できると共に折れ難い観点から、好ましくは0.005mm以上、更に好ましくは0.01mm以上であり、そして、好ましくは0.5mm以下であり、更に好ましくは0.3mm以下であり、具体的には、好ましくは0.005mm以上0.5mm以下であり、更に好ましくは0.01mm以上0.3mm以下である。
【0067】
第2実施態様のマイクロニードルアレイ1Mの微細中空突起部3は、基底部材2の上面の位置での肉厚T2cが、皮膚に穿刺する際に折れ難い観点から、好ましくは0.02mm以上、更に好ましくは0.01mm以上であり、そして、好ましくは0.8mm以下であり、更に好ましくは0.5mm以下であり、具体的には、好ましくは0.01mm以上0.8mm以下であり、更に好ましくは0.02mm以上0.5mm以下である。
【0068】
なお、第2実施態様では、微細中空突起部3の外壁33に1つの段差を設ける構成を用いて説明したが、外壁33に2つ以上の段差を設ける構成にしてもよい。つまり、外壁33の傾斜角度を、頂部側から基底部材側に向かって、段階的に大きくする構成であってもよい。例えば、頂部側外壁331と基底部材側外壁332との間に、頂部側外壁331よりも傾斜が大きく、且つ基底部材側外壁332よりも傾斜の小さな他の外壁を設ける構成にしてもよい。
【0069】
また、第2実施態様のマイクロニードルアレイ1Mは、上記第1実施態様の製造方法の微細中空突起部形成工程において、微細中空突起部前駆体3bの内部に凸型部11を刺し込んだ状態で、基材シート2Aを熱により軟化させながら凸型部11を基材シート2Aに更に刺してゆき、頂部側外壁331の部分を形成する。その後、頂部側外壁331の部分を形成する際の熱量よりも低い熱量を与えながら凸型部11を基材シート2Aに更に刺し込むことで基底部材側外壁332の部分が形成可能となる。このように、頂部側外壁331の部分を形成した後、凸型部11を一旦停止し、超音波振動の周波数及び振幅は同じまま、頂部側外壁331の部分を形成する際の刺入速度よりも更に遅い刺入速度で凸型部11を移動させて、基底部材側外壁332の部分を形成している。つまり、頂部側外壁331の部分を形成した後、基底部材側外壁332の部分を形成している。
【0070】
以上、本発明の微細中空突起具を、その好ましい実施態様のマイクロニードルアレイ1Mに基づき説明したが、本発明は上述した実施態様に制限されるものではなく、適宜変更可能である。
【0071】
例えば、上述した実施態様の微細中空突起具1としてのマイクロニードルアレイ1Mは、シート状の基底部材2の上面に、9個の円錐台状の微細中空突起部3を配列しているが、1個の微細中空突起部3を有していてもよい。また、上述した実施態様の微細中空突起具1としてのマイクロニードルアレイ1Mは、微細中空突起部3の先端に位置する開孔部3hと下面に位置する基底側開孔部2hとが、同心円形状に形成されているが、同心円形状でなくてもよい。即ち、微細中空突起具1の開孔部3hが微細中空突起部3の先端側にあれば先端に無くてもよい。
【0072】
また、上述した実施態様のマイクロニードルアレイ1Mを製造する方法においては、凸型部11の加熱手段として超音波振動装置を用いて説明したが、凸型部11の加熱手段を加熱ヒーター装置としてもよい。
凸型部11の加熱手段が加熱ヒーター装置である場合、各当接部分TPにおいて、加熱ヒーター装置により凸型部11を加熱し、当接部分TPに熱を発生させて当接部分TPを軟化させる。そして、突起部前駆体形成工程においては、各当接部分TPを軟化させながら、基材シート2Aの一面2D(下面)から他面2U(上面)に向かって凸型部11を上昇させて基材シート2Aに凸型110の先端部を刺してゆき、基材シート2Aの他面2U(上面)から突出させると共に貫通する開孔部3hを有する中空の微細中空突起部前駆体3bを形成する。尚、凸型部11による基材シート2Aの加熱温度は、微細中空突起部前駆体3bの形成の観点から、使用される基材シート2Aのガラス転移温度(Tg)以上温度以上溶融温度未満であることが好ましく、更には当該樹脂の軟化温度以上溶融温度未満であることが好ましい。微細中空突起部形成工程においては、各当接部分TPにおいて、加熱ヒーター装置により凸型部11を突起部前駆体形成工程と同じ温度で加熱し、当接部分TPに熱を発生させて当接部分TPを軟化させながら、基材シート2Aの一面2D(下面)から他面2U(上面)に向かって凸型部11を更に上昇させて基材シート2Aに凸型110の先端部を更に刺してゆき、基材シート2Aの他面2U(上面)から更に突出する開孔部3hを有する微細中空突起部3を形成する。尚、微細中空突起部形成工程においては、凸型部11を基材シート2Aに刺してゆく刺入速度が、突起部前駆体形成工程において凸型部11を基材シート2Aに刺してゆく刺入速度よりも遅くなっている。
【0073】
また、例えば、上述した実施態様のマイクロニードルアレイ1Mを製造する方法においては、突起部形成部10Bの有する凸型部11の超音波振動の周波数及び振幅と突起部前駆体形成部10Aの有する凸型部11の超音波振動の周波数及び振幅とが同じであり、前記(条件b)及び前記(条件c)の条件を満たしていないが、微細中空突起部形成工程における刺入速度の方が突起部前駆体形成工程における刺入速度よりも遅く、前記(条件a)の条件を満たし、結果として、微細中空突起部形成工程にて凸型部11から基材シート2Aに与える熱量が、突起部前駆体形成工程にて凸型部11から基材シート2Aに与える熱量よりも大きくなっている。
即ち、上述した実施態様のマイクロニードルアレイ1Mを製造する方法は、突起部前駆体形成工程にて凸型部11の備える加熱手段の条件と微細中空突起部形成工程にて凸型部11の備える加熱手段の条件とが同じであり、微細中空突起部形成工程にて凸型部11を基材シート2Aに更に刺してゆく速度が、突起部前駆体形成工程にて凸型部11を基材シート2Aに刺してゆく速度よりも遅い製造方法である。しかし、突起部前駆体形成工程にて凸型部11を基材シート2Aに刺してゆく速度と微細中空突起部形成工程にて凸型部11を基材シート2Aに更に刺してゆく速度とが同じであり、微細中空突起部形成工程にて凸型部11の備える加熱手段の条件で基材シート2Aに付与する熱量が、突起部前駆体形成工程にて凸型部11の備える加熱手段の条件で基材シート2Aに付与する熱量に比べて大きい製造方法であってもよい。具体的には、前記(条件a)の条件を満たしていないが、突起部形成部10Bの有する凸型部11の超音波振動の周波数又は振幅の方が、突起部前駆体形成部10Aの有する凸型部11の超音波振動の周波数又は振幅よりも大きく、前記(条件b)又は前記(条件c)の条件を満たし、結果として、微細中空突起部形成工程にて凸型部11から基材シート2Aに与える熱量が、突起部前駆体形成工程にて凸型部11から基材シート2Aに与える熱量よりも大きくなっていてもよい。
【0074】
同様に、上述の凸型部11の加熱手段を加熱ヒーター装置とする実施態様の製造装置においては、突起部形成部10Bの凸型部11のヒーター温度と突起部前駆体形成部10Aの凸型部11のヒーター温度とが同じ温度にした場合、前記(条件d)の条件を満たしていないが、微細中空突起部形成工程における刺入速度の方が突起部前駆体形成工程における刺入速度よりも遅くすることで、前記(条件a)の条件を満たし、結果として、微細中空突起部形成工程にて凸型部11から基材シート2Aに与える熱量が、突起部前駆体形成工程にて凸型部11から基材シート2Aに与える熱量よりも大きくなっている。また、前記(条件a)の条件を満たしていないが、突起部形成部10Bの凸型部11のヒーター温度の方が、突起部前駆体形成部10Aの凸型部11のヒーター温度よりも高く、前記(条件d)の条件を満たし、結果として、微細中空突起部形成工程にて凸型部11から基材シート2Aに与える熱量が、突起部前駆体形成工程にて凸型部11から基材シート2Aに与える熱量よりも大きくなっていてもよい。更に、前記(条件a)の条件、前記(条件b)の条件、前記(条件c)の条件、及び前記(条件d)の条件の全ての条件を満たしていてもよい。
【0075】
また、上述した実施態様のマイクロニードルアレイ1Mを製造する方法においては、電動アクチュエータ(不図示)によって厚み方向(Z方向)の上下に凸型部11が移動可能となっているが、無限軌道を描くボックスモーション式の凸型部11を用いてもよい。
また、上記した実施態様のマイクロニードルアレイ1Mを製造する方法においては、
図4に示すように、凸型部11が基材シート2Aを下方やら上方に向かって刺入しているが、基材シートに対する凸型部や支持部材の位置関係、刺入方向はこれに限定されず、上方から下方に向かってマイクロニードルアレイ1Mを成形してもよい。
【0076】
前述した本発明の実施態様に関し、更に以下の微細中空突起具を開示する。
【0077】
<1>
先端側に開孔部を有し内部に該開孔部に繋がる内部空間の形成された微細中空突起部が、基底部材から突出する微細中空突起具であって、前記微細中空突起部の頂点を通る何れかの縦断面を視た際に、前記頂点側の頂点側部位における肉厚が、該頂点側部位よりも前記基底部材側の下方側部位における肉厚よりも薄く、前記頂点側部位における内壁同士の間隔が前記下方側部位における内壁同士の間隔よりも小さく、前記基底部材から突出する前記微細中空突起部の根本部が曲率を有し、前記基底部材における前記微細中空突起部の突出する面とは反対側の反対面の前記微細中空突起部内への入口部が曲率を有する微細中空突起具。
<2>
前記頂点側部位における肉厚は、全周に亘って均等である、前記<1>に記載の微細中空突起具。
<3>
前記微細中空突起部の頂点を通る何れかの縦断面を視た際に、前記頂点を通る垂線と前記微細中空突起部の外壁とのなす角θ2が、該垂線と該微細中空突起部の内壁とのなす角θ1よりも大きい、前記<1>又は<2>に記載の微細中空突起具。
<4>
前記微細中空突起部の内部の空間及び外形形状が円錐台状に形成され、微細中空突起部の頂点を通る縦断面をどのようにとっても、頂点を通る垂線と外壁とのなす角が、該垂線と内壁とのなす角よりも大きい、前記<3>に記載の微細中空突起具。
<5>
前記頂点を通る垂線と前記内壁とのなす角θ1に対する、前記頂点を通る垂線と前記外壁とのなす角θ2の比(θ2/θ1)は、好ましくは0.03以上90以下、更に好ましくは0.1以上45以下である、前記<3>又は<4>に記載の微細中空突起具。
<6>
前記頂点を通る垂線と内壁とのなす角θ1は、好ましくは0.5度以上30度以下であり、更に好ましくは2.5度以上22.5度以下である、前記<3>〜<5>の何れか1に記載の微細中空突起具。
<7>
前記頂点を通る垂線と外壁とのなす角θ2は、好ましくは1度以上45度以下であり、更に好ましくは3度以上30度以下である、前記<3>〜<6>の何れか1に記載の微細中空突起具。
<8>
前記微細中空突起部の頂点を通る何れかの縦断面を視た際に、前記頂点を通る垂線が、前記頂点側部位における内壁同士の間隔を2等分する頂点側中心位置と、前記下方側部位における内壁同士の間隔を2等分する下方側中心位置とを通る、前記<1>〜<7>の何れか1に記載の微細中空突起具。
<9>
各微細中空突起部は、前記基底部材の上面の位置での肉厚が、好ましくは0.004mm以上0.4mm以下であり、更に好ましくは0.008mm以上0.25mm以下である、前記<1>〜<8>の何れか1に記載の微細中空突起具。
<10>
前記微細中空突起部の頂点を通る何れかの縦断面を視た際に、前記頂点を通る垂線と該微細中空突起部の外壁とのなす角は、前記頂点側と前記基底部材側とで異なっており、該基底部材側のなす角が該頂点側のなす角よりも大きい、前記<1>〜<8>の何れか1に記載の微細中空突起具。
<11>
前記頂点を通る垂線と基底部材側外壁とのなす角θ4に対する、前記垂線と頂部側外壁とのなす角θ3の比であるθ3/θ4は、好ましくは0.05以上0.6以下であり、更に好ましくは0.1以上0.5以下である、前記<10>に記載の微細中空突起具。
<12>
前記微細中空突起部の突出高さH1に対する、前記基底部材の上面から段差までの高さH3の比であるH3/H1は、好ましくは0.05以上0.6以下であり、更に好ましくは0.1以上0.5以下である、前記<10>又は<11>に記載の微細中空突起具。
<13>
前記微細中空突起部は、段差位置での肉厚が、好ましくは0.005mm以上0.5mm以下であり、更に好ましくは0.01mm以上0.3mm以下である、前記<10>〜<12>の何れか1に記載の微細中空突起具。
<14>
前記微細中空突起部は、前記基底部材の上面の位置での肉厚が、好ましくは0.01mm以上0.8mm以下であり、更に好ましくは0.02mm以上0.5mm以下である、前記<10>〜<13>の何れか1に記載の微細中空突起具。
<15>
前記微細中空突起部は、その突出高さが好ましくは0.01mm以上10mm以下であり、更に好ましくは0.02mm以上5mm以下である、前記<1>〜<14>の何れか1に記載の微細中空突起具。
<16>
前記微細中空突起部は、その先端の肉厚が、好ましくは0.001mm以上0.1mm以下であり、更に好ましくは0.003mm以上0.05mm以下である、前記<1>〜<15>の何れか1に記載の微細中空突起具。
<17>
前記微細中空突起部は、その突出高さを二等分する位置での肉厚が好ましくは0.001mm以上0.1mm以下であり、更に好ましくは0.003mm以上0.05mm以下である、前記<1>〜<16>の何れか1に記載の微細中空突起具。
<18>
前記微細中空突起部の先端径は、その直径が、好ましくは1μm以上500μm以下であり、更に好ましくは5μm以上300μm以下である、前記<1>〜<17>の何れか1に記載の微細中空突起具。
<19>
前記基底部材は、その厚みが、好ましくは0.01mm以上1.0mm以下であり、更に好ましくは0.02mm以上0.7mm以下である、前記<1>〜<18>の何れか1に記載の微細中空突起具。
<20>
前記基底部材における微細中空突起部の根本部の曲率半径R1の微細中空突起部の突出高さH1に対する比(R1/H1)は、好ましくは0.01以上0.5以下、更に好ましくは0.02以上0.3以下である前記<1>〜<19>の何れか1に記載の微細中空突起具。
<21>
前記基底部材の前記微細中空突起部の突出する面とは反対側の反対面の前記微細中空突起部内への入口部の曲率半径R2の微細中空突起部の突出高さH1に対する比(R2/H1)は、好ましくは0.01以上0.4以下であり、更に好ましくは0.02以上0.25以下である、前記<1>〜<20>の何れか1に記載の微細中空突起具。